JP2009132691A - 放射性標識薬剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】標的に効率的に集積し、かつ、生体内での高い安定性を有する放射性標識薬剤、および該放射性標識薬剤を使用する診断および治療の提供。
【解決手段】標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属(例えばテクネチウムやレニウム)と多配位の錯体を形成する配位子と該金属の放射性核種とから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した放射性標識薬剤;診断用または治療用の該放射性標識薬剤;前記放射性標識薬剤の調製用配位子;前記配位子を含む薬剤と金属放射性核種を含む薬剤とを、別々の包装単位として含んでなるキット;および、前記放射性標識薬剤を使用することを特徴とする、放射性標識薬剤の標的部位への集積を増加させる方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、標的部位への集積性が高い放射性標識薬剤に関する。詳しくは、標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子と該金属の放射性核種とから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した放射性標識薬剤に関する。より詳しくは、標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であってテクネチウム(Tc)またはレニウム(Re)と多配位の錯体を形成する配位子と、99mテクネチウム、186レニウム、および188レニウムからなる群から選ばれるいずれか1の金属放射性核種とから形成される錯体を含む診断用または治療用放射性標識薬剤に関する。また本発明は、前記放射性標識薬剤の調製用配位子に関する。さらに本発明は、前記配位子を含む薬剤と金属放射性核種を含む薬剤とを、別々の包装単位として含んでなるキットに関する。また本発明は、前記放射性標識薬剤を使用することを特徴とする、放射性標識薬剤の標的部位への集積を増加させる方法に関する。
放射性標識薬剤は、放射性同位元素の核種により標識された化合物を含む薬剤であり、疾患の診断や治療、例えば腫瘍の診断や治療などに広く利用されている。放射性標識薬剤を特定の組織や細胞に集積させることにより、感度の高い診断や有効な治療を行うことができ、また、正常の組織や細胞への副作用を低減することができる。例えば、腫瘍細胞が臓器や組織に転移し、散在しているような場合でも、正常の組織や細胞に影響を与えることなく、有効な診断や治療が行える。放射性標識薬剤を用いた診断や治療においては、有用な核種の選択や、該薬剤を特定の組織や細胞に集積させるための薬剤設計が行われてきた。
テクネチウム−99m (99mTc)は画像診断に適した半減期(6時間)を有し、放射線の体外計測に適したエネルギー(140KeV)のγ線のみを放射する。また、モリブデン−99(99Mo)との放射平衡を利用したジェネレータシステム(99Mo/99mTcジェネレータ)で容易に入手できることから、現在、核医学画像診断に最も汎用されている放射性核種(RI)である。
99mTc製剤は、主として抗腫瘍抗体や低分子ペプチドなどの標的分子認識素子に99mTcと安定な錯体を形成する配位子を結合した化合物(配位子誘導体と称する)と99mTcとの錯形成反応により合成される。このような99mTc製剤として、例えば、4座配位子のNと5価のTcとが1:1のモル比で錯体を形成したものが知られている。
99mTc製剤は、短時間のうちに極微量の99mTc製剤を高い放射化学的収率で作製するため、反応溶液中には、99mTcに比べ大過剰の配位子誘導体が存在する。その結果、99mTc標識溶液中には、標的分子認識素子を有する極微量の99mTc標識薬剤の他に大過剰の配位子誘導体が存在し、標的分子との結合を99mTc標識薬剤と競合するため、99mTc標識薬剤の標的への集積を大きく損なう。
しかし、錯体未形成の配位子誘導体の除去を投与前に無菌的に行うのは容易ではなく、簡便な操作が可能な99mTcの特性を損うこととなる。低濃度においても高い収率で99mTc錯体を与える配位子の検討も進められているが、99mTcが極低濃度であることからその達成は困難とされている。
テクネチウムは適切な単座、2座あるいは3座配位子と生体内で安定な6配位、3配位、2配位の錯体を形成する(非特許文献1および2)。実際に、テクネチウムと1:2、1:3および1:6のモル比で錯体を形成する配位子も報告されている(非特許文献1、2および4)。しかし、認識素子を導入した場合でもこれらの配位子がTcと生体内で安定な錯体を生成するかは明らかでない。
