次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る成形方法の実施に用いる射出成形機Mの構成について、図2〜図5を参照して説明する。
図2に示す射出成形機Mは、横型の異材質射出成形機であり、不図示の機台上に、一台の型締装置Mcと、仮想線で示す二台の一次射出装置Mi1及び二次射出装置Mi2を備える。この場合、一次射出装置Mi1及び二次射出装置Mi2は、加熱筒の先端に射出ノズルを有するとともに、加熱筒の内部に射出スクリュを挿通させた一般的な射出装置として構成できる。一方、型締装置Mcにおいて、2は固定盤であり、この固定盤2の四隅には、タイバー21…の一端をそれぞれ固定するとともに、各タイバー21…の他端は支持盤22の四隅に固定する。各タイバー21…には可動ブロック23をスライド自在に装填し、この可動ブロック23の内面(固定盤2に対向する面)には切換盤3を重ねて配するとともに、可動ブロック23に配設した油圧モータ等を用いた回転駆動部24の回転軸を、切換盤3の中心に結合する。また、支持盤22には型締シリンダ(油圧シリンダ)25を取付け、この型締シリンダ25から突出する駆動ラム25rの先端は、可動ブロック23の後端に結合する。
これにより、切換盤3は、回転駆動部24の駆動制御により、図3に示すように、矢印Fr方向へ180〔゜〕単位で回動変位させることができるとともに、可動ブロック23(切換盤3)は、型締シリンダ24の駆動制御により、タイバー21…に沿って進退移動させることができる。なお、型締装置Mcとして、例示のような直圧方式の油圧シリンダを用いれば、射出充填時に射出圧力により、後述する移動型Cm2を変位させ、必要な隙間(パーティング開量)Lm(Lmp,Lmr)を生じさせる場合に好適である。
一方、切換盤3上であって、中心に対して180〔゜〕対向する位置には、それぞれ移動型Cm1,Cm2を取付けるとともに、固定盤2上には、各移動型Cm1,Cm2に対向する固定型Cc1,Cc2を取付ける。これにより、一対の組金型C1,C2が構成可能となり、固定型Cc1側の組金型C1により一次成形を行い、固定型Cc2側の組金型C2により二次成形を行うことができる。この場合、固定型Cc1,Cc2に対して、移動型Cm1,Cm2は相互に入れ替えて用いるため、符号Cm1,Cm2は、個々の移動型を指すものではなく、固定型Cc1に対向する移動型がCm1となり、固定型Cc2に対向する移動型がCm2となる。また、固定型Cc1と移動型Cm1(又はCm2)間には、一次キャビティCfを形成するとともに、固定型Cc2と移動型Cm2(又はCm1)間には、二次キャビティCsを形成する。
他方、射出成形機Mは、図2に示す駆動系を構成する油圧駆動回路31を備えるとともに、制御系を構成する成形機コントローラ51及び二次成形を行う組金型(特定組金型)C2に付設する位置検出器4を備える。以下、これら駆動系及び制御系の構成について、図5を参照して説明する。
油圧駆動回路31は、油圧駆動源となる可変吐出型油圧ポンプ32及びバルブ回路33を備える。油圧ポンプ32は、ポンプ部34とこのポンプ部34を回転駆動するサーボモータ35を備える。35eはサーボモータ35の回転数を検出するロータリエンコーダを示す。ポンプ部34は、斜板型ピストンポンプにより構成するポンプ機体36を内蔵する。したがって、ポンプ部34は、斜板37を備え、この斜板37の傾斜角(斜板角)を大きくすれば、ポンプ機体36におけるポンプピストンのストロークが大きくなり、吐出流量が増加するとともに、斜板角を小さくすれば、同ポンプピストンのストロークが小さくなり、吐出流量が減少する。よって、斜板角を所定の角度に設定することにより、吐出流量(最大容量)が所定の大きさに固定される固定吐出流量を設定することができる。斜板37には、コントロールシリンダ38及び戻しスプリング39を付設するとともに、コントロールシリンダ38は、切換バルブ(電磁バルブ)40を介してポンプ機体36の吐出口に接続する。これにより、コントロールシリンダ38を制御することにより斜板37の角度(斜板角)を変更できる。
