JP5817187B2 - 被覆成形品 - Google Patents

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Description

本発明は被覆成形品に関する。詳しくは、難燃性を有する熱可塑性樹脂組成物よりなる基材上に、難燃剤を含有しないスチレン系樹脂組成物からなる被覆層を設けた被覆成形品であって、耐候性と難燃性を両立することが可能な被覆成形品に関する。
従来、難燃性を付与した建材等の構造部材としては、塩化ビニル樹脂や塩化ビニル樹脂にフィラーを充填した組成物や難燃性ABS樹脂組成物などを、異型押出成形、シート成形、射出成形することにより製造した難燃性基材に、更に耐候性に優れた樹脂シートや樹脂フィルムを貼り合わせたものが提案されている(例えば特許文献1,2)。
即ち、一般に塩化ビニル樹脂や塩化ビニル樹脂にフィラーを充填した組成物や難燃性ABS樹脂組成物などの成形品は、耐候性に劣るため、耐候性を担う被覆層を形成する必要がある。
しかしながら、このような難燃性基材に耐候性被覆層を設けたものでは、被覆層に難燃性がないため、燃焼時に表層の被覆層部分が燃え広がり、その炎が内部まで延焼することとなり、結果として難燃性が損なわれる。また、被覆層形成のために耐候性樹脂シートやフィルムを貼り合わせる工程が必要となり、工程数の増加、コストの上昇、不良品率の上昇、更には、貼り合わせのための接着剤に含まれる有機溶剤に起因する環境に対する影響が問題となる。
特開2001-232742号公報 特開2000-94601号公報
本発明は上記従来の実状に鑑みてなされたものであり、耐候性に優れしかも難燃性にも優れるため、建材その他の構造材料として有用であり、しかも、共押出又は二色成形等により容易に一体成形することが可能な被覆成形品を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、被覆材のベース樹脂として耐候性に優れたスチレン系樹脂を用いることにより、耐候性と難燃性とを兼備する優れた一体成形する被覆成形品を実現することができることを見出した。
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 難燃性を有する熱可塑性樹脂組成物よりなる基材上に、難燃剤を含有しないスチレン系樹脂組成物からなる被覆層を設けた被覆成形品であって、該被覆層を構成するスチレン系樹脂はグラフト共重合体とビニル共重合体とで構成され、該スチレン系樹脂において、グラフト共重合体とビニル共重合体との混合割合はこれらの合計量100質量部においてグラフト共重合体:20〜80質量部、ビニル共重合体:80〜20質量部であり、該基材の厚み(Y)と被覆層の厚み(X)が下記関係式を満たすことを特徴とする被覆成形品。
Y≧3.7×(X)+1.0mm
[2] [1]において、前記被覆層は共押出成形により前記基材上に一体成形されていることを特徴とする被覆成形品。
[3] [1]又は[2]において、前記被覆層の厚さが0.1〜0.5mmであることを特徴とする被覆成形品。
本発明の被覆成形品は、良好な耐候性を有するため、建材等の各種構造材などの用途において、この上に更に耐候性付与のための樹脂フィルムや樹脂シートを貼着する必要がない。また、本発明の被覆成形品は難燃性にも優れるため、製品に要求される難燃性を十分に満たすことができる。
しかも、本発明の被覆成形品は、異形押出成形、二色成形、ブロー成形、シート成形、シート成形後の真空成形や圧空成形等により、基材上に容易かつ効率的に被覆層を一体成形にて形成することができるため、製造工程の低減、生産効率の向上、製品歩留り率の向上により、製品のコストダウンを図ることができ、また、従来の樹脂フィルムや樹脂シートの貼着における有機溶剤に起因する問題もない。
このような本発明の被覆成形品は、その優れた耐候性と難燃性から、特に、耐候性と難燃性の両立が要求される外装関係の建材用途や、エクステリア部材等の各種の構造材に有用である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、以下において、「(共)重合」は「重合」と「共重合」の双方を意味する。
[被覆層]
本発明の被覆成形品の被覆層は、難燃剤を含有しないスチレン系樹脂組成物よりなる。
{スチレン系樹脂}
以下に本発明に係る被覆層を構成するスチレン系樹脂組成物の主成分となるスチレン系樹脂について説明する。
本発明に係るスチレン系樹脂は、ゴム質重合体の存在下で、少なくとも芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体を含むビニル単量体混合物を重合してなるグラフト共重合体と、少なくとも芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体を含むビニル単量体混合物を共重合させてなるビニル共重合体とを配合してなることが好ましい。即ち、本発明において、スチレン系樹脂は、好ましくはグラフト共重合体とビニル共重合体とで構成される。
<グラフト共重合体>
本発明に係るグラフト共重合体は、ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体と、必要に応じて用いられるこれらのビニル単量体と共重合可能なビニル単量体(以下「共重合性ビニル単量体」と称す場合がある。)の混合物をグラフト重合してなるものである。
