JP5814169B2 - 磁心用粉末の製造方法 - Google Patents

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本発明は、軟磁性粉末を用いた磁心用粉末の製造方法に係り、特に、軟磁性粉末の表面に浸珪処理を行った磁心用粉末の製造方法に関する。
従来から、磁心用粉末を圧粉成形することにより、圧粉磁心(圧粉成形体)が製造されている。該圧粉磁心は、磁心用粉末を構成する軟磁性粉末同士の絶縁性を確保しつつ、用途に合わせた磁気特性を確保することが重要であり、多くの研究・開発が成されている。
例えば、軟磁性粉末として純鉄の鉄系軟磁性粉末(鉄粉)を用いた場合には、圧粉磁心は、最も高い磁束密度を確保することができる。これは、純鉄には不純物が介在していないので鉄粉は軟質であり、該鉄粉により密度の高い圧粉磁心を容易に圧粉成形することができるからである。
しかし、純鉄は比抵抗が低いため、該純鉄の軟磁性粉末を圧粉成形した場合には、圧粉磁心の渦電流損失が高くなってしまう。そこで、渦電流を低減させる方法として、鉄粉内部の抵抗を増加させるべく純鉄に珪素元素やアルミニウム元素を添加して、磁心用粉末を製造する場合がある。しかし、これらの元素を純鉄に添加した場合には、鉄の硬度が上昇することにより鉄粉そのものが硬化するため、圧粉磁心の密度が高めることは難しくなる。
このような点を鑑みて、たとえば、特許文献1には、軟磁性粉末の表面に浸珪処理を行う磁心用粉末の製造方法が提案されている。具体的には、図6に示すように、水素ガス雰囲気下で、磁心用粉末の製造方法において、炭素を含有した鉄系材料(Fe+C)からなる軟磁性粉末91の表面に、少なくともシリカ粉末92を接触させている。次に、シリカ粉末92を加熱することにより、シリカ粉末の二酸化珪素から珪素元素を脱離させ、脱離した珪素元素Siを軟磁性粉末91の表層93に浸透拡散させることにより浸珪処理を行う。これにより、浸珪処理により表層93の内部に珪素元素の濃度を高めた磁心用粉末を得ることができる。
そして、得られた磁心用粉末に、たとえばシリコーン樹脂などを被覆して、これを圧粉成形後、加熱処理を施すことにより、得られた圧粉磁心は、透磁率等が向上し、高周波域での磁気特性向上を高めることができる。
特開2011−063824号公報
特許文献1に示すような浸珪処理を行った場合、浸珪処理を行う前に含有された炭素は、シリカ粉末の二酸化珪素の酸素(元素)と反応して一酸化炭素となり、軟磁性粉末から放出される。したがって、発生する一酸化炭素を除去することにより、浸珪処理の反応を高めることができる。
しかしながら、含有したすべての炭素が、軟磁性粉末から放出されるわけではなく、たとえば、上述した反応の末期には、反応速度(反応の駆動力)が低下するため、一部の炭素は、不純物として浸珪処理後の軟磁性粉末の表層を含む内部に残存することがある。
そして、軟磁性粉末の内部に含まれる炭素の含有量が増加するに従って、図7に示すように、得られた圧粉磁心のヒステリシス損失が大きくなる傾向にあり、磁気特性が低下するおそれがあった。
このことを鑑みると、軟磁性粉末に含有する炭素を減少させるためには、図8に示すように、浸珪処理の処理段階で、軟磁性粉末の加熱温度を上昇させることが好ましいと考えられる。しかしながら、上昇できる加熱温度の上限値は、軟磁性粉末の製造上、限界がある。たとえ、加熱温度を上昇させて浸珪処理を行った場合であっても、含有する炭素量をさらに減少させるためには、処理時間をより長くしなければならなかった。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、炭素を含有した軟磁性粉末の表面に、浸珪処理を行うことを前提に、軟磁性粉末に含有する炭素量をより簡単に低減することができる磁心用粉末の製造方法を提供することにある。
上述した課題を解決すべく、発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の点に着眼した。具体的には、従来の浸珪処理では、軟磁性粉末を水素ガス、不活性ガス、または窒素ガス雰囲気下で昇温、均熱、および冷却の一連の温度管理を行なっており、ここでは、均熱時に浸珪処理を好適に行うべく、露点を例えば−50℃以下の低露点で、露点を管理していた。これは、均熱時に、その雰囲気に水分が存在すると、水分(HO)が、シリカ粒子の二酸化珪素および軟磁性粉末の炭素と個別に反応し、浸珪処理を好適に行うことができないからである。しかしながら、浸珪処理後の軟磁性粉末を冷却する段階では、このような低露点で軟磁性粉末の冷却を管理しなくてもよい点に着眼した。
