JP5800307B2 - ウシ由来試料を鑑定する方法及びキット - Google Patents
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Description
Y染色体由来のSex determining Region Y (SRY)マーカー;
ミトコンドリアDNA由来のNADH dehydrogenase subunit 4(ND4)マーカー及びNADH dehydrogenase subunit 5 (ND5)マーカー;
毛色関連遺伝子由来のmelanocortin-1 receptor (MC1R)マーカー;並びに
AFLP法により本発明者らが開発したSNPマーカーであるBIMA100、121、及び122。
豪州産ウシにおいてはこれらSNPマーカー全てに関して特異的な対立遺伝子がある程度以上の遺伝子頻度で検出されることが既に報告されている。検討の結果、まずMC1Rマーカー、並びにBIMA100、121、及び122に関しては、豪州産ウシに特異的にみられたのと同様の対立遺伝子が米国産ウシにおいても検出されるこということが明らかになった。本発明者は、これら4種のSNPマーカーと、今回新たに発見した8つのSNPマーカーとを適宜組み合わせることによっても、ウシ由来試料の由来が日本産ウシであるか米国産ウシであるかを鑑定することができることを実証した。
(1)第3番目の染色体に含まれる配列番号1に示した塩基配列の第439番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(2)第7番目の染色体に含まれる配列番号2に示した塩基配列の第564番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(3)第13番目の染色体に含まれる配列番号3に示した塩基配列の第255番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;
(4)第22番目の染色体に含まれる配列番号4に示した塩基配列の第23番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(5)第3番目の染色体に含まれる配列番号5に示した塩基配列の第97番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(6)第2番目の染色体に含まれる配列番号6に示した塩基配列の第169番目のシトシンがアデニンに置換された一塩基多型;
(7)第24番目の染色体に含まれる配列番号7に示した塩基配列の第177番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(8)第5番目の染色体に含まれる配列番号8に示した塩基配列の第326番目のチミンがシトシンに置換された一塩基多型;
(9)第26番目の染色体に含まれる配列番号9に示した塩基配列の第280番目のシトシンがグアニンに置換された一塩基多型;
(10)第20番目の染色体に含まれる配列番号10に示した塩基配列の第228番目のアデニンがシトシンに置換された一塩基多型;
(11)第24番目の染色体に含まれる配列番号11に示した塩基配列の第378番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(12)配列番号12に示した塩基配列の第120番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;
(13)第6番目の染色体に含まれる配列番号13に示した塩基配列の第206番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(14)第8番目の染色体に含まれる配列番号14に示した塩基配列の第289番目のシトシンがアデニンに置換された一塩基多型;及び
(15)第17番目の染色体に含まれる配列番号15に示した塩基配列の第248番目のグアニンがアデニンに置換された一塩基多型。
(1)第3番目の染色体に含まれる配列番号1に示した塩基配列の第439番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(2)第7番目の染色体に含まれる配列番号2に示した塩基配列の第564番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(3)第13番目の染色体に含まれる配列番号3に示した塩基配列の第255番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;
(4)第22番目の染色体に含まれる配列番号4に示した塩基配列の第23番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(5)第3番目の染色体に含まれる配列番号5に示した塩基配列の第97番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(6)第2番目の染色体に含まれる配列番号6に示した塩基配列の第169番目のシトシンがアデニンに置換された一塩基多型;
(7)第24番目の染色体に含まれる配列番号7に示した塩基配列の第177番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(8)第5番目の染色体に含まれる配列番号8に示した塩基配列の第326番目のチミンがシトシンに置換された一塩基多型;
