JP5794521B2 - アポトーシス誘導剤 - Google Patents
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Description
本発明者らは、Br−BTdUのBrを放射性臭素とした化合物およびその誘導体が、癌細胞の細胞増殖を抑制するばかりか、アポトーシスをも誘発することを明らかにした。本発明者らはさらに鋭意研究を行い、本発明を完成した。
[1]放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンまたはその誘導体を含んでなる、アポトーシス誘導剤;
[2]放射性臭素が、77Brである、[1]に記載の剤;
[3]放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンまたはその誘導体、ならびに医薬的に許容し得る担体を含んでなる、細胞増殖性疾患の内照射治療薬;
[4]細胞増殖性疾患が、癌である、[3]に記載の治療薬;
[5]放射性臭素が、77Brである、[3]または[4]に記載の治療薬;
などに関する。
BrdUにおける5位の臭素を放射性臭素で置換した場合、生体内において、グリコシド結合の開裂、それに続く脱臭素反応を受けて放射性臭素が脱離することが知られている。しかしながら本発明の化合物は、フラノース環の4’−oxoを4’−sulfurに置換したことで生体内脱臭素反応に抵抗性を示すので、薬剤の成分として用いることが可能である。
修飾に用いられる置換基としては、当該誘導体が放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンが有する機能を保持する限りにおいて特に限定されず、有機化学分野における公知の置換基を用いることができる。
化合物(I)は、本発明の誘導体の好ましい一例を具体的に表したものであり、後述する本発明の化合物と同様の機能を有する。
好ましい化合物(I)としては、R1が水素またはアルキル基を示し、R2が水素、ヒドロキシルまたはハロゲン置換基を示し、R3が水素を示す化合物である。より好ましい化合物(I)としては、R1が水素を示し、R2が水素またはヒドロキシル基を示し、R3が水素を示す化合物である。さらに好ましい化合物としては、R1が水素を示し、R2がヒドロキシル基を示し、R3が水素を示す化合物である。
本発明の化合物における放射性臭素として好ましくは、75Br、76Br、77Br、80Br、82Brであり、より好ましくは77Brである。
77Brはオージェ電子を放出する核種であって、半減期が57時間と短く、安定な化学結合を形成しうる同位体である。また77Brはβ+線を放出するため、体内に入った本発明の化合物分布を、PETを用いることによっても確認できる可能性がある。ところで、内照射治療法の研究が進められているオージェ電子放出核種には、125Iなどの同じ放射性ハロゲン元素も挙げられる。しかしながら、125Iは半減期が60日と長く、副作用が発生したときの対処が困難であることが考えられる。したがって、放射性臭素を選択した、中でも77Brを選択した本発明の化合物は、内放射治療において非常に有用である。
本明細書中、「医薬的に許容し得る塩」とは、医薬上許容できる無毒の塩基または酸から調製される塩を意味する。そのような塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、または硝酸塩のような無機酸の塩、あるいは、有機スルホン酸塩若しくは有機カルボン酸塩のような有機酸の塩が挙げられる。上記有機スルホン酸塩としては、例えば、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等が挙げられ、有機カルボン酸塩としては、酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、アスコルビン酸塩、マンデル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、及びクエン酸塩等が挙げられる。
本明細書中、「プロドラッグ」とは、生体内において(例えばpHの変化による)自発的な化学変化によりまたは生体内に通常存在する酵素によって、あるいは生体内に導入ないし操作された酵素によって活性体となる、医薬的に不活性の化合物を意味する。当該技術分野において様々な形のプロドラッグ、例えば、生体内加水分解性エステルまたはエーテル等が知られている。このようなプロドラッグは、試験中の化合物を、例えば試験動物に静脈内投与した後、試験動物の体液を調べることによって同定することができる。
