JP5812439B2 - 繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品 - Google Patents

繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品 Download PDF

Info

Publication number
JP5812439B2
JP5812439B2 JP2012515840A JP2012515840A JP5812439B2 JP 5812439 B2 JP5812439 B2 JP 5812439B2 JP 2012515840 A JP2012515840 A JP 2012515840A JP 2012515840 A JP2012515840 A JP 2012515840A JP 5812439 B2 JP5812439 B2 JP 5812439B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fiber
layer
molded product
cross
thermoplastic resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012515840A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2012133013A1 (ja
Inventor
葭原 法
法 葭原
辻井 彰司
彰司 辻井
名合 聡
聡 名合
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Toyobo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyobo Co Ltd filed Critical Toyobo Co Ltd
Priority to JP2012515840A priority Critical patent/JP5812439B2/ja
Publication of JPWO2012133013A1 publication Critical patent/JPWO2012133013A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5812439B2 publication Critical patent/JP5812439B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08JWORKING-UP; GENERAL PROCESSES OF COMPOUNDING; AFTER-TREATMENT NOT COVERED BY SUBCLASSES C08B, C08C, C08F, C08G or C08H
    • C08J5/00Manufacture of articles or shaped materials containing macromolecular substances
    • C08J5/24Impregnating materials with prepolymers which can be polymerised in situ, e.g. manufacture of prepregs
    • C08J5/241Impregnating materials with prepolymers which can be polymerised in situ, e.g. manufacture of prepregs using inorganic fibres
    • C08J5/243Impregnating materials with prepolymers which can be polymerised in situ, e.g. manufacture of prepregs using inorganic fibres using carbon fibres

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Reinforced Plastic Materials (AREA)
  • Moulding By Coating Moulds (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Casting Or Compression Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)