また、ポンプ部34の吸入口は、オイルタンク41に接続するとともに、ポンプ部34の吐出口は、バルブ回路33の一次側に接続する。さらに、バルブ回路33の二次側は、上述した回転駆動部24及び型締シリンダ25にそれぞれ接続するとともに、射出成形機Mの型締装置Mc,一次射出装置Mi1及び二次射出装置Mi2における各アクチュエータに接続する。各アクチュエータには、少なくとも、射出スクリュを進退移動させる射出シリンダ及び射出スクリュを回転させるオイルモータが含まれるとともに、ノズルタッチ用シリンダ及び成形品突出しシリンダ等が含まれる。したがって、バルブ回路33には、回転駆動部24及び型締シリンダ25をはじめ、各アクチュエータにそれぞれ接続する切換バルブ(電磁バルブ)を備えている。なお、各切換バルブは、それぞれ一又は二以上のバルブ部品をはじめ、必要な付属油圧部品等により構成され、少なくとも、回転駆動部24及び型締シリンダ25をはじめ、上述した射出シリンダ,オイルモータ,ノズルタッチ用シリンダ及び成形品突出しシリンダ等の各アクチュエータに対する作動油の供給,停止,排出に係わる切換機能を有している。
これにより、サーボモータ35の回転数を可変制御すれば、可変吐出型油圧ポンプ32の吐出流量及び吐出圧力を可変でき、これに基づいて、上述した回転駆動部24及び型締シリンダ25をはじめ、射出シリンダ,オイルモータ,ノズルタッチ用シリンダ及び成形品突出しシリンダ等の各アクチュエータに対する駆動制御を行うことができるとともに、成形サイクルにおける各動作工程の制御を行うことができる。このように、斜板角の変更により固定吐出流量を設定可能な可変吐出型油圧ポンプ32を使用すれば、ポンプ容量を所定の大きさの固定吐出流量(最大容量)に設定できるとともに、固定吐出流量を基本として吐出流量及び吐出圧力を可変できるため、制御系による制御を容易かつ円滑に実施することができる。
他方、成形機コントローラ51は制御系の要部を構成し、ディスプレイ52が付属するとともに、制御信号出力ポートには上述したバルブ回路33を接続する。この成形機コントローラ51には、コントローラ本体51mとサーボ回路53が含まれる。サーボ回路53は、出力部に上述したサーボモータ35を接続するとともに、エンコーダパルス入力部にはロータリエンコーダ35eを接続する。また、コントローラ本体51mは、CPU及び内部メモリ等のハードウェアを内蔵するコンピュータ機能を備えている。ディスプレイ52は、ディスプレイ本体52d及びこのディスプレイ本体52dに付設したタッチパネル52tを備え、このディスプレイ本体52d及びタッチパネル52tは表示インタフェース55を介してコントローラ本体51mに接続する。したがって、このタッチパネル52tにより各種設定操作及び選択操作等を行うことができる。このディスプレイ52には、必要な設定画面(射出・計量画面)やモニタ画面等の各種画面を表示できる。
さらに、コントローラ本体51mの内部メモリには、各種演算処理及び各種制御処理(シーケンス制御)を実行するため制御プログラム(ソフトウェア)51mpを格納するとともに、各種データ(データベース)類を記憶可能なデータメモリ51mdが含まれる。この制御プログラム51mpには、本実施形態に係る射出成形機Mの成形方法を実行するための制御プログラムが含まれる。特に、本実施形態に係る成形方法では、二次成形を行う特定組金型C2を型締する型締装置Mcと二次射出装置Mi2は、後述する特定成形工程Z2iを実行するため、内部メモリには、特定成形工程Z2iにおける成形動作を行うための制御プログラム(シーケンス制御プログラム)が含まれる。この特定成形工程Z2iは、予め、特定組金型C2により試し成形を行い、射出充填時における特定組金型C2に所定の隙間、即ち、パーティング開量Lm(Lmp,Lmr)が生じ、かつ良品成形可能な射出圧力(成形射出圧力)Pi2と型締力(成形型締力)Pc2を求めて設定する成形条件設定機能、更には、生産時に、特定組金型C2に対して設定された成形型締力Pc2により型締し、かつ設定された成形射出圧力Pi2をリミット圧力Psとして設定し、特定組金型C2に対して樹脂材料R2の射出充填を行った後、所定の冷却時間Tcを経過させる成形を行う成形動作制御機能を備えている。
加えて、一次成形を行う組金型C1を型締する型締装置Mcと一次射出装置Mi1は、従来より一般に実施されている汎用的な成形工程(標準成形工程Z1n)を実行するため、内部メモリには、標準成形工程Z1nによる成形動作を行うための制御プログラム(シーケンス制御プログラム)も含まれる。この標準成形工程Z1nは、設定した所定の型締力Pc1により組金型C1に対して型締を行い、かつ設定した所定の射出速度V1及び所定の射出圧力Pi1により組金型C1に樹脂材料R1を射出充填した後、保圧Phを付与するという従来より公知の一般的かつ基本的な成形機能を備えている。
