JP5820220B2 - ニムフェオール類の分散方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水系分散媒にニムフェオール類を安定して分散させるために用いられる水系分散媒に対するニムフェオール類の分散方法に関する。
一般的に、オオバギの葉から抽出される成分が抗菌作用、抗酸化作用、及び抗腫瘍作用を有していることが知られている。オオバギ抽出される成分のうち、抗菌作用、抗酸化作用及び抗腫瘍作用を有する成分として、フラバノン化合物であるニムフェオール−A,B,Cが知られている。これらのニムフェオール類は、香粧品、衛生用品、食品、及び医薬品等の分野において有効に利用されることが期待される。
従来より、特許文献1〜3に開示されるように、抽出溶媒として有機溶媒を使用し、オオバギの葉からニムフェオール−A,B,Cを抽出する方法が知られている。特許文献1,2は、オオバギの葉を抽出原料とし、抽出溶媒として有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、及びヘキサンを使用し、有効成分であるニムフェオール−A,B,Cを抽出する方法について開示する。
特許文献3は、オオバギを水抽出した後の固形分を有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、及びヘキサンを使用し、有効成分であるニムフェオール−A,B,Cを抽出する方法について開示する。
特開2007−45754号公報 特開2006−8783号公報 特開2007−39365号公報
ところが、ニムフェオール−A,B,Cは、極性が低く、水に対し難溶性であるため、例えば化粧水及び飲料等の水系分散媒にニムフェオール−A,B,Cを分散させて使用することが困難であるという問題があった。そのため、ニムフェオール−A,B,Cを各種効能が生ずる濃度で有効に水系分散媒に分散させることは容易ではなかった。したがって、ニムフェオール−A,B,Cは、適用される溶媒の種類により用途が限定されるという問題があった。
本発明は、水系分散媒に分散して用いられるニムフェオール類含有溶液において、ニムフェオール類含有溶液を構成する溶媒の種類及びニムフェオール類の含有量を規定することにより水系分散媒にニムフェオール類を安定して分散できることを見出したことに基づくものである。
本発明の目的とするところは、水系分散媒にニムフェオール類を安定して分散させることができるニムフェオール類の分散方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明のニムフェオール類の分散方法は、水系分散媒にニムフェオール−A、ニムフェオール−B、及びニムフェオール−Cから選ばれる少なくとも一種であるニムフェオール類を分散させるニムフェオール類の分散方法において、前記ニムフェオール類を溶媒に溶解したニムフェオール類含有溶液(漬け物用添加剤としての適用を除く)と前記水系分散媒とを混合する混合工程を備え、前記ニムフェオール類含有溶液は、水系分散媒に易溶性である、一価アルコール、二価アルコール、及び三価アルコールから選ばれる少なくとも一種が溶媒であって、前記混合工程における前記ニムフェオール類含有溶液中のニムフェオール類の濃度は、8質量%以下であることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載のニムフェオール類の分散方法において、前記ニムフェオール類が、オオバギ由来であることを特徴とする
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項に記載のニムフェオール類の分散方法において、前記溶媒は、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、及びエタノールから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
本発明によれば、ニムフェオール類の分散方法において、水系分散媒にニムフェオール類を安定して分散させることができる。
以下、本発明のニムフェオール類含有溶液を具体化した一実施形態を説明する。
