JP5818114B2 - 果実特異的プロモーター - Google Patents

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Description

本発明は、果実特異的プロモーターに関する。
形質転換植物の作製においては、多くの場合、目的遺伝子を植物体内で発現誘導するために、構成的プロモーターであるCaMV由来の35Sプロモーターが使用されている。一方で、植物の特定の発達段階や特定の組織に特異的な発現を誘導するプロモーターも単離されており、限定された発現が望ましい形質転換植物の作出のために利用されている。例えば、トマトから単離されたE8遺伝子のプロモーターは、目的遺伝子を果実の追熟時期特異的に発現誘導することが知られている(Deikmanら, EMBO J., 7:3315-3320 (1988))。しかし従来の果実特異的プロモーターは、初期の果実発達段階では機能しない。
国際公開WO96/14421は、ジャガイモから単離したプロモーターを用いて形質転換トマトでの果実発達段階を通じた発現誘導に成功したことを開示している。しかしこの文献は、このジャガイモ由来プロモーターがトマトの葉や茎でも発現を誘導すること、ジャガイモでは塊茎で発現を誘導することも開示しており、そのジャガイモ由来プロモーターは果実特異的な発現を誘導できないことも判明している。
国際公開WO96/14421号
Deikmanら(1988)The EMBO Journal 7:3315-3320
本発明は、より広い果実発達段階で発現誘導可能な果実特異的プロモーターを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、トマト赤熟果実に加えて緑熟果実においても機能する果実特異的プロモーターを単離し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 配列番号1又は2で示される塩基配列に対して80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ緑熟果実においてプロモーター活性を有する果実特異的プロモーターDNA。
この果実特異的プロモーターDNAは、より好ましい態様では、さらに、配列番号1又は2で示される塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなるものであってもよい。
[2] 上記[1]の果実特異的プロモーターDNAを含む、発現ベクター。
この発現ベクターは、上記[1]の果実特異的プロモーターDNAの下流に連結された遺伝子をさらに含んでもよい。
[3] 上記[1]の果実特異的プロモーターDNAとその下流に連結された遺伝子とを含む、DNA構築物。
[4] 上記[2]の発現ベクター又は上記[3]のDNA構築物を含む、形質転換細胞。
[5] 上記[2]の発現ベクター又は上記[3]のDNA構築物を導入した、形質転換植物。
[6] 上記[2]の発現ベクター又は上記[3]のDNA構築物を植物に導入し、形質転換植物を育成して果実を形成させ、果実中の前記遺伝子の発現を確認することを含む、形質転換植物の作製方法。
[7] 上記[5]の形質転換植物を育成して果実を形成させ、発現された遺伝子産物を果実から取得することを含む、遺伝子産物の組換え生産方法。
本発明のプロモーターを用いれば、より広い果実発達段階において外来遺伝子発現を誘導することが可能になる。
図1は、候補緑熟果実高発現遺伝子の緑熟果実での発現に関するRT-PCR解析の結果を示す写真である。高発現を示した遺伝子をアスタリスクで示した。 図2は、候補果実特異的遺伝子の様々な組織での発現に関するRT-PCR解析の結果を示す写真である。緑熟果実で高発現を示した遺伝子をアスタリスクで示した。 図3は、形質転換植物の組織化学的染色解析の結果を示す写真である。図3Aは100 mM リン酸バッファー(pH 8.0)を反応液に用い、一晩(16時間)染色した結果を示す。図3Bは20%メタノールを加えた反応液を用い、6時間染色した結果を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、完熟期よりも早い果実発達段階から、果実特異的な遺伝子発現を誘導可能なプロモーターに関する。
より具体的には、本発明に係るプロモーターは、配列番号1又は2で示される塩基配列に対して80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ緑熟果実においてプロモーター活性を有する果実特異的プロモーターDNAである。
本発明において「配列番号1又は2で示される塩基配列に対して80%以上の同一性を有する塩基配列」とは、配列番号1又は2で示される塩基配列に対してアラインメントした場合にそのいずれかの全長配列と比較して80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上(例えば99.5%以上)の同一性を有する塩基配列を意味する。なお塩基配列のアラインメントは、例えば多重整列プログラムClustal W(Thompson, J.D. et al, (1994) Nucleic Acids Res. 22, p.4673-4680;日本DNAデータバンク(DDBJ)や欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)のウェブサイト等から利用できる)をデフォルト設定で用いて行うことができるが、手作業で行ってもよい。
あるいは本発明に係るプロモーターは、配列番号1又は2で示される塩基配列において例えば1〜50個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個の塩基が欠失、置換及び/又は付加された塩基配列からなり、かつ緑熟果実においてプロモーター活性を有する果実特異的プロモーターDNAであってもよい。
本発明において「緑熟果実(緑熟果)」とは、緑熟期にある比較的未熟な果実をいう。農業分野では、果実の肥大が完了する時期を緑熟期と呼ぶ。緑熟期の果実は、一般的には緑色、緑白色又は黄白色であり、まだ色づいていない。緑熟期以降、果実が熟していく期間を追熟期といい、この時期に果実の甘味や芳香が増し、果肉が柔らかくなるなどの変化が起こる。トマト、リンゴ、バナナ、洋ナシ等の一部の果実類では、一般に、緑熟期の果実を収穫し、それを追熟させて催色し食べ頃にした完熟果を出荷する。トマトでは、緑熟期を経て(樹上で又は収穫後に)追熟させて得られる完熟した完熟果実(完熟果)は、赤熟果実(赤熟果)と呼ばれる。同様に色づき成熟した他の果実類の完熟果実も赤熟果実又は熟果と呼ばれる。赤熟果実又は熟果は、赤色のほか、橙色、紫色、黄色、白色等であってもよい。
本発明に係るプロモーターは、緑熟期の果実(緑熟果実)においてプロモーター活性を有する。本発明に係るプロモーターは、特に好ましくは、完熟期を始めとする追熟期に加えて緑熟期の果実(緑熟果実)においても、プロモーター活性を有する。本発明において「プロモーター活性」とは、その制御下にある(典型的には当該プロモーターのすぐ下流に配置されている)遺伝子(典型的には構造遺伝子)の発現を誘導できる能力を意味する。「遺伝子の発現を誘導する」とは、目的の遺伝子からの転写産物(mRNA)の生成を開始させることをいう。
本発明に係るプロモーターは、様々な果実類の緑熟果実において強力なプロモーター活性を有するが、典型例では、トマトの緑熟果実において強力なプロモーター活性を有するものである。トマトとしては、限定するものではないが、例えば、トマト品種マイクロトムやマネーメーカーが挙げられる。
