[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る高速カオス光信号生成光回路の構成例を示すブロック図である。
本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路は、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1と、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の後述する光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されたRZ(Return to Zero)型クロック信号光を2系統に分波する光分波部SP−1と、光分波部SP−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1内の後述する位相変調部R1,L1に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、位相変調部R1,L1に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、位相変調部R1,L1に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する光伝搬遅延差付与部D−D−1とから構成される。
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1は、図示しないクロック信号光源から出力される、ピーク光パワーが一定のRZ型のクロック信号光を受ける光入力ポートP−MZ−1−1と、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたRZ型クロック信号光を伝送する2つの干渉アームと、この2つの干渉アームの端部に設けられた2つの光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barと、光分波部SP−1で分波された2つの光信号をマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの干渉アーム内の後述する位相変調部R1,L1へ入力するための位相変調制御用の光入力ポートP−R1,P−L1と、2つの干渉アームに1つずつ設けられ、干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、光入力ポートP−R1,P−L1から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する位相変調部R1,L1とから構成される。
図1における100は一端が光入力ポートP−MZ−1−1に接続され他端が位相変調部L1の入力に接続された光導波路、101は一端が光導波路100に近接して配置され他端が位相変調部R1の入力に接続された光導波路、102は一端が位相変調部L1の出力に接続され他端が光出力ポートP−MZ−1−barに接続された光導波路、103は一端が位相変調部R1の出力に接続され他端が光出力ポートP−MZ−1−crossに接続され、一部が光導波路102と近接して配置された光導波路である。
光導波路100,102がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の一方の干渉アームを構成し、光導波路101,103がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の他方の干渉アームを構成している。光導波路100と光導波路101との間では、光信号の漏洩が発生し、光導波路100に入力された光信号は光導波路101にも入力される。光導波路102と光導波路103との間では、相互に光信号の漏洩が発生する。
また、104は一端が光出力ポートP−MZ−1−crossに接続され他端が光分波部SP−1の入力に接続された光導波路、105は一端が光分波部SP−1の第1の出力に接続され他端が光伝搬遅延差付与部D−D−1の入力に接続された光導波路、106は一端が光分波部SP−1の第2の出力に接続され他端が光入力ポートP−R1に接続された光導波路、109は一端が光伝搬遅延差付与部D−D−1の出力に接続され他端が光入力ポートP−L1に接続された光導波路である。
光入力ポートP−MZ−1−1に入力されるクロック信号光の光パワー変化を図2に示す。このように、図示しないクロック信号光源から光入力ポートP−MZ−1−1に入力されるクロック信号光は、ピーク光パワーが一定のRZ型の信号光である。
標準的なマッハツェンダー干渉型光強度変調部においては、干渉器を構成する2つの干渉アームを光が伝搬する際に位相差が生じない状態が変調駆動が行われていない状態であり、このとき入力側の干渉アームに対して異なる側の干渉アームの光出力ポートから光信号が100%出力される。また、2つの干渉アームを光が伝搬する際に位相差がπとなる状態においては、光入力ポートと同じ側の干渉アームの光出力ポートから光信号が100%出力される。
したがって、図1に示した高速カオス光信号生成光回路にクロック信号光が光入力ポートP−MZ−1−1から入力される場合、最初のクロック光パルスp0は、光入力ポートP−MZ−1−1と異なる側の干渉アームの光出力ポートP−MZ−1−crossから100%出力され、光分波部SP−1によりクロック光パルスp0−1,p0−2の2つに分波され、引き続き光伝搬遅延差付与部D−D−1により遅延を付与された後、それぞれ光入力ポートP−R1,P−L1から位相変調部R1,L1へと入力される。
図3(A)は光入力ポートP−MZ−1−1への入力クロック信号光の入力タイミングを示す図、図3(B)は位相変調部R1への入力信号光の入力タイミングを示す図、図3(C)は位相変調部L1への入力信号光の入力タイミングを示す図である。
図3(B)に示すように、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたクロック光パルスp0と次の時間ステップのクロック光パルスp1との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与されていない方のクロック光パルスp0−1が位相変調部R1に入力される。一方、図3(C)に示すように、クロック光パルスp1と次の時間ステップのクロック光パルスp2との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与された方のクロック光パルスp0−2が位相変調部L1に入力される。
位相変調部R1においては、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路100,101を介してクロック光パルスp1が入力される直前に、光入力ポートP−R1からクロック光パルスp0−1が入力されると、このクロック光パルスp0−1の光強度に応じて屈折率が変化する。こうして、位相変調部R1は、クロック光パルスp0−1の光強度に応じて、クロック光パルスp1の位相を変調する(相互位相変調)。
一方、位相変調部L1においては、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路100を介してクロック光パルスp1が入力された直後に、光入力ポートP−L1からクロック光パルスp0−2が入力されると、このクロック光パルスp0−2の光強度に応じて屈折率が変化する。こうして、位相変調部L1は、クロック光パルスp0−2の光強度に応じて、クロック光パルスp2の位相を変調する(相互位相変調)。
結果として、クロック光パルスp0−1が位相変調部R1に入力されてから、クロック光パルスp0−2が位相変調部L1に入力されるまでの間、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの干渉アームで位相差が生じることとなり、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスp1の光出力強度が変調されることとなる。
同様に、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたクロック光パルスp1と次の時間ステップのクロック光パルスp2との間のタイミングで、光分波部SP−1によって分波されたクロック光パルスp1−1,p1−2のうち光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与されていない方のクロック光パルスp1−1が位相変調部R1に入力される。一方、クロック光パルスp2と次の時間ステップのクロック光パルスp3との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与された方のクロック光パルスp1−2が位相変調部L1に入力される。
位相変調部R1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路100,101を介してクロック光パルスp2が入力される直前に、クロック光パルスp1の分波光であるクロック光パルスp1−1が光入力ポートP−R1から入力されると、このクロック光パルスp1−1の光強度に応じて、クロック光パルスp2の位相を変調する。
位相変調部L1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路100を介してクロック光パルスp2が入力された直後に、クロック光パルスp1の分波光であるクロック光パルスp1−2が光入力ポートP−L1から入力されると、このクロック光パルスp1−2の光強度に応じて、クロック光パルスp3の位相を変調する。結果として、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスp2の光出力強度が変調されることとなる。
以上のようにして、クロック光パルスp(t)(t=0,1,2,3,・・・・)と次の時間ステップのクロック光パルスp(t+1)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力され光分波部SP−1によって分波された一方のクロック光パルスp(t)が位相変調部R1に入力され、クロック光パルスp(t+1)と次の時間ステップのクロック光パルスp(t+2)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力され光分波部SP−1によって分波された他方のクロック光パルスp(t)が位相変調部L1に入力される。その結果、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスp(t+1)の光出力強度が変調される。こうして、クロック光パルスp1,p2,p3,・・・・の変調が連続して行われる。
図4はマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスの光強度を規格化した規格化光出力強度を示す図であり、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されたクロック光パルスが次の時間ステップのクロック光パルスに生じさせる位相変調の量が1.8261πである場合を示している。
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossから100%出力される状態にある条件下で、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されたクロック光パルスが次の時間ステップのクロック光パルスに生じさせる位相変調の量が十分且つ適当な大きさとなるように位相変調部R1,L1を設定することにより、例えば図4に示した場合のように光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスの強度が時系列でカオス状態となり、同時に、光出力ポートP−MZ−1−barから出力されるクロック光パルスの強度も時系列でカオス状態となる。
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−barから出力されるクロック光パルスの強度も時系列でカオス状態となる理由は、クロック光パルスの全光強度から、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力される同じクロック光パルスの光強度を引いた残りの光強度のクロック光パルスが光出力ポートP−MZ−1−barから出力されるからである。
こうして、本実施の形態では、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力される出力クロック信号光の光出力強度の振る舞いを乱雑なものとすることができる。100%出力時の光強度を1として、閾値を0.5として設定し、光強度が時系列でカオス状態となっている出力クロック信号光の光強度が閾値よりも大きい場合は2値化信号の値を1とし、出力クロック信号光の光強度が閾値以下であれば2値化信号の値を0とする2値化処理を行うと、2値の乱数列が得られる。