(9)第26番目の染色体に含まれる配列番号9に示した塩基配列の第280番目のシトシンがグアニンに置換された一塩基多型;
(10)第20番目の染色体に含まれる配列番号10に示した塩基配列の第228番目のアデニンがシトシンに置換された一塩基多型;
(11)第24番目の染色体に含まれる配列番号11に示した塩基配列の第378番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;及び
(12)配列番号12に示した塩基配列の第120番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型。
(16)配列番号16に示すmelanocortin-1 receptor(MC1R)の塩基配列の109番目のグアニンが欠失した一塩基多型;
(17)第16番目の染色体に含まれる配列番号17に示した塩基配列の第186番目のグアニンがチミンに置換された一塩基多型;
(18)配列番号18に示した塩基配列の96番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;及び
(19)第7番目の染色体に含まれる配列番号19に示した塩基配列の546番目のシトシンがグアニンに置換された一塩基多型。
(1)第3番目の染色体に含まれる配列番号1に示した塩基配列の第439番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(2)第7番目の染色体に含まれる配列番号2に示した塩基配列の第564番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(3)第13番目の染色体に含まれる配列番号3に示した塩基配列の第255番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;
(4)第22番目の染色体に含まれる配列番号4に示した塩基配列の第23番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(5)第3番目の染色体に含まれる配列番号5に示した塩基配列の第97番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(6)第2番目の染色体に含まれる配列番号6に示した塩基配列の第169番目のシトシンがアデニンに置換された一塩基多型;
(7)第24番目の染色体に含まれる配列番号7に示した塩基配列の第177番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(8)第5番目の染色体に含まれる配列番号8に示した塩基配列の第326番目のチミンがシトシンに置換された一塩基多型;
(9)第26番目の染色体に含まれる配列番号9に示した塩基配列の第280番目のシトシンがグアニンに置換された一塩基多型;
(10)第20番目の染色体に含まれる配列番号10に示した塩基配列の第228番目のアデニンがシトシンに置換された一塩基多型;
(11)第24番目の染色体に含まれる配列番号11に示した塩基配列の第378番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(12)配列番号12に示した塩基配列の第120番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;
(13)第6番目の染色体に含まれる配列番号13に示した塩基配列の第206番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(14)第8番目の染色体に含まれる配列番号14に示した塩基配列の第289番目のシトシンがアデニンに置換された一塩基多型;及び
(15)第17番目の染色体に含まれる配列番号15に示した塩基配列の第248番目のグアニンがアデニンに置換された一塩基多型。
(1)第3番目の染色体に含まれる配列番号1に示した塩基配列の第439番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(2)第7番目の染色体に含まれる配列番号2に示した塩基配列の第564番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(3)第13番目の染色体に含まれる配列番号3に示した塩基配列の第255番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;
(4)第22番目の染色体に含まれる配列番号4に示した塩基配列の第23番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(5)第3番目の染色体に含まれる配列番号5に示した塩基配列の第97番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(6)第2番目の染色体に含まれる配列番号6に示した塩基配列の第169番目のシトシンがアデニンに置換された一塩基多型;
(7)第24番目の染色体に含まれる配列番号7に示した塩基配列の第177番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(8)第5番目の染色体に含まれる配列番号8に示した塩基配列の第326番目のチミンがシトシンに置換された一塩基多型;
(9)第26番目の染色体に含まれる配列番号9に示した塩基配列の第280番目のシトシンがグアニンに置換された一塩基多型;
