JP5820194B2 - 新たな抗カンジダ活性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ゲラニオール、オイゲノール、シトラールといった植物精油成分そのもの、または、ゲラニオールを含む植物精油であるパルマローザ油、ゼラニウム・エジプト油、オイゲノールを含む植物精油であるクローブ油、シトラールを含む植物精油であるレモングラス油、ジンジャー精油の中から1種類を選び、それとカプリン酸とを併せて使用することによって抗カンジダ活性を高めた組成物およびその用途に関する。本発明の組成物は、発症頻度が高く、かつ再発しやすい皮膚、粘膜のカンジダ症、とくに口腔カンジダ症に対し、効果的かつ簡便で、副作用や耐性菌出現の危険がない治療法および予防法を提供するものである。
ゲラニオール、オイゲノール、シトラールといった精油成分そのもの、または、それらの成分を比較的多く含む植物精油、パルマローザ油、ゼラニウム・エジプト油(以上、ゲラニオールを含む)、クローブ油(オイゲノールを含む)、レモングラス油、ジンジャー精油(以上、シトラールを含む)は、それぞれカンジダや白癬菌に対して抗真菌作用を発揮し、それらの感染によって引き起こされる皮膚あるいは粘膜の真菌症に適用すると、実用的な治療効果を発揮することが知られている。
上記植物精油の中で、ジンジャー精油は、すでに日本各地で栽培され、ないしは自生しているショウガを原料として生産することが可能である。したがって本発明により、ジンジャー精油の新たな用途が実用化されれば、国内産業の育成に結びつく可能性がある。現在、大部分の植物精油は専ら輸入に頼っており、それらを国産化しようとする場合、原料となる芳香性ハーブを栽培するために新しく広大な面積の農地を必要とし、そのために投資コストが過大となって直ちに国産化できる可能性は低い。
ショウガ(Zingiber officinate Rosc.)は、熱帯アジア原産のショウガ科の多年草で、利用部位は秋期に収穫される根茎である。用途としては、香辛料としての食用の他、漢方などの医療用としても用いられる。ショウガの水蒸気蒸溜によって得られるジンジャー精油には、主成分として、ジンギベレンやファルネセンなどのセスキテルペン類、シトラール、1,8−シネオールなどのモノテルペン類が含まれており、血液循環の促進、抗ウイルス、鎮痛といった効果を示すことが報告されている。セスキテルペンおよびモノテルペンとは、それぞれ炭素数が15個、10個から成るテルペン類を指す。ジンジャー精油には、抗菌、抗真菌作用も知られているが、その効果は他の精油に比較してとくに強いものではない。
カプリン酸は、炭素数10の中鎖脂肪酸で、ココナッツ油、ヤシ油、パーム油といった食用油に多く含まれるが、ほとんどはトリグリセリド分子の構成脂肪酸として結合型で存在している。カプリン酸は、香料、染料、医薬品などの各種化学工業において有機合成の原料として用いられる一方、食品添加物としての使用も認可されている。一般に、カプリン酸、カプロン酸(炭素数6)、カプリル酸(炭素数8)などの中鎖脂肪酸は、非結合型で抗真菌作用を発揮することが知られている。
以上述べてきたように、ゲラニオール、オイゲノール、シトラールといった精油成分そのもの、またはそれらを比較的多く含む植物精油、およびカプリン酸などの中鎖脂肪酸が、それぞれ抗真菌作用を発揮することは公知の事実である。しかしながら特定の精油成分またはそれらを含む植物精油とカプリン酸とを併せて使用することによって抗真菌作用が相乗的に高まるという知見は、これまで報告されたことはなく公知ではない。
