JP5817187B2 - 被覆成形品 - Google Patents
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即ち、一般に塩化ビニル樹脂や塩化ビニル樹脂にフィラーを充填した組成物や難燃性ABS樹脂組成物などの成形品は、耐候性に劣るため、耐候性を担う被覆層を形成する必要がある。
Y≧3.7×(X)+1.0mm
なお、以下において、「(共)重合」は「重合」と「共重合」の双方を意味する。
本発明の被覆成形品の被覆層は、難燃剤を含有しないスチレン系樹脂組成物よりなる。
以下に本発明に係る被覆層を構成するスチレン系樹脂組成物の主成分となるスチレン系樹脂について説明する。
本発明に係るグラフト共重合体は、ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体と、必要に応じて用いられるこれらのビニル単量体と共重合可能なビニル単量体(以下「共重合性ビニル単量体」と称す場合がある。)の混合物をグラフト重合してなるものである。
耐候性向上の面から、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステルとこれと共重合可能なビニル系単量体との共重合体のようなアクリル酸エステル系共重合体、エチレン−プロピレン又はブテン(好ましくはプロピレン)−非共役ジエン共重合体、ポリオルガノシロキサン系(共)重合体等を用いることがより好ましい。
これらの芳香族ビニル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
本発明に係るビニル共重合体は、芳香族ビニル単量体と、シアン化ビニル単量体と、必要に応じて用いられるこれらの共重合可能な他の共重合性ビニル単量体とを共重合してなるものであり、ビニル共重合体を製造する際に用いる芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及び共重合性ビニル単量体としては、各々前述のグラフト共重合体を製造する際に用いることができる芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及び共重合性ビニル単量体として例示したものが挙げられ、それぞれ、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に係る被覆層を構成するスチレン系樹脂において、グラフト共重合体とビニル共重合体との混合割合は、特に制限は無いが、成形性等の向上の面において、これらの合計量100質量部において、各々、次のような割合で含有されることが好ましい。
グラフト共重合体:20〜80質量部、特に30〜60質量部
ビニル共重合体:80〜20質量部、特に70〜40質量部
本発明に係る被覆層を構成するスチレン系樹脂組成物のスチレン系樹脂に占めるゴム質重合体の含有量は12.5〜30質量%であることが好ましく、この範囲内であると、被覆成形品とした際に、被覆層の割れ、剥離が少ないものとなる。
本発明に係る被覆層を構成するスチレン系樹脂組成物には、無機充填材を配合することによって、被覆層の改質や成形性の改良を行うことができる。無機充填材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、中空ガラス、炭素繊維、タルク、マイカ、金属繊維、ワラストナイト、カオリン、硫酸バリウム、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化亜鉛ウィスカー、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカー、ロックフィラー等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
本発明に係る被覆層を構成するスチレン系樹脂組成物には、更に上記の成分の他に、その物性を損なわない範囲において、必要に応じて、樹脂組成物の製造時(混合時)、成形時に用いられる通常の他の添加剤、例えば顔料、染料、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、補強剤等の1種又は2種以上を配合することができる。
また、本発明の目的を損なわない程度に、スチレン系樹脂、即ち、前記グラフト共重合体及びビニル共重合体以外の樹脂及びゴムやエラストマー等が含まれていてもよい。
