JP5805161B2 - フツリン酸ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、光学素子およびそれらの製造方法ならびにガラス成形体の製造方法 - Google Patents
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本発明は、超低分散性と優れた安定性を有するフツリン酸ガラスを提供すること、前記該ガラスからなるプレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、光学素子とそれらの製造方法を提供すること、ならびに前記ガラスからなるガラス成形体の製造方法を提供することを目的とする。
(1)ガラス成分として、
P5+を3〜25カチオン%、
Al3+を30カチオン%を超え40カチオン%以下、
Li+を0.5〜20カチオン%、
F−を65アニオン%以上
含み、P 5+ の含有量に対するO 2− の含有量のモル比O 2− /P 5+ が3.5以上であり、アッベ数νdが94.9〜98、液相温度が700℃以下であることを特徴とするフツリン酸ガラス、
(2)カチオン%表示にて、
Mg2+を0〜15%、
Ca2+を5〜35%、
Sr2+を5〜25%、
Ba2+を0〜20%
含む上記(1)に記載のフツリン酸ガラス、
(3)カチオン%表示にて、
Na+を0〜10%、
K+を0〜10%、
Y3+を0〜5%
含む上記(2)に記載のフツリン酸ガラス、
(4)Y 3+ の含有量が5カチオン%以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のフツリン酸ガラス、
(5)Y 3+ の含有量が3カチオン%である上記(4)に記載のフツリン酸ガラス、
(6)P 5+ 、Al 3+ 、Li + 、Mg 2+ 、Ca 2+ 、Sr 2+ 、Ba 2+ 、Na + 、K + 、Y 3+ の合計含有量が97%以上である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のフツリン酸ガラス、
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のフツリン酸ガラスからなることを特徴とするプレス成形用ガラス素材、
(8)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のフツリン酸ガラスからなることを特徴とする光学素子ブランク、
(9)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のフツリン酸ガラスからなることを特徴とする光学素子、
を提供するものである。
また、前記ガラスからなるプレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、光学素子とそれらの製造方法を提供すること、ならびに前記ガラスからなるガラス成形体の製造方法を提供することができる。
以下、本発明のフツリン酸ガラスについて詳説する。
本発明のフツリン酸ガラスは、ガラス成分として、
P5+を3〜25カチオン%、
Al3+を30カチオン%を超え40カチオン%以下、
Li+を0.5〜20カチオン%、
F−を65アニオン%以上
含み、液相温度が700℃以下であることを特徴とする。
Mg2+を0〜15%、
Ca2+を5〜35%、
Sr2+を5〜25%、
Ba2+を0〜20%、
Na+を0〜10%、
K+を0〜10%、
Y3+を0〜5%
を含むことができる。
P5+は、必須成分であり、ガラスのネットワークフォーマーとして機能する。P5+の含有量が3%未満であるとガラスの安定性が著しく低下し、25%を超えるとガラス成分の揮発が激しくなり、光学的に均質なガラスを得たり、光学特性の安定したガラスを量産することが困難になる。したがって、P5+の含有量を3〜25%とする。P5+の含有量の好ましい範囲は5〜20%、より好ましい範囲は5〜15%、さらに好ましい範囲は10〜15%である。
Pb、As、Cd、Tl、Te、Cr、Se、U、Thは、本発明のフツリン酸ガラスにおいて必要な物質でないばかりでなく、環境負荷が大きい物質であるので、ガラスに導入しないことが好ましい。
本発明のフツリン酸ガラスは、熔融法にて製造することができる。以下、その一例について説明する。ガラス原料として、ガラス成分に相当するリン酸塩、フッ化物などを使用し、これら原料を秤量し、十分混合して調合原料とし、調合原料を白金製坩堝に入れて850〜950℃の温度範囲で1〜3時間程度、加熱、熔融する。こうして得られる熔融ガラスを清澄、均質化して得られた熔融ガラスを鋳型に鋳込んで急冷することによりフツリン酸ガラスを作ることができる。
次に本発明のプレス成形用ガラス素材について説明する。
本発明のプレス成形用ガラス素材は、上記本発明のフツリン酸ガラスからなるガラス素材である。
