JP5803429B2 - 受信装置 - Google Patents

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Description

本発明は、MIMOを用いて無線信号を受信する受信装置に関する。
移動体無線通信における高速データ伝送を実現する技術として、MIMO(Multiple Input Multiple Output)多重方式がある。MIMOは、複数の送信アンテナから同一の周波数および時間を用いて複数の信号を送信し、その信号を複数の受信アンテナで受信し、個々の信号に分離する技術である。
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)などのマルチパス干渉の影響が小さい無線信号をMIMOで受信する受信装置に適した信号分離方式の一つに、MLD(Maximum LikeLihood Detection:最尤検出)処理がある。MLD処理は、全ての送信アンテナ信号のレプリカを生成し、生成したレプリカを用いて最も確からしい送信アンテナ信号を選択することにより、アンテナ間干渉を除去する信号分離の処理である。
これに対して、CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多元接続)などのマルチパス干渉の影響が大きい無線信号を受信する受信装置では、隣接する多数の信号を考慮している。このため、MLD処理の処理量が指数的に増加するため、実現が困難となる。
そこでマルチパス干渉の影響が大きい無線方式では、マルチパス干渉の影響を取り除くため、MLD処理の前にMMSE(Minimum Mean Square Error:最小平均自乗誤差)処理が実行される。MMSE処理は、着目する送信アンテナ以外の送信アンテナからの干渉を線形フィルタで抑圧する処理である。受信装置をマルチパス干渉の影響が小さい無線方式と影響が大きい無線方式の両方に対応させるため、MMSE処理とMLD処理の両方の処理を受信装置に実装する場合がある。特許文献1には、MLD処理の前にMMSE処理を実行する技術が開示されている。
特許第4666150号公報
MMSE処理では、着目する信号のみを残し、マルチパス干渉およびアンテナ間干渉による干渉成分が最小になるように重みづけを行う。よって、MMSE処理後にアンテナ間干渉に強いMLD処理を実行する場合、アンテナ間干渉に対する干渉除去の処理を重複して実行することとなる。
本技術では、MLD処理によるアンテナ間干渉除去を考慮した、効率のよいイコライジング処理を実行することを目的とする。
上記課題を解決するため、受信装置は、複数の送信アンテナから送信された送信信号を受信する複数の受信アンテナと、該複数の受信アンテナで受信した複数の受信信号のそれぞれについて、該複数の送信アンテナのうち、ある送信アンテナからの送信信号が他の送信アンテナからの送信信号に与える干渉成分であるアンテナ間干渉成分は残しつつ、マルチパスによるシンボル間干渉であるマルチパス干渉成分を低減する重みを付与する重みづけ処理を行う第1干渉処理部と、該第1干渉処理部により該重みづけ処理が施された該複数の受信信号のそれぞれについて、該アンテナ間干渉成分を除去する第2干渉処理部を有する。
実施形態によれば、MLD処理によるアンテナ間干渉除去を考慮した、効率のよいイコライジング処理を実行することが出来る。
受信装置1のブロック図である。 復調部12aの詳細ブロック図である。 復調部12bの詳細ブロック図である。 復調部12cの詳細ブロック図である。 復調部12dの詳細ブロック図である。 MMPI補正部32bにおける補正係数β'の処理フローである。 復調部12eの詳細ブロック図である。 復調部12fの詳細ブロック図である。 復調部12gの詳細ブロック図である。 復調部12aをソフトウェアプログラムで実現した場合のハードウェアブロック図である。 本実施例に係る復調部12の効果を示すグラフである。
以下、本実施の形態について説明する。なお、各実施形態における構成の組み合わせも本発明の実施形態に含まれる。