レニウムは、テクネチウムと同じ第7族の遷移元素であり、テクネチウムと類似した化学的性質を有する。レニウムには、放射性同位体である186レニウム(186Re)および188レニウム(188Re)の存在が知られている。186Reおよび188Reはいずれも高エネルギーのβ線を放射し、その半減期はそれぞれ90.6時間および16.9時間である。高エネルギーのβ線は細胞殺傷性を示すため、186Re標識薬剤はがん疾患の治療薬として研究されてきた。例えば、186Re標識ヒドロキシエチリデン ジホスホン酸(186Re−HEDP)の転移性骨腫瘍疼痛緩和作用が報告されている。しかし、186Re−HEDPは生体内での安定性が低いため、血液クリアランスの遅延と胃への高い集積という問題を有する。
このように、疾患の診断や治療の分野において、特定の組織や細胞への高い集積性を有し、かつ、生体内での高い安定性を有する放射性標識薬剤の開発が求められている。
Wust F, Carlson KE, Katzenellenbogen JA, Spies H, and Johannsen B. Synthesis and binding affinities of new 17 alpha-substituted estradiol-rhenium "n + 1" mixed-ligand and thioether-carbonyl complexes. Steroids 1998: 63: 665-71 Jurisson SS, and Lydon JD. Potential technetium small molecule radiopharmaceuticals. Chem Rev 1999: 99: 2205-18 Mulder A, Huskens J, and Reinhoudt DN. Multivalency in supramolecular chemistry and nanofabrication. Org Biomol Chem 2004: 2: 3409-24 Arano Y. Recent advances in 99mTc radiopharmaceuticals. J Nucl Radiochem Sci 2005: 6: 177-181
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。すなわち、本発明は、標的に効率的に集積し、かつ、生体内での高い安定性を有する放射性標識薬剤を提供し、さらに該放射性標識薬剤を使用する診断および治療の提供を目的とする。
本発明者は、標的分子への結合部位を1箇所有する認識素子(1価の認識素子)を持つ配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子と該金属とにより形成される錯体は、配位子と同数の認識素子を有する多価錯体であるため、標的分子と強い結合力を獲得し、その結果、錯形成反応後、錯体未形成の配位子を含んだまま投与しても、末梢の標的分子への高い集積が達成されると考えた。そして、上記目的を達成すべく、鋭意研究を行った。配位子として、5価のテクネチウム(Tc)と配位子とが1:2の錯体(2配位の錯体)を形成するD−ペニシラミン(D−Penと略称することがある)、およびD−Penと配位基の配置が異なる1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテート(以下、AMPTと略称することがある)を用い、また、標的分子認識素子としてがんの新生血管に高発現が認められるインテグリンに親和性を有する環状ペンタペプチドc(RGDfK)を用いて、c(RGDfK)が結合した配位子を合成し、該配位子と99mTcとを反応させて標的分子認識素子を2箇所有する99mTc錯体(2価錯体)を調製した。そして、この99mTc錯体が、体内動態の検討結果から、生体内でも十分に安定であることを見出した。本99mTc錯体は、標的分子認識素子を2箇所有することから、標的分子認識素子を1箇所有する99mTc錯体と比較して、標的分子との結合力が強く、末梢の標的分子への集積量が高い。さらに本発明においては、上記99mTcの代わりにレニウム(Re)を使用しても、上記同様の錯体を形成し得ることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて達成したものである。
即ち、本発明は以下に関する。