精密プレス成形用プリフォーム(以下、単にプリフォームをいうことがある。)は、加熱して精密プレス成形に供されるガラス予備成形体を意味するが、ここで精密プレス成形とは、周知のようにモールドオプティクス成形とも呼ばれ、光学素子の光学機能面をプレス成形型の成形面を転写することにより形成する方法である。なお、光学機能面とは光学素子において、制御対象の光を屈折したり、反射したり、回折したり、入出射させる面を意味し、レンズにおけるレンズ面などがこの光学機能面に相当する。
次に本発明のガラス成形体の製造方法について説明する。
本発明のガラス成形体の製造方法は、ガラス原料を熔融し、得られた熔融ガラスを鋳型に流し込んでガラス成形体を成形するガラス成形体の製造方法であって、
上記本発明のフツリン酸ガラスが得られるようにガラス原料を調合し、熔融することを特徴とする。
アニールしたガラス板は引き出し方向に対して垂直に切断し、所望長さのガラス板となる。
本発明の第1のプレス成形用ガラス素材の製造方法は、上記本発明のガラス成形体の製造方法で作製したガラス成形体を加工することを特徴とする。
例えば、前述のガラス板やガラス棒を切断または割断によりガラス片に分割し、これらガラス片をバレル研磨して目的の光学素子ブランク1個分の質量になるように質量調整を行う。バレル研磨によって、ガラス片のエッジを丸め、破損原因やプレス成形時の折れ込み原因になるエッジを除去することができる。また、ガラス素材表面を粗面化してプレス成形時に表面に塗布する粉末状離型剤を均一に付着させやすくする。
上記本発明のフツリン酸ガラスが得られるようにガラス原料を調合、熔融することを特徴とする。
本発明の第1および第2のプレス成形用ガラス素材の製造方法によれば、優れた安定性を有するガラスによりガラス素材を作製するので、プレス成形時に失透しないガラス素材を生産することができる。
次に本発明の光学素子ブランクについて説明する。
本発明の光学素子ブランクは、上記本発明のフツリン酸ガラスからなることを特徴とする。
本発明の第1の光学素子ブランクの製造方法はリヒートプレス法とも呼ばれ、上記本発明のプレス成形用ガラス素材または本発明の方法により作製したプレス成形用ガラス素材を加熱、軟化してプレス成形する方法である。
次に本発明の光学素子について説明する。
本発明の光学素子は、上記本発明のフツリン酸ガラスからなる光学素子である。具体例としては、非球面レンズ、球面レンズ、あるいは平凹レンズ、平凸レンズ、両凹レンズ、両凸レンズ、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズなどのレンズ、マイクロレンズ、レンズアレイ、回折格子付きレンズ、プリズム、レンズ機能付きプリズムなどを例示することができる。表面には必要に応じて反射防止膜や波長選択性のある部分反射膜などを設けてもよい。
また、可視域全域にわたって高い光線透過率を示すガラスからなるので、透過光のカラーバランスを低下させない。また短波長の光線を導いたり、集光するレンズなどにも好適に用いることができる。本発明の光学素子は、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、フィルム式カメラ、監視カメラ、車載カメラなど各種カメラの撮像光学系、液晶プロジェクタ、リアプロジェクタなどの投射光学系などの光学系を構成する光学素子として好適に用いることができる。特に望遠レンズの前玉レンズに好適である。
本発明の第1の光学素子の製造方法は、上記本発明の方法により作製した光学素子ブランクを研削、研磨することを特徴とする。研削、研磨は公知の方法を用いればよい。
また、成形面が精密に形状加工された対向した一対の上型と下型との間に、予めガラスの粘度で104〜108dPa・sに相当する温度に昇温したプリフォームを供給し、これを加圧成形することによって、成形型の成形面をガラスに精密に転写することができる。
(実施例1)
表1〜表6に示すガラス組成になるように、各成分を導入するための原料としてそれぞれ相当するリン酸塩、フッ化物、酸化物などを用い、原料を秤量し、十分に混合して調合原料とし、これを白金坩堝に入れ、加熱、熔融した。熔融後、熔融ガラスを鋳型に流し込み、ガラス転移温度付近まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、ガラスの転移温度範囲で約1時間アニール処理した後、炉内で室温まで放冷し光学ガラスNo.1〜57を得た。得られた光学ガラス中には、顕微鏡で観察できる結晶は析出しなかった。
このようにして得られた光学ガラスの特性を表1〜表6に示す。
(1)屈折率nd、アッベ数νd
降温速度−30℃/時間で降温して得られたガラスについて、日本光学硝子工業会規格の屈折率測定法により、屈折率nd、アッベ数νdを測定した。
(2)液相温度LT
ガラスカレット100gを蓋付き白金坩堝に投入し、窒素雰囲気で950℃、30分間保持する。その後ガラス融液の温度を下げないように大気雰囲気で所定温度に設定された炉に移動させ、2時間保持する。2時間保持後炉内より取り出し放冷したのちに、ガラスを光学顕微鏡で拡大観察する。この作業を様々な保持温度で繰り返し、結晶が残存しない最低保持温度を液相温度とする。
(3)ガラス転移温度Tg
株式会社リガク製の熱機械分析装置(TMA)を使用し、昇温速度を10℃/分にして測定した。