(10)第20番目の染色体に含まれる配列番号10に示した塩基配列の第228番目のアデニンがシトシンに置換された一塩基多型;
(11)第24番目の染色体に含まれる配列番号11に示した塩基配列の第378番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(12)配列番号12に示した塩基配列の第120番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型。
(16)配列番号16に示すmelanocortin-1 receptor(MC1R)の塩基配列の109番目のグアニンが欠失した一塩基多型;
(17)第16番目の染色体に含まれる配列番号17に示した塩基配列の第186番目のグアニンがチミンに置換された一塩基多型;
(18)配列番号18に示した塩基配列の96番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;及び
(19)第7番目の染色体に含まれる配列番号19に示した塩基配列の546番目のシトシンがグアニンに置換された一塩基多型。
1−1.鑑定方法に供する試料の説明
本発明の鑑定方法に供する試料としては、ウシ由来DNAを含んでいる試料であればよく特に限定されない。例えば、市場で一般的に入手することのできる牛肉を用いることができる。牛肉としては例えば、もも肉、肩肉、またはロース肉等を用いることができる。その他にも、肝臓組織、リンパ節、または血液等も用いることができる。
SNPの検出方法は、SNPを検出できる方法であればよく特に限定されない。例えば、PCR-RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism)法、RFLP法、AFLP(Amplified Fragment. Length Polymorphism)法、PCR-SSCP(Single Strand Conformation Polymorphism)法、およびインベーダーアッセイ法等が挙げられる。
本発明で用いるSNPは次の(1)〜(19)を含む。
(1)第3番目の染色体に含まれる配列番号1に示した塩基配列の第439番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(2)第7番目の染色体に含まれる配列番号2に示した塩基配列の第564番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(3)第13番目の染色体に含まれる配列番号3に示した塩基配列の第255番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;
(4)第22番目の染色体に含まれる配列番号4に示した塩基配列の第23番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(5)第3番目の染色体に含まれる配列番号5に示した塩基配列の第97番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(6)第2番目の染色体に含まれる配列番号6に示した塩基配列の第169番目のシトシンがアデニンに置換された一塩基多型;
(7)第24番目の染色体に含まれる配列番号7に示した塩基配列の第177番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(8)第5番目の染色体に含まれる配列番号8に示した塩基配列の第326番目のチミンがシトシンに置換された一塩基多型;
(9)第26番目の染色体に含まれる配列番号9に示した塩基配列の第280番目のシトシンがグアニンに置換された一塩基多型;
(10)第20番目の染色体に含まれる配列番号10に示した塩基配列の第228番目のアデニンがシトシンに置換された一塩基多型;
(11)第24番目の染色体に含まれる配列番号11に示した塩基配列の第378番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(12)配列番号12に示した塩基配列の第120番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;
(13)第6番目の染色体に含まれる配列番号13に示した塩基配列の第206番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(14)第8番目の染色体に含まれる配列番号14に示した塩基配列の第289番目のシトシンがアデニンに置換された一塩基多型;
(15)第17番目の染色体に含まれる配列番号15に示した塩基配列の第248番目のグアニンがアデニンに置換された一塩基多型;
(16)配列番号16に示すmelanocortin-1 receptor(MC1R)の塩基配列の109番目のグアニンが欠失した一塩基多型;
(17)第16番目の染色体に含まれる配列番号17に示した塩基配列の第186番目のグアニンがチミンに置換された一塩基多型;
(18)配列番号18に示した塩基配列の96番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;及び
(19)第7番目の染色体に含まれる配列番号19に示した塩基配列の546番目のシトシンがグアニンに置換された一塩基多型。
