JP2013100253A - ショウガ成分を含む抗カンジダ活性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】皮膚や粘膜のカンジダ症、とくに高齢者の口腔カンジダ症や女性の膣カンジダ症は、いずれも患者数が多く、かつ再発しやすい感染症である。抗真菌剤による治療は、副作用や耐性菌出現のリスクがあって長期間の使用が限定されるため、再発を抑えることは困難である。それらの感染症を含む皮膚、粘膜のカンジダ症に対し、副作用や耐性菌のリスクを考慮する必要がなく、また患者が入手しやすく簡便に使用できる新たな抗カンジダ活性組成物を提供する。
【解決手段】植物成分であるショウガオールは、強い抗カンジダ活性を発揮する。また、ショウガオールなどの植物成分は、高純度の製品を得ることが容易であり、かつ食品への利用も認められている。したがって医薬品から食品まで幅広い製品に応用することが可能であり、実用化されれば、患者はいずれかの製品を容易に入手し、簡便に使用することができる。口腔カンジダ症や膣カンジダ症は、再発を繰り返しやすいが、植物成分を含む組成物は、抗真菌剤適用によって生ずるリスクを心配せず、患者は安心して利用することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、抗カンジダ活性の高いショウガオールを含む組成物およびその用途に関する。本発明の組成物は、発症頻度が高く、かつ再発しやすい皮膚、粘膜のカンジダ症、とくに口腔カンジダ症に対し、効果的かつ簡便で、副作用や耐性菌出現の危険がない治療法および予防法を提供するものである。
ショウガ(Zingiber officinate Rosc.)は、熱帯アジア原産のショウガ科の多年草で、日本各地で広く栽培され、ないしは自生している。利用部位は秋期に収穫される根茎であり、用途としては、香辛料としての食用の他、漢方などの医療用としても用いられる。ショウガの薬理作用としては、消化促進、緩下、鎮咳、血行促進、健胃、解熱、抗菌といった作用が知られている。ショウガを有機溶剤で抽出・濃縮すると粘稠な樹脂状のジンジャーオレオレジンが得られる。その中には、ジンゲロン、ジンゲロール、ショウガオールなどの有用な低分子成分が含まれている。また、ショウガの水蒸気蒸溜によって得られるジンジャー精油には、主成分として、ジンギベレンやファルネセンなどのセスキテルペン類、シトラール、1,8−シネオールなどのモノテルペン類が含まれており、血液循環の促進、抗ウイルス、鎮痛といった効果を示すことが報告されている。セスキテルペンおよびモノテルペンとは、それぞれ炭素数が15個、10個から成るテルペン類を指す。
ショウガに含まれる成分が抗真菌作用を発揮することは公知の事実である。例えば、ショウガオール関連化合物の[6]−デヒドロショウガオールは、IC50(50%発育阻止濃度)3.55mg/mLで、植物病原真菌のRhizoctonia solaniに対して抗真菌作用を発揮する。しかしながら、ショウガオールが、特にカンジダに対して極めて低い濃度で効果を発揮すること、具体的にはIC50(50%発育阻止濃度)が6.25μg/mLであり、前述の植物病原真菌Rhizoctonia solaniに対する有効濃度の500分の1以下の濃度で効果を発揮することは公知の情報ではない。
カンジダは、健常人にも見い出せる常在性真菌であるが、ときによって病原性を示し、口腔や腟、皮膚のカンジダ症の原因となる。口腔カンジダ症は、舌の疼痛や味覚異常などの症状を呈してQOLの低下をもたらす感染症で、とくに高齢者に発症頻度が高く、老人ホームにおいてはその治療や予防が重要な課題となっている。口腔カンジダ症の原因菌は、その大半がカンジダ・アルビカンスCandida albicansである。女性の腟カンジダ症も発症頻度が大変高く、局所の痒み、発赤、帯下といった症状を呈し、QOLが低下する。膣カンジダ症の原因菌は、主にカンジダ・アルビカンスであるが、カンジダ・トロピカリスCandida tropicalis、カンジダ・グラブラタCandida glabrataなどの菌種も比較的高い頻度で検出される。後の2菌種は通常の抗真菌剤には抵抗性で、難治性かつ再発を繰り返しやすいとされている。