生体内加水分解性エステルとしては無機酸エステルおよび有機酸エステルが挙げられ、無機酸エステルとしては、リン酸エステル等が挙げられ、有機酸エステルには、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、カルバミン酸エステル等が挙げられる。エーテルとしては、アセトキシメチルエーテル、及びピバロイルオキシメシルエーテル等のアシルオキシアルキルエーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。
当該母体化合物は、当業者であれば自体公知の方法やそれに準じた方法で製造することができるし、市販品が存在すればそれを利用してもよい。このような方法としては、特許第4210118号公報に記載の方法や、以下の合成スキーム
本工程は、本発明の誘導体を得る目的にも適用することが可能である。またその場合の反応条件は、当業者であれば適宜設定することが可能である。
本発明の化合物またはその誘導体は、増殖速度の速い異常細胞により取り込まれやすく、周囲の正常細胞(相対的に増殖速度が遅い細胞)には相対的に取り込まれにくいという性質を有する。したがって、対象とする異常細胞特異的に、細胞増殖を抑制することが可能である。あるいは前述のとおり、オージェ電子を放出する77Brを放射性臭素として適用することによって、内照射効果により効果的に細胞増殖抑制機能を発揮することが可能である。
本発明の化合物またはその誘導体は、増殖速度の速い異常細胞により取り込まれやすく、周囲の正常細胞(相対的に増殖速度が遅い細胞)には相対的に取り込まれにくいという性質を有する。したがって、対象とする異常細胞特異的に、その細胞のアポトーシスを誘導する機能を有する。あるいは前述のとおり、オージェ電子を放出する77Brを放射性臭素として適用することによって、内照射効果により選択的かつ効果的にアポトーシスを誘導することができる。
また、本明細書における「細胞増殖抑制」とは、生体における細胞、生体由来の細胞および株化された細胞など、あらゆる細胞の細胞分裂による増殖を抑制することをいう。
例えば賦形剤を添加する場合は、従来公知の賦形剤から適宜選択することができ、スクロース、トレハロース、ラフィノース、マンニトール、デキストラン等の糖、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、セリン、プロリン等のアミノ酸が例示される。さらに、界面活性剤や機能性物質(例、タンパク質、核酸など)を添加してもよい。
このような剤は、当業者であれば適宜選択することが可能である。
本発明の剤における本発明の化合物またはその誘導体の量は特に限定されず、用途に応じて、例えば0.01〜100重量%の間で、適宜選択すればよい。
本発明の治療薬に含まれる「放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジン」および「その誘導体」については、前記したとおりである。
本発明の治療薬は、治療を必要としている対象に単剤として、あるいは他の抗癌剤と組み合わせて、上記各種癌の治療の一部として使用し得る。
医薬的に許容し得る担体の具体的な例としては、例えば、ラクトース、グルコース、ショ糖などの糖;コーンスターチ、ジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、セルロース酢酸塩などのセルロース;トラガカント;麦芽;ゼラチン;滑石;カカオバター、坐薬ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール類;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール類;オレイン酸エチル、ラウリン酸エチルなどのエステル類;寒天;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの緩衝化剤;アルギン酸;生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;ポリエステル、ポリカーボネートなどのポリ無水物類、などが挙げられるが、特に限定されない。当業者であれば、適宜これらの担体を選択することが可能である。
あるいは、本発明の化合物またはその誘導体の有効量を、その剤型に適した賦形剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤等の医薬用添加剤を必要に応じて混合し、医薬製剤とすることもできる。例えば注射剤として製剤化する場合には、適当な担体とともに滅菌処理を行って製剤とすればよい。
本明細書中、「内照射療法」または「内照射治療」とは、生体内に投与した放射性物質が発する放射線によって疾患を治療することをいう。特に本発明の化合物またはその誘導体は、増殖速度の速い異常細胞、例えば癌細胞特異的に取り込まれるため、癌細胞の内照射治療に有用である。
