浸潤白血球の顆粒からの炎症性メディエーターの放出におけるMARCKSタンパク質の関与は、喘息、COPD及び嚢胞性線維症などの、気道炎症を特徴とする肺疾患を含む、全組織及び器官における疾患に関連する。しかし、気道における炎症及び粘液分泌は、2つの個別で独立したプロセスである(Liら、J Biol Chem 2001;276:40982−40990;Singerら、Nat Med 2004;10:193−196)。炎症性細胞により放出されるメディエーターを含む多くの因子により粘液産生及び分泌が誘発され得る一方、過剰な粘液が炎症を引き起こす直接的な関係は分かっていない。
本発明のある態様において、MANSペプチドは、炎症性白血球において炎症性メディエーター顆粒又は小胞の放出の速度及び/又は量を低下させることに関与し得る。
別の態様において、MARCKS N末端由来、特に24アミノ酸N末端配列由来のペプチド、即ち、位置1にグリシンを有するMARCKSのN末端1−24アミノ酸配列内由来の活性連続ペプチド断片、ならびにこのような断片のN末端アミド(このような断片のN末端酢酸アミドなど)、及び/又は、ならびに、このような断片のC末端アミド(アンモニアのC末端アミドなど)は、炎症性白血球からの炎症性メディエーターの放出の速度及び/又は量を阻害又は低下させることができる。放出におけるこのような阻害又は低下は、炎症性白血球からの炎症性メディエーターのMARCKS−関連放出の阻害を含む。
別の態様において、MARCKS N末端由来、特に1から24アミノ酸N末端配列由来のペプチド、即ち、位置1にグリシンを有するMARCKSのN末端1から24アミノ酸配列内由来の活性連続ペプチド断片、ならびにこのような断片のN末端アミド(このような断片のN末端酢酸アミドなど)、ならびにこのような断片のC末端アミド(アンモニアのC末端アミドなど)は、炎症性白血球における脱顆粒のプロセスを阻害することによって、本発明において本明細書中で同定されるものなどの炎症性メディエーターの放出速度及び/又は放出量を抑制し得る。
別の態様において、MANSペプチド及びその活性断片及び本明細書中に記載のような断片の活性アミドは、このような炎症性細胞における、このような炎症のメディエーターを含有する顆粒又は小胞からの、炎症のメディエーターのMARCKS関連放出を減弱(減少又は低下)させるために、炎症性細胞での膜結合に対してネイティブMARCKSタンパク質と競合し得る。
ホルボールエステル誘導性のPKCの活性化に反応して特異的顆粒内容物を分泌する白血球細胞型及びモデル細胞型は、インビトロでの本発明のペプチド及び本発明の置換ペプチド(例えば、α−N−アミド、C末端アミド及びエステル)の有効性を示すために有用である。
本発明の化合物及び組成物による膜結合炎症性メディエーターの放出の減弱は、ヒト白血球細胞株を用いて示すことができる。例えば、ヒト血液から単離された好中球は、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)の放出の減弱又は阻害を示すために使用することができる。ヒト前骨髄球細胞株HL−60クローン15は、本発明の化合物及び組成物による好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)の放出の減弱又は放出もしくは分泌の阻害を示すために使用することができる(例えば、Fischkoff SA.Graded increase in probabilitty of eosinophilic differentiation of HL−60 promyelocytic leukemia cells induced by culture under alkaline conditions.Leuk Res 1988;12:679−686;Rosenberg HF、Ackerman SJ 、Tenen DG.Human eosinophilic cationic protein:moledular cloning of a cytotoxin and helminthotoxin with ribonuclease activity.J Exp Med 1989;170:163−176;Tiffany HL、Li F、Rosenberg HF.Hyperglycosylation of eosinophil ribonuclease in a promyelocytic leukemia cell line and in differentiated peripheral blood progenitor cells.J Leukoc Biol 1995;58:49−54;及びBadewa AP、Hudson CE、Heiman AS.Regulatory effects of eotaxin、eotaxin−2 and eotaxin−3 on eosinophil degranulation and superoxide anion generation.Exp Biol Med 2002;227:645−651参照)。単球白血球細胞株U937は、本発明の化合物及び組成物によるリゾチームの放出の減弱又は放出もしくは分泌の阻害を示すために使用することができる(例えば、Hoff T、Spencker T、Emmendoerffer A.、Goppelt−Struebe M.Effects of glucocorticoids on the TPA−induced monocytic differentiation.J Leukoc Biol 1992;52:173−182;Balboa M A、Saez Y、Balsinde J.Calcium−independent phospholipase A2 is required for lysozyme secretion in U937 promonocytes.J Immunol 2003;170:5276−5280;及びSundstrom C、Nilsson K.Establishment and characterization of a human histiocytic lymphoma cell line(U−937).Int J Cancer 1976;17:565−577参照)。リンパ球ナチュラルキラー細胞株NK−92は、本発明の化合物及び組成物によるグランザイムの放出の減弱又は阻害を示すために使用することができる(例えば、Gong JH.、Maki G、Klingemann HG.Characterization of a human cell line(NK−92)with phenotypical and functional characteristics of activated natural killer cells.Leukemia 1994;8:652−658;Maki G、Klingemann HG、Martinson JA、Tam YK.Factors regulating the cytotoxic activity of the human natural killer cell line、NK−92.J Hematother Stem Cell Res 2001;10:369−383;及びTakayama H、Trenn G、Sitkovsky MV.A novel cytotoxic T lymphocyte activation assay.J Immunol Methods 1987;104:183−190参照)。本明細書中に記載のものなどの炎症のメディエーターの放出を阻害又は減弱するためのインビトロ法において、各細胞型を一連の濃度にわたる本発明のペプチド化合物又はペプチド組成物と予備温置し、次いでホルボールエステルなどの炎症性メディエーター放出刺激剤によりこれらの細胞を温置する。放出されるメディエーターの濃度の分光光度計での読み取りなどにおいて、ペプチド化合物又はペプチド組成物の非存在下でのメディエーターの放出と比較した場合の、炎症のメディエーターの放出の阻害%を調べる。
本発明のペプチドにおける相対的アミノ酸配列位置の重要性を示すために、MANSでの配列順に関して、MARCKSタンパク質N末端領域の24アミノ酸配列(即ち、MANS−ミリストイル化α−N末端配列ペプチド)と同一であるペプチドによる、放出炎症性メディエーター量を阻害又は低下させる相対的能力を、MANSに存在する同じ24アミノ酸残基(しかし、無作為な順番で並んでいる。)(即ち、RNSペプチド、あるいは、「無作為N末端配列ペプチド」と呼ばれる。)を含有するペプチドによる、放出炎症性メディエーター量を阻害又は低下させる能力と比較した。調べた各細胞型において、MANSペプチド(しかしRNSペプチドではない。)は、0.5−3.0時間の時間経過にわたり、濃度依存的に炎症性メディエーターの放出を減弱させた。これらの結果から、MARCKSタンパク質、特にそのN末端領域及びとりわけその24アミノ酸残基N末端領域で見られる順序である本発明のペプチドにおける相対的アミノ酸配列のポジショニングが、白血球脱顆粒の阻害に関する少なくとも1つの細胞内経路に関与することが示唆される。
本発明は、24アミノ酸ペプチド配列に対する新規の使用及びαN末端アセチル化ペプチド配列、ミリストイル化ポリペプチド(MANSペプチドとしても知られる。)及びその活性断片に関する(この活性断片は、MANSペプチドアミノ酸配列の4から23の連続アミノ酸残基を有するペプチドの群から選択することができ、この断片は、これらが配列番号1の位置1でN末端グリシンで始まらない場合、N末端ミリストイル化され得るか、又は、N末端アセチル化及び/又はNH2基でのC末端アミド化を含む、C2からC12のアシル基でN末端アシル化され得る。)。
本発明はまた、MARCKS関連細胞性分泌プロセス、特に炎症性細胞からの炎症性メディエーターのMARCKS関連放出を含むものを遮断するための新規方法にも関し、この刺激性の経路は、タンパク質キナーゼC(PKC)基質MARCKSタンパク質及び細胞内小胞又は顆粒からの内容物の放出を含む。
本発明は、少なくとも1つの炎症性細胞からの少なくとも1つの炎症性メディエーターのエキソサイトーシス放出を阻害する方法に関し、この方法は、MANSペプチド及び本明細書中に記載のその活性断片からなる群から選択される少なくとも1つのペプチド(この少なくとも1つのペプチドの非存在化で起こる炎症性細胞の同じタイプからの炎症性メディエーターの放出と比較して、炎症性細胞からの炎症性メディエーターの放出を低下させるのに有効な量である。)と、少なくとも1つの炎症性細胞(この細胞は、細胞内側の小胞内に含有される少なくとも1つの炎症性メディエーターを含む。)を接触させることを含む。
本発明は、対象の組織又は体液(これは、細胞内側の小胞内に含有される少なくとも1つの炎症性メディエーターを含む少なくとも1つの炎症性細胞を含む。)において少なくとも1つの炎症性細胞からの少なくとも1つの炎症性メディエーターの放出を阻害する方法にさらに関し、この方法は、MANSペプチド及びその活性断片からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドの非存在化で起こる炎症性細胞の同じタイプの少なくとも1つからの炎症性メディエーターの放出と比較して、その少なくとも1つの炎症性細胞からの炎症性メディエーターの放出を低下させるのに治療的に有効な量でMANSペプチド及びその活性断片からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む医薬組成物の治療的有効量を、対象の組織及び/又は体液へ投与することを含む。とりわけ、炎症性メディエーターの放出の阻害は、炎症性細胞からの炎症性メディエーターの放出を阻止又は低下させることを含む。
とりわけ、本発明は、MANSペプチド(即ちN−ミリストイル−GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1))又はその活性断片を含む医薬組成物の治療的有効量の投与を含む、対象において炎症を低下させる方法を含む。この活性断片は、少なくとも4個、好ましくは少なくとも6個のアミノ酸長である。本明細書中で使用する場合、MARCKSタンパク質の「活性断片」は、炎症性メディエーターのMARCKSタンパク質−介在性放出など、MARCKSタンパク質介在性放出に影響を及ぼす(阻害又は低下)ものである。活性断片は、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAV(配列番号2);GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAA(配列番号4);GAQFSKTAAKGEAAAERPGEA(配列番号7);GAQFSKTAAKGEAAAERPGE(配列番号11);GAQFSKTAAKGEAAAERPG(配列番号16);GAQFSKTAAKGEAAAERP(配列番号22);GAQFSKTAAKGEAAAER(配列番号29);GAQFSKTAAKGEAAAE(配列番号37);GAQFSKTAAKGEAAA(配列番号46);GAQFSKTAAKGEAA(配列番号56);GAQFSKTAAKGEA(配列番号67);GAQFSKTAAKGE(配列番号79);GAQFSKTAAKG(配列番号92);GAQFSKTAAK(配列番号106);GAQFSKTAA(配列番号121);GAQFSKTA(配列番号137);GAQFSKT(配列番号154);GAQFSK(配列番号172);GAQFS(配列番号191)及びGAQF(配列番号211)からなる群から選択することができる。これらのペプチドは、N末端アミノ酸においてミリストイル部分を含有する代わりに、化学部分を含有しないか又はN末端アミノ酸において非ミリストイル化学部分を含有し、及び/又はC末端アミノ酸における化学部分を含有し、これは、本明細書中に記載のようなN末端アセチル基及び/又はC末端アミド基などである。MANSペプチド及びそのN末端ミリストイル化断片における疎水性N末端ミリストイル部分の存在によって、原形質膜とのその適合性及びおそらく原形質膜に対する透過性を向上させることができ、おそらく、ペプチドを細胞に取り込ませることができる。膜脂質二重層へのミリストイル基の疎水性挿入により、脂質との分配係数又は見かけの結合定数を104M−1以下にするか、又は約8kcal/molの単位ギブズ自由結合エネルギーを与えることができる(例えば、Peitzsch、R.M.及びMcLaughlin、S.1993、Binding of acylated peptides and fatty acids to phospholipid vesicles:pertinence to myristoylated proteins.Biochemistry.32:10436−10443参照)が、これは、少なくとも部分的に、細胞の原形質膜へのMANSペプチド及びミリストイル化MANSペプチド断片の分配を可能にするのに十分であり、一方、MANSペプチド(ミリストイル化されている。)内及びミリストイル化MANSペプチド断片内でのさらなる官能基及びそれらの相互作用によって、その相対的膜透過性が高められ得る。この断片はそれぞれ、それらの個々の構造の代表である分配係数及び膜親和性を示すことができる。この断片は、固相ペプチド合成によってなど当技術分野で公知のペプチド合成の方法により調製し(例えば、Chan、Weng C.及びWhite、Peter D.編、Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach、Oxford University Press、New York、New York(2000);及びLloyd−Williams、P.ら、Chemical Approaches to the Syntehsis of Peptides and Proteins(1997)に記載の方法を参照)、高圧液体クロマトグラフィーなどの当技術分野で公知の方法によって精製することができる。適切な分子量のピークをそれぞれ示す質量分析により、各ペプチドの分子量を確認することができる。本明細書中で開示される実施例において記載される手段を用いて、不必要な実験を行わず、この開示の方法における個々のペプチド及び個々のペプチドの組み合わせの有効性(例えば、ペプチドの2つの組み合わせ、ペプチドの3つの組み合わせ、ペプチドの4つの組み合わせ)を容易に調べることができる。好ましい組み合わせには、ペプチドの2つの組み合わせが含まれ、これらのペプチドの好ましいモル比は50:50(即ち1:1)から99.99から0.01であり得、この比は、本明細書中で開示される実施例において記載される手段を用いて容易に求めることができる。
好ましくは、MANSペプチド又はその活性断片は、炎症を阻止するのに有用な医薬組成物に含有される。本発明はまた、対象において炎症性メディエーターを阻害するMANSペプチド又はその活性断片を含む化合物の治療的有効量の投与を含む、対象において細胞性分泌プロセスを阻害する方法も含む。この投与は、通常、局所投与、非経口投与、直腸投与、肺内投与、吸入及び鼻腔又は経口投与からなる群から選択され、この場合、肺内投与は通常、エアロゾル、乾燥粉末吸入器、定量吸入器又は噴霧器の何れかを含む。
ヒト又は動物での使用のための、MANSペプチドの脱顆粒阻害量又はその活性断片の脱顆粒阻害量を含む組成物の投与(MANSペプチド又はその活性断片の医薬組成物など)は、炎症性顆粒球細胞が存在するか又は炎症性顆粒球細胞が侵入する組織面と接触する組織又は体液含有層中又は上の少なくとも部位に、MANSペプチド又はその活性断片を提供し、このようにして、MANSペプチド又はその活性断片が炎症性顆粒球細胞に接触することができるようになる。ある態様において、MANSペプチド又はその活性断片の非存在下で起こる炎症量を低下させるために、炎症の最初の発症もしくは最初の検出時又はヒトもしくは動物による炎症の最初の感知時又はヒトもしくは動物による炎症レベルの変化の最初の感知時に、このような組成物の投与を行い得る。別の態様において、MANSペプチド又はその活性断片の非存在下で起こるさらなる炎症の量を低下させるために、ヒトもしくは動物における組織の炎症の進行中に投与を行い得る。臨床評価により投与量及び頻度を決定することができ、これは、疾患又は炎症の源及び関与する組織の程度、及び患者の年齢ならびに患者の体格の関数であり得るが、一方で、医薬組成物の投与は、医薬組成物の最初の投与から3から8時間後、好ましくは6から8時間後、反復することができると予想される。
本発明はまた、炎症性メディエーターのMARCKS関連放出を阻害する化合物の治療的有効量の投与を含む、対象において炎症を低下させる方法も含み、これにより、前記治療なしで起こるものと比較して対象における少なくとも1つの炎症性メディエーターの放出が低下する。本明細書中で使用する場合、「低下する」とは、通常、炎症の影響の軽減を意味する。好ましくは、炎症性メディエーターの放出が、開示される方法により阻害又は阻止される。
本発明の別の実施形態は、MARCKS関連の炎症性メディエーターの放出を阻害する化合物の治療的有効量を投与することを含む、対象において炎症を低下させる方法を含み、これにより、前記治療なしで起こるものと比較して、対象における炎症が低下する。本発明はまた、炎症部位において炎症性メディエーターを阻害するのに有効なMANSペプチド又はその活性断片の治療的有効量の投与を含む、対象において炎症を低下させるか又は阻害する方法も開示する。「阻害する」という用語は、炎症性メディエーター分泌量の低下を意味する。「完全に阻害する」という用語は、炎症性メディエーター分泌量を0に低下させることを意味する。重ねて、上述のように、活性断片は、少なくとも4及び好ましくは少なくとも6個のアミノ酸長である。「エキソサイトーシスプロセス」という用語は、エキソサイトーシス、即ち、小胞(この小胞は細胞内にある。)に含有される物質が、小胞の細胞外膜との小胞膜融合により細胞から放出される、細胞からの分泌又は排出のプロセスを意味する。「脱顆粒」とは、細胞性顆粒内容物の放出を意味する。「脱顆粒阻害」という用語は、炎症性細胞の顆粒内に含有される炎症性メディエーターの放出の低下を意味する。このようにして、MANSペプチド及び/又はその活性断片の脱顆粒阻害量は、同じペプチドの非存在下での放出と比較して、顆粒に含有される炎症性メディエーターの放出を低下させるのに十分であるこれらのペプチドの量である。
参照ペプチド、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)において、参照ペプチドのN末端位置で、Gは位置1であり;位置1のGに隣接するのは位置2のAであり;位置2のAに隣接するのは位置3のQであり;位置3のQに隣接するのは位置4のFであり;位置4のFに隣接するのは位置5のSであり;位置5のSに隣接するのは位置6のKであり;位置6のKに隣接するのは位置7のTであり;位置7のTに隣接するのは位置8のAであり;位置8のAに隣接するのは位置9のAであり;位置9のAに隣接するのは位置10のKであり;位置10のKに隣接するのは位置11のGであり;位置11のGに隣接するのは位置12のEであり;位置12のEに隣接するのは位置13のAであり;位置13のAに隣接するのは位置14のAであり;位置14のAに隣接するのは位置15のAであり;位置15のAに隣接するのは位置16のEであり;位置16のEに隣接するのは位置17のRであり;位置17のRに隣接するのは位置18のPであり;位置18のPに隣接するのは位置19のGであり;位置19のGに隣接するのは位置20のEであり;位置20のEに隣接するのは位置21のAであり;位置21のAに隣接するのは位置22のAであり;位置22のAに隣接するのは位置23のVであり;位置23のVに隣接するのは位置24のAであり、位置24は参照ペプチドのC末端位置である。
参照ペプチドの「変異型」又は参照ペプチドの4から23アミノ酸セグメントの変異型は、それぞれ参照ペプチド又は参照ペプチドセグメントのアミノ酸配列における少なくとも1つのアミノ酸位置において、それぞれ参照ペプチドのアミノ酸配列又は参照ペプチドのセグメントのアミノ酸配列と異なるが、ムチン又は粘液抑制活性を保持し、この活性は、通常、参照ペプチド又はセグメントの活性のそれぞれ0.1から10倍、好ましくは参照ペプチド又はセグメントの活性のそれぞれ0.2から6倍、より好ましくは参照ペプチド又はセグメントの活性のそれぞれ0.3から5倍である、アミノ酸配列を有するペプチドである。参照アミノ酸配列の「変異型」又は参照アミノ酸配列の4から23アミノ酸セグメントの変異型は、それぞれ参照アミノ酸配列又は参照アミノ酸配列のセグメントと少なくとも1個のアミノ酸で異なるが、参照アミノ酸配列によってコードされるペプチド又はセグメントのムチン又は粘液抑制活性をそれぞれ保持し、この活性が、通常、参照配列のペプチド又はセグメントの活性のそれぞれ0.1から10倍、好ましくは参照配列のペプチド又はセグメントの活性のそれぞれ0.2から6倍、より好ましくは参照配列のペプチド又はセグメントの活性のそれぞれ0.3から5倍である、ペプチドのアミノ酸配列を有する。置換変異型ペプチド又は置換変異型アミノ酸配列は、参照アミノ酸配列内の1以上のアミノ酸置換によって参照ペプチド又は参照アミノ酸配列と異なり得;欠失変異型ペプチド又は欠失変異型アミノ酸配列は、参照アミノ酸配列内の1以上のアミノ酸欠失によって参照ペプチド又は参照アミノ酸配列と異なり得;付加変異型ペプチド又は付加変異型アミノ酸配列は、参照配列内の1以上のアミノ酸の付加によって参照ペプチド配列又は参照アミノ酸配列と異なり得る。変異型ペプチド又は変異型アミノ酸配列は、参照配列内の1以上のアミノ酸の置換(例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸の置換)から生じ得るか、又は参照配列内の1以上のアミノ酸の欠失(例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸の欠失)から生じ得るか、又は参照配列内の1以上のアミノ酸の付加(例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸の付加)から生じ得る。置換変異型の4から23のアミノ酸ペプチドセグメント又は置換変異型の4から23アミノ酸セグメント配列は、参照アミノ酸セグメント配列内の1以上のアミノ酸置換によって参照4から23アミノ酸ペプチドセグメント又は参照4から23アミノ酸セグメント配列と異なり得;欠失変異型の4から23アミノ酸ペプチドセグメント又は4から22アミノ酸の欠失変異型アミノ酸セグメント配列は、参照アミノ酸セグメント配列内の1以上のアミノ酸欠失によって5から23参照ペプチドセグメント又は5から23アミノ酸の参照アミノ酸セグメント配列と異なり得る;及び4から23アミノ酸の付加変異型ペプチド又は4から23アミノ酸の付加変異型アミノ酸配列は、参照配列内の1以上のアミノ酸付加によって4から22アミノ酸の参照ペプチド配列又は4から22アミノ酸の参照アミノ酸配列と異なり得る。4から23アミノ酸の変異型ペプチド又は4から23アミノ酸の変異型アミノ酸配列は、参照アミノ酸配列の4から23アミノ酸セグメント内の1以上のアミノ酸の置換(例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸の置換)から生じ得るか、又はそれぞれより大きな参照アミノ酸配列内の1以上のアミノ酸の欠失(例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸の欠失)から生じ得るか、又はそれぞれより小さな参照アミノ酸配列内の1以上のアミノ酸の付加(例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7又は8個のアミノ酸の付加)から生じ得るか、又はこれらの組合せから生じ得る。好ましくは、変異型ペプチド又はアミノ酸配列は、10個未満のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加によって;より好ましくは8個未満のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加によって;さらにより好ましくは6個未満のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加によって;さらにより好ましくは5個未満のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加によって;さらに一層好ましくは4個未満のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加によって、それぞれ参照ペプチドと又は参照ペプチドのセグメントと又は参照アミノ酸配列と又は参照アミノ酸配列のセグメントと異なる。最も好ましくは、変異型アミノ酸配列は、1又は2又は3個のアミノ酸で参照ペプチド又はセグメントアミノ酸配列と異なる。
「配列同一性」とは、2つのペプチドのアミノ酸配列に関して、同一アミノ酸を有する位置の数を、2つの配列の短い方の配列内のアミノ酸の数で除した数を意味する。
「実質的に同一」とは、2つのペプチドのアミノ酸配列の比較又は2つのペプチドセグメント(例えば参照ペプチドアミノ酸配列のセグメント)のアミノ酸配列の比較に関して、ペプチド又はペプチドのセグメントのアミノ酸配列が少なくとも75%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%の配列同一性、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有することを意味する。
本明細書中で使用する場合、「ペプチド」という用語は、ペプチドならびにペプチドの医薬的に許容可能な塩を含む。
本明細書中で使用する場合、「単離」ペプチドは、天然においてこれに付随する細胞成分(例えば核酸及びその他のペプチド)から、精製、組み換え合成又は化学合成によって、分離されたか又は実質的に分離された天然のペプチドを意味し、同様に、細胞成分、生体物質、化学的前駆体又はその他の化学物質から精製されたか又は実質的に精製された、非天然の組み換え合成又は化学合成ペプチドも包含する。