本発明に係る特に好ましいプロモーターは、配列番号1又は2で示される塩基配列からなるDNAである。この配列番号1及び2で示される塩基配列のそれぞれからなるDNAは、いずれもトマト由来のプロモーターであり、完熟果実(トマトでは赤熟果実)等の追熟期の果実で遺伝子発現を誘導できることに加え、緑熟果実において特に強力に遺伝子発現を誘導することができる。
本発明に係るプロモーターは、果実類植物において果実特異的な遺伝子発現を誘導することができる。本発明において、プロモーター活性に関する「果実特異的」とは、他の植物組織と比較して、果実において顕著に強い発現を誘導することを意味する。本発明に係る果実特異的プロモーターは、典型的には、果実(例えば、果肉)において、他の植物組織と比較して、5倍以上、好ましくは10倍以上、さらに好ましくは100倍以上高い発現量をもたらす。本発明に係る果実特異的プロモーターは、果実において強力な発現を誘導する一方、果実の発達と関連しない他の植物組織(葉、茎及び根など)では発現を実質的に又は全く誘導しないことが好ましい。本発明に係るプロモーターは、果実での強力な発現誘導に加え、花などの果実の発達に関連する他の植物組織でも弱い発現を誘導することがあるが、このようなプロモーターも、果実特異的なプロモーター活性を有するものとする。
本発明に係るプロモーターを発現誘導に利用可能な果実類は、果実が緑熟期を経て完熟する任意の植物であってよく、特に限定されないが、例えば、トマト、リンゴ、洋ナシ、バナナ、イチゴ、メロン、カンキツ類(例えば、グレープフルーツ、オレンジ、温州みかん等)、キウイフルーツ、モモ、ブルーベリー、ブドウ等が挙げられる。
本発明に係るプロモーターは、例えば後述の実施例のようにトマト等の任意の果実類のゲノムを鋳型としたPCR増幅により単離することもできるし、それらゲノムの制限酵素処理断片に対して当該プロモーターDNA又はその一部をプローブとしてハイブリダイズさせることにより取得することもできる。得られたプロモーターDNAは、常法により抽出及び精製することが好ましい。またプロモーターの塩基配列情報(配列番号1又は2)に基づいて設計し化学合成したDNA断片をつなぎ合わせることにより本発明に係るプロモーターを構築することもできる。
本発明に係るプロモーターはまた、いったん得られたプロモーターDNAの塩基配列を部位特異的突然変異誘発法等の変異導入法を用いて改変することにより作製してもよい。変異導入には、Kunkel法、Gapped duplex法等の公知の手法又はこれに準ずる方法を採用することができる。これらの変異導入は、例えば市販の部位特異的突然変異誘発キット(例えばMutan(R)-K、Mutan(R)-Super Express Km、PrimeSTAR(R) Mutagenesis Basal Kit(いずれもTAKARA BIO INC.社製))などを用いて当業者であれば容易に行うことができる。
得られたプロモーターDNAについては、目的のプロモーターを取得できたかどうかを確認するため、塩基配列決定を行うことが好ましい。塩基配列決定はマキサム-ギルバート法、ジデオキシヌクレオチド鎖終結法等の公知手法により行うことができるが、通常は自動塩基配列決定装置(例えばABI社製DNAシークエンサー)を用いて行えばよい。
本発明では、本発明に係るプロモーターを任意のベクターに組み込むことにより、果実特異的発現ベクターを作製することができる。したがって本発明は、本発明に係るプロモーターを含むベクター、特に発現ベクターも提供する。
本発明に係るプロモーターを組み込むベクターとしては、宿主細胞中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。例えばプラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpET22b(+)、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pBluescript、pET100/D-TOPO等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YCp50、pPICZαA等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP、λZAPII等)などが挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。ベクター中に本発明に係るプロモーターを組み込むには、例えば、そのプロモーターを含むDNA断片の末端を適当な制限酵素で切断し、ベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入し連結すればよい。
本発明に係るプロモーターを組み込む植物発現用ベクターとしては、アグロバクテリウム法を用いる場合には、バイナリーベクターなどのアグロバクテリウム法に適した発現ベクター又はその改変ベクターを用いることが好ましい。そのような植物発現用ベクターとしては、例えば、pBI121、pBIN19、pSMAB704、pCAMBIA、pGreen等が挙げられる。例えば、これらのベクター中のプロモーターを、本発明に係るプロモーターで置換することによって、本発明に係る発現ベクターを作製してもよい。
本発明に係るプロモーターは、各種ターミネーター(限定するものではないが、植物ターミネーターがより好ましい)と組み合わせて発現ベクター中で用いてもよい。本発明に係る発現ベクターは、本発明に係るプロモーターの下流に遺伝子挿入部位を有していてもよい。
このような発現ベクターは、目的の遺伝子にコードされるタンパク質等の遺伝子産物を植物果実特異的に発現させるためのツールとして好適に使用できる。
本発明に係る発現ベクターは、本発明に係るプロモーターの制御下にある遺伝子挿入部位(例えば、制限酵素切断部位)に発現対象の遺伝子をさらに含んでもよい。本発明に係る発現ベクターは、典型的には、本発明に係るプロモーターDNAの下流に連結された発現対象の遺伝子を含んでもよい。
発現対象の遺伝子は特に限定されず、タンパク質をコードする遺伝子であっても、RNAをコードする遺伝子であってもよいし、2種以上のタンパク質の融合タンパク質をコードする遺伝子でもよい。発現対象の遺伝子は、一種でもよいし、2種以上でもよい。本発明に係る発現ベクターは果実特異的発現を誘導することから、発現対象の遺伝子は、好ましくは、果実での発現、蓄積、及び/又は生産が望まれる遺伝子産物(タンパク質又はRNA)をコードする核酸である。発現対象の遺伝子は、例えば、ミラクリン、種々のヒト又は家畜用ワクチン抗原、サイトカイン(例えば、インターフェロン、インターロイキン等)、酵素(例えばDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、アミログリコシダーゼ、アミラーゼ、インベルターゼ、イソアミラーゼ、プロテアーゼ、パパイン、ペプシン、レンニン、セルラーゼ、ペクチナーゼ、リパーゼ、ラクターゼ、グルコースオキシダーゼ、リゾチーム、グルコースイソメラーゼ、キモトリプシン、トリプシン、チトクローム、セアプローゼ、セラチオペプチダーゼ、ヒアルロニダーゼ、ブロメライン、ウロキナーゼ、ヘモコアグラーゼ、サーモライシン、ウレアーゼ等)、ホルモンタンパク質(例えばインスリン、グルカゴン、セクレチン、ガストリン、コレシストキニン、オキシトシン、バソプレッシン、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、プロラクチン、黄体形成ホルモン、濾胞刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ソマトスタチン等)、オピオイドペプチド(エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィン等)、血液凝固因子(フィブリノーゲン、プロトロンビン等)、プロテアーゼインヒビター(SSI等)等の任意のペプチド又はタンパク質をコードする遺伝子であってよい。本発明における発現対象の遺伝子は、任意の生物(例えば、植物、動物、真菌又は細菌)又はウイルスに由来するものであってよく、また人工的に作製したものであってもよい。本発明において「(発現対象の)遺伝子」は、天然に生じる遺伝子に限定されず、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又はRNAをコードする任意のヌクレオチド配列を意味する。
