JP5821572B2 - 高い表面Al濃度を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al耐酸化コーティング皮膜が付いたNi基基材およびその製造方法 - Google Patents

高い表面Al濃度を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al耐酸化コーティング皮膜が付いたNi基基材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高い表面Al濃度を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al耐酸化コーティング皮膜が付いたNi基基材およびその製造方法に関する。
高圧タ−ビン翼や燃焼器等の材料として、耐熱酸化コーティング(場合によってはさらに熱遮蔽コーティング)が施されたNi基基材が用いられる。耐酸化コーティングとして、β−NiAl拡散コーティング、Ptを含むβ−Ni(Pt)Al拡散コーティングが古くから用いられ(特許文献1、特許文献2、特許文献3)、最近ではPtをめっきした後単純に熱処理しただけで優れた耐酸化性を示すPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Alコーティング(特許文献4、特許文献5)が発明されている。
Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al’耐酸化コーティングは、β−NiAl拡散コーティングおよびPtを含むβ−Ni(Pt)Al拡散コーティング比べ、ランプリングと呼ばれる繰り返し熱サイクルを受けた際にコーティング表面に発生する波打ち現象の割合が小さいため、耐酸化性が良いとされる。
さらに、熱遮蔽性を備えるセラミック被膜をさらに備える態様の場合で、Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al’耐酸化コーティングは、繰り返し熱サイクルを受けた際のランプリングの割合が小さいため、熱遮蔽性を備えるセラミックス皮膜の剥離寿命を延伸することができる。これは、耐酸化コーティング熱遮蔽セラミックス皮膜間の機械的変形が少ないためである。これにより、長時間にわたって耐酸化性、熱遮蔽性を保持することができる。
特開平10−68062号公報 特開平10−81979号公報 特開2005−120474号公報 米国特許第5667663号明細書 米国特許第5981091号明細書
従来のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al’耐酸化コーティングでは、耐酸化保護皮膜を形成するための元素であるアルミニウムは基材内部から拡散で補充されるだけであるため、コーティング表面のアルミニウム濃度は15〜20at%程度と本質的に低く、耐酸化性という観点では十分とは言えなかった。
本発明は、従来のもの比較して表面のAl濃度を高めることによって、耐酸化性がより優れるPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜が付いたNi基基材およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、熱遮蔽性を備えるセラミック被膜をさらに備える態様の場合は、熱遮蔽性を備えるセラミックス皮膜の剥離寿命を延伸することができる。
本発明者は上記の課題を解決することを目的に鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)〜(12)である。
(1)Ni基基材の表面にPt被膜を形成し、Pt被膜付き基材を得る工程と、
前記Pt被膜に含まれるPtが前記Ni基基材の少なくとも表面に拡散する処理条件において前記Pt被膜付き基材を熱処理して、Pt拡散基材を得る工程と、
前記Pt拡散基材の表面にAl被膜を形成して、Al被膜付き基材を得る工程と、
前記Al被膜に含まれるAlが前記Pt拡散基材の少なくとも表面部に拡散する処理条件において前記Al被膜付き基材を熱処理して、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材を得る工程と
