JP5794521B2 - アポトーシス誘導剤 - Google Patents

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Description

本発明は、アポトーシス誘導剤に関する。あるいは、細胞増殖性疾患に対する内照射治療薬に関する。
内照射治療とは、放射性薬剤を体内に投与し、標的部位にターゲティングすることにより、その放射性核種から放出される放射線によって治療を行うことをいう。内照射治療においては、主にβ線を放出する放射性核種が用いられている。β線はがん細胞に集積した際に高い治療効果が得られるが、β線の飛程が長いため集積部位を含めた周囲の正常細胞にも影響を及ぼしてしまうといった問題点がある。そこで、より飛程の短い放射線を用いた正常細胞に影響の少ない治療法が期待されており、オージェ電子を用いた内照射治療用放射性薬剤の開発研究が進められている。
オージェ電子とは、原子核に近い軌道にある電子が電子捕獲によって空いた軌道に、外殻から電子が移動するときに生じる遷移エネルギーを受けることで放出される電子である。オージェ電子には、水中における飛程が数ナノメートルと短い、放出中心から数ナノメートルの球内限定的に強い電離と大規模なDNA損傷を起こす、細胞基質あるいは細胞外ではオージェエミッタの崩壊による放射性毒性が10〜100倍少ない、などの特徴がある。
内照射治療法の研究が進められているオージェ電子放出核種には、125Iや111Inなどが挙げられる。しかし125Iは半減期が60日と長く、副作用が発生したときの対処が困難であると考えられる。また111Inは金属元素のため薬剤設計が難しく、ターゲットとの親和性が低下しやすいなどの問題点が考えられる。
本発明者らは、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(以下、BrdUと記載する)を母体化合物とし、このフラノース環4’位の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物(5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジン(以下、Br−BTdUと記載する))が、腫瘍の増殖能イメージング剤として利用できることを明らかにしている(非特許文献1および2参照)。しかしながら、Br−BTdUおよびその放射標識体が、細胞増殖抑制機能やアポトーシス誘導機能を有することや、内照射治療に有用な化合物であることについては、未だ開示されていない。
また、特許文献1には、式
(式中、Rは水素又はメチル基、Rは水素、ヒドロキシル又はハロゲン置換基、Rは水素、Rは酸素又は硫黄、Rは放射性ハロゲン置換基である。ただし、Rが水素であって且つRが酸素である場合を除く)で表される化合物が、組織増殖能の診断や、増殖性疾患の治療に用いられることが開示されている。しかしながら、Br−BTdUがアポトーシスを誘導することや、Br−BTdUが細胞増殖性疾患の内照射治療に有用であることについては、記載も示唆もない。
特許第4210118号公報
Journal of Nuclear Medicine 51 Supplement 2 116P(2010) European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging 37 Supplement 2 S358(2010)
内照射治療によって細胞増殖性の疾患を治療するために有用な、放射性薬剤が求められている。
77Brはオージェ電子を放出する核種であって、半減期が57時間と短く、ヨウ素よりも安定な化学結合を形成しうる同位体である。したがって、77Brを適用することで内照射治療に有用な放射性薬剤を製造できる可能性がある。また77Brはβ線を放出するため、体内に入った放射性薬剤の分布を、PETを用いることによって確認できる可能性がある。
本発明者らは、Br−BTdUのBrを放射性臭素とした化合物およびその誘導体が、癌細胞の細胞増殖を抑制するばかりか、アポトーシスをも誘発することを明らかにした。本発明者らはさらに鋭意研究を行い、本発明を完成した。
即ち、本発明は、
[1]放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンまたはその誘導体を含んでなる、アポトーシス誘導剤;
[2]放射性臭素が、77Brである、[1]に記載の剤;
[3]放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンまたはその誘導体、ならびに医薬的に許容し得る担体を含んでなる、細胞増殖性疾患の内照射治療薬;
[4]細胞増殖性疾患が、癌である、[3]に記載の治療薬;
[5]放射性臭素が、77Brである、[3]または[4]に記載の治療薬;
などに関する。
本発明の化合物は、周辺の正常細胞に影響を与えることなく、増殖速度の速い異常細胞に対して選択的かつ効果的にアポトーシスを誘導する。したがって本発明によって、新たなアポトーシス誘導剤が提供される。また本発明の化合物を含むアポトーシス誘導剤は、細胞増殖性の疾患に対する治療薬としても用いることが可能である。
また本発明により、細胞増殖性の疾患に対する新規かつ極めて有用な内照射治療薬が提供される。これまでの内照射治療では、半減期60日という長い半減期の125Iを用いる手法が主流であり、これでは、副作用が判明した際の対処が著しく遅れるといった問題点が考えられた。しかしながら本発明の内照射治療薬は、半減期57時間の77Brを利用しているので、仮に副作用が発生しても次の薬剤投与を行わないという選択が可能となり、臨床的に有利である。このことによって、手術による摘出の難しい癌への新しい治療戦略を提供できると考えられる。
あるいは本発明により、腫瘍のDNA合成能を評価することが可能となる。DNA合成能を直接評価可能となれば、18F−FLTでは正確な評価が出来なかった、抗癌剤あるいは放射線治療時の、DNA合成は抑制されるがチミジンキナーゼ1の活性は維持されるような増殖能の評価が難しい状態であっても、腫瘍の評価が可能となる。このことは、腫瘍増殖能の正確な評価が可能であることを示しており、抗癌剤治療が分子標的薬に移行していることを鑑みると、本発明は癌の治療方法を正しく選択することに大きく貢献すると考えられる。
