JP5796477B2 - 圧延ロール - Google Patents

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Description

本発明は、鋼材等からなる内層リングの外周に超硬合金等の硬質材料よりなる外層リングがテーパ嵌合して取り付けられた圧延ロールに関するものである。
特許文献1には、例えば圧延機のテーパシャフトにテーパスリーブを介して取り付けられる圧延ロールとして、鋼材等からなる台金(内層リング)の外周に、外周面に圧延部が形成された超硬合金よりなる圧延リング(外層リング)をテーパ嵌合させることによって締め代を設けるとともに、これら台金と圧延リングの内外周面を接着剤によって接着したものが提案されている。このような圧延ロールでは、全体が超硬合金により一体形成された圧延ロールと比べ、軽量化を図ることができるとともに、レアメタルであるタングステンを主成分の一つとする超硬合金の使用量が少なくて済む。
特開2008−284597号公報
ところで、上記特許文献1に記載の圧延ロールでは、上述のように台金と圧延リングとを接着することにより、その接着力によって締め代による圧着力をカバーするようにしており、これによって圧延リングと台金のテーパ嵌合する内外周面のテーパ角を小さく抑えて、必要以上に大きな締め代を設けることなく、圧延リングに大きな引張り応力が作用するのを防いでいる。
しかしながら、このような圧延ロールにおいて、圧延加工時にこれら接着力と圧着力を越える過大な負荷が作用して圧延リングが台金の周方向に万一スリップを生じてしまうと、圧延リングと台金が上述のような小さなテーパ角でテーパ嵌合している場合には、圧延ロールの軸線方向のうちテーパ嵌合した上記内外周面が縮径する方向にも圧延リングが台金に対して僅かにずれを生じてしまい、そのままの状態で圧延加工が続行されてしまうおそれがある。
そして、このように圧延リングが軸線方向にずれた状態で圧延が行われると、例えば当該圧延ロールが一対の圧延リングの圧延部によって条鋼を圧延加工するものである場合には、これらの圧延リングの圧延部であるカリバー部の軸線方向の位置(ピッチ)もずれてしまうため、製品としての条鋼の寸法精度や品位が損なわれるなど、製品の品質に悪影響が及ぶことが避けられない。
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のように台金(内層リング)の外周に圧延リング(外層リング)がテーパ嵌合によって取り付けられた圧延ロールにおいて、外層リングが内層リングに対して周方向に万一スリップを生じても、軸線方向にはずれを生じることのない圧延ロールを提供することを目的としている。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線を中心とする円環状をなす内層リングの外周に、この内層リングよりも硬度の高い材質よりなり外周面に圧延部を有する外層リングが、これら内外層リングの互いに対向する内外周面が上記軸線方向一端側から他端側に向かうに従い漸次縮径するテーパ面とされて密着することにより、テーパ嵌合して取り付けられており、上記外層リングの内周面の上記軸線方向他端側には該軸線方向他端側に向かうに従い内径が漸次拡径する面取り部が形成されるとともに、上記内層リングの上記軸線方向他端側には該軸線方向他端側においてこの内層リングの外周面を拡径するように変形させる拡径手段が備えられていることを特徴とする。
従って、このように構成された圧延ロールでは、こうして拡径手段によって内層リングの軸線方向他端側の外周面が拡径させられることにより、この外周面を、同じく軸線方向他端側において外層リングの内周面に形成された面取り部に当接または密着させることができる。そして、この面取り部は、外層リングのテーパ面とされた内周面とは逆に、この軸線方向他端側に向かうに従い漸次拡径するように形成されているので、この面取り部に拡径した内層リング外周面の軸線方向他端側が当接または密着することにより、外層リングの軸線方向への移動を拘束して、周方向に万一スリップが生じても外層リングが内層リングに対して軸線方向他端側にずれるのを防ぐことができる。