本実施形態のニムフェオール類含有溶液は、ニムフェオール類を水系分散媒に分散させるために用いられる。該ニムフェオール類含有溶液は、水系分散媒に易溶性である、一価アルコール、二価アルコール、及び三価アルコールから選ばれる少なくとも一種の溶媒が用いられる。水系分散媒に易溶性である一価アルコールとしては、低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びブタノールが挙げられる。水系分散媒に易溶性である二価アルコールとして、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、低分子量のポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、及び1,2−ペンタンジオールが挙げられる。水系分散媒に易溶性である三価アルコールとして、例えばグリセリンが挙げられる。これら溶媒のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの溶媒の中で、水系分散媒に対する分散安定性、並びに水系分散媒からなる飲食品、医薬品、及び香粧品への適用の容易性の観点から、好ましくは1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、及びエタノールが用いられる。
ニムフェオール類は、市販品を使用してもよく、天然物であるオオバギ(大葉木)からオオバギ抽出物を経て公知の方法により精製してもよい。オオバギからオオバギ抽出物の入手方法は、例えば次の方法を採用することができる。
オオバギ抽出物の原料であるオオバギは、マカランガ・タナリウス(Macaranga tanarius)とも呼ばれる植物であって、トウダイグサ科オオバギ属に属する常緑広葉樹(雌雄異株)である。オオバギは、沖縄、台湾、中国南部、マレー半島、フィリピン、マレーシア、インドネシア、タイなどの東南アジア、オーストラリア北部などに生育している。また、オオバギは、樹木の中でも成長が極めて早く、荒廃地における成長も可能である。
オオバギ抽出物の原料としては、オオバギの各器官やそれらの構成成分を用いることができる。原料としては、単独の器官又は構成成分を用いてもよいし、二種以上の器官や構成成分を混合して用いてもよい。抗菌作用及び抗酸化作用等のオオバギ由来の作用・効果を有する成分を効率よく得るために、原料には果実、種子、花、根、幹、茎の先端部、葉身、及び分泌物(ワックス等)を含むことが好ましい。茎の先端部は、茎の成長点及び葉芽を含んでおり、葉身に比べて柔軟であるため、抽出操作を効率的に行うことが容易である。また、オオバギの全体に対して各器官が占める割合を比較すると、幹、根、及び葉の占める割合は高い。このため、オオバギの葉身をオオバギ抽出物の原料として用いることは、原料確保が容易であるという観点から、工業的に好適である。こうした原料は、採取したままの状態、採取後に破砕、粉砕若しくはすり潰した状態、採取・乾燥後に粉砕、破砕若しくはすり潰した状態、又は、採取後に粉砕、破砕若しくはすり潰した後に乾燥させた状態として、抽出操作を行うことができる。抽出操作を効率的に行うべく、破砕した原料を用いることが好ましい。こうした破砕には、例えばカッター、裁断機、クラッシャー等を用いることができる。また、粉砕した原料を調製する際には、例えばミル、クラッシャー、グラインダー等を用いることができる。すり潰した原料を調製する際には、ニーダー、乳鉢等を用いることができる。
上述した原料からオオバギ抽出物を抽出するための抽出溶媒としては、水と有機溶媒との混合溶媒、有機溶媒、及び油性成分が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、低級アルコール、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、グリセリン、及びプロピレングリコールが挙げられる。低級アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びブタノールが挙げられる。油性成分としては、例えば油脂、ロウ類、脂肪酸類、エステル類、ポリエチレングリコール−16マカダミア油、及び1,3−ブチレングリコールが挙げられる。油脂として、例えばゴマ油、オリーブ油、メドウフォーム油、及び馬油が挙げられる。ロウ類として、例えばオレンジラッフィー油、及びホホバ種子油が挙げられる。脂肪酸類として、例えばマカデミアナッツ油が挙げられる。エステル類として、例えばミリスチン酸オクチドデシルが挙げられる。
これらの溶媒としては、単独種を用いてもよいし、複数種を混合した混合溶媒を用いてもよい。抽出溶媒として水と有機溶媒の混合溶媒を用いる場合、混合溶媒中における有機溶媒の含有量は、好ましくは50体積%以上、より好ましくは80体積%以上である。混合溶媒中における有機溶媒の含有量が50体積%未満の場合、オオバギに含まれる有効成分を効率的に抽出できないおそれがある。なお、有機溶媒としては、低級アルコールが好ましく、エタノールがより好ましい。なお、抽出溶媒中に、その他の成分として、有機塩、無機塩、緩衝剤、乳化剤、デキストリン等を溶解させてもよい。