なかでも本発明の化合物またはその誘導体が、放射性臭素として77Brを有する場合、放出されたオージェ電子によって異常細胞(例えば、癌細胞)の細胞増殖は速やかに抑制され、かつ異常細胞のアポトーシスが誘導されるので、特に細胞増殖性の疾患に対する内照射治療に有用である。
また、併せて36Clや131Iのようなβ線放出核種も採用することができる。これらの核種は、その飛程に応じて直径1cm以上の大きな腫瘍に対して縮小効果が期待される。
また、併せて211Atのようなα線放出核種も採用することができる。これらの核種は直径0.1mm以内の微小な病変に対してβ線放出核種よりも大きな治療効果が得られることから、これらの核種を併用することによって全身の微小転移巣への治療効果も期待される。
本発明の治療薬は、通常は静脈内に投与するが、場合により動脈内や腹腔内または直接腫瘍等の患部内に投与するなど、静脈内以外の投与経路を選択してもよい。さらに上記投与量を適切な投与間隔で複数回投与することも可能である。
本発明の化合物または誘導体は、細胞のDNAに取り込まれるため、核種から放出される放射線を測定することで、細胞、特に腫瘍細胞のDNA合成能を直接的に評価することが可能となる。これにより、18F−FLTでは正確な評価が出来なかった、抗癌剤あるいは放射線治療時の、DNA合成は抑制されるがチミジンキナーゼ1の活性は維持されるような増殖能の評価が難しい状態であっても、腫瘍の評価が可能となる。
(1)工程1および2
2−デオキシ−D−エリスロ−ペントース 50mg(373mmol)、乾燥メタノール800mlおよび0.5M HCl/メタノール(1.8%)56ml(28mmol)を仕込み、室温で60分乾燥させた後、炭酸銀10gを少しずつ投入した。濾過した後炭酸銀を除き、減圧濃縮した。さらに乾燥THF100mlを加え、減圧濃縮した。窒素気流下、反応物を乾燥THF420mlに溶解して氷上で冷却し、テトラt−ブチルアンモニウムヨウ素30g(81mmol)を加え、更に60%水酸化ナトリウム水溶液40g(1M)を少しずつ加え、スラリーを得た。15℃でベンジルブロミド140g(820mmol)をゆっくり滴下し、室温で2〜3日反応させた後、減圧濃縮した。さらにジクロロメタンを加え、ジクロロメタン溶液を氷水に加え、攪拌し、分層し、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル、4:1)にて精製して、目的物(メチル 3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−α,β−D−エリスロ−ペントサイド)118gを得た。
(1)で得られたメチル 3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−α,β−D−エリスロ−ペントサイド118g(0.36mol)およびトルエンチオール224g(1.81mol)の混合液に、濃塩酸を少しずつ加えた。40℃で終夜反応後、クロロホルムおよび水を加え、さらに炭酸ソーダを少しずつ加えた。分層し、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル、4:1)にて精製して、目的物(3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−D−エリスロ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール)を得た。本工程を数回繰り返した。
(2)で得られた3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−D−エリスロ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール165g(0.303mol)を乾燥THF2.2Lに溶解し、トリフェニルホスフィン119g(0.455mol)、安息香酸55.5g(0.455mol)を加え、反応液を攪拌しながら、ジエチルアゾジカルボキシレート79.3g(0.455mol)を含む2.2mol/Lトルエン溶液207mL/乾燥THF390mL溶液を2時間かけて滴下した。終夜室温で反応させた後、減圧濃縮した。室温で2日間静置した後、析出物を濾取し、濾液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル、85:15)にて分離した。目的物を含むフラクションをヘキサン−酢酸エチル(10:1)液でリスラリーして、目的物(4−O−ベンゾイル−3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−L−スレオ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール)を得た。
