JP5821572B2 - 高い表面Al濃度を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al耐酸化コーティング皮膜が付いたNi基基材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al’耐酸化コーティングは、β−NiAl拡散コーティングおよびPtを含むβ−Ni(Pt)Al拡散コーティング比べ、ランプリングと呼ばれる繰り返し熱サイクルを受けた際にコーティング表面に発生する波打ち現象の割合が小さいため、耐酸化性が良いとされる。
さらに、熱遮蔽性を備えるセラミック被膜をさらに備える態様の場合で、Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al’耐酸化コーティングは、繰り返し熱サイクルを受けた際のランプリングの割合が小さいため、熱遮蔽性を備えるセラミックス皮膜の剥離寿命を延伸することができる。これは、耐酸化コーティング熱遮蔽セラミックス皮膜間の機械的変形が少ないためである。これにより、長時間にわたって耐酸化性、熱遮蔽性を保持することができる。
本発明は、従来のもの比較して表面のAl濃度を高めることによって、耐酸化性がより優れるPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜が付いたNi基基材およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、熱遮蔽性を備えるセラミック被膜をさらに備える態様の場合は、熱遮蔽性を備えるセラミックス皮膜の剥離寿命を延伸することができる。
本発明は以下の(1)〜(12)である。
(1)Ni基基材の表面にPt被膜を形成し、Pt被膜付き基材を得る工程と、
前記Pt被膜に含まれるPtが前記Ni基基材の少なくとも表面に拡散する処理条件において前記Pt被膜付き基材を熱処理して、Pt拡散基材を得る工程と、
前記Pt拡散基材の表面にAl被膜を形成して、Al被膜付き基材を得る工程と、
前記Al被膜に含まれるAlが前記Pt拡散基材の少なくとも表面部に拡散する処理条件において前記Al被膜付き基材を熱処理して、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材を得る工程と
を備える、Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(2)前記Ni基基材の表面に、厚さが3〜15μmの前記Pt被膜を形成し、Pt被膜付き基材を得る工程である、上記(1)に記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(3)前記Pt拡散基材の表面に、厚さが1〜10μmの前記Al被膜を形成して、Al被膜付き基材を得る工程である、上記(1)または(2)に記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(4)前記Pt被膜付き基材を1100℃未満の温度で熱処理して、Pt拡散基材を得る工程である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(5)前記Al被膜付き基材を1100℃未満の温度で熱処理して、前記Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜を得る工程である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(6)前記Ni基基材が、Ni基単結晶超合金からなる、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(7)有機溶媒中にて電解アルミニウムめっき処理を施すことで、前記Pt拡散基材の表面にAl被膜を形成して、Al被膜付き基材を得る工程である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(8)さらに、表面に熱遮蔽性を備えるセラミック被膜を形成する工程を備える、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法によって得られる、Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材。
(10)最表面から15〜50μmまでの部分における結晶構造が主としてPtを含有したγ−Ni+γ’−Ni3Al型であり、さらにその部分におけるAlの平均濃度が15〜30原子%である、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材。
(11)さらに、熱遮蔽性を備えるセラミック被膜を有する、上記(10)に記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材。
(12)上記(9)〜(11)のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材からなるタ−ビン翼。
本発明は、Ni基基材の表面にPt被膜を形成し、Pt被膜付き基材を得る工程と、前記Pt被膜に含まれるPtが前記Ni基基材の少なくとも表面に拡散する処理条件において前記Pt被膜付き基材を熱処理して、Pt拡散基材を得る工程と、前記Pt拡散基材の表面にAl被膜を形成して、Al被膜付き基材を得る工程と、前記Al被膜に含まれるAlが前記Pt拡散基材の少なくとも表面部に拡散する処理条件において前記Al被膜付き基材を熱処理して、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材を得る工程とを備える、Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法である。
このような製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
このような高い表面Al濃度を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al耐酸化コーティング皮膜が付いた基材を、以下では「本発明の基材」ともいう。
本発明の製造方法は、Ni基基材の表面にPt被膜を形成し、Pt被膜付き基材を得る工程を備える。
