JP2009132691A - 放射性標識薬剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属(例えばテクネチウムやレニウム)と多配位の錯体を形成する配位子と該金属の放射性核種とから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した放射性標識薬剤;診断用または治療用の該放射性標識薬剤;前記放射性標識薬剤の調製用配位子;前記配位子を含む薬剤と金属放射性核種を含む薬剤とを、別々の包装単位として含んでなるキット;および、前記放射性標識薬剤を使用することを特徴とする、放射性標識薬剤の標的部位への集積を増加させる方法。
【選択図】なし
Description
(1)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子と該金属の放射性核種とから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した放射性標識薬剤。
(2)診断用または治療用放射性標識薬剤である前記放射性標識薬剤。
(3)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって5価のテクネチウム(Tc)と2配位または3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートと99mTcとから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した診断用99mTc標識薬剤。
(4)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である前記診断用99mTc標識薬剤。
(5)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって5価のレニウム(Re)と2配位または3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートと186Reまたは188Reとから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した治療用186Reまたは188Re標識薬剤。
(6)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である前記治療用186Reまたは188Re標識薬剤。
(7)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子であることを特徴とする、標的部位への集積性が増加した診断用または治療用放射性標識薬剤の調製用配位子。
(8)金属放射性核種が、99mテクネチウム、186レニウム、および188レニウムからなる群から選ばれるいずれか1の金属放射性核種である前記の放射性標識薬剤の調製用配位子。
(9)金属と多配位の錯体を形成する配位子が、5価のテクネチウムまたはレニウムと2配位あるいは3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートである前記の放射性標識薬剤の調製用配位子。
(10)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である前記の放射性標識薬剤の調製用配位子。
(11)前記いずれかの放射性標識薬剤の調製用配位子を含む薬剤と、該配位子と多配位の錯体を形成する金属放射性核種とを含む薬剤とを、別々の包装単位として含んでなるキット。
(12)下式(I):
(13)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子と該金属の放射性核種とから形成される錯体を含む放射性標識薬剤を使用することを特徴とする、放射性標識薬剤の標的部位への集積を増加させる方法。
(14)金属放射性核種が、99mテクネチウム、186レニウム、および188レニウムからなる群から選ばれるいずれか1の金属放射性核種である前記方法。
(15)金属と多配位の錯体を形成する配位子が、5価のテクネチウムまたはレニウムと2配位あるいは3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートである前記方法。
(16)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である前記方法。
1.一般的方法
