JP5816583B2 - Cu薄板の製造方法及びCu薄板 - Google Patents

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Description

本発明は、Cu薄板の製造方法(以下ではCu薄板処理方法とも称する)及びCu薄板に関する。
モーターブラシなどの電気接点材は、導電性や機械強度などの基本特性以外に耐摩耗性、耐応力緩和性、耐食性、耐候性などの部品用途に応じた付加的な耐久性が要求される。これらの耐久性は、接点となる部位周辺の特定な位置で、局部的に必要となることが多い。このような場合には、基材の全体に異種材のメッキ、圧延クラッド、溶射等が施されることによって薄板の複合材とされた後、プレス打ち抜きあるいは曲げ成形加工して電気接点を得ることが通常である。なぜならば、マスキング等によって特定な位置で局部的な複合材を得ようとすると、逆にコストが高くなることが多いためである。しかし、全体を複合材とした電気接点では、複合材の基本特性に基づいて部品設計を行う必要があり、基材となる商用合金の既知である材料特性に基づく部品設計がそのまま生かせない不利があった。
これに対し、特許文献1には、レーザーを使用した基体上への金属粉末の付着方法が開示されている。具体的には、粒状形の銀をランプブラックと混合した混合物で基体上の設計領域を被覆し、その混合物にレーザーを照射することにより局部的に肉盛層を形成する方法が開示されている。この方法によれば、局部的に銀を主成分とする肉盛層で補強した基体を得ることができる。
また、特許文献2には、金属と強化材料とを含む粉末を基板に供給し、その粉末にレーザーを当てて加熱溶融したあと冷却することにより、微細粒組織を有する物品を形成する方法が記載されている。金属としてニッケルやニッケル合金が例示され、強化材料として硼化物や炭化物が例示されている。この方法によっても、局部的に微細粒組織の肉盛層で補強した基体を得ることができる。
更に、特許文献3には、Niを7〜20質量%含む粉末を80〜99質量%、MoやCoを含む粉末を1〜20質量%混合した混合物をレーザー肉盛する方法が記載されている。この方法によっても、局部的に肉盛層で補強した基体を得ることができる。
特開昭61−245988号公報 特表2003−518193号公報 特開2008−264842号公報
ところで、上述した電気接点材においては、荷重が負荷された状態で長期に亘ってその接触圧を維持することが要求される。具体的には、電気接点材として利用されるCu薄板を局部的に補強することにより、応力緩和率を低減させることが望まれている。
しかしながら、特許文献1〜3には、粉末にレーザーを照射することにより局部的に補強する点について記載されているものの、Cu薄板の応力緩和率を低減するのに適した構造や製法については、検討されていなかった。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、Cu薄板の材料特性を活かしつつ応力緩和率を低減させることを主目的とする。
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明のCu薄板処理方法は、
Cu製又はCu基合金製の薄板基材表面に粒子状の機能材料を供給し、該粒子状の機能材料を供給した薄板基材表面に向けてレーザーを照射し前記薄板基材表面を溶融させて溶融部を形成し、前記粒子状の機能材料が前記溶融部に沈降した状態で前記溶融部を固化させて前記薄板基材の所定部分に前記粒子状の機能材料を直接埋め込む埋込工程、
を備えたものである。
あるいは、本発明のCu薄板処理方法は、
Cu製又はCu基合金製の薄板基材表面に粒子状の機能材料を供給し、該粒子状の機能材料を供給した薄板基材表面の所定領域に向けて、出力時間0.5〜20ミリ秒、周波数0.1〜50Hz、照射時間0.1〜1.0秒の条件でレーザーを照射するものである。
本発明のCu薄板は、
Cu製又はCu基合金製の母材からなる薄板基材と、