図1は受信装置1のブロック図である。本実施例において、受信装置1はMIMOに対応するための構成を有する。受信装置1は複数の受信アンテナR1、R2、RF処理部10、A/D変換部11、復調部12、復号部13、制御部15を有する。受信装置1はMIMOに対応した送信装置2から複数の送信アンテナT1、T2を用いて無線送信された信号を受信する。送信装置2と受信装置1の両方に複数のアンテナを用いることにより、無線インターフェース上に仮想的に複数の並行した通信チャネルを形成することができる。これにより、送信電力の効率を低減させることなく利用帯域を高めることができる。なお本実施例では説明の簡略化のため、2本の送信アンテナから2本の受信アンテナへのMIMOについて説明しているが、それぞれのアンテナは3本以上であっても良い。
RF処理部10は複数の受信アンテナR1、R2で受信したデータ信号を無線周波数帯からベースバンドに変換する。A/D変換部11はアナログのデータ信号をデジタル信号に変換する。復調部12はデジタル変換したデータ信号の同期検波、MIMO信号分離などの復調処理を実行する。復号部13は復調後の軟判定ビット列であるデータ信号に対し、誤り訂正などの復号処理を実行する。復号部13は復号したデータ信号を受信データ信号として出力する。制御部15は復調部12および復号部13の復調・復号処理を制御する。
以上の通りMIMOに対応した受信装置1は、MIMOに対応した送信装置2から送信されたデータ信号を受信し、復調・復号処理をすることができる。
図2は復調部12の一実施例である復調部12aの詳細ブロック図である。復調部12aはチャネル推定部20、相関行列算出部21、干渉処理部25、MLD24を有する。
干渉処理部25は、複数の受信アンテナで受信した複数の受信信号のそれぞれについて、着目していない送信アンテナからの干渉(ある送信アンテナからの送信信号が他の送信アンテナからの送信信号に与える干渉)、すなわちアンテナ間干渉は残しつつ、マルチパスによるシンボル間干渉、すなわちマルチパス干渉を低減する。干渉処理部25はMMPI(Minimum Mean Partial Interference:最小部分干渉)重み算出部22、イコライザ23を有する。
チャネル推定部20は、受信信号中のパイロット信号等を用いて伝搬チャネルベクトルの推定処理を行う。チャネル推定部20は推定した伝搬チャネルベクトルを出力する。相関行列算出部21は、受信信号の相関行列を算出する。チャネル推定部20は、算出した相関行列を出力する。
MMPI重み算出部22は、チャネル推定部20から出力された伝搬チャネルベクトルおよび相関行列算出部21から出力された相関行列に基づいて、MMPI重み係数を算出する。MMPI重み算出部22はMMSE重み係数に対し、アンテナ間干渉に対する重み係数を線形結合する。これによりMMPI重み算出部22は、アンテナ間干渉を残しつつ、マルチパス干渉の電力のみを最小にする重み係数を算出することができる。重み係数によるMMPI処理の詳細は後述する。イコライザ23はMMPI重み算出部22で算出したMMPI重み係数で受信信号を重みづけする。MLD24は重みづけ後の受信信号に対し、MLD処理を実行する。
MMPI重み算出部22およびMLD24での処理の詳細について以下に説明する。MMPI重み係数の算出条件は次の通りである。送信装置2は比較的少数の信号をバースト的に送信すると仮定する。送信アンテナおよび受信アンテナの本数がそれぞれ2本であるとすると、受信信号vは式(1)のようになる。
式(1)において、Hは送信アンテナT1、T2から受信アンテナR1、R2に至る伝搬路の特性、sは送信アンテナT1、T2からの送信信号ベクトル、nはガウス雑音を表す。本実施例においてアンテナ数は2本を仮定している。送信アンテナT1、T2からの送信シンボルであるs、sはそれぞれ、長さNtの縦ベクトルである。例えば送信シンボルsは、(s1,1,s1,2,...s1,Ntなどになる。この縦ベクトルは、それぞれのアンテナからNtシンボルが連続して同時に送信されていることを表現している。sはs、sを縦に並べたベクトルなので、長さ2×Ntの縦ベクトルになる。伝搬路Hは、Ntシンボルを送信している間は変化のない順静的なマルチパスフェージングであるとする。パスプロファイルの長さをNp[chip]とすると、H11等は、(Nt+Np−1)×Ntの行列となる。よって伝搬路Hは、この行列の縦横2倍の行列になる。v、vは受信アンテナR1、R2の受信信号ベクトルである。それぞれの受信信号ベクトルの長さは(Nt+Np−1)となる。
