従来、金融機関が管理していた顧客の情報は、顧客が口座開設時に申告した氏名、年齢、住所等の非常に基本的な個人情報(以下「顧客基本情報」とも呼ぶ。)とトランザクションデータ程度であった。顧客基本情報は金融取引にあたり顧客が金融機関に開示した情報(いわゆる個人情報を含む)と言え、トランザクションデータは顧客が行った金融取引の内容・実績を示すデータと言えるが、いずれも情報項目が非常に限られている。そのため、これらの情報を分析しても、現実の顧客像を精度よく推定することは困難であり、金融機関のビジネスに有益な情報を得るには不十分であった。
例えば、ある金融機関の顧客は、自機関だけでなく他の金融機関にも口座を開設し、用途に応じて口座を使い分けていることも多い。そのため、自機関における顧客の預金残高や入出金の履歴を分析しても、そもそも分析対象とするデータが顧客の一側面を表すものに過ぎず、顧客の一側面を示す分析結果が得られるに過ぎなかった。金融機関が銀行の場合、例えば、自行の預金残高が100万円でも、他行に1億円を預けている顧客もいる。このような場合、自行の顧客情報をいくら分析しても、この顧客が富裕層であることは分からず、ビジネスチャンスを逃してしまうことがあった。
そこで実施の形態の分析装置は、金融機関が従来より保持していた顧客情報では捉えられない顧客像を、外部データを活用した分析処理により精度よく捉える。具体的には、金融機関の複数の顧客のそれぞれが利用した窓口をトランザクションデータにより識別する。そして、ある顧客が特定の窓口を利用した回数が多いほど、その特定の窓口と強く結びつけられた顧客属性を当該顧客の属性に強く反映させることにより、各顧客の属性を推定し、営業支援情報として記録する。
以下、実施の形態では金融機関を銀行とするが、顧客が金融取引を実施する窓口を設置する他の種類の金融機関においても実施の形態の分析技術を適用可能である。他の種類の金融機関は、証券会社や生命保険会社、クレジットカード会社を含む。また実施の形態では、顧客からの金融取引の要求を直接的に受け付ける窓口をATM(Automated Teller Machine、現金自動預け払い機)とするが、ATMのような無人窓口に限らず、店舗や営業所における有人窓口であってもよい。
図1は、実施の形態の営業支援システムの構成を示す。営業支援システム10は、ある1つの銀行の情報系システムであり、具体的には、自行に口座を開設している顧客に対する金融商品や金融サービスの販売活動を支援する情報処理サービスを提供する。営業支援システム10は、分析装置12、営業担当者端末14、システム管理者端末16を備える。これらの各装置は、LAN・WAN・インターネット等を含む通信網18を介して接続される。
分析装置12、営業担当者端末14、システム管理者端末16はいずれも情報処理装置である。例えば、分析装置12は、ウェブアプリケーションサーバであってもよい。また営業担当者端末14とシステム管理者端末16は、一般的なPCやタブレット端末であってもよい。
分析装置12は、銀行が従来より保持する内部データである顧客基本情報とトランザクションデータに加え、これまでは分析の対象とされてこなかった外部データであるATM近隣の施設情報や、地域特性情報を分析として営業支援情報を生成する。営業担当者端末14は、銀行のリテール営業の担当者により操作される。システム管理者端末16は、分析装置12の管理者であり、言い換えれば、分析装置12による情報分析処理の環境を構築する担当者により操作される。
図2は、図1の分析装置12の機能構成を示すブロック図である。分析装置12は、制御部20、記憶部22、通信部24を備える。制御部20は、各種データ処理を実行し、特に情報分析処理を実行する。記憶部22は、制御部20により参照・更新されるデータを記憶する記憶領域を提供する。通信部24は、所定の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。制御部20は、通信部24を介して外部装置とデータを送受する。
本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