さらに本発明の治療薬は、治療薬自体が放射性臭素で標識されているので、これ自体を核種とした画像診断を行うことも可能である。
A:77Br−BTdUが取り込まれる細胞を示す図である。B:77Br単独では細胞に取り込まれないことを示す図である。 L−M細胞における77Br−BTdUの局在を示す図である。ASFは酸可溶性画分を示し、Proteinはタンパクおよび脂質画分を示す。 正常マウスにおける77Br−BTdUの局在を示す図である。 腫瘍移植マウスにおける77Br−BTdUの腫瘍への集積を示す図である。A:77Br−BTdUの取り込み量の経時変化、B:腫瘍とその周辺の筋肉組織とにおける77Br−BTdUの取り込み量の比率。 LL/2細胞における77Br−BTdUの内照射効果を検討した図である。 LL/2細胞における77Br−BTdUの内照射効果のメカニズムを検討した結果を示す図である。A:細胞依存性、B:細胞毒性、C:アポトーシス。
本発明の「放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジン(以下、「本発明の化合物」、あるいは「放射性BTdU」と記載する)」とは、BrdUにおけるフラノース環の4’−oxoを4’−sulfurに置換し、さらに5位の臭素を放射性臭素に置換した(放射性臭素で標識された)化合物である。
BrdUにおける5位の臭素を放射性臭素で置換した場合、生体内において、グリコシド結合の開裂、それに続く脱臭素反応を受けて放射性臭素が脱離することが知られている。しかしながら本発明の化合物は、フラノース環の4’−oxoを4’−sulfurに置換したことで生体内脱臭素反応に抵抗性を示すので、薬剤の成分として用いることが可能である。
本明細書中、「放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンの誘導体(以下、本発明の誘導体と記載する)」とは、放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンが有する機能を保持する限りにおいて、放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンの構造に基づいて、有機化学分野における通常の技術を用いて修飾された化合物を意味する。
修飾に用いられる置換基としては、当該誘導体が放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンが有する機能を保持する限りにおいて特に限定されず、有機化学分野における公知の置換基を用いることができる。
このような化合物としては、例えば式(I)
(式中、Rは水素又はC1−6アルキル基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して水素、ヒドロキシルまたはハロゲン置換基を示す)で表される化合物(以下、化合物(I)と記載する)が挙げられる。
化合物(I)は、本発明の誘導体の好ましい一例を具体的に表したものであり、後述する本発明の化合物と同様の機能を有する。
本明細書中、「C1−6アルキル基」とは、炭素数1〜6で直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を意味し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン置換基」としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。
化合物(I)におけるRとして好ましくは、水素であり、Rとして好ましくは、水素である。
好ましい化合物(I)としては、Rが水素またはアルキル基を示し、Rが水素、ヒドロキシルまたはハロゲン置換基を示し、Rが水素を示す化合物である。より好ましい化合物(I)としては、Rが水素を示し、Rが水素またはヒドロキシル基を示し、Rが水素を示す化合物である。さらに好ましい化合物としては、Rが水素を示し、Rがヒドロキシル基を示し、Rが水素を示す化合物である。
本発明の化合物の5位における「放射性臭素」とは、臭素の放射性同位体を意味する。本発明の化合物は、BTdUを放射性臭素で標識することによって、強い細胞増殖抑制機能を有する。
本発明の化合物における放射性臭素として好ましくは、75Br、76Br、77Br、80Br、82Brであり、より好ましくは77Brである。
77Brはオージェ電子を放出する核種であって、半減期が57時間と短く、安定な化学結合を形成しうる同位体である。また77Brはβ線を放出するため、体内に入った本発明の化合物分布を、PETを用いることによっても確認できる可能性がある。ところで、内照射治療法の研究が進められているオージェ電子放出核種には、125Iなどの同じ放射性ハロゲン元素も挙げられる。しかしながら、125Iは半減期が60日と長く、副作用が発生したときの対処が困難であることが考えられる。したがって、放射性臭素を選択した、中でも77Brを選択した本発明の化合物は、内放射治療において非常に有用である。
あるいは本発明の誘導体は、置換可能な位置において、さらなる放射性臭素、もしくは放射性臭素以外の他の放射性同位体によって修飾されていてもよい。さらなる修飾に用いられる他の放射性同位体としては、例えば36Cl、125I、131I、211Atが挙げられる。これらの放射性同位体による修飾は、当業者であれば自体公知の方法によって行うことができる。
本発明の化合物またはその誘導体は、増殖能の高い細胞に取り込まれ、その細胞増殖を抑制する機能を有する。特に本発明の化合物またはその誘導体は、生体内において安定で、チミジンキナーゼによって細胞内に取り込まれるか、あるいはDNAに組み込まれてDNA合成活性を反映する。したがって本発明の化合物またはその誘導体は、増殖能の高い細胞のDNAに集積することで、その細胞増殖を抑制する機能を発揮すると考えられる。
なお、当該機能は非放射性臭素を有する5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジン(以下、非放射性BTdUと記載する)も有する機能であるが、本発明の化合物は、放射性臭素を有することによって、非放射性BTdUよりも高い細胞増殖抑制機能を有する。放射性臭素単独ではこのような細胞増殖抑制効果は発揮し得ない(本願実験例1、図1B参照)ので、本発明の化合物が有する細胞増殖抑制機能は、放射性臭素とBTdUが組み合わされたことによる相乗的な効果によるものであるといえる。
