以下、実施形態に係るワイヤーハーネス配索装置20について説明する(図1〜図3参照)。ワイヤーハーネス配索装置20は、自動車10において、ワイヤーハーネス1を車体12とスライドドア14との間に配索するための構成である。
<適用対象>
説明の便宜上、まず、ワイヤーハーネス配索装置20の適用対象である自動車10の車体12とスライドドア14との関係について説明する。
自動車10は、車体12と車体12の一側部に設けられたスライドドア14とを備えている。この車体12の一側部には、人が車体12内部に対して乗降可能な乗車口13が設けられている。そして、スライドドア14は、図示省略のガイドレールを含むスライド支持機構部によって、乗車口13を閉じる閉位置P1と、乗車口13を開放させる開位置P2との間で移動可能に支持されている(図1、図2参照)。
より具体的には、スライドドア14は、主として車体12の前後方向に移動することにより、閉位置P1と該閉位置P1より車体12後方側の開位置P2との間で移動可能とされている。このスライドドア14は、閉位置P1から開位置P2への移動に伴って、車体12との干渉を避けるために、車体12の幅方向外側にも移動する。この際、スライドドア14は、車体12の幅方向において、下端部の移動量が上端部の移動量より大きくなるように設定されている。このため、スライドドア14の下端部は、スライドドア14が閉位置P1にある状態より開位置P2にある状態の方が、上端部に対して相対的に上方に位置するようになっている。また、スライドドア14は、全体として、車体12の上下方向において閉位置P1より開位置P2の方が上方に位置するように設定されることもある。
ここでは、図1に示されるように、車体12の左側に設けられたスライドドア14を対象として説明する。
<ワイヤーハーネス>
配索対象であるワイヤーハーネス1は、自動車10のスライドドア14に搭載される電気機器に対して常時給電又は信号伝達するための複数の電線が、結束されて配索形態に形成されたドア配索用ワイヤーハーネスである。スライドドア14に配索される電気機器としては、パワーウインドウ、ドアロック、操作スイッチ等がある。このワイヤーハーネス1における車体12からスライドドア14に架け渡される部分は、複数の電線が1本に結束されて構成されている。そして、ワイヤーハーネス1は、スライドドア14内で分岐されて各種電気機器に接続される。
<ワイヤーハーネス配索装置>
ワイヤーハーネス配索装置20は、上記ワイヤーハーネス1と、連鎖状リンク部30と、車体側支持部40と、ドア側支持部50とを備えている(図3参照)。
連鎖状リンク部30は、ワイヤーハーネス1を、主として一平面上で曲げ変形されるようにガイドする部分である。この連鎖状リンク部30は、自身が一平面上で曲げ変形可能に形成され、内部にワイヤーハーネス1が挿通されることにより、ワイヤーハーネス1をガイドする。
より具体的には、連鎖状リンク部30は、複数のリンク部材32(後述するドア側リンク部材33を含む)が各連結軸周りに回転可能に鎖状に連結されて構成されている(図4、図5参照)。連鎖状リンク部30は、基本的に連結軸方向には曲げ変形されないが、連結軸方向に外力が作用した場合、僅かに撓んで連結軸方向に曲げ変形されることもある。
リンク部材32は、内側にワイヤーハーネス1を挿通可能な略直線状の内部空間を有している。ここで、リンク部材32それぞれにおいて、ワイヤーハーネス1が挿通される内部空間の延在方向を挿通方向と称する。そして、複数のリンク部材32が鎖状に(直列に)連結されることにより、複数のリンク部材32の各内部空間が連通して線状に延びるワイヤーハーネス1挿通用の空間が形成される。この連鎖状リンク部30は、ケーブルベア(登録商標)とも呼ばれる。
ここでは、リンク部材32は、挿通方向に沿って長尺な一対の壁部が間隔をあけて対向する形態で設けられ、挿通方向における中間部分が枠状に形成された形状に形成されている。また、リンク部材32は、一対の壁部のうち、中間部分から挿通方向一方側に延出する一方(車体12側)の連結部に一対の壁部を結ぶ方向に貫通する連結用凹部が形成され、中間部分から他方側に延出する他方(スライドドア14側)の連結部に他のリンク部材32の連結用凹部内に突出する連結用凸部が形成されている形状である。そして、一のリンク部材32の連結用凸部が他のリンク部材32連結用凹部に挿入された状態で、リンク部材32同士が連結軸周りに相対回転可能に連結される。ここで、連結軸は、連結用凸部の突起方向及び連結用凹部の深さ方向に沿って、連結用凸部及び連結用凹部の中心を通る仮想軸である。