以下の3文字及び1文字アミノ酸略記を本文全体を通して使用する。アラニン:(Ala)A;アルギニン:(Arg)R;アスパラギン:(Asn)N;アスパラギン酸:(Asp)D;システイン:(Cys)C;グルタミン:(Gln)Q;グルタミン酸:(Glu)E;グリシン:(Gly)G;ヒスチジン:(His)H;イソロイシン:(Ile)I;ロイシン:(Leu)L;リシン:(Lys)K;メチオニン:(Met)M;フェニルアラニン:
(Phe)F;プロリン:(Pro)P;セリン:(Ser)S;スレオニン:(Thr)T;トリプトファン:(Trp)W;チロシン:(Tyr)Y;バリン:(Val)V。本明細書中で有用なアミノ酸のさらなる3文字表記には、括弧内の、ヒドロキシプロリンに対する(Hyp)、ノルロイシンに対する(Nle)、オルニチンに対する(Orn)、ピログルタミン酸に対する(Pyr)及びサルコシンに対する(Sar)が含まれる。慣例により、ペプチドのアミノ末端(又はN末端)は、ペプチドの記載されるアミノ酸配列の左端に現れ、カルボキシ末端(又はC末端)は、記載されるアミノ酸配列の右端に現れる。ペプチドのアミノ酸配列は、ペプチド内のペプチドアミド結合によって共有結合されているアミノ酸を表わすために1文字記号で表記することができる。
MANSペプチドの活性断片は、炎症性メディエーターにより引き起こされる動物の組織における炎症を予防するか又は炎症量を低下させる上で有用であり得る。MANSペプチドの活性断片はまた、炎症性メディエーターにより生じるか又は引き起こされる動物の組織損傷を予防するか又はその量を低下させる上でも有用であり得る。MANSペプチドの活性断片は、MANSペプチド(配列番号1)の少なくとも4個の連続アミノ酸及び23個以下の連続アミノ酸から構成される。本発明の文脈内で、「活性断片」という用語は、炎症性細胞からの炎症性メディエーターの放出を予防するか又は低下させることができる、MANSペプチドのそれらの断片を包含するものとする。この活性断片による炎症性メディエーターの放出の低下とは、MANSペプチドなどの参照ペプチドと比較して、少なくとも5%から少なくとも99%の低下の範囲であり得る。
表1は、1文字略記形式でのアミノ酸配列のリスト及びそれぞれの対応するペプチド番号及び配列番号を含有する。参照ペプチドアミノ酸配列(MANSペプチド)をペプチド1として挙げる。参照アミノ酸配列の4から23の連続アミノ酸のアミノ酸配列を有する本発明のペプチドのアミノ酸配列は、ペプチド232としてのMANSペプチドのアミノ酸を含む無作為N末端配列(RNS)のアミノ酸配列と共に、ペプチド2から231として挙げる。本明細書中で述べる本発明のペプチドのアミノ酸配列の代表的変異型アミノ酸配列も、ペプチド233から245及び247から251として列挙する。この列挙する変異型ペプチドは、ペプチドの限定群ではなく、本発明の変異型ペプチドの単なる代表例として提示するものである。また、本発明のペプチドの代表的逆アミノ酸配列(ペプチド2426)及び代表的無作為アミノ酸配列(ペプチド232)も提示する。表中の逆及び無作為アミノ酸配列は、本発明を代表するものではない。
表1は、本発明のペプチド及びそれらの個々のアミノ酸配列及び対応する配列番号のリストを含有する。
表1に列挙されるペプチドのアミノ酸配列は化学的に修飾され得る。例えば表1に列挙されるペプチドのアミノ酸配列が、カルボン酸とアミドを形成するようにN末端アミンで化学的に修飾される場合、生じるペプチドは、本明細書中で、ハイフンによってペプチド番号に連結される、接頭辞としてのカルボン酸に対する識別名の組合せによって呼ばれることがある。例えば一例としてペプチド79に関して、N末端ミリストイル化ペプチド79は、本明細書中で、「ミリストイル化−ペプチド79」又は「myr−ペプチド79」と呼ばれ得ることがあり;N末端アセチル化ペプチド79は、本明細書中で、「アセチル−ペプチド79」又は「Ac−ペプチド79」と呼ばれ得ることがある。ペプチド79の環状型は、「環状−ペプチド79」又は「cyc−ペプチド79」と呼ばれ得る。また、例えば表1に列挙されるペプチドのアミノ酸配列がC末端カルボキシル基で、例えばアンモニアなどのアミンによってC末端アミドを形成するように化学的に修飾される場合、生じるペプチドは、本明細書中で、ハイフンによってペプチド番号に連結される、接尾辞としてのアミン残基に対する識別名の組合せによって呼ばれることがある。このようにして、例えばペプチド79のC末端アミドは、「ペプチド−NH2」と呼ばれ得る場合がある。ペプチド(例えばペプチド79)のN末端アミンが、例えばミリストイル基によって化学的に修飾され、C末端カルボキシル基が、上記のようにアミドを形成するように例えばアンモニア基によって化学的に修飾される場合、生じるペプチドは、接頭辞及び接尾辞の両表記法を用いて、「myr−ペプチド79−NH2」と呼ばれ得ることがある。
本発明は、MANSペプチド(即ちMANSペプチドはミリストイル−ペプチド1であり、MANSペプチドの参照24アミノ酸配列がペプチド1である)のアミノ酸に関連するアミノ酸配列を備えた24個未満のアミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドを含む。本発明のペプチドは、24個未満のアミノ酸を含有するアミノ酸配列からなり、8から14個、10から12個、9から14個、9から13個、10から13個、10から14個、少なくとも9個、少なくとも10個などのアミノ酸からなり得る。ペプチドは、通常は直鎖であるが、環状ペプチドでもあり得る。さらに、ペプチドは単離ペプチドであり得る。
ペプチド1(配列番号1)、参照24アミノ酸配列に関して、参照アミノ酸配列の23連続アミノ酸のセグメントは、本明細書中で、23マーと呼ばれることがある。同様に、参照配列の22連続アミノ酸のセグメントは、本明細書中で、22マーと呼ばれることがあり;21個のアミノ酸配列は21マー;20個のアミノ酸配列は20マー;19個のアミノ酸配列は19マー;18個のアミノ酸配列は18マー;17個のアミノ酸配列は17マー;16個のアミノ酸配列は16マー;15個のアミノ酸配列は15マー;14個のアミノ酸配列は14マー;13個のアミノ酸配列は13マー;12個のアミノ酸配列は12マー;11個のアミノ酸配列は11マー;10個のアミノ酸配列は10マー;9個のアミノ酸配列は9マー;8個のアミノ酸配列は8マー;7個のアミノ酸配列は7マー;6個のアミノ酸配列は6マー;5個のアミノ酸配列は5マー;4個のアミノ酸配列は4マーと呼ばれることがある。ある態様において、それ自体ペプチドである(本明細書中で、H2N−ペプチド−COOHと表示されることがある。)、これらの「4から23マー」アミノ酸配列の何れかは、例えば化学的修飾によって、独立に化学的に修飾され得、この化学的修飾は、(i)例えばC1又は好ましくはC2(酢酸)−C22カルボン酸などによる、N末端アミン基(H2N−ペプチド−)でのアミド形成;(ii)例えばアンモニア又はC1−C22の一級又は二級アミンなどによる、C末端カルボキシル基(−ペプチド−COOH)でのアミド形成;及び(iii)これらの組合せ、からなる群から選択され得る。
ペプチドは、(a)参照配列、ペプチド1の4から23の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;(b)(a)で定義されるアミノ酸配列と実質的に類似の配列;及び(c)(a)で定義されるアミノ酸配列の変異型(ここで変異型は、置換変異型、欠失変異型、付加変異型及びこれらの組合せからなる群から選択される。)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、ペプチドは、(a)参照配列、ペプチド1の8から14個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;(b)(a)で定義される配列と実質的に同一のアミノ酸配列;及び(c)(a)で定義されるアミノ酸配列の変異型(ここで、変異型は、置換変異型、欠失変異型、付加変異型及びこれらの組合せからなる群から選択される。)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。さらにその他の実施形態において、ペプチドは、(a)参照配列、ペプチド1の10から12個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;(b)(a)で定義される配列と実質的に同一のアミノ酸配列;及び(c)(a)で定義されるアミノ酸配列の変異型(ここで、変異型は、置換変異型、欠失変異型、付加変異型及びこれらの組合せからなる群から選択される。)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。さらなる実施形態において、ペプチドは、参照配列、ペプチド1の少なくとも9個、少なくとも10個、9から14個、9から13個、10から13個、10から14個などの連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;これと実質的に同一のアミノ酸配列;又はこの変異型を有し、ここで変異型は、置換変異型、欠失変異型、付加変異型及びこれらの組合せからなる群から選択される。以下でさらに説明するように、ペプチドのアミノ酸の1以上(例えばN末端及び/又はC末端アミノ酸)は、場合によっては独立に化学的に修飾され得;ある実施形態において、ペプチドの1以上のアミノ酸が化学的に修飾され、一方で、その他の実施形態において、ペプチドのアミノ酸の何れも化学的に修飾されない。ある態様において、好ましい修飾は、ペプチド又はペプチドセグメントのN末端アミノ酸のアミン(−NH2)基で起こり得る(このアミン基は、N末端位置ではなくペプチド配列の内部に存在する場合、ペプチドアミド結合を形成する)。別の態様において、好ましい修飾は、ペプチド又はペプチドセグメントのC末端アミノ酸のカルボキシ(−COOH)基で起こり得る(このカルボキシ基は、C末端位置ではなくペプチド配列の内部に存在する場合、ペプチドアミド結合を形成する)。別の態様において、好ましい修飾は、N末端アミン(−NH2)基及びC末端カルボキシ(−COOH)基の両方で起こり得る。
ある実施形態において、ペプチドのアミノ酸配列は、参照配列ペプチド1のN末端アミノ酸から始まる。例えばペプチドは、(a)参照配列ペプチド1の4から23の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列(ただし、アミノ酸配列は参照配列のN末端アミノ酸から始まる。)(即ちペプチド2、ペプチド4、ペプチド7、ペプチド11、ペプチド16、ペプチド22、ペプチド29、ペプチド37、ペプチド46、ペプチド56、ペプチド67、ペプチド79、ペプチド92、ペプチド106、ペプチド121、ペプチド137、ペプチド154、ペプチド172、ペプチド191又はペプチド211);(b)(a)で定義されるアミノ酸配列と実質的に同様の配列;及び(c)(a)で定義されるアミノ酸配列の変異型、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し得る。これらのペプチドは、化学部分を含有しないか又はミリストイル基以外のN−末端グリシンにおいて化学部分を含有する。好ましくは、この化学部分は、アセチル基又はアルキル基など、アミド結合の形態での、アシル基である。
その他の実施形態において、ペプチドのアミノ酸配列は参照配列ペプチド1のC末端アミノ酸で終了する。例えばペプチドは、(a)参照配列ペプチド1の4から23の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列(ただし、アミノ酸配列は参照配列のC末端アミノ酸で終了する。)(即ちペプチド3、ペプチド6、ペプチド10、ペプチド15、ペプチド21、ペプチド28、ペプチド36、ペプチド45、ペプチド55、ペプチド66、ペプチド78、ペプチド91、ペプチド105、ペプチド120、ペプチド136、ペプチド153、ペプチド171、ペプチド190、ペプチド210又はペプチド231);(b)(a)で定義されるアミノ酸配列と実質的に同様の配列;及び(c)(a)で定義されるアミノ酸配列の変異型、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し得る。
その他の実施形態において、ペプチドのアミノ酸配列は、参照配列ペプチド1(配列番号1)のN末端アミノ酸で始まらず、参照配列ペプチド1の2位のアミノ酸から始まり21位のアミノ酸までである。例えばペプチドは、(a)参照配列ペプチド1の4から23の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列(ただし、アミノ酸配列は参照配列の位置2から位置21までの何らかのアミノ酸で始まる。)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し得る。これらのペプチドは、4から23連続アミノ酸長であり得、参照配列(ペプチド1)の中央のペプチドであり得;(b)(a)で定義されるアミノ酸配列と実質的に同様の配列;及び(c)(a)で定義されるアミノ酸配列の変異型であり得る。これらのペプチドを表1又は2で開示する。これらのペプチドは、共有結合化学部分を全く含有し得ないか又はアミノ酸配列(配列番号1)のN末端グリシンからの、又はこれと同等の、N末端グリシンではないN−末端アミノ酸において化学部分を含有し得る。好ましくは、この化学部分は、アミド結合の形態において、アセチル基又はミリストイル基などのアシル基又はアルキル基である。
哺乳動物においてムチン過剰分泌を阻害するために本発明において有用であり、哺乳動物においてムチン過剰分泌の量を低下させるために有用であり、ムチン過剰分泌の阻害の方法及びムチン過剰分泌の低下の方法において有用であるペプチドアミノ酸配列は、本発明の単離ペプチドのアミノ酸配列及び、N末端及び/又はC末端で化学的に修飾された基を場合によっては含有するペプチドのアミノ酸配列を含み、この場合、ペプチドアミノ酸配列は、23マー(即ち23個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド2;及びペプチド3;22マー(即ち22個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド4;ペプチド5;及びペプチド6;21マー(即ち21個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド7;ペプチド8;ペプチド9;及びペプチド10;20マー(即ち20個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド11;ペプチド12;ペプチド13;ペプチド14;及びペプチド15;19マー(即ち19個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド16;ペプチド17;ペプチド18;ペプチド19;ペプチド20;及びペプチド21;18マー(即ち18個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド22;ペプチド23;ペプチド25;ペプチド26;ペプチド27;及びペプチド28;17マー(即ち17個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド29;ペプチド30;ペプチド31;ペプチド32;ペプチド33;ペプチド34;ペプチド35;及びペプチド36;16マー(即ち16個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド37;ペプチド38;ペプチド39;ペプチド40;ペプチド41;ペプチド42;ペプチド43;ペプチド44;及びペプチド45;15マー(即ち15個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド46;ペプチド47;ペプチド48;ペプチド49;ペプチド50;ペプチド51;ペプチド52;ペプチド53;ペプチド54;及びペプチド55;14マー(即ち14個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド56;ペプチド57;ペプチド58;ペプチド59;ペプチド60;ペプチド61;ペプチド62;ペプチド63;ペプチド64;ペプチド65;及びペプチド66;13マー(即ち13個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド67;ペプチド68;ペプチド69;ペプチド70;ペプチド71;ペプチド72;ペプチド73;ペプチド74;ペプチド75;ペプチド76;ペプチド77;及びペプチド78;12マー(即ち12個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド79;ペプチド80;ペプチド81;ペプチド82;ペプチド83;ペプチド84;ペプチド85;ペプチド86;ペプチド87;ペプチド88;ペプチド89;ペプチド90;及びペプチド91;11マー(即ち11個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド92;ペプチド93;ペプチド94;ペプチド95;ペプチド96;ペプチド97;ペプチド98;ペプチド99;ペプチド100;ペプチド101;ペプチド102;ペプチド103;ペプチド104;及びペプチド105;10マー(即ち10個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド106;ペプチド107;ペプチド108;ペプチド109;ペプチド110;ペプチド111;ペプチド112;ペプチド113;ペプチド114;ペプチド115;ペプチド116;ペプチド117;ペプチド118;ペプチド119;及びペプチド120;9マー(即ち9個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド121;ペプチド122;ペプチド123;ペプチド124;ペプチド125;ペプチド126;ペプチド127;ペプチド128;ペプチド129;ペプチド130;ペプチド131;ペプチド132;ペプチド133;ペプチド134;ペプチド135;及びペプチド136;8マー(即ち8のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド137;ペプチド138;ペプチド139;ペプチド140;ペプチド141;ペプチド142;ペプチド143;ペプチド144;ペプチド145;ペプチド146;ペプチド147;ペプチド148;ペプチド149;ペプチド150;ペプチド151;ペプチド152;及びペプチド153;7マー(即ち7個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド154;ペプチド155;ペプチド156;ペプチド157;ペプチド158;ペプチド159;ペプチド160;ペプチド161;ペプチド162;ペプチド163;ペプチド164;ペプチド165;ペプチド166;ペプチド167;ペプチド168;ペプチド169;ペプチド170;及びペプチド171;6マー(即ち6個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド172;ペプチド173;ペプチド174;ペプチド175;ペプチド176;ペプチド177;ペプチド178;ペプチド179;ペプチド180;ペプチド181;ペプチド182;ペプチド183;ペプチド184;ペプチド185;ペプチド186;ペプチド187;ペプチド188;ペプチド189;及びペプチド190;5マー(即ち5個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド191;ペプチド192;ペプチド193;ペプチド194;ペプチド195;ペプチド196;ペプチド197;ペプチド198;ペプチド199;ペプチド200;ペプチド201;ペプチド202;ペプチド203;ペプチド204;ペプチド205;ペプチド206;ペプチド207;ペプチド208;ペプチド209;及びペプチド210;及び4マー(即ち4個のアミノ酸配列を有するペプチド):ペプチド211;ペプチド212;ペプチド213;ペプチド214;ペプチド215;ペプチド216;ペプチド217;ペプチド218;ペプチド219;ペプチド220;ペプチド221;ペプチド222;ペプチド223;ペプチド224;ペプチド225;ペプチド226;ペプチド227;ペプチド228;ペプチド229;ペプチド230;及びペプチド231からなる群から選択される。
本発明の単離ペプチド及びN末端及び/又はC末端で化学的に修飾されたペプチドの好ましいアミノ酸配列は、23マー:ペプチド2;及びペプチド3;22マー:ペプチド4;ペプチド5;及びペプチド6;21マー:ペプチド7;ペプチド8;ペプチド9;及びペプチド10;20マー:ペプチド11;ペプチド12;ペプチド13;ペプチド14;及びペプチド15;19マー:ペプチド16;ペプチド17;ペプチド18;ペプチド19;ペプチド20;及びペプチド21;18マー:ペプチド22;ペプチド23;ペプチド24;ペプチド25;ペプチド26;ペプチド27;及びペプチド28;17マー:ペプチド29;ペプチド30;ペプチド31;ペプチド32;ペプチド33;ペプチド34;ペプチド35;及びペプチド36;16マー:ペプチド37;ペプチド38;ペプチド39;ペプチド40;ペプチド41;ペプチド42;ペプチド43;ペプチド44;及びペプチド45;15マー:ペプチド46;ペプチド47;ペプチド48;ペプチド49;ペプチド50;ペプチド51;ペプチド52;ペプチド53;及びペプチド54;14マー:ペプチド56;ペプチド57;ペプチド58;ペプチド59;ペプチド60;ペプチド61;ペプチド62;ペプチド63;及びペプチド64;13マー:ペプチド67;ペプチド68;ペプチド69;ペプチド70;ペプチド71;ペプチド72;ペプチド73;ペプチド74;及びペプチド75;12マー:ペプチド79;ペプチド80;ペプチド81;ペプチド82;ペプチド83;ペプチド84;ペプチド85;ペプチド86;及びペプチド87;11マー:ペプチド92;ペプチド93;ペプチド94;ペプチド95;ペプチド96;ペプチド97;ペプチド98;ペプチド99;及びペプチド100;10マー:ペプチド106;ペプチド107;ペプチド108;ペプチド109;ペプチド110;ペプチド111;ペプチド112;ペプチド113;及びペプチド114;9マー:ペプチド122;ペプチド123;ペプチド124;ペプチド125;ペプチド126;ペプチド127;ペプチド128;及びペプチド129;8マー:ペプチド139;ペプチド140;ペプチド141;ペプチド142;ペプチド143;ペプチド144;及びペプチド145;7マー:ペプチド157;ペプチド158;ペプチド159;ペプチド160;ペプチド161;及びペプチド162;6マー:ペプチド176;ペプチド177;ペプチド178;ペプチド179;ペプチド及び180;5マー:ペプチド196;ペプチド197;ペプチド198;及びペプチド199;及び4マー:ペプチド217;及びペプチド219からなる群から選択される。
本発明の単離ペプチド及びN末端及び/又はC末端で化学的に修飾されたペプチドのより好ましいアミノ酸配列は、23マー:ペプチド2;及びペプチド3;22マー:ペプチド4;ペプチド5;及びペプチド6;21マー:ペプチド7;ペプチド8;ペプチド9;及びペプチド10;20マー:ペプチド11;ペプチド12;ペプチド13;ペプチド14;及びペプチド15;19マー:ペプチド16;ペプチド17;ペプチド18;ペプチド19;ペプチド20;及びペプチド21;18マー:ペプチド22;ペプチド23;ペプチド24;ペプチド25;ペプチド26;ペプチド27;及びペプチド28;17マー:ペプチド29;ペプチド30;ペプチド31;ペプチド32;ペプチド33;ペプチド34;ペプチド35;及びペプチド36;16マー:ペプチド37;ペプチド38;ペプチド39;ペプチド40;ペプチド41;ペプチド42;ペプチド43;ペプチド44;及びペプチド45;15マー:ペプチド46;ペプチド
47;ペプチド48;ペプチド49;ペプチド50;ペプチド51;ペプチド52;ペプチド53;及びペプチド54;14マー:ペプチド56;ペプチド57;ペプチド58;ペプチド59;ペプチド60;ペプチド61;ペプチド62;ペプチド63;及びペプチド64;13マー:ペプチド67;ペプチド68;ペプチド69;ペプチド70;ペプチド71;ペプチド72;ペプチド73;ペプチド74;ペプチド80;ペプチド81;ペプチド82;ペプチド83;ペプチド84;ペプチド85;ペプチド86;及びペプチド87;11マー:ペプチド92;ペプチド93;ペプチド94;ペプチド95;ペプチド96;ペプチド97;ペプチド98;ペプチド99;及びペプチド100;10マー:ペプチド106;ペプチド108;ペプチド109;ペプチド110;ペプチド111;ペプチド112;ペプチド113;及びペプチド114;9マー:ペプチド124;ペプチド125;ペプチド126;ペプチド127;ペプチド128;及びペプチド129;8マー:ペプチド141;ペプチド142;ペプチド143;ペプチド144;及びペプチド145;7マー:ペプチド159;ペプチド160;ペプチド161;及びペプチド162;6マー:ペプチド178;ペプチド179;及びペプチド180;5マー:ペプチド198;及びペプチド199;4マー:ペプチド219からなる群から選択される。
さらにその他の実施形態において、ペプチドのアミノ酸配列は、参照配列ペプチド1のペプチド219におけるように連続残基A、K、G及びEを含む。例えばペプチドは、(a)参照配列ペプチド1の4から23の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列(ただし、ペプチドのアミノ酸配列は、参照ペプチド1のペプチド219におけるように連続残基A、K、G及びEを含む(例えばペプチド219、ペプチド45、ペプチド79、ペプチド67、ペプチド80など)。);(b)(a)で定義されるアミノ酸配列と実質的に同様の配列;及び(c)(a)で定義されるアミノ酸配列の変異型からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し得る。
参照ペプチドアミノ酸配列、ペプチド1のアミノ酸配列AKGEを含有するペプチドセグメントの例には、(a)23マー:ペプチド2;及びペプチド3;22マー:ペプチド4;ペプチド5;及びペプチド6;11マー:ペプチド7;ペプチド8;ペプチド9;及びペプチド10;20マー:ペプチド11;ペプチド12;ペプチド13;ペプチド14;及びペプチド15;19マー:ペプチド16;ペプチド17;ペプチド18;ペプチド19;ペプチド20;及びペプチド21;18マー:ペプチド22;ペプチド23;ペプチド24;ペプチド25;ペプチド26;ペプチド27;及びペプチド28;17マー:ペプチド29;ペプチド30;ペプチド31;ペプチド32;ペプチド33;ペプチド34;ペプチド35;及びペプチド36;16マー:ペプチド37;ペプチド38;ペプチド39;ペプチド40;ペプチド41;ペプチド42;ペプチド43;ペプチド44;及びペプチド45;15マー:ペプチド46;ペプチド47;ペプチド48;ペプチド49;ペプチド50;ペプチド51;ペプチド52;ペプチド53;及びペプチド54;14マー:ペプチド56;ペプチド57;ペプチド58;ペプチド59;ペプチド60;ペプチド61;ペプチド62;ペプチド63;及びペプチド64;13マー:ペプチド67;ペプチド68;ペプチド69;ペプチド70;ペプチド71;ペプチド72;ペプチド73;ペプチド74;及びペプチド75;12マー:ペプチド79;ペプチド80;ペプチド81;ペプチド82;ペプチド83;ペプチド84;ペプチド85;ペプチド86;及びペプチド87;11マー:ペプチド93;ペプチド94;ペプチド95;ペプチド96;ペプチド97;ペプチド98;ペプチド99;及びペプチド100;10マー:ペプチド108;ペプチド109;ペプチド110;ペプチド111;ペプチド112;ペプチド113;及びペプチド114;9マー:ペプチド124;ペプチド125;ペプチド126;ペプチド127;ペプチド128;及びペプチド129;8マー:ペプチド141;ペプチド142;ペプチド143;ペプチド144;及びペプチド145;7マー:ペプチド159;ペプチド160;ペプチド161;及びペプチド162;6マー:ペプチド178;ペプチド179;及びペプチド180;5マー:ペプチド198;及びペプチド199;及び4マー:ペプチド219;(b)(a)で定義されるアミノ酸配列と実質的に同様の配列;及び(c)(a)で定義されるアミノ酸配列の変異型、が含まれる(ここで、変異型は、置換変異型、欠失変異型、付加変異型及びこれらの組合せからなる群から選択され、セグメントは、4から23の連続アミノ酸を含むか又は4から23の連続アミノ酸からなる。)。