例えば、制御部20内の各機能ブロックに対応するプログラムモジュールを含む情報分析アプリケーションが、所定の記録媒体に格納され、分析装置12のストレージへインストールされてもよい。ユーザが、分析装置12において情報分析アプリケーションを起動すると、分析装置12のCPUが、これらのプログラムモジュールをメインメモリへ読み出して実行することにより各機能ブロックの機能が発揮されてよい。また、記憶部22内の各機能ブロックの機能は、メインメモリやストレージがデータを記憶することで実現されてもよい。また図2の各機能は、ウェブアプリケーションサーバやデータベースサーバ等の複数の装置が通信網を介して連携することにより分散環境で実行されてもよい。
記憶部22は、顧客基本情報保持部30、地域特性保持部32、ATM位置情報保持部34、施設情報保持部36、ATM顧客属性保持部38、顧客取引情報保持部40、営業支援情報保持部42、モデル保持部44を含む。
顧客基本情報保持部30は顧客基本情報を保持する。図5に関連して後述するように、顧客基本情報は、顧客の氏名、性別、年齢、住所、預金残高を含む。顧客基本情報は、顧客の金融取引のために最低限金融機関が管理すべき顧客の情報を含む。また、顧客が金融取引を行うために顧客が金融機関へ開示した(申告した)情報を含む。また、顧客による金融取引の結果を示す情報を含む。
地域特性保持部32は、地理的に区画された複数の地域、言い換えれば、地図上の複数の地域のそれぞれについて、各地域に居住する住民に関する属性を示す情報を地域特性情報として保持する。地域特性情報は、各地域の平均的な住民像を示す情報と言え、図5に関連して後述するように、預貯金額、住宅ローン残高、借家比率等を含む。地域特性保持部32は、日本全国約18万個の町丁目(例えばA県B市C町D丁目)を単位とした複数の地域それぞれの地域特性情報を保持する。
地域特性情報が示す住民属性は、各地域についての人口統計学的な属性を示すデモグラフィック属性と、各地域の住民が有する価値観やライフスタイルといった人間心理にかかわる属性を示すサイコグラフィック属性を含む。デモグラフィック属性の例としては、「30〜40代の比較的小さな子供がいる核家族」、「収入が平均よりもやや高く、大学卒以上の人が多い」、「子供が2人」等がある。一方で、サイコグラフィック属性の例としては、「女性20代について、ブランド・安全性・経済性を非常に重視するが、環境指向はほとんどない」、「女性30代について、ブランドをやや重視し、環境指向である」、「リスク寛容度が比較的高い」等がある。つまり地域特性情報が示す住民属性は、各地域に居住する消費者像を示す情報であり、消費者の年齢、所得水準、職業、学歴、家族構成、生活環境、趣向、考え方等を含む。
具体的には、地域特性保持部32は、各地域の地域特性情報として、各地域の住民属性を示す指標値を保持する。この指標値は、複数種類の住民属性のそれぞれについて所定の評価基準と適合する度合いを示す指標値であり、所定の評価関数により算出されたものである。指標値は、例えば平均年収、平均世帯人数、世帯あたりの平均子供数、30歳代割合、40歳代割合等を含む。言い換えれば、地域特性保持部32が保持する地域特性情報には、コンピュータによる計算処理のために、定性的な住民属性を複数種類の数値に変換したものが記録されると言える。もともと定量的な住民属性であれば、変換せずそのまま地域特性保持部32に記録されてよい。
また各地域の地域特性情報は、(1)国勢調査・事業所統計等の一般に公開された各種の統計情報や、民間企業が提供している世帯平均預貯金、住宅ローン残高等のデータを含む。また、(2)情報分析アプリケーションの開発者による独自の推計情報、(3)各地域の住民に対して実施したアンケートの結果情報を含む。(1)の統計情報は、年代の比率、性別の比率、職業の比率、学歴比率、持ち家比率、平均子供人数等を含む。(2)の推計情報は、平均所得、平均資産、平均地価、所得水準等を含む。(3)のアンケートの結果情報は、ライフスタイル、価値観、消費趣向等の回答結果を含み、安全志向度、火災保険潜在需要、地震保険潜在需要等を含む。地域特性情報の各項目、特に定性的な情報を指標値化した項目は、情報分析の過程において、分析装置12の管理者の判断で値を調整してもよい。
ATM位置情報保持部34は、金融機関が設置した複数のATMそれぞれの設置位置を示す情報を保持する。ATM位置情報保持部34は、各ATMが設置された住所(住居表示や地番等)を保持することとするが、変形例として緯度経度の情報を保持してもよい。