本発明に係る発現ベクターは、ベクターが細胞内に保持されていることを示す選択マーカー遺伝子やレポーター遺伝子、ベクター内に簡単に正しい向きで遺伝子を挿入するためのポリリンカー、ポリA付加配列、分泌シグナル配列、精製用のヒスチジンタグ配列等の有用な配列を必要に応じてさらに含んでもよい。選択マーカー遺伝子としては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子(CAT遺伝子)等が挙げられる。
本発明は、本発明に係るプロモーターの制御下に発現対象の遺伝子を含むDNA構築物も提供する。それは、典型的には、本発明に係るプロモーターDNAとその下流に連結された遺伝子とを含むDNA構築物である。本発明において「DNA構築物」とは、2以上の機能単位(遺伝子、プロモーター、ターミネーターなど)のDNAを連結して作製される、自律複製能を有しないDNA断片(例えば、遺伝子発現カセット)をいう。本発明に係るDNA構築物は、プロモーターDNAとその下流に連結された遺伝子に加えて、ターミネーター等の他の機能単位をさらに含んでもよい。
本発明では、上記発現ベクター又は上記DNA構築物を宿主に導入することにより形質転換体(形質転換細胞、形質転換植物など)を作製することができる。具体的には、例えば、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を宿主細胞に導入することにより、その発現ベクター又はDNA構築物を含む形質転換細胞を作製することができる。なお本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を、宿主細胞(好ましくは、植物細胞)へ導入することにより、プロモーター及びその制御下の発現対象の遺伝子を含むDNA断片を、宿主細胞のゲノム中に組み込むことができる。あるいは、本発明に係る発現ベクターを宿主細胞へ導入した形質転換体において、その発現ベクターが染色体外(細胞質など)で維持されることにより、発現対象遺伝子が染色体外で一過性発現されていてもよい。宿主細胞には、大腸菌や枯草菌等の細菌、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞(例えば、哺乳動物細胞)、植物細胞等、いずれを使用してもよい。本発明においては、植物細胞、特に被子植物細胞、より好ましくは果実類植物の細胞、さらに好ましくはトマトの細胞を宿主細胞として使用することができる。宿主細胞は、任意の組織由来であってよく、葉や果実由来の細胞であってもよい。形質転換植物細胞は、例えば後述の導入対象植物の細胞であることが好ましい。
本発明では、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を植物に導入することにより形質転換植物を作製することが特に好ましい。
本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を導入する植物としては、特に限定されないが、果実類植物が好ましく、緑熟期を経て完熟果を形成する果実類植物が特に好ましい。具体的には、限定するものではないが、例えば、トマト(Solanum lycopersicum)、リンゴ(Malus)、バナナ(Musa)、洋ナシ(Pyrus communis)、イチゴ(Fragaria L.)、メロン(Cucumis melo)、キウイフルーツ(Actinidia deliciosa)、モモ(Amygdalus persica)、ブルーベリー(Vaccinium myrtillus)、ブドウ(Vitis)、またグレープフルーツ(Citrus X paradisi)、オレンジ(Citrus sinensis)、温州みかん(Citrus unshiu)などのカンキツ類(Citrus)等の植物が挙げられる。とりわけトマトが好ましい。
本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を植物に導入する方法としては、植物の形質転換に一般的に用いられる方法、例えばアグロバクテリウム法、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール(PEG)法、マイクロインジェクション法、プロトプラスト融合法などを用いることができる。これらの植物形質転換法の詳細は、『島本功、岡田清孝 監修 「新版 モデル植物の実験プロトコール 遺伝学的手法からゲノム解析まで」(2001) 秀潤社』などの一般的な教科書の記載や、Hiei Y. et al., "Efficient transformation of rice (Oryza sativa L.) mediated by Agrobacterium and sequence analysis of the boundaries of the T-DNA." Plant J. (1994) 6, 271-282; Hayashimoto, A. et al., "A polyethylene glycol-mediated protoplast transformation system for production of fertile transgenic rice plants." Plant Physiol. (1990) 93, 857-863等の文献を参照すればよい。
アグロバクテリウム法を用いる場合は、アグロバクテリウム法に適したベクターを用いて作製した本発明に係る発現ベクターを、適当なアグロバクテリウム、例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)にエレクトロポレーション法などにより導入し、この菌株を植物細胞、カルス、又は子葉切片等に接種して感染させればよい。好適なアグロバクテリウムとしては、限定するものではないが、GV3101、C58、C58C1Rif(R)、EHA101、EHA105、AGL1、LBA4404等の株を利用することができる。
パーティクルガン法やエレクトロポレーション法には、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物のいずれを使用してもよい。導入対象の宿主試料としては、植物の葉などの切片を使用してもよく、プロトプラストを調製して使用してもよい(Christou P, et al., Bio/technology (1991) 9: 957-962)。例えばパーティクルガン法では、遺伝子導入装置(例えばPDS-1000(BIO-RAD社)等)を製造業者の説明書に従って使用して、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物をまぶした金属粒子をこのような試料に打ち込むことにより、植物細胞内に導入させ、形質転換植物細胞を得ることができる。操作条件は、通常は450〜2000psi程度の圧力、4〜12cm程度の距離で行う。