図2の通り、復調部の後段にアンテナ間干渉を効率よく取り除くことが可能なMLDを置く場合、イコライザ23では、アンテナ間干渉を残した上で、マルチパス干渉を優先的に抑圧することが出来る。着目する送信信号の信号電力をs1,i、アンテナ間干渉による干渉電力をs2,iとすると、イコライザ23での平均誤差電力Eiは式(5)の通りとなる。
式(5)において、<X>はXの期待値、wは合成重みベクトル、XはXのエルミート転地行列である。また係数α、βは、信号電力s1,i、干渉電力s2,iの重みづけに自由度を持たせるための係数である。
式(6)は、式(5)を展開したものである。式(6)において、XはXの複素共役、hは伝搬チャネルベクトル、Rは受信信号の相関行列、Ptは送信信号の平均電力である。伝搬チャネルベクトルhはチャネル推定部20の出力信号である。相関行列Rは相関行列算出部21の出力信号である。平均誤差電力Eiが合成重みベクトルwおよび補正係数βに対して極小となるのは、以下の式(7)の条件を満たす場合である。
式(7)より、合成重みベクトルwおよび補正係数βは式(8)および式(9)の通りとなる。式(9)に式(8)を代入することにより、補正係数βは式(10)の通りとなる。
式(8)および式(10)はそれぞれi番目の信号のパラメータとなっている。十分に長い信号を送信装置2が連続的に送信している場合、中心付近のシンボルにおいて、wはiによらず同じ値となる。よって送信アンテナT1用の合成重みベクトルをw1とし、Pt=1、α=1とすると、合成重みベクトルw1および補正係数β1は式(11)および式(12)の通りとなる。また、送信アンテナT2用の合成重みベクトルをw2とすると、合成重みベクトルw2および補正係数β2は式(13)および式(14)の通りとなる。
MLD24は、干渉処理部25による干渉成分除去後の複数の受信信号のそれぞれについて、アンテナ間干渉成分を除去する干渉処理部として機能する。イコライザ23による重みづけ後の、MLD24での処理の詳細を以下に示す。MMPI重み算出部22により算出された合成重みベクトルw1、w2を考慮すると、イコライザも含めた伝搬路の伝搬路行列H 2×2は、式(15)の通りとなる。
二乗ユークリッド距離e(s)は、式(15)の伝搬路行列H 2×2およびイコライザ23による重みづけ処理後の受信信号v とを用いて、式(16)の通り表わすことができる。式(16)において送信信号ベクトルsは、前述の式(3)に示す通り、2アンテナの送信シンボルを含むベクトルである。式(16)において、e(s)が最小になるs1、s2を求めることにより、MLD24は送信シンボルを推定することができる。
以上の通り復調部12aは、アンテナ間干渉ノイズを残した状態でマルチパス干渉ノイズを除去後、アンテナ間干渉ノイズを除去することにより、MLD処理によるアンテナ間干渉ノイズ除去を考慮したイコライジング処理を実行することが出来る。
図3は復調部12の一実施例である、復調部12bの詳細ブロック図である。復調部12bはチャネル推定部20、相関行列算出部21、干渉処理部25a、MLD24を有する。干渉処理部25aはMMPI処理を実行する。干渉処理部25aはMMSE重み算出部30、イコライザ23、逆拡散部31、MMPI補正部32を有する。図3の復調部12bにおいて、図2の復調部12aと同一部材には同一符号を付し、その説明を省略する。
復調部12aがMMPI処理をMMPI重み算出部22で実行しているのに対し、復調部12bは通常のMMSE処理をMMSE重み算出部30で実行後、MMPI補正部32においてMMPI処理となるように修正している。このような構成は、MMPI処理が、MMSE重み係数の線形結合となっているために可能となる。MMPI処理の線形性に基づいてMMSE重み算出部30とMMPI補正部32に分離することにより、設計の自由度を向上させることが出来る。
