JP5800461B2 - 車両の警報音発生装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の存在や、シフト操作、アクセル操作、ブレーキ操作などによる運転者の意図や、車両の進行方向や、車速を含む走行状態などの車両情報を、車外へ警報音として発する車両の警報音発生装置に関し、特に車両の進行方向に係わる前進や後退のような走行を車外周辺の人に知らしめる警報音発生技術に関するものである。
運転音や走行音が静かな車両(内燃機関搭載車を含む)、特に電動機のみで電気走行する(EV走行する)電気自動車や、電動機のみで走行する電気走行モード(EVモード)を持つハイブリッド車両などの電動車両にあっては、
運転音や走行音の静かさ故に、車両の存在や、シフト操作などによる運転者の意図や、車両の進行方向(前進または後退)や、車速を含む走行状態などの車両情報を、車外へ警報音として発し、車両周辺の人に車両情報を警報しなければならない場合がある。
本発明は、上記車両情報のうち、特に車両の進行方向に係わる前進や後退のような走行を車外周辺の人に知らせる走行警報音を発生する技術に関するが、
このように走行警報音を発生する技術としては従来、例えば特許文献1に記載のように走行警報音として、エンジン搭載車が発すると同様なエンジン疑似音を発生するものが知られている。
かかる従来の車両用警報音発生装置によれば、車外周辺の人がエンジン疑似音を聞いて走行中の車両が近くに居ることを認識することができ、安全上の注意を払って事故防止の一助となし得る。
特開2002−233001号公報
しかし上記した従来の車両用警報音発生装置は、走行警報音としてエンジン疑似音を発生するというだけで、この警報音の質に関して特別な言及をなしていない。
してみれば、従来の車両用警報音発生装置が発する走行警報音は、車外周辺の人にとって聞き取りやすい警報音であるという補償がなく、環境によってはこの警報音を聞き取り難くて十分に警報の用をなし得ない。
そこで特許文献1にも記載されているように、走行警報音を聞き取り難い環境下でこの警報音を音量増大する等、特別な対策が必須となり、環境のチェックや音量増大手段が必要となってコスト高になると共に、故障の発生率も高くなるという問題を生ずる。
なお、走行警報音を車外周辺の人が聞き取りやすい音質にして上記の対策が必要でなくなるようにしたとしても、以下の別の問題を生ずる。
つまり走行警報音は、車外周辺の人に対する警報であって、車室内の運転者や同乗者に必要のないものであり、車外への走行警報音が車室内に進入したのでは、特にこの走行警報音が特許文献1に記載のようなエンジン疑似音である場合、また走行警報音が他の車両情報と違って比較的長い時間に亘り発生し続けることとも相まって、車室内の運転者や同乗者を不快にする。
本発明は、車外への前進警報音や後退警報音のような走行警報音を、車外周辺の人にとっては聞き取りやすいが、車外から車室内へは進入し難い音とすることで、
音量増大手段のような特別な対策をしなくても車外周辺の人が走行警報音を確実に聞き取ることができ、且つ、不要な走行警報音が車室内に進入して運転者や同乗者を不快にすることのないようにした車両の警報音発生装置を提案することを目的とする。
この目的のため、本発明による車両の警報音発生装置は、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の要旨構成の基礎前提となる車両の警報音発生装置は、車両の走行を周辺の人に知らせるための走行警報音を車外発するようにしたものである。
本発明は、かかる車両の警報音発生装置が発する上記走行警報音として、車両が走行開始直前であることを示す所定の操作がなされたとき所定時間だけ発せられる第1警報音と、車両の走行中に発せられる第2警報音とを設定し、
これら第1警報音および第2警報音のうち、第1警報音は第2警報音よりも車室内に入り易い音とし、第2警報音は、車外周辺の人がこの第2警報音を聞き取りやすくなるよう、各等ラウドネスレベル曲線の音圧レベルが最小となる近辺の周波数であって、且つ、該第2警報音が車外から車室内へ進入し難くなるよう、車両の車室内遮音特性が第2警報音の車室内への進入音量を許容可能な程度まで押さえ込むことができる近辺の周波数である1.5kHz〜6kHzの範囲内の周波数の音とした構成に特徴づけられる。
このような本発明の警報音発生装置によれば、走行警報音として、車両が走行開始直前であることを示す所定の操作がなされたとき所定時間だけ発せられる第1警報音と、車両の走行中に発せられる第2警報音とを設定し、これら第1警報音および第2警報音をそれぞれ上記したごとき音としたため、以下の効果が奏し得られる。
先ず前者の第1警報音を第2警報音よりも車室内に入り易い音としたことで、運転者も第1警報音の発生、不発生を確実に認知することができる。
また後者の第2警報音を上記のごとく、1.5kHz〜6kHzの範囲内の周波数の音としたことで、以下の作用効果が奏し得られる。
上記1.5kHz〜6kHzの周波数範囲の第2警報音は、音圧レベル(等ラウドネスレベル)が低くて人間に聞き取りやすい音であり、車外周辺の人がこの第2警報音を聞き取りやすくなる。
一方で、車外から車室内への進入音量を許容できる程度まで押さえ込むことができる第2警報音の周波数は1.5kHz以上である。
よって、第2警報音の周波数を上記のごとく1.5kHz〜6kHzの範囲内に定めた本発明の構成によれば、車外周辺の人が第2警報音を聞き取りやすくなると共に、この第2警報音が車外から車室内へ進入し難くなる。
従って本発明によれば、従来のごとく音量増大手段のような特別な対策を追設することなく、車外で車両周辺の人に向け発する第2警報音の周波数を上記ごとく1.5kHz〜6kHzの範囲内に設定するだけで、殆ど追加の費用を要することなく安価に、車外周辺の人が第2警報音を確実に聞き取ることができ、且つ、運転者にとって不要な第2警報音が車室内に進入して運転者や同乗者を不快にするのを防止することができ、前記の問題をことごとく解消することができる。