本実施の形態では、従来の乱数発生プログラムまたは電子回路による乱数生成方法では実現不可能であった10Gb/sを超える高速な乱数データ生成を実現することができる。また、本実施の形態では、非特許文献1に開示されたカオス・レーザーによる乱数生成方法のような複雑なシステム構成では困難であった、工学応用上必須となる再現性と制御性とを実現することができ、さらに高精度性とシステムの集積化とを実現することができる。
また、本実施の形態では、特許文献1に開示された光カオス信号源による乱数生成方法では実現不可能であったシステムの集積化を実現することができる。また、本実施の形態では、熱光学効果により2つの干渉アームの光路長差を制御してその光路長差に一定の関係性を持たせるように制御した複数のマッハツェンダー干渉器を用いて、それぞれのマッハツェンダー干渉器からの出力パワーにカオス写像関係性を実現する装置のように、光路長差情報記憶装置や温度による光路長差制御部等を持つ必要がなくなり、システムの高速化および集積化を実現することができる。
また、本実施の形態では、光ファイバの非線形屈折率効果に基づく全光の光カオス現象を用いる装置で困難であった、工学応用上必須となる再現性と制御性とを実現することができ、さらにシステムの集積化を実現することができる。
次に、本実施の形態の位相変調部R1,L1についてより詳細に説明する。図5は位相変調部R1の構成例を示すブロック図である。
位相変調部R1は、マッハツェンダー干渉回路であり、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の干渉アームにより伝送され光入力ポート1007に入力されたRZ型クロック信号光(以下、被位相変調信号光とする)と光分波部SP−1で分波され光入力ポート1008(図1のP−R1)に入力されたRZ型クロック信号光(以下、位相変調制御信号光とする)とを合波して、合波した信号光を2系統に分波する光干渉型合分岐手段であるマルチモード干渉カプラ(MMI)b1と、マルチモード干渉カプラb1から出力される2つの信号光を伝送する2つの光導波路アームと、2つの光導波路アームにより伝送される2つの信号光を合波して、合波した信号光を2系統に分波する光干渉型合分岐手段であるマルチモード干渉カプラb2と、2つの光導波路アームに1つずつ設けられ、被位相変調信号光を位相変調制御信号光の光強度に応じて位相変調する光位相変調制御部c1,c2と、2つの光導波路アームの一方に設けられ、外部から供給される注入電流量に応じて、信号光の位相を調整することが可能な位相調整部d1と、マルチモード干渉カプラb2の一方の光出力ポートに接続された受光部e1とから構成される。
図5における1010は一端が位相変調部R1の光入力ポート1007に接続され他端がマルチモード干渉カプラb1の第1の光入力ポートに接続された光導波路、1011は一端が位相変調部R1の光入力ポート1008に接続され他端がマルチモード干渉カプラb1の第2の光入力ポートに接続された光導波路、1012は一端がマルチモード干渉カプラb1の第1の光出力ポートに接続され他端が光位相変調制御部c1の光入力ポートに接続された光導波路、1013は一端がマルチモード干渉カプラb1の第2の光出力ポートに接続され他端が光位相変調制御部c2の光入力ポートに接続された光導波路、1014は一端が光位相変調制御部c1の光出力ポートに接続され他端が位相調整部d1の光入力ポートに接続された光導波路、1015は一端が光位相変調制御部c2の光出力ポートに接続され他端がマルチモード干渉カプラb2の第2の光入力ポートに接続された光導波路、1016は一端が位相調整部d1の光出力ポートに接続され他端がマルチモード干渉カプラb2の第1の光入力ポートに接続された光導波路、1018は一端がマルチモード干渉カプラb2の第1の光出力ポートに接続され他端が受光部e1の光入力ポートに接続された光導波路、1019は一端がマルチモード干渉カプラb2の第2の光出力ポートに接続され他端が位相変調部R1の光出力ポート1009に接続された光導波路である。
光導波路1012,1014,1016が位相変調部R1の一方の光導波路アームを構成し、光導波路1013,1015が位相変調部R1の他方の光導波路アームを構成している。
位相変調部L1の構成も位相変調部R1と同じである。位相変調部R1の場合、光入力ポート1007は図1の光導波路101に接続され、光入力ポート1008(図1のP−R1)は光導波路106に接続され、光出力ポート1009は光導波路103に接続される。位相変調部L1の場合、光入力ポート1007は図1の光導波路100に接続され、光入力ポート1008(図1のP−L1)は光導波路109に接続され、光出力ポート1009は光導波路102に接続される。
次に、図5に示した位相変調部R1,L1の動作を説明する。マルチモード干渉カプラb1は、光入力ポート1007に入力された被位相変調信号光と光入力ポート1008に入力された位相変調制御信号光とを合波して、合波した信号光を2系統に分波する。
次に、光位相変調制御部c1は、マルチモード干渉カプラb1から出力された被位相変調信号光と位相変調制御信号光との合波信号光の一方を入力とし、被位相変調信号光を位相変調制御信号光の光強度に応じて位相変調する。被位相変調信号光のパルスが入力される直前に、位相変調制御信号光のパルスが入力されると、この位相変調制御信号光の光強度に応じて光位相変調制御部c1の屈折率が変化する。こうして、光位相変調制御部c1は、位相変調制御信号光の光強度に応じて、被位相変調信号光の位相を変調する(相互位相変調)。
同様に、光位相変調制御部c2は、マルチモード干渉カプラb1から出力された被位相変調信号光と位相変調制御信号光との合波信号光の他方を入力とし、被位相変調信号光を位相変調制御信号光の光強度に応じて位相変調する。
以上のような位相変調を行う光位相変調制御部c1,c2としては、光導波路構造の半導体光増幅器(SOA)がある。また、量子ドット層を含む光導波路構造を光位相変調制御部c1,c2として用いてもよいし、定電圧駆動状態の半導体EA(Electro-Absorption)光変調器を光位相変調制御部c1,c2として用いてもよい。
次に、マルチモード干渉カプラb2は、光位相変調制御部c1,c2から出力された2つの信号光を合波して、合波した信号光を2系統に分波する。
このとき、位相調整部d1は、被位相変調信号光がマルチモード干渉カプラb2の第2の光出力ポート(光出力ポート1009)から選択的に出力され、位相変調制御信号光がマルチモード干渉カプラb2の第1の光出力ポートから選択的に出力されるように調整されている。したがって、被位相変調信号光は光出力ポート1009に出力され、位相変調制御信号光は受光部e1に出力される。
本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路において、位相変調部R1,L1から位相変調制御信号光が十分に除去されること無く被位相変調信号光と共に出力されると、位相変調制御信号光が時系列的に後の位相変調における雑音として働き、十分な位相変調を行うことが困難になるという問題がある。
そこで、本実施の形態では、マルチモード干渉カプラb1とマルチモード干渉カプラb2とを結ぶ2つの光導波路アームの一方に位相調整部d1を設けている。位相調整部d1は、外部から供給される注入電流量に応じて、信号光の位相を調整することが可能である。光位相変調制御部c1から出力された信号光の位相を位相調整部d1で調整することにより、被位相変調信号光がマルチモード干渉カプラb2の第2の光出力ポートから選択的に出力され、位相変調制御信号光がマルチモード干渉カプラb2の第1の光出力ポートから選択的に出力されるように、2つの光導波路アーム間の位相差を製造後に調整することができる。その結果、本実施の形態では、持続的に位相変調部R1,L1における十分な光位相変調を実現することができる。
ただし、位相調整部d1による調整を行うためには、マルチモード干渉カプラb2の第1、第2の光出力ポートからの光出力パワーを測定評価する必要がある。位相変調部R1のマルチモード干渉カプラb2の第2の光出力ポートは、光出力ポート1009を介してマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossと接続されている。したがって、光出力ポートP−MZ−1−crossからの光出力パワーを測定評価することで、位相変調部R1のマルチモード干渉カプラb2の第2の光出力ポートからの光出力パワーを測定評価することが可能である。同様に、位相変調部L1のマルチモード干渉カプラb2の第2の光出力ポートはマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−barと接続されているので、光出力ポートP−MZ−1−barからの光出力パワーを測定評価することで、位相変調部L1のマルチモード干渉カプラb2の第2の光出力ポートからの光出力パワーを測定評価することが可能である。
一方、マルチモード干渉カプラb2の第1の光出力ポートについては、通常時は使用しないので、位相変調部R1,L1の外に出力を引き出す必要がない。したがって、本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路が平面型光回路で作製されている場合に、マルチモード干渉カプラb2の第1の光出力ポートを平面型光回路上で閉じた構成にしていると、マルチモード干渉カプラb2の第1の光出力ポートからの信号光を、光回路に損失等の影響を与えずに取り出すことは困難である。仮に、光回路上に損失等の影響を与えることを前提に外部に光出力を取り出すための光出力ポートを位相変調部R1,L1の外に設けた場合でも、位相調整時には当該光出力ポートに対して個別の光結合系と光パワー検出器を用意しなければならない。
そこで、本実施の形態では、受光強度に応じた電流を外部に出力することが可能な受光部e1を、マルチモード干渉カプラb2の第1の光出力ポートに接続している。これにより、マルチモード干渉カプラb2の第1の光出力ポートを外部に引き出す必要がなくなり、光結合系と光パワー検出器が不要となる。
そして、光出力ポートP−MZ−1−crossからの光出力パワーを測定評価すると共に、位相変調部R1の受光部e1で検出された光出力パワーを評価することで、被位相変調信号光が位相変調部R1のマルチモード干渉カプラb2の第2の光出力ポートから選択的に出力され、位相変調制御信号光が位相変調部R1のマルチモード干渉カプラb2の第1の光出力ポートから選択的に出力されるように、位相変調部R1の位相調整部d1を調整することができる。同様に、光出力ポートP−MZ−1−barからの光出力パワーを測定評価すると共に、位相変調部L1の受光部e1で検出された光出力パワーを評価することで、被位相変調信号光が位相変調部L1のマルチモード干渉カプラb2の第2の光出力ポートから選択的に出力され、位相変調制御信号光が位相変調部L1のマルチモード干渉カプラb2の第1の光出力ポートから選択的に出力されるように、位相変調部L1の位相調整部d1を調整することができる。
こうして、本実施の形態では、光回路への損失等の影響を余分に与えずに、位相変調部R1,L1の各々の光導波路アームの実効長初期調整を行うことが可能となり、光回路の特性向上と、光回路の動作条件の初期調整の簡易化・経済化を図ることが可能となる。
また、位相変調部R1,L1を図6のように構成してもよい。図6の構成は、位相調整部d1の代わりに、マルチモード干渉カプラb1とマルチモード干渉カプラb2とを結ぶ2つの光導波路アームの他方に位相調整部d2を設けたものである。図6の構成の場合、光導波路1015の他端を位相調整部d2の光入力ポートに接続すればよい。図6の1017は一端が位相調整部d2の光出力ポートに接続され他端がマルチモード干渉カプラb2の第2の光入力ポートに接続された光導波路である。
位相調整部d2は、外部から供給される注入電流量に応じて、信号光の位相を調整することが可能である。図6の構成では、光位相変調制御部c2から出力された信号光の位相を位相調整部d2で調整することにより、被位相変調信号光がマルチモード干渉カプラb2の第2の光出力ポートから選択的に出力され、位相変調制御信号光がマルチモード干渉カプラb2の第1の光出力ポートから選択的に出力されるように、2つの光導波路アーム間の位相差を製造後に調整することができる。受光部e1を用いた位相調整部d2の調整の仕方は、位相調整部d1の場合と同様である。
また、位相変調部R1,L1を図7のように構成してもよい。図7の構成は、位相調整部d1とd2の両方を設けたものである。
また、位相変調部R1,L1を図8のように構成してもよい。図8の構成は、図5のように位相調整部d1を光位相変調制御部c1とマルチモード干渉カプラb2との間に設ける代わりに、マルチモード干渉カプラb1と光位相変調制御部c1との間に設けたものである。この場合、光導波路1012の他端を位相調整部d1の光入力ポートに接続すればよい。図8の1020は一端が位相調整部d1の光出力ポートに接続され他端が光位相変調制御部c1の光入力ポートに接続された光導波路である。