前記薄板基材表面の所定部分に形成され、前記母材が溶融して固化した組織である固化部及び該固化部に直接埋め込まれた粒子状の機能材料を備えた埋込部と、
を備えたものである。
本発明のCu薄板処理方法によれば、応力緩和率の低いCu薄板を提供することができる。すなわち、本発明の処理方法によって製造されたCu薄板は、粒子状の機能材料が埋め込まれているため、粒子状の機能材料が埋め込まれていないCu薄板に比べて応力緩和率が低減する。Cu薄板をばね材としてコネクタ、スイッチ、リレーなどの電子部品に使用する場合、いずれも荷重が負荷された状態で長期に亘ってその接触圧を維持することが要求されるが、本発明のCu薄板処理方法によって得られるCu薄板は、応力緩和率が低減するため、そうした要求に十分応えることができる。
本発明のCu薄板処理方法の具体例を示す模式図。 本発明のCu薄板処理方法の具体例を示す模式図。 本発明のCu薄板10の具体例を示す模式図。 A−A’断面の別例を示す模式図。 TD、T0及びT1を示す説明図。 実施例1〜8及び比較例2〜7の埋込部表面の顕微鏡写真。 実施例1〜8及び比較例1〜7の埋込部断面の顕微鏡写真。
本発明のCu薄板処理方法では、肉盛層を形成するかわりに、薄板基材表面に粒子状の機能材料を供給し、粒子状の機能材料を供給した薄板基材表面に向けてレーザーを照射し薄板基材表面を溶融させて溶融部を形成し、粒子状の機能材料が溶融部に沈降した状態で溶融部を固化させて薄板基材の所定部分に粒子状の機能材料を直接埋め込む方法を採用している。
本発明のCu薄板処理方法において、薄板基材は、Cu製又はCu基合金製で、例えば電気接点用に用いられるものが挙げられる。こうした電気接点用の薄板は、荷重が負荷された状態で長期に亘ってその接触圧を維持することが要求されるものである。こうした薄板は、例えばテープ状になっている。なお、Cu基合金は、Cuを50質量%以上含む合金である。薄板基材は、時効硬化型のCu基合金であってもよく、例えば、Cu−Be系合金などとすることができる。この薄板基材は、供給される機能材料がレーザー照射の衝撃などによって移動することを抑制可能なように表面処理が施されていてもよい。例えば、表面粗さが大きくなるような加工が施されていてもよいし、接着剤などが塗布されていてもよい。なお、薄板基材としては、例えば、厚さ1mm以下の連続したテープ状のものを用いてもよい。
本発明のCu薄板処理方法において、機能材料は、粒子状のものである。ここで、粒子状のものには、扁平形状のものや、短繊維状のものも含まれる。この機能材料は、例えば、メディアン径D50が1μm以上150μm以下などとすることができる。この機能材料は、薄板基材よりも比重が大きいものが好ましい。薄板基材が溶融した際に溶融部の底のほうに沈降しやすく、機能材料の埋め込みを良好に行うことができるからである。また、機能材料は、薄板基材との反応性の低いものであることが好ましい。例えば、Ni−Cr合金などは、薄板基材であるCuやCu合金と反応しやすいため好ましくない。また、機能材料は、薄板基材よりも融点が高いものであることが好ましい。薄板基材が溶融する温度に達しても機能材料が溶融しないため、粒子状の機能材料を容易に埋め込むことができるからである。このとき、機能材料は薄板基材よりも10℃以上融点が高いことが好ましく、100℃以上融点が高いことがより好ましく、1000℃以上融点が高いことが更に好ましい。また、機能材料は、薄板基材が吸収しやすいレーザーを吸収しにくいものであることが好ましい。このようなものでは、薄板基材が吸収しやすいレーザーを照射したとき、薄板基材はこのレーザーを吸収するが機能材料はレーザーをほとんど吸収しないため、薄板基材が溶融しやすくかつ機能材料が溶融しにくくなる。機能材料としては、具体的には、例えば、Zr基金属ガラスや、Co基系合金、炭化物系金属化合物、窒化物系金属化合物、ホウ化物系金属化合物などを好適に用いることができる。このうち、炭化物系金属化合物、窒化物系金属化合物及びホウ化物系金属化合物から選ばれた1種以上であることがより好ましい。応力緩和率をより低減できるからである。炭化物系金属化合物としては、WCやTiC、ZrC、VC、NbC、TaC、Mo2Cなどが挙げられる。窒化物系金属化合物としては、TiNやZrN、VN、NbN、TaNなどが挙げられる。ホウ化物系金属化合物としては、TiB2やZrB2、VB2、NbB2、TaB2、MoB、WBなどが挙げられる。