そして、従来では、軟磁性粉末の冷却段階も継続して前記低露点に管理しているところ、ここで、露点を上げることにより、その雰囲気において積極的に水分(HO)を導入し、導入されたHOと、軟磁性粉末に含有する炭素を反応させ、浸珪処理反応の末期に残存する軟磁性粉末内の炭素を低減することができるとの新たな知見を得た。
本発明は、発明者らの新たな知見に基づくものであり、本発明に係る磁心用粉末の製造方法は、炭素を含有した鉄系材料からなる軟磁性粉末に、シリカ粉末を混合した混合粉末を、水素ガス、窒素ガス、不活性ガス、またはこれらのガスを混合した混合ガスからなるガス雰囲気下において加熱することにより、固相状態の軟磁性粉末に浸珪処理を行う工程を少なくとも含む磁心用粉末の製造方法であって、前記浸珪処理により加熱された軟磁性粉末を冷却する段階で、前記ガス雰囲気下における露点を−15℃以上に切り替える。
本発明によれば、炭素を含有した鉄系材料からなる軟磁性粉末に、シリカ粉末を混合した混合粉末を、水素ガス、窒素ガス、不活性ガス、またはこれらのガスを混合した混合ガスからなるガス雰囲気下において加熱する。
これにより、浸珪処理反応が発現させることができる。具体的には、シリカ粉末を構成する二酸化珪素の酸素と、軟磁性粉末に含有した炭素が反応して、一酸化炭素が生成されるともに、シリカ粉末を構成する珪素(元素)が二酸化珪素から脱離する。この脱離した珪素は、原子レベルで珪素元素が軟磁性粉末の表面に存在することになる。この結果、珪素元素を、軟磁性粉末の内部に比べて表面近傍の表層に、より高い濃度の珪素を浸透拡散することができる。
さらに、本発明では、浸珪処理後、前記浸珪処理により加熱された軟磁性粉末を冷却する段階で、前記ガス雰囲気下における露点を−15℃以上に切り替える。すなわち、浸珪処理反応が発現するガス雰囲気下における露点は、一般的には−50℃以下の低露点であるところ、この露点を−15℃以上の高露点に切り替える。
これにより、そのガス雰囲気において積極的に水分(HO)を導入し、導入されたHOと、軟磁性粉末に残存した炭素を反応させ、残存した軟磁性粉末内の炭素を低減することができる。このようにして得られた磁心用粉末を用いて圧粉磁心を製造した場合、磁心用粉末の内部には、不純物としての炭素がこれまでに比べて低減されているので、製造された圧粉磁心の磁気特性を向上させることができる。また、発明者らの後述する実験では、切り替える露点が−15℃未満の場合には、水分(HO)と軟磁性粉末内の炭素との反応が十分に発現しないという結果を得ている。
なお、本発明にいう露点(温度)とは、気体中の水蒸気が飽和に達して結露する温度であり、例えば、相対湿度100%のときの周囲温度である。ガス雰囲気下の水分量が少ないと、この露点温度が低くなる。一方、ガス雰囲気下の水分量が多いと、この露点温度が高くなる。すなわち、ガス雰囲気下に水分がどの程度含有されているかを示す指標であって、露点温度とガス雰囲気自体の温度とは無関係である。露点温度の測定は、熱処理を実施する炉体へ導入及び排出する雰囲気ガスの出入口において、ガス圧が1気圧の条件下で行われることが好ましく、本発明でいう露点は1気圧下(0.1MPa)における値を意味する。
ここで、より好ましい態様としては、前記浸珪処理における軟磁性粉末の加熱を、1000℃〜1200℃の温度範囲で行い、前記露点の切り替えを、冷却される前記軟磁性粉末の温度が、750℃以上の温度範囲にあるときに、行う。
この態様によれば、浸珪処理における軟磁性粉末の加熱を、1000℃〜1200℃の温度範囲で行うことにより、軟磁性粉末の表層に、シリカ粉末の二酸化珪素に由来する珪素元素を好適に浸透拡散させることができる。ここで、前記加熱を1000℃未満で行った場合、上述した浸珪処理反応が十分に発現し難くなることがある。一方、前記加熱を1200℃超えで行った場合には、軟磁性粉末内に残存する炭素は低減されるが、軟磁性粉末の粒子同士が凝着したりするおそれがあり、珪素が浸透した軟磁性粉末に液相が出現してしまうことがある。