実施例1で作製した各光学ガラスが得られるように調合したガラス原料を熔融、清澄、均質化して熔融ガラスを作り、白金製のノズルから熔融ガラス滴を滴下してプリフォーム成形型で受け、風圧を加えて浮上させながら上記各種ガラスからなる球状のプリフォームに成形した。
また、上記熔融ガラスを白金製パイプから連続的に流出し、その下端部をプリフォーム成形型で受け、熔融ガラス流にくびれ部を作った後、プリフォーム成形型を真下に急降下して熔融ガラス流をくびれ部で切断し、プリフォーム成形型上に分離した熔融ガラス塊を受け、風圧を加えて浮上させながら上記各種ガラスからなるプリフォームに成形した。
得られたプリフォームは光学的に均質であり、失透も認められなかった。
実施例2で用意した熔融ガラスを連続的に流出して鋳型に鋳込み、ガラスブロックに成形した後、アニールし、切断して複数個のガラス片を得た。これらガラス片を研削、研磨して上記各種ガラスからなるプリフォームを作製した。得られたプリフォームは光学的に均質であり、失透も認められなかった。
実施例2で用意した熔融ガラスを連続的に流出して鋳型に鋳込み、ガラスブロックに成形した後、アニールし、切断して複数個のガラス片を得た。これらガラス片をバレル研磨して上記各種ガラスからなるプレス成形用ガラスゴブを作製した。得られたガラスゴブの内部は光学的に均質であり、失透も認められなかった。
実施例2、3で作製したプリフォームの表面に炭素含有膜をコートし、成形面に炭素系離型膜を設けたSiC製の上下型および胴型を含むプレス成形型内に導入し、窒素雰囲気中で成形型とプリフォームを一緒に加熱してプリフォームを軟化し、精密プレス成形して上記各種ガラスからなる非球面凸メニスカスレンズ、非球面凹メニスカスレンズ、非球面両凸レンズ、非球面両凹レンズ、光ピックアップレンズといった各種レンズを作製した。
実施例4で作製したガラスゴブの表面に窒化ホウ素からなる粉末状離型剤を均一に塗布してから大気中で加熱、軟化し、プレス成形型でプレス成形し、球面凸メニスカスレンズ、球面凹メニスカスレンズ、球面両凸レンズ、球面両凹レンズの各種レンズのブランクを作製した。このようにして上記各種ガラスからなるレンズブランクを作製した。
実施例2で用意した熔融ガラスを流出し、シアを用いて熔融ガラス流を切断して熔融ガラス塊を分離し、プレス成形型を用いてプレス成形し、球面凸メニスカスレンズ、球面凹メニスカスレンズ、球面両凸レンズ、球面両凹レンズの各種レンズのブランクを作製した。このようにして上記各種ガラスからなるレンズブランクを作製した。得られたレンズブランクの内部は光学的に均質であり、失透も認められなかった。
実施例6、実施例7で作製したレンズブランクをアニールして歪を除くとともに屈折率を所望値に合わせた後、研削、研磨して球面凸メニスカスレンズ、球面凹メニスカスレンズ、球面両凸レンズ、球面両凹レンズの各種レンズを作製した。このようにして上記各種ガラスからなるレンズを作製した。
実施例2で用意した熔融ガラスを流出し、鋳型に鋳込んでガラスブロックを作製し、このブロックを切断、研削、研磨して各種球面レンズ、プリズムを作製した。得られたレンズ、プリズムは光学的に均質であり、失透も認められなかった。
Claims (9)
- ガラス成分として、
P5+を3〜25カチオン%、
Al3+を30カチオン%を超え40カチオン%以下、
Li+を0.5〜20カチオン%、
F−を65アニオン%以上
含み、P 5+ の含有量に対するO 2− の含有量のモル比O 2− /P 5+ が3.5以上であり、アッベ数νdが94.9〜98、液相温度が700℃以下であることを特徴とするフツリン酸ガラス。 - カチオン%表示にて、
Mg2+を0〜15%、
Ca2+を5〜35%、
Sr2+を5〜25%、
Ba2+を0〜20%
含む請求項1に記載のフツリン酸ガラス。 - カチオン%表示にて、
Na+を0〜10%、
K+を0〜10%、
Y3+を0〜5%
含む請求項2に記載のフツリン酸ガラス。 - Y 3+ の含有量が5カチオン%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のフツリン酸ガラス。
- Y 3+ の含有量が3カチオン%である請求項4に記載のフツリン酸ガラス。
- P 5+ 、Al 3+ 、Li + 、Mg 2+ 、Ca 2+ 、Sr 2+ 、Ba 2+ 、Na + 、K + 、Y 3+ の合計含有量が97%以上である請求項1〜5のいずれかに記載のフツリン酸ガラス。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のフツリン酸ガラスからなることを特徴とするプレス成形用ガラス素材。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のフツリン酸ガラスからなることを特徴とする光学素子ブランク。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のフツリン酸ガラスからなることを特徴とする光学素子。
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