また、二次成形を行う特定組金型C2には、位置検出器(隙間センサ)4を配設する。この位置検出器4は、固定型Cc2と移動型Cm2(Cm1)の相対位置、即ち、パーティング開量Lm(Lmp,Lmr)の大きさを検出する機能を有し、図2及び図5に示すように、固定型Cc2に取付けた検出器本体4mと、移動型Cm2,Cm1に取付けた反射板4p2,4p1の組合わせからなる。したがって、検出器本体4mには、反射板4p2,4p1に対して光又は電波を投射して測距する反射型測距センサを用いる。このように、パーティング開量Lm(Lmp,Lmr)を、特定組金型C2に付設した位置検出器4により検出する固定型Cc2と移動型Cm1,Cm2間の相対距離から得るようにすれば、パーティング開量Lmの大きさを直接検出できるため、位置検出器4以外の誤差要因を極力排した正確なパーティング開量Lm、更にはその変化データを確実に得れる利点がある。さらに、油圧駆動回路31におけるバルブ回路33の一次側には、油圧を検出する圧力センサ56を付設する。なお、この際、油温を検出し、圧力センサ56の検出値を補正するための温度センサを付設することもできる。そして、位置検出器4及び圧力センサ56(及び温度センサ)は、成形機コントローラ51のセンサポートに接続する。
次に、本実施形態に係る射出成形機Mの成形方法について、図1〜図11を参照して具体的に説明する。
最初に、成形方法の概要について説明する。本実施形態に係る成形方法は、異材質射出成形機を用いて二つの異なる樹脂材料R1とR2(図4参照)を複合した異材質を組合わせた成形品Gを成形するための成形方法であり、基本的には、一次キャビティCfに樹脂材料R1を射出充填する一次成形と二次キャビティCsに樹脂材料R2を射出充填する二次成形が含まれる。この際、図1に示すように、一次成形では、標準成形工程Z1nを実行し、この標準成形工程Z1nに次ぐ二次成形では、特定成形工程Z2iを実行する。
この場合、標準成形工程Z1nは、前述したように、設定した所定の型締力Pc1により組金型C1に対して型締を行い、かつ設定した所定の射出速度V1及び所定の射出圧力Pi1により組金型C1に樹脂材料R1を射出充填した後、保圧Phを付与するものであり、従来より公知の一般的な成形工程である。
これに対して、特定成形工程Z2iは、云わば必要最小限の成形型締力Pc2を使用し、また、適度のパーティング開量Lm(Lmp,Lmr)と自然圧縮を組合わせた独自の成形工程を含むものであり、以下、具体的な手順について説明する。
(A) まず、予め、生産時に使用する成形型締力Pc2と成形射出圧力Pi2を求め、成形条件として設定する。この際、
(x) 射出充填時に、固定型Cc2と移動型Cm2間に適切なパーティング開量(自然隙間)Lmが生じること、
(y) 成形品には、バリ,ヒケ及びソリ等の成形不良が発生しないこと、
を条件とする。
また、自然隙間Lmは、ガス抜き及び樹脂材料R2の圧縮(自然圧縮)が行われるとともに、最大時のパーティング開量となる成形隙間Lmpと、所定の冷却時間Tcが経過した後のパーティング開量となる残留隙間Lmrを考慮し、
(xa) 成形隙間Lmpは、0.03〜0.30〔mm〕、
(xb) 残留隙間Lmrは、0.01〜0.10〔mm〕、
の各許容範囲を満たすことを条件とする。したがって、成形隙間Lmpはパーティング開量Lmの最大量(max)となり、残留隙間Lmrはパーティング開量Lmの最小量(min)となる。
(B) 生産時には、設定した成形型締力Pc2により型締を行うこと、成形射出圧力Pi2をリミット圧力Psに設定すること、の成形条件により樹脂材料R2は単純に射出する。
これにより、射出充填時には、特定組金型C2において自然隙間Lm及び自然圧縮が発生する。この結果、二次射出装置Mi2により射出充填される樹脂材料R2の挙動が不安定であっても、型締装置Mcが不安定な樹脂材料R2の挙動に適応し、高度の品質及び均質性を有する成形品Gが得られる。
次に、具体的な処理手順について説明する。まず、予め、成形条件となる成形射出圧力Pi2と成形型締力Pc2を求めるとともに、成形条件として設定する。図6に、成形射出圧力Pi2と成形型締力Pc2を求めて設定する処理手順を説明するためのフローチャートを示す。
まず、二次成形を行う特定組金型C2により試し成形を行う。この場合、特定組金型C2の二次キャビティCsには、既に一次成形により成形された一次成形品Gmが収容されている。一方、成形機コントローラ51においては、二次射出装置Mi2側の射出条件となる射出圧力をディスプレイ52の設定画面を用いて初期設定する(ステップS1)。このときの射出圧力は、絶対値として正確に設定する必要はなく、二次射出装置Mi2の能力(駆動力)に基づく射出圧力を設定できる。また、型締装置Mc側の型締条件となる型締力を、同様にディスプレイ52の設定画面を用いて初期設定する(ステップS2)。このときの型締力も、絶対値として正確に設定する必要はなく、型締装置Mcの能力(駆動力)に基づく型締力を設定できる。