抽出操作としては、抽出溶媒中に上記原料を所定時間浸漬させる。こうした抽出操作においては、抽出効率を高めるべく、必要に応じて攪拌操作、加温等を行ってもよい。また、原料から抽出される夾雑物を削減すべく、抽出操作に先だって、別途水抽出操作又は熱水抽出操作を行ってもよい。抗菌作用及び抗酸化作用等のオオバギ由来の作用・効果を発揮する成分は、主としてオオバギに含まれるニムフェオール類である。ニムフェオール類は、水に対して不溶の成分であるため、オオバギを例えば熱湯で煮沸することで、ニムフェオール類以外の不必要な侠雑物を効率的に除去することができる。
抽出操作の後には固液分離操作が行われることで、オオバギ抽出液と原料の残渣とを分離する。こうした固液分離操作の分離法としては、例えばろ過、遠心分離等の公知の分離法を利用することができる。上記のように得られたオオバギ抽出液は、公知の方法、例えば吸着樹脂による精製方法を用い更に精製処理を行ってもよい。また、得られたオオバギ抽出液は、ニムフェオール類含有溶液を構成する溶媒に置換するために、濃縮処理してもよい。また、オオバギ抽出液に含まれる抽出溶媒を公知の方法を用いて除去することにより、室温でタール状の固形物であるオオバギ抽出物を得てもよい。こうした溶媒の除去は、例えば減圧下で加熱することにより行ってもよいし、凍結乾燥により行ってもよい。
少なくとも有機溶媒を含む抽出溶媒により抽出されたオオバギ抽出物には、ニムフェオール類が含有されている。ニムフェオール類は、ニムフェオール−A、ニムフェオール−B、及びニムフェオール−Cから選ばれる少なくとも一種を含む。ニムフェオール−A(nymphaeol−A)は、5,7,3´,4´-テトラヒドロキシ-6-ゲラニルフラバノン(5,7,3´,4´-tetrahydroxy-6-geranylflavanone)である。ニムフェオール−B(nymphaeol−B)は、5,7,3´,4´-テトラヒドロキシ-2´-ゲラニルフラバノン(5,7,3´,4´-tetrahydroxy-2´-geranylflavanone)である。ニムフェオール−C(nymphaeol−C)は、5,7,3´,4´-テトラヒドロキシ-6-(3´´´,3´´´-ジメチルアリル)-2´-ゲラニルフラバノン(5,7,3´,4´-tetrahydroxy-6-(3´´´,3´´´-dimethylallyl)-2´-geranylflavanone)である。
オオバギ抽出物の主要な成分は、上述したニムフェオール類であり、こうしたニムフェオール類が抗菌作用、抗酸化作用、及び抗腫瘍作用に大きく寄与していると推測される。尚、オオバギの各部位から抽出された抽出液の中でも、花及び実の部位(ワックスを含む)から抽出された抽出液には、ニムフェオールA,B,Cが高濃度で含有されている。また、実の部位(ワックスを含む)から抽出された抽出液には、イソニムフェオールBも多く含まれる。
本実施形態のニムフェオール類含有溶液は、ニムフェオール類が含有されるオオバギ抽出物を、ニムフェオール類含有溶液を構成する溶媒に溶解させることにより調製することができる。また、上記のように得られた抽出溶媒に溶解してなるオオバギ抽出物について溶液を構成する溶媒で溶媒交換することにより、又は濃縮したオオバギ抽出物をそのまま溶液を構成する溶媒に添加することにより調製することができる。ニムフェオール類含有溶液中のニムフェオール類の濃度は、8質量%以下、好ましくは6%以下である。この濃度が8質量%を超えると水系分散媒に対するニムフェオール類の分散性が急激に低下する。
ニムフェオール類は、抗菌作用、抗酸化作用、及び抗腫瘍作用を有するため、従来より、例えば香粧品、衛生用品、飲食品、及び医薬品等の分野において使用されている。上記実施形態のニムフェオール類含有溶液は、例えば香粧品、衛生用品、飲食品、及び医薬品等の各分野における各種水系分散媒に添加することにより好ましく使用される。
香粧品における水系分散媒としては、例えば化粧水及び乳液が挙げられる。水系分散媒は、水単独の形態のみならず、本発明の効果を阻害しない範囲内において各種香粧品用の添加物が配合されてもよい。香粧品用の添加物としては、例えば、油分、精製水、アルコール、界面活性剤、保湿剤、酸化防止剤、増粘剤、抗脂漏剤、血行促進剤、美白剤、pH調整剤、色素顔料、防腐剤及び香料が挙げられる。
衛生用品における水系分散媒としては、例えば各種消臭剤、口腔衛生品、及び皮膚衛生品が挙げられる。口腔衛生品としては、例えば歯磨剤、及び洗口剤が挙げられる。皮膚衛生品としては、例えば、ウェットティッシュ・タオル、ボディソープ、ハンドソープ、各種クリームなどのボディケア製品、洗顔フォーム、洗顔クリーム、抗アクネ菌効果に基づくにきび予防剤などのスキンケア製品(フェイスケア製品)、シェービングクリーム、シェービングローション、シェービングフォームなどが挙げられる。