施設情報保持部36は、複数の施設それぞれの位置と、その施設を訪問する人の属性情報(以下「訪問者属性」とも呼ぶ。)とを対応付けて保持する。施設情報保持部36が情報を保持する対象の施設は、訪問者に共通する特徴がある施設であり、言い換えれば、特徴的な属性を有する人が訪れる施設であり、ATMに属性を付与するものとして予め定められた施設である。施設情報保持部36は、施設位置として、住所(住居表示や地番等)を保持することとするが、変形例として緯度経度の情報を保持してもよい。
図3は、施設と訪問者属性の対応関係を示す。訪問者属性は、施設を高頻度で訪れる人が高確率で備えることが想定される属性であると言える。また訪問者属性は、訪問者の人間像を表す情報であり、趣味や嗜好、性格、行動特性、社会特性、社会的地位、職業等を含む。
図2に戻り、ATM顧客属性保持部38は、複数のATMのそれぞれと、ATMを利用する顧客像とを対応付けた情報(以下「ATM顧客属性情報」とも呼ぶ。)を保持する。図4はATM顧客属性情報を示す。ATM顧客属性情報は、ATMの識別情報であるATMコードと、ATMを利用する顧客像を示す複数種類の顧客属性指標値とが対応付けられたデータである。ATM顧客属性情報は、複数のATMのそれぞれを利用する顧客像を示す情報であり、各ATMと、複数種類の顧客属性との結びつきの強弱を示す情報と言える。実施の形態では、ATMとの結びつきが強い顧客属性ほど大きな指標値を付与する。実施の形態では、後述のATM顧客属性生成部50がATM顧客属性情報を自律的に生成することとするが、分析装置12の管理者が各ATMと各施設との距離に応じてATM顧客属性情報を決定し、ATM顧客属性保持部38に記録してもよい。
図2に戻り、顧客取引情報保持部40は、複数の顧客のそれぞれが実施した金融取引の内容を示すトランザクションデータである顧客取引情報を保持する。顧客取引情報は、各顧客がATMを使用して金融取引を行った事実を示す情報を言える。顧客取引情報は、顧客の識別情報である顧客コードと、預金の預け入れや引き出し、振込等の金融取引の種類や取引金額を含む。また、金融取引のために顧客が利用したATMコードと、利用日時・曜日を含む。顧客取引情報は1回の金融取引につき1レコードが記録される。
営業支援情報保持部42は、金融機関の営業担当者の業務を支援するための情報である営業支援情報を保持する。図5は営業支援情報を示す。営業支援情報は、顧客コードをキーとし、顧客基本情報と、後述の顧客属性推定部52により推定された顧客属性(「推定顧客属性」とも呼ぶ。)と、顧客が居住する地域の住民特性(「顧客住所の地域特性」とも呼ぶ。)を対応付けた情報である。営業支援情報の生成方法は、営業支援情報生成部54に関連して後述する。
図2に戻り、モデル保持部44は、後述のモデル生成部62により生成された数理モデルのデータを保持する。実施の形態では、分析対象とされた1つ以上の商品やサービスそれぞれに対する顧客の購買確度を求めるための回帰式のデータを保持する。例えば、説明変数と被説明変数の項目を示す情報と、各説明変数に係る回帰係数の値を保持する。
制御部20は、ATM顧客属性生成部50、顧客属性推定部52、営業支援情報生成部54、営業支援情報提供部56、検索条件設定画面提供部58、検索部60、モデル生成部62、購買確度算出部66を含む。
ATM顧客属性生成部50は、ATM位置情報保持部34に保持されたATM位置情報と、施設情報保持部36に保持された施設情報を参照して、ATM顧客属性を生成する。ATM顧客属性生成部50は、複数のATMのそれぞれについて生成したATM顧客属性をATM顧客属性保持部38へ格納する。
具体的には、ATM顧客属性生成部50は、複数のATMのそれぞれについて設置位置の住所を所定の緯度経度変換アプリケーションへ入力し、各ATMの設置位置を示す緯度経度の値を取得する。また、複数の施設のそれぞれについて施設住所を所定の緯度経度変換アプリケーションへ入力し、各施設の所在地を示す緯度経度の値を取得する。ここでは1つのATM(「特定ATM」と呼ぶ。)のATM顧客属性の生成方法を説明する。