次いで、初期設定した射出圧力に対する最適化処理を行うことにより生産時に用いる成形射出圧力Pi2を求めるとともに、初期設定した型締力に対する最適化処理を行うことにより生産時に用いる成形型締力Pc2を求める(ステップS3,S4)。型締力及び射出圧力を最適化する方法の一例について、図7を参照して説明する。
まず、初期設定した型締力及び射出圧力を用いて試し成形を行う。成形開始ボタンを押すことにより、型締動作が行われ、初期設定した条件により、特定組金型C2による試し成形が行われる。例示の場合、初期設定した型締力は40〔kN〕である。初期設定した型締力(40〔kN〕)及び射出圧力を用いた試し成形の結果を図7に示す。この場合、成形隙間Lmp及び残留隙間Lmrはいずれも0であることを示している。また、初期設定では型締力が大きめになるため、バリは発生しないレベル0(最良)であるとともに、ヒケはレベル4(不良)、ソリはレベル3(稍不良)、ガス抜きに関してはレベル3(稍不良)になったことを示している。
さらに、型締力の大きさ及び射出圧力の大きさを、図7に示すように、段階的に低下させ、それぞれの段階で試し成形を行うことにより、固定型Cc2と移動型Cm2間のパーティング開量Lm(Lmp,Lmr)を測定するとともに、成形品の良否状態を観察する(ステップS5,S6)。なお、図7に、射出圧力のデータはないが、射出圧力の最適化は、射出充填時に移動型Cm2と固定型Cc2間にパーティング開量Lmが生じ、かつ良品成形可能となることを条件に、設定し得る最小値又はその近傍の値を成形射出圧力Pi2とすることができる。具体的には、図7に示すように、型締力を変更(低下)した際に、適宜、射出圧力も変更(低下)し、樹脂材料R2が特定組金型C2に対して正常に充填しなくなる手前の大きさを選択することができる。成形射出圧力Pi2として、このような最小値又はその近傍の値を選択すれば、これに伴って、成形型締力Pc2も最小値又はその近傍の値に設定可能となるため、省エネルギ性を高める観点から最適なパフォーマンスを得ることができるとともに、機構部品等の保護及び長寿命化を図ることができる。そして、求めた成形射出圧力Pi2は、生産時の射出圧力に対するリミッタ圧力Psとして設定する(ステップS7)。
図7の結果を見れば、仮想線枠Zuで囲まれる14,15,16〔kN〕の型締力のとき、成形隙間Lmp及び残留隙間Lmrはいずれも許容範囲を満たしている。即ち、成形隙間Lmpは、0.03〜0.30〔mm〕の許容範囲、更には、0.03〜0.20〔mm〕の許容範囲をも満たしている。また、残留隙間Lmrは、0.01〜0.10〔mm〕の許容範囲、更には、0.01〜0.04〔mm〕の許容範囲をも満たしている。加えて、バリ,ヒケ及びソリのいずれも発生しないレベル0(最良)であるとともに、ガス抜きもレベル0(最良)となり、良品成形品を得るという条件を満たしている。したがって、成形型締力Pc2は、三つの型締力14,15,16〔kN〕から選択できる。選択した型締力は、生産時に特定組金型C2で型締を行う際の成形型締力Pc2として設定する(ステップS8)。
ところで、図7の場合、成形隙間Lmpが、0.03〜0.20〔mm〕の許容範囲を満たすとともに、残留隙間Lmrが、0.01〜0.04〔mm〕の許容範囲を満たすことがバリの発生しない最良成形品を得ることができるが、バリは、成形品取出後に除去することができるとともに、少しのバリがあっても良品として使用できる場合もあるため、図7に、レベル1(良)やレベル2(普通)で示す低度のバリ発生は即不良品となるわけではない。したがって、図7に示すデータを考慮すれば、成形品の種類等によっては、仮想線枠Zusで囲まれる型締力12,13〔kN〕の選択も可能である。即ち、成形隙間Lmpが、0.03〜0.30〔mm〕の許容範囲を満たすとともに、残留隙間Lmrが、0.01〜0.10〔mm〕の許容範囲を満たせば、良品成形品を得ることができる。
なお、図7は、成形型締力Pc2と成形射出圧力Pi2を設定するための説明用データである。したがって、実際の設定に際しては、例えば、型締力を、40,30,20,10等のように、数回程度の変更実施により目的の成形型締力Pc2及び成形射出圧力Pi2を求めることができる。また、型締力及び射出圧力の大きさは、オペレータが任意に設定してもよいし、射出成形機Mに備えるオートチューニング機能等を併用しつつ自動又は半自動により求めてもよい。オートチューニング機能を利用した場合には、バリが発生する直前の型締力を容易に求めることができる。
