JP5814176B2 - ウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構 - Google Patents
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Description
これらの梃子式のキャリパブレーキでは、パッドアッセンブリが摩耗すると、ブレーキが効き始める時期が遅れて制動距離が長くなるという問題があった。
そこで、下記特許文献1には、ブレーキアームに、パッドアッセンブリの摩耗に伴う過剰ストロークが発生することがないように、通常、隙間調整機構であるアジャスタ機構をアクチュエータとブレーキアームの基端部との間に配設することが開示されている。
そして、パッドアッセンブリに摩耗が生じた場合には、蓋部108を取り外して軸棒104における係合部142に、外部からハンドルレンチ等のソケットを係合させて回転させることで、押棒105の雌ネジ151に対する軸棒104の雄ネジ141の螺合を進行させて、軸棒104と押棒105との軸方向距離を拡大させることで、ブレーキアームの過剰ストロークを抑制する隙間調整が可能となる。
さらに、自動隙間調整後の押棒105の戻りを確実に防止するためには、凹凸面152による制動力を高めざるを得ず、その結果、ブレーキ作動に伴う自動隙間調整時に大きな抵抗となり、ブレーキシリンダ101の圧力室102bに供給する圧力を高める必要があり、円滑なブレーキストロークの障害となる。一方これを防ぐため、凹凸面152による制動力を低くすると、ブレーキ非作動時、押棒105が戻ってしまい、隙間調整が無効になってしまう。
(1)ウェッジカムを形成したカムシャフトが軸方向に移動した際、前記ウェッジカムのカム作用によりブレーキアームの基端部を拡開揺動するウェッジカム式ブレーキにおいて、前記カムシャフトの先端部を、ブレーキ本体側の静止部に対しフリクション部材を介して位置調整可能に連結された調整ロッドに嵌合し、前記フリクション部材は、ブレーキ作動に伴い、前記カムシャフトに過剰ストロークが生じる際、摩擦力を発生することなく、前記調整ロッドが前記静止部に対して軸方向に移動して、前記カムシャフトの軸方向初期位置の変更を許容するとともに、ブレーキが解除された際は、前記カムシャフトに作用する戻り力に抗し、前記調整ロッドが前記静止部に対して移動するのを抑止する摩擦力を発生させるようにした。
このように本発明によれば、非常にシンプルな構成で、しかも大きな負荷を受ける規制体やストッパ等を必要とせず、信頼性の高いウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整を実現することができる。
図1は、ウェッジカム式ブレーキの全体構造を示し、ボディ1はサポート2を介して、車体側に固定され、サポート2の反対側には、一対のブレーキアーム3、3の中間部がブレーキアーム軸4、4によってそれぞれ軸支される。
ブレーキアーム3、3の各開放端(サポート2の反対側)にはパッドホルダ5を介してパッドアッセンブリ6、6が装着されている。
図2は、ブレーキが非作動の初期状態における図1のA−A断面を示しており、ブレーキアーム3、3の各基端部には、出力軸となるリンクロッド7、7の外側端が球面ブッシュ8により支持されており、このリンクロッド7、7の内側端は、球面ブッシュ9により、ローラアーム10、10に連結、支持されている。そして、ローラアーム10、10の下端は、ベアリング11、11を介してストラット12の両端部に軸支されて、リンク式倍力装置を構成している。
カムシャフト13の下側への移動に伴い、ローラアーム10、10の上端に取り付けられたカムローラ18、18は、カムシャフト13にナット19により取り付けられたウェッジカム20の傾斜面に乗り上げることになる。
自動隙間調整機構は、図3の要部拡大図に示すように、車体側に固定され、静止部となるボディ1に対して支持されたスリーブ部材22と、その内周部に嵌合された調整ロッド23と、この調整ロッド23内に摺動自在に嵌合されたカムシャフト13、そして、図7で後述するように、過剰ストローク時に調整ロッド23の後端面(図3の上端側)に、ウェッジカム20の前端面(図3の下端側)が衝接するように構成されている。
