JP5807422B2 - 車両用電源制御システム - Google Patents

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Description

本発明は、車両用電源制御システムに係り、特に、車両が駆動時と回生時との間の切り替わり時にサージ電圧が発生しやすい車両の電源制御システムに関する。
駆動装置として回転電機を搭載する車両には、蓄電装置と回転電機との間に、電圧変換器とインバータ回路が設けられる。インバータ回路は、車両駆動時には蓄電装置から電力の供給を受けて回転電機を駆動し、車両が制動時には、その回生エネルギを回収して蓄電装置を充電する。電圧変換器は、蓄電装置の端子間電圧とインバータ回路の直流電圧との間の電圧変換を行う。例えば、車両駆動時には蓄電装置の端子間電圧を昇圧してインバータ回路に供給し、車両が制動時には回生電力の電圧を降圧して蓄電装置に供給する。
インバータ回路と電圧変換器にはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられるが、その電流遮断時、あるいは電流の方向が変わるときに、パルス状のサージ電圧が発生し得ることが知られている。
例えば、特許文献1には、インバータを用いる電動機制御装置において、インバータを構成するIGBTが大電流を高速で遮断するときにサージ電圧が発生するので、サージ電圧検出回路とサージ電圧が異常か否かを判定する異常判定回路を設けることが述べられている。そして、サージ電圧が異常のときは、直流電圧を低下させるのではなく、トルク制限をかけて、IGBTに通流する電流を制限し、サージ電圧を抑制するように電流−電圧の軌跡を制限することが開示されている。
特許文献2には、回転電機の制御装置として、電圧変換部と、2つの周波数変換部の合計3つの回路についてサージ電圧を抑制する方法が述べられている。ここでは、それぞれのスイッチング素子の素子温度から素子耐圧を求め、一方でコレクタ電流からサージ電圧を求め、素子耐圧からサージ電圧を差し引いて、それぞれの駆動電圧の制限値を算出する。これによって、サージ電圧による素子破壊を防止する。そして、3つの回路についてそれぞれ算出された3つの制限値のうち、もっとも低い制限値を共通制限値とし、共通制限値より小さい制限値の回路については、その余裕の範囲でスイッチング速度を上げて、スイッチング効率を向上させることが開示されている。
特許文献3には、上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子を用いてリアクトルを流れる電流の方向を変え、昇圧と降圧を行う電圧変換装置において、サージ電圧を抑制するために、リアクトルを流れる電流の方向を検出する電流センサを設けることが述べられている。ここでは、上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子が共にオンとならないようにデッドタイムを設けると、リアクトルを流れる電流の方向が変わるところで、実デューティ比が不連続に変化してサージ電圧が発生することを指摘している。そこで、電流センサでリアクトルを流れる電流が昇圧のための正方向から降圧のための負方向に変化する期間の間、実デューティ比を変化させないようにすることが述べられている。
特開2004−236371号公報 特開2009−240039号公報 特開2007−215381号公報
サージ電圧は一時的な高圧であるが、IGBTやコンデンサ等の素子の損傷を防ぐために、これらの素子の耐圧を超えないようにされる。例えば、特許文献1のように、サージ電圧を考慮してトルク制限が行われる。また、特許文献3のように、電圧変換器のリアクトル電流を検出し、例えば、リアクトル電流の方向が変わるときに電圧変換器のデューティ比が変わらないようにする。
電圧変換器は、蓄電装置の端子間電圧とインバータ回路の直流電圧との間の電圧変換が予め指示された通りに行われるように、蓄電装置の端子間電圧VLとインバータ回路の直流電圧VHの電圧フィードバックが行われる。これに加えて、特許文献3に述べられているようなリアクトル電流ILの電流フィードバックを行えば、電圧変換器のところにおけるサージ電圧の発生防止制御を効果的に行うことが可能である。しかし、このようなシステムで、リアクトル電流検出に故障が生じて、電圧フィードバックのみとなると、そのままではサージ電圧の発生防止が困難となる。