本発明で用いるSNP(1)は、ウシの第3番目の染色体に含まれる配列番号1に示した塩基配列の第439番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型である。「ARS-BFGL-NGS-57280」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(2)は、ウシの第7番目の染色体に含まれる配列番号2に示した塩基配列の第564番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型である。「ARS-BFGL-NGS-71949」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(3)は、ウシの第13番目の染色体に含まれる配列番号3に示した塩基配列の第255番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型である。「ARS-BFGL-NGS-30669」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(4)は、第22番目の染色体に含まれる配列番号4に示した塩基配列の第23番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型である。「ARS-BFGL-NGS-64438」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(5)は、第3番目の染色体に含まれる配列番号5に示した塩基配列の第97番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型である。「ARS-BFGL-NGS-11485」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(6)は、第2番目の染色体に含まれる配列番号6に示した塩基配列の第169番目のシトシンがアデニンに置換された一塩基多型である。「ARS-BFGL-NGS-106170」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(7)は、第24番目の染色体に含まれる配列番号7に示した塩基配列の第177番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型である。「ARS-BFGL-NGS-19332」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(8)は、ウシの第5番目の染色体に含まれる配列番号8に示した塩基配列の第326番目のチミンがシトシンに置換された一塩基多型である。「ARS-BFGL-NGS-113203」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(9)は、第26番目の染色体に含まれる配列番号9に示した塩基配列の第280番目のシトシンがグアニンに置換された一塩基多型である。「ARS-BFGL-NGS-21474」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(10)は、ウシの第20番目の染色体に含まれる配列番号10に示した塩基配列の第228番目のアデニンがシトシンに置換された一塩基多型である。「BTB-01127511」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(11)は、第24番目の染色体に含まれる配列番号11に示した塩基配列の第378番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型である。「BTA-23594-no-rs」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(12)は、配列番号12に示した塩基配列の第120番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型である。「ARS-BFGL-NGS-105175」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(13)は、ウシの第6番目の染色体に含まれる配列番号13に示した塩基配列の第206番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型である。「ARS-BFGL-NGS-66950」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(14)は、ウシの第8番目の染色体に含まれる配列番号14に示した塩基配列の第289番目のシトシンがアデニンに置換された一塩基多型である。「BTA-80981-no-rs」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(15)は、ウシの第17番目の染色体に含まれる配列番号15に示した塩基配列の第248番目のグアニンがアデニンに置換された一塩基多型である。「ARS-BFGL-NGS-103975」と呼ばれることもあるSNPである。
本発明で用いるSNP(16)は、配列番号16に示すmelanocortin-1 receptor(MC1R)をコードする塩基配列の109番目のグアニンが欠失した一塩基多型である。
本発明で用いるSNP(17)は、ウシの第16番目の染色体に含まれる配列番号17に示した塩基配列の第186番目のグアニンがチミンに置換された一塩基多型である。このSNPは本発明者らによって発見されBIMA(Breed Identified Markers derived from AFLP)100と名付けられているものである。