あるいは本発明の化合物またはその誘導体は、増殖速度の速い異常細胞により取り込まれ、その細胞のアポトーシスを誘導する機能を有する。この場合、放射性臭素としてオージェ電子を放出する77Brを適用することが望ましい。放射性臭素として77Brを用いることで、77Brの内照射効果によって増殖能の高い細胞特異的なアポトーシスを誘導することができる。
本発明の化合物またはその誘導体は、その医薬的に許容し得る塩の形態で提供されるものであってもよい。
本明細書中、「医薬的に許容し得る塩」とは、医薬上許容できる無毒の塩基または酸から調製される塩を意味する。そのような塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、または硝酸塩のような無機酸の塩、あるいは、有機スルホン酸塩若しくは有機カルボン酸塩のような有機酸の塩が挙げられる。上記有機スルホン酸塩としては、例えば、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等が挙げられ、有機カルボン酸塩としては、酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、アスコルビン酸塩、マンデル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、及びクエン酸塩等が挙げられる。
本発明の化合物またはその誘導体は、プロドラッグの形であってもよい。
本明細書中、「プロドラッグ」とは、生体内において(例えばpHの変化による)自発的な化学変化によりまたは生体内に通常存在する酵素によって、あるいは生体内に導入ないし操作された酵素によって活性体となる、医薬的に不活性の化合物を意味する。当該技術分野において様々な形のプロドラッグ、例えば、生体内加水分解性エステルまたはエーテル等が知られている。このようなプロドラッグは、試験中の化合物を、例えば試験動物に静脈内投与した後、試験動物の体液を調べることによって同定することができる。
生体内加水分解性エステルとしては無機酸エステルおよび有機酸エステルが挙げられ、無機酸エステルとしては、リン酸エステル等が挙げられ、有機酸エステルには、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、カルバミン酸エステル等が挙げられる。エーテルとしては、アセトキシメチルエーテル、及びピバロイルオキシメシルエーテル等のアシルオキシアルキルエーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。
あるいは、本発明の化合物またはその誘導体は、溶媒和物(例えば水和物)の形で存在していてもよい。さらに、互変異性体などの各種異性体も本発明の化合物またはその誘導体に含まれる。
本発明の化合物またはその誘導体の製造方法は、自体公知の方法であれば特に限定されない。また、市販品が存在すればそれを利用してもよい。本発明の化合物またはその誘導体の製造方法としては、特許第4210118号公報に記載の方法が挙げられる。
化学合成によって本発明の化合物を製造する場合、母体化合物としては、例えば細胞増殖マーカーとして用いられているBrdUにおける、フラノース環の4’−oxoを4’−sulfurに置換した化合物を選択すればよい。このような母体化合物を選択することによって、得られる本発明の化合物が生体内脱臭素反応に抵抗性を示すので、薬剤として生体内に投与することが可能になる。
当該母体化合物は、当業者であれば自体公知の方法やそれに準じた方法で製造することができるし、市販品が存在すればそれを利用してもよい。このような方法としては、特許第4210118号公報に記載の方法や、以下の合成スキーム
で表される方法が挙げられる。当該合成スキームの各反応における化合物の量や反応条件などは、当業者が適宜決定することが可能である。
本発明の化合物の合成スキームのうち、放射性臭素の標識工程は、以下の式(II)で表される。
本工程は、ピリミジン環の5位にトリブチルスタンニル基を有する母体化合物をハロゲン化(放射性臭素化)して、本発明の化合物を得る工程である。当該母体化合物は、例えばNuclear Medicine and Biology 35 67−74(2008)に記載の方法によって合成することができる。
本工程は、本発明の誘導体を得る目的にも適用することが可能である。またその場合の反応条件は、当業者であれば適宜設定することが可能である。
本発明は、本発明の化合物またはその誘導体を含んでなる、細胞増殖抑制剤を提供する。
本発明の化合物またはその誘導体は、増殖速度の速い異常細胞により取り込まれやすく、周囲の正常細胞(相対的に増殖速度が遅い細胞)には相対的に取り込まれにくいという性質を有する。したがって、対象とする異常細胞特異的に、細胞増殖を抑制することが可能である。あるいは前述のとおり、オージェ電子を放出する77Brを放射性臭素として適用することによって、内照射効果により効果的に細胞増殖抑制機能を発揮することが可能である。
本発明は、本発明の化合物またはその誘導体を含んでなる、アポトーシス誘導剤を提供する。
本発明の化合物またはその誘導体は、増殖速度の速い異常細胞により取り込まれやすく、周囲の正常細胞(相対的に増殖速度が遅い細胞)には相対的に取り込まれにくいという性質を有する。したがって、対象とする異常細胞特異的に、その細胞のアポトーシスを誘導する機能を有する。あるいは前述のとおり、オージェ電子を放出する77Brを放射性臭素として適用することによって、内照射効果により選択的かつ効果的にアポトーシスを誘導することができる。
本明細書における「アポトーシス誘導」とは、生体における細胞、生体由来の細胞および株化された細胞など、あらゆる細胞のアポトーシスを誘導することをいう。本発明においてアポトーシスが誘導される細胞は、周辺の細胞集団が有するホメオスタシスを逸脱して増殖する細胞(異常細胞)であることが好ましく、このような細胞としては、癌細胞が挙げられる。
また、本明細書における「細胞増殖抑制」とは、生体における細胞、生体由来の細胞および株化された細胞など、あらゆる細胞の細胞分裂による増殖を抑制することをいう。