カンジダは、健常人にも見い出せる常在性真菌であるが、ときによって病原性を示し、口腔や腟、皮膚のカンジダ症の原因となる。口腔カンジダ症は、舌の疼痛や味覚異常などの症状を呈してQOLの低下をもたらす感染症で、とくに高齢者に発症頻度が高く、老人ホームにおいてはその治療や予防が重要な課題となっている。口腔カンジダ症の原因菌は、その大半がカンジダ・アルビカンスCandida albicansである。女性の腟カンジダ症も発症頻度が大変高く、局所の痒み、発赤、帯下がみられ、QOLが低下する。膣カンジダ症の原因菌は、主にカンジダ・アルビカンスであるが、カンジダ・トロピカリスCandida tropicalis、カンジダ・グラブラタCandida glabrataなどの菌種も比較的高い頻度で検出される。後の2菌種は通常の抗真菌剤には抵抗性で、難治性かつ再発を繰り返しやすいとされている。
カンジダは、酵母形と菌糸形の2形性を示し、このうち菌糸形が病原性に直接関わっている。したがって菌糸形発育の阻害は、カンジダ感染症の予防に結びつくとされている。カンジダの酵母形および菌糸形発育それぞれに対するin vitro阻害試験の方法は確立されており、それによって、様々な材料のMIC(最少発育阻止濃度)を測定することができる。菌糸形発育に対するゲラニオール、オイゲノール、シトラール、およびカプリン酸の各IC95(95%発育阻止濃度)は、それぞれ25、200、50、3.13μg/mLであった。
一般に、微生物に対して抗菌物質を併用した場合の相乗的効果の定義は、2剤の個別的効果の和よりも有意に大きい効果を示した場合を指す。また相乗効果に対する評価は、以下の通り、チェッカーボード法によって2剤のMICの値から求めたFIC係数(fractional inhibitory concentration index)によっておこなうことができる。すなわちFIC係数が0.5未満の場合、相乗効果があると判定される。本発明のゲラニオールとカプリン酸を併用した場合、カンジダの菌糸形発育に対するFIC係数は0.28となり、相乗効果があると判定された。同様に、オイゲノールとカプリン酸を併用した場合、シトラールとカプリン酸を併用した場合、各FIC係数は、それぞれ同じく0.37となり、いずれも相乗効果があると判定された。
FIC係数の求め方
FIC係数=A1/A0+B1/B0
A0:A剤単独のMIC。 A1:A剤、B剤併用時のA剤のMIC
B0:B剤単独のMIC。 B1:A剤、B剤併用時のB剤のMIC
FIC係数による併用効果の評価
FIC<0.5 相乗効果
0.5<FIC<1.0 超相加効果
FIC=1.0 相加効果
1.0<FIC=2.0 不関
FIC>2.0 拮抗作用
マウスを用いた口腔カンジダ症の病態モデルも作成されており、それを用いて候補となる材料の治療効果、予防効果を評価することができる。ジンジャー精油とカプリン酸の併用は、重症度の指標である舌スコアを有意に改善し、さらにカンジダの深部組織(腎臓)への侵入を強く抑制した。
皮膚や粘膜におけるカンジダ症、とくに高齢者における口腔カンジダ症、女性における腟カンジダ症は、それぞれ発症頻度が大変高く、かつ再発を繰り返しやすい。これらのカンジダ症の治療には、アゾール系やキャンディン系といった抗真菌剤が用いられるが、使用終了後の再発を抑えることは困難である。再発を抑えるために薬剤を長期間使用した場合、肝機能障害などの副作用や耐性菌の出現といったリスクが高まる危険がある。植物精油やその成分、および脂肪酸を活用した方法は、副作用や耐性菌出現の危険がほとんどなく、かつ効果的な治療法であって、さらに患者自身が手軽に実行できるという特長がある。
本発明の中のジンジャー精油は、日本各地で栽培され、ないしは自生しているショウガを原料として生産するため、栽培コストを大幅に低減することが可能であり、本発明によってジンジャー精油の新たな用途が実用化されれば、国内産業の育成に結びつく可能性がある。現在、大部分の植物精油は専ら輸入に頼っており、日本においてそれを生産しようとする場合、原料となる芳香性ハーブを栽培するために新しく広大な面積の農地が必要となり、そのための投資が過大となる可能性が高い。