ここで使用されるゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ブタジエンとこれと共重合可能なビニル系単量体との共重合体のような共役ジエン系共重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステルとこれと共重合可能なビニル系単量体との共重合体のようなアクリル酸エステル系共重合体、エチレン−プロピレン又はブテン(好ましくはプロピレン)−非共役ジエン共重合体、ポリオルガノシロキサン系(共)重合体等が挙げられる
耐候性向上の面から、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステルとこれと共重合可能なビニル系単量体との共重合体のようなアクリル酸エステル系共重合体、エチレン−プロピレン又はブテン(好ましくはプロピレン)−非共役ジエン共重合体、ポリオルガノシロキサン系(共)重合体等を用いることがより好ましい。
ここで、ポリブタジエンとしてはシス、トランスなどの構造のものなどを総称し、ブタジエンとこれと共重合可能なビニル系単量体との共重合体のような共役ジエン系共重合体としては、SBR(スチレン−ブタジエン共重合ゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)などが挙げられる。
また、アクリル酸エステル(共)重合体のアクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレートなどが挙げられる。
これらのゴム質重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
ゴム質重合体にグラフトさせるビニル単量体混合物は、少なくとも芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体とを含有し、必要に応じてこれらと共重合可能な共重合性ビニル単量体を含有することができる。
芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−又はp−メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン及びビニルナフタレン等が挙げられる。これらの中でも、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
これらの芳香族ビニル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等を挙げることができ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
共重合性ビニル単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸;メチル(メタ)アクリレート(「(メタ)アクリレート」は「アクリレート及びメタクリレート」を示す)、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のα,β−不飽和カルボン酸エステル類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸無水物類;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミド等のα,β−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物類等を挙げることができ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
本発明に係るグラフト共重合体としては、具体的にはABS(ポリブタジエン−スチレン−アクリロニトリル)樹脂、ASA(アクリルゴム−スチレン−アクリロニトリル)樹脂、AES(エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム−スチレン−アクリロニトリル)樹脂、SAS(ポリオルガノシロキサン系ゴム−スチレン−アクリロニトリル)樹脂が挙げられる。
本発明に係るグラフト共重合体としては、特にゴム質重合体30〜75質量部、好ましくは40〜70質量部の存在下で、少なくともシアン化ビニル単量体及び芳香族ビニル単量体を含むビニル単量体混合物25〜70質量部、好ましくは30〜60質量部をグラフト重合することにより製造したものを用いると(ただし、ゴム質重合体とビニル単量体混合物との合計で100質量部)、得られるスチレン系樹脂のゴム質重合体の含有量を12.5〜30質量%の好適な範囲に調整しやすい。
グラフト共重合体の製造方法としては特に制限はいが、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法を採用することができる。例えば、ゴム質重合体の存在下、ビニル単量体混合物と重合開始剤を添加して乳化重合する方法が挙げられる。また、この乳化重合の際に用いられる重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩又はクメンハイドロパーオキサイド−ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等のレドックス系重合開始剤が挙げられる。
<ビニル共重合体>