Description

本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを積層して圧縮成形して得られる成形品であって、厚さ方向断面において、繊維不含層で挟まれた繊維強化層を5層以上設け、この繊維強化層内の繊維配向を各層内で均一にし、各層間でランダムにすることにより、曲げ強度や圧縮強度を高め、かつ機械的性質の異方性を小さくしたものに関する。
繊維強化熱可塑性樹脂を圧縮成形した成形品は、近年、構造材用として開発された(例えば、非特許文献1参照)。繊維強化熱可塑性樹脂は、高い強度や剛性を有することから板状や梁状の構造材として使用される。繊維強化熱可塑性樹脂は、繊維の軸方向の引っ張りに対しては、非常に高い強度や剛性を示すが、曲げ変形や圧縮変形に対しては、変形により繊維が曲がり、補強効果が活かされないので、強度や剛性が低い。また、繊維軸に対して直交する方向の引っ張り変形に対しては、繊維による補強効果がほとんどない。従って、繊維強化熱可塑性樹脂を使用した成形品は、機械的性質の異方性が極めて大きく、実用に当っては、構造材としての信頼性の改善が課題であった。曲げ変形を受けた成形品は、引っ張り変形側と圧縮変形側からなっている。繊維強化熱可塑性樹脂の場合、上述したように繊維の補強効果は引っ張り側に顕著であるから、圧縮側で破壊する場合が多い。従って、本発明のような圧縮側から破壊を開始する複合材の場合、圧縮強度の改善が曲げ強度の改善にもつながる。
機械的性質の異方性を小さくするために、繊維束を縦方向と横方向から織った織物や編物とした後に樹脂を含浸するかまたは含浸したプリプレグテープを織物や編物として、それを加熱圧縮成形して、成形品を得ていた。しかし、成形前に織物や編物とした予備成形体は、樹脂の含浸性が低く、単繊維間にボイドが多く、また単繊維を十分樹脂で覆うことができないため、欠陥が多く、目標の高い物性を有する成形品が得られなかった。また、繊維軸は織目で拘束されており、成形時に金型内で流動しにくいことから、深しぼり形状のある立体成形品や、リブやボスのある成形品が得られなかった。
また、連続繊維を面内に張り巡らした不織布マットに、樹脂含浸して得られたプリプレグも提案された。しかし、この場合も繊維がからみ合っており、成形時の金型内での流動性が極めて小さく、立体形状の成形品を得ることが困難であった。その後、特許文献1のように、異方性の小さい不織布状の強化繊維を使用し、強化繊維に切り込みを入れて金型内で流動することや、特許文献2のように、繊維をある長さに切断してチョップドストランドマットに樹脂を含浸して得たプリプレグの成形品も提案された。しかし、マット状にした繊維は、見かけの嵩が大きく、高い繊維割合の樹脂成形品を得ることができず、結果として高強度・高弾性率の複合材料を得ることはできなかった。
また、特許文献3のように、流動する不連続繊維強化層と殆ど流動しない連続繊維強化層を組み合わせることや、特許文献4のように、ガラス長繊維を長さ方向に、樹脂を含浸して得られたテープを短冊状に切断し、ランダムに配置して、シート状予備成形体を作製する方法が提案された。この方法は、異方性を抑制することを狙い、プリプレグテープを再溶融して予備成形体を成形するに際し、構成するプリプレグの繊維束をできるだけ開繊して成形品中に単繊維状で分散し、均一化、ランダム化する成形法により、繊維の配向による異方性の低減に高い改善効果があった。しかし、得られたプリプレグシートやシート状予備成形体は、流動性や等方性が良い反面、長い単繊維も、曲げ変形や圧縮変形に対して曲がりやすく、また座屈しやすいため、繊維補強効果が低く、成形品の強度や剛性が予測より低かった。特に、炭素繊維の製造性から厚さ方向の単繊維断面積の分布が狭い炭素繊維を使用した繊維強化品では、単繊維の高い物性が反映され難いものであった。
また、上述したように、従来技術により、強化材のマットやクロスを使用して作製されたプリプレグから、ランダム配向や直交配向した等方性に近い予備成形品が得られるようになった。しかし、複雑な形状を有する実用成形品を得る成形において、強化材マットや強化材クロスに樹脂を含浸したプリプレグは、繊維がからみあっており、流動性が低く、特に強化繊維の流動が困難であった。この場合は、樹脂分のみ流れ、強化繊維が流動の先端まで流れず、成形品中の強化繊維の分布が偏った成形品となる問題があり、不均一な配合比となり、繊維補強効果が極度に低下し、その部分の強度が低いという問題があった。また、含浸性を改善するために繊維束の本数を少なくした場合も、繊維の嵩が高く、高い繊維含有率の成形品が得られなかった。また、集束されていない連続繊維をマット状とした不織布は、含浸性や等方性は改善されたが、樹脂マトリックス中の単繊維は長くても、曲がりやすく、また座屈しやすいため、繊維の補強効果が小さく、複合材の強度や弾性率が低かった。
一方、繊維強化熱可塑性複合材料は、単位重量当りの強度や剛性が高いことから、自動車軽量化のために使用したいという市場の根強い希望があり、立体形状の成形品において、任意のどの方向の変形に対しても曲げ強度や圧縮強度が高い構造材の強い開発要請があった。
特開2010−18724号公報 特開2007―262360号公報 特開2005−324340号公報 特開平9−155862号公報
工業材料、37(1)、53〜57(1989)
本発明は、上記の従来技術の現状に鑑みなされたものであり、その目的は、繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを積層して圧縮成形して得られる成形品であって、曲げ強度や圧縮強度などの機械的性質が優れ、かつ機械的性質の異方性が少なく、従って機械的性質が変形方向や場所によらず高く維持される成形品を提供することにある。
本発明者らは、かかる目的を達成するために、変形方向や場所によらず機械的性質の異方性が少なくかつ機械的性質の信頼性が高い成形品について鋭意検討した結果、層内の構成単繊維の配向がほぼ均一である繊維強化層を5層以上設け、この各繊維強化層間で構成単繊維の配向をランダムにすることにより、上記目的を達成することを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜()の構成を有するものである。
(1)繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを積層して圧縮成形して得られる成形品であって、1mm以上の厚さを有する厚さ方向断面において、厚さ0.01〜1.0mmの繊維不含熱可塑性樹脂層の2層間に挟まれた厚さ0.005〜1.0mmの繊維強化層が5層以上存在すること、前記繊維強化層の各層における、構成単繊維の厚さ方向断面の楕円度(短径/長径)の標準偏差が0.1以下であり、前記繊維強化層の各層の構成単繊維の厚さ方向断面の楕円度の平均値についての前記繊維強化層における標準偏差が0.2以上であること、前記繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグが、厚さ0.03〜0.5mm、幅3〜50mm、長さ10〜150mmの短冊状のものであり、その繊維軸方向がランダムになるように積層して、成形されていること、及び前記繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグの積層数が(成形後の厚さ÷繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグの厚さ)を超える層数であることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品。
