JP5804682B2 - 電磁誘導加熱用樹脂製食器並びにその製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Description
ここで、熱風による再加熱は熱効率が極めて悪く、多大な電力を消費してしまう。また、再加熱するべき食物が熱風によって乾燥してしまい、風味や食感を大幅に損なってしまうおそれがある。
しかし、ヒーターで加熱するためには、孔の開いた専用トレイが必要になる。または、トレイの上にヒーターを組み込む必要があるため、トレイの構造が複雑になってしまうという問題が存在する。
近年、電磁誘導加熱を利用した調理用器具が提供されており、電磁誘導加熱を利用した容器として、金属製の鍋や炊飯器等が提案されている。
しかし、容器を樹脂で構成した場合には、樹脂は非導電体材料であるため、電磁誘導加熱により容器の内容物を加熱することが出来ない。
その様に金属板を挟み込んだ樹脂製食器の製造技術として、射出成形で樹脂製の内側成形品を成形し、その外側に金属板を接合し、その複合品を金型にセットし、複合品の外側に樹脂材料を射出して一体に成形し、電磁誘導加熱に対処出来る樹脂製食器を製造する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この従来技術(特許文献1)では、樹脂と金属の密着性が十分とは言い難く、内側成形品と外側成形品とが剥離する場合がある。また、樹脂と金属板との熱膨張率の違いにより、食器に割れが生じる場合もある。
そして、金属製網(3)が第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)との間に積層され、電磁誘導加熱を繰り返しても、剥離や割れが生じることがない。
ここで、注入される樹脂材料(M)が平坦な金属製網(3)に直接衝突し、衝突後、半径方向外方に向かって流れるので、注入される樹脂が保有する運動エネルギーにより、金属製網(3)が千切られて、千切られた金属製網(3)の片が半径方向外方に偏奇して、例えば図12で示す様な状態となってしまう恐れがある。或いは、金属製網(3)が千切れなくても、第1の樹脂成形部材(1)の中央部(食器100の中心位置)から偏奇する可能性が存在する。
そして金属製網(3)が千切れた状態(図12で示す様な状態)となり、或いは、食器(100)の中心から偏奇してしまうと、電磁誘導による加熱は金属製網(3)が存在する領域でしか起こらないので、食器(100)の中心部分が加熱されず、食器(100)内の食物の加熱が不十分になるという問題が発生する。
そのため、第2の樹脂成形部材(2)の成形時に、材料注入口(62)から注入される樹脂材料(M)が、第1の樹脂成形部材(1)における前記金属製網(3)が埋没した箇所(31)に衝突して、半径方向外方に向かって、全周方向(中心角360°全範囲)に流れたとしても、金属製網(3)の中央部(31)が第1の樹脂成形部材(1)に埋没しているため、当該金属製網(3)が千切れてしまうことはなく、また、その位置を偏奇してしまうこともない。
図1において、全体を符号100で示す電磁誘導加熱用樹脂製食器(食器100)は、第1の樹脂成形部材1、第2の樹脂成形部材2、金属製網3を有している。
ここで、第1の樹脂成形部材1及び第2の樹脂成形部材2の材料としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、PES(ポリエーテルサルフォン樹脂)、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂)、PSF(ポリサルフォン樹脂)、SPS(シンジオタクチックポリスチレン)等、耐熱性が高い樹脂が好ましい。特に、PPSは高割合で添加剤等を配合することが出来るので、成形性を向上し、炭素繊維等を添加して熱伝導効率が良好な樹脂を配合することが出来るので、好適である。
図1において、符号10は食器100の高台を示し、符号D10は高台の内径寸法を示している。