本発明の一実施例になる車両の警報音発生装置を構成する警報音発生源の制御システムを示す制御系統図である。 図1に示した警報音コントローラが実行する前発進警報音(S音)の制御プログラムを示すフローチャートである。 図1に示した警報音コントローラが実行する前進警報音(D音)の制御プログラムを示すフローチャートである。 図1に示した警報音コントローラが実行する後退警報音(R音)の制御プログラムを示すフローチャートである。 図1に示した警報音コントローラが実行する警報音禁止制御プログラムを示すフローチャートである。 図1に示した警報音コントローラが実行する警報音増大制御プログラムを示すフローチャートである。 人間の耳の感度を表す等ラウドネスレベル曲線を示した特性線図である。 車両の車室内遮音特性を、A車とB車との2つの車両について例示する特性線図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<実施例の構成>
図1は、本発明の一実施例になる車両の警報音発生装置を示し、特に警報音発生装置を成す警報音発生源の制御システム図である。
本実施例では警報音発生源として、車外周辺の人に向けて警報を発するための車外用警報音発生源である車室外スピーカ1と、運転者に向けて警報を発するための車室内用警報音発生源である車室内スピーカ11とを具えるものとする。
なお本実施例において、警報音発生装置を用いる車両は、電動モータのみを動力源とし、このモータにより電気走行する(EV走行する)電気自動車とする。
しかし本発明は、電動モータおよびエンジンを動力源とし、電動モータのみで走行する電気走行モード(EVモード)と、電動モータおよびエンジンからの動力で走行するハイブリッドモード(HEVモード)とを持つハイブリッド車両や、エンジンのみを動力源とするエンジン搭載車にも同様に適用可能であるのは言うまでもない。
車室外スピーカ1は、電気自動車の動力源である電動モータおよび変速機などから成る動力源ユニットを収納した車両前部のモータルーム内における空間、特に車輪が跳ね上げた泥水や石などの異物が侵入することがなく、且つ、雨や雪や高圧洗車水のような異物が侵入することのない空間内に設置し、
この空間を車室外スピーカ1の共鳴箱として利用することで、本実施例の警報音発生装置を無指向性のものとなるよう構成する。
<警報音制御システム>
車室外スピーカ1は車室内スピーカ11と共に、図1の警報音コントローラ12によって作動制御する。
かかる制御のため警報音コントローラ12には、運転者が駐停車および走行方向を指令するために行うシフト(レンジセレクト)操作に応動して、選択レンジが駐車(P)レンジ、後退(R)レンジ、中立(N)レンジ、前進(D)レンジの何れであるのかを検知するレンジセンサ13からの信号を入力する。
警報音コントローラ12にはその他に、
車速Vを検出する車速センサ14からの信号と、
ブレーキペダルの踏み込んだ制動状態でONとなり、ブレーキペダルを釈放した被制動状態でOFFとなるブレーキスイッチ15からの信号と、
車室外スピーカ1からの音を消音させたい時に押して指令する消音スイッチ16からの信号と、
車室外スピーカ1からの音を増大させたい時に押して指令する増音スイッチ17からの信号と、
動力源ユニットを駆動可能な状態にするイグニッションスイッチ18からのON,OFF信号と、
自車と、車両進行方向にある他車両などの障害物との間における距離Lを検出する障害物接近距離センサ19からの信号とを入力する。
<車室内への警報音>
図1の警報音コントローラ12は本実施例の場合、車室内スピーカ11を以下のように作動させるものとする。
(1)レンジセンサ13からRレンジ選択信号を受けている間、車室内スピーカ11から、「Rレンジ選択中」を運転者に知らせるための、「Rレンジ選択警報音」(本実施例では間歇音とする)が発せられるよう、この車室内スピーカ11を作動させる。
(2)障害物接近距離センサ19で検出した障害物までの距離Lが設定距離未満である間、車室内スピーカ11から、「障害物に接近している」ことを運転者に知らせるための、例えば音声による「障害物接近警報音」が発せられるよう、この車室内スピーカ11を作動させる。
車室内の運転者に知らせるべき警報音としては、これらの他に、図示しなかったがシートベルトの未着装を警報するための「シートベルト警報音」などがある。
しかし、「シートベルト警報音」は上記の「障害物接近警報音」と共に、車室内スピーカ11からではなく、専用のスピーカやブザーから発せられるものであってもよい。
<車室外への警報音>
次に、図1の警報音コントローラ12が実行する車室外スピーカ1の作動制御を以下に説明する。
なお本実施例では、車室外スピーカ1からの警報音として、前発進に先立って警報のために発生させるべき短時間の前発進警報音(S音)と、前進走行時に警報のために発生させるべき走行警報音としての前進警報音(D音)と、後退走行時に警報のために発生させるべき走行警報音としての後退警報音(R音)とを設定する。
ここで前発進警報音(S音)は、本発明における第1警報音に相当し、前進警報音(D音)は、本発明における第2警報音に相当する。

なお、前発進警報音(S音)は、ソフトフォーン型式の「フォア〜ン」のような柔らかい音とし、前進警報音(D音)は、エンジン搭載車が走行中に発生するエンジン音に似せたエンジン疑似音とし、後退警報音(R音)は、Rレンジ選択中に前記したごとく車室内スピーカ11から発生される「Rレンジ選択警報音」と同じ間歇音とする。
ところで、前進警報音(D音)は上記の通りエンジン疑似音であって、長時間に亘り発生し続けるため、この前進警報音(D音)を聞き続けると気分的に好ましくなく、またこの前進警報音(D音)は運転者に聞かせる必要のない音でもある。
これに対し前発進警報音(S音)は、ソフトフォーン型式の柔らかい音であると共に、発進開始直前から発進開始までの短時間しか発生させない音であるため、運転者にとって気分的に嫌な音でもないし、前発進の警報は、これが発せられたのを運転者が確認できるようにするのが好ましいことから、前発進警報音(S音)は運転者に聞かせたい音である。
これらの要求に鑑み本実施例においては、前進警報音(D音)を以下に説明するようなエンジン疑似音とし、前発進警報音(S音)を後述するようなソフトフォーン型式の柔らかい音とする。
ここで車両の車室内遮音特性を考察するに、この遮音特性を表す1/3オクターブ中心周波数(Hz)ごとの音響伝達特性(dB)は、A車およびB車の2車についての車室内遮音特性を例示する図7から明らかなごとく、車両ごとに僅かに異なるものの、周波数が高くなるにつれ同様な傾向をもって高くなり、
D音は、その周波数が1.5kHz以上であるとき、車外から車室内への進入音量を許容できる程度まで押さえ込むことができることを確かめた。