スリーブ部材22の内周面には、フリクション部材24が配設され、止め輪25によって抜け止めされている。なお、フリクション部材24により調整ロッド23の外周面に作用する摩擦力は、チャンバスプリング17の復元力により確実に大きくなるよう設定されているため、チャンバスプリング17の復元力が作用しても、互いの摺動は確実に規制されるようになっている。
これにより、パッドアッセンブリ等の新品の交換等の際に、リリースプラグ27による上方への付勢によって、カムシャフト13の軸方向の初期位置を変更して軸方向の原位置に容易に再設定できるので、パッドアッセンブリ等の新品の交換等が迅速に行える。
前述したように、カムシャフト13の先端部13A側には、本実施例の自動隙間調整機構が配設されている。
自動隙間調整機構は、静止部であるボディ1に支持されたスリーブ部材22と、その内周部に嵌合された調整ロッド23と、この調整ロッド23内に摺動自在に嵌合されたカムシャフト13、さらには、過剰ストローク時に調整ロッド23の後端面に前端面が衝接することになるウェッジカム20とから構成される。
図5は、図2と同様、自動隙間調整機構はもとよりブレーキも非作動の初期状態を示し、この状態から、図示外のエアーピストン16により、チャンバスプリング17の復元力に抗してカムシャフト13を軸方向他方側(図面下側)に作動させると、図6に示すように、通常のブレーキ作動状態となり、カムシャフト13に取り付けられて形成されたウェッジカム20の傾斜面にカムローラ18、18が乗り上げる。
この状態からブレーキ動作が解除されると、カムシャフト13は、チャンバスプリング17の復元力により、初期位置に復帰すべく図面上方へ後退する。その結果、カムシャフト13の先端部の径大部13Bが調整ロッド23における径小段差部23Aに衝接して初期位置となる。
これによって、図7に示すように、調整ロッド23の後端面(上端面)にウェッジカム20の前端面(下端面)が衝接することになる。カムシャフト13が過剰ストロークによりさらに進行(下降)すると、図8に示すように静止部であるスリーブ部材22と調整ロッド23との間に配設されたフリクション部材24の摩擦による抵抗値を超えて、スリーブ部材22に対して調整ロッド23が相対的に進行して突出し、隙間調整が完了する。
パッド等の摩耗により起因した過剰ストロークによって生じたブレーキアーム3、3の揺動隙間を解消すべく補償された隙間調整により、調整ロッド23がスリーブ部材22から相対的に進行して突出した状態となっていることから、隙間調整後のカムシャフト13の初期位置は原位置よりも隙間調整された調整ロッド23の突出分だけウェッジカム20も進行した位置にあり、したがって、ウェッジカム20の傾斜面とカム係合するローラアーム10、10も拡開した状態となっており。つまり、パッド等の摩耗分だけ予め進行した隙間調整状態が現出される。
図10(D)は、ウェッジカム20及びカムシャフト13が共に進行してブレーキアーム3、3が作動位置に揺動し、その開放端部に装着されたパッドアッセンブリ6、6がディスクロータ21の側面に挟持して圧接したブレーキ作動中の状態が示されている。
図10の例では、簡略化のため、ローラアーム10等により構成されるリンク式倍力装置ではなく、ウェッジカム20にて押し広げられるカムローラ18、18がリンクロッドを介して直接にブレーキアーム3、3の基端部を拡開するような形式となっているが、もちろん、図2のようなローラアーム13を備えたリンク式倍力装置としてもよい。
フリクション部材24は、例えば、スチール製の芯線を密に巻き付けることにより構成され、調整ロッド23に嵌合されている。また、スリーブ部材22の内部には、図において下方に向けて拡開するテーパ面が形成されており、調整ロッド23の外周面との間隙が上方に向かうにつれ徐々に狭くなっており、その上端は、フリクション部材24の芯線の径より確実に小さくなるよう設定されている。
