以下では、図1〜7に基づき、本発明による織機用の経糸開口機構の一実施例について、少なくとも経糸開口内への緯糸の挿入が使用者による手作業で行われる手織り機に適用する例を説明する。
図1〜4は、本発明の一実施例の装置を示すものであって、図1は、本発明の経糸開口機構が適用される手織り機の概略を示している。また、図2は、図1に示す手織り機におけるA−A断面図であって経糸開口機構の一部を示す正面図であり、図3は、図1に示す手織り機における経糸開口機構部分の一部を示す平面図である。また、図4は、図1に示す手織り機におけるB−B断面図であって経糸開口機構の一部を示している。なお、図2、4の各断面図においては、後述の筬打ち装置については省略してある。
図1に示すように、手織り機HLは、フレーム1を基体とし、そのフレーム1内に、本発明による経糸開口機構2と、経糸Tをシート状に送り出すための送出ロール3と、図示しないシャットルによって経糸Tの開口内へ緯入れされた緯糸Yを織前Fへ筬打ちするための筬打ち装置4と、緯糸Yが経糸Tへ織り込まれることによって形成される織布Wを巻き取るための巻取ロール5とを備えている。
フレーム1は、幅方向に離間して立設された左右一対の側壁11、11を有する。なお、ここで言う「幅方向」とは、経糸Tの進行方向と直交する方向であって送出ロール3及び巻取ロール5の軸線方向と一致する方向である(以下、同じ)。この左右の側壁11、11は、幅方向と直交する方向(以下、「前後方向」と言う。)に延在する板状体であって、幅方向に離間させ、互いに対向するように配置される。そして、フレーム1は、左右の側壁11、11を送出側及び巻取側の上部のそれぞれおいてガイドロール12、13で連結すると共に、下部において図示しない梁等で連結することにより構成されている。
送出ロール3は、その軸部31の両端部のそれぞれにおいて側壁11に支持され、左右の側壁11、11間で回転可能に架設されている。この送出ロール3には、多数本の経糸Tが幅方向に整列した状態で巻き付けられており、送出ロール3からシート状に引き出された経糸Tは、送出ロール3の上方に位置するガイドロール12に巻き掛けられて転向された後、経糸開口機構2を経由して織前Fへ導かれる。
経糸Tに緯糸Yが織り込まれて形成された織布Wは、ガイドロール13によって案内されて巻取ロール5へ導かれる。巻取ロール5は、送出ロール3と同様に、その軸部51の両端部のそれぞれにおいて側壁11に支持され、左右の側壁11、11間で回転可能に架設されている。
送出ロール3及び巻取ロール5は、使用者による手動操作で回転されるものであり、そのため、図3に送出側を例示するように、軸部31が側壁11を貫通しており、側壁11から突出する軸部31の端部に対し、ハンドル32が相対回転不能に取り付けられている。なお、図3では、左右の側壁11、11の一方の側のみについて示しているが、ハンドル32は、送出ロール3の両側に設けられていても良いし、一方の側のみに設けられるものであっても良い。また、巻取側については図示は省略するが、送出側と同様の構成を有しているものとする。そして、送出ロール3及び巻取ロール5は、フレーム1(側壁11)の外側に位置するハンドル32を使用者が回転させることで回転操作される。
筬打ち装置4は、経糸Tの開口内に挿入された緯糸Yを織前Fへ筬打ちするためのものであって、幅方向に延在する筬支持部42に支持された筬41を有する(図1)。筬支持部42は、その下面の両端部及び中間部の適宜な位置に脚部43が固定されており、その脚部43を介して左右の側壁11、11間に回転可能に架設された揺動軸44に支持されている。従って、筬4は、揺動軸44の軸心を中心として前後方向に揺動可能となっている。この筬4の揺動も使用者による手動操作で行われるものであり、筬4を送出側へ後退させた状態において筬4と織前Fとの間の経糸Tの開口内へ緯糸Yが挿入された後、筬4を前方(巻取側)へ揺動させることにより、緯糸Yが織前Fに対し筬打ちされる。
そして、本発明による経糸開口機構2は、主として作動部材としてのアーム21、昇降部材としてのフォーク22、選択部材としてのプッシャ23及び駆動装置25によって構成されている。
作動部材としてのアーム21は、本実施例では、側方から見て(幅方向に見て)略扇形に形成された薄板状の部材である(図1)。このアーム21は、案内部21aと案内部21aの一端に連続するように形成された支持部21bとを有しており、案内部21aにおける支持部21bとは反対側の端面が円弧面21a1として形成されている。さらに、案内部21aは、後述のフォーク22を係止するための係合溝21a2であって円弧面21a1に開口する係合溝21a2を有している。また、支持部21bは、円筒状に形成されており、幅方向に貫通する貫通孔21b1であってその中心が支持部21bの軸心に一致するように形成された貫通孔21b1を有している。この支持部21bは、その幅方向に関する寸法が案内部21aよりも大きく形成されると共に、幅方向に関する中心を案内部21aの中心と一致させた状態で形成されている。従って、支持部21bは、幅方向に関し案内部21aの両側に同じ長さだけ突出している。また、案内部21aの円弧面21a1は、その円弧中心が支持部21bの軸心(貫通孔21b1)の中心に一致するように形成されている。
アーム21は、フレーム1における左右の側壁11、11間に架設された支持軸14が支持部21bにおける貫通孔21b1に嵌挿されることによってフレーム1に支持されており、本実施例では、案内部21aの円弧面21a1を織前Fに対向させた状態で、前後方向に延在するように配置されている。そして、アーム21は、支持軸14に対し相対回転不能に取り付けられており、支持軸14の回転に伴い、支持軸14の軸心(アーム21における支持部21bの軸心)を回動中心として回動するものとなっている。