(3)で得られた4−O−ベンゾイル−3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−L−スレオ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール80g(123mmol)をジクロロメタン450mLに溶解し、氷で冷却しながらソジウムメチラート10g(185mmol)のメタノール溶液(180mL)を少しずつ加えた。さらに室温で2時間攪拌した。反応液を1.2Lの5%リン酸二水素ナトリウム水溶液に加えて分層させ、ジクロロメタンで抽出し、5%炭酸ソーダで洗浄し、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。これをカラムでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル、4:1)にて精製して、目的物(3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−L−スレオ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール)を得た。
(4)で得られた3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−L−スレオ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール69g(126mmol)をピリジン690mLに溶解し、氷/食塩水で冷却した後、これをメタンスルホニルクロリド21.8g(190mmol)のピリジン溶液(200mL)に40分かけて滴下した。次いで室温で終夜攪拌し、減圧濃縮した。さらに反応液をジクロロメタン600mL/2規定HCl 600mLで分配し、水洗し、重曹水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。少量の酢酸エチルで流動化し、ヘキサンを滴下して結晶化して目的物(3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−4−O−メタンスルホニル−L−スレオ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール)を得た。
2Lフラスコに(5)で得られた3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−4−O−メタンスルホニル−L−スレオ−ペントース ジベンジル ジチオアセタール28g(61mmol)、ヨウ化ナトリウム 97g、炭酸バリウム 194gおよび乾燥DMF 1Lを加えて、100℃で3時間反応させた。放冷した後ろ過し、濾液を減圧濃縮した。これに酢酸エチル2Lおよび水1Lを加えて攪拌し、分層し、有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。さらにこれをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル、9:1)にて精製して、目的物(3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1,4−ジチオ−α,β−D−エリスロ−ペントフラノサイド)を得た。
5−ブロモウラシル6.6g(35mmol)/乾燥アセトニトリルのスラリーに、N,O−ビストリメチルシリルアセトアミド15mL(68mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。さらに窒素気流下において、モレキュラーシーブ4A 15gを加えた。続いて(6)で得た3,5−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−1,4−ジチオ−α,β−D−エリスロ−ペントフラノサイド15g(34.4mmol)の乾燥アセトニトリル溶液(オレンジ色スラリー)100mLを加え、さらにN−ヨードスクシンイミド7.7gの乾燥アセトニトリル溶液100mLを加えて溶液が黒くなることを確認した。室温で終夜攪拌した後、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液を100mL加えて過剰のヨウ素を脱色した。反応液をろ過し、濾液を減圧濃縮し、残渣をジクロロメタンに溶解し、重曹水で洗浄した。さらにこれを水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル、酢酸エチル濃度0〜50%のグラジエント溶出)にて精製して、3’,5’−ジ−O−ベンジル−5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンのβ体を得た。