本発明に係るビニル共重合体は、芳香族ビニル単量体と、シアン化ビニル単量体と、必要に応じて用いられるこれらの共重合可能な他の共重合性ビニル単量体とを共重合してなるものであり、ビニル共重合体を製造する際に用いる芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及び共重合性ビニル単量体としては、各々前述のグラフト共重合体を製造する際に用いることができる芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及び共重合性ビニル単量体として例示したものが挙げられ、それぞれ、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いてもよい。
ビニル共重合体の製造方法としては特に制限はなく、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法、乳化重合等の公知の方法が挙げられる。
ビニル共重合体の製造に用いる全ビニル単量体中の、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体と、必要に応じて用いられる共重合性ビニル単量体との割合は、芳香族ビニル単量体20〜40質量%、シアン化ビニル単量体60〜80質量%であることがグラフト重合体の分散性の面で好ましい。
また、ビニル共重合体の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン換算値で、50000〜400000、特に100000〜250000であることが押し出し成形性の点で好ましい。
<グラフト共重合体とビニル共重合体との混合割合>
本発明に係る被覆層を構成するスチレン系樹脂において、グラフト共重合体とビニル共重合体との混合割合は、特に制限は無いが、成形性等の向上の面において、これらの合計量100質量部において、各々、次のような割合で含有されることが好ましい。
グラフト共重合体:20〜80質量部、特に30〜60質量部
ビニル共重合体:80〜20質量部、特に70〜40質量部
<ゴム質重合体の含有量>
本発明に係る被覆層を構成するスチレン系樹脂組成物のスチレン系樹脂に占めるゴム質重合体の含有量は12.5〜30質量%であることが好ましく、この範囲内であると、被覆成形品とした際に、被覆層の割れ、剥離が少ないものとなる。
なお、本発明に係る被覆層に用いるスチレン系樹脂組成物は、難燃剤を含有しないことが、耐候性を高めた上で十分な難燃性を得、更には環境汚染を防止する上で重要である。
{無機充填材}
本発明に係る被覆層を構成するスチレン系樹脂組成物には、無機充填材を配合することによって、被覆層の改質や成形性の改良を行うことができる。無機充填材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、中空ガラス、炭素繊維、タルク、マイカ、金属繊維、ワラストナイト、カオリン、硫酸バリウム、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化亜鉛ウィスカー、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカー、ロックフィラー等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
これらの無機充填材のうち、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、タルク、金属繊維、酸化亜鉛ウィスカーが好ましい。また、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状無機充填材の寸法としては、5〜60μmの繊維径と30μm以上の繊維長を有するものが好ましい。
本発明に係るスチレン系樹脂組成物が無機充填材を含有する場合、その含有量が多過ぎても少な過ぎても無機充填材の配合効果を十分得ることができないことから、無機充填材は、スチレン系樹脂組成物中のスチレン系樹脂、即ち、前述のグラフト共重合体とビニル共重合体との合計100質量部に対して、50質量部以下、特に1〜20質量部の割合で用いることが好ましい。
{他の添加剤}
本発明に係る被覆層を構成するスチレン系樹脂組成物には、更に上記の成分の他に、その物性を損なわない範囲において、必要に応じて、樹脂組成物の製造時(混合時)、成形時に用いられる通常の他の添加剤、例えば顔料、染料、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、補強剤等の1種又は2種以上を配合することができる。
また、本発明の目的を損なわない程度に、スチレン系樹脂、即ち、前記グラフト共重合体及びビニル共重合体以外の樹脂及びゴムやエラストマー等が含まれていてもよい。
{製造方法}
本発明に係る被覆層を構成するスチレン系樹脂組成物を製造する方法には特に制限はなく、本発明に係るスチレン系樹脂組成物は、通常行われている方法及び装置を使用して製造することができる。一般的に使用されている方法は、溶融混合法であり、その際に用いる装置の例としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等を挙げることができる。スチレン系樹脂組成物の製造は、回分式又は連続式のいずれで行ってもよく、また、各成分の混合順序にも特に制限はなく、全ての成分が十分に均一に混合されればよい。
このようなスチレン系樹脂組成物は、各種の成形方法に容易に適用することができるため、接着剤を用いることなく、各種の基材に対して容易かつ効率的に被覆層を形成することができる。
[基材]