本発明に係る被覆層を構成するスチレン系樹脂組成物を製造する方法には特に制限はなく、本発明に係るスチレン系樹脂組成物は、通常行われている方法及び装置を使用して製造することができる。一般的に使用されている方法は、溶融混合法であり、その際に用いる装置の例としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等を挙げることができる。スチレン系樹脂組成物の製造は、回分式又は連続式のいずれで行ってもよく、また、各成分の混合順序にも特に制限はなく、全ての成分が十分に均一に混合されればよい。
本発明の被覆成形品は、上述のような被覆層が基材上に形成されたものである。
本発明に係る被覆層は、それ自体優れた耐候性と難燃性を有するものではあるが、製品としての難燃性をより一層高めるために、基材についても十分な難燃性を有するものであることが好ましく、このため、本発明に係る基材は、以下のように、難燃性を有する熱可塑性樹脂組成物で構成される。
これらのリン系難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの化合物は、目的を達成するために、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
前述のスチレン系樹脂組成物を用いて、上記基材上に被覆層を形成するためには、基材上にスチレン系樹脂組成物を溶融加工して被覆層を形成する。
本発明に係る被覆成形品において、被覆層の厚さは、過度に薄いと、被覆層を形成したことによる十分な耐候性を得ることができず、過度に厚いと、難燃性が低下する原因となる。
即ち、本発明に係る被覆層は、難燃剤を含有しないスチレン系樹脂組成物よりなり、難燃剤を用いたものに比べると難燃性が大きく劣る傾向にあるため、このような被覆層を厚膜に形成することは好ましくない。
Y≧3.7×(X)+1.0
基材の厚さは、製品としての用途に関係するものであるが、一般的には1.0mm以上であることが好ましい。
なお、基材は何ら薄膜形状のものに限らず、板状、棒状、箱状、その他の異形形状、各種の形状とすることができる。
本発明の被覆成形品は、その優れた耐候性及び難燃性から、特に自動車部品、OA機器、住宅関連部品に好適に用いられる。ここで、自動車部品としては、シート成形(その後、真空成形)によるインモールド成形のインストルメントパネル表皮、バックガーニッシュ、異型押出成形によるサイドモールなどが挙げられる。OA機器としては、インモールド成形によるによるプリンターハウジングなどが挙げられる。住宅関連部品としては、異型押出成形によるサッシ部品、カーポート部品、樹脂製の竹垣等のエクステリア部品が挙げられる。
また、以下において、得られた被覆成形品の各評価は、次のようにして測定した値である。
得られた被覆成形品表面に対してスガ試験機(株)製のキセノンウェザーメーターにて1000時間照射を行い、ミノルタ(株)製ポータブル測色計「CM−508d」を用いて、照射前後のE値からΔE値の測色を行った。
ΔE=3以下を○(耐候性良好)とし、ΔEが3を超えるものを×(耐候性不良)とした。
得られた被覆成形品から四角形の板状体を切り出し、被覆層面に対してUL規格の燃焼試験を行い、「V−0」に適合するものを「○(難燃性良好)」、「V−1」に適合するものを「△(難燃性やや良好)」、それ以外を「×(難燃性不良)」とした。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機及び攪拌装置を備えた反応器内に、イオン交換水200部(ゴム質重合体テックス中の水も含む)、不均化ロジン酸カリウム0.3部(固形分)、硫酸第一鉄七水塩0.01部、ピロリン酸ナトリウム0.2部、及び結晶ブドウ糖0.5部を仕込み、完全に溶解させた後に、ゴム質重合体として重量平均粒子径が320nmポリブタジエンを固形分換算で50部混合した。
反応器内の内容物を攪拌しながら65℃まで昇温させ、ビニル単量体としてアクリロニトリル12.5部、スチレン37.5部と連鎖移動剤であるターシャルドデシルメルカプタン0.5部と重合開始剤であるクメンハイドロパーオキサイド0.25部とを連続的に滴下、供給してグラフト重合させた。その間、反応器内温を65℃に保つようにジャケット温度を制御した。
滴下終了後70℃まで昇温させ、さらに1時間保ってグラフト重合反応を完結させた。冷却後、酸化防止剤(ジラウリルチオジプロピオネート)を添加し、グラフト共重合体のラテックスを得た。
得られたグラフト共重合体ラテックスを、その1倍量の2.5%硫酸水溶液(80℃)中に攪拌下で投入し、さらに90℃で5分間保持して凝固させてグラフト共重合体のスラリーを得た。そして、そのスラリーの水洗と脱水を2度繰り返した後、一晩70℃で静置し、乾燥して乳白色粉末のグラフト共重合体Aを得た。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器に、