経糸開口機構2においては、上記のようなアーム21が複数枚設けられ、その複数枚のアーム21が幅方向に列設されている。このアーム21の枚数は、フレーム1の幅方向の寸法とアーム21の厚さ寸法(幅方向の寸法)とによって定められる。但し、個人使用が想定される手織り機の場合、幅方向の寸法を大きくし過ぎると使い勝手が悪くなるため、フレーム1の幅方向の寸法は使い勝手に応じた適当なものとされ、それに応じてアーム21の枚数も定められる。なお、本発明による経糸開口機構2では、送出ロール3から送り出された各経糸Tが隣接するアーム21、21間に導通されるものであるため、そのアーム21の枚数は、製織に使用可能な経糸Tの本数に対応している。
そして、各アーム21は、支持部21の幅方向における両側の端面(両端に位置するアーム21については片側の端面)を、隣りに位置するアーム21の上記端面に当接させた状態で、支持軸14上に配置されている。従って、各アーム21の案内部21aは、隣りに位置するアーム21の案内部21aに対し幅方向に間隔をおいた状態で、幅方向に列設されるかたちとなる。因みに、隣接する2枚のアーム21、21における案内部21a、21aの間隔は、各アーム21における案内部21aと支持部21bとの幅方向に関する寸法差で決まるものであり、その寸法差は、使用が想定される経糸Tの太さを考慮して決定される。例えば、使用が想定される経糸Tの太さを考慮して隣り合う2つの案内部21a、21aの間隔が5mm程度必要な場合には、上記寸法差が5mm前後となるように、各アーム21において案内部21aに対し支持部21bが形成される。
各アーム21を相対回転不能に支持する支持軸14は、図2、3に例示するように、フレーム1における左右の側壁11、11の少なくとも一方の側において側壁11を貫通するように設けられており、この支持軸14の側壁11から突出する部分には、アーム21を操作するための操作レバー14aが相対回転不能に取り付けられている。そして、使用者がこの操作レバー14aを操作することにより、支持軸14を介して各アーム21が回動駆動される。なお、操作レバー14aは、左右の側壁11、11の両側に設けられるものであってもよいし、片側にのみ設けられるものであってもよい。
昇降部材としてのフォーク22は、隣接する2枚のアーム21、21の案内部21a、21a間に挿入可能な厚さ寸法に形成された薄板状の部材である。そして、フォーク22は、幅方向に関し、列設された複数枚のアーム21の隣接する2枚のアーム21、21間のそれぞれに位置するように複数枚設けられる。また、本実施例では、各フォーク22は、前後方向に関し、アーム21の織前F側に配置されている。
各フォーク22は、手織り機HLに備えられた状態において、上下方向に関し経糸Tの経路付近からフレーム1の下部付近まで延びるような長手方向の寸法を有している。また、各フォーク22は、係合部22aが上端部に取り付けられると共に、その延在方向に関し上端部から中間部付近までの間の反織前F側(アーム21側)の端面に形成された張出し部22bを有している。なお、図示の例では、この張出し部22bは、側方から見て略三角形状に形成されており、前後方向に関し反織前F側の端面からアーム21側へ張り出すようにしてフォーク22に一体形成されている。さらに、本実施例において、フォーク22は、上下方向に関し中間部付近から下側の部分に、幅方向に貫通すると共にフォーク22の延在方向に沿って延びる長孔状の案内孔22cを有している。
係合部22aは、本実施例では、軸線を幅方向に向けた係合ピンで形成されており、その軸線方向の寸法は、フォーク22の厚さ寸法よりも大きくなっている。より詳しくは、係合部としての係合ピン22aは、その軸線方向(幅方向)の寸法が、フォーク22の厚さ寸法よりも大きく、且つ、フォーク22の厚さ寸法とアーム21の厚さ寸法とを合計したものよりも小さいものとして形成されている。そして、係合ピン22は、その軸線方向における中心を幅方向に関するフォーク22の中心に一致させた状態で、フォーク22の上端縁に固定されている。従って、係合ピン22aは、幅方向に関しフォーク22の両側に等しく突出した状態でフォーク22と一体的に設けられている。
フレーム1の左右の側壁11、11間には、前後方向におけるアーム21と織前Fとの間であって上下方向における支持軸14よりも下方の位置に、案内部材としての案内軸15が架設されている。そして、各フォーク22は、手織り機HL内において、この案内軸15が案内孔22cに挿通された状態で設けられており、案内孔22cの内周面と案内軸15との当接によって案内軸15の位置で前後方向の位置が規制された状態となっている。また、各フォーク22は、張出し部22bが隣り合う(隣接する)2枚のアーム21、21間に挿入されて幅方向の位置が規制された状態で設けられており、さらに、アーム21が初期位置にある状態において、係合ピン22aがアーム21の係合溝21a2に係合することにより、アーム21によって支持されている。但し、ここで言う初期位置とは、全てのフォーク22が係合ピン22aによってアーム21の係合溝21a2に係止されると共に、アーム21が経糸Tを閉口状態とする回動位置にある状態であり、本発明では、このアーム21が初期位置にある経糸開口機構2の状態を「初期状態」という。
また、本実施例では、この初期状態において、案内軸15は、フォーク22の案内孔22cに対し案内孔22cの上端よりも下方の位置で案内孔22cに挿通されている。すなわち、案内孔22cは、初期状態において案内軸15が挿通される位置(挿通位置)よりもフォーク22の上端部側へ延びるように形成されている。なお、各フォーク22における係合ピン22aの軸線方向の寸法は前記のように設定されているため、幅方向に関するフォーク22からの突出量はアーム21の厚さ寸法の1/2よりも小さくなっている。従って、隣り合う2つのフォーク22、22の各係合ピン22a、22aが共通のアーム21の係合溝21a2に係合しても、両係合ピン22a、22aが干渉することは無い。
アーム21の下方には、プッシャベース24が設けられている。このプッシャベース24は、板材の両端部を90°屈曲させた断面略コ字状の部材であって、屈曲部よりも端部側の両側の取付部24b、24bによってフレーム1における左右の側壁11、11のそれぞれに取り付けられており、その上面である載置面24aが幅方向に関し左右の側壁11、11間に亘って存在するように設けられている。また、プッシャベース24は、図示のように、前後方向に関し載置面24aにおける織前F側が反織前F側よりも高い位置となるように傾斜させてフレーム1に取り付けられており、その取付状態において載置面24aがアーム21の織前F側の端部付近から送出ロール3付近まで延在するような長さ寸法を有している。