別の実施形態において、好ましいペプチド配列は、(a)参照配列、ペプチド1の10から23の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;(b)(a)で定義されるアミノ酸配列と実質的に同様の配列;及び(c)(a)で定義されるアミノ酸配列の変異型、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、この場合、変異型は、置換変異型、欠失変異型、付加変異型及びこれらの組合せからなる群から選択され、好ましいアミノ酸配列には、23マー:ペプチド2;22マー:ペプチド4;21マー:ペプチド7;20マー:ペプチド11;19マー:ペプチド16;18マー:ペプチド22;17マー:ペプチド29;16マー:ペプチド37;15マー:ペプチド46;14マー:ペプチド56;13マー:ペプチド67;12マー:ペプチド79;11マー:ペプチド92;10マー:ペプチド106が含まれる。
さらなる実施形態において、ペプチドのアミノ酸配列は、参照配列ペプチド1のN末端アミノ酸から始まり、参照配列ペプチド1のペプチド219におけるように連続残基A、K、G及びEを含み、一方、その他の実施形態において、ペプチドのアミノ酸配列は、参照配列ペプチド1のC末端アミノ酸で終了し、参照配列ペプチド1のペプチド219におけるように連続残基A、K、G及びEを含む。
ペプチドは、参照アミノ酸配列に関して、1以上のアミノ酸欠失、置換及び/又は付加を含み得る。好ましくは、置換は保存的アミノ酸置換であり得るか、又は置換は非保存的アミノ酸置換であり得る。ある実施形態において、参照アミノ酸配列と実質的に同一であるか又は参照アミノ酸配列の変異型であるアミノ酸配列を有するペプチドを含むペプチドは、参照アミノ酸配列の対応する連続アミノ酸と比較して欠失又は付加を有さないが、保存的又は非保存的置換を有し得る。本発明のペプチドにおいて参照アミノ酸配列に施し得るアミノ酸置換には、、以下のものが含まれる(これらに限定されない。):アラニン(A)は、リシン(K)、バリン(V)、ロイシン(L)又はイソロイシン(I)で置換され得;グルタミン酸(E)はアスパラギン酸(D)で置換され得;グリシン(G)はプロリン(P)で置換され得;リシン(K)は、アルギニン(R)、グルタミン(Q)又はアスパラギン(N)で置換され得;フェニルアラニン(F)は、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)又はアラニン(a)で置換され得;プロリン(P)はグリシン(G)で置換され得;グルタミン(Q)は、グルタミン酸(E)又はアスパラギン(N)で置換され得;アルギニン(R)は、リシン(K)、グルタミン(Q)又はアスパラギン(N)で置換され得;セリン(S)はスレオニンで置換され得;スレオニン(T)はセリン(S)で置換され得;バリン(V)は、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、アラニン(A)又はノルロイシン(Nle)で置換され得る。例えば、本発明のペプチドにおいて参照アミノ酸配列に施し得る置換には、フェニルアラニン(F)をアラニン(A)で(例えば参照アミノ酸配列のアミノ酸位置4において)、グルタミン(Q)をグルタミン酸(E)で(例えば参照アミノ酸配列のアミノ酸位置3において)、アラニン(A)をリシン(K)で(例えば参照アミノ酸配列のアミノ酸位置2及び/又は8において)及び/又はスレオニン(T)をセリン(S)で(例えば参照アミノ酸配列のアミノ酸位置7において)置換することが含まれる。
参照アミノ酸配列に関して本発明のペプチド(非修飾ペプチドならびに、例えばアミド形成などによるN末端及び/又はC末端修飾によって化学的に修飾されているペプチドを含む。)のアミノ酸配列中に置換が含まれる場合、ペプチドのアミノ酸配列と参照アミノ酸配列の間には好ましくは少なくとも80%の配列同一性がある。5から23個のアミノ酸を有し、参照アミノ酸配列に関して1個のアミノ酸置換を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約80%から約96%(即ち〜95.7%)の配列同一性を有する。10から23個のアミノ酸を有し、参照アミノ酸配列に関して1個のアミノ酸置換を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約90%から約96%(即ち〜95.7%)の配列同一性を有する。20から23個のアミノ酸を有し、参照アミノ酸配列に関して1個のアミノ酸置換を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約95%から約96%(即ち〜95.7%)の配列同一性を有する。10から23個のアミノ酸を有し、参照アミノ酸配列に関して2個のアミノ酸置換を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約80%から約92%(即ち〜91.3%)の配列同一性を有する。16から23個のアミノ酸を有し、参照アミノ酸配列に関して2個のアミノ酸置換を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約87.5%から約92%(即ち〜91.3%)の配列同一性を有する。20から23個のアミノ酸を有し、参照アミノ酸配列に関して2個のアミノ酸置換を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約90%から約92%(即ち〜91.3%)の配列同一性を有する。15から23個のアミノ酸を有し、参照アミノ酸配列に関して3個のアミノ酸置換を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約80%から約87%の配列同一性を有する。20から23個のアミノ酸を有し、参照アミノ酸配列に関して3個のアミノ酸置換を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約85%から約87%の配列同一性を有する。20から23個のアミノ酸を有し、参照アミノ酸配列に関して4個のアミノ酸置換を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約80%から約83%(即ち〜82.6%)の配列同一性を有する。
本発明のペプチドにおいて、参照ペプチド(24マーである)の連続アミノ酸に関して、参照24アミノ酸配列から選択される連続23アミノ酸配列(23マー)における1個のアミノ酸の置換によって、23マーが同一である参照ペプチドにおけるアミノ酸セグメントと95.65%(又は〜96%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、前記23マー中の2、3、4及び5個のアミノ酸の置換によって、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ91.30%(又は〜91%)、86.96%(又は〜87%)、82.61%(又は〜83%)及び78.27%(又は〜78%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、22マー中の1、2、3、4及び5個のアミノ酸の置換によって、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ95.45%(又は〜95%)、90.91%(又は〜91%)、86.36%(又は〜86%)、81.82%(又は〜82%)及び77.27%(又は〜約77%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、21マー中の1、2、3、4及び5個のアミノ酸の置換は、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ95.24%(又は〜95%)、90.48%(又は〜91%)、85.71%(又は〜86%)、80.95%(又は〜81%)及び76.19%(又は〜76%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、20マー中の1、2、3、4及び5個のアミノ酸の置換によって、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ95.00%(95%)、90.00%(90%)、85.00%(85%)、80.00%(80%)及び75.00%(75%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、19マー中の1、2、3及び4個のアミノ酸の置換により、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ94.74%(〜95%)、89.47%(〜89%)、84.21%(〜84%)及び78.95%(〜79%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、18マー中の1、2、3及び4個のアミノ酸の置換により、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ94.44%(〜94%)、88.89%(〜89%)、83.33%(〜83%)及び77.78%(〜78%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、17マー中の1、2、3及び4個のアミノ酸の置換により、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ94.12%(〜約94%)、88.23%(〜88%)、82.35%(〜82%)及び76.47%(〜76%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、16マー中の1、2、3及び4個のアミノ酸の置換により、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ93.75%(〜94%)、87.50%(〜88%)、81.25%(〜81%)及び75.00%(〜75%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、15マー中の1、2及び3個のアミノ酸の置換により、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ93.33%(〜93%)、86.67%(〜87%)及び80.00%(80%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、14マー中の1、2及び3個のアミノ酸の置換により、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ92.86%(〜93%)、85.71%(〜86%)及び78.57%(79%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、13マー中の1、2及び3個のアミノ酸の置換により、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ92.31%(〜92%)、84.62%(〜85%)及び76.92%(〜77%))の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、12マー中の1、2及び3個のアミノ酸の置換により、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ91.67%(〜92%)、83.33%(〜83%)及び75.00%(75%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、11マー中の1及び2個のアミノ酸の置換によって、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ90.91%(〜91%)及び81.82%(〜82%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、10マー中の1及び2個のアミノ酸の置換によって、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ90.00%(90%)及び80.00%(80%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、9マー中の1及び2個のアミノ酸の置換によって、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ88.89%(〜89%)及び77.78%(〜78%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、8マー中の1及び2個のアミノ酸の置換によって、参照ペプチドアミノ酸配列とそれぞれ87.50%(〜88%)及び75.00%(75%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。同様に、7マー、6マー、5マー及び4マー中の1個のアミノ酸の置換によって、参照ペプチドとそれぞれ85.71%(〜86%)、83.33%(〜83.3%)、80.00%(80%)及び75.00%(75%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を備えたペプチドが得られる。本発明の好ましいアミノ酸配列は、参照配列におけるアミノ酸配列と80%を超える配列同一性、より好ましくは参照配列におけるアミノ酸配列と81%から96%の配列同一性、より好ましくは参照配列におけるアミノ酸配列と80%から96%の配列同一性を有する。好ましいアミノ酸配列は、場合によっては、アミド結合によってC2−C22直鎖脂肪族カルボン酸部分、より好ましくはC2−C16直鎖脂肪族カルボン酸部分、最も好ましくはC2又はC16直鎖脂肪族カルボン酸部分に、末端ペプチドアミノ基でN末端化学結合され得、場合によっては、アミド結合によってアンモニアなどのアミン又はC1−C16直鎖脂肪族一級アミンなどの一級又は二級アミンに末端ペプチドカルボキシル基でC末端化学結合され得る。
12マーであるペプチド79の置換変異型の例には、例えば、ペプチド79の位置3のQがペプチド238中でEによって置換された、ペプチド238;ペプチド79の位置2のAがペプチド233中でKによって置換された、ペプチド233;ペプチド79の位置8のAがペプチド234中でKによって置換された、ペプチド234;ペプチド79の位置2と位置8のAがペプチド235中でKによって置換された、ペプチド235;ペプチド79の位置4のFがペプチド237中でAによって置換された、ペプチド237;ペプチド79の位置10のKがペプチド239中でAによって置換された、ペプチド239;ペプチド79の位置11のGがペプチド240中でAによって置換された、ペプチド240;及びペプチド79の位置12のEがペプチド241中でAによって置換された、ペプチド241が含まれる。
10マーであるペプチド106の置換変異型の例には、例えばペプチド106の位置4のFがペプチド236中でAによって置換された、ペプチド236;ペプチド106の位置1のGがペプチド242中でAによって置換された、ペプチド242;ペプチド106の位置3のQがペプチド243中でAによって置換された、ペプチド243;ペプチド106の位置5のSがペプチド244中でAによって置換された、ペプチド244;ペプチド106の位置6のKがペプチド245中でAによって置換された、ペプチド245;ペプチド106の位置7のTがペプチド247中でAによって置換された、ペプチド247;ペプチド106の位置10のKがペプチド248中でAによって置換された、ペプチド248;ペプチド106の位置6及び位置10のKがペプチド249中でAによりそれぞれ置換された、ペプチド249が含まれる。
8マーであるペプチド137の置換変異型の例には、例えばペプチド137の位置4のFがペプチド250中でAによって置換された、ペプチド250が含まれる。
4マーであるペプチド219の置換変異型の例には、例えばペプチド219の位置2のKがペプチド251中でAによって置換された、ペプチド251が含まれる。
本明細書中で述べるような置換変異型ペプチドは、単離ペプチドの形態又は、例えばミリストイルアミド、アセチルアミド及び明細書中で述べるものなどのN末端アミド、及び例えばアンモニアで形成されるアミドなどのC末端アミド、及びN末端アミドとC末端アミドの両方など、化学修飾ペプチドの形態であり得る。
参照アミノ酸配列に関して本発明のペプチドのアミノ酸配列に欠失が含まれる場合、好ましくはペプチドのアミノ酸配列と参照アミノ酸配列との間に少なくとも80%の配列同一性を有する。5から23個のアミノ酸を有し、参照ペプチドに関して1個のアミノ酸欠失を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約80%から約96%(即ち〜95.7%)の配列同一性を有する。10から23個のアミノ酸を有し、参照ペプチドに関して1個のアミノ酸欠失を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約90%から約96%(即ち〜95.7%)の配列同一性を有する。20から23個のアミノ酸を有し、参照ペプチドに関して1個のアミノ酸欠失を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と95%から約96%(即ち〜95.7%)の配列同一性を有する。10から23個のアミノ酸を有し、参照ペプチドに関して2個のアミノ酸欠失を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約80%から約92%(即ち〜91.3%)の配列同一性を有する。16から23個のアミノ酸を有し、参照ペプチドに関して2個のアミノ酸欠失を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約87.5%から約92%(即ち〜91.3%)の配列同一性を有する。20から23個のアミノ酸を有し、参照ペプチドに関して2個のアミノ酸欠失を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約90%から約92%(即ち〜91.3%)の配列同一性を有する。15から23個のアミノ酸を有し、参照ペプチドに関して3個のアミノ酸欠失を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約80%から約87%の配列同一性を有する。20から23個のアミノ酸を有し、参照ペプチドに関して3個のアミノ酸欠失を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約85%から約87%の配列同一性を有する。20から23個のアミノ酸を有し、参照ペプチドに関して4個のアミノ酸欠失を含むペプチドは、参照アミノ酸配列と約80%から約83%(即ち〜82.6%)の配列同一性を有する。
上述のように、ペプチドのアミノ酸の1以上はまた、化学的に修飾され得る。当技術分野で公知の何らかの方法を用いて、当技術分野で公知の何らかのアミノ酸修飾を、ペプチドのアミノ酸に対して施し得る。
ある実施形態において、N末端及び/又はC末端アミノ酸は修飾され得る。例えば、ペプチドのαN末端アミノ酸は、αN末端(N末端)アミノ(α−H2N−)基においてアルキル化、アミド化又はアシル化され得、例えば、ペプチドのC末端アミノ酸は、C末端カルボキシル(−COOH)基においてアミド化又はエステル化され得る。例えば、N末端アミノ基は、アセチル基(即ちCH3−C(=O)−)又はミリストイル基(この両者ともここで好ましい基である。)を含むアミドを形成するために何らかのアシル又は脂肪アシル基を含むようにアシル化によって修飾され得る。ある実施形態において、N末端アミノ基は、式−C(O)R(式中、Rは1から15個の炭素原子を有する直鎖又は分枝アルキル基である。)を有するアシル基を含むように修飾され得るか、又は、式−C(O)R1(式中、R1は、1から15個の炭素原子を有する直鎖アルキル基である。)を有するアシル基を含むように修飾され得る。N−アミドはまた、ホルムアミド(R=H)でもあり得る。ペプチドのC末端アミノ酸も化学的に修飾され得る。例えば、C末端アミノ酸のC末端カルボキシル基は、カルボキシル基の代わりにカルボキサミド基に変換することにより(即ちアミド化)、化学的に修飾され得る。ある実施形態において、N末端及び/又はC末端アミノ酸は化学的に修飾されない。ある実施形態において、N末端基が修飾され、C末端基は修飾されない。ある実施形態において、N末端及びC末端基の両方が修飾される。
以下のものからなる群から選択される酸とともにN末端アミドを形成させるために、N末端アミノ酸のアミノ基において、ペプチドがアシル化され得る:
(i−a)直鎖、分枝(C3を上回るもの)であり得るか又は環(C3を上回るもの)を含み得る、C2(アセチル)からC13脂肪族(飽和又は場合によっては不飽和)カルボン酸(例えば酢酸(好ましい基である。)との、プロパン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸との、N−末端アミド);
(i−b)直鎖、分枝状であり得るか又は環を含み得る、飽和C14脂肪族カルボン酸;
(i−c)直鎖、分枝状であり得るか又は環を含み得る、不飽和C14脂肪族カルボン酸;
(i−d)直鎖、分枝状であり得るか又は環を含み得る、C15からC24脂肪族(飽和又は場合によっては不飽和)カルボン酸(例えばテトラデカン酸(ミリスチン酸、これは好ましい基である。)、ヘキサデカン酸、9−ヘキサデセン酸、オクタデカン酸、9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、9−エイコセン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、13−ドコセン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、テトラコサン酸など);
(ii)トリフルオロ酢酸;
(iii)安息香酸;及び
(iv−a)脂肪族アルキルスルホンアミドを形成するC1−C12脂肪族アルキルスルホン酸(ここで、スルホン酸のC1−C12脂肪族アルキル炭素鎖構造は、上述した脂肪族アルキルカルボン酸における脂肪族アルキルカルボン酸鎖の構造に類似する。)。例えば、ペプチドは、(C1−C11)−アルキル−C(O)OHと表わされるカルボン酸基を用いて、カルボン酸基の活性化による脱水結合を通して(C1−C11)−アルキル−C(O)−NH−ペプチドと表わされるアミドを形成するようにアシル化され得る。同様に、スルホンアミドは、(C1−C12)−アルキル−S(O2)−NH−ペプチドと表わされるスルホンアミドを形成するように、スルホン酸種((C1−C12)−アルキル−S(O2)−X(例えば、式中、Xはハロゲン又はOCH3又はその他の適合性脱離基である。)と表わされる。)を、N末端アミノ基と反応させることによって形成され得る。
(iv−b)脂肪族アルキルスルホンアミドを形成するC14−C24脂肪族アルキルスルホン酸(ここで、スルホン酸のC14−C24脂肪族アルキル炭素鎖構造は、上述の脂肪族アルキルカルボン酸における脂肪族アルキルカルボン酸鎖の構造に類似する。)からなる群から選択される酸とN−末端アミドを形成するようにN末端アミノ酸のアミノ基でアシル化され得る。例えばペプチドは、(C13−C23)−アルキル−C(O)OHと表わされるカルボン酸基を用いて、カルボン酸基の活性化による脱水結合を通して(C13−C23)−アルキル−C(O)−NH−ペプチドと表わされるアミドを形成するようにアシル化され得る。同様に、スルホンアミドは、(C14−C24)−アルキル−S(O2)−NH−ペプチドと表わされるスルホンアミドを形成するように、スルホン酸種((C14−C24)−アルキル−S(O2)−X(例えば、式中、Xはハロゲン又はOCH3又はその他の適合性脱離基である。)と表わされる。)をN末端アミノ基と反応させることによって形成され得る。
別の例として、N末端アミノ酸のN末端アミノ基は、C1−C12脂肪族アルキル基でアルキル化され得る(この脂肪族アルキル基の構造は上述したとおりである。)。アルキル化は、例えば、脂肪族アルキルハロゲン化物又は脂肪族アルキルスルホン酸エステル(メシレート、トシレートなど)を用いて、好ましくは一級アルキルハロゲン化物又は一級アルキルスルホン酸エステルを用いて実施され得る。N末端アミノ酸はまた、アセチル基(即ちC(O)CH3、これは好ましい基である。)、ミリストイル基(これは好ましい基である。)、ブタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、9−ヘキサデセノイル基、オクタデカノイル基、9−オクタデセノイル基、11−オクタデセノイル基、9,12−オクタデカジエノイル基、9,12,15−オクタデカトリエノイル基、6,9,12−オクタデカトリエノイル基、エイコサノイル基、9−エイコセノイル基、5,8,11,14−エイコサテトラエノイル基、5,8,11,14,17−エイコサペンタエノイル基、ドコサノイル基、13−ドコセノイル基、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエノイル基、テトラコサノイル基(アミド結合によってペプチドの末端アミノ基に共有結合している。)を含むアミドとして何らかのアシル又は脂肪族アシル脂肪アシル基を含むように末端アミノで修飾され得る。
本発明のペプチドのC末端アミノ酸のC末端カルボン酸基も化学的に修飾され得る。例えば、C末端アミノ酸は、アンモニアのアミド(好ましい基である。);C1−C12脂肪族アルキルアミン、好ましくは直鎖脂肪族アルキルアミンのアミド;ヒドロキシル置換C2−C12脂肪族アルキルアミンのアミド;直鎖2−(C1−C12脂肪族アルキル)オキシエチルアミン基のアミド;及びω−メトキシ−ポリ(エチレンオキシ)n−エチルアミン基(ω−メトキシ−PEG−α−アミン基又はω−メトキシ−(ポリエチレングリコール)アミン基とも呼ばれる。)(式中、nは0から10である。)のアミドなどのアミド基を形成するために、ペプチドのC末端カルボン酸基とアミンの反応によって化学的に修飾され得る。ペプチドのC末端アミノ酸のC末端カルボン酸基はまた、C1−C12脂肪族アルキルアルコールのエステル及び2−(ω−メトキシ−ポリ(エチレンオキシ)n)−エタノール(MPEG)基(式中、nは0から10である。)のエステルからなる群から選択されるエステルの形態でもあり得る。ある態様において、PEGエステル、MPEGエステル、PEGアミド、MPEGアミドなどのポリエチレングリコール成分は、好ましくは、約500から40,000ダルトン、より好ましくは1000から25,000ダルトン、最も好ましくは約1000から約10,000ダルトンの分子量を有する。