この連鎖状リンク部30は、連結された複数のリンク部材32に対して傷付き防止用に外装される角筒状のグロメット、コルゲートチューブ等の保護材38を有していることもある(図4参照)。
連鎖状リンク部30は、延在方向両端部がそれぞれ車体12及びスライドドア14に配置される各支持部に対して支持されることにより、スライドドア14の開閉動作に伴って、主として自動車10の前後方向及び左右方向に沿った仮想平面上で曲げ変形されるように車体12とスライドドア14との間に架け渡されている。前記仮想平面は、概略的には、車体12側の支持部の位置とスライドドア14側の支持部の移動経路とを含む平面である。
本ワイヤーハーネス配索装置20では、連鎖状リンク部30は、車体12及びスライドドア14の少なくとも一方に配置された回転支持部により、車体12側及びスライドドア14側の少なくとも一方の端部が支持されている。ここでは、連鎖状リンク部30の車体12側の端部が車体12に配置された車体側支持部40に支持され、スライドドア14側の端部がスライドドア14に配置された前記回転支持部としてのドア側支持部50に支持される例で説明する。
車体側支持部40は、連鎖状リンク部30における車体12側の端部に位置するリンク部材32が末端連結軸周りに回転可能に連結される(又は回転不能に固定される)ことにより、連鎖状リンク部30の車体12側の端部を支持する部分である。前記末端連結軸は、連鎖状リンク部30における各リンク部材32同士の連結部分における連結軸と平行に設定されている。この車体側支持部40は、車体12に対して直接的又は間接的にネジ止め等により取り付けられている。また、車体側支持部40は、連鎖状リンク部30内に挿通されているワイヤーハーネス1を車体12内の配索経路に案内する案内空間を有するように形成されている。そして、車体12内に案内されるワイヤーハーネス1は、車体12側の各種電装品或いはこれに接続されたケーブルに対して電気的に接続される。
ドア側支持部50は、連鎖状リンク部30を回転軸A周りに回転可能且つ上下方向に首振り動作可能に支持する部分である。このドア側支持部50は、可動支持部60と、支持本体部70とを有している(図4〜図6参照)。
可動支持部60は、連鎖状リンク部30が連結され、支持本体部70に対して回転軸A周りに回転可能且つ回転軸Aに沿った方向に首振り可能に支持される部分である。また、可動支持部60は、連鎖状リンク部30の内部に挿通されたワイヤーハーネス1が挿通される内部空間を有している。この可動支持部60は、支持連結部62と被支持部64とを有し、この支持連結部62と被支持部64とが一方向に沿って連続して形成された構成である。
支持連結部62は、連鎖状リンク部30におけるスライドドア14側の端部に位置するリンク部材32(以下、ドア側リンク部材33)が末端連結軸周りに回転可能に連結される部分である。前記末端連結軸は、可動支持部60の回転軸Aと平行に設定され、後述する捻れ構造部の捻れ状態を除いて連鎖状リンク部30における各リンク部材32(ドア側リンク部材33を含む)同士の連結部分における連結軸と略平行に設定されている。この支持連結部62は、角筒状に形成され、その内部空間に連鎖状リンク部30に挿通されたワイヤーハーネス1を挿通可能である。連鎖状リンク部30側で開口する開口部を挿入口部63という。ここで、支持連結部62では、支持連結部62と被支持部64とを結ぶ方向にワイヤーハーネス1が挿通されるため、この方向を支持連結部62の挿通方向という。
被支持部64は、支持連結部62の基端部に連続し、支持本体部70に直接支持される部分である。この被支持部64は、支持連結部62の内部空間と連通する内部空間を有し、挿入口部63の開口方向に直交する方向(ドア側リンク部材33と支持連結部62との連結部分における末端連結軸に平行な方向)に開口している。この開口部を引出口部65という。被支持部64は、一対の被支持凸部66と、被規制突部68とを有している。
一対の被支持凸部66は、被支持部64において、ドア側リンク部材33と支持連結部62との連結部分における末端連結軸に平行な方向の両端部に形成されている。より具体的には、一対の被支持凸部66は、一つの仮想球面上において中心点を挟んで対向する位置に形成され、それぞれ該仮想球面上に延在する被支持面67を有している。この一対の被支持面67は、それぞれ、外周側を向く平面視円環状の部分的な球面である。もっとも、被支持部64は、全体として略球状の枠体に形成されていてもよい。