を備える、Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(2)前記Ni基基材の表面に、厚さが3〜15μmの前記Pt被膜を形成し、Pt被膜付き基材を得る工程である、上記(1)に記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(3)前記Pt拡散基材の表面に、厚さが1〜10μmの前記Al被膜を形成して、Al被膜付き基材を得る工程である、上記(1)または(2)に記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(4)前記Pt被膜付き基材を1100℃未満の温度で熱処理して、Pt拡散基材を得る工程である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(5)前記Al被膜付き基材を1100℃未満の温度で熱処理して、前記Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜を得る工程である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(6)前記Ni基基材が、Ni基単結晶超合金からなる、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(7)有機溶媒中にて電解アルミニウムめっき処理を施すことで、前記Pt拡散基材の表面にAl被膜を形成して、Al被膜付き基材を得る工程である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(8)さらに、表面に熱遮蔽性を備えるセラミック被膜を形成する工程を備える、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法によって得られる、Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材。
(10)最表面から15〜50μmまでの部分における結晶構造が主としてPtを含有したγ−Ni+γ’−Ni3Al型であり、さらにその部分におけるAlの平均濃度が15〜30原子%である、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材。
(11)さらに、熱遮蔽性を備えるセラミック被膜を有する、上記(10)に記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材。
(12)上記(9)〜(11)のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材からなるタ−ビン翼。
本発明によれば、従来のもの比較して、耐酸化性が優れる、より高い表面Al濃度を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al耐酸化コーティング皮膜が付いた基材ならびにその製造方法を提供することができる。また、熱遮蔽性を備えるセラミック被膜をさらに備える態様の場合、耐酸化性が向上した効果により、熱遮蔽セラミックス皮膜の剥離寿命を延伸することができる。
実施例1における皮膜断面のSEM写真とEPMAによる元素濃度プロファイルである。 比較例1における皮膜断面のSEM写真とEPMAによる元素濃度プロファイルである。
本発明について説明する。
本発明は、Ni基基材の表面にPt被膜を形成し、Pt被膜付き基材を得る工程と、前記Pt被膜に含まれるPtが前記Ni基基材の少なくとも表面に拡散する処理条件において前記Pt被膜付き基材を熱処理して、Pt拡散基材を得る工程と、前記Pt拡散基材の表面にAl被膜を形成して、Al被膜付き基材を得る工程と、前記Al被膜に含まれるAlが前記Pt拡散基材の少なくとも表面部に拡散する処理条件において前記Al被膜付き基材を熱処理して、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材を得る工程とを備える、Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法である。
このような製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
また、本発明は、最表面から15〜50μmまでの部分における結晶構造が主としてPtを含有したγ−Ni+γ’−Ni3Al型であり、さらにその部分におけるAlの平均濃度が15〜30原子%である、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材である。
このような高い表面Al濃度を有するPt含有γ−Ni+γ’−NiAl耐酸化コーティング皮膜が付いた基材を、以下では「本発明の基材」ともいう。
本発明の基材は、本発明の製造方法によって得ることが好ましい。
初めに、本発明の製造方法について説明する。
<Pt被膜形成工程>
本発明の製造方法は、Ni基基材の表面にPt被膜を形成し、Pt被膜付き基材を得る工程を備える。
このような工程を以下では、Pt被膜形成工程ともいう。
Pt被膜形成工程における処理対象であるNi基基材は、次のようなものである。
Niをベ−スとし、AlあるいはTiを添加し、加えてCr、W、Taなどの高融点金属を添加した上で、所定の温度で溶体化処理を行い、さらに時効処理を行って得られるものであり、Niの母相(γ相)中にNi3Al型あるいはNi3Ti型の析出相(γ´相)が分散析出して強化された合金基材である。