一方でD音は、車外周辺の人に車両の前進を警報することを趣旨とするものであることから、D音を直接聞く車外周辺の人に良く聞こえて聞き取りやすいものであるを要する。
そこで人間の耳の感度を考察するに、この耳感度を論ずるときに用いられる図8に示す等ラウドネスレベル曲線は、様々な周波数(Hz)の音が感覚的に同じ大きさ(ラウドネス: phon)に聞こえる音圧レベル(等ラウドネスレベル)を結んで得られる周波数特性で、いわば、音の大きさごとに(図8では20phon、40phon、60phon、80phon、100phon)、同じ音の大きさとして感覚的に聞こえる音圧レベル(等ラウドネスレベル)dBを結んで得られる曲線であり、
音圧レベル(等ラウドネスレベル)dBの低い方が、同じ音の大きさ(20phon、40phon、60phon、80phon、100phon)を小さな音圧レベルで感じることができる、つまり人間が聞き取りやすいことを意味する。
音圧レベル(等ラウドネスレベル)dBが低くて人間に聞き取りやすい音は、周波数が図8に良好可聴域として示した1.5kHz〜6kHzの範囲(等ラウドネスレベル曲線の音圧レベルが最小となる近辺の周波数範囲)にある音であり、この周波数域1.5kHz〜6kHzは、図7につき前述した車外から車室内への進入音量を許容できる程度まで押さえ込むことができるD音の周波数1.5kHz以上と重なり合う。
そこで本実施例においては前進警報音(D音)を、車外から車室内へ入りにくいが、しかし車外周辺の人には聞き取りやすい周波数域(1.5kHz〜6kHz)のエンジン疑似音(参考までに実際のエンジン音の周波数は200Hz〜400Hz)として、前進警報音(D音)が車室内の運転者に不要に聞こえることのないようにし、
これにより、運転者がD音(エンジン疑似音)により不快にされることのないようにすると共に、車外周辺の人がD音(エンジン疑似音)を確実に聞き取り得て車両の存在および走行を確実に認知し得るようになす。
ちなみに、前進警報音(D音)の上限周波数を上記のごとく6kHzとする場合、以下の作用効果をも得ることができる。
つまり、人間は高齢になるほど、周波数の高い音を感知し難くなり、特に周波数が6kHzを越えた高音に関しては、高齢になると二次曲線的に聞き取りにくくなる。
しかるに本実施例では前進警報音(D音)の上限周波数を6kHzとしたことにより、高齢の車外周辺の人でも前進警報音(D音)を確実に聞き取ることができて、安全上大いに有益である。
ところで、前進警報音(D音)の上記した周波数域(1.5kHz〜6kHz)は許容周波数域であって最適なものではなく、車外から車室内へ入りにくいが、車外周辺の人に聞き取りやすい前進警報音(D音)の最適周波数域は、図8に最適可聴域(外耳道の空洞共鳴により人間の耳感度が最も高くなる周波数域)として示した2kHz〜4KHzであり、前進警報音(D音)の周波数域はこの最適可聴域(2kHz〜4KHz)にするのが良いのは言うまでもない。
しかし、前発進警報音(S音)も上記した前進警報音(D音)と同様な音にすると、前発進警報音(S音)を車室内の運転者が聞いて前発進の警報がなされたのを認知し得るようにするには、前発進警報音(S音)をクラクション音量よりも大きな大音量にしなければならず、周辺の人を驚かせてしまうことになる。
そこで本実施例においては前発進警報音(S音)を、車室外から車室内へ入り易い比較的低い或る周波数域(図7参照)のソフトフォーン型式の「フォア〜ン」のような柔らかい音とする。
かように定めた前発進警報音(S音)は、その低い周波数のために車室外から車室内へ入り易く、大音量にすることなしに(周囲の人を驚かせることなしに)車室内の運転者は前発進警報音(S音)を聞き得て、前発進の警報がなされたのを確実に認知することができる。
なお前発進警報音(S音)は、柔らかいソフトフォーン型式の音であると共に、発進開始直前から発進開始までの短時間しか発生させないため、運転者にとって気分的に嫌な音でなく、運転者を不快にすることはない。
<前発進警報音(S音)>
前発進警報音(S音)の制御に当たり、図1の警報音コントローラ12は図2の制御プログラムを実行して当該制御を行う。
先ずステップS11において、車速Vが停車判定車速Vs(=1Km/h)未満の停車判定状態で、且つ、イグニッションスイッチ18がONにされた走行可能状態であるか否かをチェックする。
車速Vが停車判定車速Vs(=1Km/h)以上で、走行状態と判定する場合、或いは、イグニッションスイッチ18がOFFにされた走行不可能状態である場合、制御をそのまま終了してステップS15をスキップすることにより、S音を発生させない。
ステップS11で、停車(V<Vs)と判定され、且つ、走行可能状態(イグニッションスイッチ18がON)と判定される場合、
ステップS12において、ブレーキスイッチ15がOFFの状態(ブレーキ非作動状態)で、Dレンジへのレンジ切り替え操作が有ったか否かをチェックし、
「Yes」であればステップS15において、ソフトフォーン型式の柔らかい「フォア〜ン」のようなS音が発生するよう車室外スピーカ1を作動させる。
ステップS12での判定が「No」である場合、ステップS13において、Dレンジが選択されている状態で、ブレーキスイッチ15がONからOFFに切り替わった(ブレーキペダルを踏み込んだ制動状態からブレーキペダルを釈放した非制動状態へ切り替わった)か否かをチェックし、
「Yes」であればステップS15において、ソフトフォーン型式の柔らかい「フォア〜ン」のようなS音が発生するよう車室外スピーカ1を作動させる。
ステップS13での判定が「No」である場合、ステップS14において、Dレンジへのレンジ切り替え操作と同時に、ブレーキペダルを踏み込んだ制動状態からブレーキペダルを釈放した非制動状態への切り替えが行われた(ブレーキスイッチ15がONからOFFへ切り替わった)か否かをチェックし、
「Yes」であればステップS15において、ソフトフォーン型式の柔らかい「フォア〜ン」のようなS音が発生するよう車室外スピーカ1を作動させる。
ところで、ステップS13またはステップS14において、ブレーキペダルを踏み込み状態からゆっくり戻す操作を行っている間は、未だブレーキペダルから足を離していないため、ブレーキスイッチ15がONのままでOFFに切り替わっていないことから、制御がステップS15に進まず、S音を発生し得ない。