飲料品における水系分散媒としては、例えば炭酸飲料、茶飲料、清涼飲料、酒類、牛乳、コーヒー、フルーツシロップ、ゼリー飲料、及び栄養ドリンク剤が挙げられる。炭酸飲料としては、例えばサイダー、レモンスカッシュ、及びコーラが挙げられる。茶飲料としては、例えば緑茶、ウーロン茶、及び紅茶が挙げられる。清涼飲料としては、例えば果汁入り飲料、及びミネラルウォーターが挙げられる。食品としては、水系分散媒からなる食品、例えばスープが挙げられる。また、飲食品は、例えば健康食品、特定保健用食品、健康飲料、及び栄養補助食品の形態であってもよい。水系分散媒は、水単独の形態のみならず、本発明の効果を阻害しない範囲内において各種食品添加物が配合されてもよい。食品添加物としては、例えば、乳化剤、溶剤、安定剤、糖類、香料、甘味料、油脂、基材、及び賦形剤が挙げられる。
医薬品における水系分散媒としては、例えば液剤及びゲル状剤が挙げられる。水系分散媒は、水単独の形態のみならず、本発明の効果を阻害しない範囲内において各種医薬用の添加物が配合されてもよい。医薬用の添加剤としては、例えば乳化剤、溶剤、及び安定剤が挙げられる。
次に、上記のように構成されたニムフェオール類含有溶液の作用を説明する。
上記のように調製されたニムフェオール類含有溶液の溶媒は、水系分散媒に易溶性である、一価アルコール、二価アルコール、及び三価アルコールから選ばれる少なくとも一種として構成されている。水に対し難溶性のニムフェオール類は、ニムフェオール類含有溶液と水系分散媒とを混合する工程を経ることにより、ニムフェオール類が安定して分散した状態の水系分散媒を得ることができる。
ニムフェオール類含有溶液と水系分散媒との混合比率は特に限定されないが、好ましくは、質量比として1:1〜100000、より好ましくは1:10〜10000である。ニムフェオール類含有溶液1に対し、水系分散媒の比率が1未満であると、ニムフェオール類含有溶液の溶媒の性質が主となり分散性の問題は生じない。一方、ニムフェオール類含有溶液1に対し、水系分散媒の比率が100000を超えると、ニムフェオール類を水系分散媒に有効量分散させることが困難となる。
ニムフェオール類含有溶液を水系分散媒に混合した後の水系分散媒中におけるニムフェオール類の濃度は特に限定されないが、好ましくは0.0001〜4質量%である。水系分散媒中におけるニムフェオール類の濃度が4質量%を超えるとニムフェオール類が水系分散媒中に十分に分散しないおそれがある。一方、水系分散媒中におけるニムフェオール類の濃度が0.0001質量%未満であると濃度が薄いためニムフェオール類の効能を十分に発揮することができないおそれがある。
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態のニムフェオール類含有溶液は、水系分散媒に易溶性である、一価アルコール、二価アルコール、及び三価アルコールから選ばれる少なくとも一種を溶媒とし、前記ニムフェオール類含有溶液中のニムフェオール類の濃度は、8質量%以下とした。したがって、ニムフェオール類含有溶液を水系分散媒に添加した場合、水系分散媒中においてニムフェオール類を安定に分散させることができる。
(2)また、ニムフェオール類を水系分散媒中に分散させた状態においても、ニムフェオール類によって発揮される効能、例えば抗菌作用、抗酸化作用及び抗腫瘍作用を有効に発揮することができる。
(3)好ましくは、溶媒として1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、及びエタノールから選ばれる少なくとも一種が用いられる。したがって、水系分散媒中においてニムフェオール類の分散安定性をより向上させることができる。
(4)本実施形態のニムフェオール類含有溶液は、水系分散媒に易溶性の溶媒を使用した。したがって、水系分散媒にニムフェオール類含有溶液を投入したとしても、溶媒自体が水と分離するおそれがない。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態のニムフェオール類含有溶液は、例えば香粧品、飲食品、衛生用品、及び医薬品の分野における各種水系分散媒に添加することにより使用される。水系分散媒は、最終製品が水系分散媒である香粧品、飲食品、衛生用品、及び医薬品のみならず、最終製品が固体状であっても、製造工程の途中において水系分散媒の形態が適用される製品であれば、製造工程途中においてかかる水系分散媒に適用することができる。
以下に試験例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<1.オオバギ抽出液の調製>