過テクネチウム酸(99mTcO4−)は、富士フイルムRIファーマ株式会社製の99Mo/99mTcジェネレータを用いた。薄層クロマトグラフィー(TLC)には、シリカゲルプレート(Silica gel 60F254、メルク社製)を使用した。セルロースアセテート電気泳動(CAE)はべロナールバッファー(pH8.6)を用い、1mAで30分間泳動した。逆相HPLC(RP−HPLC)カラムはCosmosil 5C18−AR−300 カラム(4.6mm×150mm、ナカライテスク株式会社)を使用し、移動相A(0.01M リン酸緩衝液(pH6.0))、移動相B(MeOH)を0−18分 B=0−60%;18−21分 B=60−100%で直線勾配で変化させる方法(方法1)、または0−18分 B=0−60%、18−26分 B=60−100%、26−31分 B=100%で直線勾配で変化させる方法(方法2)で行った。分取用RP−HPLCカラムはCosmosil 5C18−AR−300 カラム(20mm×150mm、ナカライテスク株式会社)を使用し、流速5mL/minで0−5分 B=0%、5−45分 B=0−100%で直線勾配で変化させる方法で行った。1H−NMRはJEOL−ALPHA 400 スペクトロメーター(日本電子株式会社)を用いた。FAB−MSはJEOL JMS−HX−110 A マススペクトロメーター(日本電子株式会社)を用いて測定した。MALDI−TO−MSはKratos Axima CFR apparatu(島津製作所)を用いて測定した。Cyclo(Arg(Pbf)−Gly−Asp(OtBu)−D−Phe−Lys)の合成は以前報告された方法(Haubner R, Wester HJ, Reuning U, Senekowitsch-Schmidtke R, Diefenbach B, Kessler H, Stocklin G, and Schwaiger M. Radiolabeled alpha(v)beta3 integrin antagonists: a new class of tracers for tumor targeting. J Nucl Med 1999: 40: 1061-71)に従って合成した。その他の試薬はすべて特級のものをそのまま使用した。
配位子として用いるS−トリチル−AMPT−N−アセテート(S−Trt−AMPT−N−Ace)を合成した。以下に説明する。
2,2,5,5−tetrametyl−3,4−dithiahexame−1,6−dial(1)の合成:
乾燥CCl4(140mL)に溶解したイソブチルアルデヒド(183mL,2.0mol)溶液にS2Cl2(80mL,1.0mol)を50−55℃を維持したまま滴下した。反応時に発生したHClガスはN2ガスにより除去した。反応液を2時間攪拌後、10N NaOH(110mL)をゆっくりと滴下し、pHを10に調節した。ジエチルエーテル(100mL)を加え、有機層をブライン(brine)(100mL)により洗浄した後、MgSO4により乾燥させた。溶媒を留去後、残査を減圧蒸留(bp 113−114℃/6mmHg)により精製し、無色の油状物質を得た。その後冷却することにより結晶として化合物1を得た(105.7g,51.2%)。1H−NMR(CDCl3):δ 1.30(s,12H,CH3)、9.00(s,2H,CHO);FABMS:m/z 207[(M+H)+]。
2,2,5,5−tetramethyl−3,4−dithiahexane−1,6−dial bisoxime(2)の合成:
化合物1(4.12g,20mmol)とヒドロキシルアミン ヒドロクロライド(4.17g,60mmol)を乾燥エタノール(20mL)に溶解した。次いで、その溶液に15N NaOH(3.8mL,57mmol)を滴下した。3時間還流した後、水(100mL)を加えた。ジエチルエーテル(4×20mL)により抽出し、無水Na2SO4により乾燥させた。溶媒を留去した後、粗生成物を油状物質として得た。酢酸エチル−n−ヘキサンにより再結晶を行い、化合物2を無色の結晶として得た(2.48g,52.5%)。1H−NMR(CDCl3):δ 1.30(s,12H,CH3),7.30(s,2H,CH=NOH);FABMS:m/z 237[(M+H)+]。
1−amino−2−methyl−2−(S−trityl)−propanethiol(S−Trityl−AMPT,3)の合成:
テトラヒドロフラン(THF,12mL)に溶解したLiAlH4(482mg,12mmol)を、THF(8mL)に溶解した化合物2(945mg,4mmol)にゆっくりと滴下した。窒素気流下15時間激しく攪拌しながら還流し、次いで氷上で反応液を0℃に冷却した。酢酸エチル(3.2mL)を加えた後、6N HClを加えpH1.0に調整した。溶媒を留去した後、残査をトリフルオロ酢酸(TFA,11.4mL)に溶解し、次いでトリフェニルメタノール(2.1g,8mmol)を加えた。窒素気流下26時間攪拌後、TFAを窒素気流により留去した。残査をジクロロメタン(DCM,14mL)に溶解した後、3N NaOHにより溶液のpHを10−11に調整した。有機層を分取し、水(3×7mL)、次いで飽和NaHCO3(2×3mL)、ブライン(2×3mL)により洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥後、溶媒を留去した。残査を溶出溶媒DCM−MeOH(10:1)とするシリカゲルクロマトグラフィにより精製し、化合物3を薄い茶色の油状物質として得た(234mg,8.4%)。1H−NMR(CDCl3):δ 1.00(s,6H,CH3),1.53(s,2H,NH2),1.76(s,CH2),7.26−7.16(m,9H,aryl),7.60−7.63(d,6H,aryl);FABMS:m/z 348[(M+H)+]。