カンジダは、酵母形と菌糸形の2形性を示し、このうち菌糸形が病原性に直接関わっている。したがって菌糸形発育の阻害は、カンジダ感染症の予防に結びつくとされている。カンジダの酵母形および菌糸形発育それぞれに対するin vitro阻害試験の方法は確立されており、それによって、様々な材料のMIC(最少発育阻止濃度)を測定することができる。菌糸形発育に対する[6]−ショウガオールのIC50(50%発育阻止濃度)およびIC90(90%発育阻止濃度)は、それぞれ6.25、25μg/mLであった。
マウスを用いた口腔カンジダ症の病態モデルも作成されており、それを用いて候補となる材料の治療効果、予防効果を評価することができる。[6]−ショウガオールの適用は、重症度の指標である舌スコアを有意に改善した。
皮膚や粘膜におけるカンジダ症、とくに高齢者における口腔カンジダ症、女性における腟カンジダ症は、それぞれ発症頻度が大変高く、かつ再発を繰り返しやすい。これらのカンジダ症の治療には、アゾール系やキャンディン系といった抗真菌剤が用いられるが、使用終了後の再発を抑えることは困難である。再発を抑えるために薬剤を長期間使用した場合、肝機能障害などの副作用や耐性菌の出現といったリスクが高まる危険がある。ショウガオールなどの植物成分を活用した方法は、副作用や耐性菌出現の危険がほとんどなく、かつ効果的な治療法であって、さらに患者自身が手軽に実行できるという特長がある。
本発明者らは、市販のショウガにエタノールを加えて抽出し、抽出物を濃縮してオレオレジンを調製した。得られたオレオレジンを液体クロマトグラフィーにより分析した結果、[6]−ジンゲロール、[6]−ショウガオール、ジンギベレン、β−セスキフェランドレンといった成分の含有量が高いことが分かった。[6]−ショウガオールの含有量は、[6]−ジンゲロールに次いで2番目に高く14%であった。
カンジダは、酵母形と菌糸形の2形性を示し、このうち菌糸形が病原性に直接関わっている。したがって菌糸形発育の阻害は、カンジダ感染症の予防や治療に結びつくとされている。カンジダの酵母形および菌糸形発育それぞれに対するin vitro阻害試験の方法は確立されており、それによって、様々な材料のMIC(最少発育阻止濃度)を測定することができる。
カンジダの菌糸形発育に対する阻害試験は、帝京大学医真菌研究センター保存の菌株C.albicans TIMM1768株を用いておこなった。カンジダは、子牛血清を含む培地では専ら菌糸形をとり、培養器の表面に付着して発育する。2%子牛血清を含むRPMI−1640培地に、カンジダを菌数5×10、および予め各濃度を設定してDMSO(ジメチルスルフォオキシド。培地中の最終濃度0.25%)に溶解したオレオレジン、[6]−ショウガオールまたは[6]−ジンゲロールを加えて最終液量を200μLとした。それを96穴マイクロプレートのウェルの中で、5%炭酸ガス存在下、37℃、16時間培養した。培養終了後、各ウェルの培養物を吸引除去し、生理食塩水180μLを入れて洗浄回収し、70%エタノール200μLを入れて残存しているカンジダを殺菌した。エタノールを除去して水道水で洗浄した後、染色液(0.1Mリン酸バッファーに溶解した0.01%クリスタルバイオレット液)100μLを入れてウェルの表面に付着したカンジダ菌を染色した。水道水で洗浄して余分な染色液を除去した後、0.04NHClを含む3−イソプロパノール150μLおよび0.25%SDS溶液50μLを入れて菌体に付着した色素を遊離させた。色素を遊離させた後、プレートをマルチスキャンフォトメーターにかけて、各ウェルのOD620nmを測定した。増殖阻害率は、以下の式により求めた。
増殖阻害率(%)=(1−サンプルOD/対照OD)×100
オレオレジン、[6]−ショウガオールおよび[6]−ジンゲロールの各IC50(50%増殖阻害濃度)は、それぞれ、50、6.25、50μg/mLであった。この結果は、[6]−ショウガオールに特徴的な作用として、カンジダの病原性に直接関わる菌糸形発育を、極めて低い濃度で抑制することを示す。