(2)成形品の厚さ方向断面において、構成単繊維の厚さ方向断面の平均楕円度が0.00001〜0.3である繊維強化層と、構成単繊維の厚さ方向断面の平均楕円度が0.7〜1.0である繊維強化層がそれぞれ1層以上存在することを特徴とする(1)に記載の繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品。
(3)成形品の厚さ方向断面において、繊維強化層の各層に100〜50000本の単繊維が存在することを特徴とする(1)または(2)に記載の繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品。
)プリプレグに含まれる強化繊維が、9μm以下の平均径の炭素繊維からなることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品。
成形品の面外変形において異方性の小さい成形品は、一般に抄紙法やスパンボンド法により得られる長繊維の不織布状やマット状に含浸して得られるプリプレグを積層成形して得られる。このようにして得られた成形品の繊維は、一般に束を成しておらず、厚さ方向の単繊維の切り口断面は、同じ楕円度からなる繊維の集合体を示さない。従って、これらは、微視的な繊維束による繊維の曲げや座屈の抵抗性をほとんど有さない。本発明の成形品は、繊維強化層の各層の構成単繊維の厚さ方向切り口断面がほぼ同じ楕円度を持つように設計されているので、微視的な繊維束構造を成し、曲げや圧縮、座屈に対する抵抗性が極めて高い。
一般的に13〜17μmと単繊維径の太いガラス繊維からなるプリプレグテープは、成形時に流動しやすく、再溶融成形した成形品中では繊維束は分散し、開繊度は高い。また、単繊維径が太い場合、繊維の曲げ剛性や耐座屈性は高いから、単繊維の補強性は高い。しかし、焼成法により得られる炭素繊維の単繊維径は小さく、一般には9μm以下、通常7μm以下であり、単繊維では曲げ剛性や耐座屈性は低い。このような炭素繊維を使用した成形品において、本発明の効果は特に発揮される。本発明の成形品は、特に繊維径の細い炭素繊維において微視的に繊維束構造を成し、曲げや座屈の抵抗性を飛躍的に高めることができる。
また、本発明の成形品は、厚さ方向に繊維強化層を5層以上有し、しかも繊維強化層の各層の構成単繊維の厚さ方向切り口断面がランダムな楕円度の平均値を持つように設計されているので、変形方向や成形品の場所によらず、強度や剛性が高く、機械的性質の信頼性が高い成形品を提供することができる。従って、本発明の成形品は、設計品質としての強度や剛性を高く設定することができ、薄肉化などの製品設計の自由度が高い。
図1は、成形品の厚さ方向断面の観察方法を概略的に示す。 図2は、本発明の成形品の一例の厚さ方向断面の概略図を示す。 図3は、単繊維断面の楕円の長径・短径を示す。 図4は、成形品の曲げ試験に供する試験片の切り出し例(A:X軸方向、B:Y軸方向)を示す。
以下、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品を詳述する。
本発明の成形品は、繊維強化熱可塑性プリプレグを積層して圧縮成形して得られるものであり、1mm以上の厚さを有する厚さ方向断面において繊維強化層が5層以上存在することを特徴とする。本発明の繊維強化層は、成形品の厚さ方向断面において、厚さ0.01〜1.0mmの繊維不含熱可塑性樹脂層の2層間に挟まれた厚さ0.005〜1.0mmの繊維含有熱可塑性樹脂層を構成する。各繊維強化層は、構成単繊維の厚さ方向断面の楕円度(短径/長径)の標準偏差が0.1以下であり、構成単繊維の配向が繊維強化層内でほぼ均一である。単繊維断面の楕円度の長径・短径の例を図3に示す。
繊維強化層の数は、成形品の1mm以上の厚さを有する厚さ方向断面において、5層以上、好ましくは8層以上、特に好ましくは10層以上である。5層未満では、繊維強化層の繊維束の配向を多様にすることが難しく、強度や弾性率が変形方向で異なり、機械的物性の信頼性が低下するため好ましくない。成形品の厚さ方向断面の各繊維強化層の大きさは、成形品に使用されるプリプレグの短冊の大きさによるが、一般に、厚さ0.005〜1.0mm、好ましくは0.01〜0.6mm、幅3〜50mm、好ましくは8〜40mmである。層の厚さが0.005mm未満では、曲げや圧縮変形に対して層の剛性が低く、繊維補強効果が十分発揮されない可能性があり、厚さが1.0mmを超えると、各断面において、個々の層の影響が大きくなり、異方性が現れやすくなる。また、層の幅が3mm未満の場合、成形品の面内における短冊の異方性の影響が高く、成形品において異方性が大きくなりやすく、幅が50mmを超えると、微視的な異方性の影響が強く、巨視的な異方性が発現しやすくなる。
繊維強化層の大きさは、観察する成形品断面の幅を広く観察することで、すなわち試験片の断面幅を大きくするか、成形品の断面をスライドしながら観察することで算定される。本発明の成形品の一例の厚さ方向断面の概略図を図2に示す。強化繊維層の厚さは、成形品断面において、強化繊維層を挟む繊維不含層間の距離の平均値から求められる。また、強化繊維層の幅は、厚さ方向断面の構成単繊維の平均楕円度が0.9〜1.0、好ましくは0.95〜1.0である繊維強化層について、その強化繊維層を挟む繊維不含層の合流点間距離の平均値から求められる。また、繊維強化層の長さは、繊維の厚さ方向断面の構成単繊維の平均楕円度が0.00001〜0.1の繊維強化層について、その強化繊維層を挟む繊維不含層の合流点間距離の平均値から求められる。なお、繊維強化層は、成形品中の厚さ1mm以上の部分の任意の10箇所の幅10〜20mmの断面を100倍に拡大して、その視野に含まれる繊維強化層に基づいて観察した。繊維強化層の大きさは、作製に使用したプリプレグの短冊の大きさによるが、短冊は成形により流動変形する。本発明の場合、流動変形度は小さく、0.8〜1,2であることが好ましい。流動変形度が0.8未満や1.2超の場合、繊維束状態が乱れやすく、繊維強化層の曲げ剛性の低下や座屈を招き、成形品の曲げ強度や圧縮強度が低下する可能性がある。流動変形度は、短冊を積層成形するときの加圧方法に依存する。段階的に徐々に圧力を高めていくと流動変形度が大きくなり、各繊維強化層内の繊維軸が乱れる。その結果、強化繊維層内の楕円度の分布が広くなるから、段階的に昇圧することは好ましくない。
本発明の成形品は、曲げ強度の信頼性が高く、面内のいずれの方向の曲げ変形に対しても、730MPa以上、好ましくは800MPa以上の曲げ強度と、0.85以上、好ましくは0.90以上の曲げ強度比を達成することができる。
本発明の成形品は、繊維強化層の各層内の繊維軸が実質的に同方向にあり、従って構成単繊維の厚さ方向断面の楕円度(短径/長径)がほぼ同じである。即ち、繊維強化層の各層における、構成単繊維の厚さ方向断面の楕円度の分布は狭く、その楕円度の標準偏差は0.1以下、好ましくは0.08以下である。この楕円度の標準偏差は微視的な繊維の配向度の尺度であり、標準偏差が0.1を超えると、繊維強化層の各層内の繊維軸が乱れ、曲げや圧縮変形に対して剛性が低下するので好ましくない。