S−Trityl−AMPT−N−acetate(S−Trt−AMPT−N−Ace)の合成:
化合物3(188mg,0.51mmol)を乾燥DCM(2mL)に溶解し、5N NaOH(0.1mL)を加えた。反応液を窒素気流下1.5時間攪拌後、溶媒を留去した。残査を水に溶解し、6N HClによりpHを2.0に調整した。生じた沈殿をろ取し、0.08N HClにより洗浄し、S−Trt−AMPT−N−Aceを薄灰色結晶として得た(36.2mg,72%)。1H−NMR(CD3OD):1.20(s,6H,CH3),1.83(s,1H,NH),3.09(s,2H,NHCH2CO),3.25(s,2H,SC(CH3)2CH2NH),7.12−7.26(m,9H,aryl),7.56−7.60(d,5H,aryl);FABMS:m/z 406[(M+H)+]。
配位子として用いるD−Pen(Trt)−OtBu−N−hexanoate(9)を合成した。以下説明する。
N,N´−diisopropyl−O−tert−butylisourea(5)の合成:
乾燥したナス型フラスコにターシャリー−ブタノール(2.78g,37.5mmol)を入れ、窒素気流下30℃でジイソプロピルカルボジイミド(DIC,4.08g,32.3mmol)およびCuClを少量加えた。反応溶液を窒素気流下30℃で4日間攪拌した。ポリ(4−ビニルピリジン)(カチオン交換レジン,0.65g)とDCM(16.5mL)を加え、スラリー状になった溶液をさらに15分間攪拌した。固形物をろ去し、溶出液を留去後、粗結晶を無色透明のオイルとして得た(5.99g,最高92.6%)。この化合物は未精製のまま次の反応に用いた。FABMS:m/z 201[(M+H)+]。
Fmoc−D−penicillamine(Trt)−OtBu(6)の合成:
Fmoc−D−ペニシラミン(ターシャリー)−OH(500mg,0.815mmol)をDCM(15mL)に溶解し、化合物5(1.142g,5.703mmol)をゆっくりと加えた。窒素気流下、15時間攪拌後、沈殿物をろ去した。ろ液の溶媒を留去後、残査を溶出溶媒n−ヘキサン−ジエチルエーテル(2:1)とするシリカゲルクロマトグラフィにより精製し、化合物6を白色固体として得た(520.9mg,95.4%)。1H−NMR(CDCl3):δ 1.00(s,3H,CH3)、1.11(s,3H,CH3)、1.46(s,9H,tBu),1.54(brs,1H,NH)、3.62−3.69(d,1H,COCHNH)、4.21−4.43(m,3H,CH2CH−fluorenyl),7.13−7.45(m,19H,aryl),7.53−7.70(d,2H,aryl)、7.72−7.83(d,2H,aryl);FABMS:m/z 692[(M+Na)+]。
D−Penicillamine(Trt)−OtBu(7)の合成:
Fmoc−D−ペニシラミン(ターシャリー)−OtBu(500mg,0.746mmol)を乾燥DCM(40mL)に溶解し、次いで1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)(1.14mL,7.46 mmol)を加えた。室温で25時間攪拌した後、溶媒を留去した。残査を溶出溶媒n−ヘキサン−酢酸エチル(3:1→2:1)とするシリカゲルクロマトグラフィにより精製し、化合物7を無色の油状物質として得た(280.9mg,84.1%)。1H−NMR(CDCl3):δ 1.08(s,3H,CH3),1.14(s,3H,CH3),1.28(s,9H,tBu),7.10−7.26(m,9H,aryl),7.55−7.61(d,2H,aryl);FABMS:m/z 448[(M+H)+],895[(2M+H)+]。
Methyl 6−bromohexanoate(4)の合成:
メタノール(25mL)を−10℃に冷却し、撹拌しながらSOCl2(2.6mL,34mmol)をゆっくりと滴下した。滴下後10分間撹拌した後、6−ブロモヘキサン酸(4.89g,25mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチルに溶解した後、ブライン(3×30mL)で洗浄した。有機層を無水CaSO4で乾燥させた後、溶媒を留去し、化合物4を無色の油状物質として得た(5.13g,98%)。1H−NMR(CD3OD):δ 3.64(s,3H,OCH3),(t,2H,CH2ε),2.33(t,2H,CH2α),(m,2H,CH2δ),(m,2H,CH2β),(m,2H,CH2γ);FABMS:m/z 209[(M+H)+]。
D−Pen(Trt)−OtBu−N−hexanoate methyl ester(8)の合成:
活性した4Å モレキュラーシーブ(604.5mg)を乾燥DMF(6mL)に加え、次いで、LiOH・H2O(96.03mg,2.289mmol)を加えた。この懸濁液を10分間激しく撹拌した後、乾燥DMFに溶解した化合物7(476.5mg,1.06mmol)を加え、さらに30分間撹拌した。この懸濁液に化合物4(192.4μL,1.29mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。無機物をろ去した後、残渣を少量のDCMにより3回洗浄した。ろ液を水で洗浄し、無水Na2SO4により乾燥させた。溶媒を減圧留去した後残渣をn−ヘキサン−酢酸エチル(5:1から3:1まで)を展開溶媒とする中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製し化合物8を無色透明の油状物質として得た(152.4mg,24.8%)。1H NMR(CDCl3):δ 7.08−7.57(m,15H,Trt),3.58(s,3H,OMe),2.57(s,1H,COCHNH),2.36−2.43(m,1H,−NH−),2.22−2.26(t,2H,MeOCOCH2),1.331(s,9H,tBu),1.248−1.667(m,6H,CH2×3),0.94(s,3H,Me),0.892(s,3H,Me);FABMS:m/z 576[(M+H)+]。
D−Pen(Trt)−OtBu−N−hexanoate(9)の合成:
化合物8(326.7mg,0.567mmol)を乾燥エタノール(40mL)と2.5N NaOH(0.91mL,2.27mmol)の混液に溶解した。窒素気流下40℃で3時間反応させた後、DCM(15mL)を加えブライン(15×2mL)で洗浄した。有機層を抽出し、溶媒を減圧留去した。残渣をn−ヘキサン−酢酸エチル(1:1)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィにより粗精製し、粗精製物9を無色透明の油状物質として得た(282mg,88%)。1H NMR(CDCl3):δ 7.60−7.62(m,15H,Trt),2.52(s,1H,COCHNH)、2.28−2.31(m,3H,MeOCOCH2 and NH),1.38(s,9H,tBu),1.29−1.66(m,6H,CH2),1.16(s,3H,Me),1.02(s,3H,Me);FABMS:m/z 562[(M+H)+],584[
(M+Na)+]。
cRGDfKペプチドと結合させた配位子であるD−Pen(Trt)−OtBu−N−hexanoate−cRGDfKを、D−Pen(Trt)−OtBu−N−hexanoate(化合物9)を用いて製造した。以下に説明する。
D−Pen(Trt)−OtBu−N−hexanoate−cRGDfK peptide conjugateの合成:
乾燥DMF(20mL)に溶解した化合物9(237.6mg,0.423mmol)、化合物10(385.5mg,0.423mmol)およびヒドロキシベンゾリアゾール(HOBt,71.23mg,0.465mmol)に乾燥DMF(15mL)に溶解したWSC・HCl(89.19mg,0.465mmol)を氷上ゆっくりと加えた。室温で44時間撹拌した後、溶媒を留去した。残渣をDCM(60mL)に溶解した後5%クエン酸(20mL)、水(20mL)、5% NaHCO3(20mL)、水(20mL)で順次洗浄し、最後に5% クエン酸(20mL)で洗浄した。有機層を減圧流留去した後、残渣を氷零下(CH3Cl−Et2O)により再結晶を行い薄灰色の結晶として保護アミノ酸結合配位子を得た(545.4mg,88.6%)。FABMS:m/z 1459[(M+5H)5+]。
D−Pen−N−hexanoate−cRGDfK(11)の合成:
保護アミノ酸結合配位子(353.1mg,0.252mmol)にTFA、水およびトリエチルシランの混液(90:4.75:4.75,v/v/v,81mL)を加え、室温で3時間攪拌した。窒素ガスで溶媒を濃縮後、残渣を最少量の水に溶解し、次いで酢酸エチルを加えることで沈殿を生成させた。沈殿をろ取後、沈殿を水、酢酸エチルにより洗浄した。沈殿を分取用RP−HPLCにより精製することにより白色固体として化合物11(35mg,30%)を得た.MALDI−TOF MS:m/z 849[M],850[(M+H)+]。
cRGDfKペプチドと結合させた配位子であるD−Pen−N−acetate−c(RGDfK)と185/187レニウムとからなる2配位185/187レニウム錯体を製造した。以下に説明する。
過レニウム酸アンモニウム(3.38mg,12.6μmol)、化合物11(1mg,1.26μmol)および12.5mM NaHCO3(0.2mL,2.52μmol)を加え、密閉した。反応容器に窒素ガスを15分間通した後、0.25M 亜ジオン酸ナトリウム(0.1mL,12.6μmol)溶液を加え、4時間攪拌した。次いで、分析用RP−HPLC(方法2)により分析した。MALDI−TOF MS:m/z 1784[(M+2H)+]。