式、ペプチド−C(O)OHによって表わされ得るペプチド上のC末端カルボン酸基はまた、アンモニア又は一級もしくは二級アミン、好ましくは、アンモニア又は一級アミンとの反応を促進するために、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ペンタフルオロフェニル(OPfp)エステル、3−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロ−4−オキソ−ベンゾ−トリアゾン(ODhbt)エステルなどの活性化形態への変換によってアミド化され得、好ましくは、一方で、ペプチドにおける何らかのその他の反応基が、ベンジルエステル、t−ブチルエステル、フェニルエステルなどの、ペプチド合成、特にペプチド固相合成の技術分野において周知の合成化学的に適合性の保護基によって保護されている。得られるペプチドアミドは、式、ペプチド−C(O)−NR3R4(アミドはペプチドのC末端に位置する。)(式中、R3及びR4は、水素;上述の、メチル、エチル、ブチル、イソブチル、シクロプロピルメチル、ヘキシル、ドデシルなどのC1−C12アルキル及び、場合によってはより高い、例えばテトラデシルなどのC14−C24及び上述のものなどからなる群から独立して選択される。)によって表わされ得る。
C末端アミノ酸のC末端カルボン酸はまた、2−ヒドロキシエチルアミン、4−ヒドロキシブチルアミン及び12−ヒドロキシドデシルアミンなどのヒドロキシル置換C2−C12脂肪族アルキルアミン(ヒドロキシル基はアミンの窒素原子ではなく炭素原子に結合している。)のアミドに変換され得る。
C末端カルボン酸はまた、ヒドロキシル基が、上述のようなC2−C12脂肪族カルボン酸とエステルを形成するようにアシル化され得る、ヒドロキシル置換C2−C12脂肪族アルキルアミンのアミドに変換され得る。好ましくは、式、ペプチド−C(O)NR5R6によって表わされるペプチドのC末端のペプチドアミドにおいて、R5は水素であり、R6は、水素、C1−C12アルキル及びヒドロキシル置換C2−C12アルキルからなる群から選択される。
C末端アミノ酸のC末端カルボン酸は、直鎖2−(C1−C12脂肪族アルキル)オキシエチルアミンのアミドに変換され得る。このようなアミドは、例えば、直鎖C1−C12脂肪族アルキルエタノールを与える、2−クロロエタノールを含むジグリム中の水素化カリウムと直鎖C1−C12脂肪族アルコールの反応によって調製して、直鎖C1−C12脂肪族アルキルエタノールを得ることができ、これをアルデヒドに酸化し、次にアミンへと還元的アミノ化することによって(例えばアンモニアを用いて)、又はハロゲン化アルキルに変換し(例えば塩化チオニルを用いて)、次にアンモニアなどのアミンで処理することによって、アミンに変換することができる。
C末端アミノ酸のC末端カルボン酸は、直鎖PEG−アミンのアミドに変換され得る(例えば、ω−メトキシ−PEG−α−アミンなどのω−ヒドロキシ−PEG−α−アミン;ω−(C1−C12)−PEG−α−アミン、即ちMPEG−アミン)。ある態様において、ポリエチレングリコール又はPEG成分は、好ましくは、約500から40,000ダルトン、より好ましくは1000から25,000ダルトン、最も好ましくは約1000から約10,000ダルトンの分子量を有する。
C末端アミノ酸のC末端カルボン酸基はまた、ω−メトキシ−ポリ(エチレンオキシ)n−エチルアミン(式中、nは0から10であり、これは、例えば、上述のようなアミンにアルコールを変換することにより、対応するω−メトキシ−ポリ(エチレンオキシ)n−エタノールから調製することができる。)アミドに変換され得る。
別の実施形態において、C末端カルボキシルは、式、ペプチド−C(O)−NR7R8(式中、R7は水素であり、R8は、直鎖2−(C2−C12脂肪族アルキル)オキシエチル基(式中、C1−C12脂肪族アルキル部分は上述したとおりであり、メトキシエチル(即ちCH3O−CH2CH2−)、2−ドデシルオキシエチルなどのような基を含む。)であるか;又はR7は水素であり、R8は、ω−メトキシ−ポリ(エチレンオキシ)n−エチル基である。(式中、ポリ(エチレンオキシ)部分のnは、2−メトキシエチル(即ちCH3O−CH2CH2−)、ω−メトキシエトキシエチル(即ちCH3O−CH2CH2O−CH2CH2−)からCH3O−(CH2CH2O)10−CH2CH2−までのように、0から10である。))によって表わされるアミドに変換され得る。
ペプチドのC末端アミノ酸のC末端カルボン酸基はまた、C1−C12脂肪族アルキルアルコールのエステル、上述したようなアルコールの脂肪族アルキル部分の形態でもあり得る。ペプチドのC末端アミノ酸のC末端カルボン酸基はまた、酸化エチレンの化学量論量(化学量論量はnの大きさに依存する。)とナトリウム2−メトキシエタノレートのような2−メトキシエタノールの反応から調製され得る、2−(ω−メトキシ−ポリ(エチレンオキシ)n)−エタノール基(式中、nは0から10である。)のエステルの形態でもあり得る。
ペプチドのアミノ酸の側鎖も化学的に修飾され得る。例えば、フェニルアラニン又はチロシンにおけるフェニル基は、次のものからなる群から選択される置換基で置換され得る。
メチル(好ましい。)、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、シクロプロピル、2−メチルシクロプロピル、シクロヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコサニル、ドコサニル、テトラコサニル、9−ヘキサデセニル、9−オクタデセニル、11−オクタデセニル、9,12−オクタデカジエニル、9,12,15−オクタデカトリエニル、6,9,12−オクタデカトリエニル、9−エイコセニル、5,8,11,14−エイコサテトラエニル、5,8,11,14,17−エイコサペンタエニル、13−ドコセニル及び4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエニルなどのC1−C24脂肪族アルキル基(即ち直鎖又は分枝状及び/又は飽和又は不飽和及び/又は環状基);
不飽和の部位から離れた少なくとも1個の炭素原子においてヒドロキシル基で置換されたC1−C12脂肪族アルキル基(ヒドロキシアルキル基の例は、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシドデシルなどを含む。);
酢酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、9−ヘキサデセン酸、オクタデカン酸、9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、9−エイコセン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、13−ドコセン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、テトラコサン酸などの酸、コハク酸などのジカルボン酸、又は乳酸などのヒドロキシ酸のC2−C25脂肪族カルボキシル基でエステル化されているヒドロキシル基で置換されたC1−C12アルキル基(ここで、エステル置換基の炭素原子の総数は3から25である。);
フルオロ−、クロロ−、ブロモ−及びヨード−などのハロゲン;ニトロ−;
NH2、メチルアミノ、ジメチルアミノなどのアミノ−;トリフルオロメチル−;
カルボキシル(−COOH);
メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、シクロプロピルオキシ、2−メトキシシクロプロピルオキシ、シクロヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシ、エイコサニルオキシ、ドコサニルオキシ、テトラコサニルオキシ、9−ヘキサデセニルオキシ、9−オクタデセニルオキシ、11−オクタデセニルオキシ、9,12−オクタデカジエニルオキシ、9,12,15−オクタデカトリエニルオキシ、6,9,12−オクタデカトリエニルオキシ、9−エイコセニルオキシ、5,8,11,14−エイコサテトラエニルオキシ、5,8,11,14,17−エイコサペンタエニルオキシ、13−ドコセニルオキシ及び4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエニルオキシなどのC1−C24アルコキシ(チロシンのアルキル化によって形成され得るものなど);及び
2−ヒドロキシエチルオキシなどのC2−C12ヒドロキシアルキルオキシ及び上述のようなカルボン酸又はトリフルオロ酢酸とのそのエステル。
セリンヒドロキシル基は、
上述のようなC2−C12脂肪族カルボン酸基;
トリフルオロ酢酸基;
及び安息香酸基
からなる群から選択される置換基でエステル化され得る。
リシン内のεアミノ基は、例えば、上述のような、C2−C12脂肪族カルボン酸基(例えば、酸塩化物、無水物、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ペンタフルオロフェニル(OPfp)エステル、3−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロ−4−オキソ−ベンゾ−トリアゾン(ODhbt)エステルなどのカルボン酸の化学的活性化形態とアミンの反応による。)、又は安息香酸基、又はアミノ酸基とのアミド形成によって、化学的に修飾され得る。さらに、リシン内のεアミノ基は、1又は2個のC1−C4脂肪族アルキル基でのアルキル化によって化学的に修飾され得る。
グルタミン酸内のカルボン酸基は、アンモニア;メチルアミンを含むC1−C12一級脂肪族アルキルアミン(このアルキル部分は上述したとおりである);又はアミノ酸のアミノ基などのアミンとのアミドの形成によって修飾され得る。
グルタミン酸内のカルボン酸基は、上述のC1−C12脂肪族ヒドロキシアルキル基とのエステル、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、n−ドデカノール及び上述したものなどの、C1−C12脂肪族アルキルの第一級アルコールとのエステルの形成によって修飾され得る。
好ましい実施形態において、本発明は、次のものからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む医薬組成物の治療的有効量を対象の組織及び/又は体液へ投与することを含む、対象の組織及び/又は体液における少なくとも1つの炎症性細胞での顆粒からの少なくとも1つの炎症メディエーターの放出を阻害する方法を含む:
(a)参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)の4から23の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;
(b)配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)を有するアミノ酸配列;及び
(c)(a)で定義される配列と実質的に同一であるアミノ酸配列(ここで、このペプチドのC末端アミノ酸は、場合によっては独立に化学的に修飾され、このペプチドのN末端アミノ酸は、C2からC13の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸、C14飽和(ミリスチン酸)又は不飽和脂肪族カルボン酸、C15から24の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群から選択されるカルボン酸でのアシル化により独立に化学的に修飾されるか、又は化学的に修飾されておらず、ただし、そのアミノ酸配列が、C2からC13の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸、C14不飽和脂肪族カルボン酸、C15から24の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群から選択されるカルボン酸のみでのアシル化による参照配列の配列GAQFで始まる場合は前記ペプチドはアシル化により修飾されるか、又は化学的に修飾されず、ここで、前記ペプチドは、前記少なくとも1つのペプチド非存在下で起こる炎症性細胞の同じタイプの少なくとも1つからの前記炎症性メディエーターの放出と比較して少なくとも1つの炎症性細胞からの前記炎症性メディエーターの放出を低下させるために治療的に有効な炎症性メディエーター放出低下量で、医薬的に許容可能な担体と場合によっては組合わされる。
本方法は、好ましくは、αN末端アミノ酸においてアセチル化され得るペプチドを使用する。このペプチドは、少なくとも10個の連続アミノ酸残基からなり得、好ましくは、アセチル−ペプチド106(配列番号106)により包含される。
本方法はまた、少なくとも4個の連続アミノ酸残基及びより好ましくは、少なくとも6個の連続アミノ酸残基からなるペプチドも使用する。さらに、このペプチドは、αN末端アミノ酸でミリストイル化され得る。本方法はまた、αC末端アミノ酸でアンモニアによりアミド化され得るペプチドも利用し得る。
さらなる実施形態における方法は、(a)参照配列の4から23の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)のアミノ酸配列を含むペプチドを利用する(ここで、(a)のアミノ酸配列のN末端アミノ酸は、参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)のアミノ酸位置2から21から選択される。)。さらに、これらのペプチドは、αN末端アミノ酸においてミリストイル化され得、またαC末端アミノ酸においてアンモニアによりアミド化され得る。
本発明による投与の方法は、前記対象において炎症性細胞から炎症性メディエーターを放出する機構を遮断又は阻害することとして、炎症性メディエーターの放出の低下を定義する。
投与の方法は、医薬組成物を生成させるために、医薬的に許容可能な担体と開示ペプチドを組み入れるか又は混合することを含む。
本発明の投与の方法は、前記少なくとも1つのペプチドの非存在下で起こる同じタイプの炎症性細胞の少なくとも1つからの炎症性メディエーターの放出と比較して、この少なくとも1つの炎症性細胞からの前記炎症性メディエーターの放出を低下させるための、少なくとも1つの前記炎症性メディエーター放出低下量を放出する。前記対象における炎症性細胞は、白血球、顆粒球、好塩基球、好酸球、単球、マクロファージ又はその組み合わせであり得る。
少なくとも1つの炎症性細胞の少なくとも1つの顆粒から放出される炎症性メディエーターは、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)、主要塩基性タンパク質[MBP]、リゾチーム、グランザイム、ヒスタミン、プロテオグリカン、プロテアーゼ、走化因子、サイトカイン、アラキドン酸の代謝産物、デフェンシン、殺菌性透化亢進タンパク質(BPI)、エラスターゼ、カテプシンG、カテプシンB、カテプシンD、β−D−グルクロニダーゼ、α−マンノシダーゼ、ホスホリパーゼA2、コンドロイチン−4−硫酸、プロテイナーゼ3、ラクトフェリン、コラゲナーゼ、補体活性化因子、補体受容体、N−ホルミルメチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(FMLP)受容体、ラミニン受容体、チトクロムb558、単球−走化因子、ヒスタミナーゼ、ビタミンB12結合タンパク質、ゲラチナーゼ、プラスミノゲン活性化因子、β−D−グルクロニダーゼ及びその組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、炎症性メディエーターは、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)、主要塩基性タンパク質(MBP)、リゾチーム、グランザイム及びその組み合わせからなる群から選択される。
前記ペプチドの前記有効な炎症性メディエーター放出低下量は、ペプチドの非存在下で少なくとも1つの炎症性細胞から放出される量と比較して、約1%から約99%又は好ましくは約5−50%から約99%、少なくとも1つの炎症性細胞から放出される炎症性メディエーターの量を低下させるペプチドの脱顆粒阻害量を含む、請求項13に記載の方法。
本発明の方法は、呼吸器疾患に罹患している対象の治療に有用である。この呼吸器疾患は、喘息、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び嚢胞性線維症であり得る。本発明により治療することができる対象は好ましくは哺乳動物(ヒト、イヌ、ウマ及びネコなど)である。
本発明のペプチドの投与方法は、局所投与、非経口投与、直腸投与、肺内投与、鼻腔投与及び経口投与による。より好ましくは、肺内投与はエアロゾルを含み、これは、乾燥粉末吸入器、定量吸入器又は噴霧器から生成され得る。さらに、対象への投与は、抗生物質、抗ウイルス化合物、抗寄生虫化合物、抗炎症化合物及び免疫調整剤からなる群から選択される第二の分子の投与をさらに含み得る。
本方法はまた、腸疾患、皮膚疾患、自己免疫疾患、疼痛症候群及びそれらの組み合わせからなる群から選択される疾患に罹患している対象の治療にも有用である。とりわけ、腸疾患は、潰瘍性大腸炎、クローン病及び過敏性腸症候群からなる群から選択される。本方法により治療可能である皮膚疾患には、酒さ、湿疹、乾癬及び重度にきびが含まれる。さらに、関節炎に罹患している対象も本発明により治療し得る。
ある実施形態における本発明は、参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)の4から23の連続アミノ酸を有する(a)のアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含むペプチドの投与を包含する。これらのペプチドは、好ましくは、配列番号233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、247、248、249、250、251及び252からなる群から選択される。これらのペプチドは、さらに、αN末端アミノ酸においてアセチル化されるか又はαN末端アミノ酸においてミリストイル化され、場合によってはαC末端アミノ酸においてアンモニアによりアミド化され得る。
本発明の方法はまた、本明細書中に記載のとおりの本発明のペプチドの投与により、対象において粘液過剰分泌を低下させるために、また、対象において少なくとも1つの粘液分泌細胞又は組織からのMARCKS関連粘液過剰分泌を低下させるためにも有用であり、これにより、前記ペプチドの前記投与がない場合に起こるものと比較して、対象における粘液過剰分泌が低下する。
本発明は、次のものからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する単離ペプチドに関する:
(a)参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)の4から23の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列;
(b)配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)を有するアミノ酸配列;及び
(c)(a)で定義される配列と実質的に同一であるアミノ酸配列
(ここで、このペプチドのC末端アミノ酸は場合によっては独立に化学的に修飾されており、このペプチドのN末端アミノ酸は、C2からC13の飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸、C14の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸、C15からC24の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群から選択されるカルボン酸でのアシル化によって独立に化学的に修飾されるか又は化学的に修飾されず、ただし、前記ペプチドは、C2からC13の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸、C14の不飽和脂肪族カルボン酸、C15からC24の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群から選択されるカルボン酸でのみのアシル化によって、そのアミノ酸配列が参照配列のGAQFで始まる場合にアシル化により修飾されるか、又は化学的に修飾されず、前記ペプチドは、前記少なくとも1つのペプチド非存在下で生じる炎症性細胞の同じタイプの少なくとも1つからの炎症性メディエーターの放出と比較して少なくとも1つの炎症性細胞からの炎症性メディエーターの放出を低下させるために治療的に有効な炎症性メディエーター放出低下量で、医薬的に許容可能な担体と場合によっては組合わせられる。)。
単離ペプチドは、αN末端アミノ酸でアセチル化され得る。本単離ペプチドは少なくとも10個の連続アミノ酸残基からなり、好ましくは、アセチル−ペプチド106(配列番号106)からなる単離ペプチドである。
さらなる実施形態において、本ペプチドは、少なくとも4個の連続アミノ酸残基からなるか又はペプチドは少なくとも6個の連続アミノ酸残基からなる。
本ペプチドはまた、αN末端アミノ酸でミリストイル化され得、及び/又はペプチドは、αC末端アミノ酸でアンモニアによりアミド化され得る。
単離ペプチドは、上述の(a)のアミノ酸配列、(a)参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)の4から23の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列をさらに含み得;この場合、(a)のアミノ酸配列のN末端アミノ酸は、参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)のアミノ酸位置2から21から選択される。このペプチドは、さらにαN末端アミノ酸においてミリストイル化もしくはアセチル化され得るか、又は場合によってはαC末端アミノ酸においてアンモニアによりアミド化され得る。
さらなる実施形態における単離ペプチドおいて、アミノ酸配列は、参照配列、GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)の4から23の連続アミノ酸を有する(a)のアミノ酸配列と実質的に同一である。これらのペプチドは、好ましくは、配列番号233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、247、248、249、250、251及び252からなる群から選択される。これらのペプチドは、さらに、αN末端アミノ酸においてアセチル化され得るか又はαN末端アミノ酸においてミリストイル化され、場合によってはαC末端アミノ酸においてアンモニアによりアミド化され得る。(a)のアミノ酸配列と実質的に同一である(c)のアミノ酸配列は、配列番号233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、247、248、249、250、251及び252からなる群から選択される。
本発明はまた、上記段落において及び本明細書中で記載のとおりの単離ペプチドと、賦形剤と、を含む組成物も包含する。本発明はまた、上記段落において及び本明細書中で記載のとおりの単離ペプチドと、医薬的に許容可能な担体と、を含む医薬組成物も包含する。本医薬組成物は、さらに、好ましくは、無菌、滅菌可能又は滅菌済みであり得る。これらのペプチドは、投与に有用な薬剤とともにキットに含有され得る。
図1A−1Bは、PKC依存性リン酸化が、原形質膜から細胞質にMARCKSを放出させることを示す。
図2A−2Cは、PP2Aを活性化することにより、PKGがMARCKSの脱リン酸化を誘導することを示す。
図3は、PP2Aがムチン分泌経路の必須成分であることを示す棒グラフを示す。
図4は、MARCKSが細胞質においてアクチン及びミオシンと会合することを示すゲルである。
図5は、好中球においてMPO分泌を調節するシグナル伝達機構を示す。
図6は、MANSペプチドがイヌ単離好中球からのミロペルオキシダーゼ分泌を阻止する能力を示す棒グラフである。
図7は、MANSペプチドがヒト単離好中球からのミロペルオキシダーゼ分泌を阻止する能力を示す棒グラフである。
図8は、LPS刺激ヒト好中球からのMPO分泌の微増をPMAが刺激し、この増加が8−Br−cGMPでの同時刺激によって濃度依存的に促進されることを示す棒グラフである。
図9は、PMAでの同時刺激が濃度依存的に起こるまで、8−Br−cGMP刺激が、LPS刺激ヒト好中球からのMPO分泌にあまり影響しないことを示す棒グラフである。
図10は、LPS刺激イヌ好中球からのMPO分泌の微増をPMAが刺激し、この増加が8−Br−cGMPでの同時刺激によって濃度依存的に促進されることを示す棒グラフである。
図11は、PMAでの同時刺激が濃度依存的に起こるまで、8−Br−cGMPシミュレーションが、LPS刺激イヌ好中球からのMPO分泌にあまり影響しないことを示す棒グラフである。
図12は、PMA+8−Br−cGMPでの同時刺激が、LPS刺激イヌ好中球からの最大MPO分泌に必要であることを示す棒グラフである。
発明の詳細な説明
添付の図面を参照しながら、本明細書中で以後、本発明をより詳細に説明するが、ここで、本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明は、様々な形態で含まれ得るものであり、本明細書中に記載の実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が完全であり、当業者に対して本発明の範囲を完全に伝えるものであるように与えられる。
別段の断りがない限り、本明細書中で使用される技術用語及び科学用語は全て、本発明の属する技術分野の熟練者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中で言及する、刊行物、特許出願、特許及びその他の参考文献は全て、それらの全体において参照により組み込まれる。本発明の何らかの態様を述べるための「a」又は「an」という語の使用は、1以上を指すと解釈されたい。
本発明は、MANSペプチド及びその活性断片からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドの非存在化で起こる炎症性細胞の同じタイプからの炎症性メディエーターの放出と比較して炎症性細胞からの炎症性メディエーターの放出を低下させるのに有効な量の、MANSペプチド及びその活性断片からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドと、少なくとも1つの炎症性細胞(この細胞は、細胞内側の小胞内に含有される少なくとも1つの炎症性メディエーターを含む。)を接触させることを含む、少なくとも1つの炎症性細胞からの少なくとも1つの炎症性メディエーターのエキソサイトーシス放出を阻害する方法に関する。
本発明はさらに、MANSペプチド及びその活性断片からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドの非存在化で起こる炎症性細胞の同じタイプの少なくとも1つからの炎症性メディエーターの放出と比較してこの少なくとも1つの炎症性細胞からの炎症性メディエーターの放出を低下させるために治療的に有効な量でMANSペプチド及びその活性断片からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む医薬組成物の治療的有効量を、対象の組織及び/又は体液(これは、細胞内側の小胞内に含有される少なくとも1つの炎症性メディエーターを含む少なくとも1つの炎症性細胞を含む。)に投与することを含む、対象の組織又は体液における少なくとも1つの炎症性細胞からの少なくとも1つの炎症性メディエーターの放出を阻害する方法に関する。とりわけ、炎症性メディエーターの放出を低下させることは、炎症性細胞から炎症性メディエーターを放出する機構を阻止又は阻害することを含む。