また、本発明の成形品は、繊維強化層の各層の構成単繊維の厚さ方向断面の楕円度の平均値についての前記繊維強化層における標準偏差が0.2以上、好ましくは0.3以上である。この平均楕円度の標準偏差は繊維強化層間の繊維軸のランダム度の尺度であり、標準偏差が0.2未満の場合、成形品断面において繊維束の繊維軸方向の偏りが大きくなり、成形品の強度や弾性率が変形方向で変化するので好ましくない。
本発明の成形品は、厚さ方向断面において、構成単繊維の厚さ方向断面の平均楕円度が0.00001〜0.3、好ましくは0.00001〜0.2の繊維強化層と、構成単繊維の厚さ方向断面の平均楕円度が0.7〜1.0、好ましくは0.8〜1.0の繊維強化層をそれぞれ1層以上存在させることが好ましい。平均楕円度が0.00001〜0.3の繊維強化層は、繊維束の繊維軸が成形品の厚さ方向断面において左右方向に配向している層であり、この層を含まない成形品では、左右方向への繊維軸の配向度が低く、左右方向の弾性率や強度が低い傾向がある。また、平均楕円度が0.7〜1.0の繊維強化層は、繊維束の繊維軸が成形品の厚さ方向断面において前後方向に配向している層であり、この層を含まない成形品では、前後方向への繊維軸の配向度が低く、前後方向の弾性率や強度が低い傾向がある。本発明の成形品においては、このように繊維束がほぼ直交した軸に配向する層をそれぞれ1層以上含有することが好ましい。なお、平均楕円度が0.9以上の場合、繊維軸が観察面に垂直に近いことから、断面で観察される層の幅は、実質的な層幅に近似できると考えられる。従って、本発明においては、断面観察により、平均楕円度が0.9〜1.0の層についてのみ層幅を求めて、その平均値を層幅とする。
本発明の成形品は、厚さ方向断面において、繊維強化層の各層に100〜50000本、好ましくは1000〜20000本の単繊維を存在させることが好ましい。100本未満では、繊維束が細く、繊維束の剛性が低く、繊維束による曲げ強度や強度向上の効果が小さい。また、50000本を超えると、繊維束が太すぎて、厚み方向や面内方向の均一性が低下し、成形品の部分による強度や弾性率の弱点が発現しやすい。
本発明の成形品の厚さ方向断面において5層以上存在する繊維強化層の間には、厚さ0.01〜1.0mm、好ましくは0.02〜0.6mmの、繊維を含まない熱可塑性樹脂層(繊維不含樹脂層)が存在する。繊維不含樹脂層の厚さが0.01mm未満であると、成形時に隣接する繊維強化層間の繊維の絡み合いが起こり、流動性が低下し、繊維軸方向の配向が乱れるので好ましくない。また、厚さが1.0mmを超えると、繊維補強効果のない層が厚くなるため、成形品の層せん断力が低くなり、高い曲げ強度が得られないので好ましくない。この繊維不含樹脂層の厚さ制御により、高い流動性と高い層間せん断強度を両立できる。
本発明の成形品は、厚さ0.03〜0.5mm、好ましくは0.1〜0.4mm、幅3〜50mm、好ましくは5〜40mm、長さ10〜150mm、好ましくは25〜100mmである短冊状の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを、その繊維軸方向がランダムになるように積層し、圧縮成形することによって得られることが好ましい。プリプレグの厚さが0.03mm未満では、各層の剛性が低く、成形時の短冊の嵩が大きくなる。また、厚さが0.5mmを超えると、厚さ方向の積層数が減り、繊維軸の配向の多様性に難がある。プリプレグの幅が3mm未満では、短冊の嵩が大きくなり、作業性が低下する。また、幅が50mmを超えると、成形品の面内方向の均一性が低下し、欠陥点が発現しやすい。プリプレグの長さが10mm未満では、繊維長が短くなり、繊維補強効果が低くなる。また、150mmを超えると、流動性が低下する。
本発明の成形品のプリプレグに使用される強化繊維としては、使用される熱可塑性樹脂の加工温度で固体である高弾性率繊維が挙げられ、具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、スチール繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ケナフ、コットンなどが使用できる。強化繊維の平均径は9μm以下、さらには8μm以下が好ましい。平均径が9μmを超えると、単繊維自身に剛性があるために圧縮に対して座屈しにくいことから本発明の効果はやや低い。また、本発明の効果は、弾性率が高い炭素繊維を強化繊維として使用した場合に特に大きい。弾性率が150GPa以上、好ましくは200GPa以上の細い炭素繊維を強化繊維として使用する場合、曲げや圧縮変形で座屈しやすいことから、本発明の効果が顕著になる。
炭素繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリロニトル繊維やセルロース繊維などの繊維を空気中で200〜300℃にて処理した後、不活性ガス中で1000〜3000℃以上で焼成され炭化されて製造された引っ張り強度20t/cm以上、引っ張り弾性率200GPa以上の炭素繊維が好ましい。炭素繊維の単繊維径は、特に制限されないが、複合化の製造ライン工程の取り扱い性から3〜9μmが好ましい。3μm未満では、含浸や脱泡が難しく、9μmを超えると、比表面積が小さくなり、補強効果が小さくなる。炭素繊維は、空気や硝酸による湿式酸化、乾式酸化、ヒートクリーニング、ウイスカライジングなどによる接着性改良のための処理を施されたものが好ましい。また、炭素繊維は、作業工程の取り扱い性から、120℃以下で軟化する収束剤により収束されていることが好ましい。収束フィラメント数は、特に制限されないが、好ましくは1000〜30000フィラメント、より好ましくは5000〜25000フィラメントである。
プリプレグに使用される熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6,ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド6T共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリメチルペンテン、シンジオタクチックポリスチレンやこれらの共重合体やポリマーアロイ体などが挙げられる。これらの中では、ポリプロピレン、ポリアミド6、ポリアミドMXD6、ポリブチレンテレフタレートが、成形加工性と物性のバランスから好ましく、ポリプロピレン、ポリアミド6、ポリアミドMXD6が特に好ましい。熱可塑性樹脂は、繊維との接着性を高めるために変性されているものが好ましい。例えば、極性基を有さないポリプロピレンやポリメチルペンテンやシンジオタクチックポリスチレンの場合、無水マレイン酸やイタコン酸のような不飽和酸やグリシジルメタクリレートのような不飽和エポキシによって変性されているものが好ましい。
熱可塑性樹脂は、250℃、1.2kg荷重下におけるメルトフローレートが好ましくは30〜150g/10minであり、より好ましくは50〜140g/10minである。30g/10min未満では、繊維への含浸性が低く、空隙率が高くなる場合がある。また、150g/10minを超えると、複合材料の溶融加工時、樹脂と繊維が分離しやすい。
本発明の成形品の繊維含有率は、曲げ強度や圧縮強度を高く維持するために、好ましくは35〜80質量%、より好ましくは45〜75質量%、特に50〜70質量%である。
本発明の成形品には、上記の成分の他に、物性改良、成形性改良、耐久性改良を目的として、結晶核剤、離型剤、滑剤、酸化防止剤、難燃剤、耐光剤、耐候剤などを配合することができる。
