JP2008140929A - 圧粉磁心及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】圧縮歪を開放するために十分に高い焼鈍温度で熱処理しつつ、絶縁破壊を起こさず、コアロスの小さな圧粉磁心及びその製造方法を提供する。
【解決手段】軟磁性合金から、所望の形状及び粒度の軟磁性粉末を製造する。有機バインダー及び高級脂肪酸系潤滑剤を添加混合し、所定形状の金型に充填して、所定の圧力で圧縮成形する。有機バインダーとしてシリコーン樹脂、高級脂肪酸系潤滑剤としてステアリン酸リチウムを用いる。かかる圧縮成形体に対して、炭酸ガス中で700〜1000℃の熱処理を行う。
【選択図】図1
【解決手段】軟磁性合金から、所望の形状及び粒度の軟磁性粉末を製造する。有機バインダー及び高級脂肪酸系潤滑剤を添加混合し、所定形状の金型に充填して、所定の圧力で圧縮成形する。有機バインダーとしてシリコーン樹脂、高級脂肪酸系潤滑剤としてステアリン酸リチウムを用いる。かかる圧縮成形体に対して、炭酸ガス中で700〜1000℃の熱処理を行う。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば、スイッチング電源等に用いられる平滑用チョークコイル等において、磁心として使用される圧粉磁心及びその製造方法に関する。
高周波で用いられるチョークコイルとしては、一般的にフェライト磁心や圧粉磁心が使用されている。このうち、フェライト磁心は、軟磁性フェライトを用いるため、飽和磁束密度が小さいという問題を有している。これに対して、金属粉末を成形して作製される圧粉磁心は、軟磁性フェライトに比べて高い飽和磁束密度を持つため、直流重畳特性に優れている。
一般的に、圧粉磁心は、磁性金属の粉末を有機バインダーなどと均一に混合して、所定形状の金型に充填した後、高圧で圧縮成形し、熱処理を施すことにより作製される。しかし、このように高圧の圧縮成形を行うと、粒子間の絶縁が保てず、透磁率の周波数特性の低下、コアロスの増大を招く可能性がある。一方、粉末粒子間の絶縁を確保するために、有機バインダーなどを大量に混合すると、金属粉末の占積率が低下するなどの問題があった。
これに対処するため、従来から、以下のような技術が提案されていた。
(1) 圧粉磁心の絶縁剤として、シリコーン樹脂を用いる(特許文献1)。
(2) 出発原料として、重量平均粒径が50μm以下である軟磁性粉末を用いる。この出発原料100質量部に対し、リン酸またはリン酸を必須成分として含む溶質成分の濃度が0.5〜50質量%である水溶液1〜10質量部を混合して、軟磁性粉末の表面が絶縁皮膜された粉末にする(特許文献2)。
(1) 圧粉磁心の絶縁剤として、シリコーン樹脂を用いる(特許文献1)。
(2) 出発原料として、重量平均粒径が50μm以下である軟磁性粉末を用いる。この出発原料100質量部に対し、リン酸またはリン酸を必須成分として含む溶質成分の濃度が0.5〜50質量%である水溶液1〜10質量部を混合して、軟磁性粉末の表面が絶縁皮膜された粉末にする(特許文献2)。
(3) SiO2を生成する化合物を含む粉末もしくは溶液と、MgCO3粉末もしくはMgOを、圧粉磁心の原材料に混合し、プレス、熱処理する。これにより、磁性粉末粒子間に絶縁体を介在させる(特許文献3)。
(4) 鉄、珪素、アルミニウムを主体とする合金粉末を用いる。この合金粉末を酸化性雰囲気中250〜950℃の温度で熱処理し、シリコーン樹脂を混合後、圧縮成形した後、非酸化性雰囲気500〜1100℃で熱処理する。これにより、高透磁率でしかも高絶縁性を有する圧粉磁心とする(特許文献4)。
(4) 鉄、珪素、アルミニウムを主体とする合金粉末を用いる。この合金粉末を酸化性雰囲気中250〜950℃の温度で熱処理し、シリコーン樹脂を混合後、圧縮成形した後、非酸化性雰囲気500〜1100℃で熱処理する。これにより、高透磁率でしかも高絶縁性を有する圧粉磁心とする(特許文献4)。
ところで、上記のように、圧粉磁心の絶縁性を改善するための従来技術においては、以下に述べる通り、コアロス(磁心損失)の十分な低減には至っていない。