次いで、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を導入した植物細胞や子葉切片等を、例えば従来知られている植物組織培養法に従って選択培地で培養し、生存したカルスを再分化培地(適当な濃度の植物ホルモン(オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン、ブラシノライド等)を含む)で培養することにより、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物により形質転換された植物体を再生することができる。このようにして形質転換植物を取得できる。
本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物が植物中に確実に導入されたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、ウェスタンブロット法等を利用して行うことができる。例えば、形質転換植物の葉から抽出したゲノムDNAについて、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物中のプロモーターや組み込んだ発現対象の遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCR増幅を行えばよい。その増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物を明瞭なバンドとして検出することにより、本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物の導入を確認することができる。マイクロプレート等の固相にPCR増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認することもできる。作製した形質転換植物において、導入した本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物中の発現対象の遺伝子の遺伝子産物について活性を確認することも好ましい。
以上のようにして得られる本発明に係る発現ベクター又はDNA構築物を導入した形質転換植物の好ましい例では、発現対象の遺伝子の発現が果実で強力に誘導され、その遺伝子産物(mRNA、rRNA等のRNA、又はタンパク質)が高効率に生産され、好ましくは蓄積される。このような本発明に係る形質転換植物では、特に、緑熟期にある果実(緑熟果実)において、発現対象の遺伝子の発現が強力に誘導される。特に、本発明に係る形質転換植物では、緑熟期から完熟期までの果実発達段階を通じて発現対象の遺伝子が強力に発現誘導される。また好ましい一つの実施形態では、本発明に係る形質転換植物では、果実発達段階の最初期に当たる花においても発現対象遺伝子の発現が弱く誘導される。逆に、本発明に係る形質転換植物では、葉、茎、根等の組織では発現対象の遺伝子の発現が実質的に又は全く誘導されないことが好ましい。例えば本発明に係るプロモーターの制御下で発現対象の遺伝子を導入したトマトでは、赤熟果実(完熟果実)での発現に加えて、緑熟果実において非常に強力な遺伝子発現が誘導される。このトマトでは花でも弱い発現誘導が認められるが、好ましくは、葉、茎、根等の組織では遺伝子発現は誘導されない。
したがって本発明は、上記発現ベクター又は上記DNA構築物を植物に導入し、得られる形質転換植物を育成することを含む、上記発現ベクター又は上記DNA構築物中の発現対象の遺伝子を植物で果実特異的に発現させる方法も提供する。
本発明はまた、上記発現ベクター又は上記DNA構築物を植物に導入し、形質転換植物を育成して果実を形成させ、果実中の前記遺伝子の発現を確認することを含む、形質転換植物の作製方法も提供する。
果実における遺伝子発現の確認は、常法に従って行えばよく、例えば果実中に含まれる発現対象の遺伝子の遺伝子産物(RNA、タンパク質等)の検出又は測定を行えばよい。例えば、果実から抽出したトータルRNAについてRT-PCR解析を行い、発現対象の遺伝子からのmRNAの増幅を検出することができる。あるいは、発現対象の遺伝子の1つとして蛍光タンパク質や発色酵素タンパク質等をコードするリポーター遺伝子を含む場合には、果実におけるリポータータンパク質の生成を蛍光検出や染色により確認し、それにより果実での遺伝子発現誘導を確認することもできる。また果実からのタンパク質抽出物について、発現対象の遺伝子の遺伝子産物を抗原として生成された抗体を用いて、ウェスタンブロット解析を行ってもよい。
本発明はまた、上記形質転換植物を育成して果実を形成させ、発現対象の遺伝子から発現された遺伝子産物を果実から取得することを含む、遺伝子産物の組換え生産方法も提供する。
生産された遺伝子産物がタンパク質の場合、果実からの発現タンパク質の取得は、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより行うことができる。遺伝子産物がmRNAなどのRNAであれば、一般的なRNA抽出法を用いて果実から単離精製することができる。しかしながら、場合により、遠心分離や限外濾過型フィルター等を用いて採取又は濃縮したサンプル液をさらに硫安分画後に透析にかけるなどして得た溶液をそのまま使用してもよい。
本発明において用いるDNAの調製、PCR、ベクター中へのライゲーション、細胞の形質転換、DNA塩基配列決定、プライマーの合成、突然変異誘発、タンパク質の抽出などの分子生物学的・生化学的実験操作は、基本的には通常の実験書の記載に従って行うことができる。そのような実験書としては、例えば、SambrookらのMolecular Cloning, A laboratory manual, 2001, Eds., Sambrook, J. & Russell, DW. Cold Spring Harbor Laboratory Pressを挙げることができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]マイクロアレイデータからの候補遺伝子の選抜
トマト(Solanum lycopersicum)品種マイクロトム(Micro-Tom)のESTマイクロアレイに対してマイクロトムの緑熟果実から抽出したmRNA由来のプローブをハイブリダイズさせて得られたマイクロアレイデータに基づき、高発現が認められた遺伝子を候補緑熟果実高発現遺伝子として選抜した。選抜された候補遺伝子を、ID番号LA15CA04、LA22CD07、LC09AH08、LC04DC11、LA12AA05、LA14AD08及びFB14DB02で示す。
また、かずさDNA研究所(千葉県、日本)及びコーネル大学(ニューヨーク州、米国)のマイクロアレイデータベースに格納されているマイクロトム組織別マイクロアレイデータに基づき、果実特異的な発現を示す5個の遺伝子を候補果実特異的遺伝子として選抜した。選抜された候補遺伝子を、ID番号Les.331.1.S1_at、Les.3122.2.A1_a_at、LesAffx.6852.1.S1_at(以上、かずさDNA研究所)、TC115787、TC116003(以上、コーネル大学)で示す。
[実施例2]トータルRNA抽出及びRT-PCR発現解析