本発明は、細胞内部の小胞内に含有される少なくとも1つの炎症性メディエーターを含有する対象の組織又は体液に含有され得る何らかの既知の炎症性細胞との、上記及び本願を通じて記載するペプチドの接触及び/又は投与に関する。炎症性細胞は、好ましくは、白血球、より好ましくは顆粒球であり、これは、好中球、好塩基球、好酸球又はその組み合わせにさらに分類され得る。本方法で接触させる炎症性細胞は単球/マクロファージでもあり得る。
本発明は、炎症性細胞の小胞内に含有される炎症性メディエーターの放出を低下させることに関し、これらの炎症性メディエーターは、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)、主要塩基性タンパク質(MBP)、リゾチーム、グランザイム、ヒスタミン、プロテオグリカン、プロテアーゼ、走化因子、サイトカイン、アラキドン酸代謝産物、デフェンシン、殺菌性透化亢進タンパク質(BPI)、エラスターゼ、カテプシンG、カテプシンB、カテプシンD、β−D−グルクロニダーゼ、α−マンノシダーゼ、ホスホリパーゼA2、コンドロイチン−4−硫酸、プロテイナーゼ3、ラクトフェリン、コラゲナーゼ、補体活性化因子、補体受容体、N−ホルミルメチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(FMLP)受容体、ラミニン受容体、チトクロムb558、単球−走化因子、ヒスタミナーゼ、ビタミンB12結合タンパク質、ゲラチナーゼ、プラスミノゲン活性化因子、β−D−グルクロニダーゼ及びその組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、これらの炎症性メディエーターは、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)、主要塩基性タンパク質(MBP)、リゾチーム、グランザイム及びその組み合わせからなる群から選択される。
本発明は、本ペプチドの有効量を炎症性細胞と接触させるが、この場合、有効量は、MANSペプチド又はその活性断片の非存在下で少なくとも1つの炎症性細胞から放出される量と比較して、この少なくとも1つの炎症性細胞から放出される炎症性メディエーターの量を約1%から約99%低下させる、MANSペプチド又はその活性断片の脱顆粒阻害量として定義される。この量はまた、有効な炎症性メディエーター放出低下量としても知られる。より好ましくは、接触させるペプチドの有効量は、MANSペプチド又はその活性断片の非存在下で少なくとも1つの炎症性細胞から放出される量と比較して、この少なくとも1つの炎症性細胞から放出される炎症性メディエーターの量を約5−50%から約99%低下させる、MANSペプチド又はその活性断片の脱顆粒阻害量を含む。
本発明は、ある実施形態において、治療的有効量でMANSペプチド及びその活性断片を含む少なくとも1つのペプチドの、対象(この対象は、呼吸器疾患(好ましくは、喘息、慢性気管支炎又はCOPD)に罹患している。)の組織又は体液への投与に関する。さらなる実施形態において、この対象は、腸疾患、皮膚疾患、自己免疫疾患、疼痛症候群及びそれらの組み合わせに罹患しているものであり得る。腸疾患は、潰瘍性大腸炎、クローン病又は過敏性腸症候群であり得る。対象は、皮膚疾患、例えば、酒さ、湿疹、乾癬又は重度にきびなど、に罹患しているものであり得る。対象は、関節炎、例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデスなど、に罹患しているものでもあり得る。嚢胞性線維症に罹患している対象もまた、本方法及びペプチドによって治療され得る。本方法は、好ましくは、哺乳動物など、及び好ましくは、ヒト、イヌ、ウマ及びネコなどの対象の治療に有用である。
対象の治療の方法は、局所投与、非経口投与、直腸投与、肺内投与、鼻腔投与又は経口投与を含む、MANSペプチド又は本明細書中に記載の活性断片を含む1以上のペプチドの投与による。とりわけ、肺内投与は、エアロゾル、乾燥粉末吸入器、定量吸入器及び噴霧器の群から選択される。さらに、開示される方法は、抗生物質、抗ウイルス化合物、抗寄生虫化合物、抗炎症化合物及び免疫調整剤からなる群から選択される第二の分子の対象への投与をさらに含み得る。
ある態様において、本発明は、医薬組成物を投与する方法に関する。この医薬組成物は、既知の化合物の治療的有効量と、医薬的に許容可能な担体と、を含む。「治療的有効」量は、本明細書中で使用する場合、対象が示す症状を軽減するのに十分な化合物の量である。この治療的有効量は、患者の年齢及び身体状態、治療を受ける患者の状態の重症度、治療期間、何らかの同時治療の性質、使用する医薬的に許容可能な担体及び当業者の知識及び技能内の類似因子により変化する。医薬的に許容可能な担体は、好ましくは、錠剤又はカプセルなどの固形投与形態である。経口投与のための液体製剤もまた使用され得、シロップ又は懸濁液の形態で調製され得る(例えば、活性成分、糖及びエタノール、水、グリセロール及びプロピレングリコールの混合物を含有する溶液)。必要に応じて、このような液体製剤は、1以上の次のもの:着色剤、香味剤及びサッカリン、を含み得る。さらに、カルボキシメチルセルロースなどの濃厚化剤もまた、その他の許容可能な担体、当技術分野で公知の選択物と同様に使用し得る。
上述のように、本発明は、細胞性分泌プロセス、特に炎症性細胞から炎症性メディエーターを放出するものを制御するための方法に関する。本明細書中で使用する場合、「制御する」という用語は、阻止する、阻害する、減少させる、低下させる、増加させる、促進する又は刺激することを意味する。多くの細胞性分泌プロセスは、細胞内の膜結合小胞又は細顆粒からの内容物の放出を含む。膜結合小胞又は顆粒は、細胞内粒子として定義され、これは第一に小胞(又は細胞内部の小胞)であり、これは分泌され得る貯蔵物質を含有する。炎症性細胞に含有されるものなど、これらの小胞の内容物の中には、多数の哺乳動物組織における様々な病理に関与することが分かっているものがある。これらの分泌の影響の中には、炎症の際に以前に健康であった組織の損傷を含むと思われるものがある。本発明は、合成ペプチドを用いて細胞内分泌経路において重要な特異的分子を標的とすることにより、炎症性細胞において見出されるものを含む、何らかの膜結合小胞からの分泌を阻止する手段を提供する。このアプローチは、ヒト及び動物における幅広い過剰分泌及び炎症状態の治療に対して治療的に重要であり得る。
とりわけ、本発明は、細胞の細胞質内の1以上の顆粒又は小胞における炎症性メディエーターを含有する炎症性細胞を標的とする。MANSペプチド又はその活性断片から選択される1以上のペプチド(この全てを本明細書中で詳述する。)と細胞を接触させる。好ましくは、炎症性細胞との本ペプチドの接触は、特異的な組織又は組織内の体液にこれらの炎症性細胞が存在する疾患に罹患している対象への投与を介するものである。本ペプチドの投与又は細胞との本ペプチドの接触時に、本ペプチドは、炎症性メディエーターを含有する細胞内顆粒又は小胞の膜へのネイティブMARCKSタンパク質の結合と競合的に競合し、競合的に阻害する。炎症性細胞の小胞へのMARCKSタンパク質の結合を阻止する結果、これらの細胞のこれらの小胞は、通常は細胞からの炎症性メディエーターのそれらの内容物をエキソサイトーシスにより放出するように刺激が与えられた場合に移動するので、細胞の原形質膜に移動しない。このように、本発明の方法は、細胞の原形質膜への移動を阻害し、つまり、炎症性細胞からの炎症性メディエーターの放出を低下させる。炎症性細胞からのメディエーターの放出速度及び放出量の両方が、炎症性細胞に投与され、これと接触させられるペプチドの濃度に依存するので、時間とともにこの細胞から放出される炎症性メディエーター量が低下する。
本発明のある有益性は、これが、ユニークな抗炎症療法と粘液分泌の直接阻止を含む治療を組み合わせ得ることである。免疫系の全般的抑制に影響を及ぼす現在の抗炎症療法を上回る本発明の有益性は、本ペプチドが、炎症性細胞から分泌される細胞内成分のみの分泌を阻止すると思われることである。このように、炎症性メディエーターの阻害を行っても、免疫系の多くの態様が機能するはずである。
本発明の化合物は、細胞からの炎症性メディエーター放出を制御、即ち阻止し得る。この炎症性メディエーターの放出の阻害は、様々な疾患、例えば、炎症を含む疾患及び病的状態を予防及び治療するための魅力的な手段である。このように、本発明の化合物は、このような状態の治療に有用であり得る。これらは、気道疾患及び慢性炎症性疾患(以下に限定されないが、骨関節炎、多発性硬化症、ギランバレー症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、移植片対宿主病及び全身性エリテマトーデスを含む。)を包含する。本発明の化合物もまた、様々な感染物質への反応など、前炎症性メディエーター及び酵素の高レベルの活性が関与するその他の疾患及び、関節リウマチ、毒性ショック症候群、糖尿病及び炎症性腸疾患などの自己免疫の多くの疾患を治療するためにも使用することができる。
本ペプチドの使用及び本発明の方法は、本ペプチドの抗炎症性活性をその粘液分泌阻止能力と組み合わせる治療とともに炎症に対抗するための治療を含む。本ペプチドの、炎症及び粘液分泌の両方の阻止能力により治療され得る疾患には、以下に限定されないが、炎症性腸疾患、消化器疾患(即ち、胆嚢の炎症、メネトリエ病)及び炎症性気道疾患が含まれる。
その他の前炎症性メディエーターは、炎症又は損傷部位への好中球の流入に関連する様々な疾患状態と関連付けられている。抗体を遮断することは、急性炎症における好中球が関与する組織損傷に対する有用な治療であることが示されている(Haradaら、1996、Molecular Medicine Today 2、482)。炎症性メディエーターを放出し得る好中球以外の細胞には、その他の白血球、例えば、好塩基球、好酸球、単球及びリンパ球が含まれ、これらの細胞からの分泌に治療が向けられ得る。好中球、好酸球及び好塩基球は、顆粒球の各タイプ、即ち、その細胞質中に顆粒を有する白血球である。白血球は、細胞質顆粒中にパッケージ化され貯蔵される多くの炎症性メディエーターを合成する。これらのメディエーターの中でも、例えば、好中球中のミエロペルオキシダーゼ[MPO](Borregaard N、Cowland JB.Granules of human neutrophilic polymorphonuclear leukocyte.Blood 1997;89:3503−3521)、好酸球中の好酸球ペルオキシダーゼ[EPO]及び主要塩基性タンパク質[MBP](Gleich G J.Mechanisms of eosinophil−associated inflammation.J Allergy Clin Immunol 2000;105:651−663)、単球/マクロファージ中のリゾチーム(Hoff T、Spencker T、Emmendoerffer A.、Goppelt−Struebe M.Effects of glucocorticoids on the TPA−induced monocytic differentiation.J Leukoc Biol 1992;52:173−182;Balboa M A、Saez Y、Balsinde J.Calcium−independent phospholipase A2 is required for lysozyme secretion in U937 promonocytes.J Immunol 2003;170:5276−5280)及びナチュラルキラー(NK)細胞及び細胞毒性リンパ球中のグランザイム(Bochan MR、Goebel WS、Brahmi Z.Stably transfected antisense granzyme B and perforin constructs inhibit human granule−mediated lytic ability.Cell Immunol 1995;164:234−239;Gong J H.、Maki G、Klingemann HG.Characterization of human cel line(NK−92)with phenotypical and functional characteristics of activated natural killer cells.Leukemia 1994;8:652−658;Maki G、Klingemann HG、Martinson JA、Tam YK.Factors regulating the cytotoxic activity of the human natural killer cell line、NK−92.J Hematother Stem Cell Res 2001;10:369-383;及びTakayama H、Trenn G、Sitkovsky MV.A novel cytotoxic T lymphocyte activation assay.J Immunol Methods 1987;104:183−1907−10)が挙げられる。
これらの細胞が損傷又は疾患組織部位へ浸潤する結果、これらのメディエーターは、損傷部位で放出され得、肺及びその他部位などで、炎症及び修復に関与し得る。白血球は、エキソサイトーシス機構を介してこれらの顆粒を放出する(Burgoyne RD、Morgan A.Secretory granule exocytosis.Physiol Rev 2003;83:581−632;Logan MR、Odemuyiwa SO、Moqbel R.Understanding exocytosis in immune and inflammatory cells:the molecular basis of mediator secretion.J Allergy Clin Immunol 2003;111:923−932)。
マスト細胞(通常は血流中を循環しない。)及び好塩基球は、ヒスタミンなどの予め形成された炎症性(アナフィラキシー)メディエーター;ヘパリン及びコンドロイチン硫酸塩などのプロテオグリカン;トリプターゼ、キマーゼ、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン−G様プロテアーゼなどのプロテアーゼ;走化因子、サイトカイン及びアラキドン酸の代謝産物(脈管構造、平滑筋、結合組織、粘液腺及び炎症性細胞において作用する。)を貯蔵し、細胞活性化時に放出することができる分泌細胞質顆粒を含有する。
多形核白血球(PMN)としても知られる好中球は、循環白血球全体の50から60%を占める。好中球は、感染又は損傷部位での身体の生理的バリアに浸透する、細菌、真菌、原生動物、ウイルス、ウイルス感染細胞などの感染物質ならびに腫瘍細胞に対して作用する。好中球は、6段階の形態形成段階:骨髄芽球、前骨髄芽球、骨髄球、後骨髄球、非分節(桿状核)好中球及び分節(機能的活性)好中球を通じて成熟する。
好中球において、炎症性メディエーターは、一次(アズール親和性)、二次(特異的)及び三次(ゲラチナーゼ)顆粒において、ならびに分泌小胞において貯蔵される。多くの炎症のメディエーターの中でも、一次(アズール親和性)顆粒は、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、リゾチーム、デフェンシン、殺菌性透化亢進タンパク質(BPI)、エラスターゼ、カテプシンG、カテプシンB、カテプシンD、β−D−グルクロニダーゼ、α−マンノシダーゼ、ホスホリパーゼA2、コンドロイチン−4−硫酸及びプロテイナーゼ3(例えば、Hartwig JH、Thelen M、Rosen A、Janmey PA.Naim AC、Aderem A.MARCKS is an actin filament crosslinking protein regulated by protein kinase C and calcium−calmodulin.Nature 1992;356:618−622参照)を含有し;二次(特異的)顆粒は、リゾチーム、ラクトフェリン、コラゲナーゼ、補体活性化因子、ホスホリパーゼA2、補体受容体、例えば、CR3、CR4、N−ホルミルメチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(FMLP)受容体、ラミニン受容体、チトクロムb558、単球−走化因子、ヒスタミナーゼ及びビタミンB12結合タンパク質を含有し;小型貯蔵顆粒は、ゲラチナーゼ、プラスミノゲン活性化因子、カテプシンB、カテプシンD、β−D−グルクロニダーゼ、α−マンノシダーゼ及びチトクロムb558−を含有する。
好中球顆粒は、抗細菌又は細胞毒性物質、中性プロテイナーゼ、酸性ヒドロラーゼ及び細胞質膜受容体のプールを含有する。アズール親和性顆粒構成因子の中でも、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)は、過酸化水素の次亜塩素酸への変換において不可欠な酵素である。過酸化水素及びハロゲン化補助因子と一緒に、これは、白血球−ミエロペルオキシダーゼ系の有効な殺菌及び細胞毒性機構を形成する。
アズール親和性顆粒タンパク質の30−50%を構成するデフェンシンは、幅広い細菌、真菌及び一部のウイルスに対する細胞毒性がある小型の(分子量<4000)強力な抗細菌ペプチドである。これらの毒性は、その他のチャネル形成タンパク質(パーフォリン)と同様である標的細胞の膜透過性によるものであり得る。
細菌透過性向上(BPI)タンパク質は、パーフォリンのメンバーである。これは、グラム陰性細菌に対して高い毒性があるが、グラム陽性細菌もしくは真菌に対して毒性はなく、また、エンドトキシン、グラム陰性細菌細胞エンベロープの毒性リポ多糖成分を中和することもできる。
ラクトフェリン封鎖剤は鉄を遊離させ、これにより、殺菌プロセスを生き延び、リゾチームへの細菌透過性を向上させる摂取微生物の増殖を妨げる。
エラスターゼ及びカテプシンGなどのセリンプロテアーゼは、細菌細胞エンベロープにおいてタンパク質を加水分解する。顆粒球エラスターゼの基質には、コラーゲン架橋及びプロテオグリカン、ならびに血管のエラスチン成分、靭帯及び軟骨が含まれる。カテプシンDは、軟骨プロテオグリカンを切断し、ここで、顆粒球コラゲナーゼは、I型の切断において活性であり、骨、軟骨及び腱由来のIII型コラーゲンに対しては活性の程度は低い。コラーゲン分解産物は、好中球、単球及び繊維芽細胞に対する走化性活性を有する。
ライソゾーム性プロテアーゼの組織破壊性の制御には、α2−マクログロブリン及びα1−抗プロテアーゼなどのプロテアーゼ阻害剤が介在する。これらの抗プロテアーゼは、血清及び滑液中に存在する。これらは、プロテアーゼの活性部位に結合しこれを覆い隠すことにより、機能し得る。プロテアーゼ−抗プロテアーゼの不均衡は、気腫の病因に重要であり得る。
アズール親和性顆粒は、主に、細胞内環境(食胞リソソーム空胞)で機能し、これらは、微生物の殺菌及び分解に関与する。好中球特異的顆粒は、細胞外にその内容物を放出し易く、炎症を開始することにおいて重要な役割を有する。特異的顆粒は、チトクロムb(NADPHオキシダーゼの成分、超酸化物の産生に関与する酵素)、補体断片iC3b(CR3、CR4)に対する、ラミニンに対する受容体及びホルミルメチオニル−ペプチド化学誘引物質を含む、様々な原形質膜成分の細胞内の貯蔵場所である。その他のものに加えて、プラスミン形成及びC5aからC5の切断に関与する、ヒスタミン、ビタミン結合タンパク質及びプラスミノゲン活性化因子の分解に関連するヒスタミナーゼがある。
炎症における好中球顆粒の重要性は、顆粒が先天的に異常である数例の患者の研究から明らかである。チェディアック−東症候群の患者は、炎症性反応の確立速度に顕著な異常があり、ライソゾーム顆粒が異常に大きい。特異的顆粒欠損の先天性症候群は、非常にまれな疾患であり、炎症性反応の低下及び皮膚及び深部組織の重篤な細菌感染を特徴とする。
これらの顆粒のエキソサイトーシス分泌を制御する機構は部分的にしか分かっていないが、そのプロセスにおけるいくつかの重要な分子が同定されており、それには、細胞内Ca2+過渡電流(Richterら、Proc Natl Acad Sci USA 1990;87:9472−9476;Blackwoodら、Biochem J 1990;266:195−200)、Gタンパク質、チロシン及びタンパク質キナーゼ(PK、特にPKC)(Smolenら、Biochim Biophys Acta 1990;1052:133−142;Niessenら、Biochim.Biophys.Acta 1994;1223:267−273;Nauclerら、Pettersenら、Chest 2002;121;142−150)、Rac2(Abdel−Latifら、Blood 2004;104:832−839;Lacyら、J Immunol 2003;170:2670−2679)及び様々なSNARE’s、SNAP’s及びVAMP’s(Sollnerら、Nature 1993;362:318−324;Lacy、Pharmacol Ther 2005;107:358−376)が含まれる。
SNARE(可溶性N−エチルマレイミド結合タンパク質受容体)タンパク質は、SNAREモチーフと呼ばれるアルファ−へリックスコイルド−コイルドメインを特徴とする膜結合タンパク質のファミリーである(Liら、Cell.Mol.Life Sci.60:942−960(2003))。これらのタンパク質は、小胞又は標的膜でのその局在化に基づき、v−SNARE及びt−SNAREとして分類され;別の分類スキームでは、SNAREモチーフの中心において保存されているアルギニン又はグルタミン残基に基づくように、R−SNARE及びQ−SNAREと定義される。SNAREは、分泌及びエンドサイトーシス輸送経路の別個の膜区画に局在し、細胞内の膜融合プロセスの特異性に関与する。t−SNAREドメインは、コイルド−コイルのねじれがある4−へリックス束からなる。SNAREモチーフは、2つの膜の融合に関与する。SNAREモチーフは4つのクラス:シンタキシン1a(t−SNARE)、VAMP−2(v−SNARE)及びSNAP-25のN−及びC末端SNAREモチーフの相同物に分類される。各クラスからの1つのメンバーが相互作用し、SNARE複合体を形成し得る。SNAREモチーフは、神経伝達物質放出に必要とされるシンタキシン1a(Lermanら、Biochemistry 39:8470−8479(2000))及びエンドソーム輸送小胞において見出されるシンタキシン6(Misuraら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:9184−9189(2002))などのある種のシンタキシンファミリーメンバーのN末端ドメインにおいて見られる。
SNAP−25(シナプトソーム結合タンパク質25kDa)タンパク質は、SNARE複合体の構成成分であり、これにより、膜融合の特異性が生じ、シナプス小胞及び原形質膜を結集させる堅い複合体(SNARE又はコア複合体)を形成することにより、直接融合を実行する。SNAREは、コイルドコイルを形成する傾向が高く、カルボキシ末端膜貫通領域に先行することが多い、SNAREモチーフとして知られる60残基の配列を特徴とするタンパク質の大きなファミリーを構成する。シナプスコア複合体は、孤立時は構造化されていないが、集合して平行な4−へリックス束を形成する、4個のSNAREモチーフ(SNAP-25から2個及びシナプトブレビン及びシンタキシン1から各1個)により形成される。コア複合体の結晶構造から、へリックス束のねじれが強く、その表面ならびに内部疎水性残基の層においていくつかの塩橋を含有することが明らかになっている。複合体の中心の極性層は、3個のグルタミン(SNAP−25から2個及びシンタキシン1から1個)及び1個のアルギニン(シナプトブレビンから)により形成される(Rizoら、Nat Rev Neurosci 3:641−653(2002))。SNAP−25ファミリーのメンバーは、膜結合のためにパルミトイル化され得るシステイン残基のクラスターを含有する(Risingerら、J.Biol.Chem.268:24408−24414(1993))。
好中球の主要な役割は、感染性物質を食菌し、分解することである。これらはまた、適応(特異的)免疫反応の開始前に、一部の微生物の増殖を制限する。好中球は宿主防御に不可欠ではあるが、これらは、多くの慢性炎症状態の病因において、及び虚血再灌流傷害においても関連付けられている。炎症性部位から取り出した体液において、好中球起源の加水分解酵素及び酸化的に不活性化されたプロテアーゼ阻害剤を検出することができる。正常な条件下で、好中球は、宿主組織に対して損傷を与えずに感染部位に移動し得る。しかし、宿主組織に対する望ましくない損傷が生じ得ることがある。この損傷は、いくつかの独立機構を通じて生じ得る。これらは、組織再構築の第一段階としての、移動中の未熟な活性化、一部の微生物の殺菌中の毒性産物の細胞外への放出、感染又は損傷宿主細胞及び破片の除去を含み得るが、そうでなければ、急性炎症反応を終結させることができない。虚血再灌流傷害には、罹患組織への好中球の流入及び続く活性化が関与する。これは、損傷宿主細胞から放出される物質により、又は、キサンチンオキシダーゼを通じた超酸化物生成の結果として、誘発され得る。
正常な状態下で、血液は、正常な、刺激を受けた、活性化された、及び使用済みの、好中球の混合物を含有し得る。炎症性部位において、主に活性化された、及び使用済みの好中球が存在する。活性化好中球は、活性酸素中間体(ROI)の生成を促進している。呼吸バーストが向上している好中球のサブ集団が、急性細菌感染に罹患しているヒト及び成人呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者の血液中で検出されている。これは好中球パラドックスの一例である。活性化好中球から放出される酸化物及び加水分解酵素により生じる肺及び関連組織の損傷へ好中球が大量に流入するので、好中球はこの状態の病因に関連づけられてきた。ARDSが悪化するにつれて起こる好中球殺菌活性の障害は、炎症性産物により局所的に誘発される、宿主の一部における防御反応であり得る。
熱傷の急性期にも好中球活性化が関与し、これに続き、様々な好中球機能が全般的に損なわれる。滑液中での免疫複合体による好中球の活性化は、関節リウマチの病因に関与する。好中球の慢性的活性化によってまた腫瘍成長も始まり得るが、これは、好中球により生成される一部のROIがDNAに損傷を与え、プロテアーゼが腫瘍細胞の移動を促進するからである。重度熱傷の患者において、細菌感染の発症と、抗体及び補体受容体に対して陽性である好中球の割合及び絶対数の低下との間に相関があることが分かっている。好中球起源の酸化物はまた、低密度リポタンパク質(LDL)を酸化することも分かっており、これらは、特異的なスカベンジャー受容体を通じてマクロファージの原形質膜に対してより効率的に結合する。マクロファージによるこれらの酸化LDLの取り込みにより、アテローム性動脈硬化が引き起こされ得る。さらに、本態性高血圧、ホジキン病、炎症性腸疾患、乾癬、サルコイドーシス及び敗血症の患者において、刺激を受けた好中球が見出されており、この場合刺激は、循環TNF−α(カケクチン)が高濃度であることと相関する。