また、Ni基基材は、Ni基単結晶合金であることが好ましい。
Ni基単結晶合金は、Niをベ−スとし、AlあるいはTiを添加し、加えてCr、W、Taなどの高融点金属を添加した上で、所定の温度で溶体化処理を行い、さらに時効処理を行って得られるものであり、Niの母相(γ相)中にNi3Al型あるいはNi3Ti型の析出相(γ´相)が分散析出して強化された単結晶型の超合金である。
本発明においてNi基単結晶合金は、次の態様1〜態様5のいずれかの組成を有し、溶体化処理および時効処理を行って得られたものを意味するものとする。
ここで溶体化処理としては、例えば1230〜1290℃から多段のステップにより1300〜1340℃まで昇温した後、1〜10時間保持する処理が挙げられる。
また、時効処理としては、例えば1000〜1150℃で3〜5時間保持する処理が挙げられる。
本発明におけるNi基単結晶合金の態様1の組成は、質量比で、Co:15.0質量%以下、Cr:4.1質量%以上8.0質量%以下、Mo:2.1質量%以上6.5質量%以下、W:3.9質量%以下、Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、Ti:1.0質量%以下、Hf:0.5質量%以下、Nb:3.0質量%以下、Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成である。
本発明におけるNi基単結晶合金の態様2の組成は、質量比で、Co:15.0質量%以下、Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、Mo:2.1質量%以上6.5質量%以下、W:3.9質量%以下、Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、Ti:1.0質量%以下、Hf:0.5質量%以下、Nb:3.0質量%以下、Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成である。
本発明におけるNi基単結晶合金の態様3の組成は、質量比で、Co:4.0質量%以上9.5質量%以下、Cr:4.1質量%以上8.0質量%以下、Mo:2.1質量%以上6.5質量%以下、W:3.9質量%以下、Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、Ti:1.0質量%以下、Hf:0.5質量%以下、Nb:3.0質量%以下、Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成である。
本発明におけるNi基単結晶合金の態様4の組成は、質量比で、Co:4.0質量%以上9.5質量%以下、Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、Mo:2.1質量%以上6.5質量%以下、W:3.9質量%以下、Ta:4.0質量%以上10.0質量%以下、Al:4.5質量%以上6.5質量%以下、Ti:1.0質量%以下、Hf:0.5質量%以下、Nb:3.0質量%以下、Re:3.0質量%以上8.0質量%以下、Ru:0.5質量%以上6.5質量%以下を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成である。
本発明におけるNi基単結晶合金の態様5の組成は、質量比で、Co:5.0質量%以上8.0質量%以下、Cr:5.1質量%以上8.0質量%以下、Mo:2.2質量%以上4.8質量%以下、W:1.9質量%以下、Ta:5.5質量%以上8.0質量%以下、Al:5.4質量%以上6.0質量%以下、Ti:0.5質量%以下、Hf:0.08質量%以上0.5質量%以下、Nb:1.0質量%以下、Re:4.0質量%以上7.5質量%以下、Ru:1.0質量%以上5.0質量%以下を含有し、残部がNi及び不可避的不純物からなる組成である。
Pt被膜形成工程では、前記Ni基基材の表面にPt被膜を形成する。
Pt被膜の形成方法は特に限定されず、Ni基基材の表面にPt被膜を均一な厚さで形成できる方法で形成することが好ましい。具体的には、スパッタリング、蒸着、イオンプレ−ティングなどのPVD、熱、光、プラズマ等を利用したCVD、化成処理、無電解めっき、電解めっき、溶融めっき、陽極酸化、イオンビ−ムスパッタリング、溶射などによってPt被膜をNi基基材の表面に形成することができる。これらの中でも電解めっきによってPt被膜を形成することが好ましい。Pt被膜を所望の厚さに調整しやすいからである。また、後述するように、Al被膜は電解めっきによって形成することが好ましいので、Pt被膜も同様にめっき処理法によって形成することで、設備を簡略化できるからである。