また、プッシャベース24の載置面24a上には、選択部材としてのプッシャ23が載置されている。このプッシャ23は、フォーク22と略同じ厚さ寸法を有する板状の部材であり、各フォーク22に1対1で対応するようにして複数枚設けられている。
各プッシャ23は、プッシャベース24上で前後方向に延在すると共に、側方から見て高さ寸法(延在方向と直交する方向の寸法)が大きい基部23a及び基部23aの織前F側(フォーク22側)端部に連続して形成された作動部23bであって高さ寸法が基部23aよりも小さく形成された作動部23bを有する形状を為している。そして、各プッシャ23は、幅方向に関し、隣接する2枚のアーム21、21間に位置するように配置され、前後方向に関し、対応するフォーク22と作動部23bにおいて対向するように設けられている。なお、図示の例では、各アーム21における案内部21aは、後述するアーム21の回動範囲内の各位置において、上下方向に関しプッシャ23の存在位置まで延在するように形成されている。従って、各プッシャ23は、その基部23aにおいて、両側に位置するアーム21、21の案内部21a、21aにより、プッシャベース24の載置部24a上での幅方向の位置が規制されて前後方向(プッシャ23の延在方向)の移動が案内されるように設けられている。
また、プッシャベース24上には、各プッシャ23と1対1に対応させるかたちで駆動装置としてのソレノイド25が複数設けられている。この各ソレノイド25は、本実施例では、非励磁状態ではプランジャ(可動鉄心)25aが本体部25b内で進退自在に収容されると共に、励磁されることによってプランジャ25aが突出方向へ動作するプッシュ式のものとする。そして、各ソレノイド25は、幅方向に関し、プランジャ25aの先端面がプッシャ23における反織前F側の端面(後端面)に対向する位置で、プッシャベース24上に固定配置されている。
なお、前記のように、プッシャベース24の載置面24aは、織前F側が高くなるように傾斜している。そのため、各プッシャ23は、載置面24a上で後方(反織前F側)へ滑り落ちるようになっており、ソレノイド25のプランジャ25aと当接して、その後方側への移動が規制された状態となっている。従って、ソレノイド25が励磁されてプランジャ25aが突出方向へ動作することにより、プランジャ25aがプッシャ23の後端面を押してプッシャ23がフォーク22側へ変位する。また、ソレノイド25を非励磁状態とすることにより、プッシャ23がプッシャベース24上をすべり落ちてプッシャ23がプランジャ25aを押し戻すかたちとなり、ソレノイド25におけるプランジャ25aの最も後退した位置(最後退位置)で、プッシャ23の反フォーク22側の変位が停止する。
また、各ソレノイド25のプッシャベース24上での前後方向に関する位置は、プランジャ25aが最後退位置にある状態(ソレノイド25の非励磁状態)において、プッシャ23の作動部23bの先端が、初期状態におけるフォーク22の反織前F側の端面に対し、僅かに離間した状態となるように設定されている。従って、各プッシャ23は、後端面をソレノイド25のプランジャ25aによって支持されると共に、ソレノイド25が非励磁状態において、作動部23bの先端がフォーク22から僅かに離間する位置となるように設けられている。
また、各プッシャ23の上下方向の位置について、各プッシャ23は、作動部23bの先端が、フォーク22における案内軸15の挿通位置よりも上方でフォーク22に対向するように設けられる。すなわち、各プッシャ23における作動部23bの先端と案内軸15とはフォーク22の延在方向に関し離間した配置となっており、本実施例では、案内軸15がプッシャ23の作動部23bよりも下方に位置する構成となっている。そのため、プッシャベース24の織前F側(フォーク22側)の高さ位置は、上記のようなプッシャ23の配置が実現できるように設定されている。
さらに、図示の例では、プッシャ23として2種類の形状のものが用いられている。すなわち、本実施例において、隣り合う2つのプッシャ23、23は、図5(a)の側面図及び図5(b)の平面図で示すように、図5(a)の上側に示す第1のプッシャ23−1と、下側に示す第2のプッシャ23−2であって第1のプッシャ23−1に対し基部23aから後方(反織前F側)へ延在する延在部23cを有する第2のプッシャ23−2とで構成されている。また、第2のプッシャ23−2における延在部23cは、第2のプッシャ23−2とソレノイド25との位置の重複を許容するための凹部23c1を有している。これは、ソレノイド25における本体部25bの幅方向の寸法が、隣り合う2つのプッシャ23、23の間隔よりも大きくなっていることに対応するためである。
より詳しくは、図5(b)に示すように、プッシャ23の間隔とソレノイド25の幅寸法とを比較すると、プッシャ23は幅方向に関し等ピッチで配置されており、2つの第1のプッシャ23−1、23−1及び2つの第2のプッシャ23−2、23−2の間隔pはソレノイド25の本体部25bの幅寸法wよりも小さいため、幅方向に関しプッシャ23とソレノイド25のプランジャ25aとを対向させた状態では、隣り合う第1のプッシャ23−1及び第2のプッシャ23−2のそれぞれに対応するソレノイド25、25を前後方向に関し同じ位置に配置することができないからである。そのため、隣り合うソレノイド25、25は前後方向に位置をずらして配置する必要があり、それに対応すべく、第2のプッシャ23−2は、第1のプッシャ23−1に対し延在部23cを有するものとなっている。