さらに、露点の切り替えを、冷却される前記軟磁性粉末の温度が、750℃以上の温度範囲にあるときに行うことにより、軟磁性粉末に残存した炭素とガス雰囲気中のHOとの反応を好適に行うことができる。ここで、露点の切り替え時の温度が、750℃未満の場合には、この反応が十分に発現し難くなることがある。
本発明によれば、炭素を含有した軟磁性粉末の表面に、浸珪処理を行うことを前提に、含有する炭素量を低減した磁心用粉末を得ることができる。このようにして得られた磁心用粉末を用いて圧粉磁心を製造した場合、磁心用粉末の内部には、不純物としての炭素がこれまでに比べて低減されているので、圧粉磁心の磁気特性を向上させることができる。
本発明の実施形態に係る磁心用粉末の製造方法における、浸珪処理時の軟磁性粉末の加熱条件を説明するための図。 本発明の実施形態に係る磁心用粉末の製造方法を説明するための図であり、(a)は、軟磁性粉末とシリカ粉末を混合したときの軟磁性粉末の表層の状態を示した模式的概念図、(b)は、図1に示す均熱段階における軟磁性粉末の表層の状態を示した模式的概念図、(c)は、図1に示す冷却段階における軟磁性粉末の表層の状態を示した模式的概念図。 本実施形態に係る磁心用粉末を好適に製造するため装置構成を示した模式的概念図。 実施例1および比較例1における磁心用粉末に残存する炭素量を示した図。 露点の切り替え時の磁心用粉末の温度と、磁心用粉末に残存する炭素量との関係を示した図。 従来の磁心用粉末の製造方法における浸珪処理を説明するための図。 磁心用粉末に含有する炭素量と、これを用いて製造された圧粉磁心のヒステリシス損失(正規化した値)との関係を示した図。 従来の磁心用粉末の製造方法における浸珪処理時の軟磁性粉末の加熱温度と、軟磁性粉末の内部に残存する炭素の減少率との関係を示した図。
以下に、図面を参照して、本発明に係る磁心用粉末の製造方法の実施形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る磁心用粉末の製造方法における、浸珪処理時の軟磁性粉末の加熱条件を説明するための図である。図2は、本発明の実施形態に係る磁心用粉末の製造方法を説明するための図であり、(a)は、軟磁性粉末とシリカ粉末を混合したときの軟磁性粉末の表層の状態を示した模式的概念図、(b)は、図1に示す均熱段階における軟磁性粉末の表層の状態を示した模式的概念図、(c)は、図1に示す冷却段階における軟磁性粉末の表層の状態を示した模式的概念図である。図3は、本実施形態に係る磁心用粉末を好適に製造するため装置構成を示した模式的概念図である。
まず、軟磁性粉末として、炭素を含有した鉄系の軟磁性粉末を準備する。このような軟磁性粉末は、平均粒径が45〜150μmのガスアトマイズ又は水アトマイズにより製造されたアトマイズ粉末、又は合金インゴットをボールミル等で粉砕した粉砕粉などである。さらに、軟磁性粉末には、主成分として鉄を含み、さらに炭素以外にも、シリコン等が含有していてもよい。
ここで、軟磁性粉末に対する炭素の含有量は、0.3質量%〜3質量%であることが好ましい。さらに、炭素の含有量が0.3質量%未満の場合、後述する浸珪処理反応により、軟磁性粉末の表層に十分な量の珪素を浸透拡散させることができない。
一方、炭素の含有量が、3質量%を超えた場合、製造された磁心用粉末中に不純物として炭素が過多に残存してしまうことになり、これにより製造された圧粉磁心の磁気特性を損なうおそれがある。
次に、浸珪処理用のシリカ(二酸化珪素)粉末を準備する。シリカ粉末は、浸珪処理反応における軟磁性粉末との反応性等を考慮して、平均粒径が、一次粒子径で50nm程度の範囲にあることが好ましく、シリカ粉末は一般的に市販されている粉末であればよく、その自体の製造方法は、特に限定されない。
このようにして準備した、炭素を含有した鉄系材料からなる軟磁性粉末に、シリカ粉末を均一に混合した混合粉末を作成する。このような結果、図2(a)に示すように、軟磁性粉末11の表面に、シリカ粉末21aを接触させることができる。
ここで、軟磁性粉末は、シリカ粉末に対して浸珪処理反応が十分に発現可能な量を添加しており、混合粉末に対して、シリカ粉末は、0.5質量%〜6質量%の範囲にあることが好ましい。
このような混合粉末を用いて、図1に示す条件で、軟磁性粉末11に浸珪処理を行う。浸珪処理にあたっては、図3に示す加熱炉51内に、混合粉末Pを配置する。