本発明で用いるSNP(18)は、配列番号18に示した塩基配列の96番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型である。このSNPは本発明者らによって発見されBIMA121と名付けられているものである。
本発明で用いるSNP(19)は、ウシの第7番目の染色体に含まれる配列番号19に示した塩基配列の546番目のシトシンがグアニンに置換された一塩基多型である。このSNPは本発明者らによって発見されBIMA122と名付けられているものである。
本発明の鑑定方法は、SNP(1)〜(15)からなる群より選択される少なくとも1種のSNPの有無を検出し、いずれか少なくとも1つが検出された試料を日本産でないウシ由来の試料であると鑑定することを特徴とする方法である(これを「鑑定方法(I)」という)。
(A)SNP(1)〜(15)からなる群より選択される少なくとも1種のSNPの有無;と併せて
(B)SNP(16)〜(19)からなる群より選択される少なくとも1種のSNPの有無
についても検出し、いずれか少なくとも1つが検出された試料を日本産でないウシ由来の試料であると鑑定することを特徴とする方法も含まれる(これを「鑑定方法(II)」という)。
非日本産ウシ試料が非日本産ウシであると鑑定される確率のことを本明細書において検出率(Pi)という。検出率を向上させることは鑑定の感度を高めることにつながる。鑑定の感度が高まることで鑑定作業の効率性が増す。検出しようとする対象となるSNP(本明細書において「検出対象SNP」ということがある。)として1種のSNPを用いる場合、検出率は、この検出対象SNPが非日本産ウシの試料由来DNAに存在している確率として算出される。非日本産ウシ試料におけるこの検出対象SNPの対立遺伝子頻度をPaとすると、この鑑定方法の検出率はPi=1-(1-Pa)2として算出される。また、検出対象SNPとしてn個(nは2以上の整数である)のSNPを用い、これらのうちいずれか1種が検出された試料を非日本産ウシ由来の試料であると鑑定する場合、検出率は、Pi (%)=1-(1-Pi1)(1-Pi2)……(1-Pin)×100%として算出される。
日本産ウシ試料が誤って非日本産ウシ試料であると鑑定される確率のことを本明細書において誤判別率(Pm)という。誤判別率を改善することは鑑定の精度を高めることにつながる。鑑定の精度が高まることでより鑑定の信頼性が増す。検出対象SNPとして1種のSNPを用いる場合、日本産ウシ試料におけるこの検出対象SNPの対立遺伝子頻度をPbとすると、この鑑定方法の誤判別率はPm =1-(1-Pb)2として算出される。また、検出対象SNPとしてn個(nは2以上の整数である)のSNPを用い、これらのうちいずれか1種が検出された試料を非日本産ウシ由来の試料であると鑑定する場合、誤判別率は、Pm (%)=1-(1-Pm1)(1-Pm2)……(1-Pmn) ×100%として算出される。
鑑定方法(I)においては、検出対象SNPとしては、どのSNPを選択するかにもよるが、鑑定の感度という観点では3〜8種のSNPが好ましく、4〜8種のSNPがより好ましく、5〜8種のSNPがさらにより好ましい。なお、作業効率の面からは検出対象SNPの種類は少ないほうがより好ましい。
鑑定方法(II)は、鑑定方法(I)では使用しないSNPマーカーをさらに少なくとも1種用いる方法である。鑑定方法(I)のSNPマーカーでは検出されないような鑑定対象であっても、鑑定方法(II)で追加されたSNPマーカーによってはじめて検出されることがありうる。このようにして、鑑定方法(II)は鑑定方法(I)に比べて検出率を改善することができる。
以下、本発明の鑑定キットについて説明するが、鑑定キットに供する試料、SNPの検出方法、SNP、及び鑑定基準についての説明は、上記した本発明の鑑定方法についての説明と同様であるため省略する。
SNPを検出するために必要な材料は、SNPの検出方法によって異なる。例えば、PCR反応によりSNPを含むDNA断片をまず増幅する必要があるような検出方法を用いる場合には、PCR反応に必要なプライマーのセットがSNPを検出するために必要となる。そのような検出方法としては例えばPCR-RFLP法及びPCR-SSCP法等が挙げられる。本発明の鑑定キットはSNPを検出するために必要な材料としてそのようなプライマー、又は一組のプライマー(プライマーセット)を含んでいてもよい。プライマーの配列は限定されず、常法に従って決定することができる。プライマーの塩基数は、目的のDNA断片を増幅することができればよく特に限定されないが、10塩基から40塩基が好ましく、15塩基から30塩基がより好ましく、18塩基から25塩基がよりさらに好ましい。プライマーとしては、例えば表1に記載のプライマーを検出対象SNPに応じて選択することができる。表1に記載のプライマーを用いる場合には、アニーリング温度を同表に記載の通りとすることによって効率的にDNA断片を増幅することができる。
SNP(1)〜(15)からなる群より選択される少なくとも1種を検出対象とし、本発明の鑑定方法を実施した。日本産ウシ由来の試料、及び米国産ウシ由来の試料に対してそれぞれ鑑定を行った。日本産ウシ由来の試料としては黒毛和種由来の試料及びホルスタイン種由来の試料を用いた。この鑑定方法について検出率と誤判別率を算出した結果を表2に記載した。
(1)ゲノムDNAの精製
ウシゲノムDNAは肝臓組織、リンパ節、血液および市販牛肉より抽出し、精製した。