本発明の目的は、サージ電圧の発生を効果的に抑制できる車両用電源制御システムを提供することである。他の目的は、リアクトル電流の検出が行われないときでもサージ電圧の発生を効果的に抑制できる車両用電源制御システムを提供することである。以下の手段は、少なくとも上記目的の少なくとも1つに貢献する。
本発明に係る車両用電源制御システムは、蓄電装置と、蓄電装置から電力の供給を受けるときは車両を駆動する電動機として機能し、車両が制動されるときは回生エネルギを回収する発電機として機能する回転電機と、回転電機に接続されるインバータ回路と、蓄電装置とインバータ回路の間に接続配置され、スイッチング素子とリアクトルを含み、蓄電装置の端子間電圧とインバータ回路の直流電圧との間の電圧変換を行う電圧変換器と、回転電機が電動機として機能する力行状態から発電機として機能する回生状態に切り替わる前後の期間、および回生状態から力行状態に切り替わる前後の期間において、インバータ回路の直流電圧を予め定めた遷移期間の間、予め定めた低減電圧だけ低減する電圧低減処理を行って、その期間におけるサージ電圧の発生を抑制する制御装置と、を備え、予め定めた遷移期間は、電圧変換器とインバータ回路の間に設けられる平滑コンデンサの容量値と、サージ電圧のパルス幅の予測値に基づいて設定され、予め定めた低減電圧は、サージ電圧のピーク電圧の予測値に基づいて設定されることを特徴とする。
また、本発明に係る車両用電源制御システムにおいて、リアクトルの電流を検出する電流検出を備え、制御装置は、電流検出器のデータに基づいて、サージ電圧の発生を抑制する制御を行い、電流検出が異常であることを検出したときに、電圧低減処理を行うことが好ましい。
上記構成により、車両用電源制御システムは、回転電機が電動機として機能する力行状態から発電機として機能する回生状態に切り替わる前後の期間、および回生状態から力行状態に切り替わる前後の期間において、インバータ回路の直流電圧を予め定めた遷移期間の間、予め定めた低減電圧だけ低減する電圧低減処理を行う。力行状態から回生状態に切り替わるとき、または回生状態から力行状態に切り替わるときに、サージ電圧が発生しやすい。そこで、そのサージ電圧が発生しやすいときにインバータ回路の直流電圧を低減することで、(インバータ回路の直流電圧+サージ電圧)が素子の耐圧を超さないようにできる。
また、このように、サージ電圧が発生する期間に限定してインバータ回路の直流電圧を低減させるので、インバータ回路の直流電圧をサージ電圧の波高電圧値分だけ全期間にわたって一律に低減させることに比較すると、回転電機の駆動能力、回生能力を全体的に高く維持できる。
また、車両用電源制御システムにおいて、リアクトルの電流を検出する電流検出部が異常であることを検出したときに、電圧低減処理を行う。回転電機の力行状態と回生状態の区別は、リアクトル電流以外の手段でも検出できる。例えば、トルク指令値が正の値か負の値かで区別でき、あるいは、回転電機の駆動コイルに流れる電流の方向からも力行状態か回生状態か区別できる。これらの方法を用いて回転電機の力行状態と回生状態を区別することで、リアクトル電流の検出が行われないときでもサージ電圧の発生を効果的に抑制できる。
本発明に係る実施の形態の車両用電源制御システムの構成を示す図である。 本発明に係る実施の形態の車両用電源制御システムにおいて、電圧低減処理の様子を示す図である。 本発明に係る実施の形態の車両用電源制御システムの作用効果を、従来技術の作用効果と比較する図である。
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、1つの回転電機が搭載されるハイブリッド車両用の電源制御システムを説明するが、回転電機は2台以上搭載されるものとしてもよい。
また、電源制御システムの電源部として、蓄電装置、システムメインリレー、電圧変換器、平滑コンデンサ、インバータ回路を含むものとして説明するが、これは主たる構成要素を述べたもので、必要に応じ、これらの構成要素を省略してもよく、これら以外の構成要素を含むものとしてもよい。例えば、システムメインリレーを省略し、他の方式の接続遮断装置としてもよく、また、低電圧インバータ回路、DC/DCコンバータ等を含むものとしてもよい。