抗酸化及び抗プロテアーゼスクリーンがつぶされる場合、宿主組織に対する加水分解性の損傷及び、その結果、慢性炎症状態が起こり得る。抗プロテアーゼ欠損は、気腫の病因に関与すると考えられる。多くの抗プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ阻害剤(SERPIN)ファミリーのメンバーである。循環中に抗プロテアーゼが豊富にある場合、これらの大きなタンパク質は、選択的に炎症部位で排出され得るが、これは、好中球がその標的に接着するからである。酸化ストレスによって、細胞外抗プロテアーゼの濃度が放出プロテアーゼを阻害するのに必要なレベル未満に低下することにより組織損傷が引き起こされ得る。塩素化酸化物及び過酸化水素は、エラスターゼの内在性阻害剤である、α1−プロテアーゼ阻害剤及びα2−マクログロブリンなどの抗プロテアーゼを不活性化し得るが、抗プロテアーゼのさらなる不活性化に関与する、コラゲナーゼ及びゲラチナーゼなどの潜在性メタロプロテアーゼを同時に活性化する。
好中球の細胞質構成因子はまた、全身性血管炎及び糸球体腎炎の発生に密接に関与する、特異的抗好中球細胞質抗体(ANCA)の形成の原因でもあり得る。ANCAは、好中球のアズール親和性又は一次顆粒中で主に見出される酵素に対する抗体である。ANCAには3種類のタイプがあり、これらは、通常のエタノール固定好中球における間接的免疫蛍光法によりそれらが生成するパターンによって区別することができる。びまん性微小顆粒細胞質蛍光(cANCA)は、一般にウェゲナー肉芽種で見られ、時として顕微鏡的多発性動脈炎及びチャーグストラウス症候群において、時として半月体形成性及び分節性壊死性糸球体腎炎で見られる。標的抗原は通常プロテイナーゼ3である。顕微鏡的多発性動脈炎及び糸球体腎炎の多くの場合、核周辺蛍光(pANCA)が見られる。これらの抗体は、ミエロペルオキシダーゼに対するものであることが多いが、その他の標的としては、エラスターゼ、カテプシンG、ラクトフェリン、リゾチーム及びβ−D−グルクロニダーゼが挙げられる。「不定型」ANCAと呼ばれる第三のグループには、好中球核蛍光及びいくつかの異常な細胞質パターンが見られ、一方、標的抗原のうち2−3では共通のpANCAがあり、その他は同定されていない。pANCAはまた、クローン病の3分の1の患者でも見出される。関節リウマチ及びSLEにおけるANCAの報告事例は非常に多様であるが、そのパターンは主にpANCA及び不定型ANCAである。
好酸球は、最終的に、主に粘膜下組織に存在し、アレルギー疾患を含む特異的な免疫反応部位に動員される最終段階白血球に分化する。好酸球細胞質は、電子が密集した結晶核及び部分的に透過性のマトリクスのある大きな長円体の顆粒を含有する。これらの大きな一次晶質顆粒に加え、より小さく(小顆粒)、結晶核がない別の顆粒タイプがある。好酸球の大きな特異的顆粒は、少なくとも4つの個別の陽イオン性タンパク質を含有し、これらのタンパク質は、宿主細胞及び微生物標的で一連の生物学的影響を及ぼす:主要塩基性タンパク質(MBP)、好酸球陽イオン性タンパク質(ECP)、好酸球由来神経毒(EDN)及び好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)。好塩基球は、EDN、ECP及びEPOの検出可能量とともに、好酸球の約4分の1の主要塩基性タンパク質を含有する。少量のEDN及びECも好中球で見られる(Gleich G J.Mechanisms of eosinophil−associated inflammation.J Allergy Clin Immunol 2000;105:651−663)。MBPは、酵素活性を欠くと思われるが、脂質膜と相互作用してそれらのかく乱を引き起こすことによってその毒性活性を発揮し得る、陽イオン性の高いポリペプチドである。MBP及びEPOの両者とも、M2ムスカリン性受容体へ結合するアゴニストの選択的アロステリック阻害剤として作用し得る。これらのタンパク質は、M2受容体機能不全に関与し得、喘息において迷走神経介在性気管支収縮を促進し得る。EDNは、特異的に、ニューロンのミエリンコートに損傷を与え得る。ヒスタミナーゼ及び様々な加水分解性リソソーム酵素もまた好酸球の大きな特異的顆粒に存在する。好酸球の小顆粒中の酵素の中でも、アリールスルファターゼ、酸性ホスファターゼ及び92kDaメタロプロテイナーゼ、ゲラチナーゼが挙げられる。好酸球は、好酸球に対する潜在的な自己分泌増殖因子活性のあるもの及び急性及び慢性炎症反応において潜在的役割のあるものを含むサイトカインを産生し得る。3種類のサイトカイン:顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、IL−3及びIL−5が、好酸球に対して増殖因子活性を有する。急性及び慢性炎症反応において活性を有し得るヒト好酸球により産生されるその他のサイトカインには、IL−1−α、IL−6、IL−8、TNF−α及び両形質転換増殖因子、TGF−α及びTGF−βが含まれる。
好酸球は、MBP、好酸球陽イオン性タンパク質、EPO及び好酸球由来神経毒を含有する晶質顆粒を含有する(Gleich、J Allergy Clin Immunol 2000;105:651−663)。EPOの分泌を調べるために、ヒト前骨髄球細胞株、HL−60クローン15を使用することができる。この細胞株は、2ヵ月間、高pHにおいて増殖させたHL−60のクローンから樹立され(Fischkoff、Leuk Res 1988;12:679−686)、次いで、好酸球特異的顆粒タンパク質の発現を含む末梢血好酸球の多くの特徴を示すように細胞を分化させるために酪酸で処理された(Rosenbergら、J Exp Med 1989;170:163−176;Tiffanyら、、J Leukoc Biol 1995;58:49−54;Badewaら、Exp Biol Med 2002;227:645−651)。
好酸球は、過敏性反応に、特に2種類の脂質炎症性メディエーター、ロイコトリエンC4(LTC4)及び血小板活性化因子(PAF)を通じて関与し得る。両メディエーターとも、気道平滑筋を収縮させ、粘液分泌を促進し、血管浸透性を変化させ、好酸球及び好中球浸潤を誘発する。これらの好酸球由来メディエーターの直接的活性に加えて、MBPは、好塩基球及びマスト細胞からのヒスタミンの放出を刺激し得、MBPは、マスト細胞からのEPOの放出を刺激し得る。好酸球は、特異的脂質メディエーターの局所的ソースとなり得、同時に、マスト細胞及び好塩基球からのメディエーターの放出を誘発し得る。好酸球顆粒内容物は、好中球顆粒と同様の刺激(例えば、オプソニン化粒子の食作用の間及び走化因子による。)後に放出される。好中球リソソーム酵素は、主に、ファゴリソソームに飲み込まれる物質において作用し、一方、好酸球顆粒内容物は、主に、寄生虫及び炎症性メディエーターなどの細胞外標的構造において作用する。
単球及びマクロファージ発生は骨髄で起こり、次の段階:幹細胞;前駆細胞(committed stem cell);単芽球;前単球;骨髄中の単球;末梢血中の単球;及び組織中マクロファージを経る。骨髄における単球分化は急速に進行する(1.5から3日間)。分化中、顆粒は単球細胞質中で見られ、これらは、少なくとも2つのタイプの好中球に分割され得る。しかし、これらは、その好中球対応物(アズール親和性及び特異的顆粒)よりも少なく小さい。これらの酵素性内容物は同様である。
単球/マクロファージの顆粒結合性酵素には、リゾチーム、酸性ホスファターゼ及びβ−グルクロニダーゼが含まれる。インビボ試験に対するモデルとして、U937細胞からのリゾチーム分泌が使用された。この細胞株は、ヒト組織球性リンパ腫由来であり、PMAなどの様々なアゴニストによって活性化することができる単球細胞株として使用されてきた(Hoffら、J Leukoc Biol 1992;52:173−182;Balboaら、、J Immunol 2003;170:5276−5280;Sundstromら、Int J Cancer 1976;17:565−577)。
ナチュラルキラー(NK)細胞及び細胞毒性リンパ球は、パーフォリン、細孔形成タンパク質及びグランザイム、リンパ球特異的セリンプロテアーゼを含む強力な細胞毒性顆粒を含有する。例えば、NK−92細胞株は、急速進行性非ホジキンリンパ腫患者から樹立されたIL−2−依存性のヒト株である(Gong JH.、Maki G、Klingemann HG.Characterization of human cell line(NK−92)with phenotypical and functional characteristics of activated natural killer cells.Leukemia 1994;8:652−658)。NK−92細胞は、幅広い悪性細胞を標的とするパーフォリン−グランザイム細胞溶解経路に関与する分子を高レベルで発現する(Gongら、下記参照及びMaki G、Klingemann HG、Martinson JA、Tarn YK.Factors regulating the cytotoxic activity of the human natural killer cell line、NK−92.J Hematother Stem Cell Res 2001;10:369−383)。
グランザイムは、細胞毒性T細胞及びナチュラルキラー細胞内で細胞質顆粒により放出される外因性セリンプロテアーゼである。グランザイムは、ウイルス感染細胞内でアポトーシスを誘導し得、このようにしてそれらを破壊する。
顆粒球(又は白血球)からの炎症のメディエーター(炎症性メディエーター)の細胞外への放出及び顆粒球(又は白血球)からの複数の炎症のメディエーター(炎症性メディエーター)の細胞外への放出を本明細書中で脱顆粒と呼ぶことがある。好ましい実施形態において、炎症のメディエーターの放出は、顆粒球又は白血球の内部に存在する顆粒からの前記メディエーターの放出を含む。炎症性メディエーターの放出は、好ましくは、これらの顆粒からの炎症性メディエーターの放出である。
TNFαなどの前炎症性物質(炎症刺激物質)による刺激時に、好中球及びマクロファージは、MARCKSタンパク質のその合成を劇的に増加させ:TNFα又はリポ多糖(LPS)の何れかに反応して好中球により形成される新しいタンパク質の90%ほどがMARCKSである(Thelen M、Rosen A、Narin AC、Aderem A.Tumor necrosis factor alpha modifies agonist−dependent responses in human neutrophils by inducing the synthesis and myristoylation of a specific protein kinase C substrate.Proc Natl Acad Sci USA 1990;87:5603−5607)。このように、MARCKSは、好中球及びマクロファージなどの顆粒含有細胞が、アゴニスト、特にPKCを活性化することにより働くもの、によって刺激された際、続く炎症性メディエーターの放出において重要な役割を有し得る(Burgoyneら、Physiol Rev 2003;83:581−632;Loganら、J Allergy Clin Immunol 2003;111:923−932;Smolenら、Biochim Biophys Acta 1990;1052:133−142;Niessenら、Biochim.Biophys.Acta 1994;1223:267−273;Nauclerら、J Leukoc Biol 2002;71:701−710)。
本発明のある態様において、対象の炎症部位(この炎症部位は、対象の炎症部位における、疾患、状態、外傷、異物又はその組み合わせの侵入開始の結果によるものである。)への本明細書中に記載のMANSペプチド又はその活性断片の脱顆粒阻害量の投与は、炎症部位で浸潤白血球から放出される炎症のメディエーターの量を低下させ得る(この場合、この白血球は好ましくは顆粒球である。)。MANSペプチド及び/又は少なくとも1つのその活性断片の投与は、炎症部位に浸潤している顆粒球などの白血球から放出される炎症のメディエーター量を低下させ得る。MANSペプチドの脱顆粒阻害量又はその活性断片の脱顆粒阻害量は、その部位に浸潤している炎症性細胞に含有される顆粒からの炎症性メディエーターのエキソサイトーシス放出を低下させるか又は阻害するのに十分である。MANSペプチド非存在下及び/又はその活性断片非存在下での、ほぼ同時に放出又は産生される炎症のメディエーターのレベル又は量又は濃度に対する、細胞(白血球又は顆粒球又はその他の炎症性細胞)からの炎症のメディエーターの放出の阻害の%(即ち低下の%)の比較によって、MANSペプチド又はその活性断片の投与後に脱顆粒阻害効率を調べる。さらに、熟練した臨床医は、十分な又は治療的な有効量のMANSペプチド及び/又はその活性断片が投与されたか否かを決定するために、その疾患の指標として知られる炎症の症状及びパラメータを測定することによって、組織部位における炎症が低下しているか否かを調べることができる。十分な脱顆粒阻害量とは、炎症部位において顆粒球から放出される炎症メディエーター低下の%を生じさせる量であり、この%は、同じ条件下でMANSペプチド又はその活性断片の非存在下で試験した場合に前記顆粒球から放出される前記炎症メディエーターの量の、約1%から約99%、好ましくは5%から約99%、より好ましくは約10%から約99%、さらにより好ましくは約25%から99%及びさらにより好ましくは約50%から約99%である。
本発明のある態様において、動物における炎症性刺激の部位(この炎症刺激部位は、炎症刺激物質の炎症刺激量のその部位への投与により生成させた。)へのMANSペプチドの脱顆粒阻害量の投与は、前記炎症刺激物質の同一の炎症刺激量の存在下で、MANSペプチド非存在下で顆粒球から放出される炎症性メディエーターの量の、約1%から約99%、好ましくは5%から約99%、より好ましくは約10%から約99%、さらにより好ましくは約25%から99%及びさらにより好ましくは約50%から約99%、顆粒球(この顆粒球は、前記炎症刺激物質により前記炎症刺激部位で刺激を受けている。)から放出される炎症性メディエーターの量を低下させることができる。
本発明の別の態様において、動物における炎症刺激部位(この炎症刺激部位は、炎症刺激物質の炎症刺激量のその部位への投与により生成させた。)へのMANSペプチドの脱顆粒阻害量の投与は、前記炎症刺激物質の同一の炎症刺激量の存在下で、MANSペプチド非存在下で顆粒球から放出される炎症性メディエーターの量の100%、顆粒球(この顆粒球は、炎症刺激部位において炎症刺激物質により刺激を受けている。)から放出される炎症性メディエーターの量を低下させることができる。
本明細書中のインビトロ実施例で使用される炎症刺激物質の例は、ホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)である。単球化学誘引性タンパク質(MCP−1)は、その結果、ヒスタミン放出を引き起こす好塩基球の脱顆粒において、C5aとほぼ同程度有効であり、IL−8よりもはるかに強力である。ヒスタミン放出は、ケモカイン(即ち化学誘引性サイトカイン)、RANTES及びMIP−1での刺激後に起こり得る。
好ましい実施形態において、炎症刺激部位に存在するMARCKSペプチドの基底濃度に関して、動物における炎症刺激部位に投与されるMANSペプチドの脱顆粒阻害量は、この炎症刺激部位のMARCKSペプチドの濃度の約1倍から約1,000,000倍、好ましくはこの炎症刺激部位のMARCKSペプチドの濃度の約1倍から約100,000倍、より好ましくはこの炎症刺激部位のMARCKSペプチドの濃度の約1倍から約10,000倍、さらにより好ましくはこの炎症刺激部位のMARCKSペプチドの濃度の約1倍から約1,000倍、さらにより好ましくはこの炎症刺激部位のMARCKSペプチドの濃度の約1倍から約100倍、さらにより好ましくはこの炎症刺激部位のMARCKSペプチドの濃度の約1倍から約10倍を含む。
好ましい実施形態において、顆粒球は、動物、好ましくはヒトの気道上又は気道中に存在し、MANSペプチドは、MANSペプチドを含む医薬組成物、例えば、MANSペプチド及び水溶液を含む医薬組成物(この組成物は、エアロゾルの形態で投与される。)又は乾燥粉末形態のMANSペプチドを含む医薬組成物(この組成物は、乾燥粉末吸入器を用いて投与される。)の吸入によるものなどの吸入により投与される。例えば、液滴、スプレー及び噴霧器など、吸入による溶液又は粉末の投与に対して当技術分野で公知のその他の方法及び装置が有用であり得る。
ある実施形態において、本発明のペプチドが、基礎分泌機能を含む、生理学的に重要な分泌プロセスを阻止し得ることが可能である。発明者らは本発明の何らかの特定の理論に縛られることを望まないが、このような基礎分泌を制御する機構は、刺激を受けた分泌を制御する機構とは異なると考えられる。あるいは、基礎分泌機構は、刺激を受けた分泌よりも、必要とするMARCKSタンパク質が少ないものであり得る。MARCKS介在分泌を阻止するための全療法が全てのMARCKS機能を排除し得ないので、基礎分泌は保持され得る。
本明細書中で使用する場合、「MARCKSヌクレオチド配列」という用語は、例えば、DNA又はRNA配列、遺伝子のDNA配列、何らかの転写されたRNA配列、プレ−mRNA又はmRNA転写産物のRNA配列及びタンパク質に結合したDNAもしくはRNAを含む、MARCKSタンパク質をコードする遺伝子由来の何らかのヌクレオチド配列を指す。
MARCKS阻止ペプチドの正確な送達によって、重要な分泌プロセスを阻止する、何らかの潜在的な制限をも克服し得る。このような物質を呼吸管に送達することは、吸入製剤により容易に達成されるはずである。これらの物質は炎症性腸疾患を治療する上で有用であり得るので、浣腸又は座薬を介した直腸/結腸/腸管への阻止物質の送達を想定し得る。炎症が起こっている関節への関節内注入又は経皮送達を用いることで、局所的な炎症性細胞からの分泌を制限することによって、関節炎又は自己免疫疾患の患者の症状が緩和され得る。神経終末周囲の領域への注入によって、ある種の神経伝達物質の分泌が阻害され得、重度の疼痛又は無制御の筋肉痙攣の伝達が遮断される。炎症性皮膚疾患の治療のためのペプチドの送達は、当技術分野で公知の様々な局所製剤を用いて容易に達成されるはずである。
細胞質においてMARCKSはアクチン及びミオシンと相互作用すると考えられており、従って、細胞収縮装置へ顆粒を繋ぎ止めることができ、このようにして、その後の顆粒の移動及びエキソサイトーシスに介在し得る。好中球からの炎症性メディエーターMPOの分泌は、PKC及びPKG両方の活性化により最大化することもできる。MARCKSは、炎症性細胞における膜結合区画からの分泌(即ち好中球からのMPOの分泌)を調整するこれらの2種類のタンパク質キナーゼの作用を調節する収束点となる可能性がある。
本発明は、イヌ又はヒト好中球からの炎症性メディエーターMPOの分泌が、PKC及びPKG両方の同時活性化によって促進され、一方、何れかのキナーゼのみの活性化では最大分泌反応を誘導するのに不十分であったことを示す。PMAのみに対する分泌反応の促進は、本明細書中で示されるようにNHBE細胞及び好中球で示されているが、その反応の規模は、ラット杯様細胞株において、その他のものにより観察されるものよりも著しく小さかった。Abdullahら、上述参照。さらに、cGMP類似体が培養ハムスター気管上皮細胞から顕著なムチン分泌を誘導し得たことが以前報告されたが(Fisherら、上述)、この反応が曝露8時間まで有意なレベルに到達しなかったということに留意すべきである。このような長い遅延時間のある分泌反応は、直接的効果ではないと思われ、おそらく、前もって形成され貯蔵されている細胞質顆粒の放出とは異なり、デノボタンパク質合成を含むと思われる。
上述のように、本発明は、製剤処方において使用され得る。ある種の実施形態において、製剤は、経口投与に適切であり得る固形医薬組成物中に存在する。本発明による固形組成物は、形成され得及び賦形剤と混合され得、及び/又は賦形剤により希釈され得る。固形組成物はまた、担体(例えば、カプセル、サシェ、錠剤、紙又はその他の容器の形態であり得る。)内に封入され得る。賦形剤が希釈剤である場合、これは、本組成物に対する、ビヒクル、担体又は媒体として働く、固体、半固体又は液体物質であり得る。
様々な適切な賦形剤が当業者に理解され、the National Formulary、19:2404−2406(2000)(2404から2406頁はそれらの全体において本明細書中に組み込まれる。)で見出すことができる。適切な賦形剤の例には、以下に限定されないが、デンプン、アラビアゴム、ケイ酸カルシウム、微晶質セルロース、メタクリレート、シェラック、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ及びメチルセルロースが含まれる。製剤はさらに、滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油など);湿潤剤;乳化及び懸濁剤;保存料(ヒドロキシ安息香酸メチル及びプロピルなど);甘味料;又は香味剤を含み得る。ポリオール、緩衝液及び不活性充てん剤もまた使用し得る。ポリオールの例には、以下に限定されないが、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、スクロース、マルトース、グルコース、ラクトース、デキストロースなどが含まれる。適切な緩衝液には、以下に限定されないが、リン酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸緩衝液などが含まれる。使用し得るその他の不活性充てん剤には、当技術分野で公知のもの及び様々な投与形態の製造に有用なものが含まれる。必要に応じて、固形剤は、増量剤及び/又は造粒剤などのその他の成分を含み得る。本発明の製剤は、当技術分野で周知の手順を用いることによる患者への投与後、活性成分を急速放出、持続放出又は遅延放出するように処方し得る。
経口投与のための錠剤を形成するために、直接圧縮プロセスにより、本発明の組成物を調製し得る。このプロセスにおいて、例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アミロペクチン、セルロース誘導体又はゼラチン及びこれらの混合物などの固形の粉砕担体と、ならびに、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びポリエチレングリコールワックスなどの減摩剤と、活性薬物成分を混合し得る。次に、適切な穿孔機付きの機器を用いて、この混合物を錠剤へと圧縮し、所望の錠剤サイズとするために押し抜き得る。この機器の操作パラメータは、当業者により選択され得る。あるいは、経口投与のための錠剤は湿式造粒プロセスにより形成され得る。賦形剤及び/又は希釈剤と活性薬物成分を混合し得る。固形物質を所望の粒子サイズに粉砕するか又はふるいにかけ得る。結合剤をこの薬物に添加し得る。適切な溶媒中で、この結合剤を懸濁及び均一化し得る。活性成分及び補助剤もまた結合剤溶液と混合し得る。得られた乾燥混合物を溶液で均一に湿らせる。湿らせることにより、通常、粒子はわずかに凝集し、所望のサイズのステンレス鋼ふるいを通じて、得られた塊を圧縮する。次に、所望の粒子サイズ及び堅さを得るのに必要な定められた時間、制御乾燥ユニットで混合物を乾燥させる。粉末を除去するために、乾燥させた混合物の顆粒をふるいにかける。この混合物に、崩壊剤、減摩剤及び/又は付着防止剤を添加し得る。最後に、適切な穿孔機付きの機器を用いて混合物を錠剤に圧縮し、所望の錠剤サイズとするために押し抜く。この機器の操作パラメータは、当業者により選択され得る。
被覆錠剤が望ましい場合、上述の調製コアを糖又はセルロースポリマー(これらは、アラビアゴム、ゼラチン、タルク、二酸化チタンを含有し得る。)の濃縮溶液又は揮発性有機溶媒又は溶媒の混合液中で溶解されたラッカーで被覆し得る。異なる活性化合物を有するか、又は存在する活性化合物の量が異なる錠剤を区別するために、この被覆物に、様々な色素を添加し得る。特定の実施形態において、腸溶性コート層を含む1以上の層により囲まれるコア中に活性成分が存在し得る。
軟ゼラチンカプセルは、カプセルが活性成分及び植物油の混合物を含有するように調製され得る。硬ゼラチンカプセルは、例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、アミロペクチン、セルロース誘導体及び/又はゼラチンなどの固形の粉砕担体と組み合わせた活性成分の顆粒を含有し得る。
経口投与のための液体製剤は、シロップ又は懸濁液の形態で使用及び調製され得る(例えば、活性成分、糖及びエタノールの混合物、水、グリセロール及びプロピレングリコールを含有する溶液)。必要に応じて、このような液体製剤は、次のもの:着色剤、香味剤及びサッカリンの1以上を含み得る。さらに、カルボキシメチルセルロースなどの濃厚化剤もまた使用し得る。
上記医薬品を非経口投与のために使用しようとする場合、このような製剤は、本発明の組成物を含む、滅菌水性注射溶液、非水性注射溶液又は両方を含み得る。水性注射溶液を調製する場合、本組成物は、水溶性の医薬的に許容可能な塩として存在し得る。非経口製剤は、抗酸化剤、緩衝液、抗菌剤及び、意図する受容者の血液とその製剤を等張にする溶質を含有し得る。水性及び非水性滅菌懸濁液は、懸濁剤及び濃厚化剤を含み得る。本製剤は、単位投与又は反復投与容器、例えば密封アンプル及びバイアル中で与えられ得る。即時調整注射溶液及び懸濁液は、既に述べた種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製され得る。
本組成物はまた、局所投与(例えば皮膚クリーム)に適切であり得るように処方し得る。これらの製剤は、当業者にとって公知の様々な賦形剤を含有し得る。適切な賦形剤には、以下に限定されないが、セチルエステルワックス、セチルアルコール、白ろう、モノステアリン酸グリセリン、プロピレングリコール、モノステアリン酸、ステアリン酸メチル、ベンジルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、鉱油、水、カルボマー、エチルアルコール、アクリル酸系接着剤、ポリイソブチレン接着剤及びシリコーン接着剤が含まれ得る。
好ましい実施形態において、ペプチド断片を表2で開示するが、これらは、少なくとも4から23アミノ酸残基長であり、MANSペプチドのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、このペプチドのN末端アミノ酸は、MANSペプチド配列(配列番号1)の位置2から21から選択される。より好ましいペプチド断片長は、少なくとも6アミノ酸から23アミノ酸である。好ましくは、これらのペプチドは、αN末端アミノ酸においてアシル化され、より好ましくは、これらのペプチドは、αN末端アミノ酸位置においてミリストイル化される。
図5で示されるように、MARCKSはPKCによりリン酸化され、結果的に、膜から細胞質に移動させられる。ここで、PKGは、MARCKSの脱リン酸化を誘導すると思われる(図2A、レーン4及び図2B)。この脱リン酸化は、PKG阻害剤Rp−8−Br−PET−cGMPにより覆され(図2A、レーン5)、これにより、脱リン酸化が特異的にPKG依存性であったことが示された。図2において、[32P]オルトリン酸塩によりNHBE細胞を標識し、次いで、指定の薬物に曝露した。免疫沈降アッセイにより、治療への反応におけるMARCKSリン酸化を評価した。図2Aにおいて、8−Br−cGMPはPMAにより誘発されたMARCKSリン酸化を覆し、この8−Br−cGMPの効果は、Rp−8−Br−PET−cGMP(PKG阻害剤)又はオカダ酸(PP1/2A阻害剤)により阻止することができた。図2Bに対して、続く8−Br−cGMPへの細胞の曝露により、MARCKSのPMA誘導性リン酸化が覆された。レーン1、溶媒のみで8分間;レーン2、100nM PMAで3分間;レーン3、100nM PMAで3分間、次いで1μM 8−Br−cGMPで5分間;レーン4、100nM PMAで8分間;レーン5、溶媒のみで3分間、次いで100nM PMA+1μM 8−Br−cGMPで5分間。図2Cにおいて、濃度依存的にホストリエシンによって8−Br−cGMP誘導性MARCKS脱リン酸化が減弱された。