被規制突部68は、引出口部65とは逆側に向けて突出する略円柱形状に形成されている。この被規制突部68は、後述する規制穴部78により移動規制されることにより、支持本体部70に支持される可動支持部60の首振り動作を予め設定された範囲で規制するための部分である。
上記一対の被支持面67のうち、一方の被支持面67は引出口部65の開口縁部に沿ってその外周部に形成され、他方の被支持面67は被規制突部68の基端部の周縁部に沿ってその外周部に形成されている。
支持本体部70は、可動支持部60を支持する部分である。より具体的には、支持本体部70は、可動支持部60を、支持連結部62が回転軸A周りに回転可能で且つ回転軸Aに略平行な方向に首振り可能に支持するように構成されている。なお、可動支持部60における回転軸Aは、後述する一対の支持面77(支持凹部76)の各中心を通る仮想軸である。
この支持本体部70は、スライドドア14に対して直接的或いは間接的に(例えば、スライドドア14内に設けられる図示省略のガイドレールに沿って移動可能な部材に対して)ネジ止め等により取り付けられている。なお、支持本体部70(ドア側支持部50)は、車体側支持部40との関係では、スライドドア14が閉位置P1にある状態で車体側支持部40より前方に位置し、開状態で車体側支持部40より後方に位置するものとする。支持本体部70は、凹部72と、引出案内部74と、一対の支持凹部76と、規制穴部78とを有している。
凹部72は、可動支持部60の被支持部64を配設可能な内部空間を有する凹状の部分である。この凹部72は、2方向において連続して開口するように形成され、この開口範囲で可動支持部60を動作可能にしている。支持本体部70(ドア側支持部50)は、凹部72が自動車10の前方側及び車内側(図6の左側及び下側)に向けて開口する姿勢で、スライドドア14に配置されている。
一対の支持凹部76は、それぞれ凹部72において(図4、図5の上下方向において)対向する一対の壁部で(自動車10の上下方向において)凹部72内に開口する凹状に形成されている部分である。より具体的には、一対の支持凹部76は、1つの仮想球面上の対向する位置に形成され、それぞれ該仮想球面上に沿って延在する支持面77を有している。前記仮想球は、被支持面67が延在する仮想球より僅かに大きい。この一対の支持面77は、それぞれ、内周側を向く平面視円環状の部分的な球面である。
そして、凹部72内に可動支持部60の被支持部64が配設された状態で、一対の被支持面67が一対の支持面77にそれぞれ接触する形態で、一対の支持凹部76内に一対の被支持凸部66がそれぞれ配設される。
上記一対の支持面77のうち、一方の支持面77は後述する引出案内部74の凹部72側の開口縁部に沿ってその外周部に形成され、他方の支持面77は後述する規制穴部78の開口縁部に沿ってその外周部に形成されている。
引出案内部74は、支持本体部70に支持される可動支持部60の引出口部65から延出するワイヤーハーネス1を、スライドドア14内に引き出す経路に案内する部分である。この引出案内部74は、一対の支持面77のうち一方の支持面77の中心位置で凹部72内に開口する略筒状に形成されている。引出案内部74は、電装品が配置される向きに向けて、直線状に又は屈曲して或いは湾曲して(ここでは直線状に)延在している。この引出案内部74の凹部72側の開口は、可動支持部60の引出口部65より大径に設定されている。そして、引出案内部74によりスライドドア14内に案内されるワイヤーハーネス1は、スライドドア14内に搭載されている各種電装品又はこれに接続されたケーブルに対して電気的に接続される。
規制穴部78は、支持連結部62が首振りすることによる可動支持部60の姿勢変更(首振り動作)を規制する部分である。この規制穴部78は、一対の支持面77のうち他方の支持面77の中心位置で凹部72内に略円形に開口する穴状に形成されている。より具体的には、規制穴部78は、凹部72から離間する向きに(下側に向けて)徐々に径が大きくなるように形成されている。そして、規制穴部78は、凹部72内に配設された被支持部64の被規制突部68が内部に配設された状態で、内周面が被規制突部68の外周面に接触することにより可動支持部60の首振り動作を規制する。
規制穴部78による可動支持部60の首振り動作の規制範囲は、スライドドア14の閉位置P1及び開位置P2における車体側支持部40とドア側支持部50との高低差、スライドドア14の車体12に対する傾き等に基づいて決定されるとよい。