(7)で得られた3’,5’−ジ−O−ベンジル−5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジン8.9g(17.7mmol)を乾燥トルエン65mLに溶解し、これに四塩化チタン5.62mLと乾燥トルエン23mLを20分かけて滴下した。反応液を90分間室温で攪拌した後、冷却し、メチルエチルケトン62mLを滴下した。反応液に、クエン酸水溶液を滴下し、不溶物を濾過し、メチルエチルケトンで洗浄した。さらに濾液を分層し、水層に28%アンモニア水25mLを加えて中和し、メチルエチルケトンで抽出した。抽出物をメタノールで洗浄して、目的物(5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジン)を得た。これを以下の実施例および実験例における非放射性BTdUとして用いた。
窒素気流下、(8)で得られた5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジン0.8g(2.48mmol)を1,4−ジオキサン(80mL)に60℃で溶解し、放冷した後、ビス(トリブチルチン)2.8mL、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.32gを加えて、95℃で終夜還流させた。ジオキサンを減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール、6:1)で分離して目的物(5−トリブチルスズ−4’−チオ−2’−デオキシウリジン)を得た。
77Brは、高エネルギー医学研究センターの医療用小型サイクロトロンを用いて63Cu2 77Seディスクターゲットにプロトンを照射し、77Se(p,n)77Br反応を行うことで製造した。そして、該ディスクターゲットをArガス(30ml/min)気流下、1070℃で90分間加熱し、冷却後、超純水を用いて77Brの抽出を行った。
次に77Br水を、バイアル中、窒素雰囲気下、120℃で加熱して水を蒸発させ、ここに合成例1で得られた5−トリブチルスズ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンのメタノール溶液(4mg/ml、25μl)およびクロラミンTの酢酸溶液(4mg/ml、20μl)を加え、酢酸でpHを4.5に調整し、70℃で1時間反応させた。反応液に飽和Na2S2O3水溶液(10μl)を加えて反応を停止し、さらに水200μlを加えた。77Br−BTdUが合成されたことは、HPLC(T−Flow:1,P−Max:200,UV:254,Oven:40℃,カラム:Cosmosil 5C18−ARII 4.6×150,移動相−アセトニトリル(トリフルオロ酢酸0.1%):水(トリフルオロ酢酸0.1%)=1:9)、TLC(溶媒−クロロホルム:メタノール=8:2、酢酸エチル)で確認し、その結果を合成例1で得られた非放射性BTdUの結果と比較・検討することで評価した。
マウス肺癌細胞であるLL/2細胞株、マウス線維芽細胞であるL−M細胞株、L−Mのチミジンキナーゼ(TK)が欠損しているL−M TK(−)細胞株を使用した。細胞の増殖速度はLL/2が最も速く、L−MとL−M TK(−)はLL/2よりも遅かった。実験の24時間前に、各細胞を24穴培養プレートに2×105個播種し、培地を交換後30分間37℃でインキュベートした。その後77Br−BTdUまたは77Br入りの培地に交換し、一定時間インキュベートした後、PBSを用いて洗浄し、0.1N水酸化ナトリウムにて細胞を溶解した。ガンマカウンターを用いて溶解した細胞の放射能を計測した後、タンパク定量を行って細胞への取り込み量を補正した。
その結果、LL−2への取り込み量が最も多く、次にL−Mへの取り込み量が多く、L−M TK(−)においてはほとんど取り込みがないことが確認できた(図1A)。また77Br単独では細胞への取り込みは認められなかった(図1B)。したがって、細胞への取り込みは77Br−BTdUの機能であり、77Br−BTdUは細胞の増殖速度に応じて細胞内に取り込まれることが示唆された。さらに、その取り込みにはTKが必要であることも示唆された。
L−MとL−M TK(−)を用いて、77Br−BTdUが細胞内でどのように分布しているかの比較を行った。実験24時間前に、各細胞を10cm培養ディッシュにそれぞれ6×106個ずつ播種し、培養した。その後77Br−BTdU入りの培地に交換し、37℃で一定時間インキュベートした。その後、酸可溶性画分(ASF)、RNA画分、DNA画分、タンパクおよび脂質画分をそれぞれ採取し、ガンマカウンターを用いて放射能を計測し、タンパク定量で取り込み量の補正を行った。
L−Mでは、77Br−BTdU添加後120分以降の時間帯で、90%以上がDNA画分に存在していることを確認した(図2)。一方、L−M TK(−)ではDNA画分への取り込みが少ないことが確認できた。
以上の結果から、77Br−BTdUはTKを介してDNAに組み込まれていることが示唆された。