PKGは、タンパク質ホスファターゼの活性化を介してMARCKSを脱リン酸化するために作用すると考えられている。図2A(レーン6)で示されるように、500nMのオカダ酸(PP1及びPP2Aの両方を阻害し得る濃度)は、MARCKSのPKG誘導性脱リン酸化を阻止したが、このことから、PP1及び/又はPP2Aを活性化することにより、PKGにより脱リン酸化が起こったことが示唆される。ホストリエシン及びホスファターゼ活性の直接アッセイによるさらなる研究から、PKGによってPP2Aのみが活性化され、MARCKSからのリン酸基の除去に関与することが示された(図2C)。図3で示されるように、オカダ酸又はホストリエシンの何れも、MARCKSのPKG誘導性リン酸化を阻害した濃度で、PMA+8−Br−cGMP又はUTPにより誘導されたムチン分泌を減弱させたと思われる。図3は、PP2Aがムチン分泌経路の不可欠な成分であることを示すことを支持する。ホストリエシン、オカダ酸の指定濃度(500nM)又は溶媒のみと15分間NHBE細胞を予備温置し、次いで、PMA(100nM)+8−Br−cGMP(1μM)で15分間又はUTP(100μM)で2時間刺激した。分泌されたムチンをELISAにより測定した。平均±S.E.としてデータを示す(各点でn=6)が、ここで*は、溶媒対照と有意差があることを表し(p<0.05);†はPMA+8−Br−cGMP刺激と有意差があることを表し(p<0.05);‡はUTP刺激と有意差があることを表す(p<0.05)。このようにして、PKGにより活性化されるPP2AによるMARCKSの脱リン酸化は、ムチン顆粒エキソサイトーシスに導くシグナル伝達経路の不可欠な要素であると思われる。
MARCKSがムチン分泌とキナーゼ活性を結び付ける分子事象を明らかにするために、PKC/PKG活性化に対する反応におけるMARCKSのリン酸化を詳しく調べた。図1Aで示されるように、NHBE細胞でのMARCKSリン酸化において顕著な増加(3−4倍)を誘導したと思われるPMA(100nM)及びこのリン酸化は、PKC阻害剤カルホスチンC(500nM)により減弱された。リン酸化されると、原形質膜から細胞質にMARCKSが移動させられた(図1B)。とりわけ、図1Aは、PKCの活性化の結果、NHBE細胞においてMARCKSリン酸化が起こることを示す。[32P]オルトリン酸塩により2時間、細胞を標識し、次いで、刺激剤及び/又は阻害剤に曝露した。記載のように、免疫沈降により、治療への反応におけるMARCKSリン酸化を評価した。レーン1、溶媒対照;レーン2、ビヒクル、0.1%Me.sub.2SO;レーン3、100nM 4α−PMA;レーン4、100nM PMA;レーン5、100nM PMA+500nM カルホスチンC;レーン6、500nM カルホスチンC。図1Bは、リン酸化されたMARCKSが原形質膜から細胞質に移動させられることを示す。32P−標識細胞をPMA(100nM)又は溶媒のみに5分間曝露し、次いで膜及び細胞質分画を単離した。8−Br−cGMP(1μM、ムチン分泌を誘発するのに必要な別のキナーゼ活性事象)によるPKGの活性化によって、MARCKSリン酸化に導かれないが、実際、反対の効果が観察された:PMAにより誘導されたMARCKSリン酸化が8−Br−cGMPにより覆された(図2A)。この8−Br−cGMPの影響は、PKC活性の抑制によるものではなく、これは、細胞へ8−Br−cGMPを続いて添加することによりPMA誘導性リン酸化を覆すことができたからである(図2B)。従って、PKG活性化の結果、MARCKSの脱リン酸化が起こると思われる。
さらなる研究から、PKG誘導性MARCKS脱リン酸化が、500nM オカダ酸、タンパク質ホスファターゼ(1型及び/又は2A(PP1/2A))阻害剤により阻止されたことが分かった(図2A、レーン6)。従って、脱リン酸化にPP1及び/又はPP2Aが介在すると思われた。関与するタンパク質ホスファターゼのサブタイプを定義するために、PP2Aの新規の、より特異的な阻害剤、ホストリエシン(IC50=3.2nM)をさらなるリン酸化実験において使用した。
図2Cで示されるように、ホストリエシンは、濃度依存的(1−500nM)にPKG誘導性MARCKS脱リン酸化を阻害したが、このことから、PKGがPP2Aの活性化を介して脱リン酸化を誘導したことが示唆される。NHBE細胞におけるPKGによるPP2Aのさらなる活性化を確認するために、8−Br−cGMPに細胞を曝露した後、細胞質PP1及びPP2A活性を調べた。0.1.mu.Mという低い8−Br−cGMP濃度で、PP2A活性がおよそ3倍上昇し(0.1から0.3nmol/分/mgタンパク質、p<0.01)、一方、PP1活性は不変であった。このデータから、PKGによってPP2Aが活性され得、MARCKSの脱リン酸化に関与することが示される。従って、このPP2A活性は、ムチン分泌を起こすのに重要であると思われる;PKG誘導性MARCKS脱リン酸化がオカダ酸又はホストリエシンにより阻止された場合、PKC/PKG活性化又はUTP刺激に対する分泌反応が改善された(図3)。
細胞質においてMARCKSはアクチン及びミオシンと会合する。
図4は、細胞質においてMARCKSが2つのその他のタンパク質(約200及び約40kDa)と会合し得ることを示す放射性標識免疫沈降アッセイを表す。図4において、NHBE細胞を[3H]ロイシン及び[3H]プロリンで一晩標識し、膜及び細胞質分画を「実験手順」下で記載のように調製した。非免疫対照抗体(6F6)で単離分画を予め透明化した。次に、細胞質を2つの分画に等分し、それぞれ抗MARCKS抗体2F12(レーン2)及び非免疫対照抗体6F6(レーン3)を用いた、10μMサイトカラシンD(Biomol、Plymouth Meeting、Pa)の存在下で行う免疫沈降に対して使用した。膜分画中のMARCKSタンパク質も、抗体2F12(レーン1)を用いた免疫沈降により評価した。8%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により沈降タンパク質複合体を分離し、高感度オートラジオグラフィーにより視覚化した。MARCKSは、それぞれ約200及び約40kDaの分子量の2つの細胞質タンパク質と会合すると思われた。これらの2つのMARCKS会合タンパク質をゲルから切り出し、マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法/内部配列決定(タンパク質/DNA Technology Center of Rockefeller University、N.Y.)により分析した。インターネットプログラムProFound及びMS−Fitを介してタンパク質データベースを検索するために、得られたペプチド質量及び配列データを使用した。この結果から、これらがそれぞれミオシン(重鎖、非筋肉型A)及びアクチンであることが示される。マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法/内部配列分析から、これらの2つのMARCKS会合タンパク質がそれぞれミオシン(重鎖、非筋肉型A)及びアクチンであることが示される。
これらの研究から、気道ムチン顆粒のエキソサイトーシス分泌を調整し、同時に生理的プロセスにおけるMARCKSの特異的生物学的機能を示す最初の直接的証拠と考えられるものを提供する、シグナル伝達機構に対する新しい範例が示唆される。MARCKSは、ヒト気道上皮細胞においてムチン顆粒放出を制御する重要なメディエーター分子として働く。気道ムチン分泌の誘発は、PKC及びPKGの二重活性化及び相乗的作用を必要とすると考えられる。活性化PKCはMARCKSをリン酸化し、その結果、原形質膜の内面から細胞質へとMARCKSが移動する。同様に、PKGの活性化がPP2Aを活性化し、これは、細胞質においてMARCKSを脱リン酸化する。MARCKSの膜結合能は、そのリン酸化状態に依存するので、この脱リン酸化により、MARCKSがその膜結合能を回復し得、MARCKSを細胞質ムチン顆粒の膜に結合することができるようになり得る。細胞質においてアクチン及びミオシンと相互作用することによっても(図4)、MARCKSは、細胞収縮装置に顆粒を繋ぎ止め得、細胞周囲への顆粒移動及び続くエキソサイトーシス放出を媒介する。MARCKSの幅広い分布から、この機構又は同様の機構が、正常又は病的状態で、様々な細胞型において膜結合顆粒の分泌を制御し得る可能性が示唆される。
図5で示されるように、MARCKSは、そのN末端ドメインにおいて顆粒膜と相互作用し、そのPSD部位でアクチン繊維と結合し、それにより移動及びエキソサイトーシスのために顆粒を収縮細胞骨格に繋ぎ止めることで、分子リンカーとして機能し得る。図5は、ムチン分泌促進物質が気道上皮(杯)細胞と相互作用し、2種類の別個のタンパク質キナーゼ、PKC及びPKGを活性化することを示す、考え得る機構を示す。活性化されたPKCはMARCKSをリン酸化し、これにより、MARCKSが原形質膜から細胞質に移動し、一方、PKGは、一酸化窒素(NO)→GC−S→cGMP→PKG経路を介して活性化され、順に、細胞質PP2Aが活性化され、これがMARCKSを脱リン酸化する。この脱リン酸化により、顆粒膜へのMARCKSの結合が安定化される。さらに、MARCKSはまた、アクチン及びミオシンとも相互作用し、これにより、続く移動及びエキソサイトーシス性の炎症性メディエーター(MPOなど)の放出のための細胞収縮装置に顆粒が連結される。MARCKSが細胞質に放出された後、MARCKSの顆粒への結合はまた、特異的標的タンパク質又はMARCKSのN末端ドメインが関与するいくつかのその他のタンパク質−タンパク質相互作用の形態によっても導かれ得る。何れにせよ、MANSペプチド又は少なくとも4アミノ酸を含むその活性断片は、ムチン顆粒の膜へのMARCKSの標的化を競合的に阻害するために作用し、これにより、分泌が阻止される。
本発明はまた、何らかの細胞エキソサイトーシス分泌プロセス、特に炎症性細胞内に含有される顆粒から炎症性メディエーターを放出するもの(この刺激経路はタンパク質キナーゼC(PKC)基質MARCKSタンパク質及び膜結合小胞からの内容物の放出を含む。)、を阻止するための新規方法にも関する。具体的に、発明者らは、ヒト(図6)又はイヌ(図7)好中球からの炎症性メディエーターミロペルオキシダーゼの刺激放出がMANSペプチドにより濃度依存的に阻止され得ることを示した。具体的に、図6は、100μM PMA及び10.mu.M 8−Br−cGMPでミロペルオキシダーゼ(MPO)を分泌させるために刺激された単離好中球を示す。100μM MANSペプチドは、対照レベルまでMPO分泌を低下させた(*=p<0.05)。10μM MANSは、MPO分泌をわずかに低下させた。対照ペプチド(RNS)10又は100μMはMPO分泌において影響はない。図7において、100nM PMA及び10μM 8−Br−cGMPでミロペルオキシダーゼ(MPO)を分泌させるために単離好中球を刺激した。100μM MANSペプチドは、対照レベルまでMPO分泌を低下させた(*=p<0.05)。10μM MANSは、MPO分泌をわずかに低下させた。対照ペプチド(RNS)10又は100μMはMPO分泌に影響はない。このようにして、何らかの組織における浸潤炎症性細胞から分泌される炎症性のメディエーターの放出を阻止するために、本ペプチドを治療的に使用し得る。これらの放出メディエーターの多くは、様々な慢性炎症性疾患(即ち呼吸器疾患(喘息、慢性気管支炎及びCOPDなど)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む。)、自己免疫疾患、皮膚疾患(酒さ、湿疹;及び重度にきびなど)、関節炎及び疼痛症候群(関節リウマチ及び線維筋痛など))で観察される広範囲に及ぶ組織損傷に関与する。本発明は、関節炎、慢性気管支炎、COPD及び嚢胞性線維症などの疾患を治療するために有用であり得る。本発明は、従って、ヒト及び動物疾患の両方において、特に、ウマ、イヌ、ネコ及びその他の家庭のペットに関係する疾患において、治療のために有用である。
図8−12は、ヒト及びイヌ両方に対するMPO分泌を示す。これらの全実験において、図面で示されるように、刺激物を添加する前に、1x10−6Mの濃度のLPSで、37℃にて10分間、単離好中球を刺激した。LPSは、細胞が分泌促進物質に反応できるように細胞を刺激する。
ある実施形態において、本発明は、MANSペプチド又はその活性断片を含む医薬組成物の治療的有効量を投与することを含む、対象において炎症を制御する方法を開示する。この実施形態のある態様において、MANSタンパク質の前記活性断片は、少なくとも4個及び好ましくは6個のアミノ酸を含む。別の態様において、前記炎症は、呼吸器疾患、腸疾患、皮膚疾患、自己免疫疾患及び疼痛症候群により引き起こされる。別の態様において、前記呼吸器疾患は、喘息、慢性気管支炎及びCOPDからなる群から選択される。別の態様において、前記腸疾患は、潰瘍性大腸炎、クローン病及び過敏性腸症候群からなる群から選択される。別の態様において、前記皮膚疾患は、酒さ、湿疹、乾癬及び重度にきびからなる群から選択される。別の態様において、前記炎症は、関節炎又は嚢胞性線維症により引き起こされる。別の態様において、前記対象は哺乳動物である。さらに、別の態様において、前記哺乳動物は、ヒト、イヌ、ウマ及びネコからなる群から選択される。別の態様において、前記投与段階は、局所投与、非経口投与、直腸投与、肺内投与、鼻腔投与、吸入及び経口投与からなる群から選択される。別の態様において、前記肺内投与は、エアロゾル、乾燥粉末吸入器、定量吸入器及び噴霧器の群から選択される。
別の実施形態において、本発明は、対象において炎症性メディエーターを制御するMANSペプチド又はその活性断片を含む少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物の治療的有効量を投与することを含む、対象において細胞性分泌プロセスを制御するための方法を開示する。この実施形態のある態様において、MANSタンパク質の前記活性断片は、少なくとも4個及び好ましくは6個のアミノ酸を含む。別の態様において、細胞性分泌プロセスの前記制御は、細胞性分泌プロセスを阻止又は低下させることである。別の態様において、前記炎症性メディエーターは、呼吸器疾患、腸疾患、皮膚疾患、自己免疫疾患及び疼痛症候群により引き起こされる。別の態様において、前記呼吸器疾患は、喘息、慢性気管支炎及びCOPDからなる群から選択される。別の態様において、前記腸疾患は、潰瘍性大腸炎、クローン病及び過敏性腸症候群からなる群から選択される。別の態様において、前記皮膚疾患は、酒さ、湿疹、乾癬及び重度にきびからなる群から選択される。別の態様において、前記炎症メディエーターは、関節炎又は嚢胞性線維症により生じる。別の態様において、前記対象は哺乳動物である。別の態様において、前記哺乳動物は、ヒト、イヌ、ウマ及びネコからなる群から選択される。別の態様において、前記投与段階は、局所投与、非経口投与、直腸投与、肺内投与、鼻腔投与、吸入及び経口投与からなる群から選択される。別の態様において、前記肺内投与は、エアロゾル、乾燥粉末吸入器、定量吸入器及び噴霧器の群から選択される。
別の実施形態において、本発明は、MARC KS関連の炎症性メディエーターの放出を阻害する化合物の治療的有効量を投与することを含む、対象において炎症を軽減する方法を開示し、これにより、前記治療なしで起こるものと比較して、対象における炎症性メディエーターの放出が低下する。この実施形態のある態様において、前記化合物は、MARCKSタンパク質の少なくとも1つの活性断片である。別の態様において、前記活性断片は、少なくとも4及び好ましくは6アミノ酸長である。別の態様において、前記化合物は、MANSペプチド又はその活性断片である。別の態様において、前記化合物は、MARCKSタンパク質のコード配列又はその活性断片に対して向けられるアンチセンスオリゴヌクレオチドである。別の態様において、前記活性断片は、少なくとも4及び好ましくは6アミノ酸長である。
別の実施形態において、本発明は、炎症性メディエーターのMARCKS関連放出を阻害する化合物を含む医薬的に活性のある組成物の治療的有効量を投与することを含む、対象において炎症を軽減する方法を開示し、これにより、前記治療なしで起こるものと比較して、対象における炎症が軽減される。この実施形態のある態様において、前記化合物は、MARCKSタンパク質の活性断片である。別の態様において、前記活性断片は、少なくとも4及び好ましくは6アミノ酸長である。別の態様において、前記化合物はMANSペプチド又はその活性断片である。別の態様において、前記化合物は、MARCKSタンパク質のコード配列又はその活性断片に対して向けられるアンチセンスオリゴヌクレオチドである。別の態様において、前記活性断片は、少なくとも4及び好ましくは6アミノ酸長である。本発明は、MANSペプチド又はその活性断片の1以上を含有する組成物及び、炎症性細胞の顆粒又は小胞からの炎症性メディエーターの放出を阻害する治療におけるその使用を包含するものとする。
別の実施形態において、本発明は、炎症部位で炎症性メディエーターの放出を阻害又は抑制するのに有効なMANSペプチド又はその活性断片を含む少なくとも1つのペプチドの治療的有効量を投与することを含む、対象において炎症を軽減又は阻害する方法を開示する。この実施形態のある態様において、前記活性断片は、少なくとも4及び好ましくは6アミノ酸長である。別の態様において、前記炎症性メディエーターは、好中球、好塩基球、好酸球、単球及び白血球からなる群から選択される細胞により産生される。好ましくは、細胞は白血球、より好ましくは顆粒球、さらにより好ましくは、好中球、好塩基球、好酸球又はその組み合わせである。別の態様において、この薬剤は、経口、非経口、空洞、直腸から又は気道を通じて投与される。別の態様において、前記組成物は、抗生物質、抗ウイルス化合物、抗寄生虫化合物、抗炎症化合物及び免疫抑制剤からなる群から選択される第二の分子をさらに含む。
MANSペプチドの活性断片は、表1で開示されるペプチドからなる群から選択され得る。本明細書中で開示されるように、これらのペプチドは、N末端及び/又はC末端アミノ酸において任意の化学部分を含有し得る。
本発明の別の態様において、表1の本発明で開示されるペプチドの組合せの使用又は投与により、即ち、これらのペプチドの1以上の使用又は投与により、本発明において開示される方法を遂行することができる。好ましくは、本明細書中で開示される方法において1個のペプチドを使用又は投与する。
MARCKSタンパク質のN末端領域と同一のペプチド(このペプチドは、表1で開示されるとおりのMANSペプチド断片の群から選択される。)との予備温置によって及び同時温置によって、炎症性刺激物質によるタンパク質キナーゼC(PKC)活性化に反応した、好中球、好酸球、単球/マクロファージ及びリンパ球からなる群から選択される細胞における脱顆粒を減弱させることができる。時間経過及び濃度は細胞型によって様々であり得るが、全ての場合において、MANSペプチドがPKC誘導性脱顆粒を減弱させる。
本発明を説明してきたが、ここである種の実施例を参照して本発明を説明するが、これは説明のためにのみ本明細書中に含まれるものであり、本発明を限定するものではない。
実施例
方法及び材料
放射性標識免疫沈降アッセイ−[32P]リン酸で標識する場合、0.2%ウシ血清アルブミンを含有するリン酸不含のダルベッコ改変イーグル培地中で細胞を2時間予備温置し、次いで0.1mCi/mL[32P]オルトリン酸(9000Ci/mmol、PerkinElmer Life Sciences)で2時間標識した。[3H]ミリスチン酸又は3H−アミノ酸で標識する場合、50μCi/mL[3H]ミリスチン酸(49Ci/mmol、PerkinElmer Life Sciences)又は0.2mCi/mL[3H]ロイシン(159Ci/mmol、PerkinElmer Life Sciences)+0.4mCi/mL[3H]プロリン(100Ci/mmol、PerkinElmer Life Sciences)を含有する培地中で細胞を一晩温置した。標識後、刺激剤に5分間細胞を曝露した。阻害剤を使用した場合、刺激前に阻害剤とともに15分間細胞を予備温置した。この処理の終了時に、50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、1mM EDTA、10%グリセロール、1%Nonidet P−40、1mM フェニルメチルスルホニルフルオリド、1mM ベンズアミジン、10μg/mL ペプスタチンA及び10μg/mLロイペプチンを含有する緩衝液中で細胞を溶解させた。トリクロロ酢酸沈殿及びシンチレーションカウントにより、各培養における放射性標識効率を求め得る。等しいカウント/分を含有する細胞溶解液を用いて、Spizz及びBlackshearの方法に従い、MARCKSタンパク質の免疫沈降を行った。Spizzら、J.Biol.Chem.271、553−562(1996)。8%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、沈降タンパク質を分離し、オートラジオグラフィーにより視覚化した。抗−ヒトMARCKS抗体(2F12)及び非免疫対照抗体(6F6)をこのアッセイで使用した。
様々な細胞亜分画におけるMARCKS又はMARCKS結合タンパク質複合体を評価するために、放射性標識及び処理済細胞をホモジェナイズ緩衝液にこすり入れ(50mMTris−HCl(pH7.5)、10mM NaCl、1mM EDTA、1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、1mMベンズアミジン、10μg/mLペプスタチンA、10μg/mLロイペプチン)、次いで、窒素キャビテーションにより破砕した(800パウンド/平方インチ、4℃で20分間)。600xgで10分間、4℃にて細胞溶解液を遠心し、核及び破砕されなかった細胞を除去した。400,000xgで30分間、4℃にて超遠心することにより、核成分を除去した上清を膜及び細胞質分画に分離した。超音波処理により、溶解緩衝液中で膜ペレットを可溶化した。次に免疫沈降を上述のように行った。
MARCKS関連ペプチド−Genemed Synthesis,Inc.(San Francisco、Calif.)においてミリストイル化N末端配列(MANS)及び無作為N末端配列(RNS)ペプチドの両方が合成され、次いで、これを高圧液体クロマトグラフィー(>95%純度)で精製し、質量分析(それぞれ適切な分子量の1つの単一ピークを示す。)により確認した。MANSペプチドは、MARCKSの最初の24アミノ酸と同一の配列から構成された(即ち、膜へのMARCKS挿入を媒介するミリストイル化N末端領域、MA−GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1(ここでMAはN末端ミリストイル鎖である。)。)。対応する対照ペプチド(RNS)は、MANSと同じアミノ酸組成を含有したが、無作為な順序、MA−GTAPAAEGAGAEVKRASAEAKQAF(配列番号232)に並べられていた。これらの合成ペプチド中に疎水性ミリスチン酸部分が存在することにより、原形質膜へのそれらの浸透が促進され、ペプチドを細胞に容易に取り込ませることができた。ムチン分泌におけるこれらのペプチドの影響を調べるために、分泌刺激物質添加前に、ペプチドとともに15分間細胞を予備温置し、次いでムチン分泌をELISAにより測定した。
アンチセンスオリゴヌクレオチド−MARCKSアンチセンスオリゴヌクレオチド及びその対応する対照オリゴヌクレオチドは、Biognostik GmbH(Gottingen、Germany)で合成された。5μMアンチセンス又は対照オリゴヌクレオチドで3日間(最初の24時間は2μg/mLリポフェクチン存在下)、NHBE細胞を尖端的に処理した。次に、分泌刺激物質とともに細胞を温置し、ELISAによりムチン分泌を測定した。処理細胞からトータルRNA及びタンパク質を単離した。ヒトMARCKS cDNAをプローブとして用いて、従来の手順に従い、ノーザンハイブリッド形成によって、MARCKS mRNAを評価した。精製抗MARCKS IgG1(クローン2F12)を一次検出抗体として用いて、ウエスタンブロットにより、MARCKSタンパク質レベルを求めた。
一時的遺伝子移入−MARCKSのリン酸化部位ドメイン(PSD)は、PKC依存性リン酸化部位及びアクチン繊維−結合部位を含有する。PSD欠失MARCKS cDNAを構築するために、ポリメラーゼ連鎖反応によりPSD配列(25アミノ酸をコードする。)に隣接する2つの断片を作製し、次いで、ポリメラーゼ連鎖反応用に設計したオリゴヌクレオチドプライマーの5’−末端に連結されたXhoI部位を通じて連結した。得られた突然変異cDNA及び野生型MARCKS cDNAをそれぞれ、哺乳動物発現ベクターpcDNA4/TO(Invitrogen、Carlsbad、Calif.)に挿入した。制限消化及びDNA配列決定によって、単離した組み換えコンストラクトを確認した。
HBE1は、気液界面で培養した場合にムチン分泌が可能な、パピローマウイルスを形質転換したヒト気管支上皮細胞株である。製造者の説明書に従い、Effectene遺伝子移入剤(Qiagen、Valencia、Calif.)を用いて、HBE1細胞の遺伝子移入を行った。簡潔に述べると、気液界面で増殖させた、分化したHBE1細胞をトリプシン/EDTAで剥がし、12ウェル培養プレートに1x105細胞/cm2で再播種した。一晩温置した後、野生型MARCKS cDNA、PSD−短縮型MARCKS cDNA又はベクターDNAを細胞に遺伝子移入した。細胞を48時間培養して、遺伝子発現できるようにし、次いで、分泌刺激物質に曝露し、ELISAによりムチン分泌を測定した。pcDNA4/TO/lacZプラスミド(Invitrogen)(DNA比6:1、全部で1μgDNA、Effectene試薬に対するDNAの比=1:25)の存在下で全ての遺伝子移入を行い、遺伝子移入効率の変化を監視した。結果から、遺伝子移入細胞から単離した細胞溶解液中のβ−ガラクトシダーゼ活性において有意差は示されず、このことから、異なるDNAコンストラクトでも同様の遺伝子移入効率であることが示された(データは示さない。)。
タンパク質ホスファターゼ活性アッセイ−わずかに改変して当技術分野で公知のように、タンパク質ホスファターゼアッセイ系(Life Technologies、Inc.)を用いてPP1及びPP2A活性を測定した。Huangら、Adv.Exp.Med Biiol. 396、209−215(1996)。簡潔に述べると、8−Br−cGMP又は培地のみで5分間、NHBE細胞を処理した。次に、細胞を溶解緩衝液(50mMTris−HCl(pH7.4)、0.1%β−メルカプトエタノール、0.1mM EDTA、1mM ベンズアミジン、10μg/mLペプスタチンA、10μg/mLロイペプチン)に剥がし入れ、20秒間4℃にて超音波処理を行うことにより破砕した。細胞溶解液を遠心し、上清をホスファターゼ活性アッセイ用に保存した。基質として32P−標識ホスホリラーゼAを用いて、このアッセイを行った。放出された32Piをシンチレーションによりカウントした。各試料のタンパク質濃度をブラッドフォードアッセイにより求めた。(試料トータルホスファターゼ活性−1nMオカダ酸存在下で残存する活性)として、PP2A活性を表した。PP1活性は、1nM及び1μMオカダ酸存在下でそれぞれ残存する活性間の差として表した。タンパク質ホスファターゼ活性は、分/mg総タンパク質あたり放出されたPiのnmolとして報告した。
細胞毒性アッセイ−細胞からの乳酸デヒドロゲナーゼのトータル放出を測定することにより、細胞毒性について、NHBE細胞の処理で使用した全ての試薬を調べた。このアッセイは、製造者の説明書に従い、Promega Cytotox 96キットを用いて行った。実験は全て、非細胞毒性濃度の試薬を用いて行った。
統計解析−ボンフェローニの事後補正(post−test correction)により、一元配置分散分析を用いて、有意性についてデータを解析した。処理間の差はp<0.05で有意とみなした。