MMSE重み算出部30は、式(11)および式(13)における第一項の重みづけ係数を算出する重み算出部として機能する。逆拡散部31は、式(11)および式(13)における第一項の重みづけ処理がなされた、拡散変調された受信信号について、拡散変調前の信号に戻すための逆拡散処理を実行する。計算量を考慮した場合、イコライザ23による重みづけ処理の後に逆拡散処理をするのが望ましい。
MMPI補正部32は、逆拡散処理後の受信信号に対し、式(11)および式(13)における第二項の重みづけ処理を実行する。具体的には、式(17)に示す行列を逆拡散部31における逆拡散処理後の受信信号に乗算する。式(17)の行列を乗算することにより、MMPI補正部32から出力される受信信号は、一旦差し引いたアンテナ間干渉成分を加算した信号となる。
以上の通り、復調部12bは、MMSE重み算出部30とMLD24との間にMMPI補正部32を挿入することにより、MLD処理によるアンテナ間干渉ノイズ除去を考慮したイコライジング処理を実行することが出来る。
図4は復調部12の一実施例である、復調部12cの詳細ブロック図である。復調部12cはチャネル推定部20、相関行列算出部21、干渉処理部25b、MLD24を有する。干渉処理部25bはMMPI処理を実行する。干渉処理部25bはMMSE重み算出部30、イコライザ23、逆拡散部31、MMPI補正部32aを有する。図4の復調部12cにおいて、図3の復調部12bと同一部材には同一符号を付し、その説明を省略する。
復調部12bに対し復調部12cは、MMPI補正部32aにおいて、MMPI補正部32と異なる補正係数を乗算する。復調部12cにおいてMMPI補正部32aは、式(18)に示す行列を逆拡散部31の出力信号に乗算する。式(18)において、補正係数β’は式(19)および式(20)に示す値を有する。補正係数β’は、補正係数βを求める式(12)および式(14)の分母に、変数Aを加算した値となっている。
補正係数βによりアンテナ間干渉ノイズを残した後、MLD処理でアンテナ間干渉ノイズを除去しても、実際にはアンテナ間干渉ノイズが残存する。そこで補正係数β’のように変数Aを追加することにより、MLD24の処理結果に応じて、補正係数β’の値が小さくなるように、変数Aの値を調整することができる。
なお、本実施例では補正係数βを小さくするのに変数Aを追加したが、補正係数βに1以下の変数を乗算することにより、補正係数βを小さくしても良い。
以上の通り、復調部12cは、MMSE重み算出部30とMLD24との間にMMPI補正部32bの補正係数βを調整可能とすることにより、MLD処理によるアンテナ間干渉ノイズ除去をさらに考慮したイコライジング処理を実行することが出来る。
図5は復調部12の一実施例である、復調部12dの詳細ブロック図である。復調部12dはチャネル推定部20、相関行列算出部21、干渉処理部25c、MLD24を有する。干渉処理部25cはMMPI処理を実行する。干渉処理部25cはMMSE重み算出部30、イコライザ23、逆拡散部31、MMPI補正部32b、S/N推定部40を有する。図5の復調部12dにおいて、図4の復調部12cと同一部材には同一符号を付し、その説明を省略する。
復調部12cに対し、復調部12dはS/N推定部40を新たに有する。また復調部12dは、S/N推定部40の出力信号に応じて補正係数β’の変数Aを調整する、MMPI補正部32bを有する。
S/N推定部40は、チャネル推定部20の出力に基づいて、受信信号の信号対雑音比(S/N比)の推定値を出力する。信号対雑音比が大きいほどMLD処理が有効に機能するため、補正係数β’による補正量は小さくて良い。一方信号対雑音比が小さいときはMLD処理の有効性が低くなるため、補正係数β’による補正量は大きくした方が良い。
MMPI補正部32bは、S/N推定部40から出力された信号対雑音比の推定値に基づいて、補正係数β'の変数Aの値を決定する。例えばMMPI補正部32bは、あらかじめ設定した閾値と信号対雑音比の推定値とを比較する。MMPI補正部32bは比較結果に基づき、変数Aの値を決定する。例えばMMPI補正部32bは、推定値が閾値よりも大きい場合には、A=0.05とし、推定値が閾値以下の場合には、A=0.2とする。