可動支持部60が支持本体部70に支持された状態で、可動支持部60は、支持本体部70に対して3次元的に姿勢変更、すなわち、回転軸A周りの回転動作及び回転軸Aに沿った方向における首振り動作が可能となる。ここで、首振り動作とは、回転軸Aに直交する軸周りの姿勢変更動作であり、被規制突部68が規制穴部78により移動規制されることによって可動支持部60の前記回転軸Aに直交する軸周りの姿勢変更動作が一定範囲内に制限され、近似的に回転軸Aに沿った方向の移動にみなされる動作である。
また、連鎖状リンク部30における複数のリンク部材32(ドア側リンク部材33を含む)同士の連結部分、及び、ドア側リンク部材33とドア側支持部50の可動支持部60との連結部分の少なくとも一つの連結部分は、捻れ構造部を有している。捻れ構造部は、連結軸又は末端連結軸周りに相対回転可能に連結される一対の捻れ連結部を有する部分である。ここでは、ドア側リンク部材33とドア側支持部50の可動支持部60との連結部分が、捻れ構造部を有している(図7参照)。すなわち、捻れ構造部は、ドア側リンク部材33におけるスライドドア14側の連結部である末端連結部34(一方の捻れ連結部)と、可動支持部60における支持連結部62(他方の捻れ連結部)とを有する。なお、ドア側リンク部材33は、連鎖状リンク部30の延在方向において、スライドドア14側に末端連結部34を有し、車体12側が他のリンク部材32と同様の形状に形成されている。
この捻れ構造部は、末端連結部34及び支持連結部52が、末端連結軸に直交する平面において端末連結部34における挿通方向Sに直交する方向に対して傾斜して延在する捻れ軸T周りにも相対回転可能に構成されている。ここでは、捻れ軸Tは、末端連結部34における挿通方向Sに対して傾斜する姿勢に設定されている。換言すると、捻れ構造部は、末端連結軸周りに回転可能、且つ、少なくとも末端連結部34の挿通方向S周りに回転可能で、ここではドア側リンク部材33の車体12側端部が上下方向に移動する態様で姿勢変更可能に構成されている。図面では、挿通方向Sに沿った軸を二点鎖線で示し、これに符号を付している。以下、捻れ構造部の構成について、より具体的に説明する。
末端連結部34は、捻れ軸Tに対する周方向に沿って長尺な長穴部342を有している(図8〜図12参照)。この末端連結部34は、挿通方向Sに沿った軸に対する周方向に沿った対向する一対の弧状部を有している。ここでは、末端連結部34は、中心軸を挟んで一対の弧状部を有する円筒形状に形成されている。そして、一対の長穴部342は、一対の弧状部にそれぞれ形成され、末端連結部34の挿通方向Sに沿った軸に対する周方向に沿って形成されている。この一対の長穴部342は、挿通方向Sに沿った軸に対する周方向に沿った底面を有している。ここでは、長穴部342は、端末連結部34の外周部で外周側に開口する凹形状に形成されている。
また、支持連結部62は、ドア側リンク部材33と可動支持部60とが連結された状態で、長穴部342内に末端連結軸に沿って突出して該長穴部342の長尺方向に相対移動可能な軸部622を有している(図5、図12参照)。この支持連結部62は、ドア側リンク部材33との末端連結軸に沿った方向に対向する一対の壁部を有している。この一対の壁部は、末端連結部34を配設可能に、末端連結部34の外径より僅かに大きい間隔をあけて設けられている。すなわち、支持連結部62は、その内側で末端連結部34が一対の壁部を結ぶ方向(上下方向)において僅かに傾いて姿勢変更することができるように設定されている。そして、一対の軸部622は、一対の壁部から、それぞれ支持連結部62の内側に向けて突出する略円柱形状に形成されている。ここでは、一対の軸部622は、互いに中心軸を一致させる位置に設けられている。また、一対の軸部622の先端部同士の間隔は、末端連結部34の一対の長穴部342の底部同士を結ぶ方向の寸法と同じかそれより僅かに大きく設定されている。すなわち、ドア側リンク部材33は、一対の軸部622が一対の長穴部342内に配設されてその底面を挟んだ状態で、可動支持部60に対して末端連結軸及び捻れ軸T周りに相対回転可能に支持される。
また、支持連結部62は、ドア側リンク部材33が可動支持部60に対して末端連結軸周りに相対回転する際に、末端連結部34のスライドドア14側端部を動作可能に収容するための幅広部624を有している(図9、図10参照)。幅広部624は、支持連結部62の挿通方向における一部分に設けられている。この幅広部624は、支持連結部62における一対の壁部を結ぶ方向に沿った一対の側壁部が外側に張り出す形状に形成されることにより構成され、挿通方向における他の部位より幅広な内部空間を有している。