また、位相変調部R1,L1を図9のように構成してもよい。図9の構成は、図6のように位相調整部d2を光位相変調制御部c2とマルチモード干渉カプラb2との間に設ける代わりに、マルチモード干渉カプラb1と光位相変調制御部c2との間に設けたものである。この場合、光導波路1013の他端を位相調整部d2の光入力ポートに接続すればよい。図9の1021は一端が位相調整部d2の光出力ポートに接続され他端が光位相変調制御部c2の光入力ポートに接続された光導波路である。
また、位相変調部R1,L1を図10のように構成してもよい。図10の構成は、図8と図9を組み合わせて、位相調整部d1をマルチモード干渉カプラb1と光位相変調制御部c1との間に設け、位相調整部d2をマルチモード干渉カプラb1と光位相変調制御部c2との間に設けたものである。
また、位相変調部R1,L1を図11のように構成してもよい。図11の構成は、図5、図7のように位相調整部d1を光位相変調制御部c1とマルチモード干渉カプラb2との間に設け、図9、図10のように位相調整部d2をマルチモード干渉カプラb1と光位相変調制御部c2との間に設けたものである。
また、位相変調部R1,L1を図12のように構成してもよい。図12の構成は、図8、図10のように位相調整部d1をマルチモード干渉カプラb1と光位相変調制御部c1との間に設け、図6、図7のように位相調整部d2を光位相変調制御部c2とマルチモード干渉カプラb2との間に設けたものである。
なお、本実施の形態では、光出力ポートP−MZ−1−crossと光分波部SP−1の入力とを接続しているが、光出力ポートP−MZ−1−barと光分波部SP−1の入力とを接続するようにしてもよい。
本実施の形態において、高速カオス光信号生成光回路の出力信号光は、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの光出力ポートP−MZ−1−bar,P−MZ−1−crossの内のいずれか一方から得るようにすればよい。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図13は本発明の第2の実施の形態に係る高速カオス光信号生成光回路の構成例を示すブロック図である。
本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路は、第1の実施の形態の高速カオス光信号生成光回路に対して、光分波部SP−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光にそれぞれ所定の遅延を付与する光遅延部D−T−1を追加したものである。
本実施の形態では、光導波路105の他端を光遅延部D−T−1の第1の光入力ポートに接続し、光導波路106の他端を光遅延部D−T−1の第2の光入力ポートに接続すればよい。図13における107は一端が光遅延部D−T−1の第1の光出力ポートに接続され他端が光伝搬遅延差付与部D−D−1の入力に接続された光導波路、108は一端が光遅延部D−T−1の第2の光出力ポートに接続され他端が光入力ポートP−R1に接続された光導波路である。位相変調部R1,L1の構成は第1の実施の形態で説明したとおりである。
次に、本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路の動作について説明する。本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路にクロック信号光が光入力ポートP−MZ−1−1から入力される場合、最初のクロック光パルスp0は、光入力ポートP−MZ−1−1と異なる側の干渉アームの光出力ポートP−MZ−1−crossから100%出力され、光分波部SP−1によりクロック光パルスp0−1,p0−2の2つに分波され、引き続き光伝搬遅延差付与部D−D−1により遅延を付与された後、それぞれ光入力ポートP−R1,P−L1から位相変調部R1,L1へと入力される。
図14(A)は光入力ポートP−MZ−1−1への入力クロック信号光の入力タイミングを示す図、図14(B)は位相変調部R1−1への入力信号光の入力タイミングを示す図、図14(C)は位相変調部L1−1への入力信号光の入力タイミングを示す図である。図14(B)に示すように、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたクロック光パルスp0から時系列的にある一定の遅延ステップ時間T−1後のクロック光パルスpM1と次の時間ステップのクロック光パルスpM2との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与されていない方のクロック光パルスp0−1が位相変調部R1に入力される。一方、図14(C)に示すように、クロック光パルスpM2と次の時間ステップのクロック光パルスpM3との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与された方のクロック光パルスp0−2が位相変調部L1に入力される。
遅延ステップ時間T−1は、光遅延部D−T−1によってクロック信号光に付与される遅延時間である。すなわち、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されたクロック信号光は、光分波部SP−1により2つに分波され光遅延部D−T−1によって遅延ステップ時間T−1に相当する遅延が付与された後、一方のクロック信号光はそのまま光入力ポートP−R1に入力され、他方のクロック信号光は光伝搬遅延差付与部D−D−1により更に遅延が付与された後に光入力ポートP−L1に入力される。
位相変調部R1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路100,101を介してクロック光パルスpM2が入力される直前に、光入力ポートP−R1から入力されるクロック光パルスp0−1の光強度に応じて、クロック光パルスpM2の位相を変調する。
一方、位相変調部L1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路100を介してクロック光パルスpM2が入力された直後に、光入力ポートP−L1から入力されるクロック光パルスp0−2の光強度に応じて、クロック光パルスpM3の位相を変調する。
結果として、クロック光パルスp0−1が位相変調部R1に入力されてから、クロック光パルスp0−2が位相変調部L1に入力されるまでの間、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの干渉アームで位相差が生じることとなり、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスpM2の光出力強度が変調されることとなる。
同様に、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたクロック光パルスp1から遅延ステップ時間T−1後のクロック光パルスpM2と次の時間ステップのクロック光パルスpM3との間のタイミングで、光分波部SP−1によって分波されたクロック光パルスp1−1,p1−2のうち光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与されていない方のクロック光パルスp1−1が位相変調部R1に入力される。一方、クロック光パルスpM3と次の時間ステップのクロック光パルスpM4との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与された方のクロック光パルスp1−2が位相変調部L1に入力される。
位相変調部R1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路100,101を介してクロック光パルスpM3が入力される直前に、クロック光パルスp1の分波光であるクロック光パルスp1−1が光入力ポートP−R1から入力されると、このクロック光パルスp1−1の光強度に応じて、クロック光パルスpM3の位相を変調する。
位相変調部L1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路100を介してクロック光パルスpM3が入力された直後に、クロック光パルスp1の分波光であるクロック光パルスp1−2が光入力ポートP−L1から入力されると、このクロック光パルスp1−2の光強度に応じて、クロック光パルスpM4の位相を変調する。結果として、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスpM3の光出力強度が変調されることとなる。
以上のようにして、クロック光パルスp(i+Ns)(Nsは1以上の整数)と次の時間ステップのクロック光パルスp(i+Ns+1)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力され光分波部SP−1によって分波された一方のクロック光パルスp(i)が位相変調部R1に入力され、クロック光パルスp(i+Ns+1)と次の時間ステップのクロック光パルスp(i+Ns+2)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力され光分波部SP−1によって分波された他方のクロック光パルスp(i)が位相変調部L1に入力される。その結果、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスp(i+Ns+1)の光出力強度が変調される。こうして、クロック光パルスpM2,pM3,pM4,・・・・の変調が連続して行われる。
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossから100%出力される状態にある条件下で、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されたクロック光パルスがこのパルスよりも時間軸上で後ろに位置するクロック光パルスに生じさせる位相変調の量が十分且つ適当な大きさとなるように位相変調部R1,L1を設定することにより、例えば図4に示した場合のように光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスの強度が時系列でカオス状態となり、同時に、光出力ポートP−MZ−1−barから出力されるクロック光パルスの強度も時系列でカオス状態となる。
上記の光遅延部D−T−1を設けない場合、即ちT−1=0の場合、時間ステップiのクロック光パルスの光強度変調のために、直前の時間ステップi−1のクロック光パルスが用いられることとなる。このとき、100%出力時の光強度を1として、閾値を0.5として設定し、光強度が時系列でカオス状態となっている出力クロック信号光の光強度が閾値よりも大きい場合は2値化信号の値を1とし、出力クロック信号光の光強度が閾値以下であれば2値化信号の値を0とする2値化処理を行うと、2値の乱数列が得られる。
しかしながら、光遅延部D−T−1を設けない場合、光出力ポートP−MZ−1−crossまたはP−MZ−1−barから得られる出力クロック信号光は、物理乱数源として用いられる物理雑音のように完全に乱雑な特性を有していることを求められる応用分野には適さない。その理由は、一般的にカオス的な振る舞いをする力学系に従っている系は長期的には予測不能で乱雑な振る舞いをするが、時間ステップ上で隣接するパルス間の光強度には、例えば図15のリターンマップで示されるような明確な関係性・相関があり、ある時間ステップの光強度から次の時間ステップの光強度を予測することが容易となってしまうため、即ち、短期的にみて乱雑な振る舞いとなっていないためである。図15の例では、時間ステップiでの規格化光出力強度と次の時間ステップi+1での規格化光出力強度との間に相関性があることが示されている。
このような事情から、非特許文献1に開示されたカオス・レーザーによる乱数生成方法においては、2つのカオスレーザーから2つのカオス的出力光信号を得た後に、この2つの独立したカオス的出力光信号に対して論理的な演算処理を施すことにより、短期的にみても乱雑性の高い乱数列を得るようにしている。
これに対して、本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路においては、出力クロック信号光が時系列で短期的にみて乱雑でないという問題を、複数のカオス光源を用意することなく、かつ付加的な論理演算処理を施すことなく実現している。即ち、本実施の形態では、上記の遅延ステップ時間T−1が1ステップ時間(クロック光パルスの周期)以上の任意の値となるように光遅延部D−T−1を設けることにより問題を解決する。ここで、遅延ステップ時間T−1は、例えばクロック光パルスの周期の整数倍の時間である。
遅延ステップ時間T−1が1ステップ時間以上の任意の値となるように光遅延部D−T−1を設けた場合、出力クロック信号光のパルス列は、p(i),p(i+1),p(i+2),・・・・,p(i+Ns−1)のNs個のカオス状態のパルス列とp(i+Ns),p(i+Ns+1),p(i+Ns+2),・・・・,p(i+2Ns−1)のNs個のカオス状態のパルス列とが組み合わされ、p(i+Ns),p(i+Ns+1),p(i+Ns+2),・・・・,p(i+2Ns−1)のNs個のカオス状態のパルス列とp(i+2Ns),p(i+2Ns+1),p(i+2Ns+2),・・・・,p(i+3Ns−1)のNs個のカオス状態のパルス列とが組み合わされるといったように、独立したNs個のカオス状態のパルス列が図16のように組み合わされたものとなる。なお、Nsは、遅延ステップ時間T−1中のクロック光パルスの数であり、1以上の整数値である。