Pt被膜を電解めっき処理によって形成する場合、例えば、Ptの水酸化物塩を水に溶解してpHを10〜13程度、温度を80〜90℃程度に調整したPtめっき浴に、陽極としての白金板、陰極としてNi基基材を浸漬し、陰極電流密度を0.5A/dm2程度に保持することで、Ni基基材の表面にPt被膜を形成することができる。Pt被膜は、陰極電流密度と処理時間を調整することで所望の厚さとすることができる。なお、めっき処理中はめっき浴を常に攪拌することが好ましい。
Pt被膜の厚さは特に限定されないが、3〜15μmであることが好ましく、5〜12μmであることがより好ましく、7〜10μmであることがさらに好ましい。このような厚さとすることで、本発明の製造方法によって得られるPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜における表面部のPtの濃度および結晶形態を最適化することができ、より耐酸化性に優れるものが得られるからである。
なお、Pt被膜の厚さは、断面を光学顕微鏡(例えば500倍の倍率)を用いて観察し、ほぼ均一の厚さとなっていることを確認した上で、Ni基基材の表面にPt被膜を形成する前後の質量変化量から算出して求めた値を意味するものとする。
<Pt拡散工程>
本発明の製造方法は、前記Pt被膜に含まれるPtが前記Ni基基材の少なくとも表面に拡散する処理条件において前記Pt被膜付き基材を熱処理して、Pt拡散基材を得る工程を備える。
このような工程を、以下ではPt拡散工程ともいう。
Pt拡散工程では、前記Pt被膜形成工程によって形成されたPt被膜付き基材を熱処理する。そして、Pt被膜に含まれるPtをNi基基材の少なくとも表面に拡散させる。
ここで熱処理は、PtをNi基材の内部へ拡散させることができる条件で行えばよい。例えば真空中または不活性ガス(He、Arなど)、H2中にて、好ましくは900〜1200℃、より好ましくは1000℃以上1100℃未満でPt被膜付き基材を熱処理する。
前記Pt被膜付き基材にこのような熱処理を施すと、PtがNi基材の最表面から内部へ拡散し、少なくとも10μm程度の深さにまで拡散する。
前記Ni基単結晶合金のうち、1100℃以上の熱処理でクリ−プ強度が低下してしまうNi基単結晶合金を用いて本発明の製造方法を実施する場合、Pt拡散工程における熱処理は、1100℃未満の熱処理であることが好ましい。本発明者は、前記Ni基単結晶合金のうち、1100℃以上の熱処理でクリ−プ強度が低下してしまうNi基単結晶合金を用いて本発明の製造方法を実施する場合、1100℃未満の熱処理を施すと、クリ−プ強度が高位に維持されたPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材等が得られることを見出した。
<Al被膜形成工程>
本発明の製造方法は、前記Pt拡散基材の表面にAl被膜を形成して、Al被膜付き基材を得る工程を備える。
このような工程を、以下ではAl被膜形成工程ともいう。
Al被膜形成工程では、前記Pt拡散基材の表面にAl被膜を形成する。
Al被膜の形成方法は特に限定されず、Pt拡散基材の表面にAl被膜を均一な厚さで形成できる方法で形成することが好ましい。具体的には、スパッタリング、蒸着、イオンプレ−ティングなどのPVD、熱、光、プラズマ等を利用したCVD、化成処理、無電解めっき、電解めっき、溶融めっき、陽極酸化、イオンビ−ムスパッタリング、溶射などによってAl被膜をPt拡散基材の表面に形成することができる。これらの中でも電解めっきによってAl被膜を形成することが好ましい。Al被膜を所望の厚さに調整しやすいからである。また、Al被膜を均一な厚さとしやすいからである。さらに、前述したように、Pt被膜は電解めっき処理によって形成することが好ましいので、Al被膜も同様に電解めっき処理を施して形成することで、設備を簡略化できるからである。
Al被膜を電解めっき処理によって形成する場合、前記Pt拡散基材に、有機溶媒中にて電解アルミニウムめっき処理を施すことが好ましい。
ここで有機溶媒はジメチルスルホンを好ましく用いることができ、その他にも、either1−ethyl−3−methyl imidazolium chllride(EMIC)やn−butyl pyridinium chloride(BPC)を用いることができる。
また、アルミニウム塩は、無水塩化アルミニウムを好ましく用いることができ、その他にも、AlBr3などのハロゲン化物を用いることができる。
また、有機溶媒としてジメチルスルホンを使用する場合、アルミニウム塩の有機溶媒に対する混合比(アルミニウム塩/有機溶媒)は、モル比で、0.05〜3.0であることが好ましく、0.2〜0.8であることがより好ましく、0.4〜0.6であることがより好ましく、0.4程度であることがさらに好ましい。
また、浴温度は、60〜200℃が好ましく、90〜150がより好ましく、100〜120℃がより好ましく、110℃程度であることがさらに好ましい。
また、陰極電流密度は、10〜150mA/cm2が好ましく、20〜80mA/cm2がより好ましく、25〜50mA/cm2がさらに好ましい。