このような工程を以下では、Pt被膜形成工程ともいう。
Niをベ−スとし、AlあるいはTiを添加し、加えてCr、W、Taなどの高融点金属を添加した上で、所定の温度で溶体化処理を行い、さらに時効処理を行って得られるものであり、Niの母相(γ相)中にNi3Al型あるいはNi3Ti型の析出相(γ´相)が分散析出して強化された合金基材である。
Ni基単結晶合金は、Niをベ−スとし、AlあるいはTiを添加し、加えてCr、W、Taなどの高融点金属を添加した上で、所定の温度で溶体化処理を行い、さらに時効処理を行って得られるものであり、Niの母相(γ相)中にNi3Al型あるいはNi3Ti型の析出相(γ´相)が分散析出して強化された単結晶型の超合金である。
ここで溶体化処理としては、例えば1230〜1290℃から多段のステップにより1300〜1340℃まで昇温した後、1〜10時間保持する処理が挙げられる。
また、時効処理としては、例えば1000〜1150℃で3〜5時間保持する処理が挙げられる。
Pt被膜の形成方法は特に限定されず、Ni基基材の表面にPt被膜を均一な厚さで形成できる方法で形成することが好ましい。具体的には、スパッタリング、蒸着、イオンプレ−ティングなどのPVD、熱、光、プラズマ等を利用したCVD、化成処理、無電解めっき、電解めっき、溶融めっき、陽極酸化、イオンビ−ムスパッタリング、溶射などによってPt被膜をNi基基材の表面に形成することができる。これらの中でも電解めっきによってPt被膜を形成することが好ましい。Pt被膜を所望の厚さに調整しやすいからである。また、後述するように、Al被膜は電解めっきによって形成することが好ましいので、Pt被膜も同様にめっき処理法によって形成することで、設備を簡略化できるからである。
本発明の製造方法は、前記Pt被膜に含まれるPtが前記Ni基基材の少なくとも表面に拡散する処理条件において前記Pt被膜付き基材を熱処理して、Pt拡散基材を得る工程を備える。
このような工程を、以下ではPt拡散工程ともいう。
ここで熱処理は、PtをNi基材の内部へ拡散させることができる条件で行えばよい。例えば真空中または不活性ガス(He、Arなど)、H2中にて、好ましくは900〜1200℃、より好ましくは1000℃以上1100℃未満でPt被膜付き基材を熱処理する。
本発明の製造方法は、前記Pt拡散基材の表面にAl被膜を形成して、Al被膜付き基材を得る工程を備える。
このような工程を、以下ではAl被膜形成工程ともいう。
Al被膜の形成方法は特に限定されず、Pt拡散基材の表面にAl被膜を均一な厚さで形成できる方法で形成することが好ましい。具体的には、スパッタリング、蒸着、イオンプレ−ティングなどのPVD、熱、光、プラズマ等を利用したCVD、化成処理、無電解めっき、電解めっき、溶融めっき、陽極酸化、イオンビ−ムスパッタリング、溶射などによってAl被膜をPt拡散基材の表面に形成することができる。これらの中でも電解めっきによってAl被膜を形成することが好ましい。Al被膜を所望の厚さに調整しやすいからである。また、Al被膜を均一な厚さとしやすいからである。さらに、前述したように、Pt被膜は電解めっき処理によって形成することが好ましいので、Al被膜も同様に電解めっき処理を施して形成することで、設備を簡略化できるからである。
ここで有機溶媒はジメチルスルホンを好ましく用いることができ、その他にも、either1−ethyl−3−methyl imidazolium chllride(EMIC)やn−butyl pyridinium chloride(BPC)を用いることができる。
また、アルミニウム塩は、無水塩化アルミニウムを好ましく用いることができ、その他にも、AlBr3などのハロゲン化物を用いることができる。
また、有機溶媒としてジメチルスルホンを使用する場合、アルミニウム塩の有機溶媒に対する混合比(アルミニウム塩/有機溶媒)は、モル比で、0.05〜3.0であることが好ましく、0.2〜0.8であることがより好ましく、0.4〜0.6であることがより好ましく、0.4程度であることがさらに好ましい。
また、浴温度は、60〜200℃が好ましく、90〜150がより好ましく、100〜120℃がより好ましく、110℃程度であることがさらに好ましい。
また、陰極電流密度は、10〜150mA/cm2が好ましく、20〜80mA/cm2がより好ましく、25〜50mA/cm2がさらに好ましい。
また、電解アルミニウムめっき処理によってAl被膜を形成すると、Al被膜の厚さを所望値に制御し易いという点でも好ましい。
本発明の製造方法は、前記Al被膜に含まれるAlが前記Pt拡散基材の少なくとも表面部に拡散する処理条件において前記Al被膜付き基材を熱処理して、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有する従来よりも高い表面Al濃度を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al耐酸化コーティング皮膜が付いた基材を得る工程を備える。
このような工程を、以下ではAl拡散工程ともいう。
ここで表面部とは、最表面から10μm程度の深さまでの部分をいうものとする。
本発明の製造方法は、さらに、表面に熱遮蔽性を備えるセラミック被膜を形成する工程を備えることが好ましい。
このような工程を、以下ではセラミック被膜形成工程ともいう。
本発明の製造方法によって得られるPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の表面に、熱遮蔽性を備えるセラミック被膜を形成すると、その被膜は剥がれ難いことを本発明者は見出した。剥がれ難いため、このような被膜を備えるPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜は、さらに熱遮蔽性が高くなることを、本発明者は見出した。
本発明の基材は、最表面から15〜50μmまでの部分における結晶構造が主としてPtを含有したγ−Ni+γ’−Ni3Al型であり、さらにその部分におけるAlの平均濃度が15〜30原子%である、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材である。
このような本発明の基材は、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するものであり、従来のもの比較して、耐酸化性がより優れるので好ましい。