本発明で使用する繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグの製造法は、特に限定されない。例えば、樹脂の融点以上に温度調節されたスクリュータイプ押出機のホッパーに熱可塑性樹脂や変性熱可塑性樹脂を所定割合に予備混合して供給する。溶融樹脂をギアポンプの回転数で計量して、樹脂の融点以上に温度調節された含浸用押出機の上流に供給する。一方、ロービング状の炭素繊維を拡張開繊し、含浸用押出機の上流に供給する。下流先端に開口部を絞ったスリットダイを備えた含浸用押出機中で樹脂圧により、ロービング繊維に樹脂を含浸・脱泡する。下流開口部から吐出された強化繊維と熱可塑性樹脂からなるテープ状の複合材料を冷却してかせに巻き取る。さらに、このテープ状複合材料を10mmから50mmの長さにカットする。または、樹脂の融点以上に温度調節されたスクリュータイプ押出機の上流ホッパーに熱可塑性樹脂や変性熱可塑性樹脂や強化繊維を供給する。下流の出口ダイにロービング状強化繊維を供給して、繊維の送り速度と樹脂の吐出量を調節して、所定の繊維含有率のストランド状の繊維の樹脂被覆材を得る。このストランドを冷却してかせに巻き取る。このストランドを10mmから50mmの長さにカットする。カットされたテープ状またはストランド状プリプレグを平板状の型内にランダムな方向に積層してばらまく。型を熱可塑性樹脂の融点より20〜100℃に加熱した後、圧縮し、型を高温結晶化温度より10〜120℃低い温度まで冷却して、強化繊維がランダム配向したシート状プリプレグを得る。このプリプレグを圧縮成形することで本発明の積層成形品が得られる。
本発明の積層成型品の好ましい製造法としては、予め連続繊維に熱可塑性樹脂を含浸し引き抜き成形することにより、構成する繊維の長さ方向軸が揃ったプリプレグを作製し、そのプリプレグを繊維補強効果が十分である長さ以上で、かつ自由な状態で繊維軸が一直線を保持する長さ以下にカットする。カットされたプリプレグをその繊維軸の方向分布が成形品の面内でランダムとなるように散布して重ねる。重ねるプリプレグの層数は、(成形後の厚さ÷プリプレグの厚さ)を超える層数とすることが好ましい。散布して重ねたプリプレグの繊維束を乱さずかつ相対流動を抑制した状態で加圧及び加熱して、プリプレグを圧縮成形により融着する。繊維の厚さ方向断面の楕円度の標準偏差を小さくするには、プリプレグの繊維束を乱さずかつ相対流動を抑制するように、加圧下で樹脂を加熱溶融する条件が好ましく、より好ましくはプリプレグ表層が溶融した状態で圧着する条件とすることが好ましい。
本発明の積層成形品は、例えば、テープ状繊維束に樹脂を含浸して得られたプリプレグテープを10〜150mmの長さにカットし、キャビティ内にランダムに散布し、圧縮成形することや、樹脂含浸したプリプレグストランドを10〜150mmの長さにカットし、棒状のプリプレグを、またはプリプレグストランドをローラ間で扁平にした短冊を散布して圧縮成形することでも得ることができる。樹脂を含浸したプリプレグテープを短冊にせずに、振り分けながら積層し、圧縮成形することでも本発明の積層成形品は得られる。また、先に10〜150mmの長さにカットされた強化繊維束をランダムに散布積層した後に樹脂を含浸し、成形することでも得られる。本発明の積層成形品は、単品としてのみならず、さらに不織布を使用したプリプレグシート、強化繊維マットを使用したプリプレグシート、プリプレグテープを同方向に配列した一軸配向シート、プリプレグテープの直交織物や多軸織物などから選ばれた1種以上を組み合わせて、様々な変形方向に対する要求性能を満たすことができる。
本発明の積層成形品は、例えば、赤外線加熱や高周波加熱して樹脂を加熱溶融し、圧縮成形機の金型に供給して、賦形冷却後に脱型することにより、構造材の部品に成形されることができる。本発明の積層成形品から得られた成形部品は、自動車のフレーム、2輪車のフレーム、農機具のフレーム、OA機器のフレーム、機械部品などの高い強度と剛性の必要な部品に利用されることができる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各特性の評価は、以下のように行なった。
(1)成形品の厚さ方向断面の単繊維の楕円度
図1に示すように、300mm×300mm×3mmの成形品中央部から10mm×10mmの大きさのテストピースを切り出し、厚さ方向の断面を上に水平になるようにセットし、エポキシ樹脂(シェル化学社製エポン812)で包埋した。エポキシ樹脂が硬化した後、この上面をリファインテック社製APU138型を使用して、回転砥石で研磨し、断面を平滑にした。得られた平滑面について、デジタルマイクロスコープVH−Z100R型(キーエンス社製)を使用して、落射照明により400倍に拡大して断面を厚さ方向に線状トレースして写真撮影した。単繊維断面がほぼ同じ楕円度を持つ範囲に仕分けて、厚さ方向において厚さ0.01〜1.0mmの繊維不含熱可塑性樹脂層の2層に挟まれた厚さ0.005〜1.0mmの繊維強化層の層数(m)を求めた。その後、各層の中央部を中心に800倍に拡大し、写真撮影した。得られた写真内にある各層毎にランダムに100本以上(n)の単繊維断面の短径(a)と長径(b)を図3のように測定し、単繊維毎の楕円度(短径/長径)を求めた。
(2)楕円度の平均値と標準偏差
各繊維強化層に含まれる単繊維断面の楕円度から、(i)式により各繊維強化層内の楕円度の平均値を算出し、(ii)式から標準偏差を算定した。
平均値X=Σ(a/b)/n (i)
ここで、i=1,2,――――,n
次に、観察した厚さ方向断面の線上に含まれる層数mの繊維強化層それぞれの楕円度の平均値Xjから、繊維強化層における、前記各繊維強化層内の楕円度の平均値の標準偏差を(iii)式から算定した。
ここで、j=1,2,――――,m
(3)繊維強化層の層数
(1)と同様に、成形品の厚さ1mm以上の部分から10mm×10mmの大きさに任意に切り出して得られた10個のテストピースについて、それぞれ厚さ方向断面において、厚さ0.01〜1.0mmの繊維不含層に挟まれた厚さ0.005〜1.0mmの繊維強化層の層数を数え、さらに構成単繊維の平均楕円度が0.00001〜0.3の繊維強化層と構成単繊維の平均楕円度が0.7〜1.0の繊維強化層の層数をそれぞれ数えた。
(4)繊維不含樹脂層及び繊維強化層の厚さ
(1)で作成したテストピースについて、図2に示したように、断面の厚さ方向(図2の上下方向)の線上において、隣接する単繊維間の距離が0.01mm以上である層を、実質的に単繊維を含まない繊維不含樹脂層と見なし、それ以外の層を、単繊維を含む繊維強化層とみなした。そして、繊維不含樹脂層の各層の厚さと繊維強化層の各層の厚さをそれぞれ測定し、それぞれの平均値を求めた。
(5)繊維強化層の幅
図2のように観察した成形品断面において、強化繊維層毎に、各層に含まれる単繊維の楕円度を図3に例示したように求めて、算術平均して各層毎の平均楕円度を求めた。その平均楕円度が0.9〜1の繊維強化層については、倍率を100倍に低下した後、観察範囲を断面軸に直交する方向(図2の水平方向)に試験片を移動して、それぞれの層の幅を測定し平均値を層幅とした。
(6)繊維強化層の各層の単繊維の本数
(1)で作成したテストピースの断面をトレース観察して、繊維強化層の各層において、樹脂で囲まれた円形や楕円形に見える単繊維の数を数え、平均値を求めた。
(7)曲げ試験