そして、末端連結部34におけるスライドドア14側の部分が支持連結部62の内部に配設された状態で、一対の軸部622が一対の長穴部342内に配設される。この状態で連鎖状リンク部30が曲げ変形されると、ドア側リンク部材33は、可動支持部60に対して、末端連結軸としての一対の軸部622の中心軸周りに相対回転される(図9、図10参照)。この際、末端連結部34のスライドドア14側端部が部分的に幅広部624における側方に張り出した部分の内部空間に進入する。
また、ドア側リンク部材33が可動支持部60に対して捻れ軸T周りに相対回転すると、一対の軸部622が一対の長穴部342内をそれぞれ長尺方向に相対移動する。ここで、一対の長穴部342は、連鎖状リンク部30に対して上下方向の外力が作用しやすいワイヤーハーネス配索装置20の姿勢において、外力を吸収し易い捻れ動作を行えるように設定されるとよい。すなわち、外力を吸収しやすい捻れ動作とは、連鎖状リンク部30において外力が作用した部分が、支点となるドア側支持部50に対して回転及び移動して外力を吸収するように、ドア側リンク部材33と可動支持部60との連結部分が有する捻れ構造部を中心として外力が作用した部分から連結部分までの部分が捻れ軸T周りに回転する捻れ動作である。
ここでは、スライドドア14が開位置P2にある状態で、連鎖状リンク部30における乗降口13の内側で露出される部分(中間部分の車体12寄りの部分)に対して下方に向けて作用する外力を吸収する構成について説明する。スライドドア14が開位置P2にある状態で、可動支持部60は自動車10の前方側且つ車内側に向かう回転姿勢となる(図6参照)。また、ドア側リンク部材33も、可動支持部60に対して平面視時計回りに回転した(自動車10の前方側且つ車内側に向かう)姿勢となる。
長穴部342は、連鎖状リンク部30の中間部分の車体12寄りの部分に下方に向かう外力が加えられたときに、ドア側リンク部材33における自動車10の前方側の部位が下方に移動するように捻れ軸T周りに回転可能に形成されている。この長穴部342は、スライドドア14が開位置P2にある状態で、一対の軸部622が、ドア側リンク部材33が末端連結軸周りに相対回転する際の位置から連鎖状リンク部30の中間部分が下方に移動する際に相対移動する向きに延在する形状に形成されている。より具体的には、長穴部342は、リンク部材32同士の連結軸と、ドア側リンク部材33と可動支持部60との末端連結軸とが平行な姿勢で、一対の軸部622が配設される位置から、捻れ軸T方向車体12側から見て反時計回りに延在するように形成されている。これにより、ドア側リンク部材33は、捻れ軸T方向車体12側から見て時計回りに回転可能であり、自動車10の前方側の部位が下方に下がった姿勢に姿勢変更可能である。一方、リンク部材32同士の連結軸と、ドア側リンク部材33と可動支持部60との末端連結軸とが平行な姿勢では、一対の軸部622が一対の長穴部342の内周部に当接するため、ドア側リンク部材33は捻れ軸T方向車体12側から見て反時計回りには回転不能となっている。
ここでは、連鎖状リンク部30に対して下方に向かう外力が作用した際に、よりドア側リンク部材33における自動車10の前方側の部位が下方に移動するように、捻れ軸Tの姿勢が設定されている。すなわち、捻れ軸Tは、スライドドア14が開位置P2にある状態で、連鎖状リンク部30における中間部分が下方に移動する際にドア側リンク部材33の車体12側の端部が下方に傾く姿勢に設定されている。換言すると、捻れ軸Tは、スライドドア14が開位置P2にある状態で、ドア側リンク部材33に対してその車体12側で連鎖状リンク部30の中間部分が曲げられて車体12の前方側に延在しているのとは反対側(後方側)で、末端連結部34の挿通方向Sと挿通方向Sに直交する方向との間の範囲において、挿通方向Sと挿通方向Sに直交する方向とに傾斜する姿勢に設定されている。
より具体的には、この捻れ軸Tの姿勢は、平面視において、ドア側リンク部材33の挿通方向Sに対して時計回りに傾斜する姿勢である。換言すると、一方の長穴部342は、挿通方向Sの車体12側から見て反時計回りにスライドドア14側に傾斜する形状に形成され、他方の長穴部342は、反時計回りに車体12側に傾斜する形状に形成されている。これにより、ドア側リンク部材33は、自動車10の前方側に位置する挿通方向S車体側の部位が下方に移動するように姿勢変更する。