マウスを用いた口腔カンジダ症病態モデルによる評価は以下の方法によりおこなった。ICR系マウス(雌、6週齢)を用い、カンジダ菌接種前日に、免疫抑制を目的にプレドニゾロン100mg/kgを皮下注射した。また、その日から塩酸クロルテトラサイクリン15mg/mLを含有した水道水を自由に摂取させた。接種当日、マウスを安静状態に保つため、予めクロルプロマジン塩酸塩12mg/kgを筋肉内投与した。菌数を2×10cells/mlに調整したC.albicans菌懸濁液に綿棒を漬け、それを安静になったマウス口腔に擦り付けて接種した。[6]−ショウガオールは、濃度500μg/mLになるようにTween80(終濃度1%)を用いて蒸留水に懸濁し、カンジダ菌接種3、24および27時間後に、マウス用胃ゾンデを用い、口腔内の舌背に滴下して投与した。接種2日後にマウスを安楽死させ、基準に従って舌症状スコアを評価した。その後マウス口腔内を綿棒で拭い、その綿棒に回収されたC.albicans菌体を生理食塩水中に懸濁した。その一定量をカンジダGS平板培地に塗布し、37℃、20時間培養して出現したコロニー数を計測した。コロニー数から当該個体の口腔に存在するカンジダ菌数を反映するCFU(Colony forming unit)を算出した。その結果、生菌数については、対照群に対して有意ではないものの、減少傾向は明らかであった。舌症状スコアについては1.50±0.39と、対照群4.38±0.13に対して有意の著しい改善効果を認めた。以上の結果は、[6]−ショウガオールの適用が、カンジダの菌糸形発育を阻害してその粘膜感染を抑えていることを示している。
本発明の抗カンジダ活性組成物は、皮膚や粘膜におけるカンジダの感染を抑える効果を発揮する。したがって発明の効果としては、皮膚や粘膜のカンジダ症、とくに患者数の多い口腔カンジダ症や膣カンジダ症への適用と、それによる症状の改善、病気の治癒、感染の予防が第一にあげられる。またショウガオールなどの植物精油成分は、高純度の製品を得ることが容易であり、かつ食品への利用も認められている。したがって医薬品から食品まで幅広い製品に応用することが可能であり、実用化されれば入手しやすく使用が簡便で、患者にとってメリットが大きい。
口腔カンジダ症や膣カンジダ症は再発を繰り返しやすく、しかも副作用および耐性菌出現リスクのために抗真菌剤の適用には限界がある。ショウガオールなどの植物成分は、このようなリスクを考慮する必要がなく、患者は安心して利用することができる。
本発明の抗カンジダ活性組成物の必須材料であるショウガオールなどの植物成分は、高純度の製品を得ることが容易であり、かつ食品への利用も可能である。したがって、医薬品から食品まで幅広い範囲の製品に応用することができる。医薬品的な形態としては、例えば液剤や軟膏として、口腔や膣などの患部に直接塗布または噴霧することがあげられる。食品的な形態としては、例えばキャンディやグミ、ガムといった製品や、有効成分の保存性がよい容器を使用した飲料などがあげられる。いずれの製品であっても、使用に際して、ショウガオールの有効量の投与を可能とする形態であり、かつ保証期間内にそれらの保存に問題を生じないことが肝要である。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1.ジンジャーオレオレジンの調製と、その中に含まれている成分の分析
市販の成熟生ショウガの根茎(231g)を洗浄してよく水を切り薄く切り分けた。これにエタノール300mLを加えて1回目の抽出をおこなった。さらに抽出残渣に同量のエタノールを加えて2回目の抽出をおこない、それらの抽出液を併せてエバポレーターによる減圧濃縮にかけ、290mgのオレオレジンを得た。
得られたオレオレジンに含まれている成分を、液体クロマトグラフィーにより分析した。分析条件は以下の通り。装置:Model353B(Waters alliance instrument社、東京)、マススペクトラム検出器:WatersZQMS、展開溶媒:50mM酢酸アンモニウム、アセトニトリル、水(0〜10分10:10:80リニアーグラジエント、10〜20分10:10:0組成固定)、流量:0.4mL/min、温度:30℃、検出:UV(280nm)。
オレオレジンに含まれている成分の含量は以下の通りであった。[6]−ジンゲロール19.4%、[6]−ショウガオール14.0%、ジンギベレン11.8%、β−セスキフェランドレン8.0%、ビサボレン7.1%、ar−クルクメン4.2%。
実施例2.[6]−ショウガオール、[6]−ジンゲロールおよびショウガオレオレジンのカンジダ菌糸形発育に対する阻害活性