以上の通り、復調部12dは、MMPI補正部32bの補正係数β’を受信信号の信号対雑音比に応じて調整可能とすることにより、MLD処理によるアンテナ間干渉ノイズ除去をさらに考慮したイコライジング処理を実行することが出来る。
なお、変数Aの決定は信号対雑音比のみならず、マルチコード数に基づいて行ってもよい。マルチコード数に基づく変数Aの決定方法についての詳細は後述する。
図6はMMPI補正部32bにおける補正係数β'の処理フローである。補正係数β’の分母である変数Aの値を大きくするほど、補正係数β’は小さくなる。補正係数β'がほとんどゼロの場合に、補正係数β’を計算し、さらに補正演算を実行するのは、不要な演算負荷となる。よって補正係数β’がほとんどゼロの場合、補正演算を簡略化することにより、不要な演算負荷の増大を防ぐことができる。
MMPI補正部32bは、信号対雑音比の推定値などに基づき、変数Aの値を決定する(ステップS10)。MMPI補正部32bは、決定した変数Aの値を用いて、補正係数β’を算出する(ステップS11)。MMPI補正部32bは、算出した補正係数β'と、あらかじめ設定した閾値との大小関係を比較する(ステップS12)。算出した補正係数β’が閾値よりも小さい場合(ステップS12:YES)、MMPI補正部32bはβ’=0として、受信信号に対しMMPI処理を実行する(ステップS13)。算出した補正係数β’が閾値以上の場合(ステップS12:NO)、MMPI補正部32bは算出した補正係数β’を用いて、受信信号に対しMMPI処理を実行する。
以上の通りMMPI補正部32bは、補正係数β'の値に応じて補正演算を簡略化することにより、不要な演算負荷の増大を防ぐことができる。
図7は復調部12の一実施例である、復調部12eの詳細ブロック図である。復調部12eはチャネル推定部20、相関行列算出部21、干渉処理部25d、MLD24を有する。干渉処理部25dはMMPI処理を実行する。干渉処理部25dはMMSE重み算出部30、イコライザ23、逆拡散部31、MMPI補正部32、振幅補正部50を有する。図7の復調部12eにおいて、図3の復調部12bと同一部材には同一符号を付し、その説明を省略する。
復調部12bに対し、復調部12eは振幅補正部50を新たに有する。MLD24は前述の通り、伝搬路行列と受信信号との二乗ユークリッド距離を算出することにより、最小距離検索結果に基づいて硬判定処理を実行する。ここで硬判定処理結果が最尤なものとなるためには、各受信信号の平均雑音電力が一定であることが前提となる。
しかしながら、MLD処理を実行する前にMMPI処理を実行すると、平均雑音電力が変化する。このため、各受信信号の平均雑音電力が一定であるというMLD処理の前提条件が崩れるため、MLD処理の精度が落ちる原因となる。
そこで、MLD処理をする前に、MMPI処理後の受信信号を正規化し、MMPI処理後の受信信号の平均雑音電力を一定にすることにより、MLD処理の精度を向上させることができる。
MMPI処理における平均誤差電力Eiは、残留誤差を求める式(6)に合成重みを表す式(13)を代入することにより、式(21)に示す通りとなる。式(21)に式(10)の補正係数βを代入すると、式(22)の通りとなる。式(22)において、Re{}の中は実数なので、式(22)は式(23)の通りとなる。
式(23)において、MMPI処理における補正係数βの導出時と同様に、iを消去し、Pt=α=1とすると、送信アンテナT1の送信信号に含まれる残留誤差電力E1は式(24)の通りとなる。同様に、送信アンテナT2の送信信号に含まれる残留誤差電力E2は式(25)の通りとなる。
残留誤差正規化も含めた伝搬路行列H’’2×2は、式(26)に示す通りとなる。振幅補正部50は、MMPI補正部32から出力された伝搬路行列H’2×2を式(24)および式(25)で算出された残留誤差の平方根√Eiで割る事により、式(26)に示す伝搬路行列H’’2×2を算出することができる。