実施例1で選抜した候補遺伝子について、RT-PCR発現解析を行った。まず、生育3ヶ月目のトマト(Solanum lycopersicum)の品種マイクロトム(Micro-Tom)の生物試料から、RT-PCRに使用するトータルRNAを、以下の方法により抽出した。まずマイクロトムの葉、花、茎、根、緑熟果実、及び赤熟果実を約1 gずつ採取し、それぞれ独立に液体窒素で凍結させた。凍結させた各組織を独立に乳鉢中で破砕し、粉状にした。それぞれの粉状サンプルを50 mlプラスチックチューブに移し、これらのチューブに約10 mlのTRIzol(R)(Invitrogen, USA)を加え、ボルテックスで2〜3分間混合した。これらを室温で10分間インキュベート後、各チューブに1 mlのクロロフォルムを加えボルテックスで2〜3分間混合した。室温で1分間インキュベート後、10000 rpmで10分間、4℃で遠心分離を行った。各チューブの上層(水層)をそれぞれ新しい50mlプラスチックチューブに移し、等量のフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコール溶液を加え、ボルテックスにより2〜3分間混合した。室温で各チューブを2〜3分間インキュベート後、10000 rpmで10分間、4℃で遠心分離を行った。各チューブの上層(水層)をそれぞれ新しい50 mlプラスチックチューブに移し、等量のフェノール/クロロフォルム溶液を加え、ボルテックスにより2〜3分間混合した。室温で各チューブを2〜3分間インキュベート後、10000 rpmで10分間遠心分離を行った。各チューブの上層(水層)をそれぞれ新しい50 mlプラスチックチューブに移し、これらに等量のイソプロパノールを加え、ボルテックスで2〜3分間混合した。室温で5分間インキュベート後、10000 rpmで10分間、4℃で遠心分離を行った。上清を除去し、ペレットに-20℃で冷却した70%エタノールを加え、ペレットを洗浄した。10000 rpmで10分間、4℃で遠心分離を行った後、上清を除去した。ペレットを室温で5〜10分間インキュベートすることによりエタノールを完全に除去した後、RNase及びDNaseを含まない滅菌水でペレットを溶解し、RNA溶液とした。このRNA溶液について、マイクロプレートリーダーSafire(Tecan, Switzerland)を使用し、OD260値を測定しRNA量を算出した。次いでDNase処理した1μgのトータルRNAを鋳型として、ポリTプライマーとSuperScript(R) II(Invitrogen, USA)を使用して、逆転写反応によりファーストストランドcDNAを作製した。
続いて候補緑熟果実高発現遺伝子の発現解析のため、葉、花、茎、根、緑熟果実及び赤熟果実由来mRNAから上記の通り作製したファーストストランドcDNAを鋳型として各遺伝子のPCR増幅を行った。各遺伝子の増幅に使用したプライマーセット及び推定増幅サイズを表1に示す。対照として、E8遺伝子及びアクチン遺伝子のPCR増幅も行った。PCR反応は総量50 μlで行った。PCR反応液組成は、プライマーセットの各プライマー20 pM、cDNA 1 μ1、10x PCRバッファー 5 μ1、dNTPs 4 μl、ポリメラーゼ酵素0.2 μl、及び滅菌水39.3 μlであった(10x PCRバッファー、dNTPs、ポリメラーゼ酵素はTAKARA Taq Hot Start Version由来のものを使用)。PCR反応は、95℃で5分の熱変性の後、94℃で0.5分の変性、55℃で0.5分のアニーリング、72℃で1分の伸長を1サイクルとして20〜35サイクル行う熱サイクル条件で実施した。得られたPCR産物 5 μlをアガロースゲルで電気泳動し、推定増幅長を有する増幅産物を確認した。この電気泳動の結果を図1及び図2に示す。また各遺伝子で観察された発現状態を表1に示した。
Figure 0005818114
候補緑熟果実高発現遺伝子の発現(mRNA)は25サイクル反応後から検出でき、27サイクル及び30サイクル反応後には明確に検出された(図1)。発現の強弱は遺伝子によって異なっていた(図1、表1)。27及び30サイクル反応後の結果を基に、7個の候補緑熟果実高発現遺伝子の中から特に高発現を示したLA22CD07、LA12AA05及びLA14AD08の3個の遺伝子を選抜した。
一方、図2に示すように、候補果実特異的遺伝子の発現は25サイクル反応後には明瞭に検出できた。5個の候補果実特異的遺伝子のうち、果実特異的発現を示した3個の遺伝子Les.3122.2.A1_a_at、LesAffx.6852.1.S1_at、Les.331.1.S1_atを選抜した。赤熟果実での特異的発現が知られているE8遺伝子が赤熟果実でのみ発現していたのに対し、これら3つの遺伝子は全て赤熟果実に加えて緑熟果実でも発現していた。
これら3つの遺伝子の発現パターンには違いがみられた。Les.3122.2.A1_a_atは、緑熟果実と赤熟果実の両方で強く発現していたが、LesAffx.6852.1.S1_a_atは、緑熟果実でより強く発現しており、赤熟果実ではより弱く発現していた。Les.331.1.S1_atは、緑熟果実と赤熟果実の両方で強く発現しており、さらに花でも弱く発現していた。
後述の実施例では、このようにして選抜した3個の緑熟果実高発現遺伝子LA22CD07、LA12AA05及びLA14AD08、並びに3個の果実特異的遺伝子Les.331.1.S1_at、Les.3122.2.A1_a_at及びLesAffx.6852.1.S1_atを候補遺伝子として用いて、プロモーターの単離を試みた。
[実施例3]BLAST解析
上記候補遺伝子の機能を調べる目的で、NCBI(National Center for Biotechnology Information, U.S.A.)のBLASTNプログラムを用いて配列解析を行った。
このBLAST解析の結果、遺伝子LA14AD08は、GenBankアクセッション番号L38581のトマト由来機能未知cDNA配列に対応し、またClpプロテアーゼ遺伝子のファミリーメンバーであることが示された。遺伝子LA22CD07は、GenBankアクセッション番号AK322312のトマト由来機能未知cDNA配列に対応し、さらにトウゴマ(Castor Bean)推定赤芽球マクロファージタンパク質(erythroblast macrophage protein, emp)のcDNA配列(GenBankアクセッション番号XM_002525023)との相同性を有することが示され(e-value = 5E-39)、その遺伝子ホモログである可能性が示唆された。遺伝子LA12AA05は、GenBankアクセッション番号AK322226のトマト由来機能未知cDNA配列に対応し、またトウゴマ(Castor Bean)推定sufDのcDNA配列(GenBankアクセッション番号XM_002534741)との相同性を有することが示され(e-value = 2E-69)、その遺伝子ホモログである可能性が示唆された。
遺伝子Les.331.1.S1_at(GenBankアクセッション番号AK326139のトマト由来機能未知cDNA配列に対応)は、既報のトマトLOX遺伝子(GenBankアクセッション番号U13681)であった。このトマトLOX遺伝子は、果実特異的発現を示し、ノーザン解析により、緑熟果実では発現しておらず、赤熟果実で強く発現することが報告されている(Ferrie BJ et al. (1994) Plant Physiol., 106, 109-118)。また、GUS染色によるプロモーター解析により、オレンジ色の果実で最も強い染色が観察されたことが報告されている(Beaudoin N and Rothstein SJ.(1997) Plant Mol. Biol. 33,835-46)。