Al被膜は、陰極電流密度と処理時間を調整することで所望の厚さとすることができる。なお、電解めっき処理中はめっき浴を常に攪拌することが好ましい。
このような電解アルミニウムめっき処理によってAl被膜を形成すると、より均一な厚さのAl被膜を形成することができるので好ましい。Al被膜がより均一な厚さであると、Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜が付いた基材(具体的にはタ−ビン翼など)の全表面における耐酸化性を均一にすることができる。仮にAl被膜の厚さが均一でなかった場合、その厚さが厚い部分あるいは薄い部分における耐酸化性が低くなるので好ましくない。
また、電解アルミニウムめっき処理によってAl被膜を形成すると、Al被膜の厚さを所望値に制御し易いという点でも好ましい。
Al被膜の厚さは特に限定されないが、1〜10μmであることが好ましく、2〜7μmであることがより好ましく、2〜5μmであることがさらに好ましい。このような厚さとすることで、本発明の製造方法によって得られるPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al耐酸化コーティング皮膜付き基材における表面のAlの濃度および存在形態を最適化することができ、より耐酸化性に優れるものが得られるからである。具体的には、最表面から約15μmの垂直深さまでの部分における結晶構造が主として、Ptを含有したγ−Ni+γ’−Ni3Al型であって(すなわち、その部分におけるγ−Ni+γ’−Ni3Al型の結晶の存在比率(質量比率)が50質量%以上であって)、さらにその部分におけるAlの平均濃度を好ましくは15〜30原子%とすることができるからである。このような高い表面Al濃度を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al耐酸化コーティング皮膜が付いた基材は、従来のもの比較して、耐酸化性がより優れるので好ましい。なお、ここでいう高い表面Al濃度を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al耐酸化コーティング皮膜付き基材は、後述する本発明の基材と同様のものであってよい。
なお、Al被膜の厚さは、断面を光学顕微鏡(例えば500倍の倍率)を用いて観察し、ほぼ均一の厚さとなっていることを確認した上で、Pt拡散基材の表面にAl被膜を形成する前後の質量変化量から算出して求めた値を意味するものとする。
<Al拡散工程>
本発明の製造方法は、前記Al被膜に含まれるAlが前記Pt拡散基材の少なくとも表面部に拡散する処理条件において前記Al被膜付き基材を熱処理して、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有する従来よりも高い表面Al濃度を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al耐酸化コーティング皮膜が付いた基材を得る工程を備える。
このような工程を、以下ではAl拡散工程ともいう。
Al拡散工程では、前記Al被膜形成工程によって形成されたAl被膜付き基材を熱処理する。そして、Al被膜に含まれるAlを前記Pt拡散基材の少なくとも表面部に拡散させる。
ここで表面部とは、最表面から10μm程度の深さまでの部分をいうものとする。
また、熱処理は、AlをPt拡散基材の内部へ拡散させることができる条件で行えばよい。例えば真空中または不活性ガス(He、Arなど)中にて、好ましくは900〜1200℃、より好ましくは1000℃以上1100℃未満、さらに好ましくは1025〜1085℃でAl被膜付き基材を熱処理する。
前記Al被膜付き基材にこのような熱処理を施すと、PtおよびAlが、前記Pt拡散基材の最表面から内部へ拡散し、少なくとも10μm程度の深さにまで拡散する。通常、20〜40μm程度の深さにまで拡散する。そして、PtおよびAlが拡散した拡散層が形成される。この拡散層は耐酸化性の向上に寄与する。
前記Ni基単結晶合金を用いて本発明の製造方法を実施する場合、Al拡散工程における熱処理は、1100℃未満の熱処理であることが好ましい。本発明者は、前記Ni基単結晶合金を用いて本発明の製造方法を実施する場合、1100℃未満の熱処理を施すと、クリ−プ強度が高位に維持されたPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜が付いた基材等が得られることを見出した。
<セラミック被膜形成工程>
本発明の製造方法は、さらに、表面に熱遮蔽性を備えるセラミック被膜を形成する工程を備えることが好ましい。
このような工程を、以下ではセラミック被膜形成工程ともいう。
熱遮蔽性を備えるセラミック被膜は特に限定されず、タービン翼の熱遮蔽コーティング(TBC)として従来用いられている公知のものを用いることができる。例えば、6〜8質量%でY23を含む部分安定化ZrO2からなるセラミックコーティングや、さらに、ここへLa23を1~3重量%程度微量添加した部分安定化ZrO2からなるセラミックコーティングが挙げられる。