このようなパルスの組み合わせにより、現実世界では僅かな揺らぎによる初期値の差が物理的に避けがたいがために上記Ns個のカオス状態のパルス列は長期的に見ると予測不能で乱雑な振る舞いをすることとなり、加えてNs個のカオス状態のパルス列と別のNs個のカオス状態のパルス列との間の関係性も予測不能となる。したがって、本実施の形態では、T−1=0の場合に時系列上で隣接する任意の時間ステップiのパルスの光強度と時間ステップi+1のパルスの光強度との間に見られた明確な関係性・規則性を、図17に示すように失わせることができ、乱雑性が増した乱数列を生成することが可能となる。以上のように、本実施の形態では、第1の実施の形態と比較して更に乱雑性が増した乱数列を生成することが可能となる。
なお、本実施の形態では、光出力ポートP−MZ−1−crossと光分波部SP−1の入力とを接続しているが、光出力ポートP−MZ−1−barと光分波部SP−1の入力とを接続するようにしてもよい。
また、本実施の形態において、高速カオス光信号生成光回路の出力信号光は、第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の2つの光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から得るようにすればよい。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図18は本発明の第3の実施の形態に係る高速カオス光信号生成光回路の構成例を示すブロック図である。
本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路は、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1,MZ−2と、第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されたRZ型クロック信号光を2系統に分波する光分波部SP−1と、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから出力される光信号を2系統に分波する光分波部SP−2−1と、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−barから出力される光信号を2系統に分波する光分波部SP−2−2と、光分波部SP−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1内の後述する位相変調部R1−1,L1−1に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、位相変調部R1−1,L1−1に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、位相変調部R1−1,L1−1に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する光伝搬遅延差付与部D−D−1と、光分波部SP−2−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2内の後述する位相変調部R2,L2に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、位相変調部R2,L2に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、位相変調部R2,L2に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する光伝搬遅延差付与部D−D−2と、光分波部SP−2−2で分波された2系統のRZ型クロック信号光がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1内の後述する位相変調部R1−2,L1−2に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、位相変調部R1−2,L1−2に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、位相変調部R1−2,L1−2に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する光伝搬遅延差付与部D−D−2−1とから構成される。
本実施の形態のマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1は、図示しないクロック信号光源から出力される、ピーク光パワーが一定のRZ型のクロック信号光を受ける光入力ポートP−MZ−1−1と、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたRZ型クロック信号光を伝送する2つの干渉アームと、この2つの干渉アームの端部に設けられた2つの光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barと、光分波部SP−1で分波された2つの光信号をマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの干渉アーム内の後述する位相変調部R1−1,L1−1へ入力するための位相変調制御用の光入力ポートP−R1−1,P−L1−1と、光分波部SP−2−2で分波された2つの光信号をマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの干渉アーム内の後述する位相変調部R1−2,L1−2へ入力するための位相変調制御用の光入力ポートP−R1−2,P−L1−2と、2つの干渉アームに1つずつ設けられ、干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、光入力ポートP−R1−1,P−L1−1から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する位相変調部R1−1,L1−1と、位相変調部R1−1,L1−1よりも後ろの2つの干渉アームに1つずつ設けられ、干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、光入力ポートP−R1−2,P−L1−2から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する位相変調部R1−2,L1−2とから構成される。
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2は、図示しないクロック信号光源から出力される、ピーク光パワーが一定のRZ型のクロック信号光を受ける光入力ポートP−MZ−2−1と、この光入力ポートP−MZ−2−1に入力されたRZ型クロック信号光を伝送する2つの干渉アームと、この2つの干渉アームの端部に設けられた2つの光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barと、光分波部SP−2−1で分波された2つの光信号をマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の2つの干渉アーム内の後述する位相変調部R2,L2へ入力するための位相変調制御用の光入力ポートP−R2,P−L2と、2つの干渉アームに1つずつ設けられ、干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、光入力ポートP−R2,P−L2から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する位相変調部R2,L2とから構成される。
図18における200は一端が光入力ポートP−MZ−1−1に接続され他端が位相変調部L1−1の入力に接続された光導波路、201は一端が光導波路200に近接して配置され他端が位相変調部R1−1の入力に接続された光導波路、202は一端が位相変調部L1−1の出力に接続され他端が位相変調部L1−2の入力に接続された光導波路、203は一端が位相変調部R1−1の出力に接続され他端が位相変調部R1−2の入力に接続された光導波路、204は一端が位相変調部L1−2の出力に接続され他端が光出力ポートP−MZ−1−barに接続された光導波路、205は一端が位相変調部R1−2の出力に接続され他端が光出力ポートP−MZ−1−crossに接続され、一部が光導波路204と近接して配置された光導波路である。
光導波路200,202,204がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の一方の干渉アームを構成し、光導波路201,203,205がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の他方の干渉アームを構成している。光導波路200と光導波路201との間では、光信号の漏洩が発生し、光導波路200に入力された光信号は光導波路201にも入力される。光導波路204と光導波路205との間では、相互に光信号の漏洩が発生する。
また、206は一端が光入力ポートP−MZ−2−1に接続され他端が位相変調部L2の入力に接続された光導波路、207は一端が光導波路206に近接して配置され他端が位相変調部R2の入力に接続された光導波路、208は一端が位相変調部L2の出力に接続され他端が光出力ポートP−MZ−2−barに接続された光導波路、209は一端が位相変調部R2の出力に接続され他端が光出力ポートP−MZ−2−crossに接続され、一部が光導波路208と近接して配置された光導波路である。
光導波路206,208がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の一方の干渉アームを構成し、光導波路207,209がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の他方の干渉アームを構成している。光導波路206と光導波路207との間では、光信号の漏洩が発生し、光導波路206に入力された光信号は光導波路207にも入力される。光導波路208と光導波路209との間では、相互に光信号の漏洩が発生する。
また、210は一端が光出力ポートP−MZ−1−crossに接続され他端が光分波部SP−1の入力に接続された光導波路、211は一端が光分波部SP−1の第1の出力に接続され他端が光伝搬遅延差付与部D−D−1の入力に接続された光導波路、212は一端が光伝搬遅延差付与部D−D−1の出力に接続され他端が光入力ポートP−L1−1に接続された光導波路、213は一端が光分波部SP−1の第2の出力に接続され他端が光入力ポートP−R1−1に接続された光導波路である。
また、216は一端が光伝搬遅延差付与部D−D−2の出力に接続され他端が光入力ポートP−L2に接続された光導波路、219は一端が光伝搬遅延差付与部D−D−2−1の出力に接続され他端が光入力ポートP−R1−2に接続された光導波路、221は一端が光出力ポートP−MZ−2−crossに接続され他端が光分波部SP−2−1の入力に接続された光導波路、222は一端が光分波部SP−2−1の第1の出力に接続され他端が光伝搬遅延差付与部D−D−2の入力に接続された光導波路、223は一端が光分波部SP−2−1の第2の出力に接続され他端が光入力ポートP−R2に接続された光導波路、224は一端が光出力ポートP−MZ−2−barに接続され他端が光分波部SP−2−2の入力に接続された光導波路、225は一端が光分波部SP−2−2の第1の出力に接続され他端が光伝搬遅延差付与部D−D−2−1の入力に接続された光導波路、226は一端が光分波部SP−2−2の第2の出力に接続され他端が光入力ポートP−L1−2に接続された光導波路である。
光入力ポートP−MZ−1−1,P−MZ−2−1に入力されるクロック信号光の光パワー変化は図2に示したとおりである。図示しないクロック信号光源から光入力ポートP−MZ−1−1,P−MZ−2−1に入力されるクロック信号光は、ピーク光パワーが一定のRZ型の信号光である。
位相変調部R1−1,L1−1,R1−2,L1−2,R2,L2としては、第1の実施の形態の図5〜図12のいずれかの構成を用いることができる。位相変調部R1−1の場合、光入力ポート1007は光導波路201に接続され、光入力ポート1008(図18のP−R1−1)は光導波路213に接続され、光出力ポート1009は光導波路203に接続される。位相変調部L1−1の場合、光入力ポート1007は光導波路200に接続され、光入力ポート1008(図18のP−L1−1)は光導波路212に接続され、光出力ポート1009は光導波路202に接続される。