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
図1は、車両用電源制御システム10の全体の構成を示す図である。この車両用電源制御システム10は、ハイブリッド車両に搭載される回転電機12に接続される電源部の動作を制御するシステムである。車両用電源制御システム10は、回転電機12と電源部と制御装置40を含んで構成される。電源部は、図1で、回転電機12と制御装置40以外の部分で、蓄電装置14、システムメインリレー16、電圧変換器30、インバータ回路18が主な構成要素である。
回転電機12は、ハイブリッド車両に搭載されるモータ・ジェネレータ(M/G)であって、インバータ回路18を含む電源部から電力が供給されるときは電動機として機能し、図示されていないエンジンによる駆動時、あるいはハイブリッド車両の制動時には発電機として機能する3相同期型回転電機である。ここでは、電動機として機能する状態を、駆動状態あるいは力行状態と呼び、発電機として機能する状態を制動状態あるいは回生状態と呼ぶことにする。
電源部を構成する蓄電装置14は、充放電可能な高電圧用2次電池である。具体的には、約200Vから約300Vの端子電圧を有するリチウムイオン組電池である。組電池は、単電池または電池セルと呼ばれる端子電圧が1Vから数Vの電池を複数個組み合わせて、上記の所定の端子電圧を得るようにしたものである。
システムメインリレー16は、電源部において、蓄電装置14と他の構成要素との間を接続または遮断するリレー装置である。蓄電装置14は上記のように高電圧であるので、遮断から接続、あるいは接続から遮断するときのタイミングによっては、アーク放電が生じ、リレー装置が固着することが生じ得る。そのために、システムメインリレー16は、複数のリレーおよび図示されていない抵抗素子等を組み合わせ、接続あるいは遮断のタイミングを適当にずらすことが行われる。図1では、蓄電装置14の正極側母線と負極側母線のそれぞれに直列にリレーが配置されてシステムメインリレー16が構成されることが示される。
電圧変換器30は、蓄電装置14とインバータ回路18の間に配置され、リアクトル32とスイッチング素子34,36とスイッチング素子34,36のそれぞれに逆接続されるダイオード素子を含んで構成される。電圧変換器30は、蓄電装置14の端子間電圧とインバータ回路18の直流電圧との間の電圧変換を行う機能を有する。電圧変換機能としては、蓄電装置14側の電圧をリアクトル32のエネルギ蓄積作用を利用して昇圧しインバータ回路18側に供給する昇圧機能と、インバータ回路18側からの電力を蓄電装置14側に降圧して充電電力として供給する降圧機能とを有する。
平滑コンデンサ20は、電圧変換器30から見て蓄電装置14の側に設けられるもので、蓄電装置14側の電圧、電流を平滑化する機能を有する。平滑コンデンサ20は、蓄電装置14の正極側母線と負極側母線の間に設けられる。平滑コンデンサ20と並列に設けられる電圧検出器22は、蓄電装置14側の正極側母線と負極側母線の間の電圧、つまり蓄電装置14の端子間電圧VLを検出する電圧検出部である。検出されたデータは、適当な信号線で制御装置40に伝送される。
平滑コンデンサ24は、電圧変換器30から見てインバータ回路18の側に設けられるもので、インバータ回路18側の電圧、電流を平滑化する機能を有する。平滑コンデンサ24は、インバータ回路18の正極側母線と負極側母線の間に設けられる。平滑コンデンサ24と並列に設けられる電圧検出器26は、インバータ回路18側の正極側母線と負極側母線の間の電圧VLを検出する電圧検出部である。検出されたデータは、適当な信号線で制御装置40に伝送される。なお、この電圧VHはシステム電圧と呼ばれる。
蓄電装置14の両端子間の電圧VLと、インバータ回路18のシステム電圧VHとの比は、昇圧比と呼ばれる。例えば、昇圧比=1とは、電圧変換器30を作動させず、蓄電装置14の電圧VLをそのままインバータ回路18のシステム電圧VHとして供給するものである。昇圧比=2は、蓄電装置14の電圧VLを288Vとすれば、これを576Vに昇圧して、インバータ回路18にシステム電圧VHとして供給するものである。昇圧比の制御は、電圧VL,VHの電圧フィードバックを受けて、制御装置40の昇降圧指令実行部42の制御の下で、スイッチング素子34,36のオン・オフのデューティ比等を変更することで行われる。