遺伝子Les.3122.2.A1_a_atは、既報のトマトペクチンメチルエステラーゼ様遺伝子(GenBankアクセッション番号S66607)であったが、その発現解析やプロモーター解析の報告はまだない。遺伝子LesAffx.6852.1.S1_atは、機能既知のトマト遺伝子とはヒットしなかったが、Gossypium hirsutumのシステインプロテアーゼ遺伝子(GenBankアクセッション番号AY171099)と69%の相同性を示したことから、システインプロテアーゼ遺伝子のメンバーであることが示唆された。
[実施例4]プロモーターの単離
プロモーター解析が行われていない5つの遺伝子LA22CD07、LA12AA05、LA14AD08、Les.3122.2.A1_a_at、及びLesAffx.6852.1.S1_atのそれぞれから、以下のようにしてプロモーター領域の単離を試みた。
(1)ゲノムDNAの抽出
ゲノムDNAは、トマト(品種マイクロトム又はマネーメーカー)の葉から、臭化セチルトリメチルアンモニウム(ナカライテスク)を使用したCTAB法(Murray and Thompson, 1980)によって抽出した。具体的には、まず約3 gの葉を液体窒素下で乳鉢中で破砕し、粉状にした。この粉末を、70℃の5 mlの2xCTAB液の入ったプラスチックチューブへ移し、60分間、55℃でゆっくり振盪した。このチューブに、5 mlのクロロホルム/イソアミルアルコールを加え、30分間、室温でゆっくり振盪した。次に、5000 rpmで15分間、室温で遠心した後、上層(水層)を新しいプラスチックチューブに移し、1/10容量の10% CTAB液を加え、混合した。10分間、室温でゆっくり振盪後、5000 rpmで15分間、室温で遠心した。上層(水層)を新しいチューブに移し、等量の沈殿用バッファーを加え、転倒混和し30分間、室温でインキュベートした。このチューブを5000 rpmで15分間、室温で遠心した後、上清を除去した。ペレットに5 mlの1M NaCl-TE溶液(RNaseIを含む)を加え、55℃でペレットを溶解させた。これに5 mlのイソプロパノールを加え、転倒混和し、室温で30分間インキュベートした。これを、5000 rpmで15分間、室温で遠心した後、上清を除去した。ペレットに5 mlの70%エタノールを加え、転倒混和した後、5000 rpmで15分間、室温で遠心した。上清を除去した後、ペレットを室温で軽く乾燥し、TE溶液に溶解した。マイクロプレートリーダーSafire(Tecan, Switzerland)を使用し、OD260値を測定し、ゲノムDNA量を算出した。
(2)プロモーターの単離と塩基配列決定
ゲノムDNAを鋳型として用いて、Genome WalkerTM Universal Kit(Clonetec, USA)を使用したゲノムウォーキング法により、各遺伝子の上流域を増幅した。具体的には、最初に、上記で調製したマイクロトム由来のゲノムDNAを制限酵素Dra I、EcoR V、 Pvu II又はStu Iで消化し、得られた切断断片の両端にライゲーションによりアダプター配列を連結して、4種のゲノムライブラリーを作製した。次に、各ゲノムライブラリーを鋳型にして、アダプタープライマー1(AP1)と遺伝子特異的プライマー1(GSP1)で一次PCRを行った。PCR反応は総量50 μlで行った。その反応液組成は、各プライマー20 pM、ゲノムライブラリー1 μl、10x PCRバッファー 5 μl、dNTPs 4 μl、ポリメラーゼ酵素1.0 μl、及び滅菌水37.0 μlであった(10x PCRバッファー、dNTPs、ポリメラーゼ酵素はExpand High Fidelity PCR システム(Roche)由来のものを使用)。PCR反応は、94℃で0.25分の変性、72℃で3分のアニーリング及び伸長を1サイクルとして7サイクル行った後、94℃で0.25分の変性、67℃で3分のアニーリング及び伸長を32サイクル行い、最後に67℃で7分の伸長を行う熱サイクル条件で実施した。次に、一次PCRの反応産物を鋳型として、アダプタープライマー2(AP2)と遺伝子特異的プライマー2(GSP2)を使用して二次PCRを行った。反応液組成及び反応条件は、一次PCRと同様である。得られたPCR産物 5 μlをアガロースゲルで電気泳動し、増幅産物を確認した。
反応後のPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分離し、エチジウムブロマイド染色後、染色されたDNA断片をアガロースゲルから切り出し、Wizard(R) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega, USA)を使用して精製した。精製したDNA断片の塩基配列をダイレクトシークエンスにより決定した。この塩基配列をNCBIのORF Finder(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/gorf.html)で解析してORFの推定を行い、さらにBLASTプログラム(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用いて他の植物ホモログと配列比較を行うことにより、翻訳開始点を特定した。
次に、プロモーター領域をクローニングするため、上記で調製した栽培品種マネーメーカーのゲノムDNAを鋳型として、上記で決定した塩基配列及び翻訳開始点の情報を基に設計したプライマーセット及びフェデリティーの高いKOD Plus(TOYOBO, Japan)を使用したPCRにより、翻訳開始点から約2 kb上流域を増幅した。この増幅に使用したプライマーは、例えばLesAffx.6852.1.S1_atについては、5'側に制限酵素Hind IIIの認識配列5'-AAGCTT-3'を付加したプライマー6852-5-1(5'-GGGAAGCTTTCGTGGAAACTATCTTTCACG-3';配列番号31)及び5'側に制限酵素Xba Iの認識配列5'-TCTAGA-3'を付加したプライマー6852-3-1(5'-GGGGTCTAGATTTTCAGTTACATTAAACAGTTATTG-3';配列番号32)である。また例えばLA22CD07については、5'側に制限酵素Hind IIIの認識配列5'-AAGCTT-3'を付加したプライマーLA22CD07-5-1(5'-ATGCAAGCTTCGTGCGTTGCACG-3';配列番号33)及び5'側に制限酵素BamH Iの認識配列5'-GGATCC-3'を付加したプライマーLA22CD07-3-1(5'-ATGCGGATCCTAATGGAAGAAATCAAG-3';配列番号34)である。PCR反応は総量50 μlで行った。その反応液組成は、プライマーセットの各プライマー20 pM、ゲノムDNA 1 μl、10x PCRバッファー 5 μl、dNTPs 5 μl、MgCl2 3.0 μl、KOD-Plus-ポリメラーゼ酵素1.0 μl、滅菌水34.6 μlであった(10x PCRバッファー及びdNTPsは、ポリKOD-plus-(TOYOBO)に付属の試薬を使用)。PCR反応は、94℃で2分の熱変性の後、94℃で0.25分の変性、55℃で0.5分のアニーリング、68℃で3分の伸長を1サイクルとして30サイクル行う熱サイクル条件で実施した。