このようなセラミック被膜の形成方法も特に限定されず、例えば溶射やPVDなどで形成することができる。
本発明の製造方法がセラミック被膜形成工程をさらに備えると、本発明の製造方法によって得られるPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材は、さらに、熱遮蔽性を備えるセラミック被膜を有するものとなるので好ましい。
本発明の製造方法によって得られるPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の表面に、熱遮蔽性を備えるセラミック被膜を形成すると、その被膜は剥がれ難いことを本発明者は見出した。剥がれ難いため、このような被膜を備えるPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜は、さらに熱遮蔽性が高くなることを、本発明者は見出した。
上記のようなPt被膜形成工程、Pt拡散工程、Al被膜形成工程およびAl拡散工程を備える本発明の製造方法によって、本発明の基材を製造することができる。
次に本発明の基材について説明する。
本発明の基材は、最表面から15〜50μmまでの部分における結晶構造が主としてPtを含有したγ−Ni+γ’−Ni3Al型であり、さらにその部分におけるAlの平均濃度が15〜30原子%である、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材である。
このような本発明の基材は、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するものであり、従来のもの比較して、耐酸化性がより優れるので好ましい。
なお、最表面から、15〜50μmまでの部分における結晶構造がγ−Ni+γ’−Ni3Al型の結晶の存在比率は、試料断面を走査型電子顕微鏡で観察した際の組成像のコントラストおよび、その箇所におけるNi、Alの濃度から求めることができ、γ−Ni相とγ’−Ni3Al相の面積率の値を求めたもの意味する。
ここで、γ−Ni+γ’−Ni3Alの結晶とは、Ni、Ni3AlにおけるNiやAlの少なくとも一部が他の原子と置換したものであり、主なものとしてNiの一部がPtを置換した(Ni、Pt)3Alが挙げられる。
なお、最表面から垂直深さで15〜50μmまでの部分におけるAlの平均濃度は、電子プローブマイクロアナライザで測定した値を意味するものとする。
本発明の基材は、さらに、熱遮蔽性を備える前記セラミック被膜を有するものであることが好ましい。
本発明の基材の表面に形成された熱遮蔽性を備えるセラミック被膜は、剥がれ難いことを本発明者は見出した。剥がれ難いため、このような被膜を備える本発明の基材は、さらに熱遮蔽性が高くなることを、本発明者は見出した。
熱遮蔽性を備えるセラミック被膜を備える本発明の基材は、前述の本発明の製造方法の好ましい態様によって製造することができる。セラミック被膜の種類等は、前述と同様であってよく、例えば、6〜8質量%でY23を含む部分安定化ZrO2であってよい。
本発明の基材および/または本発明の製造方法によって得られるPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材は、航空機エンジンや産業用ガスタ−ビンなどに使用される(高圧)タ−ビン翼(静・動翼)に好ましく用いることができる。また、燃焼器等にも好ましく用いることができる。
<実施例1>
Ptめっき液を用いためっき浴を用意し、ここへ陽極としての白金板と、陰極としてのニッケル基単結晶超合金(CMSX−4、Ni−9.6Co−6.4Cr−0.6Mo−6.4W−5.6Al−6.5Ta−0.1Hf−3.0Re、質量%)とを浸漬させた。そして、Ptめっき液のpHをアンモニアを用いて10に調整し、Ptめっき液の温度を85℃に調整した後、陰極電流密度を0.5A/dm2に保持し、めっき液をマグネットスラ−タ−で常に攪拌して、ニッケル基単結晶超合金をめっき処理した。そして、40分後に、厚さが7μmのPt被膜が付いたニッケル基単結晶超合金(Pt被膜付き基材)を得た。なお、Pt被膜の厚さは、Pt被膜形成前後の質量変化量からの算出、および光学顕微鏡を用いた断面観察(倍率:500倍)によって求めた。
次に、Pt被膜付き基材を真空炉へ入れ、真空炉内を真空にした後、1050℃で1hの熱処理を施して、Pt拡散基材を得た。
次に、Alめっき液を用いためっき浴を用意し、ここへ上記のPt拡散基材を陰極として浸漬させた。また、陽極としてアルミニウム板を浸漬させた。
ここでAlめっき液は、ジメチルスルホン酸と無水塩化アルミニウムとを5:2(モル比)で混合したものである。