図4に示すように、成形品の中央部からX軸方向に10mm×150mmの曲げ試験用のテストピース(A)を5本、Y軸方向に10mm×150mmに曲げ試験用のテストピース(B)を5本切り出した。得られた絶乾状態のテストピースをデシケーターに入れ、23℃に温度調節した試験室に48時間保管した。万能引張試験機(オリエンテック社製テンシロンU500)を使用し、JIS K7171に準拠して、スパン長120mm、クロスヘッドスピード2mm/分で各テストピースに対して3点曲げ試験を行なった。X軸方向に切り出したテストピース(A)の曲げ強度とY軸方向に切り出したテストピース(B)の曲げ強度を比較し、低い方の曲げ強度を高い方の曲げ強度で除して曲げ強度比(低強度/高強度)を求めた。また、曲げ破壊の開始点が引っ張りによるか圧縮によるかを観察した。
実施例1
6000本の炭素繊維からなるロービング(帝人製東邦テナックスIMS40)を6kg/hrの速度で拡張開繊して含浸台のダイヘッドに供給した。ポリアミド6樹脂(東洋紡績社製T802、250℃、1.2kg荷重下におけるメルトフローレート42g/10min)を、270℃に温度調節されたスクリュー式押し出し機のホッパーに投入し、溶融樹脂をギアポンプにより4kg/hrを計量して、含浸台のダイヘッドに供給した。含浸台で加圧含浸、脱泡後、幅10mm・高さ0.2mmのダイから含浸被覆されたテープ状プリプレグを引き抜き、空冷固化した後、枷に巻き取った(炭素繊維67質量%、ポリアミド樹脂32質量%)。
得られたプリプレグテープを50mmの長さにカットし、得られた短冊状のプリプレグテープを300mm×300mm×3mmの平板状の型内にランダムな方向に積層してばらまき供給した。型を280℃に加熱した後、圧力を100kgf/cmとし、5分間その状態で保持圧縮し、型を120℃の低温まで冷却して、強化繊維がランダム配向した平板の成形品を得た。得られた成形品の使用材料の詳細と評価結果を表1に示す。
実施例2〜11
強化繊維と熱可塑性樹脂の種類や配合比、プリプレグの形状、厚さ、幅、カット長を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを作製し、平板の成形品を得た。得られた成形品の使用材料の詳細と評価結果を表1に示す。
実施例12
実施例1と同様に、強化繊維と熱可塑性樹脂を含浸台に供給し、1mmφのノズルから熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維ストランドを引き抜き、空冷し、枷に巻き取った。得られたストランド状のプリプレグを50mmの長さにカットし、得られた線状の棒を300mm×300mm×3mmの平板状の型内にランダムな方向に積層してばらまき供給した。型を280℃に加熱した後、圧力を100kgf/cmとし、5分間その状態で保持圧縮し、型を120℃の低温まで冷却して、強化繊維がランダム配向した平板の成形品を得た。得られた成形品の使用材料の詳細と評価結果を表1に示す。
比較例1〜3
強化繊維と熱可塑性樹脂の種類や配合比、プリプレグ形状、厚さ、幅、カット長を表2に示したように変更した以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを作製し、平板の成形品を得た。得られた成形品の使用材料の詳細と評価結果を表2に示す。比較例1のように、テープ幅が狭すぎると繊維束が乱れ(層内楕円度の分散が大きい)、繊維束の効果が小さく、曲げ強さが低くなる。また、比較例2のように、テープ幅が広すぎても、繊維束が乱れ(層内楕円度の分散が大きい)、繊維束の効果が小さく、曲げ強さが低い。比較例3のように、テープの厚さが厚すぎると、厚さ方向断面層の層数が少なくなり、厚さ方向の繊維の配向が不均一となり、曲げ強さの異方性が大きくなる。
比較例4
含浸台のノズル径を2mmφに変更した以外は実施例12と同様にしてプリプレグを作製し、平板の成形品を得た。得られた成形品の使用材料の詳細と評価結果を表2に示す。ストランドのサイズが2mmφと大きいため、厚さ方向の積層数が少なくなり、厚さ方向の繊維の配向が不均一となり、曲げ強さの異方性が大きくなる。
比較例5
繊維軸に垂直な方向に、幅15mmに開繊したガラス繊維束(GF−R)に酸変性ポリプロピレン(MAH003)をダイ内で含浸して、幅10mmの連続ガラス繊維強化ポリプロピレンを作製した。ギロチン方式裁断機を用いて、これを長さ20mmに裁断し、高さ1.5mの位置より金型に自然落下させ、無方向的に堆積させた。このガラス繊維とポリプロピレンからなる繊維強化熱可塑性樹脂薄片の堆積物を、成形温度220℃、成形圧力10kgf/cm,成形時間10分、冷却温度120℃の条件で加熱冷却成形し、厚さ2mmのシート状成形品を作製した。成型品中のガラス繊維の重量分率は、75重量%であった。得られた成形品の使用材料の詳細と評価結果を表2に示す。低い曲げ強度や低い曲げ強度比の成形品であった。これは、強化繊維層数が少ないため、繊維が束として作用する剛性効果や高い積層数による無秩序効果が得られなかったためと考えられる。
比較例6
実施例1と全く同様にして作製して得られたプリプレグテープを50mmの長さにカットし、得られた短冊状のプリプレグテープを300mm×300mm×3mmの平板状の型内にランダムな方向に積層してばらまき供給した。型を280℃に加熱した後、圧力を0.5分間隔に10kgf/cmピッチで昇圧し、5分後に100kgf/cmとし、5分間その状態で保持圧縮し、型を120℃の低温まで冷却して、強化繊維がランダム配向した平板の成形品を得た。得られた成形品の使用材料の詳細と評価結果を表2に示す。表2から明らかなように、各繊維強化層の楕円度は不ぞろいで標準偏差は大きく、曲げ強さは実施例1と比較して大幅に低下している。
表中の記号は以下の原料の使用を意味する。
MAH003:ポリプロピレンW101(住友化学製)98.5質量部に、ジクミルパーオキサイド(日本油脂製パークミルD)0.5質量部、粉末化した無水マレイン酸(ナカライテスク製)2質量部を予備混合して、190℃に温度調節された二軸押出機のホッパーに供給して、スクリュー速度80回転/分で溶融反応して得たストランドを水槽で冷却固化して得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MFR50g/min)、融点165℃
T802:ポリアミド樹脂PA6(東洋紡績製、250℃、1.2kg荷重下におけるMFR42g/10min,融点227℃)
EMC700:ポリブチレンテレフタレート(東洋紡績製、250℃、1.2kg荷重下におけるMFR60g/10min、融点225℃)
GF−R:ガラス繊維ロービング(日本電気硝子製、AR2500H−103,単繊維径17μm、31ストランド)
CF−R:炭素繊維(帝人製東邦テナックスIMS40(単繊維径6.4μm、6000フィラメント))
表1,2からわかるように、実施例1〜12の成形品は、曲げ強度がX軸方向、Y軸方向のいずれにおいても高く、異方性の低い曲げ強度が得られ、機械的強度の信頼性が高い。一方、比較例1〜6の成形品は、実施例の成形品に比べて曲げ強度に劣り、その異方性も高い。
本発明によれば、繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグから曲げ強度や圧縮強度が変形方向や場所によらず高い成形品が提供される。従って、本発明の成形品は、機械的性質の信頼性が高く、様々な用途に自由に設計利用できる。