ここで、このような拡径手段としては、第1に、上記内層リングの上記軸線方向他端側を向く端面の外周部に形成されたテーパネジ孔にねじ込まれるテーパネジを用いることができる。また、第2に、上記内層リングの上記軸線方向他端側を向く端面の外周部に形成されたテーパ孔に打ち込まれるテーパピンを用いることもできる。このような拡径手段によれば、上記テーパネジをテーパネジ孔にねじ込んだり、テーパピンをテーパ孔に打ち込むことにより、これらテーパネジ孔やテーパ孔よりも外周側の内層リング他端側外周部を外周側に変形させて、軸線方向他端側における内層リングの外周面を拡径させることが可能となる。
以上説明したように、本発明によれば、圧延加工時に過大な負荷が作用して、テーパ嵌合した外層リングが内層リングに対して周方向に万一スリップを生じても、軸線方向にずれが生じるのを防ぐことができ、圧延加工される製品の寸法精度や品位等の品質向上を図ることができる。
本発明の第1の実施形態を示す断面図である(ただし、下側の拡径手段は図示が略されている。)。 図1および図4におけるA部分の拡大断面図である。 図1に示す実施形態を軸線方向他端側から見た側面図である。 本発明の第2の実施形態を示す断面図である(ただし、下側の拡径手段は図示が略されている。)。 図4に示す実施形態を軸線方向他端側から見た側面図である。
図1ないし図3は、本発明の第1の実施形態を示すものである。本実施形態において、内層リング1は、十分な剛性や強度を備えつつも弾性変形可能とされた鋼材等の金属材料により形成されて軸線Oを中心とした円環状をなし、その内周面1Aは該軸線Oを中心とした一定内径の円筒面状とされるとともに、外周面1Bは軸線O方向一端側(図1において左側)から他端側(図1において右側)に向かうに従い外径が漸次縮径する軸線Oを中心としたテーパ面(円錐面)とされている。
ここで、このようにテーパ面とされた内層リング1の外周面1Bが軸線Oに沿った断面において該軸線Oに対してなすテーパ角(片角)は0°10’〜2°の範囲とされるのが望ましく、本実施形態では17’11”、軸線O方向の長さに対する外周面1Bの直径の縮径率として1/100程度とされていて、内層リング1の外周面1Bは軸線O方向全体に亙ってこのようなテーパ面とされている。なお、内層リング1の軸線O方向を向く両端面1C、1Dは、一端側を向く端面1Cおよび他端側を向く端面1Dともに軸線Oに垂直な円環面とされている。
一方、外層リング2は、内層リング1よりも高硬度である超硬合金等の焼結合金により形成されて、やはり軸線Oを中心とした円環状をなしており、その外周面2Aには、図示されない圧延部が形成される。この圧延部は、例えば本実施形態の圧延ロールが一対の該圧延ロールの圧延部によって条鋼を圧延加工するものである場合には、上記軸線O回りに周回する凹溝を形成したカリバー部とされる。
また、外層リング2の内周面2Bは、その軸線O方向一端側から他端側にかけての大部分が、内層リング1の外周面1Bと同様にこの軸線O方向一端側から他端側に向かうに従い内径が漸次縮径する軸線Oを中心としたテーパ面(円錐面)とされ、そのテーパ角も内層リング1の外周面1Bがなすテーパ面のテーパ角と等しくされている。ただし、この内周面2Bのうち、軸線O方向他端側の一定幅の範囲には、該内周面2Bがなすテーパ面とは逆に、軸線O方向他端側に向かうに従い内径が漸次拡径するテーパ面状の面取り部3が形成されている。
さらに、この外層リング2の軸線O方向の幅は内層リング1と等しくされるとともに、外層リング2の軸線O方向を向く両端面2C、2Dは軸線Oに垂直な円環面とされており、テーパ面とされた上記内外周面2B、1Bを密着させた上で、さらに所定の締め代が与えられるように内層リング1を外層リング2に対して相対的に他端側に押し込んで内層リング1の外周に外層リング2をテーパ嵌合により取り付けた状態で、内層リング1と外層リング2の軸線O方向一端側を向く端面1C、2C同士と他端側を向く端面1D、2D同士は、図1に示すようにそれぞれ互いに同一の軸線Oに垂直な平面上に位置するようにされている。なお、こうして内外層リング1、2をテーパ嵌合させる際に、特許文献1と同様の望ましくはメタクリレート系樹脂よりなる接着剤を内外周面2B、1Bに塗布して接着するようにしてもよい。