ATM顧客属性生成部50は、地図上に特定ATMの設置位置と各施設の所在地をマッピングし、特定ATMからの距離が所定の閾値内の施設を近傍施設として識別する。この閾値は、典型的には施設への訪問者が特定ATMを利用することが想定される上限の距離であり、分析装置12の管理者の知見や経験、実験等により適宜決定されればよい。ATM顧客属性生成部50は、ある近傍施設と特定ATMとの距離が短いほど、施設情報保持部36においてその近傍施設に対応付けられた訪問者属性を特定ATMに強く結びつける。言い換えれば、特定ATMと近傍施設が近いほど、近傍施設の訪問者属性を特定ATMのATM顧客属性に強く反映させる。具体的には、図4の指数値(近傍施設がパチンコ店であればギャンブル指数値)を大きく設定する。
例えば、近傍施設の判定閾値が2キロメートルの場合、特定ATMと近傍施設の距離が200メートル以下であれば、近傍施設の訪問者属性に対する指数値を満点の100とし、距離が200メートルより大きく400メートル以下であれば指標値を90としてもよい。同様に、距離が400メートルより大きく600メートル以下であれば指標値を80としてもよい。特定ATM(ここでは図4のM006)について、パチンコ店との距離が900メートルであり、上場企業のオフィス所在地からの距離が1300メートルである場合、ギャンブル指数を60に設定し、上場企業指数を40に設定してもよい。
なお、ATMと施設との距離は、地図上の距離(直線距離や道のりを含む)であってもよく、徒歩・自転車・自動車・電車等を利用した場合の時間的距離であってもよい。例えば、地図上ではATMと施設との距離が2キロメートルより大きくても、種々の交通手段の利用によって実際にはATMから施設まで所定時間以内(例えば15分以内)に到着可能であれば、ATM顧客属性生成部50は両者が近傍範囲にあると判定してもよい。
顧客属性推定部52は、金融機関が保持する顧客の口座情報(性別、年齢、入出金額、預金残高等)と、ATM利用頻度、曜日・時間帯等を勘案して、顧客が利用したATMの属性から顧客の属性を推定する。実施の形態では、顧客取引情報保持部40に保持された顧客取引情報にしたがって各顧客が利用したATMを識別する。そして、特定の顧客が特定のATMを利用した回数が多いほど、ATM顧客属性保持部38のATM顧客属性情報が示す当該特定のATMとの結びつきが強い顧客属性を、当該特定の顧客の属性に強く反映させることにより、複数の顧客それぞれの属性を推定する。
実施の形態では、予め定められた複数種類の顧客属性それぞれについて、顧客に対する各属性の適合度合いを推定するモデルを予め定めておく。そして、各属性用の推定モデルに各顧客の情報(ATM利用実績や基本情報等)を入力することにより、各顧客に対する各属性の適合度合いであり、結びつきの強さを推定する。以下の数式1は顧客のギャンブル指数の推定モデルを示し、数式2は顧客の勤務医指数の推定モデルを示す。
数式1と数式2について、顧客が利用した1つ以上のATMのそれぞれの利用回数は顧客取引情報により識別し、週末利用頻度・平日利用頻度も顧客取引情報により識別し、顧客年齢は顧客基本情報により識別する。顧客属性推定部52は、顧客が利用した各ATMに基づく指標値を合計し、その合計値を最大値が100になるよう調整した値を、顧客と顧客属性の結びつきの強さを示す指数として算出する。例えばギャンブル指数の場合、その値が大きいほど、すなわち100に近いほど、顧客のギャンブル嗜好の度合い・傾向が強いことを示す。
なお、推定モデルの説明変数の選択や、各説明変数が指数へ寄与する度合いを調整する係数であるa〜fの初期値は、モデル作成者の仮説値を採用する。すなわち、モデル作成者の経験や知見、実験等により適切な説明変数が選択され、また係数値が決定されてよい。例えば、数式1、数式2における各係数の初期値に「1」を設定し、推定精度、分析結果の正否、分析結果の活用度合いに応じて適宜見直しがなされてよい。
営業支援情報生成部54は、顧客毎の営業支援情報を生成し、営業支援情報保持部42へ格納する。具体的には、ある顧客について、顧客属性推定部52により推定された顧客属性である推定顧客属性を取得し、すなわち複数の顧客属性との結びつきの強弱を示す複数の顧客属性指数値を取得する。また、当該顧客の顧客コードをキーとして、顧客基本情報保持部30に格納された顧客基本情報を取得する。また、顧客基本情報に含まれる住所が存在する地域の地域特性を地域特性保持部32から取得する。営業支援情報生成部54は、顧客基本情報と、推定顧客属性と、顧客住所の地域特性を対応付けた営業支援情報を営業支援情報保持部42へ格納する。顧客住所の地域特性は、顧客の居住地域の平均的な住民属性とも言える。