本発明のCu薄板処理方法において、機能材料を供給する方法は特に限定されず、例えば、そのまま供給してもよいし、機能材料を含むスラリーにして供給してもよい。ここで、機能材料をそのまま供給する場合には、セロハンテープなどの保持体に機能材料を固定してそれを薄板基材表面に貼り付けてもよいし、薄板基材の表面全面に機能材料をばらまいてもよいし、ノズルなどを用いて機能材料を所定位置に供給してもよい。この際、薄板基材が変形するような力が加わらないように供給することが好ましい。一方、機能材料を含むスラリーにして供給する場合にも、薄板基材の表面全面に供給してもよいし、所定位置のみに供給してもよい。この際、例えば、ディスペンサー法や電界ジェット(インクジェット)法、刷毛塗り、スプレー噴霧、パッド印刷などで供給することができる。機能材料を供給する際には、薄板基材表面にレーザーが届かなくならないように供給する。例えば、機能材料を埋め込む所定の領域のうち粒子が表面を覆う部分の面積の割合が10%以上100%未満となるようにすることが好ましい。こうすれば、レーザーが機能材料に遮断されることなく薄板基材に届くため、薄板基材が適切に溶融する。また、機能材料は厚さ方向に複数層重なるようにして供給してもよいが、5層以下で供給することが好ましく、1層で供給することがより好ましい。1層で供給すれば、機能材料の粒子同士の間の間隙が他の層の粒子で塞がれることがないため、薄板基材表面にレーザーが届かなくなりにくい。
本発明のCu薄板処理方法において、レーザー照射の条件は特に限定されないが、例えば、薄板基材が溶融してできる溶融部の最大深さTDが150μm以下となるような条件であることが好ましく、100μm以下となるような条件であることがより好ましい。薄板基材と機能材料との合金化や、機能材料の溶融などを抑制できるからである。
レーザー照射は、具体的には、例えば、定格出力150WのNd−YAGレーザー発生装置と光学レンズ系を用いて微小系のレーザーを照射してもよい。この際、焦点径は100〜1000μmの間で任意に選択し、薄板基材表面に対してジャストフォーカス(デフォーカス値=0)あるいはデフォーカスとなるように調節して、機能材料よりも大きい領域でレーザーが当たるようにしてもよい。デフォーカスとなるように調整する場合、デフォーカス値は−5mm以上5mm以下となるようにすることが好ましい。レーザーは、パルス波とし、出力時間は0.5〜20ミリ秒、周波数は0.1〜50Hzの範囲で与えればよい。実質的な照射時間は、0.1秒〜1.0秒程度とすればよい。また、平均エネルギーは0.01〜50Jの範囲とすればよい。レーザーは、その他に、ルビーレーザー、Y−YAGレーザー、DPSSL、半導体レーザーなどであってもよい。またレーザー光の周波数は、Nd−YAGの一般的な波長1064nmに対するものに限定する必要はなく、高調波として用いてもよい。
レーザー照射の際には、薄板基材を裏側から冷却してもよい。こうすれば、溶融部の熱が他の部分に拡散しにくく、熱影響による薄板基材の材料特性の劣化などを抑制できる。また、溶融部が早期に冷却されるため、薄板基材と機能材料との合金化や、機能材料の溶融などを抑制できる。また、レーザー照射の際には、酸化を防ぐための不活性ガスを吹き付けながら行ってもよい。なお、不活性ガスの衝撃で機能材料が飛散してしまい、予め定められた場所に機能材料を維持することが困難になるような場合には、処理対象である薄板基材を不活性ガスで充填された部屋に載置してレーザー照射してもよい。
本発明のCu薄板処理方法は、加工前の板厚をT0、加工後の最厚部の板厚をT1とすると、T1−T0≦0.04mmを満たす条件が好ましく、T1−T0≦0.035mmを満たす条件がより好ましく、T1−T0≦0.03mmを満たす条件がさらに好ましい。このような条件であれば、機能材料を埋め込んだ部分の板厚が厚くなりすぎず、板厚精度の良好なCu薄板が得られる。