組織からのゲノムDNAは以下のように抽出した。組織約1.0gをホモジナイザーでホモジナイズし、TNE溶液 (10mM Tris-HCl pH7.5, 0.1M NaCl, 1mM EDTA) 20mlを加えながらガーゼを用いて濾過し、3,000rpmで10分間遠心分離した。その後上清を除き、TNE溶液を15ml加え良く混和して、再び3,000rpmで10分間遠心分離し上清を除いた。そして生理食塩水/EDTA (0.16M NaCl, 1mM EDTA) 1mlに良く混和し、ザルコシル溶液 (0.5% N-lauroylsarcosine sodium salt, 10mM Tris-HCl pH8.0, 10mM EDTA) 15mlを加えてDNAを切断しないようにゆっくりと振とうしてDNAを溶出させた。そしてProteinase K溶液 (10mg/ml in water) 200μlを加え、37℃で一晩インキュベートした。当量のTE-フェノール (フェノールを60℃で溶かし、0.1%になるように8-hydroxyquinolineを加え、TE buffer (10mM Tris-HCl ; pH8.0, 1mM EDTA) で水飽和したもの) を加え10分間ゆっくりと混和した。3,000rpm で10分間遠心分離し、水層とフェノール層の間にできる蛋白質を取らないように水層を分取した。この水層にフェノール・クロロフォルム・イソアミルアルコール (25:24:1, 0.05%の8-hydroxyquinoiineを含む) を加え、10分間遠心分離し水層を分取した。この水層に当量のクロロフォルム・イソアミルアルコール (24:1) を加え10分間混和した後、3,000rpmで5分間遠心分離した。次に水層を分取し、当量のジエチルエーテルを加え、白色になった水層が透明になるまでやや強めに振とうした後3,000rpmで数秒間遠心分離し、エーテルを通風除去した。そして10分の1量の3M酢酸ナトリウム溶液 (酢酸でpH5.2に調整) を加え、-20℃で冷却した100%エタノールを2倍量混合しDNAを沈殿させた。そのDNAは70%エタノールで洗浄し室温で乾燥させた後、2mlのTE bufferに溶解して4℃で保存した。
リンパ節約0.5gをテフロン(登録商標)・ペッスルとステンレスメッシュを用いて、生理食塩水/EDTA中ですり潰しガーゼで濾過した後、3,000rpmで10分間遠心分離した。その後上清を除去して20mlの生理食塩水/EDTAを加えよく混和し、再び3,000rpmで10分間遠心分離した。そして上清を除き約1mlの生理食塩水/EDTAによく混和し、20mlのザルコシル溶液を加えてDNAを溶出させた。その後の操作は肝臓組織からのDNAの精製と同様に行った。
約10mlの全血を3,000rpmで10分間遠心分離し、パスツールピペットを用いて白血球層を分取した。40mlの0.2%NaCl溶液を加えてよく混和して血球を溶血させ、3,000rpmで10分間遠心分離し上清を除いた。その後0.5mlの0.16M NaCl/1mM EDTA溶液を加えてよく懸濁した後、20mlのザルコシル溶液を加えDNAを切断しないようにゆっくりと振とうし、DNAを溶出させた。その後の操作は肝臓組織からのDNAの精製と同様に行った。
組織約0.1gをハサミで細かく切断し、TNESU溶液 (10mM Tris-HCl pH7.5, 0.1M NaCl, 1mM EDTA, 1% SDS, 6M Urea) 5ml、Proteinase K溶液 200μlを加えた後、DNAを切断しないようにゆっくりと振とうして37℃で一晩インキュベートした。当量のフェノール・クロロフォルム・イソアミルアルコールを加え、3,000rpmで10分間遠心分離し水層を分取した。その際、タンパクなどの不純物が多く残っていると思われたものは再度フェノール・クロロフォルム・イソアミルアルコールによりタンパク等をさらに除去した。次に水層を分取し、当量のジエチルエーテルを加え、白色になった水層が透明になるまでやや強めに振とうした後3,000rpmで数秒間遠心分離し、エーテルを通風除去した。そして100%エタノールを2倍量混合しDNAを沈殿させた。そのDNAは70%エタノールで洗浄し室温で乾燥させた後、2mlのTE bufferに溶解して4℃で保存した。
DNAの定量は260nmの吸光度の測定で行った。OD260=1.00は2本鎖のDNAが50μg/mlの濃度に相当する。また同時に280nmの吸光度も測定し、OD260/OD280比が1.8±0.1であれば、蛋白質、界面活性剤、フェノールなどの不純物のない純度の高いDNAを回収できたとみなした。
開発したDNAマーカーにおいて、PCR-RFLP法を用いて遺伝子型判定を行った。