そして、金属製網3は、図1(a)で示すように、食器100の底部よりも上方の領域(高台10よりも半径方向外方で且つ上方の領域)まで延在している。金属製網3の周縁部が高台10よりも半径方向内側の領域に位置している場合には、IH加熱に際して、当該周縁部が高温になってしまう恐れが存在する。これに対して、金属製網3の周縁部が高台10よりも半径方向外方で且つ上方の領域に位置していれば、IH加熱に際して、金属製網3の周縁部が昇温し過ぎてしまうことはない。
しかし、金属製網3の中央部31は、後述する様に、押圧加熱冶具7によって第1の樹脂成形部材1の中央に埋め込まれている。
金属製網3の中央部31は、その中心点が、凹型装置6(第2の樹脂成形部材2を射出成形するための型を有する装置:図4参照)における材料注入口62(図4参照)の中心に一致している。材料注入口62は、第2の樹脂成形部材2を成形する際に、樹脂材料を注入する経路である。
金属製網3の網目は20〜120メッシュであり、金属製網3の線形素材の直径は0.05〜0.5mmである。特に、金属製網3の線形素材の直径としては、0.1〜0.3mmの範囲であることが好ましい。
金属製網3の網目が小さ過ぎると、樹脂材料が網目を潜り抜けることが出来ない可能性があり、網目が大き過ぎると、金属製網3が破損、分断してしまう恐れがある。
図3において、押圧加熱冶具7は、ベース部材71、押圧部材72、押圧補助部材73、加熱部材(例えばニクロム線)74を有している。
押圧部材72は、ベース部材71における一方の表面(図3では上面)の中心に設けられ、その内部には加熱部材(例えばニクロム線)74が配置されている。図3では、ベース部材71は、円盤状に構成されている。
尚、加熱の熱源として別に加熱機構を有する熱板等にベース部材71の外側面71aを貼り付ける等をして外部熱源を利用してもよい。
5mm≦d72≦D10
の範囲であることが好ましい。
押圧部72の直径d72が高台10の内径寸法をD10よりも大きいと、金属製網3を第1の樹脂成形部材1に埋め込む際に、押圧部72の縁部が第1の樹脂成形部材1の底部からはみ出してしまう。
一方、押圧部72の直径d72が5mm未満では、第2の樹脂成形部材2の成形時に、材料注入口62から注入される樹脂材料Mが衝突した際に、直径d72の領域(金属製網3が第1の樹脂成形部材1に埋め込まれる領域)よりも半径方向外側に位置している金属製網3が破損して、千切れてしまう。
ここで、図示の実施形態の様に押圧補助部材73を有する場合は、
5mm≦d72≦40mm
であるのが望ましい。
図3(a)で示すように、押圧部材72の高さ方向寸法と、4本の押圧補助部材73の高さ方向寸法は、等しい。すなわち、押圧加熱冶具7において、押圧部材72及び4本の補助押圧部材73の端面は、面一となっている。
押圧補助部材73は、金属製網3の中央部分を加熱して第1の樹脂成形部材1に埋め込む際に、金属製網3が押圧加熱治具7側に反り返らないように抑える作用を奏する。
押圧補助部材73の本数は2本以上、好ましくは3本以上であることが望ましい。但し、押圧補助部材73を省略することも可能である。
図4において、食器100を成形する際に用いられる射出成形金型装置56は、凸型装置5と、凹型装置6を有している。ここで、射出成形金型装置56は、第2の樹脂成形部材2を射出成形して食器100を製造する装置であり、凹型装置6は、いわゆる「金型」としての機能を備えている。
凸型装置5は、面(成形面)5fと、面(パーティング面)5pを有している。ここで、面5fは、第1の樹脂成形部材1における容器の内側11(図2参照)と相補の形状を為している成形面である。係る成形面5fを有することにより、凸型装置5は、第1の樹脂成形部材1を被せる様に配置することが出来る形状となっている。すなわち、第1の樹脂成形部材1の内側の凹部が凸型装置5の成形面5fと係合して、第1の樹脂成形部材1を凸型装置5に保持或いは設置するのである。
凸型装置5のパーティング面5pは、凹型装置6を凸型装置5に近接して当接した際に、凹型装置6におけるパーティング面6pと当接する。
凹型装置6は、面6fと面6pを有している。ここで、面6fは、第2の樹脂成形部材2における容器の外側を成形する成形面である。そして、面6pはパーティング面であり、凸型装置5のパーティング面5pと当接する。