(1)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子と該金属の放射性核種とから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した放射性標識薬剤。
(2)診断用または治療用放射性標識薬剤である前記放射性標識薬剤。
(3)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって5価のテクネチウム(Tc)と2配位または3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートと99mTcとから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した診断用99mTc標識薬剤。
(4)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である前記診断用99mTc標識薬剤。
(5)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって5価のレニウム(Re)と2配位または3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートと186Reまたは188Reとから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した治療用186Reまたは188Re標識薬剤。
(6)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である前記治療用186Reまたは188Re標識薬剤。
(7)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子であることを特徴とする、標的部位への集積性が増加した診断用または治療用放射性標識薬剤の調製用配位子。
(8)金属放射性核種が、99mテクネチウム、186レニウム、および188レニウムからなる群から選ばれるいずれか1の金属放射性核種である前記の放射性標識薬剤の調製用配位子。
(9)金属と多配位の錯体を形成する配位子が、5価のテクネチウムまたはレニウムと2配位あるいは3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートである前記の放射性標識薬剤の調製用配位子。
(10)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である前記の放射性標識薬剤の調製用配位子。
(11)前記いずれかの放射性標識薬剤の調製用配位子を含む薬剤と、該配位子と多配位の錯体を形成する金属放射性核種とを含む薬剤とを、別々の包装単位として含んでなるキット。
(12)下式(I):
Figure 2009132691
で示される化合物の製造方法であって、下式(II):
Figure 2009132691
で示される化合物を使用することを特徴とする製造方法。
(13)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子と該金属の放射性核種とから形成される錯体を含む放射性標識薬剤を使用することを特徴とする、放射性標識薬剤の標的部位への集積を増加させる方法。
(14)金属放射性核種が、99mテクネチウム、186レニウム、および188レニウムからなる群から選ばれるいずれか1の金属放射性核種である前記方法。
(15)金属と多配位の錯体を形成する配位子が、5価のテクネチウムまたはレニウムと2配位あるいは3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートである前記方法。
(16)標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である前記方法。
本発明によれば、標的部位に効率的に集積し、かつ、生体内において十分に安定な放射性標識薬剤を提供できる。本発明に係る放射性標識薬剤は、標的分子への結合部位を1箇所有する標的分子認識素子(1価の標的分子認識素子)を持つ配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子と該金属の放射性核種とにより形成される錯体を含み、この錯体は錯体を形成する配位子と同数の標的分子認識素子を有する多価錯体であるため、従来使用されていた1価の錯体と比較して、標的に高い集積性を示す。そのため、本発明に係る放射性標識薬剤を使用することにより、標的部位への放射性標識薬剤の集積を従来のものと比較して増加させることができ、その結果、錯体未形成の配位子を含んでいても、放射性標識薬剤を用いた画像診断や、がん疾患などの内部放射線治療において高い感度および効果を提供できる。具体的には例えば、標的部位に効率的に集積し、かつ、生体内において十分に安定な、99mTc標識薬剤、186Re標識薬剤および188Re標識薬剤を提供できる。本発明に係る99mTc標識薬剤は、放射性標識薬剤を用いた画像診断用の診断剤として有用であり、また、186Re標識薬剤および188Re標識薬剤はがんの内部放射線治療に有用である。