(1) 特許文献1
まず、特許文献1に開示された発明の目的は、従来のセンダスト合金からなる圧粉磁心のように、透磁率が低下せず、コアロスも小さく、小型化も可能である圧粉磁心およびこの圧粉磁心の素材として適した軟磁性合金粉末を提供することにある。しかし、特許文献1に記載された実施例から明らかなように、Siが6.6wt%残部Fe合金において、100kHz,300Gでのコアロスとして、83kW/m3を得ているに過ぎず、依然としてコアロスは大きい。
(1) 特許文献1
まず、特許文献1に開示された発明の目的は、従来のセンダスト合金からなる圧粉磁心のように、透磁率が低下せず、コアロスも小さく、小型化も可能である圧粉磁心およびこの圧粉磁心の素材として適した軟磁性合金粉末を提供することにある。しかし、特許文献1に記載された実施例から明らかなように、Siが6.6wt%残部Fe合金において、100kHz,300Gでのコアロスとして、83kW/m3を得ているに過ぎず、依然としてコアロスは大きい。
(2) 特許文献2
特許文献2については、煩雑な付加工程が必要であり、且つSi−Al−Fe合金を対象としているため、透磁率およびコアロスについては、必ずしも優れていない。
特許文献2については、煩雑な付加工程が必要であり、且つSi−Al−Fe合金を対象としているため、透磁率およびコアロスについては、必ずしも優れていない。
(3) 特許文献3
特許文献3では、1重量%のシリコーン樹脂のみでは、800℃の熱処理において絶縁低下を生じるが、SiO2、MgCO3MgO粉末をシリコーン樹脂と一緒に添加することにより、高温での絶縁劣化を防止している。しかし、特許文献3に記載された実施例から明らかなように、Siが5.0wt%残部Fe合金において、20kHz,0.1Tのコアロス500kW/m3を得ているが、コアロスとしては依然として大きな値である。
特許文献3では、1重量%のシリコーン樹脂のみでは、800℃の熱処理において絶縁低下を生じるが、SiO2、MgCO3MgO粉末をシリコーン樹脂と一緒に添加することにより、高温での絶縁劣化を防止している。しかし、特許文献3に記載された実施例から明らかなように、Siが5.0wt%残部Fe合金において、20kHz,0.1Tのコアロス500kW/m3を得ているが、コアロスとしては依然として大きな値である。
(4) 特許文献4
特許文献4では、粉体の酸化性雰囲気での熱処理が加わること、また請求項では述べていないが、比較的低圧5ton/cm2での成形であるため、透磁率が35程度とかなり低い圧粉磁心を対象としている。また、絶縁耐圧性は述べているものの、コアロスについては言及していない。
特許文献4では、粉体の酸化性雰囲気での熱処理が加わること、また請求項では述べていないが、比較的低圧5ton/cm2での成形であるため、透磁率が35程度とかなり低い圧粉磁心を対象としている。また、絶縁耐圧性は述べているものの、コアロスについては言及していない。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、圧縮歪を開放するために十分に高い焼鈍温度で熱処理しつつ、絶縁破壊を起こさず、コアロスの小さな圧粉磁心及びその製造方法を提供することである。
上記の目的を達成するため、本発明の圧粉磁心は、軟磁性粉末と、これらを結着する有機バインダーと高級脂肪酸系潤滑剤とを含む圧縮成形体から成る圧粉磁心において、前記圧縮成形体が、炭酸ガス雰囲気中700〜1000℃の温度で熱処理されていることを特徴とする。また、本発明の圧粉磁心の製造方法は、軟磁性粉末と、これらを結着する有機バインダーと高級脂肪酸系潤滑剤とを含む圧縮成形体を、炭酸ガス雰囲気中700〜1000℃の温度で熱処理することを特徴とする。
他の望ましい態様としては、次のような圧粉磁心及びその製造方法が考えられる。
(1) 軟磁性粉末が、珪素(Si)を3〜7%含む。
(2) 軟磁性粉末の粒径が、5〜103μmである。
(3) 有機バインダーが、シリコーン樹脂である。
(4) 高級脂肪酸系潤滑剤が、ステアリン酸リチウムである。