営業支援情報提供部56は、営業支援情報保持部42に格納された営業支援情報を営業担当者端末14へ送信して表示させる。検索条件設定画面提供部58は、営業支援情報に対する検索条件を指定するための検索条件設定画面のデータを営業担当者端末14へ送信して表示させる。検索条件は、金融商品や金融サービスの販売活動の対象とする顧客を、金融機関の複数の顧客の中から抽出するための抽出条件とも言える。
図6は検索条件設定画面を示す。実施の形態では、顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性に亘る複数の検索条件が設定可能である。図6では、(1)年齢が45歳以上60歳以下、(2)預金残高が100万円未満、(3)勤務医指数が70より大きい、(4)地域特性の預貯金が2000万円以上、の4つの検索条件が指定されている。
検索部60は、検索条件設定画面に入力された検索条件を営業担当者端末14から受信し、営業支援情報保持部42に情報が保持された複数の顧客の中で検索条件を満たす顧客を検索し、抽出する。実施の形態では、検索条件設定画面に対して顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性に亘る複数の検索条件が入力された場合に、検索部60は、それら複数の検索条件を全て満たす顧客を抽出する。
営業支援情報生成部54は、検索部60により抽出された顧客に関する営業支援情報を営業支援情報保持部42から取得し、その営業支援情報を営業担当者端末14へ送信して表示させる。具体的には、検索部60により抽出された顧客の顧客コードに対応付けられた顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性を並べた検索結果画面のデータを営業担当者端末14へ送信して表示させる。図7は、図6の検索条件により抽出された顧客情報を示す検索結果画面を示している。
図2に戻り、モデル生成部62を説明する。分析装置12の記憶部22には、金融機関が販売する複数の金融商品や金融サービスのそれぞれを購入済の顧客を示す情報(以下「商品購入実績情報」とも呼ぶ。)が格納される。商品購入実績情報は、複数の金融商品や金融サービスのそれぞれを未購入の顧客を示す情報を含んでもよい。また、商品購入実績情報は、営業支援情報生成部54により営業支援情報の一部として営業支援情報保持部42に格納されてもよい。
モデル生成部62は、営業支援情報保持部42に情報が格納された各顧客について、商品購入実績情報を参照して、分析対象商品またはサービスを購入済の顧客を「第1顧客」として識別し、未購入の顧客を「第2顧客」として識別する。第1顧客と第2顧客は便宜的な名称であり、分析対象の商品またはサービスに対する購買確度が異なる顧客であると言える。実施の形態では、分析対象の商品またはサービスについて、第1顧客の購買確度を100%とし、第2顧客の購買確度を0%とする。例えば、分析対象商品がカードローンの場合、カードローン契約済の第1顧客の購買確度を100%とし、カードローン未加入の未契約の第2顧客の購買確度を0%とする。
モデル生成部62は、営業支援情報保持部42に保持された第1顧客の顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性と、営業支援情報保持部42に保持された第2顧客の顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性の両方にもとづいて、分析対象の商品またはサービスに対する各顧客の購買確度を求めるための購買確度モデルを生成する。モデル生成部62は、生成した購買確度モデルを示すデータを、当該モデルによる分析対象商品またはサービスの識別情報と対応付けてモデル保持部44へ格納する。なお、購買確度は購買可能性とも言え、販売促進アクションに対する反応率とも言える。
モデル生成部62は解析エンジン64を含む。解析エンジン64は、重回帰分析やロジスティック回帰分析等の公知の手法にもとづく多変量解析処理を実行する。解析エンジン64は、公知の多変量解析ソフトウェアでもよい。モデル生成部62は、第1顧客と第2顧客それぞれの顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性をパラメータとして、解析エンジン64が提供するAPIをコールしてもよい。そして、多変量解析処理の結果として生成された数理モデルのデータを解析エンジン64から取得してもよい。