本発明は、標的分子認識素子と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子と該金属の放射性核種とから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した放射性標識薬剤に関する。
用語「錯体」とは、金属および金属類似元素の原子またはイオンを中心にして、配位子が配位した物質を意味する。配位とは、配位子が中心の金属と配位結合を形成して中心金属の周囲に配列することをいう。錯体は、配位子と金属との配位結合により形成される。配位結合とは、1本の結合にあずかる2個の原子価電子が、一方の原子のみから提供されている結合をいう。多配位とは、複数の配位子が中心の金属と配位結合を形成して中心金属の周囲に配列することをいう。n配位とは、n分子の配位子が中心の金属と配位結合を形成して中心金属の周囲に配列することをいう(金属が遷移金属である場合、nは一般的に2から9である)。錯体において、中心金属の周囲に集まって配位結合をつくる配位子の数を配位数という。
用語「配位子」とは、錯体中で中心金属に配位結合している他の原子(配位原子)を含む化合物を意味する。配位子には多数の種類があり、2つ以上の可能な配位原子を含む化合物を多座配位子、1つである場合を単座配位子、2つである場合を2座配位子、3つである場合を3座配位子のように称する。
用語「標的分子認識素子」とは、標的分子に結合する化合物、好ましくは特異的に結合する化合物を意味する。標的分子に特異的に結合するとは、標的分子には結合するが、標的分子以外の分子には結合しないか、弱く結合することをいう。標的分子認識素子として、例えば、タンパク質、ペプチド、抗体、および抗体断片などを挙げることができる。標的分子認識素子を配位子と結合させて金属と錯体を形成させることにより、該錯体を標的分子、すなわち標的部位に結合させることができる。したがって、標的分子認識素子を選択して用いることにより、所望の標的部位に錯体を集積させることができる。
本発明において、錯体を形成する金属は、遷移金属に属する金属であり、配位子と2配位以上の配位結合を形成する金属が使用される。金属原子の電荷は特に限定されず、例えば、1価、3価、または5価の電荷をもつ金属原子を挙げることができる。金属として、好ましくは金属放射性核種が使用される。金属放射性核種として具体的には、99mTc、186Re、および188Reを好ましく例示できる。金属放射性核種はこれら具体例に限定されず、放射標識薬剤を用いた診断や、がん疾患などの内部放射線治療などの目的に適当な放射線、放射線量、半減期を有する限りにおいていずれも使用することができる。診断および治療において正常の組織や細胞への影響を少なくするという観点から、短半減期金属放射性核種が好ましく使用される。
本発明において、錯体を形成する配位子は、遷移金属に属する金属と配位結合により多配位の錯体を形成し得る化合物が使用される。例えば、99mTcと配位結合により多配位の錯体を形成し得る化合物として、5価のTcと1:2の錯体を形成するD−ペニシラミン(D−Penと略称することがある)、1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテート(以下、AMPTと略称することがある)、ヒドロキサムアミド(これらは2価錯体を形成する)、3価のTcと1:3の錯体を形成するチウオウレア、ジメチルフォスフィノエタン、O−フェニレンビス(ジメチルアルシン)(これらは3価錯体を形成する配位子)、1価のTcと1:6の錯体を形成するイソニトリル(6価錯体を形成する)を挙げることができる。一方、レニウムがテクネチウムと同じ第7族の遷移元素であり、テクネチウムと類似した化学的性質を有することから、テクネチウムと錯体を形成する配位子は、レニウムと同様の錯体を形成する。したがって、上記例示した配位子はいずれも、186Reおよび188Reと錯体を形成する配位子として使用できる。配位子はこれら具体例に限定されず、金属と多配位の錯体を形成する化合物である限りにおいていずれも使用することができる。