そして、この第2のプッシャ23−2の延在部23cには、第1のプッシャ23−1に対応するソレノイド25との位置の重複を許容する凹部23c1であって幅方向の両側及びプッシャベース24側が開放された凹部23c1が形成されている。但し、この凹部23c1は、ソレノイド25のプランジャ25aが最も退避した最後退位置において第1のプッシャ23−1に対応するソレノイド25を受け入れることが可能であると共に、ソレノイド25の駆動による第2のプッシャ25−2の前後方向の移動を許容するように形成されている。なお、図示の例では、2種類の形状のプッシャ23を用いるものとしたが、プッシャ23の配置ピッチやソレノイド25の幅寸法w等との関係で、あるプッシャ25に対応するソレノイド25が幅方向に関し2つ隣りのプッシャ23とも位置が重複するような場合には、上記した第2のプッシャ23−2の後端面よりも更に後方へ延在する延在部を有する他の形状のプッシャ23(第3のプッシャ等)が用いられる。
以上のような構成された経糸開口機構2を有する手織り機HLにおいて、送出ロール3から引き出された複数本の経糸Tのそれぞれは、ガイドロール12によって織前Fへ向かうように転向された後、幅方向に列設された複数枚のアーム21の隣り合う2枚のアーム21、21の案内部21a、21a間に挿通され、その後、筬打ち装置4における筬41を通過して織前Fに導かれる。
従って、経糸開口機構2内においては、各経糸Tは、隣接する2枚のアーム21、21の案内部21a、21aによって幅方向の位置が規制されると共に、その2つの案内部21a、21a間に位置するフォーク22の係合ピン22aの上方を通過する状態となっている。そこで、経糸開口機構2において、フォーク22が係合ピン22aによってアーム21(係合溝21a2)に係止された状態でアーム21を上方(図1における時計回り方向)へ向けて回動させることにより、フォーク22が持ち上げられ、それに伴い、各フォーク22に対応する経糸Tはフォーク22によって持ち上げられ、経糸開口の上側開口位置にもたらされた状態となる。なお、以下では、アーム21の初期位置から上側開口位置へ向けたアーム21及び操作レバー14aの回動の方向を開口方向と言い、その逆方向への回動の方向(図1における反時計回り方向)を反開口方向と言う
また、図示の構成では、初期状態において、係合溝21a2に係止されているフォーク22の係合ピン22の位置は、送出側のガイドロール12の上端と巻取側のガイドロール13の上端とを結ぶ直線上よりも上方に位置するように、アーム21において係合溝21a2が形成されている。従って、初期状態におけるフォーク22は、対応する経糸Tの張力により、係合ピン22aにおいて下方へ付勢(押圧)された状態となっている。
さらに、アーム21は、少なくとも初期位置及びフォーク22を介して経糸Tを上側開口位置へ位置させる開口位置の2位置において位置決めされる必要がある。そのため、支持軸14の端部に取り付けられた操作レバー14aは、図示しない機構により、アーム21の初期位置に対応する第1の位置と前記開口位置に対応する第2の位置とにおいて位置決め可能となっている。また、本実施例では、操作レバー14aは、初期状態からアーム21を更に反開口方向へ回動させることができるように反開口方向への回動限が設定されている。
以上のような構成からなる経糸開口機構2の作用について、図6、7を用いて以下に説明する。なお、前記のように、経糸開口2において、各フォーク22は経糸Tに対応しており、また、各フォーク22に対応してプッシャ23及びプッシャ23を駆動するソレノイド25が設けられている。従って、経糸開口機構2においては、経糸T毎に、フォーク22、プッシャ23及びソレノイド25を組み合わせたものが設けられており、以下の説明では、これらが互いに対応関係にあるものとして説明する。
先ず、初期の状態では、図6(a)に示すように、操作レバー14aは、アーム21の初期位置に対応する前記第1の位置に位置決めされた状態となっており、それにより、各アーム21は、初期位置で静止した状態となっている。なお、このとき、各フォーク22は、その全てが係合ピン22aによって両側に位置するアーム21、21の係合溝21a2、21a2に係止されており、係合ピン22aによってアーム21にぶら下がった状態であると共に、その延在方向の中間部付近において、案内孔22cの内周面におけるプッシャ23側を向く面が案内孔22cに挿通された案内軸15に当接することにより前後方向の位置(プッシャ23側への変位)が規制されている。また、このとき、各ソレノイド25は、非励磁状態であってプランジャ25aが最後退位置にある状態となっており、従って、プッシャ23は、作動部23bの先端がフォーク22の反織前F側の端面から僅かに離間した待機状態となっている。
その状態から、上開口位置にもたらす(選択される)経糸Tに対応するフォーク22以外のフォーク22のアーム21に対する係止状態を解除すべく、そのフォーク22に対応するソレノイド25を励磁し、プッシャ23をフォーク22側へ変位させる(図6(b))。なお、製織する織布Wの組織に応じた各緯入れ毎(製織の1ステップ毎)における各経糸Tの選択状態の設定、すなわち、各経糸Tを上開口位置に位置させるか又は初期状態に対応する閉口位置に位置させるかの設定は、開口パターンとして予め作成されており、ソレノイド25の制御器(図示せず)に記憶されているものとする。この開口パターンは、例えば、列数が経糸の本数に対応すると共に行数が組織の1繰り返しのステップ数に対応する行列状のマス枠に対し、各緯入れに対応する製織の1ステップ毎(行毎)に、上開口位置へもたらされる経糸Tを選択状態とするように設定されるものである。
そして、緯入れ毎において、使用者が図示しないスイッチ等を操作することにより、開口パターンにおける対応のステップの設定に基づき、非選択設定されている経糸Tに対応するソレノイド25が励磁される。それに伴い、その励磁されたソレノイド25に対応するプッシャ23がフォーク22側へ変位し、それによってプッシャ23がフォーク22に当接してフォーク22を織前F側へ押すことになる。このとき、フォーク22は中間部付近において挿通された案内軸15によって前後方向への変位を規制されており、また、プッシャ23における作動部23bの先端は案内軸15よりも上方でフォーク22に当接するため、フォーク22は、案内孔22cの内周面におけるプッシャ23が対向する面とは反対向きの面が案内軸15に当接し、図6(b)において二点鎖線で示すように、案内孔22cの内周面における案内軸15との当接位置を中心として、係合ピン22a側がアーム21から離間する方向へ回動する。その結果、非選択設定の経糸Tに対応するフォーク22の係合ピン22aがアーム21の係合溝21a2内から離脱し、そのフォーク22のアーム21に対する係止状態が解除される。