本発明者らは、市販のショウガを実験用の水蒸気蒸溜装置にかけて精油を得た。得られた精油をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、ジンギベレン、ビサボレン、ar−クルクメンといったセスキテルペン類、およびシトラール、1,8−シネオール、ゲラニオールといったモノテルペン類の含有量が高いことが分かった。以上の情報は、従来の知見と異なるものではない。また抗真菌活性の高いシトラールが多く含まれていることから、ジンジャー精油はシトラールを多く含む植物精油とみなすことができると判断した。
カンジダの菌糸形発育に対する阻害試験は、帝京大学医真菌研究センター保存の菌株C.albicans TIMM1768株を用いておこなった。カンジダは、子牛血清を含む培地では専ら菌糸形をとり、培養器の表面に付着して発育する。2%子牛血清を含むRPMI−1640培地に、カンジダを菌数5×10、および予め各濃度を設定してDMSO(ジメチルスルフォキシド。培地中の最終濃度0.25%)に溶解したゲラニオール、オイゲノール、シトラールまたはカプリン酸を加えて最終液量を200μLとした。それを96穴マイクロプレートのウェルの中で、5%炭酸ガス存在下、37℃、16時間培養した。培養終了後、各ウェルの培養物を吸引除去し、生理食塩水180μLを入れて洗浄回収し、70%エタノール200μLを入れて残存しているカンジダを殺菌した。エタノールを除去して水道水で洗浄した後、染色液(0.1Mリン酸バッファーに溶解した0.01%クリスタルバイオレット液)100μLを入れてウェルの表面に付着したカンジダ菌を染色した。水道水で洗浄して余分な染色液を除去した後、0.04NHClを含む3−イソプロパノール150μLおよび0.25%SDS溶液50μLを入れて菌体に付着した色素を遊離させた。色素を遊離させた後、プレートをマルチスキャンフォトメーターにかけて、各ウェルのOD620nmを測定した。増殖阻害率は、以下の式により求めた。
増殖阻害率(%)=(1−サンプルOD/対照OD)×100
ゲラニオール、オイゲノール、シトラールおよびカプリン酸の各IC95(95%増殖阻害濃度)は、それぞれ25、200、50、3.13μg/mLであった。
ゲラニオール、オイゲノール、シトラール各成分とカプリン酸との併用による抗カンジダ活性の相乗効果については、チェッカーボード法により評価した。96穴マイクロプレート上にチェッカーボードを想定し、各精油成分、およびカプリン酸それぞれの濃度系列を各ウェルに交差させた。実験条件および測定方法などは、菌糸形発育に対する試験と同様とした。
ゲラニオールとカプリン酸を併用した場合、単独使用時の各IC95は、それぞれ25、3.13μg/mL、併用時の各IC95は、それぞれ0.78、0.78μg/mLであった。それらの数値を用いて以下の計算により求めたFIC係数は0.28となり、相乗効果があると判定された。
FIC係数=0.78/25+0.78/3.13=0.28<0.5
オイゲノールとカプリン酸を併用した場合、単独使用時の各IC95は、それぞれ200、6.25μg/mL、併用時の各IC95は、それぞれ6.25、1.56μg/mL、それらの数値を用いて計算したFIC係数は0.37となり、相乗効果があると判定された。
シトラールとカプリン酸を併用した場合、単独使用時の各IC95は、それぞれ50、3.13μg/mL、併用時の各IC95は、それぞれ0.78、25μg/mL、それらの数値を用いて計算したFIC係数は0.37となり、相乗効果があると判定された。