式(26)から求められる伝搬路行列H’’2×2と、MMPI処理後に残留誤差で正規化した受信信号v’’との二乗ユークリッド距離e(s)は、式(27)の通りとなる。式(27)のe(s)が最小となるs1、s2を求めることにより、送信信号を推定することができる。MLD24は、式(27)に基づいて、e(s)が最小となるs1、s2を算出する。
以上の通り、復調部12eは、MLD24の前段に振幅補正部50を挿入することにより、MLD処理前の伝搬路行列を正規化することができる。MLD処理前の伝搬路行列を正規化することにより復調部12eは、MLD処理の精度を向上させることができる。
図8は復調部12の一実施例である、復調部12fの詳細ブロック図である。復調部12fはチャネル推定部20、相関行列算出部21、干渉処理部25e、MLD24を有する。干渉処理部25eはMMPI処理を実行する。干渉処理部25eはMMSE重み算出部30、イコライザ23、逆拡散部31、MMPI補正部32c、マルチコード出力部60を有する。図8の復調部12fにおいて、図5の復調部12dと同一部材には同一符号を付し、その説明を省略する。
復調部12dに対し復調部12fは、S/N推定部40の代わりにマルチコード出力部60を有する。マルチコード出力部60は、設定されているマルチコード数をMMPI補正部32へ出力する。マルチコード数とは、送信ビットレートに応じて設定されたコード数である。例えばHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)では、拡散率は16であり、コード数は1から15の範囲で選択される。
拡散−逆拡散処理において、マルチコード数が大きいときはマルチパス干渉の影響も大きくなるが、マルチコード数が小さいときはマルチパス干渉の影響も小さくなる。MMPI処理はマルチパス干渉の影響を解消するためのものであるため、マルチパス干渉の影響が小さいときにMMPI処理を実行すると、却って特性が悪化する可能性がある。
そこで、マルチコード数があらかじめ設定された閾値よりも大きいときは、MMPI補正部32cは、式(19)および式(20)のA=0.1とすることにより、MMPI処理を有効にする。一方、マルチコード数があらかじめ設定された閾値以下の場合は、MMPI補正部32cは、式(19)および式(20)のA=3.0とすることにより、MMPI補正部32におけるMMPI処理を無効にする。
以上の通り、復調部12fは、設定されたマルチコード数に応じてMMPI処理を有効または無効にすることにより、復調処理の特性を向上させることができる。
なお復調部12fのMMPI補正部32cは、図5のMMPI補正部32bと同様に、図6の処理フローを実行しても良い。MMPI補正部32cは図6の処理フローを実行することにより、不要な演算負荷の増大を防止することが出来る。
図9は復調部12の一実施例である、復調部12gの詳細ブロック図である。復調部12gはチャネル推定部20、相関行列算出部21、干渉処理部25f、MLD24を有する。干渉処理部25fはMMPI処理を実行する。干渉処理部25fはMMSE重み算出部30、イコライザ23、逆拡散部31、MMPI補正部32d、プリコーディング情報部70を有する。図8の復調部12fにおいて、図5の復調部12dと同一部材には同一符号を付し、その説明を省略する。
復調部12fに対し、復調部12gはマルチコード出力部60の代わりにプリコーディング情報部70を有する。プリコーディング情報部70は、MIMOで伝送するそれぞれのストリームにおける、信号対雑音比をMMPI補正部32へ出力する。
プリコーディングとは、MIMOにおいて同じ信号をそれぞれの送信アンテナから適当な位相に重みづけして送信し、受信側で信号のパワーが最大になるようにすることである。プリコーディングにより、MIMOで伝送するそれぞれのストリームに信号対雑音比の偏りが生じる。ストリームの信号対雑音比に偏りがある場合、それぞれのストリームに対するMMPI処理の効果は、信号対雑音比が小さいほど大きくなる。補正係数βの誤差も考慮すると、MMPI処理の効果が小さいストリームに対しては、MMPI処理を実行しないことが望ましい。