かかる緩やかなブレーキペダル戻し操作時にS音が発生したと運転者が勘違いしていると、運転者は、S音により車両付近の人が走行開始を認知している筈であるとの認識をもって運転を行うことから、安全運転上好ましくない。
ちなみに、緩やかなブレーキペダル戻し操作によっても制動力は低下し、車両が例えばクリープ力や、降坂路の路面勾配に起因して動き出すことがあり、安全運転上の注意が必要である。
しかし本実施例においては前記した通り、S音を、車室外から車室内へ入り易い比較的低い或る周波数域の警報音とし、運転者が確実にS音を聞き得て、前発進の警報がなされたのを確実に認知し得るようにしたため、上記した緩やかなブレーキペダル戻し操作時にS音が発生しなかったのを確実に認知することができる。
よって本実施例においては、緩やかなブレーキペダル戻し操作時にS音が発生したと運転者が勘違いすることがなく、運転者は、車両付近の人がS音を聞いておらず、走行開始を認知していないとの認識のもと、安全運転に努めることができ、安全運転上大いに有利である。
ステップS14での判定が「No」である場合、制御をそのまま終了してステップS15をスキップすることにより、S音を発生させない。
つまり、走行可能状態(イグニッションスイッチ18がON)にされた停車(V<Vs)中に(ステップS11)、
ブレーキペダルを釈放した非制動状態でDレンジへのレンジ切り替え操作が有った時(ステップS12)、または、
Dレンジ選択状態で、ブレーキペダルを踏み込んだ制動状態からブレーキペダルを釈放した非制動状態へ切り替わった時(ステップS13)、或いは、
Dレンジへのレンジ切り替え操作と、ブレーキペダルを踏み込んだ制動状態からブレーキペダルを釈放した非制動状態への切り替えとが同時に行われた時(ステップS14)、
ステップS15において、S音が発生するよう車室外スピーカ1を作動させ、それ以外では車室外スピーカ1を非作動状態に保ってS音を発生させない。
かように、走行可能状態にされた停車中に(ステップS11)、
ブレーキペダル釈放(非制動)状態でDレンジへのシフト操作が有った時(ステップS12)、または、
Dレンジ選択状態で、ブレーキペダルを踏み込んでいた足をブレーキペダルから釈放した時(ステップS13)、或いは、
Dレンジへのシフト操作と、ブレーキペダルを踏み込んでいた足をブレーキペダルから釈放するブレーキ解放操作とが同時に行われた時に(ステップS14)、
ステップS15において、S音が発生するよう車室外スピーカ1を作動させる場合、S音が、走行開始直前に発生されることとなる。
ここで、イグニッションスイッチ18のONにより走行可能状態となった時にS音が発生するようにすると、S音の発生が早すぎて、走行可能状態となった時から走行開始直前までの間にS音が無駄に発生することとなり、走行開始まで長い時間があるのに、その間にS音が発生して周辺の人を惑わせるという問題を生ずる。
かといって、走行を開始してからS音が発生するのでは、走行開始を警報するというS音の発生目的に沿わず、警報の意味が薄れるという問題を生ずる。
これに対し本実施例では上記したごとく、S音を走行開始直前に発生させることとしたため、
走行開始まで長い時間があるのにS音が発生して周辺の人を惑わせたり、S音による警報の意味が薄れるという問題を回避することができる。
<前進警報音(D音)>
前進警報音(D音)の制御に当たり、図1の警報音コントローラ12は図3の制御プログラムを実行して当該制御を行う。
先ずステップS21において、車室外スピーカ1の作動により上記のS音を発生させているか否かをチェックする。
S音発生中であれば、ステップS22においてS音発生から所定時間(例えば500msec)が経過したか否かをチェックし、この所定時間(500msec)が経過するまでの間は、制御をそのまま終了してS音を発生させ続ける。
ステップS22でS音発生から所定時間(500msec)が経過したと判定した時、つまり、この所定時間だけS音を発生し続けた後は、制御をステップS23に進め、ここでS音からD音へのクロスフェードを行わせる。
このS音からD音へのクロスフェードは、発生中のS音の音圧レベルを徐々に低下させつつ、D音(エンジン疑似音)の音圧レベルを徐々に増大させることにより、S音からD音へ徐々に切り替わるよう車室外スピーカ1の作動状態を切り換えることであり、これによりS音からD音への切り替えを、周辺の人に違和感が及ぶことなしに行わせることができる。
ところで本実施例では、図2につき前記したごとくS音を走行開始直前に発生させることとしたため(図2のステップS12〜ステップS15)、
S音が、これにより車両の発進を警報すべき走行開始直前の最適なタイミングで発生されることとなり、S音に続いて上記のごとくに発せられるD音の発生タイミングも最適なものとなり、走行開始まで長い時間があるのにD音が発生して周辺の人を惑わせたり、D音による前進走行の警報の意味が薄れるという問題を回避することができる。
ステップS21で車室外スピーカ1がS音を発生させていないと判定する場合、ステップS24においてイグニッションスイッチ18がONの走行可能状態か否かをチェックし、
走行可能状態であれば、ステップS25においてDレンジ選択状態か否かをチェックし、
Dレンジ選択状態であれば、ステップS26において車速Vが停車判定車速Vs以上の走行判定中か否かをチェックする。
ステップS24で走行可能状態と判定し、ステップS25でDレンジ選択状態と判定し、ステップS26で走行中(V≧Vs)と判定するとき、ステップS27において、D音(エンジン疑似音)が発生するよう車室外スピーカ1を作動させる。
なお、D音は前記した通りエンジン疑似音とするが、その音圧レベルを一定に保ったまま、その周波数を、車室外から車室内へ入りにくい比較的高い前記或る高周波数域内において、高車速時ほど高くなる周波数に定める。
かようにD音を、音圧レベル一定とし、その周波数が高車速時ほど高くなるようなエンジン疑似音とする場合、
車外の人にとっては、D音の音量から車両までの距離を判断することができ(D音の音量が大きいほど車両が近くにいる)、D音の高低から車速を判断することができ(D音が高音であるほど高車速である)、D音のみから車両がどの程度の速度で、どこまで接近しているかを知ることができる。