次に、後述する雰囲気ガスを導入する前に、炉内を真空排気する。そして、炉内に、雰囲気ガス供給源41から、露点調整装置42、露点計43を介して、露点調整装置42で調整された雰囲気ガスを供給する。雰囲気ガス供給源41には、雰囲気ガスとして、水素ガス、窒素ガス、不活性ガス(たとえばアルゴン)、またはこれらのガスを混合した混合ガスが充填されている。本実施形態では、加熱炉51内の出口側にも露点計44を配置しており、入口及び出口側の露点計43,44で計測される露点が略等しい状態となるように、露点を管理する。ここで、露点は、雰囲気ガス中の水蒸気が凝結して露になりはじめるときの温度であり、露点調整後の雰囲気ガスを1気圧下での状態で特定したものである。
具体的には、軟磁性粉末を昇温および均熱する際には、露点調整装置42を用いて、炉内のガス雰囲気下における露点を−50℃以下に管理しながら、雰囲気ガス供給源41から、炉内に雰囲気ガスを送り込む。次に、ヒータ52を用いて炉内を昇温させ、加熱炉51内に配置された温度計53の計測温度に基づいて、混合粉末P(軟磁性粉末)の均熱時の加熱温度が、1000℃〜1200℃となるように、炉内温度を管理する。
このような条件で、混合粉末を上述したガス雰囲気下において加熱することにより、固相反応により浸珪処理を行うことができる。すなわち、軟磁性粉末を上述した加熱温度で均熱している際に、シリカ粉末の二酸化珪素と炭素との酸化還元反応を発生させ、二酸化珪素から珪素元素(Si)が脱離する(生成される)と共に、一酸化炭素(CO)ガスが生成される。この結果、図2(b)に示すように、脱離した珪素元素が鉄系粉末の表面から浸透し、軟磁性粉末の内部に拡散(主に表層に拡散)するので、軟磁性粉末の母材11aに、珪素元素が浸透した珪素浸透層12が形成される。
一方、鉄系粉末の表面に含有した炭素元素が一酸化炭素ガスとなり、鉄粉の少なくとも表面層は脱炭化される。そして、鉄粉表面の炭素含有量の減少により、鉄系粉末の内部にある炭素元素が表面に拡散し、該拡散した炭素も前記反応により一酸化炭素ガスとなる。この結果、不純物として炭素元素が軟磁性粉末に含有している場合には、炭素元素の含有量を低減することが可能となり、鉄系粉末の高純度化を図ることができる。
しかしながら、含有したすべての炭素が、軟磁性粉末から放出されるわけではなく、浸珪処理反応の末期には、反応速度(反応の駆動力)が低下するため、図2(b)に示すように、一部の炭素は、不純物として浸珪処理後の軟磁性粉末の表層を含む内部に残存する。
そこで、本実施形態では、図1に示すように、浸珪処理により加熱された軟磁性粉末を冷却する段階で、冷却される軟磁性粉末の温度が、750℃〜950℃の温度範囲になったときに、露点調整装置42で、ガス雰囲気下における露点を−50℃の低露点から−15℃以上の高露点に切り替える。露点の上限値は10℃であることが好ましい。なお、均熱終了後の温度(たとえば、1100℃)から常温までの冷却速度は、10℃/min程度である。
このように、露点を切り替えた結果、図2(c)に示すように、上記ガス雰囲気において積極的に炉内に水分(HO)を導入し、導入されたHOと、軟磁性粉末に残存した炭素を反応させ、二酸化炭素とメタンガスを発生させ、残存した軟磁性粉末の母材11aおよび珪素浸透層12内の炭素を低減することができる。
このようにして得られた磁心用粉末を用いて圧粉磁心を製造した場合、磁心用粉末の内部には、不純物としての炭素がこれまでに比べて低減されているので、製造された圧粉磁心の磁気特性を向上させることができる。
さらに、露点の切り替えを、冷却される前記軟磁性粉末の温度が、750℃〜950℃の温度範囲になったときに行うことにより、軟磁性粉末に残存した炭素とガス雰囲気中のHOとの反応を好適に行うことができる。ここで、露点の切り替え時の温度が、750℃未満の場合には、この反応が十分に発現し難くなることがある。
以下に本発明を実施例に基づき説明する。
〔実施例1〕
軟磁性粉末として、組成がFe−1%Cのガスアトマイズにより製造された鉄粉を準備した。さらに、この鉄粉の平均粒径50〜200μmとなるように、JIS−Z8801に規定する試験用篩い用いた。浸珪用粉末として平均粒径50nmのシリカ粉末を準備した。
そして、鉄粉の表面に二酸化珪素の粉末が接触するように、全粉末に対してシリカ粉末を2質量%添加、混合し、混合粉末を作製した。次に、炉内に投入後、炉内のガス雰囲気が、水素ガス100体積%となるように、炉内に水素ガスを導入し、さらに、炉内の露点を、−60℃に調整し、このような炉内の雰囲気下で、10℃/分で、常温から1100℃まで混合粉末を昇温し、1100℃で1時間均熱となるように加熱した。