沖縄県で採集して冷凍したオオバギの生葉を解凍した後に、はさみでその生葉を細かくカットした。カットした生葉30gと、溶媒100mlとをビーカー内に入れ、室温で2週間浸漬させて溶媒抽出を行った後に、ろ過することにより、ろ液としてオオバギ抽出液を採取した。なお、前記溶媒抽出には、エタノールと水とを体積比率でエタノール:水=90:10とした混合溶媒を使用した。次に、オオバギ抽出液を凍結乾燥することにより、オオバギ抽出液に含まれる室温でタール状の固形物であるオオバギ抽出物を調製した。調製したオオバギ抽出物をメタノールで希釈して、このオオバギ抽出物中に含まれるニムフェオール類の濃度を、HPLC条件で分析した。クロマトグラムから算出した結果、55.85質量%であった。なお、このニムフェオール類の濃度は、ニムフェオール−A、ニムフェオール−B、及びニムフェオール−Cを合計した濃度を示している。以下においても、ニムフェオール類の量は、ニムフェオール−A、ニムフェオール−B、及びニムフェオール−Cの合計量を示している。
(HPLC条件)
システム: PDA−HPLCシステム(島津製作所)、LC10ADvpシリーズ、UV;SPD−10Avp、PDA;SPD−M10Avp
カラム : Luna C18 (内径2.0mm×長さ250mm)(島津GLC)
溶媒 : A:水(5%酢酸)、B:アセトニトリル(5%酢酸)
溶出条件: 0−20min
(グラジエント溶出;A:B=80:20→A:B=30:70)
20−50min
(グラジエント溶出;A:B=30:70→A:B=0:100)
50−60min(A:B=0:100)
60−75min(A:B=80:20)
流速 : 0.2mL/min
PDA検出:UV190−370nm
UV検出: UV287nm
注入量 : 20μL
温度 : 40℃
次に、得られたタール状の固形物であるオオバギ抽出物について、下記実施例1〜5、比較例1に示される各溶媒を用い、ニムフェオール類含有溶液を調製した。ニムフェオール類含有溶液中におけるニムフェオール類の含有量が、それぞれ1,4,5,6,8,10質量%となるように混合し、ボルテックスミキサーで5分間振とう攪拌しながら溶解することにより各例のニムフェオール類含有溶液を調製した。
<2.水分散性試験>
上記のように得られたニムフェオール類含有溶液を水に溶解した場合の水分散性について試験した。まず、プラスチックカップに蒸留水(水系分散媒)50mLを入れ、その蒸留水中のニムフェオール類の濃度が100ppmの統一濃度になるように、各例の上記ニムフェオール類含有溶液を添加し、スパテラを使用し、手でよく撹拌した。容易に分散する上記ニムフェオール類含有溶液の場合は、1分間程度の攪拌で十分であったが、分散し難い場合は3分間程度攪拌した。
具体的には、ニムフェオール類含有溶液中におけるニムフェオール類の含有量が10質量%の場合、ニムフェオール類含有溶液50mgを蒸留水に投入し、8質量%の場合は63mg投入し、6質量%の場合は83mg投入し、5質量%の場合は100mg投入し、4質量%の場合は125mg投入した。
蒸留水に分散しているニムフェオール類の濃度は、まず、蒸留水にニムフェオール類含有溶液を添加することにより調製された上記混合液(水系分散液)と、ジメチルスルホキシド(DMSO)とを質量比で等量混合した後、0.45μmメンブレンフィルタでろ過し、上記HPLC条件にて、ニムフェオール類の濃度を測定した。
蒸留水中に分散していないニムフェオール類の濃度(析出量)は、蒸留水中に分散していないニムフェオール類がプラスチックカップの内壁面等に付着するため、その付着量を測定した。まず、プラスチックカップ内の水系分散液を全て別の容器に移し、空となった容器内にエタノールを0.75g流し入れ、内壁に付着しているニムフェオール類を溶解させた。この作業をもう一度繰り返し、ニムフェオール類が溶解しているエタノールを回収し、DMSOを質量比で等量混合した後、0.45μmメンブレンフィルタでろ過し、上記HPLC条件にて、ニムフェオール類の濃度を測定した。その濃度よりプラスチックカップの内壁面等に付着した付着量を算出した。ニムフェオール類が蒸留水に分散した量と内壁に付着した量の質量比の結果を表1に示す。
Figure 0005820220
表1に示されるように、各ニムフェオール類含有溶液中のニムフェオール類の濃度が8質量%を超えると水系分散液(蒸留水)中へのニムフェオール類の分散量が急激に低下することが確認される。
尚、上記各ニムフェオール類含有溶液(ニムフェオール類6質量%)を投与した水系分散液について、ハロー法を用い、抗菌効果について確認した。その結果、いずれの溶媒を用いた場合においても、本来のニムフェオール類の抗菌作用を維持していることが確認された。
また、比較例1において使用したジグリセリンは、水系分散媒に易溶性の四価アルコールであるが、ジグリセリンに対し、タール状にオオバギ抽出物が分離し、ニムフェオール類含有溶液を調製することができないため、水分散性試験を行っていない。