反応後のPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分離し、エチジウムブロマイド染色後、染色されたDNA断片をアガロースゲルから切り出し、Wizard(R) SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega, USA)を使用し精製した。精製したDNA断片を、Zero Blunt(R) TOPO(R) PCRクローニングキット(Invitrogen, USA)を使用して、pCR(R)-Blunt II-TOPO(R)ベクターに組み込んだ。得られたプラスミドベクター内にクローン化されたDNA断片の塩基配列を常法により決定した。
クローン化したDNA断片に含まれるプロモーター領域の塩基配列の代表例を、配列番号1(LA22CD07のプロモーター配列)及び配列番号2(LesAffx.6852.1.S1_atのプロモーター配列)に示す。
[実施例5]遺伝子発現アッセイ
(1)植物発現ベクターの構築及びアグロバクテリウムへの遺伝子導入
プロモーター活性の評価は、GUS遺伝子発現活性に基づいて行った。まず、GUS遺伝子を含む植物発現用ベクターであるpBI121に、各遺伝子のプロモーター領域を含むDNA断片を以下のようにして導入した。実施例4でpCR(R)-Blunt II-TOPO(R)ベクターに組み込んだプロモーター領域を制限酵素処理により切り出し、切り出したDNA断片を、35Sプロモーターを除去した発現ベクターpBI121のGUS遺伝子上流部位にライゲーション反応により組み込んだ。作製したベクターをエレクトロポレーションによりAgrobacterium tumefaciens GV3101株に導入し、組換えアグロバクテリウムを、抗生物質カナマイシンを50 mg/Lで添加したLB寒天培地上で選抜した。
(2)一過性発現解析
トマトの緑熟果実を使用した一過性発現解析を、Orzaezら(2006)の方法に従って行った。具体的には、上記で作製した組換えアグロバクテリウムを、抗生物質カナマイシンを50 mg/Lで添加した5 mlの液体YEB培地で28℃で一晩培養した後、抗生物質カナマイシンを50 mg/Lで添加した50 mlの誘導培地(0.5% 肉エキス(Beef extract)、0.1% 酵母エキス、0.5% ペプトン、0.5% スクロース、2 mM MgSO4, 20 μM アセトシリンゴン、10 mM MES、pH 5.6)でさらに一晩培養した。この培養液を3000 rpmで10分間室温で遠心し、集菌した。集菌したペレットを感染培地(10 mM MgCl2、10 mM MES、200 μM アセトシリンゴン、pH5.6)にOD600=1.0となる濃度で懸濁し、2時間、室温でゆっくり浸透させた。この菌液500 μlを1 mlシリンジに移し、菌液を含むシリンジの針を、マイクロトムから切り取った緑熟果実に刺し、菌液を果実に注入した。この果実を、2 mlの蒸留水に浸した濾紙を含む9センチプラスチックシャーレに入れ、25℃、16時間日長で4日間インキュベートした。
次いで、この果実から総タンパク質を抽出し、4-MUGを基質とした定量的GUS活性測定を行った。この測定は、Jeffersonら(1987)の方法による4-MUGを基質としたGUS活性測定法に若干の改変を加えて行った。具体的には、上記で組換えアグロバクテリウムを感染させた後4日間インキュベートした緑熟果実を、液体窒素により粉末化し、タンパク質抽出バッファー(100 mM リン酸バッファー(pH 8.0)、10 mM EDTA、0.1% Triton X-100、0.1% サルコシル、10 mM メルカプトエタノール)を用いて総タンパク質を抽出した。Quick Startプロテインアッセイキット(バイオ・ラッド)を使用しブラッドフォード法(Bradford, 1976)により抽出サンプルのタンパク質量を測定した。抽出した総タンパク質及び標準タンパク質としてのウシ血清アルブミンの段階的な希釈溶液を作製した。5 μlの各希釈液をそれぞれ250 μlの染色液に加え10分間室温でインキュベートした後、595 nmの吸光度をSafire(Tecan, Switzerland)で測定し、ウシ血清アルブミンで作製した検量線と抽出サンプルの吸光度から、抽出サンプルのタンパク質量を算出した。
約100 μgの抽出タンパク質を、GUS活性測定に使用した。氷上の1.5 mlのプラスチックチューブに約100 μgの抽出タンパク質、20 mMの4-メチル-ウンベリフェリル-β-D-グルクロニド(4-MUG)50μl、上記と同じタンパク質抽出バッファーを加えて1 mlにし、混合した。この反応液を37℃で0、2、及び4時間インキュベートし、各時間終了時に200 μlをサンプリングし、0.8 mlの反応停止液(0.2M Na2CO3)を加えることにより反応を停止させた。反応生成物である4−メチル−ウンベリフェロン(4-MU)の量を測定するため、各時間のサンプルについて、Safire(Tecan, Switzerland)を使用して365 nMの励起光による455 nMの蛍光を測定した。測定値を4-MUについて作製した検量線と比較することにより、各サンプルの4-MU量を決定した。GUS活性は、この4-MU量(pmole/min/mg protein)で表し、GUS活性の評価を行った。
この結果、3個の遺伝子LA22CD07、Les.3122.2.A1_a_at、及びLesAffx.6852.1.S1_atのプロモーターが、果実内で一過性発現を誘導する活性を有することが示された。
[実施例6]トマト組換え体の作製及び発現解析
実施例5(1)で、果実での活性が確認された遺伝子(LA22CD07、Les.3122.2.A1_a_at、及びLesAffx.6852.1.S1_at)の各プロモーター領域を含むベクターをA. tumefaciens GV3101株に導入して得た組換えアグロバクテリウムを用いて、Sunら(Plant Physiol., 114:1547-1556, 2006)の方法により、マイクロトムの形質転換体を作製した。また対照として、35Sプロモーターの制御下にGUS遺伝子を含む発現ベクターpBI121を導入した組換えアグロバクテリウムを用いて、同様にマイクロトムの形質転換体を作製した。
組換えアグロバクテリウムを、抗生物質カナマイシンを50 mg/Lで添加したLB培地中で一晩振とう培養した。この培養液を3000 rpmで10分間、室温で遠心し、上清を除去した。集菌したペレットを洗浄した後、アセトシリンゴン200 μMとメルカプトエタノール10 μMを添加したMS液体焙地にOD600値が0.1になる濃度で懸濁した。このアグロバクテリウム菌液に、無菌播種後7日目の無菌マイクロトム子葉の切片を浸漬させた。これによりアグロバクテリウムを感染させたトマト子葉切片を、1.5 mg/Lゼアチンを添加したMS培地で3日間共存培養した。その後、培養切片を、1 mg/Lゼアチン、100 mg/Lカナマイシンを添加した選抜MS培地に移して2週間毎に培地を交換しながら培養し、続いて、伸びたシュートを50 mg/Lカナマイシンを添加した発根MS培地に移し、根を形成させた。