本明細書中、本発明のアポトーシス誘導剤を「本発明の剤」と記載する場合がある。
本発明の剤は、本発明の剤が有する効果を損なわない限りにおいて、他の成分の添加を制限するものではない。すなわち、本発明のアポトーシス誘導剤のアポトーシス誘導機能を失わせたり、異なる機能に改変したりすることがなければ、他にどのような成分が添加されていてもよい。
例えば賦形剤を添加する場合は、従来公知の賦形剤から適宜選択することができ、スクロース、トレハロース、ラフィノース、マンニトール、デキストラン等の糖、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、セリン、プロリン等のアミノ酸が例示される。さらに、界面活性剤や機能性物質(例、タンパク質、核酸など)を添加してもよい。
本発明の剤は、自体公知の細胞増殖抑制剤や、アポトーシス誘導剤を含んでいてもよいし、あるいは本発明の剤が有するアポトーシス誘導効果を損なわない限りにおいて、本発明の剤に異なる効果を付け加える目的や、相乗効果を与える目的で、上記細胞増殖抑制剤や、アポトーシス誘導剤以外の自体公知の剤が含まれていてもよい。あるいは、これらの剤は本発明の剤と併用してもよい。
このような剤は、当業者であれば適宜選択することが可能である。
本発明の剤の製造方法としては特に限定されず、製造する剤型に適した製造方法が適用される。このような製造方法は、当業者に公知である。
本発明の剤における本発明の化合物またはその誘導体の量は特に限定されず、用途に応じて、例えば0.01〜100重量%の間で、適宜選択すればよい。
本発明は、放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンまたはその誘導体、ならびに医薬的に許容しうる担体を含んでなる、細胞増殖性疾患の治療薬(以下、「本発明の治療薬」と記載する場合がある)を提供する。
本発明の治療薬に含まれる「放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジン」および「その誘導体」については、前記したとおりである。
本明細書中、「細胞増殖性疾患」とは、生体内の細胞の異常増殖に起因する疾患全般のことをいい、このような疾患としては、前立腺増生症、子宮内膜増生症(嚢胞性腺増生症・子宮腺筋症・子宮筋腫)、卵巣腫瘍(嚢胞腺腫)、乳腺(乳腺症・乳腺繊維腺腫)、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、甲状腺腺腫、副腎皮質腺腫・クロム親和性細胞腫などの良性腫瘍;悪性リンパ腫(ホジキン病・非ホジキンリンパ腫)、咽頭癌、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肝癌、膵臓癌、腎臓腫瘍(腎臓癌・腎芽細胞腫)、膀胱腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、子宮癌、卵巣癌、乳癌、甲状腺癌、神経芽細胞腫、脳腫瘍(原発性脳腫瘍・転移性脳腫瘍)、横紋筋肉腫、骨腫瘍(骨肉種・転移性骨腫瘍)、カポジ肉腫、悪性黒色腫などの悪性腫瘍;単純ヘルペスウイルスやヒト免疫不全ウイルスなどによるウイルス感染症;あるいは、乾癬等の増殖性皮膚疾患などが挙げられるが、特に好ましくは癌である。すなわち本発明は、癌の治療薬を提供する。
本発明の治療薬は、治療を必要としている対象に単剤として、あるいは他の抗癌剤と組み合わせて、上記各種癌の治療の一部として使用し得る。
本発明の治療薬に含まれる「医薬的に許容し得る担体」とは、液体または固体の賦形剤、希釈液、潤滑剤、または物質をカプセル化する溶媒のような、医薬的に許容し得る物質、組成物または媒体を意味する。各担体は、前記製剤の他の成分との適合性があり、また投与対象に対して傷害性でないという意味において「許容し得る」ものでなければならない。
医薬的に許容し得る担体の具体的な例としては、例えば、ラクトース、グルコース、ショ糖などの糖;コーンスターチ、ジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、セルロース酢酸塩などのセルロース;トラガカント;麦芽;ゼラチン;滑石;カカオバター、坐薬ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール類;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール類;オレイン酸エチル、ラウリン酸エチルなどのエステル類;寒天;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの緩衝化剤;アルギン酸;生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;ポリエステル、ポリカーボネートなどのポリ無水物類、などが挙げられるが、特に限定されない。当業者であれば、適宜これらの担体を選択することが可能である。
本発明の治療薬を、上記疾患の治療を目的として対象に投与する場合は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、液剤などとして経口的に、あるいは、注射剤、坐剤、経皮吸収剤、吸入剤等として非経口的に投与することができる。このような投与剤型の選択および製造は、当業者であれば自体公知の方法を利用して適宜行うことができる。
あるいは、本発明の化合物またはその誘導体の有効量を、その剤型に適した賦形剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤等の医薬用添加剤を必要に応じて混合し、医薬製剤とすることもできる。例えば注射剤として製剤化する場合には、適当な担体とともに滅菌処理を行って製剤とすればよい。
本発明の治療薬の投与対象としては特に限定されず、例えばヒト、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウシなどが挙げられるが、好ましくはヒトである。
本発明の治療薬は、特に内照射療法に用いられることが望ましい。
本明細書中、「内照射療法」または「内照射治療」とは、生体内に投与した放射性物質が発する放射線によって疾患を治療することをいう。特に本発明の化合物またはその誘導体は、増殖速度の速い異常細胞、例えば癌細胞特異的に取り込まれるため、癌細胞の内照射治療に有用である。