こうしてテーパ嵌合させられた内外層リング1、2の内外周面2B、1Bの間には、このうち外層リング2の内周面2Bに面取り部3が形成された軸線O方向他端側の上記一定幅の範囲において、図2に示すように軸線Oに対する径方向の間隔が他端側に向かうに従い漸次大きくなる隙間が全周に亙って形成されることになる。そして、内層リング1の軸線O方向他端側には、該軸線O方向他端側においてこの内層リング1の外周面1Bを拡径するように変形させる拡径手段4が備えられており、この拡径手段4によって外周面1Bを拡径させることにより、該拡径手段4が設けられた位置では上記隙間を埋めて外周面1Bが面取り部3に密着または当接するようにされている。
ここで、本実施形態における拡径手段4は、内層リング1の上記軸線O方向他端側を向く端面1Dの外周部に形成されたテーパネジ孔4Aにねじ込まれるテーパネジ4Bとされており、これらテーパネジ孔4Aおよびテーパネジ4Bは軸線O方向他端側に向かうに従いその径が大きくなるようにされている。なお、本実施形態では同形同大のこのような拡径手段4が複数(4つ)、それぞれの上記テーパネジ孔4Aの中心線が軸線Oを中心とした単一の円筒面上に位置するようにして、周方向に等間隔に設けられており、この円筒面は、例えば内層リング1の径方向の厚さの1/2よりも外周側に配置され、テーパネジ孔4Aと内層リング1の外周面1Bとの間には1mm程度の肉厚が残されるようにされている。
従って、これらの拡径手段4において、テーパネジ孔4Aにテーパネジ4Bをねじ込むと、このテーパネジ孔4Aの外周側の内層リング1外周部が弾性変形して外周面1Bが他端側に向かうに従い外径が漸次大きくなるように拡径し、上述のように内外周面2B、1B間に形成された上記隙間を埋めて、内層リング1の外周面1Bが外層リング2の内周面2Bの上記面取り部3に密着または当接するようにされる。
そして、こうして密着した面取り部3と内層リング1の他端側の外周面1Bとは、内外層リング1、2の一端側の内外周面2B、1Bとは逆に軸線O方向他端側に向かうに従い漸次拡径するものであるので、これにより内層リング1に対する外層リング2の軸線O方向の移動を拘束することができ、圧延加工時に外層リング1の圧延部に過大な負荷が作用して、外層リング1が内層リング1に対して周方向にスリップを生じても軸線O方向にはずれを生じることはなくなる。このため、このような軸線O方向のずれによって製品品質に悪影響に及ぶことはなく、高精度で高品位の圧延加工を行うことが可能となる。
ここで、外層リング2の内周面2Bの軸線O方向他端側に形成される面取り部3は、図2に示すその軸線Oに対するテーパ角θが大きすぎると、内層リング1の外周面1Bの他端側も拡径手段4によってより大きく弾性変形させなければ面取り部3に十分に密着または当接させることができなくなって、場合によっては内層リング1の破損を招くおそれがある。ただし、このテーパ角θが小さすぎて0°に近いと、外層リング1の軸線O方向へのずれを確実に防止することができなくなるおそれが生じるので、他端側に向けて漸次拡径するこの面取り部3の軸線Oに対するテーパ角(片角)θは1°〜5°の範囲とされるのが望ましく、本実施形態では2°とされている。
また、同じく図2に示すこの面取り部3の軸線O方向の幅Wが大きすぎると、軸線O方向他端側に向かうに従い漸次縮径させられてテーパ嵌合させられる内外層リング1、2の内外周面2B、1Bの幅が逆に小さくなって、内層リング1に対する外層リング1の取付強度を十分確保することができなくなるおそれが生じる。その一方で、この幅Wが小さすぎると、やはり外層リング1の軸線O方向へのずれを確実に防止することができなくなるおそれが生じるので、上記幅Wは1mm〜10mmの範囲とされるのが望ましく、本実施形態では5mmとされている。