本発明において、標的分子認識素子として、タンパク質、ペプチド、抗体、および抗体断片を例示できる。具体的には、炎症や腫瘍細胞浸潤などに伴う組織構築において高い発現が認められるタンパク質や腫瘍細胞に特異的に発現するタンパク質に結合するリガンド、抗体および抗体のFab断片などを例示できる。より具体的には、がんの新生血管に高発現が認められるインテグリンに親和性を有する環状ペンタペプチドc(RGDfK)を例示できる。そのほか、造骨性のがん(骨転移)に多く存在するヒドロキシアパタイトへの親和性を有するビスフォスフォン酸やオリゴアスパラギン酸、オリゴグルタミン酸、マクロファージの表面に存在する走査因子の受容体と親和性があるペプチド(fMet−Leu−Phe)、がん細胞に発現が認められる葉酸受容体と結合する葉酸とその誘導体などが例示できる。標的分子認識素子は、例示された化合物に限定されず、標的分子に結合する化合物であればいずれを使用することもできる。
本発明に係る放射性標識薬剤は、標的分子認識素子と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子と該金属の放射性核種とから形成される錯体を有効成分とするものである。このような錯体は、標的分子認識素子と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子を含むため、配位子と同数の標的分子認識素子を有する(図1参照)。すなわち、このような錯体は複数の標的分子結合部位を有する。このように、標的分子認識素子と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子含み、その結果錯体中に配位子と同数の標的分子認識素子を有する錯体を多価錯体と称し、そして多価の錯体を有効成分として含む放射性標識薬剤を多価放射性標識薬剤と称する。例えば、標的分子認識素子と結合させた配位子であって5価金属と2配位の錯体を形成する配位子を含む錯体は、錯体中に2箇所の標的分子結合部位を有し、2価錯体と称する。また、標的分子認識素子と結合させた配位子であって3価金属と3配位の錯体を形成する配位子を含む錯体は、錯体中に3箇所の標的分子結合部位を有し、3価錯体と称する。標的分子認識素子と結合させた配位子であって1価金属と6配位の錯体を形成する配位子を含む錯体は、錯体中に6箇所の標的分子結合部位を有し、6価錯体と称する。
標的分子への結合部位を2箇所有する化合物(2価の化合物)は標的分子への結合部位を1箇所有する化合物(1価の化合物)に比べて標的分子との高い親和性や集積を示すことが知られている(非特許文献3)。標的分子へ結合する化合物として抗体を例にとると、2価のIgG抗体は、1価のFab断片よりも少なくとも50〜100倍、多価抗体のIgMはIgGの10倍の抗原との結合力(avidity)を有する。
このことから、多価錯体は1価の錯体と比較して、標的分子との高い親和性や集積を示す。したがって、多価錯体を含む放射性標識薬剤は、標的部位に高い集積性を示す。
本発明に係る放射性標識薬剤は、放射性標識薬剤を用いた画像診断や、内部放射線治療に使用することができる。本発明に係る放射性標識薬剤は、がん疾患の診断や治療に好ましく使用されるが、適用疾患は本疾患に限定されず、画像診断や内部放射線治療が適用される疾患であればいずれにも適用できる。診断や治療の対象となる標的の特性にしたがって、放射性標識薬剤の有効成分である錯体に結合させる標的分子認識素子を選択することにより、該標的の診断や治療が可能であり、本放射性標識薬剤は診断および治療の分野で広く使用できる。
本発明に係る放射性標識薬剤の投与経路として、静脈内投与あるいは動脈内投与を好ましく挙げることができる。投与経路はこれら経路に限定されず、本放射性標識薬剤の投与後、その作用が有効に発現し得る経路であればいずれも利用できる。
本発明に係る放射性標識薬剤の放射活性強度は、本標識薬剤を投与したことにより目的を達成し得る強度であり、かつ、被験者の放射線被爆が可能な限り低い臨床投与量である限りにおいて任意である。放射性強度は、放射性標識薬剤を使用する一般的な診断方法や治療方法で使用されている放射活性強度を参考にして決定できる。
本発明に係る放射性標識薬剤は、上記錯体を有効成分として含むほか、必要に応じて、1種類または2種類以上の医薬的に許容される担体(医薬用担体)を含むことができる。医薬用担体として、pHを調整するための酸、塩基、緩衝液、安定化剤、等張化剤、保存剤を例示できる。
本発明に係る放射性標識薬剤は、好ましくは、標的分子認識素子と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子を含む薬剤と、該金属の放射性核種を含む薬剤とを、別々の包装単位として含んでなるキットとして提供される。