電圧変換器30の昇圧機能は、スイッチング素子36をオフとし、スイッチング素子34をオンとして、蓄電装置14の正極側母線−リアクトル32−スイッチング素子34−平滑コンデンサ24の経路で電流が流れることで行われる。すなわち、回転電機12が電動機として機能する力行状態のときは、リアクトル32には、蓄電装置14側からインバータ回路18側に向かう方向に電流が流れる。
一方、電圧変換器30の降圧機能は、スイッチング素子34をオフとし、スイッチング素子36をオンとして、蓄電装置14の負極側母線−スイッチング素子36−リアクトル32−平滑コンデンサ20の経路で電流が流れることで行われる。すなわち、回転電機12が発電機として機能する回生状態のときは、リアクトル32には、インバータ回路18側の方から蓄電装置14側に向かって電流が流れる。
電圧変換器30において、リアクトル32に直列に配置接続される電流検出器38は、リアクトル32を流れる電流の方向、大きさを検出する電流検出部である。検出されたデータは、適当な信号線で制御装置40に伝送される。
電流検出器38の検出データを利用することで、回転電機12が力行状態にあるか回生状態にあるか、その2つの状態が切り替わる状態にあるか等を判断できる。電圧変換器30の出力においてサージ電圧が発生しやすいのは、回転電機12が力行状態から回生状態に切り替わる前後の期間、および回生状態から力行状態に切り替わる前後の期間である。したがって、電流検出器38のデータに基づいて、サージ電圧の発生を抑制する制御を行うことができることになる。
インバータ回路18は、回転電機12に接続される回路で、複数のスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆接続されるダイオード素子を含んで構成される。インバータ回路18は、交流電力と直流電力との間の電力変換を行う機能を有する。すなわち、インバータ回路18は、回転電機12を発電機として機能させるときは、回転電機12からの交流3相回生電力を直流電力に変換し、蓄電装置14側に充電電流として供給する交直変換機能を有する。また、回転電機12を電動機として機能させるときは、蓄電装置14側からの直流電力を交流3相駆動電力に変換し、回転電機12に交流駆動電力として供給する直交変換機能を有する。
制御装置40は、車両用電源制御システム10を構成する各要素の動作を全体的に制御する機能を有する装置である。ここでは特に、電圧変換器30の昇降圧制御を行う機能を有する。上記のように、制御装置40には、電圧検出器22,26から電圧VL,VHの電圧フィードバックがなされる。そこで、図示されていない統括制御装置からのシステム電圧指令値VH *を受けて、昇降圧指令実行部42は、システム電圧VHをその指令値に合わせる制御を実行する機能を有する。
また、制御装置40は、電圧変換器30の出力におけるサージ電圧を抑制する制御を行う機能を有する。上記のように、制御装置40には、電流検出器38からリアクトル32を流れる電流の情報が伝送される。この電流検出器38のデータに基づいて、サージ電圧の発生を抑制する制御を行うことができる。ところで、仮に、電流検出器38が異常となって、リアクトル32に流れる電流の情報が制御装置40に伝送されないとすると、制御装置40には、電圧VL,VHの電圧フィードバック情報のみとなるので、サージ電圧の抑制制御が十分に行えない。これが本発明の解決しようとする課題である。
そこで、制御装置40は、電流検出器38が異常であることを検出したときに、回転電機12の状態が力行から回生へ、あるいは回生から力行への切り替わりかどうかを判定する力行回生判定部44と、力行から回生へ、あるいは回生から力行への切り替わりであると判定されるときに、システム電圧指令値VH *を予め定めた遷移期間の間だけ、予め定めたΔVHだけ低減する電圧低減処理部46を含んで構成される。
かかる制御装置40は、車両の搭載に適したコンピュータで構成することができる。また、上記の機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、サージ電圧抑制プログラムを実行することで実現できる。上記機能の一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。