さらに、二次射出装置Mi2の射出速度Vdに対する速度限界値VLを設定する(ステップS9)。この速度限界値VLは、必ずしも設定する必要はないが、設定することにより、万が一、射出速度Vdが過度に速くなった場合でも、特定組金型C2や射出スクリュ等に対して機械的な保護を図ることができる。したがって、速度限界値VLには、特定組金型C2や射出スクリュ等に対して機械的な保護を図ることができる大きさを設定する。また、他の必要事項があれば、その設定を行う(ステップS10)。以上により、特定組金型C2に対する成形条件である成形型締力Pc2の設定が終了し、これらの設定した条件を用いて特定成形工程Z2iを実行することができる。
次に、生産時における本実施形態に係る成形方法について、図1に示す工程図及び図9に示すフローチャートを参照して説明する。
今、型締装置Mcは型開状態にあり、また、一次成形を行う組金型C1と二次成形を行う特定組金型C2は、入れ替えが終わった状態を想定する。したがって、組金型C1は空の状態にあるとともに、特定組金型C2は一次成形品Gmが付着した状態にある。この状態において、最初に、空の組金型C1に対して標準成形工程Z1nによる一次成形を行う。まず、型締シリンダ25を駆動制御し、可動ブロック23を比較的高速で前進移動させて型閉を行う(ステップS21,工程E01)。型閉が終了したなら、予め設定した高圧型締力Pc1により高圧型締を行う(ステップS22,工程A01)。これにより、組金型C1,C2の双方が高圧型締される。なお、高圧型締とは、文字通りの高圧という意味ではなく、射出圧力Pi1が付加されても特定組金型C2が開かない圧力により型締を行う意味である。
次いで、一次射出装置Mi1及び二次射出装置Mi2を、不図示のノズルタッチ用シリンダにより前進移動させ、射出ノズルを各組金型C1,C2にそれぞれタッチさせる。そして、一次射出装置Mi1を用いて樹脂材料R1を一次成形を行う組金型C1に射出充填する一次成形を行う(ステップS23,工程A02)。この場合、射出充填する樹脂材料R1は一次射出装置Mi1において予め計量されているため、計量分だけ、設定した射出速度V1により射出充填する。なお、射出充填時には高圧型締により型締めされているため、充填時の圧力により組金型C1が開くことはない。
樹脂材料R1の充填が終了、即ち、速度−圧力切換位置に達したなら、充填された樹脂材料R1に所定の保圧力を付与する(ステップS24,工程A03)。そして、樹脂材料R1の保圧が終了、即ち、保圧工程が終了したなら、組金型C1に対する冷却を行うとともに、タイマーを計時する(ステップS25,工程A04)。なお、このタイマーは冷却時間とは別に設けてもよいし、冷却時間をそのまま用いてもよい。一方、一次射出装置Mi1では一次計量を行う(ステップS25,工程A05)。また、当該タイマーの計時から、予め設定した二次移行設定時間(冷却時間)Tsの経過待ちを行う(ステップS26,工程E02)。この場合、二次移行設定時間Tsは、充填された樹脂材料R1の冷却が進行し、型締装置Mcの型締力を低下させても、樹脂材料R1による一次成形品Gmが影響を受けない状態まで固化する時間を考慮して設定するとともに、一次計量の進行とは関係なく設定する。
二次移行設定時間Tsが経過したなら、次いで、二次成形を行う特定組金型C2を用いた特定成形工程Z2iが行われる。まず、型締装置Mcの型締シリンダ25を駆動制御し、型締力が成形型締力Pc2となるように、特定組金型C2に対する型締を行う(ステップS27,工程B01)。次いで、二次射出装置Mi2を駆動制御し、射出スクリュを前進させることにより、図8に示す射出開始時点tsから樹脂材料R2の射出を開始する(ステップS28,工程B02)。この場合、射出スクリュは定格動作により前進させればよく、射出スクリュに対する速度制御は不要である。これにより、可塑化溶融した樹脂材料R2は特定組金型C2の二次キャビティCs内に充填される(ステップS29)。なお、射出充填する樹脂材料R2は、予め二次射出装置Mi2において可塑化されている。特定成形工程Z2iでは、樹脂材料R2の量的な誤差要因による影響を受けないため、前述した標準成形工程Z1nのような樹脂材料R1を正確に計量する計量動作は不要となり、必要量に対してある程度余裕を持たせた量を可塑化溶融すればよい。