なかでも本発明の化合物またはその誘導体が、放射性臭素として77Brを有する場合、放出されたオージェ電子によって異常細胞(例えば、癌細胞)の細胞増殖は速やかに抑制され、かつ異常細胞のアポトーシスが誘導されるので、特に細胞増殖性の疾患に対する内照射治療に有用である。
本発明の治療薬の投与方法としては特に限定されず、投与対象の細胞増殖性疾患の状態や剤型などに応じて、適当な自体公知の投与方法を選択することができる。しかしながら、本発明の治療薬は好ましくは内照射治療用として用いられるため、その場合は、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与などにより生体内に直接投与する投与方法が望ましい。
本発明の剤および治療薬は、好ましくはオージェ電子を放出する77Brのような核種を採用する。オージェ電子放出核種によって標識された本発明の化合物またはその誘導体は、増殖速度の速い異常細胞に取り込まれ、かつDNAの近傍へ集積することによって、より効率的に抗腫瘍効果を発揮することができる。したがって、本発明の化合物またはその誘導体が有するこれらの機能により、本発明の剤および治療薬の抗腫瘍効果、内放射治療効果が発揮される。
また、併せて36Clや131Iのようなβ線放出核種も採用することができる。これらの核種は、その飛程に応じて直径1cm以上の大きな腫瘍に対して縮小効果が期待される。
また、併せて211Atのようなα線放出核種も採用することができる。これらの核種は直径0.1mm以内の微小な病変に対してβ線放出核種よりも大きな治療効果が得られることから、これらの核種を併用することによって全身の微小転移巣への治療効果も期待される。
一方、局所投与による治療に関して、77Brのようなオージェ電子放出核種で標識した本発明の化合物またはその誘導体は、放出放射線の特性上、ホメオスタシスを逸脱して増殖している異常細胞以外には障害を与えないことから、手術による完全切除が困難な脳腫瘍、悪性黒色腫瘍の残存腫瘍、機能温存の観点から乳癌、直腸癌、前立腺癌、口腔の悪性腫瘍への適用が特に有用である。局所投与の手技としては、例えば、大腸癌などの体腔部の患部に内視鏡を介して投与する方法、脳腫瘍の開頭術中に直接患部に投与する方法、肝臓癌などにおいてその臓器の支配動脈中にカテーテルを介して投与する方法などがある。
本発明の治療薬の投与量は、疾患の状態、投与ルート、患者の年齢、体重などによっても異なるが、例えば成人男性(体重60kg)の場合、1回投与量として、1MBq〜10000MBq、好ましくは200MBq〜4000MBqの放射能を投与するように投与する。投与間隔としても特に限定されず、放射性臭素の半減期を考慮して当業者であれば適宜設定することができるが、放射性臭素として77Br(半減期約57時間)を選択した場合、およそ3日〜2週間程度の投与間隔で上記1回投与量を投与する。
本発明の治療薬は、通常は静脈内に投与するが、場合により動脈内や腹腔内または直接腫瘍等の患部内に投与するなど、静脈内以外の投与経路を選択してもよい。さらに上記投与量を適切な投与間隔で複数回投与することも可能である。
別の実施形態において、本発明の治療薬は、放射線療法(外照射療法)または他の抗癌化学療法剤による治療と組み合わせて使用することもできる。
他の化学療法剤としては、ゲムシタビン、メトトレキサート、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソ尿素、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン、エトポシド、プレドニゾロン、デキサメサゾン、シタラビン、カンパセシン類、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセルなどが挙げられる。
また放射線療法に用いられる装置としては、例えば、リニアック(ノバリス、サイバーナイフなど)、コバルト照射装置(ガンマナイフなど)、医療用サイクロトロンなどが挙げられる。
さらに本発明は、細胞増殖性疾患の治療の必要がある対象に対し、治療上有効量の本発明の化合物またはその誘導体を投与することを含む、細胞増殖性疾患の治療方法も提供する。
また本発明は、細胞のDNA合成能の評価方法を提供する。
本発明の化合物または誘導体は、細胞のDNAに取り込まれるため、核種から放出される放射線を測定することで、細胞、特に腫瘍細胞のDNA合成能を直接的に評価することが可能となる。これにより、18F−FLTでは正確な評価が出来なかった、抗癌剤あるいは放射線治療時の、DNA合成は抑制されるがチミジンキナーゼ1の活性は維持されるような増殖能の評価が難しい状態であっても、腫瘍の評価が可能となる。
以下に合成例、実施例および実験例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお以下の合成例、実施例および実験例は本願発明の一例を挙げるに過ぎず、本発明をこの範囲に限定するものではない。
合成例1:非放射性BTdUおよび5−トリブチルスズ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンの製造
(1)工程1および2
2−デオキシ−D−エリスロ−ペントース 50mg(373mmol)、乾燥メタノール800mlおよび0.5M HCl/メタノール(1.8%)56ml(28mmol)を仕込み、室温で60分乾燥させた後、炭酸銀10gを少しずつ投入した。濾過した後炭酸銀を除き、減圧濃縮した。さらに乾燥THF100mlを加え、減圧濃縮した。窒素気流下、反応物を乾燥THF420mlに溶解して氷上で冷却し、テトラt−ブチルアンモニウムヨウ素30g(81mmol)を加え、更に60%水酸化ナトリウム水溶液40g(1M)を少しずつ加え、スラリーを得た。15℃でベンジルブロミド140g(820mmol)をゆっくり滴下し、室温で2〜3日反応させた後、減圧濃縮した。さらにジクロロメタンを加え、ジクロロメタン溶液を氷水に加え、攪拌し、分層し、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル、4:1)にて精製して、目的物(メチル 3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−α,β−D−エリスロ−ペントサイド)118gを得た。