ここで、本発明のCu薄板処理方法の具体例を図1を用いて以下に説明する。図1では、機能材料の供給方法として、機能材料をそのままノズルから供給する方法を採用している。また、冷却板30の上に薄板基材12を載置した状態で処理を行うものとする。まず、機能材料20を薄板基材12の表面にノズル40から供給する(図1(a)参照)。そして、機能材料20を供給した領域の上方からレーザー照射装置50を用いてレーザーを照射してこの領域の薄板基材の表面を溶融させて溶融部14を形成し機能材料20を沈降させる。このとき、ノズル40を進行方向に移動させて薄板基材12の表面に次の機能材料20を供給する(図1(b)参照)。続いて、レーザー照射装置50を移動させ、新たに機能材料20を供給した領域にレーザーを照射してこの領域の薄板基材の表面を溶融させて溶融部14を形成し機能材料を沈降させる。このときも、ノズル40を進行方向に移動させて薄板基材12の表面に次の機能材料20を供給する。この間に、図1(b)で形成された溶融部14の一部は、冷却されて固化が進み固化部16となる(図1(c))。このように、機能材料の供給、薄板基材の溶融、機能材料の沈降、薄板基材の固化が繰り返されることにより、Cu製又はCu基合金製の母材からなる薄板基材と、薄板基材の表面に存在し、母材が溶融して固化した組織である固化部及び固化部に直接埋め込まれた粒子状の機能材料を備えた埋込部と、を備えたCu薄板を得ることができる。なお、ここでは、機能材料を1粒ずつ供給し、1粒供給されるごとにレーザーを照射するものとして説明したが、これは、説明の便宜のためであり、本発明のCu薄板処理方法はこのようなものに限定されない。例えば、図2に示すように、薄板基材12の表面に全ての機能材料20を供給し、その後、薄板基材の溶融、機能材料の沈降、薄板基材の固化が繰り返されるようにしてもよい。なお、図2では、機能材料20をノズル40から供給すること以外は図1と同様であるため、ここでは、詳細な説明は省略する。
このようにして得られたCu薄板10の具体例を図3を用いて以下に説明する。ここで図3(a)はCu薄板10の表面の様子を模式的に表したものである。図3(a)に示すように、Cu薄板10では、薄板基材12の所定部分に埋込部18が形成されている。この所定部分は、例えば、補強をすることが望ましい部分である。図3(b)はA−A’断面の様子を模式的に表したものである。図3(b)に示すように、埋込部18は、固化部16と粒子状の機能材料20とを備えている。ここで、薄板基材12は、レーザー照射による溶融を伴わない母材からなるものである。また、固化部16は、レーザー照射によって母材が溶融して固化した部位である。Cu薄板は、薄板基材12と固化部16との間に、レーザー照射による溶融を伴わないが熱影響を受けた熱影響部を有するものとしてもよい。なお、粒子状の機能材料20は、図3(b)に示すように固化部16に完全に埋没していてもよいが、A−A’断面の別例を表した図4に示すように固化部16に完全に埋没するのではなく一部が固化部16の表面に露出していてもよい。ここで、Cu薄板の断面図を用いて、溶融部の最大深さTD、加工前の板厚T0、加工後の最厚部の板厚T1について、図5を用いて説明する。図5では説明の便宜のため、機能材料や固化部の表示は省略する。溶融部の最大深さTDは、加工前の薄板基材の表面(図5の一点鎖線)から埋込部の最も深い部分までの深さで代用する。加工前の板厚T0は、加工後の板厚のうち埋込部でも熱影響部でもない部分の板厚と同じであるため、その部分の板厚で代用する。加工後の最厚部の板厚T1は、加工後の板厚のうち、最も厚い部分の板厚である。
このCu薄板10は、薄板基材が時効硬化型合金製である場合には、時効硬化処理を施してから用いるものとしてもよい。時効硬化処理の条件は、薄板基材の材質に応じて適切な条件を選択すればよい。例えば、薄板基材の材質がCu−Be合金である場合には、300℃以上350℃以下の温度で0.1時間以上3.0時間以下の時間保持してもよい。