次のステップS28においては、発進後の車速VがD音不要車速下限値(D音フェードアウト車速)30Km/h以上になったか否かをチェックし、ステップS28での判定が「No」である場合、ステップS29において今度は、車速Vが、D音不要車速下限値(D音フェードアウト車速)30Km/hよりもヒステリシス分(5Km/h)だけ低いD音フェードイン車速25Km/h未満であるか否かをチェックする。
ステップS28で発進後の車速VがD音不要車速下限値(D音フェードアウト車速)30Km/h以上になったと判定する場合、ステップS31において、ステップS27で発生させたD音が徐々に小さくなって消えるよう(フェードアウトするよう)車室外スピーカ1を作動させる。
ステップS29で車速VがD音フェードイン車速25Km/h未満であると判定する場合、ステップS32において、D音が発生中か否かをチェックし、ステップS31の実行によりD音が発生中でなくなっていれば、ステップS33において、D音が音圧レベル0から徐々に大きくなるよう(フェードインするよう)車室外スピーカ1を作動させる。
ステップS32でD音が発生中であると判定する場合、制御をそのまま終了することにより、引き続きD音が発生するよう車室外スピーカ1を作動させる。
ステップS29で車速VがD音フェードイン車速25Km/h以上であると判定する場合、つまり車速VがD音不要車速下限値(D音フェードアウト車速)30Km/hと、D音フェードイン車速25Km/hとの間におけるヒステリシス領域の車速である場合、
制御をそのまま終了することにより、車室外スピーカ1の作動状態を今の状態に保持して、D音発生状況を今の状態に保つ。
なお、ステップS24でイグニッションスイッチ18がOFFの走行不能状態であると判定する場合、D音が不要であるから、制御をステップS31に進めて、D音がフェードアウトするよう車室外スピーカ1を作動させる。
また、ステップS25でDレンジ選択状態に非ずと判定したり、未だDレンジ選択状態のままであるもののステップS26で停車中と判定する場合も、D音が不要であるから、D音がフェードアウトするよう車室外スピーカ1を作動させる必要があるが、この場合のD音制御を特に以下のごとくに行うこととする。
まずステップS34において、車速V=0Km/hの停車状態が設定時間(ここでは10秒)続いたか否かをチェックし、ここでの判定結果が「Yes」である場合に制御をステップS31に進めて、D音がフェードアウトするよう車室外スピーカ1を作動させる。
ステップS34で、車速V=0Km/hの停車状態でないと判定したり、停車状態になってもこの停車状態が設定時間(10秒)以上続かないと判定する場合、
ステップS35でPレンジまたはNレンジの非走行レンジか否かをチェックし、その判定結果が「Yes」であれば、
ステップS36において車速Vが停車判定車速Vs未満の停車判定中か否かをチェックし、その判定結果が「Yes」であれば、
ステップS31において、D音がフェードアウトするよう車室外スピーカ1を作動させることとする。
つまり、ステップS34で車速V=0Km/hの停車状態でないと判定したり、停車状態になってもこの停車状態が設定時間(10秒)以上続かないと判定する間は、
選択レンジが非走行レンジ(P,Nレンジ)であり(ステップS35)、且つ、車速Vが停車判定車速Vs未満の停車判定中である(ステップS36)時に、D音が不要であることから、D音のフェードアウトを行わせる(ステップS31)。
しかし、ステップS35で非走行レンジ(P,Nレンジ)でないと判定する時や、ステップS35で非走行レンジ(P,Nレンジ)であると判定してもステップS36で車速Vが停車判定車速Vs以上であると判定する走行判定中は、D音が必要であることから、制御をステップS27へ進めることにより、D音を発生し続けるよう車室外スピーカ1を引き続き作動させる。
なお、かようにステップS35で非走行レンジ(P,Nレンジ)であると判定してもステップS36で車速Vが停車判定車速Vs以上であると判定する走行判定中、D音を発生し続けるようにすれば、
Dレンジから非走行レンジ(PまたはNレンジ)に切り換えても未だ惰性により車両が走行している場合に、D音が引き続き車室外スピーカ1から発生し続けることとなり、このような場合も車両の前端部付近に居る人に車両走行中の警報を確実に発して注意を促すことができる。
また本実施例にあっては、ステップS25でDレンジ選択状態に非ずと判定したり、未だDレンジ選択状態であるもののステップS26で停車中と判定したことによりD音が不要になった場合、直ちにステップS31でD音をフェードアウトさせずに発生させ続け、ステップS34で車速V=0Km/hの停車状態が設定時間(10秒)続いたと判定したときに初めてステップS31でのD音フェードアウトを行うようにしたため、
車速V=0Km/hの停車状態が設定時間(10秒)続かないような渋滞路で、停車の度にD音がフェードアウトされ、図2のS音制御によりS音が発生する(ステップS15)煩わしさを回避することができる。
かかる目的を更に確実に達成するためには、上記の設定時間は渋滞路での停車時間を計測しつつ自動的に、或いは運転者が渋滞路での停車時間を考慮しつつ手動で変更し得るようにするのが良い。
更に本実施例においては、図2のステップS13またはステップS14でブレーキペダルの釈放によりブレーキスイッチ15がONからOFFへ切り替わったと判定したときに、ステップS15でS音を発生させることとしたため、
ブレーキペダルを踏み込み状態からゆっくり戻す操作を行っている間は、未だブレーキペダルが釈放されておらず、ブレーキスイッチ15がONからOFFへ切り替わる前であることによって、ステップS15でのS音発生が実行されない。
ところで、かかる緩やかなブレーキペダル戻し操作によっても制動力は低下し、車両が例えばクリープ力や、降坂路の路面勾配に起因して動き出すことがあり、かかる車両の動き出しも車両付近の人に警報する必要がある。
しかし当該車両動き出しの警報は、車両が動き出した後の警報であることから、発進を警報するS音よりも、走行を警報するD音の方が適切である。
しかして本実施例では図3に示すごとく、S音が発生しないようなブレーキペダルの緩速戻し操作が行われる場合は、図3のステップS21が制御をステップS24〜ステップS26に進めるようにし、ステップS26で車速Vが停車判定車速Vs以上であると判定する走行判定中、ステップS27でD音を発生させるようにしたため、
ブレーキペダルの緩速戻し操作で車両が動き出した場合は、S音に代えていきなりD音が発生されることとなり、当該車両の動き出しを、発進警報用のS音よりも適切な走行警報用のD音により確実に警報することができる。