(2)工程3
(1)で得られたメチル 3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−α,β−D−エリスロ−ペントサイド118g(0.36mol)およびトルエンチオール224g(1.81mol)の混合液に、濃塩酸を少しずつ加えた。40℃で終夜反応後、クロロホルムおよび水を加え、さらに炭酸ソーダを少しずつ加えた。分層し、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル、4:1)にて精製して、目的物(3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−D−エリスロ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール)を得た。本工程を数回繰り返した。
(3)工程4
(2)で得られた3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−D−エリスロ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール165g(0.303mol)を乾燥THF2.2Lに溶解し、トリフェニルホスフィン119g(0.455mol)、安息香酸55.5g(0.455mol)を加え、反応液を攪拌しながら、ジエチルアゾジカルボキシレート79.3g(0.455mol)を含む2.2mol/Lトルエン溶液207mL/乾燥THF390mL溶液を2時間かけて滴下した。終夜室温で反応させた後、減圧濃縮した。室温で2日間静置した後、析出物を濾取し、濾液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル、85:15)にて分離した。目的物を含むフラクションをヘキサン−酢酸エチル(10:1)液でリスラリーして、目的物(4−O−ベンゾイル−3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−L−スレオ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール)を得た。
(4)工程5
(3)で得られた4−O−ベンゾイル−3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−L−スレオ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール80g(123mmol)をジクロロメタン450mLに溶解し、氷で冷却しながらソジウムメチラート10g(185mmol)のメタノール溶液(180mL)を少しずつ加えた。さらに室温で2時間攪拌した。反応液を1.2Lの5%リン酸二水素ナトリウム水溶液に加えて分層させ、ジクロロメタンで抽出し、5%炭酸ソーダで洗浄し、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。これをカラムでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル、4:1)にて精製して、目的物(3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−L−スレオ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール)を得た。
(5)工程6
(4)で得られた3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−L−スレオ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール69g(126mmol)をピリジン690mLに溶解し、氷/食塩水で冷却した後、これをメタンスルホニルクロリド21.8g(190mmol)のピリジン溶液(200mL)に40分かけて滴下した。次いで室温で終夜攪拌し、減圧濃縮した。さらに反応液をジクロロメタン600mL/2規定HCl 600mLで分配し、水洗し、重曹水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。少量の酢酸エチルで流動化し、ヘキサンを滴下して結晶化して目的物(3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−4−O−メタンスルホニル−L−スレオ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール)を得た。
(6)工程7
2Lフラスコに(5)で得られた3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−4−O−メタンスルホニル−L−スレオ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール28g(61mmol)、ヨウ化ナトリウム 97g、炭酸バリウム 194gおよび乾燥DMF 1Lを加えて、100℃で3時間反応させた。放冷した後ろ過し、濾液を減圧濃縮した。これに酢酸エチル2Lおよび水1Lを加えて攪拌し、分層し、有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。さらにこれをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル、9:1)にて精製して、目的物(3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1,4−ジチオ−α,β−D−エリスロ−ペントフラノサイド)を得た。
(7)工程8および9