(5) 熱処理後の比透磁率が、100kHz、0.4A/mにおいて、50〜150である。
(1) 軟磁性粉末が、珪素(Si)を3〜7%含む。
(2) 軟磁性粉末の粒径が、5〜103μmである。
(3) 有機バインダーが、シリコーン樹脂である。
(4) 高級脂肪酸系潤滑剤が、ステアリン酸リチウムである。
(5) 熱処理後の比透磁率が、100kHz、0.4A/mにおいて、50〜150である。
以上の通り、本発明によれば、圧縮成形体を炭酸ガス雰囲気で高温で熱処理することにより、軟磁性粉末表面に薄い酸化皮膜が形成されるので、圧縮歪みを開放しつつ、絶縁性が劣化することがなく、低いコアロスと高い透磁率を実現可能な圧粉磁心及びその製造方法を提供することができる。
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態とする)を説明する。
[実施形態の構成及び製法]
本実施形態は、まず、軟磁性合金から、所望の形状及び粒度の軟磁性粉末を製造する。この粉末の製造方法としては、例えば、アトマイズ法、機械粉砕法等が考えられるが、特定の手法には限定されない。
[実施形態の構成及び製法]
本実施形態は、まず、軟磁性合金から、所望の形状及び粒度の軟磁性粉末を製造する。この粉末の製造方法としては、例えば、アトマイズ法、機械粉砕法等が考えられるが、特定の手法には限定されない。
次に、有機バインダー及び高級脂肪酸系潤滑剤を添加混合し、所定形状の金型に充填して、所定の圧力で圧縮成形する。有機バインダーとしては、例えば、シリコーン樹脂とすることが考えられるが、これには限定されない。高級脂肪酸系潤滑剤としては、スタリン酸ナトリウムとすることが考えられるが、これには限定されない。そして、かかる圧縮成形体に対して、炭酸ガス中で700〜1000℃の熱処理を行う。
[実施形態の作用効果]
以上のような本実施形態によれば、炭酸ガス中での高温の熱処理により、軟磁性粉末表面に薄い酸化皮膜が形成されるので、高い温度においても、絶縁性を劣化することなく熱処理が可能となる。つまり、高い温度で熱処理することにより、圧縮歪を開放することができ、低いコアロスと高い透磁率を実現することが可能となる。
以上のような本実施形態によれば、炭酸ガス中での高温の熱処理により、軟磁性粉末表面に薄い酸化皮膜が形成されるので、高い温度においても、絶縁性を劣化することなく熱処理が可能となる。つまり、高い温度で熱処理することにより、圧縮歪を開放することができ、低いコアロスと高い透磁率を実現することが可能となる。
[実施例]
以下、本発明を実際に作製した実施例について、比較例と比較して説明する。なお、本発明はこのような実施例のみには限定されない。まず、軟磁性粉末として、組成が珪素3.5,6.5重量%、残部は鉄からなり、最大粒子径を63,106,150μmに変えたアトマイズ粉末を使用した。この粉末に、絶縁剤(兼結合剤)として、シリコーン樹脂を1乃至2W%添加混合し乾燥させた。
以下、本発明を実際に作製した実施例について、比較例と比較して説明する。なお、本発明はこのような実施例のみには限定されない。まず、軟磁性粉末として、組成が珪素3.5,6.5重量%、残部は鉄からなり、最大粒子径を63,106,150μmに変えたアトマイズ粉末を使用した。この粉末に、絶縁剤(兼結合剤)として、シリコーン樹脂を1乃至2W%添加混合し乾燥させた。
その後、潤滑剤としてステアリン酸リチウムを添加して混合した。これを、室温にて約20ton/cm2でプレス成形し、外形16mm、内径8mm、高さが5mmのリング状をなす圧粉磁心を作製した。
このように作製された各圧粉磁心に対して、実施例1〜13では炭酸ガス雰囲気中、比較例1〜12では窒素中、各温度にて30分の熱処理を行なった。ついで、各圧粉磁心に1次・2次巻き線を施し100kHzでの透磁率とコアロスを測定した。その結果を、以下の表1に示す。なお、表1には、絶縁破壊を明確にするためにヒステリシス損Phと渦電流損Peも示した。また、密度比(ρ/ρ0)は、軟磁性粉末の真密度(ρ0)に対するかさ密度(ρ)の比である。