<後退警報音(R音)>
後退警報音(R音)の制御に当たり、図1の警報音コントローラ12は図4の制御プログラムを実行して当該制御を行う。
先ずステップS41においてイグニッションスイッチ18がONの走行可能状態か否かをチェックし、
走行可能状態であれば、ステップS42においてRレンジ選択状態か否かをチェックし、
Rレンジ選択状態であれば、ステップS43において、R音が発生するよう車室外スピーカ1を作動させる。
つまり、イグニッションスイッチ18がONの走行可能状態で(ステップS41)、Rレンジが選択されると(ステップS42)、直ちに車室外スピーカ1からR音を発生させる(ステップS43)。
このR音は、Rレンジが選択されると直ちに車室外スピーカ1から発生されるため(ステップS42およびステップS43)、前記したごとくRレンジ選択中に車室内スピーカ11から発せられる「Rレンジ選択警報音」と同時に発生する。
そして車室外スピーカ1からのR音は前記した通り、車室内スピーカ11からの「Rレンジ選択警報音」と同種の車両情報であることから、「Rレンジ選択警報音」と同じ間歇音とし、
ステップS43で車室外スピーカ1からR音(間歇音)を発生させるに際しては、車室内スピーカ11から発生する間歇的「Rレンジ選択警報音」に同期して発生させる。
なお、この同期に際しては逆に、車室外スピーカ1からのR音(間歇音)に車室内スピーカ11からの間歇的「Rレンジ選択警報音」を同期させるようにしてもよい。
いずれにしても、同時に発せられる車室外スピーカ1からのR音(間歇音)と、車室内スピーカ11からの間歇的「Rレンジ選択警報音」とを上記のように同期させる場合、
運転者には聞かせる必要のない車室外スピーカ1からのR音が、車室内スピーカ11からの間歇的「Rレンジ選択警報音」に被せられて、運転者に聞こえることがなく、車室外スピーカ1からの無用なR音が運転者に聞こえる煩わしさを解消し得る。
それに加えて、上記したR音(間歇音)と間歇的「Rレンジ選択警報音」との同期により、車室外スピーカ1からのR音(間歇音)および車室内スピーカ11からの間歇的「Rレンジ選択警報音」の何れもが発生せず、これらが運転者に聞こえていない期間、つまり運転者がその他の警報音を聞き取りやすい期間が長くなる。
従って、この長い期間に亘りその他の警報音、例えば前記した「障害物接近警報音」や「シートベルト警報音」などを運転者が確実に聞き取って対応する情報を確実に入手し得ると共に、当該その他の警報音を運転者が速やかに認知し得て、安全上も大いに有利である。
ステップS41でイグニッションスイッチ18がOFFの走行不能状態であると判定する場合、後退走行が不能であってR音の発生も無用であることから、
制御をそのまま終了させてステップS43をスキップすることにより、R音を発生させないようにする(車室外スピーカ1を非作動状態にする)。
ステップS42でRレンジ選択状態でないと判定する場合は、ステップS44において非走行レンジ(PまたはNレンジ)選択状態か否かをチェックし、非走行レンジ(PまたはNレンジ)選択状態でもない、つまりDレンジ選択状態であると判定する判定するときは、R音の発生が不要であることから、
制御をそのまま終了させてステップS43をスキップすることにより、R音を発生させないようにする(車室外スピーカ1を非作動状態にする)。
ステップS44で非走行レンジ(PまたはNレンジ)選択状態と判定する場合は、ステップS45において車速Vが停車判定車速Vs未満の停車判定中か否かをチェックし、
停車判定中ならステップS46において、ステップS43で発生させたR音が徐々に小さくなって消えるよう(フェードアウトするよう)車室外スピーカ1を作動させる。
しかし、ステップS44で非走行レンジ(PまたはNレンジ)選択状態と判定しても、ステップS45で車速Vが停車判定車速Vs未満の停車判定中でない(つまり走行判定中)であると認知した場合は、非走行レンジ(PまたはNレンジ)であっても車両が後退していることから、ステップS47に制御を進めて、ステップS43で発生させ始めたR音が引き続き発生するよう車室外スピーカ1を作動させ続ける。
かようにすることで、Rレンジから非走行レンジ(PまたはNレンジ)に切り換えても未だ惰性により車両が後退している場合は、R音が引き続き車室外スピーカ1から発生し続けることとなり、このような場合も車両の後端部付近に居る人に車両後退中の警報を確実に発して注意を促すことができる。
しかし、ステップS47でR音を発生させるのは、ステップS42でRレンジ選択状態でないと判定した場合であって、この時は前記したところから明らかなように車室内スピーカ11から「Rレンジ選択警報音」が発生していないため、
ステップS43で行うような車室外スピーカ1からのR音と、車室内スピーカ11からの「Rレンジ選択警報音」との同期は不要である。
なお、図2,3につき前述した通りD音は、停車中(図2のステップS11)の運転者によるDレンジ選択およびブレーキペダル釈放のような発進準備操作(図2のステップS12〜ステップS14)に呼応したS音の発生後(同図のステップS15)、例えば500msecのような所定時間(図3のステップS22)が経過してから発生させるようにしたのに対し、
R音は図4につき前述した通り、運転者によるRレンジ選択操作(図4のステップS42)が行われると直ちに発生させるようにしたが(図4のステップS43)、その理由は以下のためである。
つまり、車両は前進走行を旨とするものであり、運転者にとって後退走行は、前進走行よりも難しいし、更に、
周辺の人は、車両が通常前進方向へ移動するものと予測しており、前進走行には元々注意を払っているものの、後退走行は車両の予期せぬ方向への移動であるから、前進走行ほどの注意を払っていないのが実情である。
そのため、後退走行時に警報のために発生させるべき後退警報音(R音)は、運転者の不慣れな方向への走行時の警報音であること、また周辺の人が予期せぬ方向への走行時の警報音であるから、できるだけ早期に発生させて周辺の人に注意を促すのが安全上好ましい。
これに対し、前進走行時に警報のために発生させるべき前進警報音(D音)は、運転者の慣れた方向への走行時の警報音であること、また周辺の人が予期している車両本来の方向への走行時の警報音であるから、更にD音が前記した通りエンジン疑似音であり、車両の静粛性を確保するためにD音の発生時間をできるだけ短くするのがよいこととも相まって、D音はできるだけ遅くに発生させるのが好ましい。