本発明の被覆成形品は、上述のような被覆層が基材上に形成されたものである。
本発明に係る被覆層は、それ自体優れた耐候性と難燃性を有するものではあるが、製品としての難燃性をより一層高めるために、基材についても十分な難燃性を有するものであることが好ましく、このため、本発明に係る基材は、以下のように、難燃性を有する熱可塑性樹脂組成物で構成される。
本発明の被覆成形品に用いられる基材は、難燃性を有する熱可塑性樹脂組成物よりなり、好ましくは、UL94規格の燃焼試験においてV−0を満たすものであることが好ましい。このようなものとしては、ポリ塩化ビニル(PVC)のように樹脂の構造体にハロゲンを含有する樹脂など自己消火性がある樹脂や、他の熱可塑性樹脂に難燃剤を配合した基材が挙げられる。
基材に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン(PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体(MS)、スチレン・アクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA)、ABS、ASA、AES等のスチレン系樹脂(St系樹脂);ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル系樹脂(Ac系樹脂);ポリカーボネート系樹脂(PC系樹脂);ポリアミド系樹脂(PA系樹脂);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂(PEs系樹脂);(変性)ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE系樹脂)、ポリオキシメチレン系樹脂(POM系樹脂)、ポリスルフォン系樹脂(PSO系樹脂)、ポリアリレート系樹脂(PAr系樹脂)、ポリフェニレン系樹脂(PPS系樹脂)、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(PU系樹脂)等のエンジニアリングプラスチックス;スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、1,2−ポリブタジエン、トランス1,4−ポリイソプレン等の熱可塑性エラストマー(TPE);PC/ABS等のPC系樹脂/St系樹脂アロイ、ポリ塩化ビニル(PVC)/ABS等のPVC系樹脂/St系樹脂アロイ、PA/ABS等のPA系樹脂/St系樹脂アロイ、PA系樹脂/TPEアロイ、PA/PP等のPA系樹脂/ポリオレフィン系樹脂アロイ、PBT系樹脂/TPE、PC/PBT等のPC系樹脂/PEs系樹脂アロイ、ポリオレフィン系樹脂/TPE、PP/PE等のオレフィン系樹脂同士のアロイ、PPE/HIPS、PPE/PBT、PPE/PA等のPPE系樹脂アロイ、PVC/PMMA等のPVC系樹脂/Ac系樹脂アロイ等のポリマーアロイ;硬質、半硬質、軟質塩化ビニル樹脂が挙げられる。
難燃剤としては、例えばリン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤などが挙げられる。
リン系難燃剤としては、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートならびにこれらの縮合物などの縮合リン酸エステルを挙げることができる。市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば大八化学社製PX−200(レゾルシノールビスジキシレニルホスフェート)、PX−201(ハイドロキノンビスジキシレニルホスフェート)、CR−733S(レゾルシノールビスジフェニルホスフェート)、CR−741(ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート)などを挙げることができる。
これらのリン系難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ハロゲン系難燃剤としては、例えばテトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロム化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物などのテトラブロモビスフェノールA誘導体、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモシクロドデカン、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテル、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタンなどの臭素系芳香族化合物、塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロシクロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環状化合物、塩化ビニル樹脂などが挙げられる。この中で、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロム化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物などが好ましく用いられる。
これらの化合物は、目的を達成するために、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