アルケニルコハク酸ジカリウム 0.1部 イオン交換水 195部 アクリル酸n−ブチル 50部 メタクリル酸アリル 0.20部 1,3−ブチレングリコールジメタクリレート
0.1部 ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド 0.1部を仕込んだ。この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、ジャケット部の温度を60℃まで昇温した。内容物温度が45℃となった時点で硫酸第一鉄七水塩
0.00015部 エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.00045部 ロンガリット 0.24部 イオン交換水 5部からなる水溶液を添加して重合を開始して内温を75℃に上昇させた。1時間この温度を維持してアクリル酸エステル系ゴム成分の重合を完結させ、重量平均粒子径が270nmであるアクリル酸エステル系ゴム状重合体ラテックスを得た。その後、
ロンガリット 0.15部 イオン交換水 10部 アルケニルコハク酸ジカリウム 0.9部からなる水溶液を添加し、次いで アクリロニトリル 5部 スチレン 15部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.08部の混合液を1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を1時間保持した後、 硫酸第一鉄七水塩 0.001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.003部 ロンガリット 0.15部 イオン交換水 10部からなる水溶液を添加し、次いで、 アクリロニトリル 7.5部
スチレン 22.5部 t−ブチルハイドロパオキサイド 0.2部 n−オクチルメルカプタン 0.02部からなる混合物を1時間にわたって滴下し、温度80℃の状態を30分間保持した後冷却してグラフト重合体ラテックスを得た。次いで1%硫酸水溶液150部を50℃に加熱し、攪拌下この中へこのグラフト重合体ラテックス100部を徐々に滴下し凝固し、さらに90℃に昇温して5分間保持した。次いで析出物を脱水、洗浄を2度繰り返した後、一晩70℃で静置して乾燥し、乳白色粉末のアクリル酸エステルゴム系グラフト重合体Bを得た。
窒素置換した反応器に純水120部、ポリビニルアルコール0.5部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部、t−ドデシルメルカプタン0.35部、アクリロニトリル27部とスチレン73部とからなる単量体混合物を加え、60℃で5時間加熱後、120℃に昇温し、4時間反応を行った。
この反応液を冷却後、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、ビーズ状の共重合体Cを得た。得られた共重合体Cの質量平均分子量は120000であった。
製造例1〜3で得られたグラフト共重合体A又はグラフト共重合体B、ビニル共重合体C、三酸化アンチモン、臭素系難燃剤(油化シェルエポキシ(株)製、エピコート5203)を表1の配合で混合したものに、滑剤(花王株式会社製 カオーワックス EB−P)0.7部混合し、バンバリーミキサーにより溶融混練してそれぞれペレット化して樹脂組成物I〜IVを得た。各樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
表2より明らかなように、本発明の要件を満たす被覆成形品は、耐候性と難燃性がいずれも優れている。
このように従来の知見では耐候性と難燃性の高度な両立は不可能であるが、本発明によれば耐候性と難燃性を同時に得ることが可能である。
Claims (3)
- 難燃性を有する熱可塑性樹脂組成物よりなる基材上に、難燃剤を含有しないスチレン系樹脂組成物からなる被覆層を設けた被覆成形品であって、
該被覆層を構成するスチレン系樹脂はグラフト共重合体とビニル共重合体とで構成され、該スチレン系樹脂において、グラフト共重合体とビニル共重合体との混合割合はこれらの合計量100質量部においてグラフト共重合体:20〜80質量部、ビニル共重合体:80〜20質量部であり、
該基材の厚み(Y)と被覆層の厚み(X)が下記関係式を満たすことを特徴とする被覆成形品。
Y≧3.7×(X)+1.0mm - 請求項1において、前記被覆層は共押出成形により前記基材上に一体成形されていることを特徴とする被覆成形品。
- 請求項1又は請求項2において、前記被覆層の厚さが0.1〜0.5mmであることを特徴とする被覆成形品。
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