そこで、MMPI補正部32dは、プリコーディング情報部70から出力されたストリームごとの信号対雑音比をあらかじめ設定した閾値と比較し、それぞれのストリームをイコライジングするか否かを判定する。MMPI補正部32dは、イコライジングしないと判定した場合、判定対象のストリームに積算する補正係数β=0とする。
以上の通り、復調部12gは、ストリームごとの信号対雑音比に応じて補正係数βを有効または無効にする。復調部12gは不要なMMPI処理を無効にすることにより、演算量を削減するとともに復調処理の特性を向上させることができる。
図10は本実施例に係る復調部12aをソフトウェアプログラムで実現した場合のハードウェアブロック図である。復調部12aは制御部71、記憶部72を有する。
制御部71は記憶部72に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現することが出来る。制御部71は例えばCPU(Central Processing Unit)である。記憶部72はチャネル推定プログラム73、相関行列算出プログラム74、MMPI重み算出プログラム75、イコライザプログラム76、MLD処理プログラム77を記憶する。記憶部72は例えばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)である。
制御部71はチャネル推定プログラム73を実行することにより、チャネル推定部20として機能する。制御部71は相関行列算出プログラム74を実行することにより、相関行列算出部21として機能する。制御部71はMMPI重み算出プログラム75を実行することにより、MMPI重み算出部22として機能する。制御部71はイコライザプログラム76を実行することにより、イコライザ23として機能する。制御部71はMLD処理プログラム77を実行することにより、MLD24として機能する。各種機能についての詳細は前述の通りである。
以上の通り復調部12aは、記憶部72に記憶したプログラムを制御部71に実行させることにより、ソフトウェアプログラムで実現することが出来る。なお本実施例では復調部12aを例に説明したが、他の復調部の場合も同様にソフトウェアプログラムで実現することが出来る。
図11は本実施例に係る復調部12の効果を示すグラフである。図11において、横軸は受信信号の信号対雑音比(S/N比)を示す。縦軸は復調処理後のビットエラー率(BER:Bit Error Rate)を示す。ビットエラー率とは、復調処理後の信号がビットエラーとなる確率である。アンテナは2×2MIMO、変調方式はQPSK、信号はRayleigh散乱させている。
図11において、グラフ81はMMSE処理のみを実行した場合の、受信信号の信号対雑音比と復調処理後のビットエラー率との関係を示すものである。グラフ82はMMSE処理後にMLD処理を実行した場合の、受信信号の信号対雑音比と復調処理後のビットエラー率との関係を示すものである。グラフ83は本実施例に係る復調部12の処理であり、A=0.1でのMMPI処理後にMLD処理を実行した場合の、受信信号の信号対雑音比と復調処理後のビットエラー率との関係を示すものである。
例えばBER=0.01を実現するための信号対雑音比を見ると、MMSE処理後にMLD処理をすることにより、MMSE処理のみの場合に比べ、2.5dB改善することがグラフ81およびグラフ82から分かる。さらに、A=0.1とするMMPI処理後にMLD処理を実行することにより、MMSE処理後にMLD処理を実行した場合に比べ、0.5dB改善することがグラフ82およびグラフ83から分かる。
同じBERの値を実現するために信号対雑音比が低くても良いため、復調部12はより低い信号品質で信号を正しく受信することができる。また、同じBERの値を実現するために、より低い送信電力で良いこととなるため、送信装置2は信号の送信電力を削減することが出来る。
1 受信装置
2 送信装置
10 RF処理部
11 A/D変換部
12、12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g 復調部
13 復号部
15 制御部
20 チャネル推定部
21 相関行列算出部