また、樹脂材料R2の充填に伴い、図8に示すように、射出圧力Pdが上昇する(ステップS30)。そして、リミット圧力Psに近づき、リミット圧力Psに達すれば、リミット圧力Psに維持するための制御、即ち、オーバーシュートを防止する制御が行われ、射出圧力Pdはリミット圧力Ps(成形射出圧力Pi2)に維持される(ステップS31)。したがって、射出動作では実質的な一圧制御が行われる。なお、図8中、Vdは射出速度を示している。
さらに、特定組金型C2の二次キャビティCs内に樹脂材料R2が満たされることにより、特定組金型C2は樹脂材料R2により加圧され、固定型Cc2と移動型Cm2間に型隙間(パーティング開量)Lmが生じるとともに、最大時には成形隙間Lmpが生じる(ステップS32)。この成形隙間Lmpは、予め設定した成形型締力Pc2及び成形射出圧力Pi2により、0.03〜0.30〔mm〕の許容範囲、望ましくは、0.03〜0.20〔mm〕の許容範囲となり、良好なガス抜きが行われるとともに、不良の排除された良品成形が行われる。一方、時間の経過に伴って、特定組金型C2の二次キャビティCs内における樹脂材料R2の固化が進行するとともに、この固化に伴って、樹脂材料R2の圧縮(自然圧縮)が行われ、同時に冷却も進行する(ステップS33,S34,工程B03)。なお、このときの冷却時間Tcは、射出開始時点tsからの経過時間として予め設定することができる。また、図8に示すように、冷却時間Tcの経過した時点teでは、樹脂Rの自然圧縮により、固定型Cc2と移動型Cm2間の残留隙間Lmrは、予め設定した成形型締力Pc2及び成形射出圧力Pi2により、0.01〜0.10〔mm〕の許容範囲、望ましくは、0.01〜0.04〔mm〕の許容範囲となり、特定組金型C2の二次キャビティCs内における樹脂材料R2に対する自然圧縮が確実に行われるとともに、成形品Gにおける高度の品質及び均質性が確保される。他方、二次射出装置Mi2においては可塑化が行われる(ステップS35,工程B04)。この場合、前述したように、樹脂材料R2を正確に計量する計量動作は不要となり、必要量に対してある程度余裕を持たせた量を可塑化溶融すればよい。
そして、設定した冷却時間Tcが経過すれば、型締装置Mcを駆動制御し、可動ブロック23を後退移動させて型開を行う(ステップS36,工程E03)。型開が終了したなら、不図示の突出しシリンダにより成形品Gの突き出し(離型)を行う(ステップS37,工程E04)。次いで、回転駆動部24を駆動制御し、切換盤3を180〔゜〕回動変位させ、移動型Cm1と移動型Cm2の入れ替えを行う(ステップS38,工程E05)。これにより、一次成形を行う組金型C1は空状態になるとともに、二次成形を行う特定組金型C2には一次成形品Gmが収容された状態となる。この後、予め設定した一次移行設定時間Tfの経過待ちを行う(ステップS39,S40,工程E06)。そして、一次移行設定時間Tfが経過したなら、前述した処理手順と同様に型閉を行い、最初に、空の組金型C1に対して標準成形工程Z1nによる一次成形を行うなど、以下、同様の処理を繰り返せばよい(ステップS21…,工程E01…)。
以上の実施形態においては、型締装置Mcにより二つの組金型C1,C2を同時に型締し、成形工程Z1n,Z2iを順番に行うようにしたため、型締装置Mcは一台で足りる。これにより、型締装置Mcの簡素化を図れるとともに、各成形工程Z1n,Z2iを容易かつ確実に行える利点がある。また、特定成形工程Z2i以外の成形工程においては、設定した所定の型締力Pc1により組金型C1に対して型締を行い、かつ設定した所定の射出速度V1及び所定の射出圧力Pi1により組金型C1に樹脂材料R1を射出充填した後、保圧Phを付与する標準成形工程Z1nを用いるようにしたため、型締時や射出充填時の圧力や樹脂材料R1の種類に影響を受けにくい一次成形品G1の成形等においては、標準成形工程Z1nを用いることにより、標準成形工程Z1nのメリット、例えば、試し成形等の前段処理が不要になることによる前段処理の簡素化や成形立ち上げの高速化等のメリットを享受できる。
次に、本発明の変更実施形態に係る成形方法について、図12及び図13を参照して説明するとともに、本発明に係る成形方法を実施できる変更例に係る射出成形機Mについて図14を参照して説明する。
図12は、図1の実施形態に対して、一次成形においても、前述した特定成形工程Z2iと同一となる特定成形工程Z1iを行うようにしたものである。したがって、一次成形と二次成形の双方とも特定成形工程Z1i,Z2iが行われる。一次成形を行う特定成形工程Z1iは、二次成形を行う特定成形工程Z2iに対して、一次射出装置Mi1と組金型C1を用いる点で異なるものの基本的な処理手順は、前述した特定成形工程Z2iと同様に行うことができる。図12中、一次側の工程A11,A12,A13,A14はそれぞれ前述した二次側の工程B01,B02,B03,B04に対応する。