そして、ドア側リンク部材33が可動支持部60に対して捻れ軸T周りに相対回転されると、一対の軸部622は、ドア側リンク部材33の挿通方向Sに沿った軸に対する周方向に沿って、一対の長穴部342内を相対移動する。より具体的には、一対の軸部622は、ドア側リンク部材33とその車体12側に連結されるリンク部材32との連結部分における連結軸、及びドア側リンク部材33と可動支持部60との連結部分における末端連結軸が平行になる姿勢(図9参照)で、一対の長穴部342において捻れ軸T方向車体12側から見て時計回り前方の端部側に位置する。そして、ドア側リンク部材33が可動支持部60に対して車体12側から見て時計回りに捻れ軸T周りに相対回転されると、一対の軸部622は、一対の長穴部342内を車体12側から見て反時計回りに移動する(図12の二点鎖線矢印参照)。
次に、スライドドア14が開位置P2にある状態において、連鎖状リンク部30に対して上下方向(捻れ変形前の複数のリンク部材32同士の連結軸に沿った方向)下方に向かう外力が作用したときのワイヤーハーネス配索装置20の動作について説明する(図3参照)。スライドドア14が開位置P2にある状態では、ドア側支持部50は、車体側支持部40より後方且つ車外側に位置している(図1及び図3参照)。そして、連鎖状リンク部30は、車体側支持部40から車外側に延び出すと共に後方に曲げられて後方に向けて延在し、スライドドア14側の端部寄りの部分でさらに車外側に曲げられてドア側支持部50に向かう緩やかな平面視略S形状を成している。また、ドア側支持部50においては、可動支持部60は、支持連結部62が車内側且つ前方に向かう姿勢となっている(図6の二点鎖線参照)。
連鎖状リンク部30のうち車体側支持部40から後方に向けて曲げられた部位に対して、下方に向けて外力(図3の実線矢印参照)が作用すると、連鎖状リンク部30には、延在方向において車体12側から見て時計回りに回転しようとする捻れ応力が作用する。すなわち、車体側支持部40に対して車外側が下方に移動しようとするため、連鎖状リンク部30のうち車体側支持部40から後方に向けて延在する部分には、前方から見て時計回りに回転しようとする捻れ応力が作用する。また、ドア側支持部50に対して前方側が下方に移動しようとするため、連鎖状リンク部30のうちドア側支持部50寄りの部分には、車体12側から見て時計回りに回転しようとする捻れ応力が作用する(図3の二点鎖線矢印参照)。
すると、捻れ構造部を有するドア側リンク部材33と可動支持部60との連結部分では、ドア側リンク部材33(末端連結部34)が、可動支持部60(支持連結部62)に対して捻れ軸T周りに相対回転する。すなわち、一対の軸部622は、一対の長穴部342内を車体12側から見て反時計回りに移動する(図12参照)。
これにより、連鎖状リンク部30のうち外力が作用した部位よりスライドドア14側の部分は、捻れ軸T周りに車体12側から見て時計回りに回転した状態となる(図13参照)。そして、連鎖状リンク部30において外力が作用した部位の周りの部分は、下方に移動した状態となる。すなわち、捻れ構造部を有するドア側リンク部材33と可動支持部60との連結部分において、外力を捻れ方向の回転動作により吸収している。もっとも、連鎖状リンク部30の連結軸方向の僅かな撓みによっても、部分的に外力が吸収されている。
上記のように外力を吸収した開状態から、スライドドア14が閉操作されると、ドア側リンク部材33は、その車体12側のリンク部材32との連結部分における連結軸と、ドア側リンク部材33と可動支持部60との連結部分における末端連結軸とが平行になる姿勢に戻る。
より具体的には、連鎖状リンク部30は、主として複数のリンク部材32同士の各連結軸に直交する平面上で曲げ変形可能である。すなわち、ドア側リンク部材33が捻れ軸T周りに回転した状態(捻れた状態)においては、複数のリンク部材32(ドア側リンク部材33を含む)同士の連結部分における各連結軸と、ドア側リンク部材33と可動支持部60との連結部分における末端連結軸である一対の軸部622の中心軸とが平行でない姿勢になっている。このため、連鎖状リンク部30が曲げ変形され始めると、ドア側リンク部材33と可動支持部60との連結部分も他の連結軸と平行な軸周りに相対回転しようとする。しかしながら、ドア側リンク部材33が前記連結軸と平行な(一対の軸部622の中心軸と平行でない)軸周りに回転しようとしても、末端連結部34が一対の軸部622が設けられた一対の壁部に当接した状態にあり、前記軸周りの回転における一対の軸部622を結ぶ方向の動作が規制される。これにより、ドア側リンク部材33は、末端連結部34(ドア側連結部33)が一対の軸部622の中心軸周りの回転動作可能な姿勢に姿勢変更するように、捻れ軸T周りにおいて捻れ軸T方向車体12側から見て反時計回りに回転する。すなわち、一対の軸部622が、一対の長穴部342内を、捻れ軸T方向車体12側から見て時計回りに相対移動する。