これら難燃剤の配合量は、熱可塑性樹脂組成物中の樹脂自体の難燃性、要求される難燃性によっても異なるが、通常、熱可塑性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して10〜30質量部程度である。
[被覆層の形成]
前述のスチレン系樹脂組成物を用いて、上記基材上に被覆層を形成するためには、基材上にスチレン系樹脂組成物を溶融加工して被覆層を形成する。
本発明に係る被覆層の形成方法としては、異形押出成形、二色成形、ブロー成形、シート成形、及び、シート成形後の真空成形や圧空成形等の各種の溶融樹脂を加工する成形方法を採用できるが、異形押出成形による方法が好ましい。
[被覆層及び基材の厚さ]
本発明に係る被覆成形品において、被覆層の厚さは、過度に薄いと、被覆層を形成したことによる十分な耐候性を得ることができず、過度に厚いと、難燃性が低下する原因となる。
即ち、本発明に係る被覆層は、難燃剤を含有しないスチレン系樹脂組成物よりなり、難燃剤を用いたものに比べると難燃性が大きく劣る傾向にあるため、このような被覆層を厚膜に形成することは好ましくない。
ただし、基材の厚さ(Y)と被覆層の厚さ(X)が下記関係式を満たす時は、難燃性に劣る被覆層を形成しても基材の難燃性を維持し、さらに被覆層により、基材が持ち合わせない耐候性を付与することが可能となる。
Y≧3.7×(X)+1.0
本発明に係る被覆層の厚さ(X)は、被覆層に用いるスチレン系樹脂組成物中の着色などによる隠蔽性によっても異なるが、0.1〜0.5mm程度とすることが好ましい。被覆層の厚さがこの範囲であると、耐候性と難燃性の両立に有利である。
一方、基材は、一般的には難燃剤成分により高い難燃性を確保することができるものであり、基材については、むしろ厚さが厚い方が被覆成形品としての難燃性の向上の面で好ましい。
基材の厚さは、製品としての用途に関係するものであるが、一般的には1.0mm以上であることが好ましい。
なお、基材は何ら薄膜形状のものに限らず、板状、棒状、箱状、その他の異形形状、各種の形状とすることができる。
{用途}
本発明の被覆成形品は、その優れた耐候性及び難燃性から、特に自動車部品、OA機器、住宅関連部品に好適に用いられる。ここで、自動車部品としては、シート成形(その後、真空成形)によるインモールド成形のインストルメントパネル表皮、バックガーニッシュ、異型押出成形によるサイドモールなどが挙げられる。OA機器としては、インモールド成形によるによるプリンターハウジングなどが挙げられる。住宅関連部品としては、異型押出成形によるサッシ部品、カーポート部品、樹脂製の竹垣等のエクステリア部品が挙げられる。
以下、製造例、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下において「部」及び「%」は特に断らない限り質量基準である。
また、以下において、得られた被覆成形品の各評価は、次のようにして測定した値である。
[耐候性]
得られた被覆成形品表面に対してスガ試験機(株)製のキセノンウェザーメーターにて1000時間照射を行い、ミノルタ(株)製ポータブル測色計「CM−508d」を用いて、照射前後のE値からΔE値の測色を行った。
ΔE=3以下を○(耐候性良好)とし、ΔEが3を超えるものを×(耐候性不良)とした。
[燃焼性]
得られた被覆成形品から四角形の板状体を切り出し、被覆層面に対してUL規格の燃焼試験を行い、「V−0」に適合するものを「○(難燃性良好)」、「V−1」に適合するものを「△(難燃性やや良好)」、それ以外を「×(難燃性不良)」とした。
[製造例1:グラフト共重合体Aの製造]
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機及び攪拌装置を備えた反応器内に、イオン交換水200部(ゴム質重合体テックス中の水も含む)、不均化ロジン酸カリウム0.3部(固形分)、硫酸第一鉄七水塩0.01部、ピロリン酸ナトリウム0.2部、及び結晶ブドウ糖0.5部を仕込み、完全に溶解させた後に、ゴム質重合体として重量平均粒子径が320nmポリブタジエンを固形分換算で50部混合した。
反応器内の内容物を攪拌しながら65℃まで昇温させ、ビニル単量体としてアクリロニトリル12.5部、スチレン37.5部と連鎖移動剤であるターシャルドデシルメルカプタン0.5部と重合開始剤であるクメンハイドロパーオキサイド0.25部とを連続的に滴下、供給してグラフト重合させた。その間、反応器内温を65℃に保つようにジャケット温度を制御した。
滴下終了後70℃まで昇温させ、さらに1時間保ってグラフト重合反応を完結させた。冷却後、酸化防止剤(ジラウリルチオジプロピオネート)を添加し、グラフト共重合体のラテックスを得た。
得られたグラフト共重合体ラテックスを、その1倍量の2.5%硫酸水溶液(80℃)中に攪拌下で投入し、さらに90℃で5分間保持して凝固させてグラフト共重合体のスラリーを得た。そして、そのスラリーの水洗と脱水を2度繰り返した後、一晩70℃で静置し、乾燥して乳白色粉末のグラフト共重合体Aを得た。
[製造例2:グラフト共重合体Bの製造]
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器に、
アルケニルコハク酸ジカリウム 0.1部 イオン交換水 195部 アクリル酸n−ブチル 50部 メタクリル酸アリル 0.20部 1,3−ブチレングリコールジメタクリレート