Claims (4)

  1. 繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを積層して圧縮成形して得られる成形品であって、1mm以上の厚さを有する厚さ方向断面において、厚さ0.01〜1.0mmの繊維不含熱可塑性樹脂層の2層間に挟まれた厚さ0.005〜1.0mmの繊維強化層が5層以上存在すること、前記繊維強化層の各層における、構成単繊維の厚さ方向断面の楕円度(短径/長径)の標準偏差が0.1以下であり、前記繊維強化層の各層の構成単繊維の厚さ方向断面の楕円度の平均値についての前記繊維強化層における標準偏差が0.2以上であること、前記繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグが、厚さ0.03〜0.5mm、幅3〜50mm、長さ10〜150mmの短冊状のものであり、その繊維軸方向がランダムになるように積層して、成形されていること、及び前記繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグの積層数が(成形後の厚さ÷繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグの厚さ)を超える層数であることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品。
  2. 成形品の厚さ方向断面において、構成単繊維の厚さ方向断面の平均楕円度が0.00001〜0.3である繊維強化層と、構成単繊維の厚さ方向断面の平均楕円度が0.7〜1.0である繊維強化層がそれぞれ1層以上存在することを特徴とする請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品。
  3. 成形品の厚さ方向断面において、繊維強化層の各層に100〜50000本の単繊維が存在することを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品。
  4. プリプレグに含まれる強化繊維が、9μm以下の平均径の炭素繊維からなることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品。
JP2012515840A 2011-03-29 2012-03-21 繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品 Active JP5812439B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012515840A JP5812439B2 (ja) 2011-03-29 2012-03-21 繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011072864 2011-03-29
JP2011072864 2011-03-29
JP2012515840A JP5812439B2 (ja) 2011-03-29 2012-03-21 繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品
PCT/JP2012/057102 WO2012133013A1 (ja) 2011-03-29 2012-03-21 繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2012133013A1 JPWO2012133013A1 (ja) 2014-07-28
JP5812439B2 true JP5812439B2 (ja) 2015-11-11