また、本実施例では、フォーク22における案内軸15が挿通される案内孔22cは、前記のように初期状態において案内軸15の挿通位置よりもフォーク22の上端側へ延びる延在部分を有するように形成されている。従って、前記のようにフォーク22のアーム21に対する係止状態が解除されると、フォーク22は、図6(b)において実線で示すように、案内軸15に案内されつつ、案内孔22cの上記延在部分の分だけ自重及び経糸Tによる押圧力によって前記係止状態の解除と共に落下する。この構成により、フォーク22の係合ピン22aがアーム21の係合溝21a2内から離脱した後、すぐにソレノイド25を非励磁状態としてもアーム21によるフォーク22の係止を解除した状態が維持されるため、ソレノイド25に対する励磁期間を短くする(一時的なものとする)ことができる。
より詳しくは、本実施例の構成では、初期状態にあるフォーク22の係合ピン22aと案内軸15とを結ぶ直線はアーム21側に傾斜するものとなっており、フォーク22は、自重により案内軸15の挿通位置よりも上部側がアーム21へもたれ掛かる状態となっている。また、プッシャ23によって押された状態でも、フォーク22がアーム21側へ傾斜した状態となるように、ソレノイド25の励磁時におけるプランジャ25aの突出量を考慮してソレノイド25の位置(初期状態におけるフォーク22とプッシャ23との間隙)が設定されている。従って、フォーク22は、プッシャ23に押された状態では、その傾動がプッシャ23によって支えられた状態となっている。これは、フォーク22がプッシャ23に押された際、フォーク22が織前F側へ傾倒するのを防止するためであるが、そのため、フォーク22は、その上部側が自重によって常にアーム21側へもたれ掛かるようになっている。
そのような構成のものにおいて、初期状態で案内軸15がフォーク22の案内孔22cの上端に位置する構成とした場合、フォーク22がプッシャ23によって織前F側へ押され、係合ピン22aがアーム21の係合溝21a2内から離脱しても、アーム21を回動させるまではソレノイド25を非励磁状態とすることができない。何故なら、アーム21を回動させる前にソレノイド25を非励磁状態とすると、プッシャ23による支えが無くなるため、フォーク22がアーム21側へ傾動して係合ピン22が再びアーム21の係合溝21a2内に入ってしまうため、アーム21に対するフォーク22の係止状態を解除する操作を行ったにもかかわらず、再びフォーク22がアーム21に係止された状態となってしまうからである。そのため、初期状態で案内軸15がフォーク22の案内孔22cの上端に位置する構成の場合には、使用者が操作レバー14aを操作してアーム21を回動させるまでは、フォーク22のアーム21側への傾動を支えるために、ソレノイド25の励磁状態を継続しなければならない。また、その構成の場合、使用者による任意のタイミングでの操作レバー14aの操作に対応すべく、ソレノイド25の励磁状態から非励磁状態への切り換えは、使用者によるスイッチ操作等で行われるものとしなければならない。
これに対し、図示の構成では、フォーク22の係合ピン22aがアーム21の係合溝21a2から離脱することに伴い、フォーク22が案内孔22cの前記延在部分の分だけ自重等で落下し、係合ピン22aが初期状態にあるアーム21の係合溝21a2よりも下方に位置した状態となる。そのため、その状態でソレノイド25を非励磁状態としてフォーク22がアーム21側へ傾動したとしても、係合ピン22aが係合溝21a2に入り込むことなく、フォーク22が係合ピン22aでアーム21の円弧面21a1にもたれ掛かった状態となる。従って、図示の構成では、短時間の(一時的な)ソレノイド25の励磁により、フォーク22のアーム21に対する係止状態を解除できると共に、その解除された状態が維持される状態とすることができる。なお、フォーク22は、前述のような張出し部22cを有しており、この張出し部22cは、上記落下後も幅方向における両側に位置する2枚のアーム21、21間に位置するように形成されている。従って、フォーク22は、落下後においても、その幅方向の位置が両側に位置する2枚のアーム21、21によって規制された状態となっている。
前記のように開口パターンにおいて非選択設定とされた経糸Tに対応するソレノイド25が駆動され、そのソレノイド25に対応するフォーク22のアーム21に対する係止状態が解除されると、そのフォーク22に対応する経糸Tは、フォーク22を下方へ押圧する状態から、送出側及び巻取側のガイドロール12、13を結ぶ直線上の位置である閉口位置に位置した状態となる。その後、使用者が前記第1の位置に位置決めされている操作レバー14aを前記第2の位置へ向けて回動させることにより、図7(a)に示すように、アーム21が開口方向へ回動され、アーム21に係止されたフォーク22により、開口パターンにおいて選択設定された経糸Tが上側開口位置へもたらされる。但し、アーム21に対する係止状態が解除されたフォーク22については、アーム21を回動させても持ち上げられないため、その上方に位置する経糸Tについては前記した閉口位置に位置したままの状態となっている。そして、操作レバー14aを前記第2の位置で位置決めし、アーム21を経糸Tの上側開口位置に対応する位置において静止状態とすることにより、経糸開口機構2において緯糸Yを緯入れするための経糸Tによる開口が形成された状態となる。
なお、非選択設定とされた経糸Tに対応するフォーク(以下では、「非選択フォーク」とも言う。)22は、前記したように、落下後においてアーム21の円弧面21a1にもたれ掛かった状態となっている。また、前記したように、アーム21の円弧面21a1は、その円弧中心をアーム21の回動中心(支持軸14)に一致させるように形成されている。従って、非選択フォーク22の落下後においてアーム21を回動させても、円弧面21a1にもたれ掛かる非選択フォーク22の案内軸15周りの位置が変化することはなく、非選択フォーク22は同じ状態に維持される。