さらに均熱終了後、1100℃〜常温まで、10℃/分で冷却し、冷却段階において、冷却される軟磁性粉末の温度が、950℃になった時点で、炉内の露点を0℃(−15℃以上)に切り替えた。このようにして、実施例1に係る磁心用粉末を作製した。
〔比較例1〕
実施例1と同じようにして、磁心用粉末を作製した。実施例1と相違する点は、炉内の露点温度を、−60℃に保持したまま、均熱後、軟磁性粉末を冷却させた点である。
<炭素残存量の測定>
実施例1および比較例1に係る磁心用粉末の炭素含有量(炭素残存量)を、(株)堀場製作所、炭素・硫黄分析装置EMIA−320V2により測定した。この結果を、図4に示す。
(結果1および考察1)
図4に示すように、実施例1に係る磁心用粉末には、ほとんど炭素が残存していなかった(0.02質量%以下であった)が、比較例1に係る磁心用粉末には、0.2質量%以上の炭素が残存していた。
このことから、実施例1に係る磁心用粉末に、炭素がほとんど残存していなかったのは、浸珪処理時における均熱後の冷却段階で、露点を上げたことにより、水分(HO)と軟磁性粉末内の炭素とが反応したからであると考えられる。
〔実施例2〕
実施例1と同じようにして、磁心用粉末を作製した。実施例1と相違する点は、冷却段階において、露点を切り替えるタイミングを、冷却される軟磁性粉末の温度が、950℃になった時点で、表1に示すように、冷却段階において、切り替えた露点を、−15℃にした点である。このようにして、得られた各磁心用粉末に対して、実施例1と同じように、磁心用粉末の炭素残存量を測定した。この結果を、表1に示す。
Figure 0005814169
(結果2および考察2)
図5に示すように、実施例2に係る磁心用粉末の炭素残存量は、比較例1の炭素残存量に比べて少なかった。このことから、浸珪処理により加熱された軟磁性粉末を冷却する段階で、ガス雰囲気下における露点を−15℃以上に切り替えることにより、水分(HO)と軟磁性粉末内の炭素との反応が少なくとも発現すると考えられる。
〔実施例3〕
実施例1と同じようにして、磁心用粉末を作製した。実施例1と相違する点は、図5に示すように、冷却段階において、露点を切り替えるタイミングを、冷却される軟磁性粉末の温度が、1100℃、950℃、850℃、750℃、650℃になった時点とした点である。このようにして、得られた各磁心用粉末に対して、実施例1と同じように、炭素含有量(炭素残存量)を測定した。この結果を、図5に示す。
(結果3および考察3)
図5に示すように、冷却される軟磁性粉末の温度が、750℃以上の温度範囲にあるときに、露点の切り替えることにより、水分(HO)と軟磁性粉末内の炭素との反応が促進されたと考えられ、これにより、磁心用粉末に含有する炭素を低減することができると考えられる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
11…軟磁性粉末、11a…軟磁性粉末の母材、12:珪素浸透層、41…雰囲気ガス供給源,42…露点調整装置,43…露点計,44…露点計,51…加熱炉,52…ヒータ,53…温度計

Claims (2)

  1. 炭素を含有した鉄系材料からなる軟磁性粉末に、シリカ粉末を混合した混合粉末を、水素ガス、窒素ガス、不活性ガス、またはこれらのガスを混合した混合ガスからなるガス雰囲気下において加熱することにより、固相状態の軟磁性粉末に浸珪処理を行う工程を少なくとも含む磁心用粉末の製造方法であって、
    前記浸珪処理において、前記ガス雰囲気下における露点を−50℃以下にして、前記軟磁性粉末を加熱し、
    前記浸珪処理により加熱された軟磁性粉末を冷却する段階で、前記ガス雰囲気下における露点を−15℃以上に切り替えることを特徴とする磁心用粉末の製造方法。
  2. 前記浸珪処理における軟磁性粉末の加熱を、1000℃〜1200℃の温度範囲で行い、
    前記露点の切り替えを、冷却される前記軟磁性粉末の温度が、750℃以上の温度範囲にあるときに、行うことを特徴とする請求項1に記載の磁心用粉末の製造方法。
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