Family

ID=46930745

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012515840A Active JP5812439B2 (ja) 2011-03-29 2012-03-21 繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5812439B2 (ja)
WO (1) WO2012133013A1 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6160095B2 (ja) * 2013-01-30 2017-07-12 東洋紡株式会社 炭素繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグシートまたは成形品
JP6286301B2 (ja) * 2014-06-30 2018-02-28 サンコロナ小田株式会社 一方向性繊維強化テープ状複合材の製造方法、製造装置及び当該テープ状複合材を使用したランダムシートの製造方法
JP6222003B2 (ja) 2014-08-22 2017-11-01 トヨタ自動車株式会社 部品同士の結合構造及び部品同士の結合方法
JP6535218B2 (ja) * 2015-05-22 2019-06-26 株式会社神戸製鋼所 テープ状プリプレグ及び繊維強化成形体
US10464268B2 (en) * 2015-08-25 2019-11-05 The Boeing Company Composite feedstock strips for additive manufacturing and methods of forming thereof
JP7033271B2 (ja) * 2016-09-29 2022-03-10 東レ株式会社 繊維強化熱可塑性樹脂基材およびそれを用いた成形品

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05293919A (ja) * 1992-02-19 1993-11-09 Nippon Steel Corp 炭素繊維強化樹脂複合材料とその製造方法
JP2011011362A (ja) * 2009-06-30 2011-01-20 Toyobo Co Ltd スタンピング成形品
JP2011218798A (ja) * 2010-03-24 2011-11-04 Toray Ind Inc プレス成形方法およびその成形体

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0813520B2 (ja) * 1987-05-26 1996-02-14 住友電気工業株式会社 炭素繊維強化炭素複合材料
JP4396909B2 (ja) * 2000-10-31 2010-01-13 グローブライド株式会社 繊維強化樹脂製のスポーツ用管状体
TWI401160B (zh) * 2004-09-24 2013-07-11 Itochu Corp 複合材料、及包含該材料之產品和纖維-金屬複合材料
JP2011207048A (ja) * 2010-03-30 2011-10-20 Toray Ind Inc 繊維強化樹脂積層体

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05293919A (ja) * 1992-02-19 1993-11-09 Nippon Steel Corp 炭素繊維強化樹脂複合材料とその製造方法
JP2011011362A (ja) * 2009-06-30 2011-01-20 Toyobo Co Ltd スタンピング成形品
JP2011218798A (ja) * 2010-03-24 2011-11-04 Toray Ind Inc プレス成形方法およびその成形体

Also Published As

Publication number Publication date
WO2012133013A1 (ja) 2012-10-04
JPWO2012133013A1 (ja) 2014-07-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5812439B2 (ja) 繊維強化熱可塑性樹脂の積層成形品
TWI500664B (zh) Reinforced fiber composites
US10006677B2 (en) Method for manufacturing shaped product with maintained isotrophy
US8329280B2 (en) Chopped fiber bundle, molding material, and fiber reinforced plastic, and process for producing them
EP2642007B1 (en) Method for producing carbon fiber aggregate, and method for producing carbon fiber-reinforced plastic
JP5687812B1 (ja) ランダムマット、繊維強化複合材料成形体、および炭素繊維マット
JP5722732B2 (ja) 熱可塑性複合材料形成用等方性ランダムマットの製造方法
JP5996320B2 (ja) ランダムマットの製造方法
WO2012108446A1 (ja) 厚みに傾斜のある成形体、およびその製造方法
JP6965957B2 (ja) 積層基材およびその製造方法並びに炭素繊維強化樹脂基材
JPWO2013094706A1 (ja) ランダムマット、および強化繊維複合材料
JP2014040088A (ja) ランダムマットおよび繊維強化複合材料
JP2011178890A (ja) 炭素繊維複合材料
US9193840B2 (en) Carbon fiber composite material
KR20140040846A (ko) 저압 성형에 의한 성형체 제조 방법
JP5749343B2 (ja) アンダーカット部を有する複合成形体の製造方法
JP5789933B2 (ja) 繊維強化熱可塑性樹脂シートの圧縮成形方法
EP3195995B1 (en) Production method for fiber-reinforced thermoplastic resin composite material
WO2022075265A1 (ja) 繊維補強樹脂引抜成形体及びその製造方法
JP2013049751A (ja) 繊維強化基材
JP6160095B2 (ja) 炭素繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグシートまたは成形品
JP2013203944A (ja) プリプレグおよびその成型品
JP7176236B2 (ja) 熱可塑性プリプレグシート

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20141201

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20141201

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20141224

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150106

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150212

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20150310

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150528

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20150528

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20150605

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150828

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150910

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5812439

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313121

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350