位相変調部R2の場合、光入力ポート1007は光導波路207に接続され、光入力ポート1008(図18のP−R2)は光導波路223に接続され、光出力ポート1009は光導波路209に接続される。位相変調部L2の場合、光入力ポート1007は光導波路206に接続され、光入力ポート1008(図18のP−L2)は光導波路216に接続され、光出力ポート1009は光導波路208に接続される。
一方、位相変調部R1−2,位相変調部L1−2については、ポート接続および内部回路の動作が位相変調部R1,L1,R1−1,L1−1,R2,L2とは異なる。すなわち、位相変調部R1−2,位相変調部L1−2の場合、1008,1009が光入力ポートとなり、1007が光出力ポートとなる。位相変調部R1−2の場合、光入力ポート1009は光導波路203に接続され、光入力ポート1008(図18のP−R1−2)は光導波路219に接続され、光出力ポート1007は光導波路205に接続される。位相変調部L1−2の場合、光入力ポート1009は光導波路202に接続され、光入力ポート1008(図18のP−L1−2)は光導波路226に接続され、光出力ポート1007は光導波路204に接続される。
位相変調部R1−2,位相変調部L1−2のマルチモード干渉カプラb2は、光入力ポート1009に入力された被位相変調信号光と光位相変調制御部c2からの信号光(図6、図7、図12の場合は位相調整部d2からの信号光)とを合波して、合波した信号光を2系統に分波し、一方の信号光を受光部e1と接続される第1の光出力ポートに出力し、他方の信号光を位相調整部d1と接続される第2の光出力ポート(図6、図8〜図10、図12の場合は光位相変調制御部c1と接続される第2の光出力ポート)に出力する。
位相変調部R1−2,位相変調部L1−2の光位相変調制御部c1は、マルチモード干渉カプラb2から出力された信号光を入力とし、被位相変調信号光を位相変調制御信号光の光強度に応じて位相変調する。
位相変調部R1−2,位相変調部L1−2のマルチモード干渉カプラb1は、光入力ポート1008に入力された位相変調制御信号光と光位相変調制御部c1からの信号光(図8、図10、図12の場合は位相調整部d1からの信号光)とを合波して、合波した信号光を2系統に分波し、一方の信号光を光位相変調制御部c2と接続される第1の光出力ポート(図9〜図11の場合は位相調整部d2と接続される第1の光出力ポート)に出力し、他方の信号光をポート1007と接続される第2の光出力ポートに出力する。
位相変調部R1−2,位相変調部L1−2の光位相変調制御部c2は、マルチモード干渉カプラb1から出力された信号光を入力とし、被位相変調信号光を位相変調制御信号光の光強度に応じて位相変調する。
そして、位相変調部R1−2,位相変調部L1−2の位相調整部d1,d2を、被位相変調信号光がマルチモード干渉カプラb1の第2の光出力ポート(光出力ポート1007)から選択的に出力され、位相変調制御信号光が受光部e1と接続されるマルチモード干渉カプラb2の第1の光出力ポートから選択的に出力されるように調整すればよい。
こうして、ポート接続は異なるが、位相変調部R1−2,位相変調部L1−2においても、位相変調部R1,L1,R1−1,L1−1,R2,L2と同様の動作を実現することができる。
次に、本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路の動作について説明する。本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路にクロック信号光が光入力ポートP−MZ−1−1から入力される場合、最初のクロック光パルスp0は、光入力ポートP−MZ−1−1と異なる側の干渉アームの光出力ポートP−MZ−1−crossから100%出力され、光分波部SP−1によりクロック光パルスp0−1,p0−2の2つに分波され、引き続き光伝搬遅延差付与手段D−D−1により遅延差を付与された後、それぞれ光入力ポートP−R1−1,P−L1−1から位相変調部R1−1,L1−1へと入力される。
図19(A)は光入力ポートP−MZ−1−1への入力クロック信号光の入力タイミングを示す図、図19(B)は位相変調部R1−1への入力信号光の入力タイミングを示す図、図19(C)は位相変調部L1−1への入力信号光の入力タイミングを示す図である。図19(B)に示すように、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたクロック光パルスp0と次の時間ステップのクロック光パルスp1との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与されていない方のクロック光パルスp0−1が位相変調部R1−1に入力される。一方、図19(C)に示すように、クロック光パルスp1と次の時間ステップのクロック光パルスp2との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与された方のクロック光パルスp0−2が位相変調部L1−1に入力される。
位相変調部R1−1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路200,201を介してクロック光パルスp1が入力される直前に、光入力ポートP−R1−1から入力されるクロック光パルスp0−1の光強度に応じて、クロック光パルスp1の位相を変調する。
一方、位相変調部L1−1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路200を介してクロック光パルスp1が入力された直後に、光入力ポートP−L1−1から入力されるクロック光パルスp0−2の光強度に応じて、クロック光パルスp1の位相を変調する。
結果として、クロック光パルスp0−1が位相変調部R1−1に入力されてから、クロック光パルスp0−2が位相変調部L1−1に入力されるまでの間、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの干渉アームで位相差が生じることとなり、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスp1の光出力強度が変調されることとなる。
同様に、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたクロック光パルスp1と次の時間ステップのクロック光パルスp2との間のタイミングで、光分波部SP−1によって分波されたクロック光パルスp1−1,p1−2のうち光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与されていない方のクロック光パルスp1−1が位相変調部R1−1に入力される。一方、クロック光パルスp2と次の時間ステップのクロック光パルスp3との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与された方のクロック光パルスp1−2が位相変調部L1−1に入力される。
位相変調部R1−1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路200,201を介してクロック光パルスp2が入力される直前に、クロック光パルスp1の分波光であるクロック光パルスp1−1が光入力ポートP−R1−1から入力されると、このクロック光パルスp1−1の光強度に応じて、クロック光パルスp2の位相を変調する。
位相変調部L1−1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路200を介してクロック光パルスp2が入力された直後に、クロック光パルスp1の分波光であるクロック光パルスp1−2が光入力ポートP−L1−1から入力されると、このクロック光パルスp1−2の光強度に応じて、クロック光パルスp2の位相を変調する。結果として、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスp2の光出力強度が変調されることとなる。
以上のようにして、クロック光パルスp(t)(t=0,1,2,3,・・・・)と次の時間ステップのクロック光パルスp(t+1)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力され光分波部SP−1によって分波された一方のクロック光パルスp(t)が位相変調部R1−1に入力され、クロック光パルスp(t+1)と次の時間ステップのクロック光パルスp(t+2)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力され光分波部SP−1によって分波された他方のクロック光パルスp(t)が位相変調部L1−1に入力される。その結果、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスp(t+1)の光出力強度が変調される。こうして、クロック光パルスp1,p2,p3,・・・・の変調が連続して行われる。
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossから100%出力される状態にある条件下で、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されたクロック光パルスが次の時間ステップのクロック光パルスに生じさせる位相変調の量が十分且つ適当な大きさとなるように位相変調部R1−1,L1−1を設定することにより、例えば図4に示した場合のように光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスの強度が時系列でカオス状態となり、同時に、光出力ポートP−MZ−1−barから出力されるクロック光パルスの強度も時系列でカオス状態となる。
但し、このように光出力強度が時系列でカオス状態となっている出力クロック信号光は、物理乱数源として用いられる物理雑音のように完全に乱雑な特性を有していることを求められる応用分野には適さない。その理由は、前記の図15で説明したとおりである。
そこで、本実施の形態においては、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の出力クロック信号光パルス列が時系列で短期的に見ると乱雑でないという問題を、付加的な論理演算処理を施すことなく解決している。本実施の形態では、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1とは別にマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2を設け、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから100%出力される状態にある条件下で、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力されたクロック光パルスが位相変調部R2,L2において次の時間ステップのクロック光パルスに生じさせる位相変調の量が十分且つ適当な大きさとなるように設定し、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されるクロック信号光と同期のとれたクロック信号光を光入力ポートP−MZ−2−1にも入力させる。
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1と同様に、クロック信号光がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光入力ポートP−MZ−2−1から入力される場合、最初のクロック光パルスp0は、光入力ポートP−MZ−2−1と異なる側の干渉アームの光出力ポートP−MZ−2−crossから100%出力され、光分波部SP−2−1によりクロック光パルスp0−1,p0−2の2つに分波され、引き続き光伝搬遅延差付与手段D−D−2により遅延差を付与された後、それぞれ光入力ポートP−R2,P−L2から位相変調部R2,L2へと入力される。
そして、光入力ポートP−MZ−2−1に入力されたクロック光パルスp0と次の時間ステップのクロック光パルスp1との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−2による光伝搬遅延が付与されていない方のクロック光パルスp0−1が位相変調部R2に入力される。一方、クロック光パルスp1と次の時間ステップのクロック光パルスp2との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−2による光伝搬遅延が付与された方のクロック光パルスp0−2が位相変調部L2に入力される。
位相変調部R2は、光入力ポートP−MZ−2−1から光導波路206,207を介してクロック光パルスp1が入力される直前に、光入力ポートP−R2から入力されるクロック光パルスp0−1の光強度に応じて、クロック光パルスp1の位相を変調する。位相変調部L2は、光入力ポートP−MZ−2−1から光導波路206を介してクロック光パルスp1が入力された直後に、光入力ポートP−L2から入力されるクロック光パルスp0−2の光強度に応じて、クロック光パルスp1の位相を変調する。