上記構成の作用、特に制御装置40の各機能について、図2と図3を用いてさらに詳細に説明する。図2の上段の図は、回転電機12の状態が力行から回生へ、あるいは回生から力行への切り替わりを示す図で、下段の図は、システム電圧指令値VH *の変化を示す図である。横軸は共に時間である。
図2の上段の図(a)の縦軸は、図1では図示されていない統括制御装置から与えられる回転電機12に対するトルク指令T*が取られている。これは、電流検出器38が異常であると、リアクトル32に流れる電流の情報が取得できないため、回転電機12が力行状態にあるか回生状態にあるかを取得する手段としてトルク指令T*を用いるものとしたためである。トルク指令T*は、回転電機12に力行指令を与えるときはT*が正の値となり、回生指令を与えるときはT*が負の値となる。したがって、T*が正の値から負の値に向かって遷移するときが、回転電機12が力行状態から回生状態へ遷移するときであり、T*が負の値から正の値に向かって遷移するときが、回転電機12が回生状態から力行状態へ遷移するときとなる。
図2(a)では、トルク指令T*について、0近辺に正の閾値としてT2 *、負の閾値としてT1 *が設定されている。この2つの閾値は、電圧変換器30の出力においてサージ電圧が発生しやすい期間がどこかの予測に基づいて設定される。その予測は、実験等で予め確かめておくことができる。図2に示されるように、この2つの閾値に挟まれる遷移期間は、時間でいうと、t3からt4、t5からt6の間である。この遷移期間が、回転電機12にとって、力行状態から回生状態へ切り替わるとき、あるいは、回生状態から力行状態へ切り替わるときで、いずれもサージ電圧が発生しやすい期間である。その遷移期間に対応して、2つの閾値T2 *、T1 *が設定される。
具体的には、t3は、T*が正方向からゼロクロスする時間の前後で、制御周期の時間を考慮して設定することができる。同様にt5は、T*が負方向からゼロクロスする時間の前後で、制御周期の時間を考慮して設定することができる。(t4−t3)、(t6−t5)の長さは、平滑コンデンサ24の容量値、サージ電圧のパルス幅等を考慮して設定することができる。
なお、トルク指令T*は、回転電機12が力行状態か回生状態かを知るために用いられるので、これ以外の指標を図2(a)の縦軸に用いてもよい。例えば、回転電機12の出力軸の回転数の変化、回転電機12のコイルに流れる電流の方向等に基づいて、回転電機12が力行状態から回生状態へ、あるいは回生状態から力行状態へ変化することを検出することができる。
このように、回転電機12が力行状態から回生状態に切り替わる前後の期間、および回生状態から力行状態に切り替わる前後の期間において、サージ電圧が発生しやすい遷移期間(t4−t3)、(t6−t5)の設定が行われる。この処理工程は、制御装置40の力行回生判定部44の機能によって実行される。
図2(b)は、遷移期間(t4−t3)、(t6−t5)において、システム電圧指令値VH *を、予め定めた低減電圧値ΔVHだけ低減することを示す図である。図2の例では、サージ電圧が発生しない力行状態、回生状態におけるシステム電圧の指令値をVH0 *として、遷移期間(t4−t3)、(t6−t5)の間は、システム電圧の指令値をVHL *=(VH0 *−VH)とすることが示される。ΔVHは、サージ電圧のピーク電圧の予測値に基づいて設定される。
例えば、サージ電圧のピーク電圧の予測値を50Vのときは、ΔVH=50Vとすることができる。この場合、サージ電圧が発生しない力行状態、回生状態におけるシステム電圧の指令値をVH0 *を600Vとすると、遷移期間(t4−t3)、(t6−t5)の間のシステム電圧の指令値は、VHL *=(VH0 *−VH)=(600V−50V)=550Vとなる。これによって、遷移期間(t4−t3)、(t6−t5)の間で50Vのサージ電圧が発生しても、その遷移期間における(システム電圧指令値VHL *+サージ電圧のピーク電圧)は、元々のシステム電圧指令値VH0 *を超えない。
このように遷移期間(t4−t3)、(t6−t5)の間において、システム電圧指令値を予め定めた低減電圧値ΔVHだけ低減することで、サージ電圧が発生しても、平滑コンデンサ24、インバータ回路18を構成するスイッチング素子、ダイオード素子等の耐圧を超すことがない。この処理工程は、制御装置40の電圧低減処理部46の機能によって実行される。