以上説明した本発明の方法で処理された本発明のCu薄板は、薄板基材に粒子状の機能材料が埋め込まれているため、応力緩和率を低減することができる。また、薄板基材との反応性の高い材料などを用いることなく、機能材料が薄板基材に直接埋め込まれているため、薄板基材とそうした材料との合金化によって生じる薄板基材の特性の劣化などを抑制できる。また、比較的弱いレーザーを照射するから、機能材料との反応などによる薄板基材の変質が生じにくく、薄板基材の導電性などの特性が劣化しにくい。また、埋込部の板厚が厚くなりすぎないから、板厚精度が良好となる。また、必要な部位にだけ機能材料を埋め込むことができるから、製品設計の自由度を高めることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、本発明のCu薄板を具体的に製造した例を実施例として説明する。
(1)Cu薄板の作製
[実施例1]
厚さ0.250mm、幅10mm、長さ50mmのCu−1.8%Be−0.25%Co合金(質量%)の薄板基材を用意した。この薄板基材は、溶体化処理後、時効硬化処理前のもの、すなわち、ソルトバス中にて850℃で5分熱処理後に水冷されたものである。また、機能材料として、Zr基金属ガラス(粒径150μm,以下同じ)を用意した。
次に、機能材料を、2mm幅のセロハンテープの粘着面に互いに重ならないように散布し、そのセロハンテープを薄板基材に貼り付けた。そして、その上から、テクノコート社製TL150S型レーザー照射装置を用いてYAGレーザーを照射した。照射条件は、出力電流値を75A、平均出力値を9.6W、パルス出力時間を3msec、パルス周波数を8Hz、レーザースポット径をφ0.3mm、デフォーカス値を−4mm(薄板基材表面に焦点が位置するものをジャストフォーカス(デフォーカス値=0)とする)とした。また、テーブル送り速度は1.25mm/secとした。レーザーの照射に際して、薄板基材は純銅製の冷却板の上に載置し、できるだけ早く抜熱できるようにした。また、照射部にArガスを吹きかけながら照射を行った。
溶融した部分が全て固化したら、不活性窒素ガスで置換した電気炉内で、315℃、2時間保持した後に放冷する時効硬化処理を行った。このようにして得られたCu薄板を実施例1とした。
[実施例2〜8]
機能材料を、Co基系合金(Cr:約28%、W:約4%、Fe:約3%,粒径40〜50μm,以下同じ)とした以外は、実施例1と同様に実施例2のCu薄板を作製した。また、機能材料を、WC(粒径45μm)とした以外は、実施例1と同様に実施例3のCu薄板を作製した。また、機能材料を、ZrB2(粒径3.0〜5.0μm)とした以外は、実施例1と同様に実施例4のCu薄板を作製した。また、機能材料を、WC(粒径1μm)とした以外は、実施例1と同様に実施例5のCu薄板を作製した。また、機能材料を、TiB2(粒径2.85μm)とした以外は、実施例1と同様に実施例6のCu薄板を作製した。また、機能材料を、TiC(粒径1.85μm)とした以外は、実施例1と同様に実施例7のCu薄板を作製した。また、機能材料を、VC(粒径1.44μm)とした以外は、実施例1と同様に実施例8のCu薄板を作製した。
[比較例1]
機能材料としてのZr基金属ガラスにかえて、薄板基材と反応しやすいNiCr粉末(80Ni−20Cr(質量%),粒径20〜53μm)を用いた以外は、実施例1と同様に比較例1のCu薄板を作製した。
[比較例2〜4]
NiCr粉末とともに、機能材料としてのZr基金属ガラスを用いた以外は、比較例1と同様に比較例2のCu薄板を作製した。なお、NiCr粉末と機能材料との比率は、質量比で約1:1とした。また、機能材料を表2に示すものとした以外は、比較例2と同様に比較例3,4のCu薄板を作製した。
[比較例5〜7]
レーザーの照射条件のうち、出力電流値を90A、平均出力値を10.8Wとした以外は、実施例1と同様に比較例5のCu薄板を作製した。また、機能材料を表2に示すものとした以外は、比較例5と同様に比較例6,7のCu薄板を作製した。