結果として、クロック光パルスp0−1が位相変調部R2に入力されてから、クロック光パルスp0−2が位相変調部L2に入力されるまでの間、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の2つの干渉アームで位相差が生じることとなり、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力されるクロック光パルスp1の光出力強度が変調されることとなる。
以上のようにして、クロック光パルスp(t)(t=0,1,2,3,・・・・)と次の時間ステップのクロック光パルスp(t+1)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力され光分波部SP−2−1によって分波された一方のクロック光パルスp(t)が位相変調部R2に入力され、クロック光パルスp(t+1)と次の時間ステップのクロック光パルスp(t+2)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力され光分波部SP−2−1によって分波された他方のクロック光パルスp(t)が位相変調部L2に入力される。その結果、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力されるクロック光パルスp(t+1)の光出力強度が変調される。こうして、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1と同様に、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2においても、クロック光パルスp1,p2,p3,・・・・の変調が連続して行われる。
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから出力される出力クロック信号光のパルス列は、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossから出力される出力クロック信号光のパルス列とクロック・タイミングが合い、且つ光出力強度が時系列でカオス状態となる。加えて、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから出力される出力クロック信号光のパルス列に生じているカオス状態は、カオス力学的な観点で、光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光のパルス列には全く影響を受けていない。
このため、カオスの特徴の1つであるバタフライ効果により、光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光パルス列に含まれる、ある時間ステップiでのパルスの光出力強度を、光出力ポートP−MZ−2−crossからの出力クロック信号光パルス列に含まれる、時間ステップiの直前の時間ステップi−1でのパルスの光出力強度に基づいて予測することができない状態、即ち光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光と光出力ポートP−MZ−2−crossからの出力クロック信号光とが互いに乱雑な状態となっている。
次に、光出力ポートP−MZ−2−barから出力され光分波部SP−2−2によって分波された2つの出力クロック信号光に対して光伝搬遅延差付与部D−D−2−1により伝搬遅延差を付与し、伝搬遅延差を付与した2つの出力クロック信号光をマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光入力ポートP−R1−2,P−L1−2から位相変調部R1−2,L1−2へと入力する。
位相変調部R1−2,L1−2は、位相変調部R1−1,L1−1とは独立に設けられ、位相変調部R1−1,L1−1から光導波路203,202を介して入力される入力クロック信号光の強度の最大値に対する位相変調量が十分且つ適当な大きさとなるように設定されている。このため、位相変調部R1−2,L1−2により、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの干渉アームで位相差が生じることとなる。
こうして、本実施の形態では、光出力ポートP−MZ−2−barからの出力クロック信号光パルス列に生じているカオス状態を、光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光パルス列に生じているカオス状態に対して畳み込むことにより、光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光の光出力強度の振る舞いを乱雑なものとすることができる。本実施の形態では、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1と光分波部SP−1と光伝搬遅延差付与部D−D−1とからなる光回路部を単独で駆動させた場合に見られた、時間ステップ上で隣接するパルス間の光強度の関係性を、図20に示すように失わせることができ、乱雑性が増した乱数列を生成することが可能となる。以上のように、本実施の形態では、第1の実施の形態と比較して更に乱雑性が増した乱数列を生成することが可能となる。
また、本実施の形態では、位相変調部R1−1,L1−1,R1−2,L1−2,R2,L2として図5〜図12のいずれかの構成を用いることにより、被位相変調信号光に位相変調を加えると同時に、位相変調制御信号光を十分な程度除去して、被位相変調信号光のみを位相変調部R1−1,L1−1,R1−2,L1−2,R2,L2の光出力ポートから選択的に出力させることができる。その結果、本実施の形態では、持続的に位相変調部R1−1,L1−1,R1−2,L1−2,R2,L2における十分な光位相変調を実現することができる。
なお、本実施の形態では、光出力ポートP−MZ−1−crossと光分波部SP−1の入力とを接続しているが、光出力ポートP−MZ−1−barと光分波部SP−1の入力とを接続するようにしてもよい。また、光出力ポートP−MZ−2−barと光分波部SP−2−1の入力とを接続し、光出力ポートP−MZ−2−crossと光分波部SP−2−2の入力とを接続するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、光伝搬遅延差付与部D−D−2−1の出力を光入力ポートP−R1−2と接続しているが、光伝搬遅延差付与部D−D−2−1の出力を光入力ポートP−L1−2と接続し、光分波部SP−2−2の出力のうち光伝搬遅延差付与部D−D−2−1による光伝搬遅延が付与されていない方の出力を光入力ポートP−R1−2と接続するようにしてもよい。
また、本実施の形態において、同一のクロック信号光源から出力されたRZ型のクロック信号光をあらかじめ分波して光入力ポートP−MZ−1−1,P−MZ−2−1に入力するようにしてもよいし、第1のクロック信号光源から出力されたRZ型のクロック信号光を光入力ポートP−MZ−1−1に入力すると共に第1のクロック信号光源と同期している第2のクロック信号光源から出力されたRZ型のクロック信号光を光入力ポートP−MZ−2−1に入力するようにしてもよい。
また、本実施の形態において、高速カオス光信号生成光回路の出力信号光は、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から得るようにすればよい。このとき、100%出力時の光強度を1として、閾値を0.5として設定し、出力信号光の光強度が閾値よりも大きい場合は2値化信号の値を1とし、出力信号光の光強度が閾値以下であれば2値化信号の値を0とする2値化処理を行うと、2値の乱数列が得られる。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図21は本発明の第4の実施の形態に係る高速カオス光信号生成光回路の構成例を示すブロック図である。
本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路は、第3の実施の形態の高速カオス光信号生成光回路に対して、光分波部SP−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光にそれぞれ所定の遅延時間T−1の遅延を付与する光遅延部D−T−1と、光分波部SP−2−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光にそれぞれ所定の遅延時間T−2(T−1≠T−2)の遅延を付与する光遅延部D−T−2とを追加したものである。
本実施の形態では、光導波路211の他端を光遅延部D−T−1の第1の光入力ポートに接続し、光導波路213の他端を光遅延部D−T−1の第2の光入力ポートに接続し、光導波路222の他端を光遅延部D−T−2の第1の光入力ポートに接続し、光導波路223の他端を光遅延部D−T−2の第2の光入力ポートに接続すればよい。図21における227は一端が光遅延部D−T−1の第1の光出力ポートに接続され他端が光伝搬遅延差付与部D−D−1の入力に接続された光導波路、228は一端が光遅延部D−T−1の第2の光出力ポートに接続され他端が光入力ポートP−R1−1に接続された光導波路、229は一端が光遅延部D−T−2の第1の光出力ポートに接続され他端が光伝搬遅延差付与部D−D−2の入力に接続された光導波路、230は一端が光遅延部D−T−2の第2の光出力ポートに接続され他端が光入力ポートP−R2に接続された光導波路である。
次に、本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路の動作について説明する。本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路において、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2が存在せず、クロック信号光が光入力ポートP−MZ−1−1から入力される場合、最初のクロック光パルスp0は、光入力ポートP−MZ−1−1と異なる側の干渉アームの光出力ポートP−MZ−1−crossから100%出力され、光分波部SP−1によりクロック光パルスp0−1,p0−2の2つに分波され、引き続き光伝搬遅延差付与部D−D−1により遅延を付与された後、それぞれ光入力ポートP−R1−1,P−L1−1から位相変調部R1−1,L1−1へと入力される。
前記の図14(A)〜図14(C)を参照すると、図14(A)は光入力ポートP−MZ−1−1への入力クロック信号光の入力タイミングを示し、図14(B)は位相変調部R1−1への入力信号光の入力タイミングを示し、図14(C)は位相変調部L1−1への入力信号光の入力タイミングを示している。
図14(B)に示したように、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたクロック光パルスp0から時系列的にある一定の遅延ステップ時間T−1後のクロック光パルスpM1と次の時間ステップのクロック光パルスpM2との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与されていない方のクロック光パルスp0−1が位相変調部R1−1に入力される。一方、図14(C)に示すように、クロック光パルスpM2と次の時間ステップのクロック光パルスpM3との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与された方のクロック光パルスp0−2が位相変調部L1−1に入力される。
遅延ステップ時間T−1は、光遅延部D−T−1によってクロック信号光に付与される遅延時間である。すなわち、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されたクロック信号光は、光分波部SP−1により2つに分波され光遅延部D−T−1によって遅延ステップ時間T−1に相当する遅延が付与された後、一方のクロック信号光はそのまま光入力ポートP−R1−1に入力され、他方のクロック信号光は光伝搬遅延差付与部D−D−1により更に遅延が付与された後に光入力ポートP−L1−1に入力される。
位相変調部R1−1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路200,201を介してクロック光パルスpM2が入力される直前に、光入力ポートP−R1−1から入力されるクロック光パルスp0−1の光強度に応じて、クロック光パルスpM2の位相を変調する。
一方、位相変調部L1−1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路200を介してクロック光パルスpM2が入力された直後に、光入力ポートP−L1−1から入力されるクロック光パルスp0−2の光強度に応じて、クロック光パルスpM3の位相を変調する。
結果として、クロック光パルスp0−1が位相変調部R1−1に入力されてから、クロック光パルスp0−2が位相変調部L1−1に入力されるまでの間、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの干渉アームで位相差が生じることとなり、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスpM2の光出力強度が変調されることとなる。