また、ドア側リンク部材33が捻れ状態から復帰する動作では、連鎖状リンク部30の曲げ動作においてドア側リンク部材33の車体12側部分が他のリンク部材32により自動車10の後方に押される。ここで、自動車10の前方に向けて下方に下がった状態の連鎖状リンク部30(図14参照)においては、ドア側リンク部材33に対して後方に向けて斜め上方に向かう力が作用する。そして、この力は、捻れ軸T周りにおいて、捻れ軸T方向車体12側から見て反時計回りの力として作用する。
これにより、ドア側リンク部材33は、可動支持部60に対して一対の軸部622の中心軸周りに相対回転する。そして、連鎖状リンク部30は、車体側支持部40の位置とドア側支持部50の移動経路を含む平面上に延在し、スライドドア14の動作に伴って該平面上で曲げ変形される。
これまで、ワイヤーハーネス配索装置20について、ドア側支持部50が連鎖状リンク部30をスライドドア14側の端部で支持する例で説明したが、この構成に限られるものではない。例えば、ワイヤーハーネス配索装置は、ドア側支持部50と同様構成の支持部が、連鎖状リンク部30を車体12側の端部で支持するように設けられた構成、又は、連鎖状リンク部30を両端部で支持するように設けられた構成であってもよい。
また、捻れ軸Tは、末端連結部34の挿通方向Sに対して傾斜する姿勢に設定されている場合に限らず、該挿通方向Sに沿った姿勢に設定されていてもよい。すなわち、長穴部342は、末端連結部34の中心軸に対する周方向に沿って形成されていてもよい。
また、捻れ構造部は、上記構成に限られず、ドア側リンク部材33が可動支持部60に対して末端連結軸周りに相対回転可能で且つ捻れ軸T周りにも相対回転可能となるように構成されていればよく、このような作用を得られる種々の構成を採用することができる。例えば、捻れ構造部は、筒状の回転支持体に対してその中心軸周りに回転可能に末端連結部34が支持されると共に、回転支持体が可動支持部60の支持連結部62に対して末端連結軸周りに回転可能に連結されることにより、捻れ方向にも回転可能に構成されていてもよい。
また、捻れ構造部は、円筒形状に形成されて外周部から一対の軸部が外周側に向けて突出する支持連結部と、長穴部が形成されて支持連結部が回転可能に配設される内部空間を有する枠形状を有する末端連結部とを有する構成であってもよい。また、捻れ構造部は、可動支持部60の支持連結部に長穴部が形成され、末端連結部34に軸部が形成されてもよい。
また、捻れ構造部は、末端連結部34と支持連結部62とが上記構造とは逆向き又は量方向に回転可能に構成されていてもよい。
また、複数のリンク部材32(ドア側リンク部材33を含む)同士の連結部分が捻れ構造を有する構成であってもよい。また、複数の連結部分が捻れ構造を有している構成であってもよい。
また、これまでワイヤーハーネス配索装置20が車体12の左側に設けられたスライドドア14に適用される例で説明してきたが、言うまでもなく、右側に設けられたスライドドア14に適用されてもよい。この場合、ワイヤーハーネス配索装置20の動作は、自動車10の左右方向において逆になり、捻れ動作も逆になる。
上記構成に係るワイヤーハーネス配索装置20によると、車体12とスライドドア14との間に架け渡されるワイヤーハーネス1が、複数のリンク部材32(ドア側リンク部材33を含む)が各連結軸周りに相対回転可能に鎖状に連結されて形成された連鎖状リンク部30に挿通され、ドア側リンク部材33が末端連結軸周りに相対回転可能に連結された可動支持部60を有するドア側支持部50がスライドドア14に配置されている。そして、ドア側リンク部材33と可動支持部60との連結部分が、末端連結軸周りに相対回転可能に連結される末端連結部34と支持連結部62とを有する捻れ構造部を有し、捻れ構造部は、末端連結部34及び支持連結部62が、末端連結軸に直交する平面において末端連結部34の挿通方向Sに直交する方向に対して傾斜して延在する捻れ軸T周りにも相対回転可能に構成されている。このため、スライドドア14が開位置P2にある状態において、連鎖状リンク部30に対して下方に向かう外力が作用しても、その外力を捻れ構造部を有する連結部分で連鎖状リンク部30の捻れ方向の力として吸収し、下方に向けて作用する外力により各連結部分に掛かる負荷を軽減することができる。これにより、スライドドア14が開位置P2にある状態において、連鎖状リンク部30に対して外部から接触し得る構造を有する自動車10において、各連結部分の機能低下及び破損等を抑制することができる。