ゲノムDNAを10ng/μlに調整してPCR反応の鋳型DNAとした。プライマー配列については、表1に示した。鋳型DNA(10ng/μl)2.5μl、10×Ex Taq Buffer 1.0μl、dNTPs Mixture0.8μl、Forward primer、Reverse primer(10 pmol/μl)をそれぞれ0.25μl、TaKaRa Ex Taq (登録商標)Hot Start Version(TaKaRa,Tokyo,Japan)0.05μl、超純水5.15μl加えて全量を10μlとして反応を行った。反応はサーマルサイクラーを用い、以下の条件で行った。まず94℃ 2分間の熱変性の後、94℃ 30秒間、アニーリング温度 30秒間、72℃1分間を30もしくは35サイクル行い、最後に72℃ 7分間の伸長反応を行った。なお、増幅が困難であった配列については、TaKaRa LA Taq (登録商標)with GC Buffer(TaKaRa,Tokyo,Japan)を用いた。そのPCR mixtureの組成は、鋳型DNA(10ng/μl)1.0μl、2×GC BufferI5.0μl、dNTPs Mixture 1.6μl、Forward primer、Reverse primer(10 pmol/μl)をそれぞれ0.2μl、TaKaRa LA Taq (登録商標)with GC Buffer(TaKaRa,Tokyo,Japan)0.1μl、超純水1.9μl加えて全量を10μlとして反応を行った。本研究で用いたプライマーの設計には全て、OLIGO 4.0 primer analysis programを用いた。
反応はPCR産物5.0μl、10×制限酵素Buffer 1.5μl、BSA 0.15μl、制限酵素0.25μl、滅菌超純水8.1μlを加えて全量15.0μlで行い、各制限酵素の適正温度でウォーターバスを用い、8時間以上インキュベートした。
エチジウムブロマイドを加え作成した3.0%アガロースゲル(Bio-Rad Laboratories, Tokyo, Japan)にて、1×TBE bufferを満たした電気泳動装置を用いて100Vで30分間電気泳動した。PCR産物もしくは制限酵素処理したPCR産物15μlには40%グリセロール液5μlを加えて全量20μlずつアプライし、断片の大きさの指標としてはpBR322 DNA-MspIDigestマーカー(Bio-Rad Laboratories, Tokyo, Japan )を用いた。泳動後、紫外線照射してバンドを確認した。
結果を表2及び表3に示す。表2には、SNP(1)、(2)、(8)、(10)、及び(12)〜(15)を用いた結果を示す。また、表3には、SNP(3)〜(7)、(9)、及び(11)を用いた結果を示す。なお表中1は米国産ウシ特異的な対立遺伝子、2は日本産および米国産ウシの両方にみられる対立遺伝子、pは1の対立遺伝子頻度を示す。
個々のSNPを一種ずつ検出対象とした場合、非日本産ウシの検出率は19.3〜43.8%であり、8種のSNP全てを検出対象とすると96.3%であった。個々のSNPを一種ずつ検出対象とした場合、誤判別率は0.00〜0.45%であり、8種のSNP全てを検出対象とすると1.12%であった。
個々のSNPを一種ずつ検出対象とした場合、非日本産ウシの検出率は18.5〜36.59%であり、7種のSNP全てを検出対象とすると92.63%であった。個々のSNPを一種ずつ検出対象とした場合、誤判別率はいずれも0.00%であった。
SNP(1)、(2)、(8)、(10)、及び(12)〜(15)からなる群より選択される少なくとも1種、及びSNP(16)〜(19)からなる群より選択される少なくとも1種を検出対象とし、本発明の鑑定方法を実施した。日本産ウシ由来の試料、及び米国産ウシ由来の試料に対してそれぞれ鑑定を行った。日本産ウシ由来の試料としては黒毛和種由来の試料及びホルスタイン種由来の試料を用いた。この鑑定方法について検出率と誤判別率を算出した結果を表5に記載した。方法は実施例1に準じて行った。
SNP(1)、(2)、(8)、(10)、及び(12)〜(15)、並びにSNP(16)〜(19)を全て検出対象とした場合、非日本産ウシの検出率は98.8%、誤判別率1.55%であった。
Claims (5)
- 日本産のウシ由来のDNA及び/又は米国産のウシ由来のDNAを含む試料について、米国産のウシ由来の試料であることを鑑定する方法であって、次の(1)〜(15)からなる群より選択される少なくとも1種の一塩基多型の有無を検出し、いずれか少なくとも1つが検出された試料を米国産のウシ由来の試料であると鑑定することを特徴とする方法:
(1)第3番目の染色体に含まれる配列番号1に示した塩基配列の第439番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(2)第7番目の染色体に含まれる配列番号2に示した塩基配列の第564番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(3)第13番目の染色体に含まれる配列番号3に示した塩基配列の第255番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;
(4)第22番目の染色体に含まれる配列番号4に示した塩基配列の第23番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(5)第3番目の染色体に含まれる配列番号5に示した塩基配列の第97番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(6)第2番目の染色体に含まれる配列番号6に示した塩基配列の第169番目のシトシンがアデニンに置換された一塩基多型;
(7)第24番目の染色体に含まれる配列番号7に示した塩基配列の第177番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(8)第5番目の染色体に含まれる配列番号8に示した塩基配列の第326番目のチミンがシトシンに置換された一塩基多型;
(9)第26番目の染色体に含まれる配列番号9に示した塩基配列の第280番目のシトシンがグアニンに置換された一塩基多型;
(10)第20番目の染色体に含まれる配列番号10に示した塩基配列の第228番目のアデニンがシトシンに置換された一塩基多型;