次に、図4および図5は、本発明の第2の実施形態を示すものであり、図1ないし図3に示した第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を配して説明を省略する。また、面取り部3の断面を示す図4のA部の拡大断面図も図2と共通であるので、図示を省略する。すなわち、第1の実施形態における拡径手段4が内層リング1の軸線O方向他端側を向く端面1D外周部に形成されたテーパネジ孔4Aにねじ込まれるテーパネジ4Bであったのに対し、この第2の実施形態における拡径手段4は、同じく内層リング1の軸線O方向他端側を向く端面1Dの外周部に形成されたテーパ孔4Cに打ち込まれるテーパピン4Dとされている。
第2の実施形態の拡径手段4におけるこれらテーパ孔4Cおよびテーパピン4Dも、軸線O方向他端側に向かうに従いその径が大きくなるようにされており、同形同大のこのような拡径手段4がやはり複数(4つ)、それぞれの上記テーパ孔4Cの中心線が軸線Oを中心とした単一の円筒面上に位置するようにして、周方向に等間隔に設けられていて、この円筒面は、内層リング1の径方向の厚さの1/2よりも外周側に配置されている。なお、テーパ孔4Cと内層リング1の外周面1Bとの間には、本実施形態では0.9mm程度の肉厚が残されるようにされている。
このような第2の実施形態においても、内層リング1の外周に外層リング2をテーパ嵌合させて取り付けた上で、拡径手段4のテーパ孔4Cにテーパピン4Dを打ち込むと、テーパ孔4C外周側の内層リング1外周部が弾性変形して外周面1Bが他端側に向かうに従い外径が漸次大きくなるように拡径し、内外周面2B、1B間に形成された隙間を埋めて、内層リング1の外周面1Bが外層リング2の上記面取り部3に密着または当接するので、万一スリップが生じても内層リング1に対する外層リング2の軸線O方向へのずれを防止することができる。
なお、これら第1、第2の実施形態では、周方向に等間隔に4つの拡径手段4を設けているが、圧延ロールの大きさ等によって拡径手段4の数を増減してよいのは勿論である。また、拡径手段として、内層リング1の軸線O方向他端側を向く端面1Dの外周側に、断面V字状をなす凹溝を軸線O回りに形成しておいて、この凹溝の周方向の適宜の位置にクサビを打ち込むことにより外周面1Bの他端側部分を拡径させるようにしてもよい。
1 内層リング
1B 内層リング1の外周面
2 外層リング
2B 外層リング2の内周面
3 面取り部
4 拡径手段
4A テーパネジ孔
4B テーパネジ
4C テーパ孔
4D テーパピン
O 内外層リング1、2の軸線

Claims (3)

  1. 軸線を中心とする円環状をなす内層リングの外周に、この内層リングよりも硬度の高い材質よりなり外周面に圧延部を有する外層リングが、これら内外層リングの互いに対向する内外周面が上記軸線方向一端側から他端側に向かうに従い漸次縮径するテーパ面とされて密着することにより、テーパ嵌合して取り付けられており、上記外層リングの内周面の上記軸線方向他端側には該軸線方向他端側に向かうに従い内径が漸次拡径する面取り部が形成されるとともに、上記内層リングの上記軸線方向他端側には該軸線方向他端側においてこの内層リングの外周面を拡径するように変形させる拡径手段が備えられていることを特徴とする圧延ロール。
  2. 上記拡径手段は、上記内層リングの上記軸線方向他端側を向く端面の外周部に形成されたテーパネジ孔にねじ込まれるテーパネジであることを特徴とする請求項1に記載の圧延ロール。
  3. 上記拡径手段は、上記内層リングの上記軸線方向他端側を向く端面の外周部に形成されたテーパ孔に打ち込まれるテーパピンであることを特徴とする請求項1に記載の圧延ロール。
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