発根MS培地で根を形成した再分化個体の葉から、上記で述べた方法でゲノムDNAを抽出した。このゲノムDNAを鋳型にして、PCRによりGUS遺伝子を増幅した。使用したプライマーは、GUS-F(5'-GATCAGTTCGCCCATGCAGATATTCG-3';配列番号35)及びGUS-R(5'-CTTGCAAAGTCCCGCTAGTGCC-3';配列番号36)である。PCR反応は総量20 μlで行った。その反応液組成は、各プライマー20 pM、ゲノムDNA 1 μl、10x PCRバッファー2 μl、dNTPs 1.6 μl、ポリメラーゼ酵素0.4 μl、滅菌水15.8 μlであった(10x PCRバッファー、dNTPs、ポリメラーゼ酵素はTAKARA Taq Hot Start Versionを使用)。PCR反応は、95℃で5分の熱変性の後、94℃で0.5分の変性、55℃で0.5分のアニーリング、72℃で2分の伸長を1サイクルとして30サイクル行う熱サイクル条件で実施した。得られたPCR産物 5 μlをアガロースゲルで電気泳動し、増幅産物を確認し、GUS遺伝子の増幅が確認された再分化個体を形質転換体として選抜した。
このようにして作製した形質転換体当代(組換え体)については、さらにGUS染色によるプロモーターの組織別発現誘導活性の解析を行った。このGUS染色に基づく発現解析は、X-GLUC(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロン酸)を基質として用いるJeffersonらの方法(EMBO J., 6:3901-3907, 1987)に若干の変更を加えて行った。具体的には、染色のバックグラウンドを減らすために、反応液の50 mM リン酸バッファー(pH 7.0)を100 mM リン酸バッファー(pH 8.0)に変更した反応液(1 mM X-Gluc、0.5 mM フェリシアン化カリウム、0.5 mM フェロシアン化カリウム、100 mM リン酸バッファー(pH8.0))を使用した。赤熟果実は上記反応液を用いてもバックグラウンドのシグナルが検出されたことから、さらにバックグラウンドを減らすべく、赤熟果実についてはKosugiらの方法(Plant Sci., 70:133-140, 1990)に従って終濃度で20%のメタノールを加えた上記反応液を用いた染色も行った。染色は、上記反応液に形質転換トマトから採取した各組織を浸し、15分間減圧して染色液を組織に浸透させ、37℃で、一晩(16時間)、又は6時間(20%メタノールを加えた反応液のみ)インキュベートすることにより行った。インキュベート後、70%エタノールでサンプルを洗浄することにより反応を停止させた。
その結果の例を図3に示す。図3Aは、50 mM リン酸バッファー(pH 7.0)を100 mM リン酸バッファー(pH 8.0)に変更した反応液に一晩浸漬した形質転換体組織の染色結果を示す。図3Bは、20%メタノールを加えた反応液に6時間浸漬した形質転換体の赤熟果実の染色結果を示す。
図3に示すように、試験した3つのプロモーターのうち、LA22CD07及びLesAffx.6852.1.S1_atのプロモーターは形質転換体において活性を有し、両プロモーターについて特に果実で強いGUS染色が観察された。LA22CD07のプロモーターでは、緑熟果実及び赤熟果実で強い染色が、花で弱い染色が観察されたが、他の組織(葉及び根)では染色は認められなかった。LesAffx.6852.1.S1_at のプロモーターについても、緑熟果実及び赤熟果実で強い染色が観察されたが、花ではLA22CD07の場合よりも弱い染色が観察され、他の組織(葉及び根)では染色は認められなかった。Les.3122.2.A1のプロモーターでは、試験した全ての組織でGUS染色が観察されなかった。
これに対し35Sプロモーターについては、試験した全ての組織でGUS染色が観察された。また野生型個体(非形質転換体)では緑熟果実、花、葉、及び茎におけるGUS染色は観察されなかった。一方、図3Aに示すように、赤熟果実では野生型個体でも染色が観察され、バックグラウンドシグナル(非特異的染色)が高いことが示されたことから、バックグラウンドシグナルを低下させるために20%メタノールを加えた反応液を用いてGUS染色が行われた(図3B)。図3Bに示す通り、本染色では、野生型個体の赤熟果実では殆ど染色が観察されなかったのに対し、LesAffx.6852.1.S1_at、LA22CD07のプロモーター及び35Sプロモーターでは赤熟果実において染色が観察された。
したがって、2つの遺伝子LesAffx.6852.1.S1_at及びLA22CD07のそれぞれのプロモーターが、赤熟果実に加えて緑熟果実において、強力に遺伝子発現を誘導し、強いプロモーター活性を有していることが示された。またLesAffx.6852.1.S1_at及びLA22CD07のプロモーターは、花において活性を弱く有していることも示された。
以上の結果から、果実の発達後期でのみ機能する従来の植物プロモーターE8とは異なり、LA22CD07及びLesAffx.6852.1.S1_atのプロモーターは、赤熟果実だけでなく、果実発達の初期段階にある緑熟果実においても機能することが明らかとなった。さらに、花でも発現が確認されたことから、花から緑熟果実までの果実発達の最も早期の段階から機能を発揮し始めることも明らかになった。
さらに、LesAffx.6852.1.S1_at及びLA22CD07に対応するcDNA配列についてBLASTN検索を行った。その結果、トマト以外の様々な植物(ワタ(Gossypium hirsutum)など)のホモログ遺伝子がヒットした。このことは、LesAffx.6852.1.S1_at及びLA22CD07のプロモーターが他の植物種の果実でも同様に機能し得ることを示していた。
本発明のプロモーターは、従来のE8プロモーター等と異なり、例えばトマトの赤熟果実だけでなく緑熟果実においても強い発現誘導活性を有する。このため、従来の果実特異的プロモーターの問題点であった発達後期しか機能しないという点を克服でき、果実の発達段階に関係なく外来遺伝子の発現誘導に好適に利用することができる。例えば発達初期段階に当たる緑熟期から外来遺伝子の発現を誘導することにより、植物体でのタンパク質組換え生産に要する期間の短縮や、より長期間にわたる組換え生産も可能になる。本発明のプロモーターは、例えばトマトの赤熟果実よりも緑熟果実からの精製が容易なタンパク質の製造等においても有用である。本発明のプロモーターはまた、例えば葉や茎などで発現させると植物に悪影響を引き起こすタンパク質を、その悪影響を回避しながら果実で高発現させることもできる。
配列番号1:LA22CD07プロモーター
配列番号2:LesAffx.6852.1.S1_atプロモーター
配列番号3〜36:プライマー

Claims (8)

  1. 配列番号1又は2で示される塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ緑熟果実においてプロモーター活性を有する果実特異的プロモーターDNA。
  2. 請求項に記載の果実特異的プロモーターDNAを含む、発現ベクター。
  3. 前記果実特異的プロモーターDNAの下流に連結された遺伝子をさらに含む、請求項に記載の発現ベクター。
  4. 請求項に記載の果実特異的プロモーターDNAとその下流に連結された遺伝子とを含む、DNA構築物。
  5. 請求項若しくはに記載の発現ベクター又は請求項に記載のDNA構築物を含む、形質転換細胞。
  6. 請求項に記載の発現ベクター又は請求項に記載のDNA構築物を導入した、形質転換植物。
  7. 請求項に記載の発現ベクター又は請求項に記載のDNA構築物を植物細胞に導入し、形質転換植物を育成して果実を形成させ、果実中の前記遺伝子の発現を確認することを含む、形質転換植物の作製方法。
  8. 請求項に記載の形質転換植物を育成して果実を形成させ、発現された遺伝子産物を果実から取得することを含む、遺伝子産物の組換え生産方法。
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