イヌ血液からのPMNの単離−PMNの単離に含まれる段階には、10mL ACD抗凝固処理血液を回収することが含まれる。次に、5mLを3.5mL PMN単離溶液の上に重ねるが、この間、PMN単離溶液(IM)が室温(RI)であるようする。次に、室温にて30’、550xg、1700RPMで血液を遠心した、下の下の白色の帯状部分を15mLコニカル遠心管(CCFT)に移した。次に、10%仔ウシ血清(PBS)入りの2V HESSを添加し、室温にて10’、440xg、1400RPMで遠心した。次いで、5mL PBS入りHESS中でペレットを再懸濁した。氷冷0.88% NH4Cl 20mLを含有する50mL CCFTに細胞懸濁液を添加し、2−3回転倒撹拌した。得られた生成物を10’、800xg、2000RPMで遠心し、次いで吸引し、FBS入りの5mL HBSS中で再懸濁した。カウント及びサイトスピンにより調製物を調べたが、好ましくは、全血に対して、細胞数は109−1011個の間であるべきであり、PMNに対しては、細胞数は2−4x107個の間であるべきである。全般的には、Wangら、J.Immunol、「Neutrophil−induced changes in the biomechanical properties of endothelial cells:roles of ICAM−1 and reactive oxigen species」6487−94(2000)を参照のこと。
MPO比色酵素アッセイ−サンドイッチELISAキット(R&D Systems、Minneapolis、Minn.)を用いて、96ウェル丸底マイクロタイタープレート中でMPO活性について試料をアッセイした。簡潔に述べると、個々のマイクロタイターウェル中で、33mMリン酸カリウム、pH6.0、0.56% Triton X−100、0.11mM過酸化水素及び0.36mM O−ジアニシジン二塩酸塩を含有する基質混合液180μLと試料20μLを混合する。アッセイ混合液中の最終濃度は:30mMリン酸カリウム、pH6.0、0.05%Triton X−100、0.1mM過酸化水素及び0.32mM O−ジアニシジン二塩酸塩である。混合後、アッセイ混合液を室温で5分間温置し、550nmで分光光度計を用いてMPO酵素活性を求めた。試料を二重にアッセイした。
炎症性メディエーター分泌実験
ホルボールエステル誘導性のPKC活性化に反応して特異的顆粒内容物を分泌する4種類の異なる白血球型又はモデルを使用した。ヒト血液から好中球を単離し、これらの細胞によるインビトロのMPO放出を評価した。市販のヒト白血球細胞株からの膜結合炎症性メディエーターの放出も評価した。ヒト前骨髄球細胞株HL−60クローン15を使用して、EPOの分泌を評価した(Fischkoff SA)。HL−60前骨髄球白血病細胞が好酸球に分化する可能性の段階的な上昇が、アルカリ性条件下での培養により誘導された。Leuk Res 1988;12:679−686;Rosenberg HF、Ackerman SJ 、Tenen DG.Human eosinophil cationic protein:molecular cloning of a cytotoxin and helminthotoxin with ribonuclease activity.J Exp Med 1989;170:163−176;Tiffany HL、Li F、Rosenberg HF.Hyperglycosylation of eosinophil ribonucleases in a promyelocytic leukemia cell line and in differentiated peripheral blood progenitor cells.J Leukoc Biol 1995;58:49−54;Badewa AP、Hudson CE、Heiman AS.Regulatory effects of eotaxin、eotaxin−2,and eotaxin−3 on eosinophil degranulation and superoxide anion generation.Exp Biol Med 2002;227:645−651)。単球白血病細胞株U937を使用して、リゾチームの分泌を評価した(Hoff T、Spencker T、Emmendoerffer A.、Goppelt−Struebe M.Effects of glucocorticoids on the TPA−induced monocytic differentiation.J Leukoc Biol 1992;52:173−182;Balboa M A、Saez Y、Balsinde J.Calcium−independent phospholipase A2 is required for lysozyme secretion in U937 promonocytes.J Immunol 2003;170:5276−5280;Sundstrom C、Nilsson K.Establishment and characterization of a human histocytic lymphoma cell line(U−937).Int J Cancer 1976;17:565−577)。リンパ球ナチュラルキラー細胞株NK−92を使用して、グランザイムの放出を評価した(Gong JH.、Maki G、Klingemann HG.Characterization of human cel line(NK−92) with phenotypical and functional characteristics of activated natural killer cells.Leukemia 1994;8:652−658;Maki G、Klingemann HG、Martinson JA、Tam YK.Factors regulating the cytotoxic activity of the human natural killer cell line、NK−92.J Hematother Stem Cell Res 2001;10:369−383;Takayama H、Trenn G、Sitkovsky MV.A novel cytotoxic T lymphocyte activation assay.J Immunol Methods 1987;104:183−190)。全ての場合において、24アミノ酸MARCKSN末端(MANS−ミリストイル化N末端配列ペプチド;MA−GAQFSKTAAKGEAAAERPGEAAVA(配列番号1)、ここでMAはアミド結合によりこのペプチドのN末端アミンに連結されるミリストイルである。)と同一の合成ペプチドの一連の濃度又は、同じ24アミノ酸からなるが、MANSペプチド配列と配列同一性が13%未満である無作為な順序の配列に並べられているミスセンス対照ペプチド(RNS:無作為N末端配列ペプチド;MA−GTAPAAEGAGAEVKRASAEAKQAF、配列番号232)とともに細胞を予備温置した。あるいは、下記表3に列挙される合成短縮型ペプチドの1つで細胞を前処理した。
各細胞型において、MANS(RNSではない。)は、濃度依存的に炎症性メディエーターの放出を減弱させる。観察の有用な時間的経過は0.5から3.0時間である。この結果は、白血球脱顆粒を導く細胞内経路に関与するMARCKSタンパク質のN末端領域と一致する。
ヒト好中球単離−これらの実験は、ヒト実験施設内倫理委員会(Institutional Review Board、IRB)により承認された。僅かに改変して、既に述べたようにしてヒト好中球を単離した(Takahashi S、Okubo Y、Horie S.Contribution of CD54 to human eosinophil and neutrophil superoxide production.J Appl.Physiol 2001;91:613−622参照)。簡潔に述べると、正常で健康なボランティアからヘパリン処理した静脈血を得て、RPMI−1640(Cellegro;Mediatech,Inc.、Herndon、VA)で1:1の比で希釈し、Histopaque(密度、1.077g/mL;Sigma−Aldrich Co.、St.Louis、MO)の上に重ね、400gで4℃にて20分間遠心した。上清及び界面の単核細胞を慎重に取り出し、沈殿物中の赤血球を冷却した蒸留水中で溶解した。単離した顆粒球をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)で2回洗浄し、氷上でHBSS中で再懸濁した。実験に使用した好中球の純度は>98%で好酸球の混入は<2%であり、トリパンブルー色素排除試験で調べたところ、生存率は>99%であった。
放出された好中球MPO活性の測定−MPO放出の測定のために、HBSS中で懸濁した精製ヒト好中球を15mL試験管に4x106個の細胞/mLで分注し、MANS、RNS又は本発明のペプチドの1つの50又は100μMの何れかとともに37℃で10分間予備温置した。次に、100nMホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)で細胞を最長で3時間刺激した。15mL試験管中の4x106個の細胞/mLの分注精製ヒト好中球(HBSS中で懸濁)を用いて、対照参照物(PMA対照参照物)を調製し、試験ペプチドなしで、同じ時間、100nMホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)で刺激した。試験管を氷上に置くことにより反応を停止させ、400gで4℃にて5分間遠心した。
既に確立された技術に基づき(Abdel−Latif D、Steward M、Macdonald DL、Francis GA.、Dinauer MC、Lacy P.Rac2 is critical for neutrophil primary granule exocytosis.Blood 2004;104:832−839)、テトラメチルベンジジン(TMB)を用いて、細胞上清中のMPO活性をアッセイした。簡潔に述べると、96ウェルマイクロプレート中で、細胞上清又は標準ヒトMPO(EMD Biosciences、Inc.、San Diego、CA)50μLに、TMB基質溶液100μLを添加し、次いで、室温にて15分間温置した。1M H2SO4 50μLを添加することにより反応を停止させ、分光光度測定マイクロタイタープレートリーダーで450nmでの吸収を読み取った(VERSA max、Molecular Devices、Sunnyvale、CA)。
白血球培養実験
American Type Culture Collection(ATCC;Rockville、MD)から、3種類のヒト白血球細胞株、具体的には前骨髄球細胞株HL−60クローン15、単球細胞株U937及びリンパ球ナチュラルキラー細胞株NK−92を購入した。10%熱不活化仔ウシ血清(Gibco;Invitrogen Co.、Carlsbad、CA)、50IU/mLペニシリン、50μg/mLストレプトマイシン及び25mM HEPES緩衝液、pH7.8を添加した、L−グルタミン入りのRPMI 1640からなる培地中で、5%CO2を含有する雰囲気中で、37℃にて、HL−60クローン15細胞(ATCC CRL−1964)を維持した。既に述べたように、5日間、0.5mM酪酸(Sigma−Aldrich Co.)を含有する上述の培地中で5x105個の細胞/mLで細胞を培養することによって、好酸球様表現型への最終分化を引き起こした(Tiffany HL、Li F、RosenbergHF.Hyperglycosylation of eosinophil ribonuclease in a promyelocytic leukemia cell line and in differentiated peripheral blood progenitor cells.J Leukoc Biol 1995;58:49−54;Tiffany HL、Alkhatib G、Combadiere C、Berger EA、Murphy PM.CC chemokine receptors 1 and 3 are differentially regulated by IL−5 during maturation of eosinophilic HL−60 cells.J Immunol 1998;160:1385−1392)。10%FBS、50IU/mLペニシリン及び50μg/mLストレプトマイシンを添加したL−グルタミン入りのRPMI1640からなる完全培地中で、5%CO2の雰囲気中で、37℃にてU937細胞(ATCC CRL−1593.2)を増殖させた。20%FBS、インターロイキン−2(IL−2)(Chemicon International、Inc.、Temecula、CA)100U/mL、2−メルカプトエタノール5x10−5M、50IU/mLペニシリン及び50μg/mLストレプトマイシンを添加したα−MEM培地(Sigma−Aldrich Co.)中で、5%CO2を含有する雰囲気中で、37℃にて、NK−92細胞(ATCC CRL−2407)を維持した。Wright−Giemsa染色細胞の評価によって、細胞形態を判断した。トリパンブルー排除により実験用に回収した細胞の生存率を評価し、生存率>95%の細胞集団を使用した。
脱顆粒アッセイのための細胞の温置
フェノールレッド不含RPMI−1640(Cellegro;Mediatech,Inc.)中で、HL−60クローン15、U937及びNK−92細胞を洗浄し、全ての脱顆粒アッセイのために2.5x106個の細胞/mLになるように再懸濁した。MANS、RNS又は試験ペプチドの指定濃度とともに、37℃にて10分間、15mL試験管中の細胞の分注物を予備温置した。次に、最長2時間、PMAで細胞を刺激した。それぞれHL−60クローン15、U937及びNK−92細胞を用いて、各細胞型について、対照参照物(PMA対照参照物)を調製し、フェノールレッド不含RPMI−1640中でこれを洗浄し、2.5x106個の細胞/mLになるように再懸濁し、PMAで、しかし、MANS、RNS又は試験ペプチドなしで、同じ時間、刺激した。試験管を氷上に置くことにより反応を停止させ、400gで4℃にて5分間遠心した。
好中球からの放出MPO及びU937細胞からの放出リゾチームの測定のために、発明者らは、それぞれヒトMPO及び卵白オボアルブミンを標準として使用することにより、分泌を定量することができた。HL−60クローン15細胞からの放出EPO及びNK−92細胞からの放出グランザイムに対して、定量のために利用可能な標準物質はなかった。それゆえ、EPO及びグランザイムの放出レベル及び細胞内レベル(溶解細胞から)の両方を測定し、放出されたEPO及びグランザイムを、それぞれに対してトータル(細胞内及び放出)の%として表した。HL−60クローン15細胞における細胞内EPO及びNK−92細胞における細胞内グランザイムを測定するために、0.1%Triton X−100で溶解した細胞の適切な分注物を下記のように細胞内顆粒タンパク質の定量のために取っておいた。培養間の変動を最小にするために、全ての処理を対照の%として表した。
HL−60 EPO放出の測定
既に確立された技術(Lacy P、Mahmudi−Azer S、Bablitz B、Hagen SC、Velazquez JR、Man SF、Moqbel R.Rapid mobilization of intracellularly stored RANTES in response to interferon−gamma in human eosinophils.Blood 1999;94:23−32)に従い、TMBを用いて、HL−60クローン15細胞により放出されるEPO活性をアッセイした。このようにして、96ウェルマイクロプレート中の試料の50μ(μL=マイクロリットル)にTMB基質溶液の100μLを添加し、室温にて15min(min=分)温置した。1.0M H2SO4 50μLを添加することにより反応を停止させ、分光光度測定マイクロプレートリーダーで450nm(nm=ナノメーター)にて吸収を読み取った。分泌されたEPO量は、同数のTriton X−100溶解細胞で得られた量を用いて、総内容物の%として表した。
単球リゾチーム分泌の測定
僅かに改変して、既に記載されるとおり、分光光度アッセイを用いて、U937細胞により分泌されるリゾチームを測定した(Balboa M A、Saez Y、Balsinde J.Calcium−independent phospholipase A2 is required for lysozyme secretion in U937 promonocytes.J Immunol 2003;170:5276−5280)。このようにして、96ウェルマイクロプレート中のミクロコッカス・リソデイクチクス(Micrococcus lysodeikticus)(Sigma−Aldrich Co.)懸濁液(0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0中の0.3mg/mL)100μLと試料100μLを混合した。450nmでの吸収の低下を室温で測定した。ニワトリ卵白リゾチーム(EMD Biosciences、Inc.)を標準物質として用いて、検量線を作成した。
NK細胞グランザイム分泌の測定
基本的に既に記載されているようにして(Takayama H、Trenn G、Sitkovsky MV.A novel cytotoxic T lymphocyte activation assay.J Immunol Methods 1987;104:183−190)、Nα−ベンジルオキシカルボニル−L−リシン チオベンジルエステル(BLT)の加水分解を測定することにより、NK−92細胞から分泌されるグランザイムをアッセイした。簡潔に述べると、上清50μLを96ウェルプレートに移し、リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.2)中のBLT溶液(0.2mM BLT;EMD Biosciences、Inc.及び0.22mM DTNB;Sigma−Aldrich Co.)(mM=ミリモーラー)150μLを上清に添加した。温置30分後、室温にて410nmでの吸収を読み取った。結果は、同数のTriton X−100溶解細胞において得られる量を用いて、総細胞酵素含量の%として表した。
統計解析
片側ANOVAにより、様々な治療群間の差の統計的有意性を評価した。<0.05のP値を有意とした。
ヒト好中球からのMPO放出の阻害
100nM PMA(炎症性メディエーター放出の刺激物質として)は、PMA対照参照物において30分で、対照レベルに対しておよそ3倍、ヒト好中球MPO放出を上昇させ、MPOの放出は、3時間後およそ5−6倍に上昇したことが分かった。30分で、対照のMPO活性を100%として(PMAなし及びPMAなし+MANS、RNS又は試験ペプチド)、PMA対照参照物のMPO活性は、約275%であり、PMA+50μM MANSは、約275%であり、100μM MANSは約305%であった。このように、MANSペプチドは、30分で影響は検出されなかった。しかし、1時間までに、MANSのより高い濃度(100μM)で有意な阻害効果(対照の約260%)があるか又はPMA対照参照物レベルに対してMPO放出が約25%低下した(これは、対照の約340%)。50μM MANS試料では、対照の約290%又はPMA対照参照物に対して約15%の低下が測定された。2時間までに及び3時間持続して、MANSペプチドは、濃度依存的にMPO活性を有意に低下させた。2時間において、PMA対照参照物MPO活性は、対照の約540%であり、50μM MANS(対照の約375%)により、PMA対照参照物に対してMPO放出が30%低下し;100μM MANS(対照の約295%)によって、PMA対照参照物に対してMPO放出がおよそ45%低下した。3時間において、PMA対照参照物のMPO活性は、対照の約560%であり、50μM MANS(対照の約375%)によって、PMA対照参照物に対してMPO放出がおよそ33%低下し;100μM MANS(対照の約320%)によって、PMA対照参照物に対してMPO放出がおよそ40%低下した。RNSペプチドは、何れの時間点又は試験濃度でもPMA誘導性MPO放出に影響を及ぼさなかった。下記の表で与えられるデータは、試験ペプチドの100μM及び100nM PMAとの2時間温置である。
HL−60細胞からのEPO放出の阻害
HL−60クローン15細胞の上清におけるEPO活性は、PMA刺激から1時間及び2時間後に有意に促進された。1時間で、対照のEPO活性を100%として、PMA対照参照物は約110%となり;10μM MANSを含有する試料は約95%となり、PMA対照参照物に対してEPO活性が約15%低下し;50μM MANSを含有する試料は約78%となり、PMA対照参照物に対してEPO活性が約30%低下し;100μM MANSを含有する試料は約65%となり、PMA対照参照物に対してEPO活性が約40%低下した。2時間において、対照のEPO活性を100%として、PMA対照参照物は約145%となり;10μM MANSを含有する試料は約130%となり、PMA対照参照物に対してEPO活性が約10%低下し;50μM MANSを含有する試料は約70%となり、PMA対照参照物に対してEPO活性が約50%低下し;100μM MANSを含有する試料は約72%となり、PMA対照参照物に対してEPO活性が約50%低下した。このように、1時間及び2時間の両方で、50又は100μMのMANSは、EPO放出を有意に減弱させた。RNSペプチドは、PMAにより促進されたEPO放出に何れの時間点又は試験濃度でも影響がなかった。下記の表で与えられるデータは、試験ペプチドの50μM濃度及び100nM PMAとの2時間温置である。
U937細胞からのリゾチーム放出の阻害
U937細胞によるリゾチーム分泌が温置1時間後までにPMS刺激により増加し、2時間ではさらに増加した。1時間において、対照のU937細胞によるリゾチーム分泌を100%として、PMA対照参照物は約210%となり;10μM MANSを含有する試料は約170%となり、PMA対照参照物に対してU937によるリゾチーム分泌が約20%低下し;50μM MANSを含有する試料は約170%となり、PMA対照参照物に対してU937によるリゾチーム分泌が約20%低下し;100μM MANSを含有する試料は約115%となり、PMA対照参照物に対してU937によるリゾチーム分泌が約45%低下した。2時間において、対照のU937細胞によるリゾチーム分泌を100%として、PMA対照参照物は約240%となり;10μM MANSを含有する試料は約195%となり、PMA対照参照物に対してU937細胞によるリゾチーム分泌が約20%低下し;50μM MANSを含有する試料は約185%となり、PMA対照参照物に対してU937細胞によるリゾチーム分泌が約25%低下し;100μM MANSを含有する試料は約140%となり、PMA対照参照物に対してU937細胞によるリゾチーム分泌が約40%低下した。このように、MANS 100μMによる刺激から1時間及び2時間の両方で、リゾチーム分泌は有意に減弱したが、MANSの50又は10μMではこれ程は減弱しなかった。RNSペプチドは、PMAにより促進されたリゾチーム分泌に何れの時間点又は試験濃度でも影響を及ぼさなかった。下記の表で与えられるデータは、試験ペプチドの50μM濃度及び100nM PMAとの2時間温置である。
NK−92細胞からのグランザイム放出の阻害
リンパ球ナチュラルキラー細胞株NK−92を使用して、グランザイムの放出を評価した(Gong JH、Maki G、Klingemann HG.Characterization of human cel line(NK−92)with phenotypical and functional characteristics of activated natural killer cells.Leukemia 8:652−658、1994;Maki G、Klingemann HG、Martinson JA、Tam YK.Factors regulating the cytotoxic activity of the human natural killer cell line、NK−92.J.Hematother.Stem Cell Res.、10:369−383、2001;Takayama H、Trenn G、Sitkovsky MV.A novel cytotoxic T lymphocyte activation assay.J.Immunol.Methods 104:183−190、1987)。
NK細胞グランザイム分泌の測定:基本的に既に記載のようにして(Takayama H、Trenn G、Sitkovsky MV.A novel cytotoxic T lymphocyte activation assay.J.Immunol.Methods 104:183−190、1987)、Nα−ベンジルオキシカルボニル−L−リシンチオベンジルエステル(BLT、EMD Bioscience、Inc.)の加水分解を測定することにより、NK−92細胞から分泌されるグランザイムをアッセイした。上清を50μLずつ96ウェルプレートに移し、リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.2)中のBLTの0.2mM溶液及び0.22mM DTNB(Sigma−Aldrich Co.)150μLを上清に添加した。温置30分後、室温にて410nmでの吸収を読み取った。結果は、同数のTriton X−100溶解細胞において得られる量を用いて、総細胞酵素含量の%として表した。
NK−92細胞からの標準グランザイムが定量に対して利用可能ではないので、発明者らは、グランザイムの放出及び細胞内(溶解細胞より)レベルの両方を測定し、放出されたグランザイムを、それぞれに対して総量(細胞内及び放出)の%として表した。NK−92細胞からの細胞内グランザイムを測定するために、0.1%Triton X−100で溶解した細胞の適切な分注物を上述のように酵素の定量のために取っておいた。培養間の変動を最小にするために全てのデータを対照の%として表した。下記の表で与えられるデータは、試験ペプチドの50μM濃度及び100nM PMAとの2時間温置である。
細胞毒性
LDH維持/放出により評価した場合(データは示さない。)(Park J−A、He F、Martin LD、Li Y、Adler KB.Human neutrophil elastase induces hypersecretion of mucin from human bronchial epithelial cells in vitro via PKCδ−mediated mechanism.Am.J Pathol 2005;167:651−661も参照)、細胞において毒性反応を生じる処理はなかった。
予備実験において、下記表で与えられる次のペプチドは、ヒト好中球からのMPO、HL−60クローン15細胞からのEPO、U937細胞からのリゾチーム及びNK−92細胞からのグランザイムの放出の個々の%阻害率を示す(ここで、MA−は、ペプチドのαN末端位置でのミリストイル置換基の存在を示し;Ac−は、ペプチドのαN末端位置でのアセチル置換基の存在を示し;Hは、ペプチドに結合する基がないことを示し;NH2は、C末端位置でのアミドの存在を示す。)。複数実験から阻害データの平均を求める。pH6.5での0.5N 食塩水中のペプチドの定性的溶解性は、下記表3でmg/mLで表す。N末端化学部分をミリストイル基から変化させることにより、水性溶媒中で本明細書中で開示するペプチドの溶解度が変化し得る。例えば、ミリストイル基をアセチル基に変化させることにより、その結果、表3で示す水溶性が向上する。