[比較例8]
機能材料の埋め込み、すなわち、機能材料を散布したセロハンテープを薄板基材に貼り付けてレーザー照射を行う処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に比較例8のCu薄板を作製した。
(2)顕微鏡観察
埋込部について、光学顕微鏡を用いて、表面及び断面の観察を行った。なお、断面の観察に際しては、観察用樹脂に薄板基材の厚み方向が表面から見えるような向きに埋め込んだ後、機械研磨装置で埋込部の観察できる内部まで研磨したものを用いた。
図6に埋込部の表面を観察した顕微鏡写真を示す。この図6において、ほぼ等間隔に並んでいる白っぽい点は、レーザー痕である。実施例1〜8では、表面に銅が検出された。これに対して、NiCr粉末を用いた比較例1〜4では、表面の銅の検出は少なく、Ni、Crが多く検出された。また、レーザーの出力を大きくした比較例5〜7では、機能材料の成分が多く検出され、表面も粗くなっていた。
図7に埋込部の断面を観察した顕微鏡写真を示す。実施例1〜8では、ベリリウム銅製の母材からなる薄板基材の表面に、母材が溶融して固化した組織である固化部があり、この固化部に粒子状の機能材料が直接埋め込まれたものとなっていた。これに対して、NiCr粉末を用いた比較例1〜4では、ベリリウム銅製の母材からなる薄板基材の表面に、母材とNiCr粉末との化合物層と推察される組織が確認された。また、機能材料を添加したもののレーザーの出力を大きくした比較例5〜7では、粒子状の機能材料が確認できなかった。
また、この断面写真より、溶融部の最大深TDを求めた。表1,2に、結果を示す。TDが0.15mmより大きい比較例5〜7では、Cuと合金化しやすい材料を添加しなかったにもかかわらず機能材料の粒子が消失してしまった。このことから、レーザー照射は、溶融部の最大深さが0.15mm以下となるような条件で行うことが好ましいと推察された。
(3)表面分析
エネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いて、埋込部表面の定量分析を行った。
表1,2に、結果を示す。実施例1〜8ではいずれもCuが91質量%以上であるのに対して、比較例1〜7ではいずれもCuが91%未満であった。このことは、比較例1〜7ではNiCr粉末や機能材料と、薄板基材との合金化が進んでいることを示すものと推察された。なお、実施例1〜8でCu以外の成分が検出されたのは、機能材料の一部が薄板基材に完全に埋め込まれず、一部薄板基材表面に露出しているためと推察された。
(4)ビッカース硬さ測定
ビッカース硬さの測定は、JIS Z 2244:2009(ビッカース硬さ試験−試験方法)に準じて行った。埋込部、境界、薄板基材について、試験力500gfでビッカース硬さを測定した。この際、埋込部が形成された側の面から圧子を押しつけた。なお、埋込部のビッカース硬さは、基材の幅方向に0.25mm間隔で5点測定しこれの平均値とした。また、境界のビッカース硬さは、基材の長さ方向に0.25mm間隔で5点測定しこれの平均値とした。また、薄板基材のビッカース硬さは、薄板基材の幅方向に0.25mm間隔で5点測定し、これの平均値とした。
表1,2に、結果を示す。いずれも、埋込部、境界の硬さが薄板基材の硬さより低くなったが、その程度は十分に小さかった。
(5)加工後の最厚部の板厚T1 及び板厚増加量T1−T0
加工後の最厚部の板厚T1は、埋込部の全体について板厚をマイクロメーターで測定し、得られた板厚のうち最大のものとした。また、加工後の最厚部の板厚T1−加工前の板厚T0(=0.250mm)を算出した。