マウスを用いた口腔カンジダ症病態モデルによる評価は以下の方法によりおこなった。ICR系マウス(雌、6週齢)を用い、カンジダ菌接種前日に、免疫抑制を目的にプレドニゾロン100mg/kgを皮下注射した。また、その日から塩酸クロルテトラサイクリン15mg/mLを含有した水道水を自由に摂取させた。接種当日、マウスを安静状態に保つため、予めクロルプロマジン塩酸塩12mg/kgを筋肉内投与した。菌数を2×10cells/mlに調整したC.albicans菌懸濁液に綿棒を漬け、それを安静になったマウス口腔に擦り付けて接種した。ジンジャー精油およびカプリン酸は、各濃度3および1%になるようにTween80(終濃度1%)を用いて蒸留水に懸濁し、カンジダ菌接種3、24および27時間後に、マウス用胃ゾンデを用い、口腔内の舌背に滴下して投与した。接種2日後にマウスを安楽死させ、基準に従って舌症状スコアを評価した。その後マウス口腔内を綿棒で拭い、その綿棒に回収されたC.albicans菌体を生理食塩水中に懸濁した。その一定量をカンジダGS平板培地に塗布し、37℃、20時間培養して出現したコロニー数を計測した。コロニー数から当該個体の口腔に存在するカンジダ菌数を反映するCFU(colony forming unit)を算出した。また体内臓器へのカンジダの移行、増殖を評価するため、マウスを解剖して腎臓を摘出し、生理食塩水を加えてミキサーにより破砕した。その一定量をカンジダGS平板培地に塗布し、37℃、20時間培養して出現したコロニー数を計測した。その結果、生菌数については、それぞれの単独使用群、さらには併用群においても対照群に比較して有意の減少を認めなかったが、舌症状スコアについては、対照群5.48±0.13に対し、いずれの実験群も有意の改善を認め、とくに併用群においては1.29±0.49と著しい効果を示した。特記すべきは腎臓から検出されたカンジダで、各単独使用群においては菌数の減少は認められなかったものが、併用群においてはいずれのマウスからも菌は検出されなかった。また併用群のマウスは毛並みがよく、健康状態がより良好であることが窺われた。以上の結果は、とくにジンジャー精油とカプリン酸の併用が、カンジダの菌糸形発育を阻害してその粘膜感染を抑え、そればかりでなく、その先の病態であるカンジダの深部感染をも抑えていることを示している。
本発明の抗カンジダ活性組成物は、皮膚や粘膜におけるカンジダの感染を抑える効果を発揮する。したがって発明の効果としては、皮膚や粘膜のカンジダ症、とくに患者数の多い口腔カンジダ症や膣カンジダ症への適用と、それによる症状の改善、病気の治癒、感染の予防が第一にあげられる。また植物精油成分そのものや植物精油、およびカプリン酸は、高純度の製品を得ることが容易であり、かつ食品への利用も認められている。したがって医薬品から食品まで幅広い製品に応用することが可能であり、実用化されれば入手しやすく使用が簡便で、患者にとってメリットが大きい。
口腔カンジダ症や膣カンジダ症は再発を繰り返しやすく、しかも副作用および耐性菌出現リスクのために抗真菌剤の適用には限界がある。植物精油成分または植物精油とカプリン酸とを併用した組成物は、このようなリスクを考慮する必要がなく、患者は安心して利用することができる。
ショウガは日本各地で栽培され、ないしは自生し、植物精油の原材料として入手することが容易である。従って、ショウガから生産されるジンジャー精油の新たな用途が開発されれば、新たな国内産業の育成に結びつく期待もある。
本発明の抗カンジダ活性組成物の必須材料である植物精油成分やそれらを含む植物精油、およびカプリン酸は、高純度の製品を得ることが容易であり、かつ食品への利用も可能である。したがって、医薬品から食品まで幅広い範囲の製品に応用することができる。医薬品的な形態としては、例えば液剤や軟膏として、口腔や膣などの患部に直接塗布または噴霧することがあげられる。食品的な形態としては、例えばキャンディやグミ、ガムといった製品や、精油成分の保存性がよい容器を使用した飲料などがあげられる。いずれの製品であっても、使用に際して、植物精油成分やカプリン酸の必要量の投与を可能とする形態であり、かつ保証期間内にそれらの保存に問題を生じないことが肝要である。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1.ジンジャー精油の調製と、その中に含まれている揮発成分の分析