一般的に、コアロスPcはPhとPeと異常渦電流損Paeで表すことができ、Phは周波数に比例し、Peは周波数の二乗に比例するため、次の式1のように表すことができる。
Pc=Ph+Pe+Pae=Kh・f+Ke・f2+Kae・fn …式1
f:周波数
Kh 、Ke 、Kae :比例定数
Pc=Ph+Pe+Pae=Kh・f+Ke・f2+Kae・fn …式1
f:周波数
Kh 、Ke 、Kae :比例定数
さらに、渦電流損Peは、個々の粉末粒内で発生する粒内渦電流損Peintraと、粉末粒間を絶縁皮膜を介し、もしくは、絶縁皮膜を介さずにバルク的に流れる渦電流による粒間渦電流損Peinternに分けることができる。熱処理温度が高くなって、渦電流損失が大きくなる原因は、絶縁破壊による粒間渦電流損Peinternの増大によることが明らかになっている。(非特許文献1参照)
上記の表1から明らかなように、従来の方法である窒素中での熱処理において珪素含有量3.5%(比較例1〜3)ではシリコーン樹脂が2重量%で、実施例の1重量%と比較して多いにも係わらず、750℃においてすでに絶縁破壊によりコアロスが大きくなっている(シリコーン樹脂が多い程絶縁特性は良い)。また、珪素含有量6.5重量%(比較例5〜7、8〜10、11〜12)においては、比較的高い温度で絶縁破壊をおこしている。
一方、本発明である炭酸ガス中での熱処理においては、いずれも絶縁破壊が発生していない。また、コアロスにおいても、実施例13では、10.6W/kgあるいは70kW/m3とかなり低い値を実現している。
ここで、実施例13の試料についてのコアロスの周波数特性を、図1のグラフに示す。この図1から、特許文献1の結果である100kHz,300Gでのコアロス83kW/m3に対して、実施例13では、70kW/m3と小さな値を得ることができることが分かる。また、特許文献2の結果である500kW/m3に対して、実施例13では、300kW/m3と小さな値を得ることができることが分かる。さらに、透磁率においても、各実施例では、71〜144と特許文献4と比較してかなり高い値となっている。
さらに、950℃焼鈍における実施例と比較例との最大粒径とコアロスの関係を、図2のグラフに示す。比較例では、コアロスがすべて100W/kg以上であるのに対し、実施例では、最大粒径106μm以下では13.1W/kg以下となる。この図2から、最大粒径が小さい程、コアロス低減の効果が高いことが分かる。
なお、本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではなく、使用する材料の種類、量、圧縮条件、熱処理温度等は、適宜変更可能である。
Claims (7)
- 軟磁性粉末と、これらを結着する有機バインダーと高級脂肪酸系潤滑剤とを含む圧縮成形体から成る圧粉磁心において、
前記圧縮成形体が、炭酸ガス雰囲気中700〜1000℃の温度で熱処理されていることを特徴とする圧粉磁心。 - 前記軟磁性粉末が、珪素(Si)を3〜7%含むことを特徴とする請求項1記載の圧粉磁心。
- 前記軟磁性粉末の粒径が、5〜103μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の圧粉磁心。
- 前記有機バインダーが、シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
- 前記高級脂肪酸系潤滑剤が、ステアリン酸リチウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
- 熱処理後の比透磁率が、100kHz、0.4A/mにおいて、50〜150であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
- 軟磁性粉末と、これらを結着する有機バインダーと高級脂肪酸系潤滑剤とを含む圧縮成形体を、炭酸ガス雰囲気中700〜1000℃の温度で熱処理することを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
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