なお、最表面から、15〜50μmまでの部分における結晶構造がγ−Ni+γ’−Ni3Al型の結晶の存在比率は、試料断面を走査型電子顕微鏡で観察した際の組成像のコントラストおよび、その箇所におけるNi、Alの濃度から求めることができ、γ−Ni相とγ’−Ni3Al相の面積率の値を求めたもの意味する。
ここで、γ−Ni+γ’−Ni3Alの結晶とは、Ni、Ni3AlにおけるNiやAlの少なくとも一部が他の原子と置換したものであり、主なものとしてNiの一部がPtを置換した(Ni、Pt)3Alが挙げられる。
なお、最表面から垂直深さで15〜50μmまでの部分におけるAlの平均濃度は、電子プローブマイクロアナライザで測定した値を意味するものとする。
本発明の基材の表面に形成された熱遮蔽性を備えるセラミック被膜は、剥がれ難いことを本発明者は見出した。剥がれ難いため、このような被膜を備える本発明の基材は、さらに熱遮蔽性が高くなることを、本発明者は見出した。
Ptめっき液を用いためっき浴を用意し、ここへ陽極としての白金板と、陰極としてのニッケル基単結晶超合金(CMSX−4、Ni−9.6Co−6.4Cr−0.6Mo−6.4W−5.6Al−6.5Ta−0.1Hf−3.0Re、質量%)とを浸漬させた。そして、Ptめっき液のpHをアンモニアを用いて10に調整し、Ptめっき液の温度を85℃に調整した後、陰極電流密度を0.5A/dm2に保持し、めっき液をマグネットスラ−タ−で常に攪拌して、ニッケル基単結晶超合金をめっき処理した。そして、40分後に、厚さが7μmのPt被膜が付いたニッケル基単結晶超合金(Pt被膜付き基材)を得た。なお、Pt被膜の厚さは、Pt被膜形成前後の質量変化量からの算出、および光学顕微鏡を用いた断面観察(倍率:500倍)によって求めた。
ここでAlめっき液は、ジメチルスルホン酸と無水塩化アルミニウムとを5:2(モル比)で混合したものである。
そして、Alめっき液の温度を110℃に調整した後、陰極電流密度を40mA/cm2に保持し、めっき液をマグネットスタ−ラ−で常に攪拌して、Pt拡散基材に電解アルミニウムめっき処理を施した。そして、3分後に、厚さが3μmのAl被膜が付いたAl被膜付き基材を得た。なお、Al被膜の厚さは、Al被膜形成前後の質量変化量からの算出、および光学顕微鏡を用いた断面観察(倍率:500倍)によって求めた。
そして、得られたものの断面写真を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得た。また、最表面から数十μmまでのNi、Pt、Al、Oの各元素の濃度プロファイルを電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて得た。図1に示す。
実施例1と同じめっき浴を用意し、実施例1と同じニッケル基単結晶超合金を陰極として用いてニッケル基単結晶超合金をめっき処理した。めっき処理における処理条件等も実施例1と同じとした。
次に、Pt被膜付き基材を真空炉へ入れ、真空炉内を真空にした後、1050℃で1hの熱処理を施して、Pt拡散基材を得た。
そして、得られたものの断面写真を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得た。また、最表面から数十μmまでのNi、Pt、Al、Oの各元素の濃度プロファイルを電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて得た。図2に示す。
Claims (6)
- Ni基基材の表面にPtからなるPt被膜を形成し、Pt被膜付き基材を得る工程と、
前記Pt被膜に含まれるPtが前記Ni基基材の少なくとも表面に拡散する処理条件において前記Pt被膜付き基材を熱処理して、Pt拡散基材を得る工程と、
前記Pt拡散基材の表面にAlからなるAl被膜を形成して、Al被膜付き基材を得る工程と、
前記Al被膜に含まれるAlが前記Pt拡散基材の少なくとも表面部に拡散する処理条件において前記Al被膜付き基材を熱処理して、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材を得る工程と
を備え、
前記Pt被膜及び前記Al被膜がそれぞれ電解めっき処理により形成され、
前記Ni基基材の表面に形成される前記Pt被膜の厚さが3〜15μmであり、
前記Pt拡散基材の表面に形成される前記Al被膜の厚さが1〜10μmであり、
最表面から15〜50μmまでの部分における結晶構造が主としてPtを含有したγ−Ni+γ’−Ni 3 Al型であり、さらにその部分におけるAlの平均濃度が15〜30原子%である、PtおよびAlが拡散してなる拡散層を有するPt含有γ−Ni+γ’−Ni 3 Al皮膜付き基材が得られる、Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。 - 前記Pt被膜付き基材を1100℃未満の温度で熱処理して、Pt拡散基材を得る工程である、請求項1に記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
- 前記Al被膜付き基材を1100℃未満の温度で熱処理して、前記Pt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜を得る工程である、請求項1または2に記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
- 前記Ni基基材が、Ni基単結晶超合金からなる、請求項1〜3のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
- 有機溶媒中にて電解アルミニウムめっき処理を施すことで、前記Pt拡散基材の表面にAl被膜を形成して、Al被膜付き基材を得る工程である、請求項1〜4のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
- さらに、表面に熱遮蔽性を備えるセラミック被膜を形成する工程を備える、請求項1〜5のいずれかに記載のPt含有γ−Ni+γ’−Ni3Al皮膜付き基材の製造方法。
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