市販の成熟生ショウガの根茎を洗浄してよく水を切り薄く切り分けた。これを小型のガラス製水蒸気蒸留装置(東京製作所、東京)にかけ、2時間かけて100mLの精油を得た。得られた精油を定量的に酢酸エチル10mLに稀釈し、ガスクロマトグラフィーにより揮発成分を分析した。分析条件は以下の通り。ガスクロマト装置:Model353B(GLScience社、東京)、カラム:TC−5(0.5mm×30m)、キャリアー:ヘリウムガス、60℃から200℃まで5℃/分の昇温、検出:水素炎検出器。分析結果は表1に示す。モノテルペンであるシトラールが成分的に最も多く含まれていた。
実施例2.ゲラニオール、オイゲノール、シトラールおよびカプリン酸のカンジダ菌糸形発育に対する阻害活性
カンジダは帝京大学医真菌研究センター保存の臨床分離株、Candida albicans TIMM1768を用い、サブロー・デキストロース寒天培地平板で37℃、20時間培養した。増殖した菌体を回収して2%子牛血清を含むRPMI−1640培地に懸濁し、菌数5×10cells/mLに調整してカンジダ菌液とした。ゲラニオール、オイゲノール、シトラールおよびカプリン酸は、予め最終濃度に合わせて、それぞれDMSOに溶解し、この溶液を2%子牛血清を含むRPMI−1640培地に加えてサンプル液とした(培地中のDMSO濃度0.5%)。サンプル液およびカンジダ菌液各100μLを、それぞれ96穴マイクロプレート(Multi Well Plate、住友ベークライト、東京)各ウェルに入れて、5%炭酸ガス存在下、37℃、16時間培養した。培養終了後、各ウェル中の培養物を吸引除去し、生理食塩水180μLを入れて洗浄回収し、70%エタノール200μLを入れてカンジダを殺菌した。エタノールを除去して水道水で洗浄した後、染色液(0.1Mリン酸バッファーに溶解した0.01%クリスタルバイオレット液)100μLを入れて15分間静置し、ウェルの表面に付着したカンジダ菌を染色した。水道水で洗浄して余分な染色液を除去した後、0.04NHClを含む3−イソプロパノール150μLおよび0.25%ドデシル硫酸ナトリウム溶液50μLを入れて菌体に付着した色素を遊離させた。色素を遊離させた後、プレートをマルチスキャンフォトメーター(Lab Systems Multiskan、大日本製薬、大阪)にかけて、各ウェルのOD620nmを測定した。増殖阻害率は、以下の式により求めた。
増殖阻害率(%)=(1−サンプルOD/対照OD)×100
ゲラニオール、オイゲノール、シトラールおよび市販カプリン酸の各IC95(95%増殖阻害濃度)は、それぞれ25、200、50、3.13μg/mLであった。
実施例3.カンジダ菌糸形発育に対するゲラニオール、オイゲノール、シトラール各成分とカプリン酸との併用による抗カンジダ活性の相乗効果
併用による抗カンジダ活性の相乗効果については、チェッカーボード法により評価した。96穴マイクロプレート上にチェッカーボードを想定し、各ウェルに、ゲラニオール、オイゲノール、シトラール各成分とカプリン酸それぞれの濃度系列を交差させた。実験条件および測定方法などは菌糸形発育に対する試験と同様とした。
ゲラニオールとカプリン酸を併用した場合、各単独使用時のIC95は、それぞれ25、3.13μg/mL、併用時のIC95は、それぞれ0.78、0.78μg/mLであった。それらの数値を用いて以下の計算により求めたFIC係数は0.28となり、相乗効果があると判定された。
FIC係数=0.78/25+0.78/3.13=0.28<0.5
オイゲノールとカプリン酸を併用した場合、各単独使用時のIC95は、それぞれ200、6.25μg/mL、併用時のIC95は、それぞれ6.25、1.56μg/mL、それらの数値を用いて同様に計算したFIC係数は0.37となり、相乗効果があると判定された。