0.1部 ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド 0.1部を仕込んだ。この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、ジャケット部の温度を60℃まで昇温した。内容物温度が45℃となった時点で硫酸第一鉄七水塩
0.00015部 エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.00045部 ロンガリット 0.24部 イオン交換水 5部からなる水溶液を添加して重合を開始して内温を75℃に上昇させた。1時間この温度を維持してアクリル酸エステル系ゴム成分の重合を完結させ、重量平均粒子径が270nmであるアクリル酸エステル系ゴム状重合体ラテックスを得た。その後、
ロンガリット 0.15部 イオン交換水 10部 アルケニルコハク酸ジカリウム 0.9部からなる水溶液を添加し、次いで アクリロニトリル 5部 スチレン 15部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.08部の混合液を1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を1時間保持した後、 硫酸第一鉄七水塩 0.001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.003部 ロンガリット 0.15部 イオン交換水 10部からなる水溶液を添加し、次いで、 アクリロニトリル 7.5部
スチレン 22.5部 t−ブチルハイドロパオキサイド 0.2部 n−オクチルメルカプタン 0.02部からなる混合物を1時間にわたって滴下し、温度80℃の状態を30分間保持した後冷却してグラフト重合体ラテックスを得た。次いで1%硫酸水溶液150部を50℃に加熱し、攪拌下この中へこのグラフト重合体ラテックス100部を徐々に滴下し凝固し、さらに90℃に昇温して5分間保持した。次いで析出物を脱水、洗浄を2度繰り返した後、一晩70℃で静置して乾燥し、乳白色粉末のアクリル酸エステルゴム系グラフト重合体Bを得た。
[製造例3:ビニル共重合体Cの製造]
窒素置換した反応器に純水120部、ポリビニルアルコール0.5部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部、t−ドデシルメルカプタン0.35部、アクリロニトリル27部とスチレン73部とからなる単量体混合物を加え、60℃で5時間加熱後、120℃に昇温し、4時間反応を行った。
この反応液を冷却後、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、ビーズ状の共重合体Cを得た。得られた共重合体Cの質量平均分子量は120000であった。
[実施例1〜41、比較例1〜34]
製造例1〜3で得られたグラフト共重合体A又はグラフト共重合体B、ビニル共重合体C、三酸化アンチモン、臭素系難燃剤(油化シェルエポキシ(株)製、エピコート5203)を表1の配合で混合したものに、滑剤(花王株式会社製 カオーワックス EB−P)0.7部混合し、バンバリーミキサーにより溶融混練してそれぞれペレット化して樹脂組成物I〜IVを得た。各樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
樹脂組成物Iを被覆層用材料として用い、また、基材用材料として樹脂組成物IVを用いて、40mm押出機と25mm押出機の二層成形からなるシート押出機を用いて、様々な被覆層厚さ及び基材厚さの二層押出成形品を成形した。
尚、基材に用いた樹脂組成物IVは、臭素系難燃剤を配合したABS樹脂で、1.5mm厚みでUL規格「V−0」を満たすものである。難燃性ABS樹脂である樹脂組成物III、IVは燃焼性は良いが耐候性がΔE=25、34と非常に悪い。
得られた被覆成形品について、それぞれ耐候性及び難燃性の評価を行い、結果を表2に示した。
Figure 0005817187
Figure 0005817187
[考察]
表2より明らかなように、本発明の要件を満たす被覆成形品は、耐候性と難燃性がいずれも優れている。
このように従来の知見では耐候性と難燃性の高度な両立は不可能であるが、本発明によれば耐候性と難燃性を同時に得ることが可能である。
本発明に係る被覆層及び被覆成形品は、耐候性と難燃性に優れ、自動車内装部品やOA機器、住宅関連、エクステリア部品などに有用である。

Claims (3)

  1. 難燃性を有する熱可塑性樹脂組成物よりなる基材上に、難燃剤を含有しないスチレン系樹脂組成物からなる被覆層を設けた被覆成形品であって、
    該被覆層を構成するスチレン系樹脂はグラフト共重合体とビニル共重合体とで構成され、該スチレン系樹脂において、グラフト共重合体とビニル共重合体との混合割合はこれらの合計量100質量部においてグラフト共重合体:20〜80質量部、ビニル共重合体:80〜20質量部であり、
    該基材の厚み(Y)と被覆層の厚み(X)が下記関係式を満たすことを特徴とする被覆成形品。
    Y≧3.7×(X)+1.0mm
  2. 請求項1において、前記被覆層は共押出成形により前記基材上に一体成形されていることを特徴とする被覆成形品。
  3. 請求項1又は請求項2において、前記被覆層の厚さが0.1〜0.5mmであることを特徴とする被覆成形品。
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