そして、Alめっき液の温度を110℃に調整した後、陰極電流密度を40mA/cm2に保持し、めっき液をマグネットスタ−ラ−で常に攪拌して、Pt拡散基材に電解アルミニウムめっき処理を施した。そして、3分後に、厚さが3μmのAl被膜が付いたAl被膜付き基材を得た。なお、Al被膜の厚さは、Al被膜形成前後の質量変化量からの算出、および光学顕微鏡を用いた断面観察(倍率:500倍)によって求めた。
次に、Al被膜付き基材を真空炉へ入れ、真空炉内を真空にした後、1050℃で1hの熱処理を施して、PtおよびAlが少なくとも表面に拡散したNi基基材(Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材)を得た。
そして、得られたものの断面写真を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得た。また、最表面から数十μmまでのNi、Pt、Al、Oの各元素の濃度プロファイルを電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて得た。図1に示す。
<比較例1>
実施例1と同じめっき浴を用意し、実施例1と同じニッケル基単結晶超合金を陰極として用いてニッケル基単結晶超合金をめっき処理した。めっき処理における処理条件等も実施例1と同じとした。
次に、Pt被膜付き基材を真空炉へ入れ、真空炉内を真空にした後、1050℃で1hの熱処理を施して、Pt拡散基材を得た。
そして、得られたものの断面写真を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得た。また、最表面から数十μmまでのNi、Pt、Al、Oの各元素の濃度プロファイルを電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて得た。図2に示す。
図1および図2を比較すると、実施例1を示す図1の場合、最表面のAl濃度が高くなっていることがわかる。

Claims (6)

  1. Ni基基材の表面にPtからなるPt被膜を形成し、Pt被膜付き基材を得る工程と、
    前記Pt被膜に含まれるPtが前記Ni基基材の少なくとも表面に拡散する処理条件において前記Pt被膜付き基材を熱処理して、Pt拡散基材を得る工程と、
    前記Pt拡散基材の表面にAlからなるAl被膜を形成して、Al被膜付き基材を得る工程と、
    前記Al被膜に含まれるAlが前記Pt拡散基材の少なくとも表面部に拡散する処理条件において前記Al被膜付き基材を熱処理して、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材を得る工程と
    を備え
    前記Pt被膜及び前記Al被膜がそれぞれ電解めっき処理により形成され、
    前記Ni基基材の表面に形成される前記Pt被膜の厚さが3〜15μmであり、
    前記Pt拡散基材の表面に形成される前記Al被膜の厚さが1〜10μmであり、
    最表面から15〜50μmまでの部分における結晶構造が主としてPtを含有したγ−Ni+γ’−Ni 3 Al型であり、さらにその部分におけるAlの平均濃度が15〜30原子%である、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni 3 Al皮膜付き基材が得られる、Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
  2. 前記Pt被膜付き基材を1100℃未満の温度で熱処理して、Pt拡散基材を得る工程である、請求項に記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
  3. 前記Al被膜付き基材を1100℃未満の温度で熱処理して、前記Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜を得る工程である、請求項1または2に記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
  4. 前記Ni基基材が、Ni基単結晶超合金からなる、請求項1〜3のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
  5. 有機溶媒中にて電解アルミニウムめっき処理を施すことで、前記Pt拡散基材の表面にAl被膜を形成して、Al被膜付き基材を得る工程である、請求項1〜4のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
  6. さらに、表面に熱遮蔽性を備えるセラミック被膜を形成する工程を備える、請求項1〜5のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
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