ここで、材料注入口62は第2の樹脂成形部材2における樹脂材料Mの供給位置であり、材料注入口62(樹脂材料Mの供給位置)を水平面に投影した位置は、金属製網3の中央部31(金属製網3において、第1の樹脂成形部材1内に埋没されている部分)を水平面に投影した領域に包含されている。
先ず、図2に示すような予め成形されている第1の樹脂成形部材1を製造する。ここで、第1の樹脂成形部材1の製造については、公知、市販の射出成形装置等(図示は省略)を用いて行われる。
そして、図5で示す様に、第1の樹脂成形部材1の底部12bに、金属製網3を配置する(一時的に固着させる)。ここで、図5(a)では、第1の樹脂成形部材1の下方に金属製網3が配置して示されているが、製造に際しては、例えば図6で示すように、第1の樹脂成形部材1の天地を逆にして底部12bを上にして、底部12b上に金属製網3を載置する。
図6において、押圧加熱冶具7の下方には基部7Bが位置しており、基部7Bは突起7Tを備え、金属製網3を配置した第1の樹脂成形部材1は、当該突起7Tに緩く嵌合して配置されている。
押圧加熱冶具7の押圧部材72は、金属製網3に当接する以前の段階で、加熱部材74によって十分に昇温している。
そして、図7に示すように、押圧部材72の先端位置或いは金属製網3が、第1樹脂成形部材1の表面から所定量δだけ、第1の樹脂成形部材1の内部に埋め込まれるまで、金属製網3が押圧部材72により押圧される。
ここで、所定の深さδは、第1の樹脂成形部材1の厚みをT1とすれば、以下の範囲が望ましい。
0≦δ≦T1/2
所定の深さδの最大値をT1/2としているのは、これ以上深く埋め込むと、容器(食器)100の内面、すなわち、食品が盛り付けられる面に凹凸が生じて、食器として不都合だからである。換言すれば、「T1/2」は金属製網3が埋没する深さの限界値である。
図7において、符号T2は第2の樹脂成形部材2の厚みを示している。
押圧加熱冶具7が上昇して、図6において点線で示す位置まで到達したならば、金属製網3の一部が底部に埋め込まれた第1の樹脂成形部材1を、押圧加熱冶具7下方の基部7B(図6参照)から取り外す。
そして図8で示す様に、金属製網3の一部が埋め込まれた第1の樹脂成形部材1を、射出成形金型装置56の凸型装置5に被せて、設置する。図8は、押圧加熱冶具7による金属製網3(及び第1の樹脂成形部材1)への押圧・加熱処理が終了して、金属製網3の一部が底部に埋め込まれた第1の樹脂成形部材1を、射出成形金型装置56の凸型装置5に設置した状態を示している。
ここで隙間Eは、第1の樹脂成型部材1における外側13及び金属製網3と、凹型装置6の成形面6fにより形成される空間である。
樹脂材料Mを注入することにより、第2の樹脂成形部材2が成形される。
図10の状態では、凸型装置5の成形面5fには、成形が完了した食器100が配置されている。
凹型装置6が所定の位置まで移動(上昇)したならば、成形した食器100を第1の金型5の成形面5fから取り出す。
これにより、食器100の成形が完了する。
すなわち、金属製網3を第1の樹脂成形部材1に埋め込んでいない場合には、材料注入経路61及び材料注入口62を経由して注入される樹脂材料Mが、平坦な金属製網3に直接衝突し、衝突後、半径方向外方に向かって流れてしまう。その結果、金属製網3が千切れてしまい、千切れた金属製網3は半径方向外方に移動或いは偏奇して、例えば図11で示す様な状態となってしまう。
そして金属製網3が千切れて、半径方向外方に偏奇して、図11で示す様な状態になってしまうと、電磁誘導による加熱は金属製網3が存在する領域でしか起こらないので、食器100の底部全体が加熱されず、食器100内の食物が十分に加熱されないという問題が発生する。
そして、金属製網3が食器100の底面中央位置から偏奇してしまうと、誘導加熱により当該食器100内の食物を加熱する際に、金属製網3の位置と食物の位置とが整合せず、食物の加熱が不十分になってしまう。
ここで、当該埋没した箇所31は、射出成形金型装置56により第2の樹脂成形部材2を成形する際に、樹脂材料Mが注入される位置(材料注入口62の位置)と対応している。
金属製網3は、その中心部が第1の樹脂成形部材1に埋没しているので、樹脂材料Mが衝突しても千切れてしまうことはなく、千切れた金属製網3の各片が半径方向外方に移動することはない。また、樹脂材料Mの注入時に金属製網3が食器100の中心から偏奇してしまうことも防止される。