その後、公知の手織り機と同様に、緯糸Yが巻かれたシャットル等を用い、使用者による緯糸Yの緯入れが行われる。その緯入れが行われた後、経糸Tの開口内にある緯糸Yを経糸Tによって拘束された状態とすべく、前記第2の位置に位置決めされている操作レバー14aを前記第1の位置側へ向けて回動させ、アーム21を反開口方向へ回動させる。そして、操作レバー14aを前記第1の位置に位置決めし、その状態で、図1に示す筬打ち装置4の筬41により、緯入れされた緯糸Yを織前Fに対し筬打ちする。
ところで、本実施例の経糸開口機構2において非選択フォーク22は、前記のように、アーム21に対する係止状態が解除された後は、初期状態における位置よりも下方に位置したものとなっている。そこで、本実施例においては、その非選択フォーク22を再びアーム21に係止された状態とすべく、操作レバー14aの反開口方向側の回動限が前記第1の位置よりも更に反開口方向側となるように設定されている。詳しくは、次の通りである。
前記のように、落下後の非選択フォーク22は、係合ピン22aにおいてアーム21における円弧面21a1の円弧面21a1に対しもたれ掛かった状態となっている。そこで、図7(b)に示すように、係合溝21a2が落下後の非選択フォーク22の係合ピン22aに対向する位置までアーム21を回動可能とすることにより、係合溝21a2が係合ピン22aに達した時点で、フォーク22の自重によるアーム21側への傾動により、係合ピン22aが係合溝21a2内に再び進入し、非選択フォーク22がアーム21に対し係止された状態に復帰する。
なお、操作レバー14aの回動位置について、前記した落下後の非選択フォーク22の係合ピン22aと係合溝21a2とが対向するアーム21の回動位置に対応する位置(第3の位置)において、操作レバー14aが位置決め可能となっていることが好ましい。但し、非選択フォーク22の係合ピン22aの係合溝21a2に対する前記再進入は短時間で完了し、且つ前記再進入後にはアーム21を初期位置に戻せばよいため、操作レバー14aの前記第3の位置での位置決めは必ずしも必要ではなく、その位置において使用者が操作レバー14aを保持して位置決めするような構成であってもよい。
また、アーム21における係合溝21a2に対する非選択フォーク22の係合ピン22aの前記再進入を確実にするために、フォーク22の織前F側に、全てのフォーク22の織前F側の端面に対し一斉に当接可能な部材を設けておき、操作レバー14aを前記第3の位置に位置決め又は保持した状態で、該部材により非選択フォーク22をアーム21側へ押して前記再進入を助勢するようにしてもよい。そして、この非選択フォーク22をアーム21側へ押す部材は、筬打ち装置4に設けられるものとすることもできる。
前記のように、経糸Tの開口が形成された状態から、使用者が前記第2の位置に位置決めされている操作レバー14aを反開口方向へ回動させ、前記第1の位置を超えて前記第3の位置にまで回動させることにより、アーム21が経糸Tの上側開口位置に対応する位置から反開口方向へ向けて回動され、その係合溝21a2が落下した非選択フォーク22の係合ピン22aに対向する回動位置まで回動される。それにより、経糸Tの開口前にアーム21に対する係止状態を解除された非選択フォーク22が、再びアーム21に対し係止状態された状態に復帰する。その後、使用者が操作レバー14aを開口方向へ回動させ、前記第1の位置において操作レバー14aを位置決めすることにより、経糸開口機構2は、図6(a)に示すような、アーム21が初期位置に位置すると共に、全てのフォーク22がアーム21に対し係止された初期状態となる。
そして、経糸開口機構2において以上の一連の動作が繰り返されることにより、織布Wが形成される。また、このようにして形成された織布Wは、ガイドロール13を介して巻取ロール5側へ導かれ、巻取ロール5によって巻き取られる。なお、緯糸Yの筬打ち時期について、前記では、非選択フォーク22のアーム21に対する係止状態の復帰前に行われるものとしたが、緯糸Yの筬打ちは、非選択フォーク22を再びアーム21に対し係止状態とした後の、操作レバー14aを前記第1の位置に位置決めした後に行うものとしてもよい。
以上では、本発明による経糸開口機構について、その一実施例を説明したが、以下のような変形も可能である。
(1)前記実施例では、アーム21の織前F側にフォーク22を配置し、アーム21における支持部21b(支持軸14)が円弧面21a1よりも反織前F側に位置する配置としたが、これに代えて、アーム21の反織前F側にフォーク22を配置すると共に、円弧面21a1よりも織前F側に位置する支持部21b(支持軸14)においてアーム21が支持される構成としてもよい。
(2)前記実施例では、幅方向に列設された複数枚のアーム21のそれぞれが支持軸14に支持されるものとしたが、これに代えて、幅方向における両端のそれぞれに位置する2枚のアーム21のみが、自身に一体形成された支持部あるいはブラケット等の別部材を介して支持軸14に支持され、その両端に位置する2枚のアーム21の間に位置する各アーム21については、隣接するアーム21に対し相対変位不能に連結されるものとしてもよい。すなわち、本発明において、作動部材(アーム21)は支持軸を介してフレーム(側壁)に支持されるものであるが、支持軸に対しては直接的に支持されるものに限らず、他の作動部材や別部材を介して支持軸に支持されるものであってもよい。
(3)前記実施例では、駆動装置として、励磁されることによってプランジャ25aが突出方向へ動作するプッシュ式のソレノイド25を用いたが、これに代えて、励磁されることによってプランジャが退避方向へ動作するプル式のソレノイドを用いることも可能である。但し、その場合は、図8に示すように、各ソレノイド25がプランジャ25aを後方へ向けた状態で配置されると共に、各プッシャ23’がソレノイド25の本体部23bの上面よりも高い位置において基部23a’から後方へ延在する延在部23c’を有するものとし、この延在部23c’の後端部において、ピン23d等により、ソレノイド25のプランジャ25aに連結されるものとすればよい。なお、この構成の場合、プッシャベース24上におけるプッシャ23’の後方への滑動は、最も上側に位置するソレノイド25の後端面(プランジャ25aが突出する面とは反対側の面)で規制される。