カンジダは帝京大学医真菌研究センター保存の臨床分離株、Candida albicans TIMM1768を用い、サブロー・デキストロース寒天培地平板で37℃、20時間培養した。増殖した菌体を回収して2%子牛血清を含むRPMI−1640培地に懸濁し、菌数5×10cells/mLに調整してカンジダ菌液とした。[6]−ショウガオール、[6]−ジンゲロールおよびショウガオレオレジンは、予め最終濃度に合わせて、それぞれDMSOに溶解し、この溶液を2%子牛血清を含むRPMI−1640培地に加えてサンプル液とした(培地中のDMSO濃度0.5%)。サンプル液およびカンジダ菌液各100μLを、それぞれ96穴マイクロプレート(Multi Well Plate、住友ベークライト、東京)各ウェルに入れて、5%炭酸ガス存在下、37℃、16時間培養した。
培養終了後、倒立顕微鏡によって発育状況を観察し、各ウェル中の培養物を吸引除去し、生理食塩水180μLを入れて洗浄回収し、70%エタノール200μLを入れてカンジダを殺菌した。エタノールを除去して水道水で洗浄した後、染色液(0.1Mリン酸バッファーに溶解した0.01%クリスタルバイオレット液)100μLを入れて15分間静置し、ウェルの表面に付着したカンジダ菌を染色した。水道水で洗浄して余分な染色液を除去した後、0.04NHClを含む3−イソプロパノール150μLおよび0.25%ドデシル硫酸ナトリウム溶液50μLを入れて菌体に付着した色素を遊離させた。色素を遊離させた後、プレートをマルチスキャンフォトメーター(Lab Systems Multiskan、大日本製薬、大阪)にかけて、各ウェルのOD620nmを測定した。増殖阻害率は、以下の式により求めた。
増殖阻害率(%)=(1−サンプルOD/対照OD)×100
[6]−ショウガオール、[6]−ジンゲロールおよびショウガオレオレジンの各IC50(50%増殖阻害濃度)は、それぞれ6.25、50、50μg/mLであった。また、各IC90(90%増殖阻害濃度)は、それぞれ25、100、100μg/mLであった。
実施例4.マウス口腔カンジダ症モデルにおける[6]−ショウガオールおよびショウガオレオレジンの治療効果
実験動物にはICR系マウス(雌、6週齢、日本チャールスリバー)を用い、カンジダ菌接種前日に、免疫抑制を目的にプレドニゾロン100mg/kgを皮下注射した。また、その日から塩酸クロルテトラサイクリン15mg/mLを含有した水道水の自由摂取を開始した。接種当日、マウスを安静状態に保つため、予めクロルプロマジン塩酸塩(和光純薬工業)12mg/kgを筋肉内投与した。使用した菌株および培養方法は前項までの実施例と同じとし、増殖した菌体を、2%子牛血清を含むRPMI−1640培地に懸濁し、菌数を2×10cells/mlに調整して菌液とした。この菌液に綿棒を漬け、それを安静になったマウス口腔に擦り付けてカンジダ菌を接種した。[6]−ショウガオールおよびオレオレジンは、それぞれ濃度500μg/mLおよび3.3mg/mLになるよう予めTween80(終濃度1%)を用いて蒸留水に懸濁した。それぞれの懸濁液を、カンジダ菌接種3、24および27時間後に、マウス用胃ゾンデを用い、口腔内の舌背に滴下した。接種2日後にマウスを安楽死させ、基準に従って舌症状スコアを評価した。その後マウス口腔内を綿棒で拭い、その綿棒に回収されたカンジダ菌体を生理食塩水中に懸濁した。その一定量をカンジダGS平板培地に塗布し、37℃、20時間培養して出現したコロニー数を計測した。コロニー数から当該個体から回収されたカンジダ生菌数CFU(colony forming unit)を算出した。
実験の結果、口腔から回収された生菌数(生菌数のLog10)は、対照群(1%Tween80)5.08±0.19、[6]−ショウガオール群4.73±0.36、オレオレジン群4.94±0.42であり、とくに[6]−ショウガオール群で対照群に対して明らかに減少傾向にあるものの有意ではなかった。しかしながら舌症状スコアについては、対照群4.38±0.13に対し、[6]−ショウガオール群1.50±0.39、オレオレジン群2.34±0.24と有意の改善を認め、とくに[6]−ショウガオール群の改善効果が顕著であった。

Claims (2)

  1. ショウガオールが、使用時において25μg/g以上の濃度で含まれることを特徴とする抗カンジダ活性組成物
  2. 請求項1記載の組成物が、口腔カンジダ症に有効であることを特徴とする抗カンジダ活性組成物
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