表1,2に、結果を示す。実施例1〜8では埋込部の板厚T1が最大でも0.283mm(T1−T0は0.033mm)であるのに対して、比較例1〜7では埋込部の板厚T1が最小でも0.297mm(T1−T0は0.047mm)と大きかった。これは、実施例1〜8では添加した機能材料の体積分だけ埋込部が厚くなったのに対して、比較例1〜7ではそれに加えて、溶融した薄板基材と機能材料やNiCr粉末とが合金化するなどして埋込部の体積が増加したためと推察された。このように、実施例のものでは比較例のものに比して埋込部の板厚が厚くなりすぎず、板厚精度の良好な薄板を得られることがわかった。
(6)応力緩和率測定
応力緩和率測定はJCBA T309:2001(仮)(銅及び銅合金薄板条の曲げによる応力緩和試験方法)に準じて行った。ここでは、試験片の初期応力値600MPa,試験温度200℃,試験時間1000時間とした。また、スパン長さlSは20mmとした。
表1,2に、結果を示す。実施例1〜8では、ベリリウム銅そのもの(比較例8)よりも応力緩和率を低減できただけでなく、NiCr粉末を用いた比較例1〜4やレーザーの出力を大きくした比較例5〜7よりも応力緩和率を低減できた。このことから、NiCrのような薄板基材との反応性の高い材料を用いることなく機能材料を直接薄板基材に埋め込み、埋め込まれた機能材料が粒子状に存在するようにすることで、応力緩和率を低減できることがわかった。
10 Cu薄板、12 薄板基材、14 溶融部、16 固化部、18 埋込部、20 機能材料、30 冷却板、40 ノズル、50 レーザー照射装置。

Claims (5)

  1. 時効硬化型Cu基合金製の薄板基材表面に粒子状の機能材料を供給し、該粒子状の機能材料を供給した薄板基材表面に向けてレーザーを照射し前記薄板基材表面を溶融させて最大深さが0.15mm以下の溶融部を形成し、前記粒子状の機能材料が前記溶融部に沈降した状態で前記溶融部を固化させて前記薄板基材の所定部分に前記粒子状の機能材料を直接埋め込む埋込工程と、
    前記埋込工程の後に時効硬化処理を行う時効硬化処理工程と、
    を備え、
    加工前の板厚をT0、加工後の最厚部の板厚をT1とすると、T1−T0≦0.04mmを満たし、前記溶融部が固化した固化部及び該固化部に直接埋め込まれた粒子状の機能材料を備えた埋込部の硬度が前記薄板基材の硬度よりも低いCu薄板を得る、
    Cu薄板の製造方法。
  2. 前記機能材料は、炭化物系金属化合物、窒化物系金属化合物及びホウ化物系金属化合物から選ばれた1種以上である、請求項1に記載のCu薄板の製造方法。
  3. 前記埋込工程では、前記粒子状の機能材料を供給した薄板基材表面の所定領域に向けて、出力時間0.5〜20ミリ秒、周波数0.1〜50Hz、照射時間0.1〜1.0秒の条件でレーザーを照射する、請求項1又は2に記載のCu薄板の製造方法。
  4. 時効硬化型Cu基合金製の薄板基材表面に粒子状の機能材料を供給し、該粒子状の機能材料を供給した薄板基材表面の所定領域に向けて、出力時間0.5〜20ミリ秒、周波数0.1〜50Hz、照射時間0.1〜1.0秒の条件でレーザーを照射し前記薄板基材表面を溶融させて溶融部を形成し、前記粒子状の機能材料が前記溶融部に沈降した状態で前記溶融部を固化させて前記薄板基材の所定部分に前記粒子状の機能材料を直接埋め込む埋込工程と、
    前記埋込工程の後に時効硬化処理を行う時効硬化処理工程と、
    を備え、
    前記溶融部が固化した固化部及び該固化部に直接埋め込まれた粒子状の機能材料を備えた埋込部の硬度が前記薄板基材の硬度よりも低いCu薄板を得る、
    Cu薄板の製造方法。
  5. 時効硬化型Cu基合金製の母材からなる薄板基材と、
    前記薄板基材表面の所定部分に形成され、前記母材が溶融して固化した組織である固化部及び該固化部に直接埋め込まれた粒子状の機能材料を備えた埋込部と、
    を備え、
    加工前の板厚をT0、加工後の最厚部の板厚をT1とすると、T1−T0≦0.04mmを満たし、加工前の前記薄板基材の表面から前記埋込部の最も深い部分までの深さが0.15mm以下であり、時効硬化処理を経たものであり、前記埋込部の硬度が前記薄板基材の硬度よりも低い、Cu薄板。
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