D−ペニシラミンおよび185/187レニウムとからなる2配位185/187レニウム錯体を製造した。以下に説明する。
Tetrabutyl ammonium[185/187ReOCl4](13)の製造:
Tetrabutyl ammonium[ReO4](1.1g,2.2mmol)をエタノール(20mL)に溶解し、氷冷下、反応溶液を塩化水素ガスで飽和した。室温で2時間撹拌した後、窒素気流により反応溶液の体積が半量になるまで濃縮した。続いて冷凍庫中で放置し、淡黄色の結晶を得た(0.5g,38%)。FABMS:m/z 242[M(TBA)],243[(M(TBA)+H)+],IR(KBr):2962,2874,1470,1380,1169,737cm−1。
[185/187Re]−(D−Pen)2(14)の製造:
エタノール(6mL)にTBA[ReOCl4](50mg,0.085mmol)を溶解し、撹拌下、エチレングリコール(0.43mL)を加えた。そこへ酢酸ナトリウムを反応溶液が濃紫色を呈するまで加えた。続いてD−Penのエタノール溶液(25.4mg(0.171mmol)/1.2mL)を1.2mL加え、室温で2時間撹拌した。1N NaOHで反応溶液のpHを9に調節し、溶媒を減圧留去した。少量のメタノールに溶解し、RP−HPLCで分析(方法1)および精製を行った。生成物量が微量であったため、収率は計算できなかった。1H−NMR(CD3OD):δ 1.212(s,3H,Me β),1.591(s,3H,Me β),1.738(s,3H,Me β),1.997(s,3H,Me β),3.041(s,1H,CH α),3.934(s,1H,CH α)。
α−D−グルコヘプトン酸(4.0mg,17.7μmol)およびSnCl2 2H2O 1.2μgからなる凍結乾燥GH−キットに99mTc溶液1.0mL(370MBq,20pmol)を加え、室温で20分間反応させることにより、99mTc−GHを得た。99mTc−GHの生成確認はTLC(アセトン,Rf値=0,生理食塩水,Rf値 1.0)により行った。
D−ペニシラミン(D−Pen,1.19mg,8μmol)を窒素置換した0.1M トリス塩酸バッファー(pH9.0)400μLに溶解した。続いて、この溶液を0.1M トリス塩酸バッファー(pH9.0)により順次希釈し、2mM、0.2mM、0.02mM、0.01mM、0.002mMの配位子溶液を調製した。各配位子濃度の溶液100μLに99mTc−GH溶液100μLを加え混和した後、室温で1時間反応させた。99mTc−(D−Pen)2の確認は、RP−HPLC(方法1)およびCAEにより行った。
S−Trt−AMPT−N−Ace(3.24mg,8μmol)にTFA 200μL(2.6mmol)を加え1分間攪拌した。この溶液にTES 10μL(74μmol)を加え、反応溶液が黄色から無色に変化した事を確認した後、窒素により溶媒を留去した。そこへ窒素置換した0.1M トリス塩酸バッファー(pH9.0)400μLを加えた。続いて、この溶液を0.1M トリス塩酸バッファー(pH9.0)により順次希釈し、2mM、0.2mM、0.02mM、0.01mM、0.002mMの配位子溶液を調製した。各配位子濃度の溶液100μLに99mTc−GH([GH]=4.0mg/mL)100μLを加え十分混和した後、室温で1時間反応させた。生成物の確認はRP−HPLC(方法1)およびCAEにより行った。
D−Pen−N−hexanoate−cRGDfK(化合物11,0.8mg,1μmol)を窒素置換した0.1M トリス塩酸バッファー(pH9.0)50.5μLに溶解した。続いて、この溶液を0.1 M トリス塩酸バッファー(pH9.0)により希釈し2mMの配位子溶液を調製した。配位子溶液100μLに99mTc−GH溶液100μLを加え十分混和した後、室温で1時間反応させた。化合物の生成の確認はRP−HPLC(方法2)により行った。
各99mTc標識化合物をRP−HPLC(方法1または方法2)により精製した後、溶媒を減圧留去した。残渣を0.01M リン酸緩衝液(pH6.0)400μLに再溶解させ、この溶液を室温で保存し、1、3、6、24時間後にその放射化学的純度をCAEまたはRP−HPLCで分析した。
未精製状態の99mTc−(D−Pen−N−hexanoate−cRGDfK)2(濃度)またはRP−HPLCにより精製した99mTc−(D−Pen−N−hexanoate−cRGDfK)2をそれぞれ100μL(約1μCi)ずつ6週齢ddY系雄性マウスに尾静脈投与し、1群3匹とし、投与後10分、1時間、3時間、6時間に屠殺し、採血、解剖し、各臓器の重量と放射活性を測定した。また、投与後6時間までに排泄された尿および糞の放射活性も測定した。
1.テクネチウム錯体生成における配位子濃度の影響
99mTc−(D−Pen)2は、D−Penの濃度が0.01mMまで放射化学的収率95%以上で得られたが、それ以下では、放射化学的収率の低下が認められた(図2)。一方,99mTc−(AMPT−N−acetate)2の場合では、AMPT−N−acetate濃度が0.01mMまでは放射化学的収率90%以上で得られ、それ以下で急激な放射化学的収率の低下が認められた(図2)。