(4)駆動装置については、前記のような駆動軸(ソレノイドの場合のプランジャ)を一方向にのみ駆動可能なものに代えて、プッシャ23をフォーク22側及び反フォーク22側の両方へ積極的に変位させることができるように、駆動軸を二方向に駆動可能なもとしてもよい。例えば、前記実施例と同じくソレノイドであっても、プランジャが本体部内においてバネ等により一方向へ付勢されており、励磁されることによってプランジャがバネによる付勢方向と逆方向へ駆動されるものとしてもよい。また、駆動装置として、回転式のアクチュエータである電動モータやロータリソレノイドを用い、それらを駆動軸(出力軸)の軸線方向がプッシャ23の変位方向と直交するように配置し、その駆動軸とプッシャとをリンク等を介して連結したものとしてもよい。さらに、リニアモータや流体圧シリンダといった直動式のアクチュエータも駆動装置として用いることも可能である。
(5)前記実施例では、フォーク22に対するプッシャ23の当接位置を、前後方向に関しフォーク22のアーム21側(前記実施例では反織前F側)の端面であって、上下方向に関し初期状態におけるフォーク22の案内軸15の挿通位置よりも上方としたが、これに限らず、例えば、案内軸15の挿通位置よりも下方でフォーク22の反アーム21側の端面に対し当接してフォーク22を押すものとしてもよい。また、駆動装置がプッシャ23をフォーク22から離間する方向(フォーク22を引っ張る方向)へ駆動可能なものである場合は、プッシャ23の作動部23bの先端が、案内軸15の挿通位置よりも下方のフォーク22のアーム21側端面、又は案内軸15の挿通位置よりも上方の反アーム21側の端面に対向するように、フォーク22が配置されるものとしてもよい。但し、駆動装置がプッシャ23をフォーク22から離間する方向へ駆動するものの場合は、プッシャ23の変位に伴ってフォーク22が回動するように、プッシャ23の作動部23bとフォーク22とを相対変位不能に連結する必要がある。
(6)前記実施例では、フォーク22に形成された案内孔22cが、初期状態にあるフォーク22の案内軸15の挿通位置よりもフォーク22の上端部側へ延びるように形成されているが、これに限らず、前述のように、初期状態において、案内軸15がフォーク22の案内孔22cの上端に位置するように、案内軸15の配置あるいは案内孔22cの形成が行われたものとしてもよい。但し、この場合は、フォーク22の係合ピン22aをアーム21の係合溝21a2から離脱させた際に、その状態を維持すべく、駆動装置の作動状態が維持されるような構成とする必要がある。
(7)前記実施例では、フォーク22の上端部に形成される係合部を軸形状の係合ピン22aとし、その係合ピン22aがフォーク22の上端縁に取り付けられるものとしたが、係合部はそのようなものに限らず、例えば、図9に示すように、フォーク22の上端部における側面から突出する凸部22a’とし、アーム21における係合溝21a2’をそれに対応した形状としてもよい。
(8)前記実施例では、案内部材をフレーム1の左右の側壁11、11間に架設された単一の案内軸15とし、その案内軸15が昇降部材としてのフォーク22に形成された案内孔22cに挿通された状態として、作動部材(アーム21)に係止されてぶら下がった状態となっているフォーク22の前後方向の位置を規制すると共に、フォーク22が選択部材(プッシャ23)に押された際に案内孔22cの内周面と案内軸15とが当接して、その当接位置がフォーク22の回動支点となる構成としたが、本発明における案内部材はそのような昇降部材に挿通される案内軸に限らず、図10〜12に示すような構成としてもよい。
図10、11に示す構成は、案内部材としてフレーム1の左右の側壁11、11間に架設された2本の案内軸15a、15bを備え、この2本の案内軸15a、15bを、プッシャ23の作動部23の先端よりも下方において、前後方向に関しフォーク22を挟むようにフォーク22のアーム21側及び織前F側のそれぞれに配置した例である。この図示の構成では、上下方向に関し織前F側の案内軸15aをアーム21側の案内軸15bよりも若干高い位置に配置しており、また、両案内軸15a、15bは、フォーク22の回動を許容するために、その間隔がフォーク22の前後方向に関する幅寸法よりも若干大きくなるように配置されている。従って、初期状態においては、図10(a)の点線で示すように、係合部材(係合ピン22a)が係合溝21a2に係止されることによってアーム21にぶら下がった状態となっているフォーク22は、その中間部付近において案内軸15bに当接して支持され、アーム21側への変位が規制されている。
そして、その初期状態において非選択設定の経糸Tに対応するプッシャ23が駆動装置によってフォーク22側へ変位されてプッシャ23によってフォーク22が押されると、先ず最初に、フォーク22は、係合ピン22aを支点として回動し、案内軸15bから離間し、図10(a)の実線で示すように、織前F側の端面(プッシャ23と対向する面とは反対向きの面)で案内軸15aに押し当てられた状態となる。そして、この状態からプッシャ23が更にフォーク22側へ変位すると、プッシャ23によるフォーク22の押す位置とフォーク22の案内軸15aに対する当接位置とがフォーク22の延在方向に離間しているため、フォーク22が上記当接位置を支点として回動する。その結果、図10(b)に実線で示すように、係合ピン22aが係合溝21a2内から離脱し、アーム21に対するフォーク22の係止状態が解除される。なお、前記のように、2つの案内軸15a、15bの間隔は、フォーク22の前後方向に関する幅寸法よりも若干大きく、プッシャ23に押されることによるフォーク22の上記回動を許容するものとなっているため、フォーク22の上記回動が案内軸15bに妨げられることはない。