モデル生成部62は、第1顧客と第2顧客それぞれの購買確度と、図5に示す顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性の各項目値を解析エンジン64へ入力する。実施の形態では、第1顧客の購買確度として「1」を入力し、第2顧客の購買確度として「0」を入力する。変形例として、このような離散値に代えて、支払金額のような連続値を購買確度として指定してもよい。また、予め定められた複数の段階値の中から、顧客の支払金額等に応じた特定の購買確度を指定してもよい。
実施の形態の解析エンジン64は、多重ロジスティック回帰分析を実行する。具体的には、基本顧客情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性のそれぞれを説明変数とし、分析対象商品またはサービスに対する購買確度を被説明変数(目的変数)とする回帰式を購買確度モデルとして生成する。購買確度モデルの例を以下に示す。
数式3のx1、x2は顧客基本情報の項目を示す。例えば年齢、預金残高であってもよい。数式3のy1、y2は推定顧客属性の項目を示す。例えばギャンブル指数、上場企業指数であってもよい。数式3のz1、z2は顧客住所の地域特性の項目を示す。例えば預貯金額、住宅ローン残高であってもよい。数式3のa〜fは、各情報項目が購買確度に与える影響度合いを示す値であり、回帰係数と言える。解析エンジン64は、多変量解析処理により、係数a〜fの値を算出する。
購買確度算出部66は、モデル保持部44に格納された購買確度モデルに対して、当該モデルでの分析対象商品またはサービスを未購入の顧客の顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性(すなわち説明変数の項目値)を入力する。これにより、購買確度モデルにしたがって、顧客による分析対象商品またはサービスの購買確度を算出する。購買確度算出部66は、1人以上の未購入顧客それぞれについての購買確度データを算出し、各顧客の営業支援情報の所定項目と対応付けて記憶部22の所定領域へ格納する。
営業支援情報提供部56は、購買確度算出部66により算出された複数の顧客それぞれについての分析対象商品またはサービスに対する購買確度を示すデータを営業担当者端末14へ送信し、表示させる。図8は、分析対象商品またはサービスに対する顧客の購買確度(購買確度の降順にソート)を示す。
営業支援情報提供部56は、顧客抽出部として機能してもよく、購買確度が上位の顧客情報のみを営業担当者端末14へ提供してもよい。例えば、購買確度が所定値以上の顧客や、購買確度が上位100位内の顧客を示す分析結果画面のデータを営業担当者端末14へ送信してもよい。購買確度が60%以上の顧客情報を提供する場合、図8のNo00058〜No00003の顧客情報を営業担当者端末14へ提供してもよい。
以上の構成による営業支援システム10の動作を以下説明する。
図9は、営業支援情報の生成と活用の過程を模式的に示す。以下では、図9との対応関係をわかりやすく示すため、図9に記載の番号を付しつつ説明する。
分析装置12の管理者は、(1)顧客基本情報、(2)顧客取引情報、(3)地域特性情報、(4)ATM位置情報、(5)施設情報を分析装置12の記憶部22へ格納する。これらの情報は、管理者により定期的に最新の内容へ更新される。分析装置12のATM顧客属性生成部50は、(4)ATM位置情報が示すATMの設置位置と、(5)施設情報が示す各施設の所在地までの距離にしたがって、(6)ATM顧客属性情報を生成する。顧客属性推定部52は、(6)ATM顧客属性情報と、(2)顧客取引情報が示す各顧客のATM利用実績にしたがって、(7)各顧客の属性を推定する。営業支援情報生成部54は、各顧客の(1)顧客基本情報と(7)推定顧客属性と(8)顧客住所の地域特性、すなわち顧客居住地域に住む住民属性を対応付けた営業支援情報を(9)顧客データベース(営業支援情報保持部42)へ格納する。