本実施例ではかかる要求に鑑み、R音は前記したごとく、運転者によるRレンジ選択操作(図4のステップS42)が行われると直ちに発生させるようになし(図4のステップS43)、
D音は前記したごとく、停車中(図2のステップS11)の運転者によるDレンジ選択およびブレーキペダル釈放のような発進準備操作(図2のステップS12〜ステップS14)に呼応したソフトフォーン型式の柔らかいS音の発生後(同図のステップS15)、例えば500msecのような所定時間(図3のステップS22)が経過してから発生させるようになす。
かようにすることで、前進走行時も後退走行時も警報音を、必要なタイミングで、且つ必要な期間中に発生させることができると共に、不要な警報音で周辺の人を困惑させることがなくなる。
<警報音禁止制御>
深夜とか、住宅街においては、S音、D音、R音のような車室外スピーカ1からの警報音が迷惑になることがあり、このような場合、運転者は図1の消音スイッチ16を押して、警報音禁止指令を発する。
ここで消音スイッチ16は、押されていないとき自己復帰して常態位置(OFF位置)に保たれ、押す度にONされて警報音禁止指令を発するものとする。
図1の警報音コントローラ12は、消音スイッチ16から上記警報音禁止指令を入力されるとき、図5の制御プログラムを実行して、以下のように警報音禁止制御を遂行する。
ステップS51においては、消音スイッチ16がONされたか否かをチェックし、上記警報音禁止指令の有無をチェックし、消音スイッチ16がONされない(警報音禁止指令が発せられない)間は、制御をそのまま終了して警報音の禁止を実行しないこととし、これにより図2〜4につき前述した通りに警報音を発生させる。
ステップS51で消音スイッチ16がONされた(警報音禁止指令が発せられた)と判定するとき、ステップS52において警報音の発生を禁止し、図2〜4による制御にかかわらず車室外スピーカ1から警報音(S音、D音、R音)が発生されることのないようにする。
次のステップS53においては、車速Vが、図3のステップS28につき前述したD音不要車速下限値(D音フェードアウト車速)30Km/h以上か否かをチェックし、ここでの判定結果が「No」であれば、制御をそのまま終了して、ステップS52での警報音発生禁止を継続させる。
ステップS53で車速VがD音フェードアウト車速(30Km/h)以上であると判定したとき、制御をステップS54に進め、ステップS52での警報音発生禁止を解除することにより、図2〜4による制御通りに車室外スピーカ1から警報音(S音、D音、R音)を発生させるようにする。
以上の警報音禁止制御によれば、深夜とか、住宅街のため、車室外スピーカ1からの警報音が迷惑になる場合において、運転者が消音スイッチ16を押すと(ステップS51)、図2〜4の制御にかかわらず車室外スピーカ1から警報音(S音、D音、R音)が発せられるのを禁止することができ(ステップS52)、車室外スピーカ1からの警報音で周辺の人が迷惑を被るのを回避することができる。
ところで、運転者が消音スイッチ16を押して警報音の発生を禁止した状態が継続すると、警報音が迷惑にならない場所まで走行した後も警報音が発せられないこととなり、安全装置としての警報装置がその用をなさない。
そこで本実施例においては、車速VがD音フェードアウト車速(30Km/h)以上になるとき(ステップS53)、警報音が迷惑にならない場所まで走行したと判断して、上記の警報音発生禁止を解除することにより(ステップS54)、図2〜4による制御通りに車室外スピーカ1から警報音(S音、D音、R音)を発生させ得るようにする。
かようにすることで、警報音が迷惑にならない場所まで走行した後も警報音が発せられずに、警報装置が安全装置としての用をなさないといった上記の問題を回避することができある。
なお本実施例のように、車速VがD音フェードアウト車速(30Km/h)以上になったのを警報音禁止解除条件とし、この条件が満足されるときをもって、警報音が迷惑にならない場所まで走行したと判断し、警報音の禁止を解除するようになす場合、以下の作用効果をも奏し得る。
つまり、警報音禁止解除条件を車速V<D音フェードアウト車速(30Km/h)とする場合、この低車速域が、前記したところから明らかなようにD音発生車速域であるため、この低車速域で消音スイッチ16を押して(ONして)警報音の禁止を行っても、消音スイッチ16から指を離したとき、未だ警報音が迷惑になる場所での走行であるにもかかわらず、直ちに警報音の禁止解除がなされて警報音が発生され、周辺の人に迷惑を掛けるという問題を生ずる。
しかし本実施例においては、車速VがD音フェードアウト車速(30Km/h)以上になったのを警報音禁止解除条件とし、この条件が満足されるときに警報音の禁止を解除するようにしたため、
車速VがD音フェードアウト車速(30Km/h)未満の低車速域(D音発生車速域)で消音スイッチ16をONしてこの消音スイッチ16から指を離したとき、警報音の禁止が解除されることなく継続されることとなり、未だ警報音が迷惑になる場所での走行であるにもかかわらず、警報音が発せられて周辺の人に迷惑を掛けるという上記の問題を回避することができる。
<警報音増大制御>
工場とか、繁華街のような騒々しい場所での走行に際しては、S音、D音、R音のような車室外スピーカ1からの警報音が、規定の音圧レベルだと周辺の人に聞き取りにくくなることがあり、このような場合、運転者は図1の増音スイッチ17を押して、警報音増大指令を発する。
ここで増音スイッチ17は、押されていないとき自己復帰して常態位置(OFF位置)に保たれ、押す度にONされて警報音増大指令を発するものとする。
なおD音は、前記した周波数の音として車外周辺の人が聞き取りやすい警報音であるため、基本的には繁華街のような騒々しい場所でも増音が不要であり、D音の増音は必須ではないが、それでもD音が聞き取り難くなるような極悪環境に遭遇したときのため、本実施例では保険のためにD音も増音することができるようにしておくこととする。
図1の警報音コントローラ12は、増音スイッチ17から上記警報音増大指令を入力されるとき、図6の制御プログラムを実行して、以下のように警報音増大制御を遂行する。