実施例4.マウス口腔カンジダ症モデルにおけるジンジャー精油およびカプリン酸併用の治療効果
実験動物にはICR系マウス(雌、6週齢、日本チャールスリバー)を用い、カンジダ菌接種前日に、免疫抑制を目的にプレドニゾロン100mg/kgを皮下注射した。また、その日から塩酸クロルテトラサイクリン15mg/mLを含有した水道水の自由摂取を開始した。接種当日、マウスを安静状態に保つため、予めクロルプロマジン塩酸塩(和光純薬工業)12mg/kgを筋肉内投与した。使用した菌株および培養方法は前項までの実施例と同じとし、増殖した菌体を、2%子牛血清を含むRPMI−1640培地に懸濁し、菌数を2×10cells/mlに調整して菌液とした。この菌液に綿棒を漬け、それを安静になったマウス口腔に擦り付けてカンジダ菌を接種した。ジンジャー精油およびカプリン酸は、予めTween80(終濃度1%)を用いて蒸留水に懸濁し、カンジダ菌接種3、24および27時間後に、マウス用胃ゾンデを用い、口腔内の舌背に滴下して投与した。接種2日後にマウスを安楽死させ、基準に従って舌症状スニアを評価した。その後マウス口腔内を綿棒で拭い、その綿棒に回収されたカンジダ菌体を生理食塩水中に懸濁した。その一定量をカンジダGS平板培地に塗布し、37℃、20時間培養して出現したコロニー数を計測した。コロニー数から当該個体から回収されたカンジダ生菌数CFU(colony forming unit)を算出した。また体内臓器へのカンジダの移行、増殖を評価するため、マウスを解剖して腎臓を摘出し、生理食塩水を加えてミキサーにより組織を破砕した。その一定量をカンジダGS平板培地に塗布し、37℃、20時間培養して出現したコロニー数を計測し、腎臓におけるカンジダ生菌数CFU(colony forming unit)を算出した。実験の結果、口腔から回収された生菌数については、各単独使用群、さらには併用群においても対照群に対して有意の減少を認めなかったが、舌症状スコアについては、対照群5.48±0.13に対し、いずれの実験群も有意の改善を認め、とくに併用群においては1.29±0.49と著しい改善効果を発揮した。腎臓から検出されたカンジダ菌については、対照群に対し、各単独使用群においては有意の菌数減少は認められなかったが、併用群においては、いずれのマウスからも菌は検出されなかった。また併用群のマウスは毛並みの状態もよく、健康状態がより良好であることが窺われた。以上の結果は、とくにジンジャー精油とカプリン酸の併用はカンジダの菌糸形発育を阻害して粘膜感染を抑えるとともに、そればかりでなく、その先の病態であるカンジダの深部感染をも抑えていることを示している。図1に、舌症状スコアの評価結果を、図2に、腎臓から回収されたカンジダ生菌数の測定結果を、それぞれ示す。
表および図の簡単な説明
Figure 0005820194
図1.マウス口腔カンジダ症モデル実験における舌症状スコアの評価結果
Figure 0005820194
図2.マウス口腔カンジダ症モデル実験における腎臓のカンジダ生菌数の測定結果
Figure 0005820194

Claims (2)

  1. 以下の成分:
    0.78μg/ml濃度のゲラニオールまたは該濃度のゲラニオールを含む植物精油と、0.78μg/ml濃度のカプリン酸、または
    6.25μg/ml濃度のオイゲノールまたは該濃度のオイゲノールを含む植物精油と、1.56μg/ml濃度のカプリン酸、
    を含む抗カンジダ活性組成物。
  2. ゲラニオールを含む植物精油がパルマローザ油またはゼラニウム・エジプト油であり、オイゲノールを含む植物精油がクローブ油である請求項1の抗カンジダ活性組成物。
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