ddy系雄性マウス(6週齢)に77Br−BTdUを尾静脈より投与し、一定時間後、解剖し各臓器を摘出した。その後、各臓器の重量測定し、ガンマカウンターを用いて放射能を計測した。取り込み量の比較には%ID/gを用いた。
脾臓や小腸などの細胞増殖が活発である臓器での77Br−BTdUの取り込みが多いことが確認できた。逆に脳、肝臓、筋肉などの細胞増殖が活発でない臓器での取り込みは少ないことが確認できた(図3)。これらの結果から、77Br−BTdUは、細胞増殖の活発な臓器への取り込みが多いことが示された。
BALB/C nu/nuマウス(6週齢)の右肩にL−M、左肩にL−M TK(−)をそれぞれ1×106個移植し10日間飼育した。その後、77Br−BTdUを尾静脈より投与し、一定時間後各臓器を取り出した。放射能の計測にはガンマカウンターを使用し、正常マウスの実験と同様に、%ID/gで取り込み量を比較した。
各臓器での取り込み量は正常マウスでの取り込み量と大きな変化はなかったが、腫瘍における取り込み量が、24時間後において他臓器と比較して最も多いことが確認できた。L−Mの取り込み量は、L−M TK(−)の取り込み量の2倍〜5倍であった(図4A)。また腫瘍周辺の筋肉と腫瘍とを比較すると、L−Mにおいて10倍〜20倍取り込み量が多いということが確認できた(図4B)。これらの結果から、77Br−BTdUは、腫瘍への取り込みが多いことが示された。
LL/2を24穴培養プレートに1×104個/wellで播種し、治療群では、様々な放射線量(77Br−BTdU量)の77Br−BTdU入りの培地で24〜48時間培養し、非放射性の培地で更に24時間培養した。コントロール群に関しては、全て非放射性の培地で培養した。培養後、トリパンブルー染色液を用いて死滅した細胞を染色し、細胞数の計測を行って77Br−BTdUの治療効果を検討した。
その結果、治療群において細胞増殖を有意に抑制できていることが確認できた。また治療群における細胞数は、放射能量依存的に減少した(図5)。さらに、治療群の細胞を観察すると巨大化しており形態に変化がおきていることを認めた。
LL/2細胞を96穴培養プレートに1×104個/wellで播腫し、24時間培養した。各濃度の77Br−BTdU入り培地に入れ替え48時間培養した(コントロールは放射能の入っていない通常の培地で培養した)。
ApoTox−GloTM Triplex Assay(Promega社製)のViability/Cytotoxicity試薬を20μlずつ加え、オービタルシェイカーを用いて混合(300−500rpm、30秒)し、さらに37℃で30分間インキュベートした。次いで、SpectraMax M5(Molecular Device社製)を用いて蛍光を測定した(400Ex/505Em(細胞生存性);485Ex/520Em(細胞毒性))。
また、ApoTox−GloTM Triplex Assay(Promega社製)のCaspase−Glo 3/7試薬を100μlずつ加え、オービタルシェイカーを用いて混合(300−500rpm、30秒)し、さらに室温で30分間インキュベートした。次いで、SpectraMax M5を用いて発光を測定した。細胞生存性の結果を図6A、細胞毒性の結果を図6B、アポトーシスの結果を図6Cに示す。
その結果、77Br−BTdUの放射能量増加とともに細胞生存性が減少し、細胞毒性とアポトーシスの増加が認められた。これにより77Br−BTdUはアポトーシスを誘発していることが確認できた。また、いずれのアッセイでも1850Bq/well以降で有意差がみられた。
またこれらの剤は、細胞増殖性の疾患に対する治療薬としても用いることが可能である。
Claims (3)
- 放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンまたは式(I)で表される化合物を含んでなる、アポトーシス誘導剤であって、放射性臭素が、 77 Brであるアポトーシス誘導剤:
(式中、R 1 は水素又はC 1−6 アルキル基を示し、R 2 およびR 3 は、それぞれ独立して水素、ヒドロキシルまたはハロゲン置換基、 * Brは 77 Brを示す)。 - 放射性臭素標識5−ブロモ−4’−チオ−2’−デオキシウリジンまたは式(I)で表される化合物、ならびに医薬的に許容し得る担体を含んでなる、細胞増殖性疾患の内照射治療薬であって、放射性臭素が、 77 Brである内照射治療薬:
(式中、R 1 は水素又はC 1−6 アルキル基を示し、R 2 およびR 3 は、それぞれ独立して水素、ヒドロキシルまたはハロゲン置換基、 * Brは 77 Brを示す)。 - 細胞増殖性疾患が、癌である、請求項2に記載の治療薬。
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