5−ブロモウラシル6.6g(35mmol)/乾燥アセトニトリルのスラリーに、N,O−ビストリメチルシリルアセトアミド15mL(68mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。さらに窒素気流下において、モレキュラーシーブ4A 15gを加えた。続いて(6)で得た3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1,4−ジチオ−α,β−D−エリスロ−ペントフラノサイド15g(34.4mmol)の乾燥アセトニトリル溶液(オレンジ色スラリー)100mLを加え、さらにN−ヨードスクシンイミド7.7gの乾燥アセトニトリル溶液100mLを加えて溶液が黒くなることを確認した。室温で終夜攪拌した後、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液を100mL加えて過剰のヨウ素を脱色した。反応液をろ過し、濾液を減圧濃縮し、残渣をジクロロメタンに溶解し、重曹水で洗浄した。さらにこれを水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル、酢酸エチル濃度0〜50%のグラジエント溶出)にて精製して、3’,5’−ジ−O−ベンジル−5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンのβ体を得た。
(8)工程10
(7)で得られた3’,5’−ジ−O−ベンジル−5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジン8.9g(17.7mmol)を乾燥トルエン65mLに溶解し、これに四塩化チタン5.62mLと乾燥トルエン23mLを20分かけて滴下した。反応液を90分間室温で攪拌した後、冷却し、メチルエチルケトン62mLを滴下した。反応液に、クエン酸水溶液を滴下し、不溶物を濾過し、メチルエチルケトンで洗浄した。さらに濾液を分層し、水層に28%アンモニア水25mLを加えて中和し、メチルエチルケトンで抽出した。抽出物をメタノールで洗浄して、目的物(5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジン)を得た。これを以下の実施例および実験例における非放射性BTdUとして用いた。
(9)工程11
窒素気流下、(8)で得られた5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジン0.8g(2.48mmol)を1,4−ジオキサン(80mL)に60℃で溶解し、放冷した後、ビス(トリブチルチン)2.8mL、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.32gを加えて、95℃で終夜還流させた。ジオキサンを減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール、6:1)で分離して目的物(5−トリブチルスズ−4’−チオ−2’−デオキシウリジン)を得た。
実施例1: 77 Br−BTdUの製造
77Brは、高エネルギー医学研究センターの医療用小型サイクロトロンを用いて63Cu 77Seディスクターゲットにプロトンを照射し、77Se(p,n)77Br反応を行うことで製造した。そして、該ディスクターゲットをArガス(30ml/min)気流下、1070℃で90分間加熱し、冷却後、超純水を用いて77Brの抽出を行った。
次に77Br水を、バイアル中、窒素雰囲気下、120℃で加熱して水を蒸発させ、ここに合成例1で得られた5−トリブチルスズ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンのメタノール溶液(4mg/ml、25μl)およびクロラミンTの酢酸溶液(4mg/ml、20μl)を加え、酢酸でpHを4.5に調整し、70℃で1時間反応させた。反応液に飽和Na水溶液(10μl)を加えて反応を停止し、さらに水200μlを加えた。77Br−BTdUが合成されたことは、HPLC(T−Flow:1,P−Max:200,UV:254,Oven:40℃,カラム:Cosmosil 5C18−ARII 4.6×150,移動相−アセトニトリル(トリフルオロ酢酸0.1%):水(トリフルオロ酢酸0.1%)=1:9)、TLC(溶媒−クロロホルム:メタノール=8:2、酢酸エチル)で確認し、その結果を合成例1で得られた非放射性BTdUの結果と比較・検討することで評価した。
実験例1:細胞への取り込み実験
マウス肺癌細胞であるLL/2細胞株、マウス線維芽細胞であるL−M細胞株、L−Mのチミジンキナーゼ(TK)が欠損しているL−M TK(−)細胞株を使用した。細胞の増殖速度はLL/2が最も速く、L−MとL−M TK(−)はLL/2よりも遅かった。実験の24時間前に、各細胞を24穴培養プレートに2×10個播種し、培地を交換後30分間37℃でインキュベートした。その後77Br−BTdUまたは77Br入りの培地に交換し、一定時間インキュベートした後、PBSを用いて洗浄し、0.1N水酸化ナトリウムにて細胞を溶解した。ガンマカウンターを用いて溶解した細胞の放射能を計測した後、タンパク定量を行って細胞への取り込み量を補正した。
その結果、LL−2への取り込み量が最も多く、次にL−Mへの取り込み量が多く、L−M TK(−)においてはほとんど取り込みがないことが確認できた(図1A)。また77Br単独では細胞への取り込みは認められなかった(図1B)。したがって、細胞への取り込みは77Br−BTdUの機能であり、77Br−BTdUは細胞の増殖速度に応じて細胞内に取り込まれることが示唆された。さらに、その取り込みにはTKが必要であることも示唆された。
実験例2:細胞における局在
L−MとL−M TK(−)を用いて、77Br−BTdUが細胞内でどのように分布しているかの比較を行った。実験24時間前に、各細胞を10cm培養ディッシュにそれぞれ6×10個ずつ播種し、培養した。その後77Br−BTdU入りの培地に交換し、37℃で一定時間インキュベートした。その後、酸可溶性画分(ASF)、RNA画分、DNA画分、タンパクおよび脂質画分をそれぞれ採取し、ガンマカウンターを用いて放射能を計測し、タンパク定量で取り込み量の補正を行った。
L−Mでは、77Br−BTdU添加後120分以降の時間帯で、90%以上がDNA画分に存在していることを確認した(図2)。一方、L−M TK(−)ではDNA画分への取り込みが少ないことが確認できた。
以上の結果から、77Br−BTdUはTKを介してDNAに組み込まれていることが示唆された。
実験例3:正常マウスにおける取り込み
ddy系雄性マウス(6週齢)に77Br−BTdUを尾静脈より投与し、一定時間後、解剖し各臓器を摘出した。その後、各臓器の重量測定し、ガンマカウンターを用いて放射能を計測した。取り込み量の比較には%ID/gを用いた。