分析装置12の営業支援情報提供部56は、営業担当者端末14からの要求に応じて、営業支援情報保持部42に格納された各顧客の営業支援情報を営業担当者端末14へ送信する。特定の属性を有する訪問者が多い施設近傍にあるATMを顧客が利用した事実は、顧客がその特定の属性を有する可能性が高いことを意味する。実施の形態の分析装置12は、本発明者のこの着想を応用して顧客属性を推定する。分析装置12は、金融機関の内部データとしての顧客基本情報とトランザクションデータに加え、外部データとしての推定顧客属性と顧客住所の地域特性を営業支援情報として営業担当者からの参照が可能なよう記録する。これにより、営業担当者による顧客像の推定を支援し、金融商品や金融サービスの販売ターゲットとする顧客の選定を効果的に支援することができる。なお、金融機関の複数の顧客について推定した顧客属性は、金融商品や金融サービスの販売にとどまらず、メーカや商社等の商品やサービスの販売に活用することもできる。
また、分析装置12は、特定ATMと特定施設との距離が短いほど、特定施設の訪問者属性を特定ATMの利用者属性へ強く反映させる。これにより、特定ATMを顧客が利用した場合に、特定施設の訪問者属性を顧客属性へ強く反映させる。特定ATMと特定施設の距離が短いほど、特定施設の訪問者が特定ATMを利用する可能性が高いと言え、特定施設の訪問者属性を強く反映させることが望ましいと言える。すなわち分析装置12のこの構成により、ATMに付与するATM顧客属性を好適に調整し、ひいては、そのATMを利用した顧客属性を精度よく推定できる。
営業担当者が、検索条件設定画面の表示要求を営業担当者端末14へ入力すると、営業担当者端末14は、検索条件設定画面の提供要求を分析装置12へ送信する。分析装置12の検索条件設定画面提供部58は、その提供要求に応じて図6の検索条件設定画面を示すウェブページを営業担当者端末14へ送信する。営業担当者端末14のウェブブラウザは、検索条件設定画面のウェブページをディスプレイに表示させる。営業担当者は、営業対象とすべき顧客の検索条件、抽出条件であり、言い換えれば、営業対象とすべき営業対象とすべき顧客が備える属性の条件を検索条件設定画面へ入力する(図9の10)。営業担当者端末14は、入力された検索条件を分析装置12へ送信する。
分析装置12の検索部60は、営業担当者端末14から受信した検索条件が、顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性に亘る複数の条件であった場合に、それら複数の条件を全て満たす顧客を営業支援情報保持部42から抽出する(図9の11)。営業支援情報提供部56は、検索部60が抽出した顧客に関する営業支援情報(顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性の組み合わせ)を並べた検索結果画面のウェブページを営業担当者端末14へ送信する。営業担当者端末14のウェブブラウザは、検索結果画面のウェブページをディスプレイに表示させる。
このように実施の形態の分析装置12は、推定顧客属性に対する条件を含む複数の条件に合致する顧客の検索サービスを提供する。これにより、膨大な数の顧客の中から、金融商品や金融サービスの販売ターゲットとすべき顧客を効率的に選定することを支援できる。また、推定顧客属性に対する条件を含む複数の検索条件を指定可能にすることにより、多様な観点からの顧客検索を可能にする。
営業担当者は、分析対象商品(またはサービス)の識別情報を営業担当者端末14へ入力し、営業担当者端末14は、分析対象商品の識別情報を分析装置12へ送信する。分析装置12のモデル生成部62は、分析対象商品に対する複数の顧客の購買確度を所定の記憶領域から取得する。これら複数の顧客は、分析対象商品を購入済の顧客と未購入の顧客の両方を含む。モデル生成部62は、複数の顧客の顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性を営業支援情報保持部42から取得する。モデル生成部62は、公知の多変量解析手法を用いて、顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性の各項目が、分析対象商品の購買確度へ与える影響度合いを示す(12)購買確度モデルを生成する。なおモデル生成部62は、予め定められた1つ以上の分析対象商品またはサービスについて定期的に購買確度モデルを生成、更新してもよい。