(11)第24番目の染色体に含まれる配列番号11に示した塩基配列の第378番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(12)配列番号12に示した塩基配列の第120番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;
(13)第6番目の染色体に含まれる配列番号13に示した塩基配列の第206番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(14)第8番目の染色体に含まれる配列番号14に示した塩基配列の第289番目のシトシンがアデニンに置換された一塩基多型;及び
(15)第17番目の染色体に含まれる配列番号15に示した塩基配列の第248番目のグアニンがアデニンに置換された一塩基多型。 - さらに次の(16)〜(19)からなる群より選択される少なくとも1種の一塩基多型の有無を検出することを含む請求項1に記載の鑑定方法:
(16)配列番号16に示すmelanocortin-1 receptor(MC1R)の塩基配列の109番目のグアニンが欠失した一塩基多型;
(17)第16番目の染色体に含まれる配列番号17に示した塩基配列の第186番目のグアニンがチミンに置換された一塩基多型;
(18)配列番号18に示した塩基配列の96番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;及び
(19)第7番目の染色体に含まれる配列番号19に示した塩基配列の546番目のシトシンがグアニンに置換された一塩基多型。 - 前記一塩基多型として前記(1)〜(15)からなる群より選択される少なくとも4種の一塩基多型を含む、請求項1又は2に記載の鑑定方法。
- 日本産のウシ由来のDNA及び/又は米国産のウシ由来のDNAを含む試料について、米国産のウシ由来の試料であることを鑑定するキットであって、次の(1)〜(15)からなる群より選択される少なくとも1種の一塩基多型の増幅に使用されるプライマーを含むキット:
(1)第3番目の染色体に含まれる配列番号1に示した塩基配列の第439番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(2)第7番目の染色体に含まれる配列番号2に示した塩基配列の第564番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(3)第13番目の染色体に含まれる配列番号3に示した塩基配列の第255番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;
(4)第22番目の染色体に含まれる配列番号4に示した塩基配列の第23番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(5)第3番目の染色体に含まれる配列番号5に示した塩基配列の第97番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(6)第2番目の染色体に含まれる配列番号6に示した塩基配列の第169番目のシトシンがアデニンに置換された一塩基多型;
(7)第24番目の染色体に含まれる配列番号7に示した塩基配列の第177番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(8)第5番目の染色体に含まれる配列番号8に示した塩基配列の第326番目のチミンがシトシンに置換された一塩基多型;
(9)第26番目の染色体に含まれる配列番号9に示した塩基配列の第280番目のシトシンがグアニンに置換された一塩基多型;
(10)第20番目の染色体に含まれる配列番号10に示した塩基配列の第228番目のアデニンがシトシンに置換された一塩基多型;
(11)第24番目の染色体に含まれる配列番号11に示した塩基配列の第378番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(12)配列番号12に示した塩基配列の第120番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;
(13)第6番目の染色体に含まれる配列番号13に示した塩基配列の第206番目のシトシンがチミンに置換された一塩基多型;
(14)第8番目の染色体に含まれる配列番号14に示した塩基配列の第289番目のシトシンがアデニンに置換された一塩基多型;及び
(15)第17番目の染色体に含まれる配列番号15に示した塩基配列の第248番目のグアニンがアデニンに置換された一塩基多型。 - さらに次の(16)〜(19)からなる群より選択される少なくとも1種の一塩基多型の増幅に使用されるプライマーを含むことを特徴とする請求項4に記載の鑑定キット:
(16)配列番号16に示すmelanocortin-1 receptor(MC1R)の塩基配列の109番目のグアニンが欠失した一塩基多型;
(17)第16番目の染色体に含まれる配列番号17に示した塩基配列の第186番目のグアニンがチミンに置換された一塩基多型;
(18)配列番号18に示した塩基配列の96番目のアデニンがグアニンに置換された一塩基多型;及び
(19)第7番目の染色体に含まれる配列番号19に示した塩基配列の546番目のシトシンがグアニンに置換された一塩基多型。
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