前記のようにアーム21に対する係止状態が解除されると、係合ピン22aにおいてアーム21にぶら下がっていたフォーク22がその支持を失い、案内軸15aとプッシャ23の先端とに挟まれた状態で下方へ落下する。なお、図示の構成では、フォーク22は、前後方向におけるアーム21側の端面に形成された張出し部22bに加え、前記した案内軸15aとの当接位置よりも上方に位置する部分が織前F側へ突出するようにして形成された突出部22dを有している。この突出部22dは、初期状態において案内軸15aから離間するように形成されており、また、その下面(案内軸15aと対向する面)が、フォーク22の延在方向と直交する方向に対し鋭角を為して上方へ向けて傾斜している。従って、上記の落下に伴い、フォーク22は、図11(a)の実線で示すように、突出部22dの下面が案内軸15aに受けられ、その位置で落下が停止する。
そして、その状態で駆動装置によるプッシャ23の駆動を停止する、又は駆動装置によりプッシャ23を反フォーク22側へ変位させると、フォーク22は、突出部22dの下面が前記のように傾斜していることにより、その下面によって案内軸15a上を滑動してアーム21側へ変位する。その後、フォーク22は、アーム21側の端面が案内軸15bに当接すると共に、係合ピン22aがアーム21の円弧面21a1に当接した状態となって停止する。この状態では、フォーク22は、突出部22dの下面、アーム21側の端面及び係合ピン22aの3点においてそれぞれ案内軸15a、案内軸15b及びアーム21の円弧面21a1に支持されており、プッシャ23と離間した状態でもアーム21に対する係止を解除した状態が維持される状態となっている。
また、図12に示す構成は、前記のような案内軸に代えて、案内部材として昇降部材(フォーク22)の下端を支持する支持台15cを採用した例である。この支持台15cは、幅方向に関しフレーム1の左右の側壁11、11間に亘って延在するように設けられ、その両端部において側壁11に固定されている。また、フォーク22の下面が円弧面22eに形成されている。そして、支持台15cの上面には、フォーク22の円弧面22eよりも若干曲率の大きい円弧溝15c1が形成されており、フォーク22は、円弧面22eがこの円弧溝15c1に挿入された状態で、支持台15cによって回動自在に支持されている。なお、前後方向における円弧溝15c1の位置は、初期状態及びフォーク22がプッシャ23に押された状態において、フォーク22が作動部材(アーム21)側へ傾倒した状態となるように設定されているものとする。
この構成によれば、フォーク22は、自重によって常にアーム21側へもたれ掛かる状態となっており、選択部材(プッシャ23)が駆動装置によってフォーク22側へ変位してフォーク22を織前F側へ押すと、支持台15cの円弧溝15c1に当接支持される円弧面22eの当接位置を支点として織前F側へ回動する。より詳しくは、フォーク22がプッシャ23による押圧力を受けると、円弧面22eにおける織前F側の部分22e1(プッシャ23と対向する面とは反対を向く部分)が、支持台15cの円弧溝15c1における上記部分22e1と対向する面に押し付けられ、その当接位置が支点となってフォーク22が回動する。そして、その回動により、係合部材(係合ピン22a)が係合溝21a2から離脱し、フォーク22のアーム21に対する係止状態が解除される。但し、この例の場合、前記実施例のようにフォーク22のアーム21に対する係止状態を解除してもフォーク22は落下しないため、前述のように、アーム21を回動させるまでプッシャ23の駆動状態(フォーク22側へ変位させた状態)を維持する必要がある。
(9)前記実施例では、アーム21に対する係止状態が解除されることに伴って落下した非選択フォーク22をアーム21に対し係止された状態に復帰させるために、緯入れ後にアーム21を第3の位置まで回動させて落下した非選択フォーク22を拾いにいくものとしたが、これに代えて、アーム21の反開口方向の回動は第1の位置までとし、落下した非選択フォーク22を一斉に持ち上げることにより、係合ピン22aをアーム21の円弧面21a1に沿って係合溝21a2の位置まで上昇させ、非選択フォーク22をアーム21に対し係止された状態に復帰させるものとしてもよい。なお、この場合の非選択フォーク22を一斉に持ち上げる構成としては、例えば、落下した非選択フォーク22を受ける受け台であってフレーム1(側壁11、11)に対し上下方向に変位可能に支持された受け台を、フォーク22の下方に設ければよい。
(10)前記実施例における経糸開口機構のアーム21、フォーク22及びプッシャ23について、図示の形状はあくまでも一例であり、その形状については任意に変更可能である。例えば、アーム21の形状について、プッシャベース24上でのプッシャ23の変位を案内すべく、操作レバー14aの前記第3の位置から前記第2の位置の間におけるアーム21の回動範囲の全てにおいて、各アーム21が隣り合う2つのプッシャ23、23の間に位置するようにアーム21が下方へ延在する部分を有するものとしたが、アーム21の形状をそのような延在部分が設けられていないものとし、代わりに、プッシャベース24上にプッシャ23の変位を案内するためのガイドを設けてもよい。また、フォーク21の形状について、前記実施例では、落下後も非選択フォーク22のアーム21による幅方向の位置の規制が維持されるべく、フォーク22bが張出し部22bを有するものとしたが、フォーク22の形状を張出し部22bが設けられていないものとし、代わりに、フォーク22の幅方向の位置を規制するガイドを設けてもよい。
なお、前記実施例では、本発明の経糸開口機構が適用される織機を、少なくとも経糸開口内への緯糸の挿入が使用者による手作業で行われる手織り機としたが、本発明の経糸開口機構は、自動織機にも適用可能である。但し、自動織機に適用される場合は、作動部材(アーム)を回動させるための支持軸の回転は、手動ではなく、専用の駆動機構で行われるものとなる。
また、本発明は、以上で説明したいずれの実施形態にも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。