ステップS61においては、増音スイッチ17がONされたか否かをチェックし、上記警報音増大指令の有無をチェックし、増音スイッチ17がONされない(警報音増大指令が発せられない)間は、制御をそのまま終了して警報音の増大を実行しないこととし、これにより図2〜4につき前述した通りに発生させる警報音の音圧レベルを規定値のままとする。
ステップS61で増音スイッチ17がONされた(警報音増大指令が発せられた)と判定するとき、ステップS62において警報音の増大を行い、図2〜4による制御下で発せられる車室外スピーカ1からの警報音(S音、D音、R音)の音圧レベルを、規定値よりも大きな音となるよう増大させるようにする。
次のステップS63においては、増音スイッチ17のON(警報音増大指令の発生)から一定時間が経過したか否かをチェックし、ここでの判定結果が「No」であれば、つまり増音スイッチ17のON(警報音増大指令の発生)から未だ上記の一定時間が経過していないと判定する場合は、制御をそのまま終了して、ステップS62での警報音の増大を継続的に実行させる。
ステップS63で増音スイッチ17のON(警報音増大指令の発生)から上記の一定時間が経過したと判定するとき、制御をステップS64に進め、ステップS62での警報音の増大をキャンセルすることにより、図2〜4による制御下で発生される車室外スピーカ1からの警報音(S音、D音、R音)の音圧レベルを規定値まで低下させるようにする。
発生させるようにする。
以上の警報音増大制御によれば、工場とか、繁華街のような騒々しい場所のため、周辺の人が車室外スピーカ1からの警報音を聞き取りにくい場合に、運転者が増音スイッチ17を押すと(ステップS61)、図2〜4の制御下で発せられる車室外スピーカ1からの警報音(S音、D音、R音)を音圧レベルの上昇により増大させることができ(ステップS62)、工場とか、繁華街のような騒々しい場所でも確実に車室外スピーカ1からの警報音を周辺の人が聞き取ることができる。
ところで、運転者が増音スイッチ17を押して警報音を増大させた状態が続くと、騒々しくないない場所まで走行したときに、周辺の人が規定よりも大きな警報音で迷惑を被ることになる。
そこで本実施例においては、増音スイッチ17のON(警報音増大指令の発生)から上記の一定時間が経過するとき(ステップS63)、上記警報音の増大をキャンセルすることにより(ステップS64)、図2〜4による制御下で発生される車室外スピーカ1からの警報音(S音、D音、R音)を、音圧レベルが規定のレベルになるよう低下させ得るようにする。
かようにすることで、増音スイッチ17のONから上記の一定時間が経過したときは、騒々しくない郊外や、住宅地のように、静かな場所まで走行したとの判断により、車室外スピーカ1からの警報音(S音、D音、R音)を規定音圧レベルまで低下させることとなって、増音スイッチ17のONによる警報音増大状態がいつまでも続くことがなくなり、静かな場所で車両の付近に居る人が大きな警報音により迷惑を被ることがなくなる。
<実施例の作用効果>
上記した実施例になる車両の警報音発生装置にあっては、車外への走行警報音である前進警報音(D音)の周波数を、図8に示した各等ラウドネスレベル曲線の音圧レベルが最小となる近辺の周波数であって、且つ、図7に例示した車両の車室内遮音特性が許容可能となる近辺の周波数である、1.5kHz〜6kHzの範囲内における周波数に定めたため、
車外周辺の人がこの前進警報音(D音)を聞き取りやすくなると共に、この前進警報音(D音)が車外から車室内へ進入し難くなる。
従って本実施例によれば、特許文献1に記載のような音量増大手段のごとき特別な対策をしなくても車外周辺の人が前進警報音(D音)を確実に聞き取ることができ、また、不要な前進警報音(D音)が車室内に進入して運転者や同乗者を不快にすることもなくなり、前記した従来技術の問題をことごとく解消することができる。
また前進警報音(D音)の上限周波数を、高齢者でも聞き取りにくくなることのない限界周波数である6kHzとしたことにより、耳感度が低下した高齢者でもこの前進警報音(D音)を確実に聞き取ることができて、安全上大いに有益である。
なお、前進警報音(D音)の周波数を、上記周波数域(1.5kHz〜6kHz)内のうち、特に、外耳道の空洞共鳴により人間の耳感度が最も高くなる周波数域2kHz〜4KHz(図8の最適可聴域)内の周波数とする場合、
車外周辺の人が前進警報音(D音)を確実に聞き取ることができ、また、不要な前進警報音(D音)が車室内に進入して運転者や同乗者を不快にすることがなくなる、という前記の作用効果を更に顕著なものにすることができる。
<その他の実施例>
なお上記実施例では、走行警報音が前進警報音(D音)である場合につき、その周波数を前記のごとき特異なものとしたが、後退警報音(R音)も走行警報音であることから、後退警報音(R音)の周波数も前進警報音(D音)と同様なものにして、同様な作用効果が得られるようにしてもよいこと勿論である。
1 車室外スピーカ
11 車室内スピーカ
12 警報音コントローラ
13 レンジセンサ
14 車速センサ
15 ブレーキスイッチ
16 消音スイッチ
17 増音スイッチ
18 イグニッションスイッチ
19 障害物接近距離センサ

Claims (2)

  1. 車両の走行を周辺の人に知らせるための走行警報音を車外で発するようにした車両の警報音発生装置において、
    前記走行警報音として、前記車両が走行開始直前であることを示す所定の操作がなされたとき所定時間だけ発せられる第1警報音と、前記車両の走行中に発せられる第2警報音とを設定し、
    前記第1警報音は、前記第2警報音よりも車室内に入り易い音とし、
    前記第2警報音は、車外周辺の人が前記第2警報音を聞き取りやすくなるよう、各等ラウドネスレベル曲線の音圧レベルが最小となる近辺の周波数であって、且つ、前記第2警報音が車外から車室内へ進入し難くなるよう、前記車両の車室内遮音特性が前記第2警報音の車室内への進入音量を許容可能な程度まで押さえ込むことができる近辺の周波数である1.5kHz〜6kHzの範囲内の周波数の音とした
    ことを特徴とする車両の警報音発生装置。
  2. 請求項1に記載された車両の警報音発生装置において、
    前記第2警報音の周波数を、2kHz〜4kHzの範囲内の周波数としたことを特徴とする車両の警報音発生装置。
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