22 MMPI重み算出部
23 イコライザ
24 MLD
25、25a、25b、25c、25d、25e、25f 干渉処理部
30 MMSE重み算出部
31 逆拡散部
32、32a、32b、32c、32d MMPI補正部
40 S/N推定部
50 振幅補正部
60 マルチコード出力部
70 プリコーディング情報部
71 制御部
72 記憶部
81、82、83 グラフ
T1、T2 送信アンテナ
R1、R2 受信アンテナ

Claims (7)

  1. 複数の送信アンテナから送信された送信信号を受信する複数の受信アンテナと、
    該複数の受信アンテナで受信した複数の受信信号のそれぞれについて、該複数の送信アンテナのうち、ある送信アンテナからの送信信号が他の送信アンテナからの送信信号に与える干渉成分であるアンテナ間干渉成分は残しつつ、マルチパスによるシンボル間干渉であるマルチパス干渉成分を低減する重みを付与する重みづけ処理を行う第1干渉処理部と、
    該第1干渉処理部により該重みづけ処理が施された該複数の受信信号のそれぞれについて、該アンテナ間干渉成分を除去する第2干渉処理部と
    を有し、
    該第1干渉処理部は、
    前記受信信号に基づいて推定した伝搬チャネルベクトルおよび該複数のアンテナ間の相関行列に基づいて該干渉成分を除去する重み係数を算出する重み算出部と、
    算出した該重み係数で前記受信信号に重みづけ処理するイコライザと、
    重みづけ後の前記受信信号に該アンテナ間干渉成分を加算する補正部と、
    を有することを特徴とする受信装置。
  2. 該第1干渉処理部は、該イコライザから出力される重みづけ処理後の受信信号を逆拡散処理し、該補正部へ出力する逆拡散部をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の受信装置。
  3. 該補正部は、加算する該アンテナ間干渉成分があらかじめ設定した閾値よりも小さい場合は、該受信信号への加算処理を無効にすることを特徴とする、請求項1または2に記載の受信装置。
  4. 該補正部は、該第2干渉処理部の処理結果に応じて、該アンテナ間干渉成分の加算量を
    調整することを特徴とする、請求項1または2に記載の受信装置。
  5. 該伝搬チャネルベクトルに基づいて該受信信号の信号対雑音比の推定結果を該補正部へ出力する信号対雑音比推定部をさらに有し、
    該補正部は、該信号対雑音比の推定結果が、あらかじめ設定した閾値よりも大きい場合は、該受信信号への加算処理を無効にすることを特徴とする、請求項1または2に記載の受信装置。
  6. 該第2干渉処理部は、MLD(Maximum LikeLihood Detection)処理により、該複数の受信信号のそれぞれについて、該アンテナ間干渉成分を除去することを特徴とする、請求項1に記載の受信装置。
  7. 複数の送信アンテナから送信された送信信号を複数の受信アンテナで受信し、受信した複数の受信信号から干渉成分を除去する受信装置の干渉成分除去方法であって、
    該複数の受信アンテナで受信した該複数の受信信号のそれぞれについて、該複数の送信アンテナのうち、ある送信アンテナからの送信信号が他の送信アンテナからの送信信号に与える干渉成分であるアンテナ間干渉成分は残しつつ、マルチパスによるシンボル間干渉であるマルチパス干渉成分を低減する重みを付与する重みづけ処理を行い、
    前記マルチパスによるシンボル間干渉であるマルチパス干渉成分を低減する重みを付与する重みづけ処理は、
    前記受信信号に基づいて推定した伝搬チャネルベクトルおよび該複数のアンテナ間の相関行列に基づいて該干渉成分を除去する重み係数を算出し、
    算出した該重み係数で前記受信信号に重みづけ処理し、
    重みづけ後の前記受信信号に該アンテナ間干渉成分を加算することにより行い、
    該マルチパス干渉成分を低減する処理が施された該複数の受信信号のそれぞれについて、該アンテナ間干渉成分を除去することを特徴とする干渉成分除去方法。
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