同様に、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたクロック光パルスp1から遅延ステップ時間T−1後のクロック光パルスpM2と次の時間ステップのクロック光パルスpM3との間のタイミングで、光分波部SP−1によって分波されたクロック光パルスp1−1,p1−2のうち光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与されていない方のクロック光パルスp1−1が位相変調部R1−1に入力される。一方、クロック光パルスpM3と次の時間ステップのクロック光パルスpM4との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与された方のクロック光パルスp1−2が位相変調部L1−1に入力される。
位相変調部R1−1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路200,201を介してクロック光パルスpM3が入力される直前に、クロック光パルスp1の分波光であるクロック光パルスp1−1が光入力ポートP−R1−1から入力されると、このクロック光パルスp1−1の光強度に応じて、クロック光パルスpM3の位相を変調する。
位相変調部L1−1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路200を介してクロック光パルスpM3が入力された直後に、クロック光パルスp1の分波光であるクロック光パルスp1−2が光入力ポートP−L1−1から入力されると、このクロック光パルスp1−2の光強度に応じて、クロック光パルスpM4の位相を変調する。結果として、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスpM3の光出力強度が変調されることとなる。
以上のようにして、クロック光パルスp(i+Ns)(Nsは1以上の整数)と次の時間ステップのクロック光パルスp(i+Ns+1)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力され光分波部SP−1によって分波された一方のクロック光パルスp(i)が位相変調部R1−1に入力され、クロック光パルスp(i+Ns+1)と次の時間ステップのクロック光パルスp(i+Ns+2)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力され光分波部SP−1によって分波された他方のクロック光パルスp(i)が位相変調部L1−1に入力される。その結果、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスp(i+Ns+1)の光出力強度が変調される。こうして、クロック光パルスpM2,pM3,pM4,・・・・の変調が連続して行われる。
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossから100%出力される状態にある条件下で、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されたクロック光パルスが次の時間ステップのクロック光パルスに生じさせる位相変調の量が十分且つ適当な大きさとなるように位相変調部R1−1,L1−1を設定することにより、例えば図4に示した場合のように光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスの強度が時系列でカオス状態となり、同時に、光出力ポートP−MZ−1−barから出力されるクロック光パルスの強度も時系列でカオス状態となる。
上記の光遅延部D−T−1を設けない場合、即ちT−1=0の場合、時間ステップiのクロック光パルスの光強度変調のために、直前の時間ステップi−1のクロック光パルスが用いられることとなる。このとき、100%出力時の光強度を1として、閾値を0.5として設定し、光強度が時系列でカオス状態となっている出力クロック信号光の光強度が閾値よりも大きい場合は2値化信号の値を1とし、出力クロック信号光の光強度が閾値以下であれば2値化信号の値を0とする2値化処理を行うと、2値の乱数列が得られる。
しかしながら、光遅延部D−T−1を設けない場合、光出力ポートP−MZ−1−crossまたはP−MZ−1−barから得られる出力クロック信号光は、物理乱数源として用いられる物理雑音のように完全に乱雑な特性を有していることを求められる応用分野には適さない。その理由は、前記の図15で説明したとおりである。
そこで、本実施の形態においては、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の出力クロック信号光パルス列が時系列で短期的に見ると乱雑でないという問題を、付加的な論理演算処理を施すことなく解決している。本実施の形態では、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1とは別にマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2を設け、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから100%出力される状態にある条件下で、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力されたクロック光パルスが位相変調部R2,L2において次の時間ステップのクロック光パルスに生じさせる位相変調の量が十分且つ適当な大きさとなるように設定し、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されるクロック信号光と同期のとれたクロック信号光を光入力ポートP−MZ−2−1にも入力させる。さらに、本実施の形態では、上記の遅延ステップ時間T−1が1ステップ時間(クロック光パルスの周期)以上の任意の値となるように光遅延部D−T−1を設けると共に、遅延ステップ時間T−2が1ステップ時間以上の任意の値となるように光遅延部D−T−2を設ける。ここで、遅延ステップ時間T−1,T−2は、例えばクロック光パルスの周期の整数倍の時間であり、T−1≠T−2である。
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1と同様に、クロック信号光がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光入力ポートP−MZ−2−1から入力される場合、最初のクロック光パルスp0は、光入力ポートP−MZ−2−1と異なる側の干渉アームの光出力ポートP−MZ−2−crossから100%出力され、光分波部SP−2−1によりクロック光パルスp0−1,p0−2の2つに分波され、光遅延部D−T−2により所定の遅延が付与され、さらに光伝搬遅延差付与手段D−D−2により遅延差を付与された後、それぞれ光入力ポートP−R2,P−L2から位相変調部R2,L2へと入力される。
図22(A)は光入力ポートP−MZ−2−1への入力クロック信号光の入力タイミングを示す図、図22(B)は位相変調部R2への入力信号光の入力タイミングを示す図、図22(C)は位相変調部L2への入力信号光の入力タイミングを示す図である。
図22(B)に示すように、光入力ポートP−MZ−2−1に入力されたクロック光パルスp0から時系列的にある一定の遅延ステップ時間T−2後のクロック光パルスpM2と次の時間ステップのクロック光パルスpM3との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−2による光伝搬遅延が付与されていない方のクロック光パルスp0−1が位相変調部R2に入力される。一方、図22(C)に示すように、クロック光パルスpM3と次の時間ステップのクロック光パルスpM4との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−2による光伝搬遅延が付与された方のクロック光パルスp0−2が位相変調部L2に入力される。
遅延ステップ時間T−2は、光遅延部D−T−2によってクロック信号光に付与される遅延時間である。すなわち、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力されたクロック信号光は光分波部SP−2−1により2つに分波され、引き続き光遅延部D−T−2によって遅延ステップ時間T−2に相当する遅延が付与された後、一方のクロック信号光はそのまま光入力ポートP−R2に入力され、他方のクロック信号光は光伝搬遅延差付与部D−D−2により更に遅延が付与された後に光入力ポートP−L2に入力される。
位相変調部R2は、光入力ポートP−MZ−2−1から光導波路206,207を介してクロック光パルスpM3が入力される直前に、光入力ポートP−R2から入力されるクロック光パルスp0−1の光強度に応じて、クロック光パルスpM3の位相を変調する。
一方、位相変調部L2は、光入力ポートP−MZ−2−1から光導波路206を介してクロック光パルスpM3が入力された直後に、光入力ポートP−L2から入力されるクロック光パルスp0−2の光強度に応じて、クロック光パルスpM4の位相を変調する。
結果として、クロック光パルスp0−1が位相変調部R2に入力されてから、クロック光パルスp0−2が位相変調部L2に入力されるまでの間、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の2つの干渉アームで位相差が生じることとなり、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力されるクロック光パルスpM3の光出力強度が変調されることとなる。
同様に、光入力ポートP−MZ−2−1に入力されたクロック光パルスp1から遅延ステップ時間T−2後のクロック光パルスpM3と次の時間ステップのクロック光パルスpM4との間のタイミングで、光分波部SP−2−1によって分波されたクロック光パルスp1−1,p1−2のうち光伝搬遅延差付与部D−D−2による光伝搬遅延が付与されていない方のクロック光パルスp1−1が位相変調部R2に入力される。一方、クロック光パルスpM4と次の時間ステップのクロック光パルスpM5との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−2による光伝搬遅延が付与された方のクロック光パルスp1−2が位相変調部L2に入力される。
位相変調部R2は、光入力ポートP−MZ−2−1から光導波路206,207を介してクロック光パルスpM4が入力される直前に、クロック光パルスp1の分波光であるクロック光パルスp1−1が光入力ポートP−R2から入力されると、このクロック光パルスp1−1の光強度に応じて、クロック光パルスpM4の位相を変調する。
位相変調部L2は、光入力ポートP−MZ−2−1から光導波路206を介してクロック光パルスpM4が入力された直後に、クロック光パルスp1の分波光であるクロック光パルスp1−2が光入力ポートP−L2から入力されると、このクロック光パルスp1−2の光強度に応じて、クロック光パルスpM5の位相を変調する。結果として、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力されるクロック光パルスpM4の光出力強度が変調されることとなる。
以上のようにして、クロック光パルスp(i+Qs)(Qsは1以上の整数)と次の時間ステップのクロック光パルスp(i+Qs+1)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力され光分波部SP−2−1によって分波された一方のクロック光パルスp(i)が位相変調部R2に入力され、クロック光パルスp(i+Qs+1)と次の時間ステップのクロック光パルスp(i+Qs+2)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力され光分波部SP−2−1によって分波された他方のクロック光パルスp(i)が位相変調部L2に入力される。その結果、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力されるクロック光パルスp(i+Qs+1)の光出力強度が変調される。こうして、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1と同様に、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2においても、クロック光パルスpM3,pM4,pM5,・・・・の変調が連続して行われる。