このように、特定成形工程Z2i以外の成形工程において、特定成形工程Z2iと同様の処理手順となる特定成形工程Z1iを用いれば、異材質成形全体の成形工程を特定成形工程Z1i,Z2iにより実施できるため、特定成形工程Z1iにおいても特定成形工程Z2iの効果に準ずる作用効果を得ることができ、成形品G全体において特定成形工程Z1i,Z2iのメリットを享受できる。その他、図12において、図1と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
図13は、図1の実施形態に対して、一次成形の成形工程と二次成形の成形工程を入れ替えたものである。したがって、一次成形において、前述した特定成形工程Z2iと同様の特定成形工程Z1iを行うとともに、二次成形において、前述した標準成形工程Z1nと同様の標準成形工程Z2nを行うようにしたものである。このような成形方法を用いる用途は少ないと思われるが、特殊な成形品の場合には、適用できる可能性があり、このような成形方法も実施可能という一例を示すものである。図13中、二次側の工程B11,B12,B13,B14,B15はそれぞれ前述した一次側の工程A01,A02,A03,A04,A05に対応する。その他、図13において、図1及び図12と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
図14は、型締装置Mcによる型締を行うに際し、型締装置Mcに二つの組金型C1,C2をそれぞれ個別に型締する二つの型締ユニットMc1,Mc2を設けることにより二つの組金型C1,C2を同時に型締し、二つの成形工程Z1n,Z2iを同時に行うようにしたものである。このため、型締装置Mcは、図2の型締装置Mcに対して、構成上は、可動ブロック23は使用しない。切換盤3は支持盤22上に配設するとともに、この切換盤3に、型締ユニットMc1を構成する一次型締シリンダ251と、型締ユニットMc2を構成する二次型締シリンダ252を配設し、この一次型締シリンダ251の駆動ラム251rの先端に移動型Cm1を固定し、二次型締シリンダ252の駆動ラム252rの先端に移動型Cm2を固定した。なお、図14は、原理的な構成を示したものであり、実際には、必要なガイド機構や支持機構を付加することにより、各移動型Cm1,Cm2の位置を正確に維持することが望ましい。
これにより、例えば、図1の実施形態に係る成形方法を実施する場合、二つの組金型C1,C2を同時に型締するとともに、型締時には、それぞれ独立して異なる型締力により型締することができる。この場合、一次側は型締力Pc1による高圧型締が行われるとともに、二次側が成形型締力Pc2による型締が行われ、型締力Pc1と成形型締力Pc2は相互に影響し合うことになるが、双方とも独立した圧力のフィードバック制御系を構成することにより、各型締力Pc1,Pc2を正確に維持することが望ましい。よって、このような型締装置Mcを構成すれば、従来の成形方法の場合と同様、生産能率を低下させることなく、生産効率の向上及び量産性を高めることができる。その他、図14において、図2と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
ところで、図14に示す型締装置Mcは、型締ユニットMc1側と型締ユニットMc2側を分離して構成することも可能である。即ち、固定盤2と支持盤22を中央で分割し、云わば、独立した二台の射出成形機(M1,M2)として構成することも可能である。この場合、一次成形を行う一方の射出成形機(M1)で成形した一次成形品Gmは、一旦組金型C1から取出し、二次成形を行う他方の射出成形機(M2)の組金型C2にマニュアル又は自動機械によりセットすればよい。
この方法は、組金型C1,C2をそれぞれ個別に型締する二台の型締装置(Mc1,Mc2)を使用し、二つの成形工程Z1n,Z2iを個別に行うようにしたものであり、独立した二つの型締装置(Mc1,Mc2)と独立した二つの射出装置Mi1,Mi2の使用、即ち、独立した二つの射出成形機(M1,M2)により成形可能となるため、本発明に係る成形方法を、汎用的な二台の射出成形機M…を利用して容易に実施することができる。したがって、この実施態様も本発明に係る成形方法に包含される。