なお、具体的には、この例では、フリクション部材24は、ばね鋼SUS304からなる芯線をしまり嵌めで螺旋状に巻き付けることにより形成されている。
このとき、フリクション部材24の上端付近が、スリーブ部材22の開口部に形成されたテーパ面の作用により、調整ロッド23の表面に向けて強力に押圧され、調整ロッド23が上昇しようとしても、その外周面とスリーブ部材22の開口部内面との間に強力な摩擦力が発生し、車両が大きく振動しても、調整ロッド23がスリーブ部材22に対し相対的に移動することが防止される。
なお、フリクション部材24を、スリーブ部材22の開口部に形成されたテーパ面に沿う形状、すなわち、下方に向けて拡開する形状にすれば、よりスムースな隙間調整と確実な係止を実現することができる。
要は、パッドアッセンブリ6のパッドが摩耗して、ブレーキ作動時にカムシャフト11が過剰にストロークした際、調整ロッド23が、ブレーキアーム3、3の揺動隙間を低減させる方向、すなわち、図12では下降を許容する方向には、摩擦力が低減され、一方、ブレーキが非作動になった際には、チャンバスプリング9による復元力に打ち勝って、調整ロッド23のスリーブ部材22に対する相対移動を確実に抑止するによう、強力な摩擦力を発生するようにすればよいから、フリクション部材24としてゴム等の合成樹脂からなる円筒部材で形成する場合は、調整ロッド23の内周面にテーパ面を設けることに代え、フリクション部材24の厚みを、上方に向けて徐々に厚くすることによりテーパ面を設けてもよい。
さらに、調整ロッドのスリーブ部材に対する摩擦付与部材としてのフリクション部材の材質、摩擦係数の選定、あるいは、スリーブ部材の内周側に配設するものに代えて、調整ロッドの外周側に配設するなどの配設形態、カムシャフトの先端部における径大部と調整ロッドにおける径小段差部との衝接形態、リリースプラグの形状、形式及びそのボディへの配設形態等についても適宜選定できる。
また、実施例では、鉄道車両用ブレーキを用いて説明したが、大型トラック等の自動車等にも本発明を適用できることは明らかである。
2 サポート
3 ブレーキアーム
4 ブレーキアーム軸
5 パッドホルダ
6 パッドアッセンブリ
7 リンクロッド
10 ローラアーム
13 カムシャフト
20 ウェッジカム
22 スリーブ部材
23 調整ロッド
24 フリクション部材
Claims (2)
- ウェッジカムを形成したカムシャフトが軸方向に移動した際、前記ウェッジカムのカム作用によりブレーキアームの基端部を拡開揺動するウェッジカム式ブレーキにおいて、
前記カムシャフトの先端部を、ブレーキ本体側の静止部に対しフリクション部材を介して位置調整可能に連結された調整ロッドに嵌合し、
前記フリクション部材は、ブレーキ作動に伴い、前記カムシャフトに過剰ストロークが生じる際、摩擦力を発生することなく、前記調整ロッドが前記静止部に対して軸方向に移動して、前記カムシャフトの軸方向初期位置の変更を許容するとともに、ブレーキが解除された際は、前記カムシャフトに作用する戻り力に抗し、前記調整ロッドが前記静止部に対して移動するのを抑止する摩擦力を発生させることを特徴とするウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。 - 前記調整ロッドを、ブレーキ本体に固定され、かつ、テーパ面が形成されたスリーブ部材の内部に嵌合するとともに、該調整ロッドの外周にフリクション部材を外嵌し、ブレーキ作動時に前記カムシャフトに過剰ストロークが生じる際には、前記フリクション部材が前記テーパ面の拡開方向に移動することにより、前記調整ロッドが前記ブレーキアームの揺動隙間を低減させる方向に移動するのを許容するとともに、前記ブレーキの非作動時には、前記フリクション部材が前記テーパ面の縮径方向に移動することにより、前記調整ロッドと前記スリーブ部材との相対移動を抑制するようにしたことを特徴とする請求項1に記載されたウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
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