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから出力される出力クロック信号光のパルス列は、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossから出力される出力クロック信号光のパルス列とクロック・タイミングが合い、且つ光出力強度が時系列でカオス状態となる。加えて、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから出力される出力クロック信号光のパルス列に生じているカオス状態は、カオス力学的な観点で、光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光のパルス列には全く影響を受けていない。
このため、カオスの特徴の1つであるバタフライ効果により、光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光パルス列に含まれる、ある時間ステップiでのパルスの光出力強度を、光出力ポートP−MZ−2−crossからの出力クロック信号光パルス列に含まれる、時間ステップiの直前の時間ステップi−1でのパルスの光出力強度に基づいて予測することができない状態、即ち光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光と光出力ポートP−MZ−2−crossからの出力クロック信号光とが互いに乱雑な状態となっている。
次に、光出力ポートP−MZ−2−barから出力され光分波部SP−2−2によって分波された2つの出力クロック信号光に対して光伝搬遅延差付与部D−D−2−1により伝搬遅延差を付与し、伝搬遅延差を付与した2つの出力クロック信号光をマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光入力ポートP−R1−2,P−L1−2から位相変調部R1−2,L1−2へと入力する。
位相変調部R1−2,L1−2は、位相変調部R1−1,L1−1とは独立に設けられ、位相変調部R1−1,L1−1から光導波路203,202を介して入力される入力クロック信号光の強度の最大値に対する位相変調量が十分且つ適当な大きさとなるように設定されている。このため、位相変調部R1−2,L1−2により、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの干渉アームで位相差が生じることとなる。
こうして、本実施の形態では、光出力ポートP−MZ−2−barからの出力クロック信号光パルス列に生じているカオス状態を、光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光パルス列に生じているカオス状態に対して畳み込むことにより、光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光の光出力強度の振る舞いを乱雑なものとすることができる。
同時に、本実施の形態では、遅延ステップ時間T−1が1ステップ時間(クロック光パルスの周期)以上の任意の値となるように光遅延部D−T−1を設け、遅延ステップ時間T−2が1ステップ時間以上の任意の値となるように光遅延部D−T−2を設ける。
遅延ステップ時間T−1が1ステップ時間以上の任意の値となるように光遅延部D−T−1を設けた場合、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossから出力される出力クロック信号光のパルス列は、p(i),p(i+1),p(i+2),・・・・,p(i+Ns−1)のNs個のカオス状態のパルス列とp(i+Ns),p(i+Ns+1),p(i+Ns+2),・・・・,p(i+2Ns−1)のNs個のカオス状態のパルス列とが組み合わされ、p(i+Ns),p(i+Ns+1),p(i+Ns+2),・・・・,p(i+2Ns−1)のNs個のカオス状態のパルス列とp(i+2Ns),p(i+2Ns+1),p(i+2Ns+2),・・・・,p(i+3Ns−1)のNs個のカオス状態のパルス列とが組み合わされるといったように、独立したNs個のカオス状態のパルス列が図23のように組み合わされたものとなる。なお、Nsは、遅延ステップ時間T−1中のクロック光パルスの数であり、1以上の整数値である。
このようなパルスの組み合わせにより、上記Ns個のカオス状態のパルス列は長期的に見ると予測不能で乱雑な振る舞いをすることから、遅延ステップ時間T−1の間、光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光パルス列の光出力強度は全く乱雑な振る舞いをすることとなる。
同様に、遅延ステップ時間T−2が1ステップ時間以上の任意の値となるように光遅延部D−T−2を設けた場合、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから出力される出力クロック信号光のパルス列は、p(i),p(i+1),p(i+2),・・・・,p(i+Qs−1)のQs個のカオス状態のパルス列とp(i+Qs),p(i+Qs+1),p(i+Qs+2),・・・・,p(i+2Qs−1)のQs個のカオス状態のパルス列とが組み合わされ、p(i+Qs),p(i+Qs+1),p(i+Qs+2),・・・・,p(i+2Qs−1)のQs個のカオス状態のパルス列とp(i+2Qs),p(i+2Qs+1),p(i+2Qs+2),・・・・,p(i+3Qs−1)のQs個のカオス状態のパルス列とが組み合わされるといったように、独立したQs個のカオス状態のパルス列が組み合わされたものとなる。なお、Qsは、遅延ステップ時間T−2中のクロック光パルスの数であり、1以上の整数値である。
このようなパルスの組み合わせにより、上記Qs個のカオス状態のパルス列は長期的に見ると予測不能で乱雑な振る舞いをすることから、遅延ステップ時間T−2の間、光出力ポートP−MZ−2−crossからの出力クロック信号光パルス列の光出力強度は全く乱雑な振る舞いをすることとなる。
但し、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossから出力される出力クロック信号光パルス列において、時間ステップiのクロック光パルスと時間ステップi+Ns+1のクロック光パルスとの間には、図15に示したような明確な関係性が残ったままとなる。即ち、図15は時間ステップiでの光出力強度と次の時間ステップi+1での光出力強度との間の関係を示すものであるが、このような関係は時間ステップiと時間ステップi+Ns+1との間でも成り立つ。
一方、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから出力される出力クロック信号光パルス列の場合、時間ステップiの時点から見て時間ステップi+Ns+1の光出力強度が予測可能性のより低下した乱雑性のより高い振る舞いをするようになっている。この光出力ポートP−MZ−2−crossからの出力クロック信号光パルス列を用いてマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1内の位相変調部R1−2,L1−2を駆動することにより、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光の光出力強度の振る舞いに、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossからの出力クロック信号光の光出力強度の乱雑さを畳み込むことができる。
その結果、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1と光分波部SP−1と光遅延部D−T−1と光伝搬遅延差付与部D−D−1とからなる光回路部を単独で駆動させた場合に見られた、時間ステップ上で隣接するパルス間の光強度の関係性を、図24に示すように失わせることができ、乱雑性が増した乱数列を生成することが可能となる。こうして、本実施の形態では、第3の実施の形態と比較して更に乱雑性が増した乱数列を生成することが可能となる。
なお、本実施の形態では、光出力ポートP−MZ−1−crossと光分波部SP−1の入力とを接続しているが、光出力ポートP−MZ−1−barと光分波部SP−1の入力とを接続するようにしてもよい。また、光出力ポートP−MZ−2−barと光分波部SP−2−1の入力とを接続し、光出力ポートP−MZ−2−crossと光分波部SP−2−2の入力とを接続するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、光伝搬遅延差付与部D−D−2−1の出力を光入力ポートP−R1−2と接続しているが、光伝搬遅延差付与部D−D−2−1の出力を光入力ポートP−L1−2と接続し、光分波部SP−2−2の出力のうち光伝搬遅延差付与部D−D−2−1による光伝搬遅延が付与されていない方の出力を光入力ポートP−R1−2と接続するようにしてもよい。
また、本実施の形態では、光遅延部D−T−1と光遅延部D−T−2の両方を設ける場合について説明しているが、光遅延部D−T−1と光遅延部D−T−2のうちどちらか一方だけを設ける場合でも、超高速の光乱数生成要求に対応可能で、乱雑性の高い乱数を生成可能であるという効果を得ることができる。このときの効果の大きさは、(光遅延部D−T−1と光遅延部D−T−2の両方を設ける場合)>(光遅延部D−T−2を無くし光遅延部D−T−1だけを設ける場合)≧(光遅延部D−T−1を無くし光遅延部D−T−2だけを設ける場合)、という大小関係となる。光遅延部D−T−2を無くし光遅延部D−T−1だけを設けた場合の高速カオス光信号生成光回路の構成を図25に示し、光遅延部D−T−1を無くし光遅延部D−T−2だけを設けた場合の高速カオス光信号生成光回路の構成を図26に示す。
また、本実施の形態において、同一のクロック信号光源から出力されたRZ型のクロック信号光をあらかじめ分波して光入力ポートP−MZ−1−1,P−MZ−2−1に入力するようにしてもよいし、第1のクロック信号光源から出力されたRZ型のクロック信号光を光入力ポートP−MZ−1−1に入力すると共に第1のクロック信号光源と同期している第2のクロック信号光源から出力されたRZ型のクロック信号光を光入力ポートP−MZ−2−1に入力するようにしてもよい。
また、本実施の形態において、高速カオス光信号生成光回路の出力信号光は、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から得るようにすればよい。このとき、100%出力時の光強度を1として、閾値を0.5として設定し、出力信号光の光強度が閾値よりも大きい場合は2値化信号の値を1とし、出力信号光の光強度が閾値以下であれば2値化信号の値を0とする2値化処理を行うと、2値の乱数列が得られる。
第1の実施の形態〜第4の実施の形態の高速カオス光信号生成光回路は、光導波路部分を低損失な半導体導波路で構成し、位相変調部として上記のような構成を用い、全体を光半導体で集積化して製作すればよい。
また、第1の実施の形態〜第4の実施の形態の高速カオス光信号生成光回路は、光導波路部分をPLC(Planar Lightwave Circuit)で構成し、位相変調部として上記のような構成を用い、全体をPLCと光半導体のハイブリッドで製作してもよい。このような光回路は、文献「T.Ito,et al.,“Bit-rate and format conversion from 10-Gbit/s WDM channels to a 40-Gbit/s channel using a monolithic Sagnac interferometer integrated with parallelamplifier structure”,IEE Proc.-Optoelectron.,Vol.151,No.1,p.41-45,February 2004」や、文献「小川育生他,“PLCハイブリッド集積型半導体光増幅器モジュール”,The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,IEICE technical report. EMD 102(283),p.7-11,2002-08-22」に開示されている。
また、第1の実施の形態〜第4の実施の形態の高速カオス光信号生成光回路は、光導波路部分にフォトニック結晶導波路を用い、位相変調部として量子ドット群をコア層に埋め込んだ構成を用い、全体を一体集積化して製作してもよい。このような光回路は、文献「H.Nakamura,Y.Sugimoto,K.Kanamoto,N.Ikeda,Y.Tanaka,Y.Nakamura,S.Ohkouchi,Y.Watanabe,K.Inoue,H.Ishikawa and K.Asakawa,“Ultra-fast photonic crystal/quantum dot all-optical switch for future photonic networks”,Optics Express,vol.12,no.26,p.6606-6614,2004」に開示されている。
また、第1の実施の形態〜第4の実施の形態の高速カオス光信号生成光回路は、化合物半導体基板上やシリコン平面基板上に集積型光回路として作製された平面型光回路であってもよい。シリコン平面基板上に集積型光回路として作製された平面型光回路については、文献「板橋 聖一,“シリコンフォトニクスの研究開発動向”,NTT技術ジャーナル 2009.12,p.12-15,2009」に開示されている。