上記では、ΔVHの設定として、(システム電圧指令値VHL *+サージ電圧のピーク電圧)は、元々のシステム電圧指令値VH0 *を超えないようにした。これを、車両用電源制御システム10の各構成要素の中で定格耐圧が最も低い素子の定格耐圧を超えないように、ΔVHを設定するものとしてよい。
図3は、図1の構成を用いない場合の比較例の説明図である。図3の上段の(a)は、図2(a)と同じトルク指令T*の時間変化を示す図である。中段の(b)と下段の(c)は、横軸に時間をとり、縦軸に、図1の構成を用いない場合の比較例において実際のシステム電圧VHを取った図である。
中段の(b)は、システム電圧指令値を、全期間に渡り変更せずに、VH0 *のままとした場合の図である。ここでは、回転電機12が力行状態から回生状態に切り替わる前後の期間、および回生状態から力行状態に切り替わる前後の期間において、サージ電圧50が発生し、そのピーク電圧は、システム電圧指令値に対応する電圧VH0を超えることが示される。この比較例では、車両用電源制御システム10の構成要素に対し、耐圧を超える高電圧が印加される恐れがある。
下段(c)は、システム電圧指令値を、全期間に渡り、予めサージ電圧のピーク電圧値分だけ低下させた場合の図である。この場合でも、回転電機12が力行状態から回生状態に切り替わる前後の期間、および回生状態から力行状態に切り替わる前後の期間において、サージ電圧50が発生するが、そのピーク電圧は、システム電圧指令値に対応する電圧VH0を超えない。しかし、システム電圧VHが、元々のシステム電圧指令値に対応する電圧VH0からサージ電圧のピーク電圧分だけ低いので、回転電機12の能力が低下する。
図1の構成によれば、サージ電圧が発生しても、車両用電源制御システム10の構成要素に対し、耐圧を超える高電圧となることが防止できる。そして、回転電機12が力行状態から回生状態に切り替わる前後の期間、および回生状態から力行状態に切り替わる前後の期間を除いて、回転電機12の能力が低下することがない。
本発明に係る車両用電源制御システムは、ハイブリッド車両の電源部の制御に利用できる。
10 車両用電源制御システム、12 回転電機、14 蓄電装置、16 システムメインリレー、18 インバータ回路、20,24 平滑コンデンサ、22,26 電圧検出器、30 電圧変換器、32 リアクトル、34,36 スイッチング素子、38 電流検出器、40 制御装置、42 昇降圧指令実行部、44 力行回生判定部、46 電圧低減処理部、50 サージ電圧。

Claims (2)

  1. 蓄電装置と、
    蓄電装置から電力の供給を受けるときは車両を駆動する電動機として機能し、車両が制動されるときは回生エネルギを回収する発電機として機能する回転電機と、
    回転電機に接続されるインバータ回路と、
    蓄電装置とインバータ回路の間に接続配置され、スイッチング素子とリアクトルを含み、蓄電装置の端子間電圧とインバータ回路の直流電圧との間の電圧変換を行う電圧変換器と、
    回転電機が電動機として機能する力行状態から発電機として機能する回生状態に切り替わる前後の期間、および回生状態から力行状態に切り替わる前後の期間において、インバータ回路の直流電圧を予め定めた遷移期間の間、予め定めた低減電圧だけ低減する電圧低減処理を行って、その期間におけるサージ電圧の発生を抑制する制御装置と、
    を備え
    予め定めた遷移期間は、電圧変換器とインバータ回路の間に設けられる平滑コンデンサの容量値と、サージ電圧のパルス幅の予測値に基づいて設定され、
    予め定めた低減電圧は、サージ電圧のピーク電圧の予測値に基づいて設定されることを特徴とする車両用電源制御システム。
  2. 請求項1に記載の車両用電源制御システムにおいて、
    リアクトルの電流を検出する電流検出器を備え、
    制御装置は、電流検出器のデータに基づいて、サージ電圧の発生を抑制する制御を行い、電流検出が異常であることを検出したときに、電圧低減処理を行うことを特徴とする車両用電源制御システム。
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