営業担当者は、特定の購買確度モデルを用いた各顧客の商品購買確度推定指示を営業担当者端末14へ入力し、営業担当者端末14は、その指示を分析装置12へ送信する。分析装置12の購買確度算出部66は、営業担当者が指定した購買確度モデルに対して、当該モデルの対象商品を未購入の顧客それぞれの顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性を入力することにより、対象商品に対する各顧客の購買確度を算出する(図9の13)。営業支援情報提供部56は、対象商品に対する各顧客の購買確度を示す購買確度一覧画面のウェブページを営業担当者端末14へ送信する。営業担当者端末14のウェブブラウザは、購買確度一覧画面のウェブページをディスプレイに表示させる。
具体的には、営業支援情報提供部56は、対象商品を未購買の複数の顧客のうち、対象商品の購買確度が相対的に高い顧客を戦略顧客として抽出し、戦略顧客の情報を並べた顧客抽出画面のウェブページを営業担当者端末14へ送信する。営業担当者端末14のウェブブラウザは、顧客抽出画面のウェブページをディスプレイに表示させる。
このように実施の形態の分析装置12は、顧客が利用したATM位置にもとづく推定顧客属性を活用して、精度の高い購買確度モデルを構築する。これにより、金融機関の従来のデータ分析の限界を超えて、より一層ビジネスで有用な情報、正確性の高い情報の獲得を支援できる。また、購買確度モデルの対象商品を未購入の顧客について、当該顧客の購買確度を営業担当者へ提示し、また、購買確度が高いと推定された顧客を提示することで、商品またはサービスの販売活動を効率的に実施できるよう支援できる。
図9で示すように、購買確度モデルを使用した各顧客の購買確度の情報や、戦略顧客の抽出結果にもとづいて、営業担当者は営業施策を立案し、実施する。営業施策としては、家庭訪問、電話、ダイレクトメールや電子メールの送付、ATMのディスプレイを利用したワン・ツウ・ワンアプローチ等が考えられる。また、購買確度が高い顧客から優先的に営業施策を展開することで、効率的かつ効果的な営業活動を実施できる。営業担当者や分析装置12の管理者は、営業結果にもとづいて、購買確度モデルの見直し(説明変数や回帰係数の見直しを含む)や、戦略顧客の抽出条件を適宜見直す。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
上記実施の形態では言及していないが、営業支援情報保持部42において各顧客と対応付けて保持される顧客住所の地域特性は、分析装置12の管理者の経験や知見により変更されてよい。分析装置12は、その変更内容を所定の担当者の端末から受け付け、営業支援情報保持部42のデータに反映させる営業支援情報更新部をさらに備えてもよい。また営業支援情報更新部は、所定のアルゴリズムにしたがって、営業支援情報保持部42において各顧客と対応付けて保持される顧客住所の地域特性の項目値を、個々の顧客毎に自律的に修正してもよい。
図10は、顧客年齢に応じて顧客住所の地域特性の値を修正する例を示す。預貯金の場合、全国平均値として年齢と預貯金の関係曲線があることが知られており、公知の関係曲線のデータにしたがって預貯金の修正値を推定してもよい。例えば、図10の表において55歳であれば、預貯金は他の年齢に比べて相対的に高いことを関係曲線が示すため、5200万円が平均の地域であれば、その値より大きい6800万円(一例)に修正してもよい。また、10歳未満の子供の有無については、第一子平均出産年齢にしたがって修正値を推定してもよい。例えば、図10のNo00002の顧客とNo00003の顧客の地域特性としての10歳未満子供比率は同じであるが、前者の年齢は第一子平均出産年齢により近い36歳である。そのため、前者の10歳未満子供比率の修正値を、後者の修正値よりも大きく設定してもよい。
上記実施の形態では、営業支援情報保持部42に、顧客基本情報と推定顧客属性と顧客住所の地域特性が対応付けて格納されることとした。変形例として、分析装置12は推定顧客属性を保持する推定顧客属性保持部を備えてもよい。そして、顧客コードにより、各顧客の顧客基本情報(顧客基本情報保持部30のレコード)、推定顧客属性、顧客住所の地域特性を対応付けた営業支援情報ビュー(仮想テーブル・仮想表)を構築してもよい。
請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。