また、捻れ軸Tが、末端連結部34の挿通方向Sに対して傾斜する姿勢に設定されているため、ドア側リンク部材33が上下方向にも姿勢変更でき、この姿勢変更による連鎖状リンク部30の上下方向の移動によっても、連鎖状リンク部30に作用する外力を吸収することができる。これにより、上下方向に作用する外力により各連結部分にかかる負荷を、より効果的に軽減することができる。
また、ドア側リンク部材33の末端連結部34が捻れ軸Tに対する周方向に長尺な長穴部342を有し、可動支持部60の支持連結部62が長穴部342内に末端連結軸に沿って突出して該長穴部342の長尺方向に相対移動可能な軸部622を有し、軸部622は、末端連結部34の挿通方向に沿った軸に対する周方向に沿って、長穴部342内を長手方向に相対移動するように構成されている。このため、スライドドア14が開位置P2にある状態において、連鎖状リンク部30に対して下方に向かう外力が作用しても、その外力を捻れ構造部を有する連結部分で軸部622が長穴部342内で移動する方向における連鎖状リンク部30の捻れ方向の力として吸収し、下方に向けて作用する外力により各連結部分に掛かる負荷を軽減することができる。
また、末端連結部34が、挿通方向Sに沿った軸に対する周方向に沿って延在して前記軸を挟んで対向する一対の弧状部を有する円筒形状に形成され、一対の弧状部にそれぞれ長穴部342が形成されている。このため、一対の軸部622が末端連結部34における挿通方向Sに沿った軸に対する周方向に沿って長穴部342内をその長手方向に相対移動し、末端連結部34が捻れ軸T周りにスムーズに相対回転する。
通常、車体12とスライドドア14との間に架け渡されるワイヤーハーネス1が挿通された連鎖状リンク部30のうち、下方に向かう外力が作用する可能性があるのは、スライドドア14が開位置P2にある状態において乗降口の内側で露出される車体12寄り(前方)の部位である。このため、連鎖状リンク部30におけるドア側リンク部材33とドア側支持部50の可動支持部60との連結部分が捻れ構造部を有するため、捻れ構造部が外力の作用点からより離れた箇所に位置し、より小さい捻れ方向の変形によって下方に向けて作用する外力を吸収することができる。これにより、各連結部分に掛かる負荷をより効果的に軽減することができる。
また、末端連結部34の一対の長穴部342は、スライドドア14が開位置P2にある状態で、支持連結部62の一対の軸部622が、ドア側リンク部材33が末端連結軸周りに相対回転する際の位置から連鎖状リンク部30の中間部分が下方に移動する際に相対移動する向きに延在する形状に形成されている。このため、スライドドア14が開位置P2にある状態で、連鎖状リンク部30の中間部分に対して下方に向かう外力が作用しても、ドア側リンク部材33が可動支持部60に対して捻れ軸T周りに相対回転することにより、連鎖状リンク部30が前方且つ車外12側に向けて斜め下方に姿勢変更して、外力を吸収することができる。
また、捻れ軸Tは、スライドドア14が開位置P2にある状態で、連鎖状リンク部30における中間部分が下方に移動する際にドア側リンク部材33の車体12側の端部が下方に傾く姿勢に設定されている。すなわち、捻れ軸Tは、スライドドア14が開位置P2にある状態で、ドア側リンク部材33に対してその車体12側で連鎖状リンク部30の中間部分が曲げられて延在する車体12の前方側とは反対側(後方側)で、末端連結部34の挿通方向Sと挿通方向Sに直交する方向との間の範囲において、挿通方向Sと挿通方向Sに直交する方向とに傾斜する姿勢に設定されている。このため、スライドドア14が開位置P2にある状態において、連鎖状リンク部30の延在方向車体12寄りの部位に下方に向かう外力が作用すると、ドア側リンク部材33の車体12側端部がより下方に下がり、より効果的に外力を吸収することができる。