<3.攪拌方法の検討>
(1)スターラを用いた攪拌
上記のように得られたニムフェオール類含有溶液について、スターラを用いて攪拌した場合の水分散性を試験した。スパテラを使用し手で攪拌する代わりにスターラを使用し、攪拌時間を10分間としたこと以外は、上記の水分散性試験と同様の方法を採用した。また、ニムフェオール類含有溶液中におけるニムフェオール類の含有量が1質量%の場合を追加で試験した。蒸留水50mLにニムフェオール類含有溶液500mgを投入することにより水系分散液中のニムフェオール類が100ppmになるように調製した。結果を表2に示す。
Figure 0005820220
表2に示されるように、スターラを使用し、機械的に連続的によく攪拌した場合であっても、各ニムフェオール類含有溶液中のニムフェオール類の濃度が高くなるに従い、蒸留水中へのニムフェオール類の分散量が急激に低下することが確認される。
(2)高圧ホモジナイザによる攪拌
上記のように得られたニムフェオール類含有溶液について、高圧ホモジナイザを用いて水に溶解した場合の水分散性を試験した。スパテラを使用し手で攪拌する代わりに高圧ホモジナイザ(SMT社製 型式:LAB1000)を使用した以外は、上記の水分散性試験と同様の方法を採用した。実施例1のニムフェオール類含有溶液を使用し、圧力を表3に示されるように変化させた場合の水分散性を測定した。結果を表3に示す。
Figure 0005820220
表3に示されるように、高圧ホモジナイザを用いた場合であっても、水分散性は向上しないことが確認された。
(3)最終溶媒濃度を統一した試験
水系分散液(蒸留水)に添加される溶媒の最終濃度を統一して試験を行った。実施例1のニムフェオール類含有溶液を使用し、試験方法は上記の水分散性試験を採用した。構成する溶媒として1,3−ブチレングリコールを用いたニムフェオール類含有溶液中におけるニムフェオール類の含有量が10質量%の場合、まず50mLの蒸留水に予め溶媒として1,3−ブチレングリコールを50mg添加した。その後、10質量%ニムフェオール類含有溶液を50mg添加した(最終濃度ニムフェオール類100ppm)。ニムフェオール類含有溶液中におけるニムフェオール類の含有量が5質量%の場合、5質量%ニムフェオール類含有溶液を100mg添加した(最終濃度ニムフェオール類100ppm)。結果を表4に示す。
Figure 0005820220
表4に示されるように、水系分散液中における最終溶媒濃度を統一した場合であっても、ニムフェオール類の水分散性は、変化がないことが確認された。ニムフェオール類の水分散性は、水系分散液中における最終溶媒濃度に影響を受けないことが確認された。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記ニムフェオール類含有溶液中のニムフェオール類の濃度は、6質量%以下である前記ニムフェオール類含有溶液。(a)の構成によれば、ニムフェオール類を水系分散媒中において、より安定的に分散させることができる。(b)前記溶媒は、1,3−ブチレングリコールである前記ニムフェオール類含有溶液。(b)の構成によれば、ニムフェオール類を水系分散媒中において、より安定的に分散させることができる。また、特に香粧品の分野において、好ましく適用することができる。

Claims (3)

  1. 水系分散媒にニムフェオール−A、ニムフェオール−B、及びニムフェオール−Cから選ばれる少なくとも一種であるニムフェオール類を分散させるニムフェオール類の分散方法において、
    前記ニムフェオール類を溶媒に溶解したニムフェオール類含有溶液(漬け物用添加剤としての適用を除く)と前記水系分散媒とを混合する混合工程を備え、
    前記ニムフェオール類含有溶液は、水系分散媒に易溶性である、一価アルコール、二価アルコール、及び三価アルコールから選ばれる少なくとも一種が溶媒であって、
    前記混合工程における前記ニムフェオール類含有溶液中のニムフェオール類の濃度は、8質量%以下であることを特徴とするニムフェオール類の分散方法。
  2. 前記ニムフェオール類が、オオバギ由来であることを特徴とする請求項に記載のニムフェオール類の分散方法。
  3. 前記溶媒は、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、及びエタノールから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は請求項に記載のニムフェオール類の分散方法。
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