注入された樹脂材料Mは、金属製網3の中心部が第1の樹脂成形部材1に埋没した箇所31に衝突した後に、半径方向外方に向かって、円周方向の全方向へ均一に流れ、第1の樹脂成形部材1と凹型装置6の成形面6fとの間に出来る空隙Eに均一に充填される。
これに対して、図示の実施形態では、上述した様に、電磁誘導加熱用の部材としてソリッドタイプの金属板ではなく金属製網3を封入しているため、金属と樹脂との熱膨張率の差を吸収することが出来る。その結果、出来上がった当該食器100に熱膨張率の差による割れや変形等の不具合は生じない。
そして、金属製網3は密着性が高まった第1の樹脂成形部材1と第2の樹脂成形部材2との間に積層されて、一体化しているので、電磁誘導加熱を繰り返しても、剥離や割れが生じることがない。
2・・・第2の樹脂成形部材
3・・・金属製網
5・・・凸型装置
5f・・・成形面
5p・・・当接面
6・・・凹型装置
6f・・・成形面
6p・・・当接面
7・・・押圧加熱部材
7B・・・基部
7T・・・突起
11・・・容器の内側
12・・・容器の外側
13・・・第1の樹脂成形部材の外側
56・・・射出成形金型装置
62・・・材料注入口
Claims (3)
- 第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)と金属製網(3)とを有し、第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)とは積層されており、第1の樹脂成形部材(1)は食器の内側に位置しており、底部(B)とその底部(B)の半径方向外方の上方の領域部(F)とを有する電磁誘導加熱用樹脂食器において、前記金属製網(3)の底部(B)の中央に位置する中央部(31)は第1の樹脂成形部材(1)の厚み方向に埋没して配置され、前記金属製網(3)の残りの部分は、第1の樹脂成形部材(1)と第2の樹脂成形部材(2)との間に封入されており、そして前記底部(B)より上方の領域部(F)まで延在しており、第2の樹脂成形部材(2)の樹脂材料(M)の供給位置(62)は、前記金属製網(3)が第1の樹脂成形部材(1)に埋没している位置に対応していることを特徴とする電磁誘導加熱用樹脂製食器。
- 請求項1の電磁誘導加熱用樹脂製食器を成形する食器製造装置において、射出成形金型装置(56)と、押圧加熱冶具(7)とを有し、前記射出成形金型装置(56)は凸型装置(5)と凹型装置(6)とを備え、前記凸型装置(5)は、中央部に金属製網(3)を配置した状態の第1の樹脂成形部材(1)を保持する形状であり、前記凹型装置(6)には第2の樹脂成形部材(2)の樹脂材料を供給する材料供給通路(61)及び材料注入口(62)が設けられており、当該材料注入口(62)を水平面に投影した位置は前記金属製網(3)の中央部(31)を水平面に投影した領域に包含されており、前記押圧加熱冶具(7)は、前記金属製網(3)の中央部(31)を、前記第1の樹脂成形部材(1)における前記第2の樹脂成形部材(2)側から押圧しつつ加熱する機能を有していることを特徴とする食器製造装置。
- 請求項1の電磁誘導加熱用樹脂製食器の製造方法において、容器状に成形された第1の樹脂成形部材(1)の外側の中央に金属製網(3)を配置する工程と、前記第1の樹脂成形部材(1)の外側中央部に配置された金属製網(3)の中央部(31)を押圧加熱冶具(7)によって押圧しつつ加熱して、金属製網(3)の中央部(31)を第1の樹脂成形部材(1)に埋設する工程と、前記埋設する工程の後に、金属製網(3)の中央部(31)が埋設された状態の第1の樹脂成形部材(1)を凸型装置(5)上に配置する工程と、前記凸型装置(5)と凹型装置(6)を当接して、第1の樹脂成形部材(1)と凹型装置(6)の成形面(6f)との間における空隙(E)に、凹型装置(6)の材料注入口(62)から第2の樹脂成形部材(2)の材料となる樹脂材料(M)を充填する工程とを有することを特徴とする食器製造方法。
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