よって、このような本実施形態に係る射出成形機Mの成形方法によれば、異材質成形を行う複数の成形工程に、予め、少なくとも一つの組金型(特定組金型)C2…により試し成形を行い、射出充填時における特定組金型C2…に所定の隙間(パーティング開量)Lm(Lmp,Lmr)…が生じ、かつ良品成形可能な射出圧力(成形射出圧力)Pi2…と型締力(成形型締力)Pc2…を求めて設定するとともに、生産時に、特定組金型C2…に対して設定された成形型締力Pc2…により型締し、かつ設定された成形射出圧力Pi2…をリミット圧力Psとして設定し、特定組金型C2…に対して樹脂材料R2…の射出充填を行った後、所定の冷却時間Tcを経過させる特定成形工程Z2i…を含ませたため、特に、型締時や射出充填時に圧力の影響を受けやすい成形品の形態或いは流動性が高い等の樹脂材料R2…を用いた場合であっても、バリ,変形,表面品質の低下等の発生を回避し、高品質及び均質性の高い成形品Gを得ることができるとともに、成形品Gに対するバリ除去工程等の追加工程が不要となり、良品の歩留まり向上及び生産能率の向上を図ることができる。
図10に、図1の実施形態に係る成形方法により、実際に異材質成形を行った成形品の写真を示すとともに、図11に、背景技術(特許文献1,特許文献2等)に係る成形方法により、実際に異材質成形を行った成形品の写真を示す。背景技術による成形方法では、図11に示す写真のような成形品を成形する場合、かなりのバリが発生してしまうが、図10に示す写真から明らかなように、本実施形態に係る成形方法により成形した成形品ではバリの発生は全く生じていない。なお、写真では明確に現れないが、成形品の表面品質についても、本実施形態に係る成形方法により成形した成形品は、背景技術による成形方法により成形した成形品に比べて、明らかに高い品質が得られることを確認できた。
また、異材質成形を行う場合であっても、特定成形工程Z2i…に基づく基本的な効果を享受できる。即ち、この特定成形工程Z2i…では、成形射出圧力Pi2…と成形型締力Pc2…を設定すれば足りるため、多段の射出速度,射出圧力(リミット圧力),保圧力,速度圧力切換位置等の正確性の要求される多くの成形条件をはじめ、正確な計量が要求される計量値(計量開始位置,計量終了位置)等の計量条件を含む各種成形条件の設定は不要となる。したがって、成形条件のシンプル化及び設定作業の容易化及び迅速化(能率化)を図ることができる。しかも、成形条件の数が少ないことは、何らかのトラブル要素が存在した場合、その原因を究明しやすい。即ち、正規の型締力を設定しても成形品が不良になる場合、その原因は組金型に存在することを容易に把握できるなど、品質管理を含むトータル管理の容易化を実現できる。加えて、使用するに従って組金型C1,C2…の状態や外部環境が変化した場合であっても、成形条件として成形型締力Pc2…が設定されるため、変化した誤差要因は影響しない。即ち、樹脂材料R2…の密度や射出量が若干変化したような場合であっても、一定の成形射出圧力Pi2…が付与されるため、樹脂材料R2…の量的な誤差要因による影響を受けず、常に一定の成形品質を維持することができる。
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、実施形態では、二つの組金型C1,C2を例示したが、複数の組金型C1,C2…、即ち、三つ以上の組金型C1,C2…に対して、三種以上の樹脂材料R1,R2…を射出充填して異材質成形を行う場合にも同様に適用することができる。また、切換盤3に設ける移動型Cm1は一つであっても実施可能である。一方、位置検出器4として反射型測距センサを例示したが、近接センサ等の非接触かつ隙間等を精度よく検出できる各種センサを利用できる。また、冷却時間Tcの経過後における移動型Cm2と固定型Cc2間に所定の残留隙間Lmrを生じさせることが望ましいが、残留隙間Lmrを生じさせない場合を排除するものではない。さらに、射出成形機Mとして、直圧方式の油圧式型締装置を用いた場合を例示したが、トグル方式の電動式型締装置を用いてもよい。この場合、トグルリンク機構を非ロックアップ状態にして型締を行うようにすれば、本来の使用態様では自然圧縮を実現できないトグル方式の型締装置Mcであっても自然圧縮が可能となり、特定成形工程Z2i,Z1iによる成形を、直圧方式の油圧式型締装置を用いた場合と同様に実現することができる。その他、成形隙間Lmpとして、0.03〜0.30〔mm〕の許容範囲を、残留隙間Lmrとして、0.01〜0.10〔mm〕の許容範囲をそれぞれ例示したが、これらの範囲に限定されるものではなく、新しい樹脂材料の種類等に応じて変更可能である。また、成形射出圧力Pi2は、良品成形可能な最小値又はその近傍の値に設定することが望ましいが、このような最小値又はその近傍の値以外となる場合を排除するものではない。