脾臓や小腸などの細胞増殖が活発である臓器での77Br−BTdUの取り込みが多いことが確認できた。逆に脳、肝臓、筋肉などの細胞増殖が活発でない臓器での取り込みは少ないことが確認できた(図3)。これらの結果から、77Br−BTdUは、細胞増殖の活発な臓器への取り込みが多いことが示された。
実験例4:腫瘍移植モデルマウスにおける取り込み
BALB/C nu/nuマウス(6週齢)の右肩にL−M、左肩にL−M TK(−)をそれぞれ1×10個移植し10日間飼育した。その後、77Br−BTdUを尾静脈より投与し、一定時間後各臓器を取り出した。放射能の計測にはガンマカウンターを使用し、正常マウスの実験と同様に、%ID/gで取り込み量を比較した。
各臓器での取り込み量は正常マウスでの取り込み量と大きな変化はなかったが、腫瘍における取り込み量が、24時間後において他臓器と比較して最も多いことが確認できた。L−Mの取り込み量は、L−M TK(−)の取り込み量の2倍〜5倍であった(図4A)。また腫瘍周辺の筋肉と腫瘍とを比較すると、L−Mにおいて10倍〜20倍取り込み量が多いということが確認できた(図4B)。これらの結果から、77Br−BTdUは、腫瘍への取り込みが多いことが示された。
実験例5:内照射治療効果の検討
LL/2を24穴培養プレートに1×10個/wellで播種し、治療群では、様々な放射線量(77Br−BTdU量)の77Br−BTdU入りの培地で24〜48時間培養し、非放射性の培地で更に24時間培養した。コントロール群に関しては、全て非放射性の培地で培養した。培養後、トリパンブルー染色液を用いて死滅した細胞を染色し、細胞数の計測を行って77Br−BTdUの治療効果を検討した。
その結果、治療群において細胞増殖を有意に抑制できていることが確認できた。また治療群における細胞数は、放射能量依存的に減少した(図5)。さらに、治療群の細胞を観察すると巨大化しており形態に変化がおきていることを認めた。
実験例6:内照射治療効果のメカニズム
LL/2細胞を96穴培養プレートに1×10個/wellで播腫し、24時間培養した。各濃度の77Br−BTdU入り培地に入れ替え48時間培養した(コントロールは放射能の入っていない通常の培地で培養した)。
ApoTox−GloTM Triplex Assay(Promega社製)のViability/Cytotoxicity試薬を20μlずつ加え、オービタルシェイカーを用いて混合(300−500rpm、30秒)し、さらに37℃で30分間インキュベートした。次いで、SpectraMax M5(Molecular Device社製)を用いて蛍光を測定した(400Ex/505Em(細胞生存性);485Ex/520Em(細胞毒性))。
また、ApoTox−GloTM Triplex Assay(Promega社製)のCaspase−Glo 3/7試薬を100μlずつ加え、オービタルシェイカーを用いて混合(300−500rpm、30秒)し、さらに室温で30分間インキュベートした。次いで、SpectraMax M5を用いて発光を測定した。細胞生存性の結果を図6A、細胞毒性の結果を図6B、アポトーシスの結果を図6Cに示す。
その結果、77Br−BTdUの放射能量増加とともに細胞生存性が減少し、細胞毒性とアポトーシスの増加が認められた。これにより77Br−BTdUはアポトーシスを誘発していることが確認できた。また、いずれのアッセイでも1850Bq/well以降で有意差がみられた。
本発明の細胞増殖抑制剤、あるいはアポトーシス誘導剤は、周辺の正常細胞に影響を与えることなく、増殖速度の速い異常細胞に対して選択的かつ効果的に作用する。したがって本発明によって、新たな細胞増殖抑制剤、あるいはアポトーシス誘導剤が提供される。
またこれらの剤は、細胞増殖性の疾患に対する治療薬としても用いることが可能である。
また本発明により、細胞増殖性の疾患に対する新規かつ極めて有用な内照射治療薬が提供される。これまでの内照射治療では、半減期60日という長い半減期の125Iが主流であり、副作用が判明した際の対処が著しく遅れるといった問題点が考えられる。しかしながら本発明の内照射治療薬は、半減期57時間の77Brを利用しているので、仮に副作用が発生しても、次の薬剤投与を行わないという選択が可能となり、臨床的に有利である。このことによって、手術による摘出の難しい癌への新しい治療戦略を提供できると考えられる。
あるいは本発明により、腫瘍のDNA合成能を評価することが可能となる。DNA合成能を直接評価可能となれば、18F−FLTでは正確な評価が出来なかった、抗癌剤あるいは放射線治療時の、DNA合成は抑制されるがチミジンキナーゼ1の活性は維持されるような増殖能の評価が難しい状態であっても、腫瘍の評価が可能となる。このことは、腫瘍増殖能の正確な評価が可能であることを示しており、抗癌剤治療が分子標的薬に移行していることを鑑みると、本発明は癌の治療方法を正しく選択することに大きく貢献すると考えられる。
さらに本発明の治療薬は、治療薬自体が放射性臭素で標識されているので、それ自体を核種とした画像診断を行うことも可能である。

Claims (3)

  1. 放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンまたは式(I)で表される化合物を含んでなる、アポトーシス誘導剤であって、放射性臭素が、 77 Brであるアポトーシス誘導剤:


    (式中、R は水素又はC 1−6 アルキル基を示し、R およびR は、それぞれ独立して水素、ヒドロキシルまたはハロゲン置換基、 Brは 77 Brを示す)
  2. 放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンまたは式(I)で表される化合物、ならびに医薬的に許容し得る担体を含んでなる、細胞増殖性疾患の内照射治療薬であって、放射性臭素が、 77 Brである内照射治療薬:

    (式中、R は水素又はC 1−6 アルキル基を示し、R およびR は、それぞれ独立して水素、ヒドロキシルまたはハロゲン置換基、 Brは 77 Brを示す)
  3. 細胞増殖性疾患が、癌である、請求項に記載の治療薬。
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