99mTc−(D−Pen)2および99mTc−(AMPT−N−acetate)2の緩衝液中の安定性を検討したところ、99mTc−(D−Pen)2の方がより高い安定性を示した(図3)。
99mTc−(D−Pen−Hx−cRDGfK)2をマウスに投与したところ、精製したものおよび未精製のもののいずれも胃への集積は観察されなかった(図5−AおよびB、並びに図6−AおよびB)。生体内で99mTcが錯体から解離した場合、胃に集積することから、本錯体は生体内においても安定に存在したことを示す。以上の結果は、D−Penを配位子とし、これに標的分子認識素子を結合することにより、生体内で安定な2価の99mTc錯体が得られることを示す。これらの結果はまた、適切な配位子を選択することにより、生体内において十分に安定な多価99mTc標識薬剤が得られることを強く示唆する。
Claims (16)
- 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子と該金属の放射性核種とから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した放射性標識薬剤。
- 診断用または治療用放射性標識薬剤である請求項1に記載の放射性標識薬剤。
- 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって5価のテクネチウム(Tc)と2配位または3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートと99mTcとから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した診断用99mTc標識薬剤。
- 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である請求項3に記載の診断用99mTc標識薬剤。
- 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって5価のレニウム(Re)と2配位または3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートと186Reまたは188Reとから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した治療用186Reまたは188Re標識薬剤。
- 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である請求項5に記載の治療用186Reまたは188Re標識薬剤。
- 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子であることを特徴とする、標的部位への集積性が増加した診断用または治療用放射性標識薬剤の調製用配位子。
- 金属放射性核種が、99mテクネチウム、186レニウム、および188レニウムからなる群から選ばれるいずれか1の金属放射性核種である請求項7に記載の放射性標識薬剤の調製用配位子。
- 金属と多配位の錯体を形成する配位子が、5価のテクネチウムまたはレニウムと2配位あるいは3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートである請求項8に記載の放射性標識薬剤の調製用配位子。
- 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である請求項8または9に記載の放射性標識薬剤の調製用配位子。
- 請求項7から11のいずれか1項に記載の放射性標識薬剤の調製用配位子を含む薬剤と、該配位子と多配位の錯体を形成する金属放射性核種とを含む薬剤とを、別々の包装単位として含んでなるキット。
- 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子と該金属の放射性核種とから形成される錯体を含む放射性標識薬剤を使用することを特徴とする、放射性標識薬剤の標的部位への集積を増加させる方法。
- 金属放射性核種が、99mテクネチウム、186レニウム、および188レニウムからなる群から選ばれるいずれか1の金属放射性核種である請求項13に記載の方法。
- 金属と多配位の錯体を形成する配位子が、5価のテクネチウムまたはレニウムと2配位あるいは3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートである請求項14に記載の方法。
- 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である請求項14または15に記載の方法。
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