本発明に係る放射性標識薬剤の一態様として、99mTc標識薬剤を挙げることができる。本発明に係る99mTc標識薬剤は、標的分子認識素子と結合させた配位子であってテクネチウムと多配位の錯体を形成する配位子と99mTcとから形成される99mTc錯体を含むことを特徴とする。本発明に係る99mTc標識薬剤は、99mTcが放射線の体外計測に適したエネルギーのγ線のみを放射することから、放射性標識薬剤を用いた画像診断用の診断剤として好ましく使用できる。
本発明に係る99mTc標識薬剤の有効成分である99mTc錯体を形成する配位子は、標的分子認識素子と結合させた配位子であってテクネチウムと多配位の錯体を形成する配位子であることを特徴とし、本発明に係る99mTc標識薬剤の調製に使用される。本発明において用いられる配位子は、99mTcと配位結合により多配位の錯体を形成し得る化合物であればいずれを使用することもできる。99mTcの配位子として、5価のTcと1:2の錯体を形成するD−ペニシラミン(D−Penと略称することがある)、1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテート(以下、AMPTと略称することがある)、ヒドロキサムアミド(これらは2価錯体を形成する)、3価のTcと1:3の錯体を形成するチウオウレア,ジメチルフォスフィノエタン、O−フェニレンビス(ジメチルアルシン)(これらは3価錯体を形成する配位子)、1価のTcと1:6の錯体を形成するイソニトリル(6価錯体を形成する)を例示できる。
本発明に係る99mTc標識薬剤の有効成分である99mTc錯体は、標的分子認識素子と結合させた配位子であってTcと多配位の錯体を形成する配位子と99mTcとの錯体であることを特徴とする。多配位の錯体を形成する配位子とは、2配位以上の配位数で錯体を形成する配位子を意味する。一般に遷移金属の場合、配位数が2〜9配位の錯体が知られており、テクネチウムが遷移金属であることから、配位数は2〜9配位が好ましい。また、電子的および立体的な安定性の観点から、配位数は2〜6配位であることがより好ましい。さらに、テクネチウムが単座、2座あるいは3座配位子と生体内で安定な6配位、3配位、2配位の錯体を形成する(非特許文献1および2)ことが知られていることから、配位数は2配位、3配位、および6配位であることがさらにより好ましい。例えば、テクネチウムは、D−PenまたはAMPTと2配位と3配位からなる1:2の混合配位子錯体を形成し、そしてイソニトリルと6配位の錯体を形成する。
本発明に係る99mTc標識薬剤の有効成分である99mTc錯体は、標的分子認識素子と結合させた配位子であってTcと多配位の錯体を形成する配位子を含むため、配位子と同数の標的分子認識素子を有する(図1)。すなわち、本99mTc錯体は複数の標的分子結合部位を有する。このように、標的分子認識素子と結合させた配位子であってTcと多配位の錯体を形成する配位子含み、その結果錯体中に配位子と同数の標的分子認識素子を有する錯体を多価Tc錯体と称し、そして多価の錯体を有効成分として含む99mTc標識薬剤を多価Tc標識薬剤と称する。例えば、標的分子認識素子と結合させた配位子であって5価のTcと2配位の錯体を形成する配位子を含む99mTc錯体は、錯体中に2箇所の標的分子結合部位を有し、2価Tc錯体と称する。また、標的分子認識素子と結合させた配位子であって3価のTcと3配位の錯体を形成する配位子を含む99mTc錯体は、錯体中に3箇所の標的分子結合部位を有し、3価Tc錯体と称する。標的分子認識素子と結合させた配位子であって1価のTcと6配位の錯体を形成する配位子を含む99mTc錯体は、錯体中に6箇所の標的分子結合部位を有し、6価Tc錯体と称する。
本発明に係る99mTc標識薬剤の有効成分である錯体は多価錯体であり、1価の錯体と比較して、標的分子との高い親和性や集積を示す。
したがって、本発明に係る多価99mTc標識薬剤は、従来使用されていた1価99mTc標識薬剤と比較して、標的部位に高い集積性を示し、そのため放射性標識薬剤を用いた画像診断において高い感度を提供できる。また、本発明に係る多価Tc標識薬剤は、生体内において十分な安定性を示す。
このように、本発明に係る多価99mTc標識薬剤の使用により、標的部位への放射性錯体の集積を増加させることができ、その結果、放射性標識薬剤を用いた画像診断において高い感度を提供できる。
例えば、がんの新生血管に高発現が認められるインテグリンに親和性を有するc(RGDfK)ペプチドを結合させたD−Penと99mTcとから形成された2配位の99mTc錯体は、標的分子であるインテグリンへの結合部位を2箇所有する2価錯体であり、1価99mTc錯体と比較して、標的部位であるがん新生血管への集積が増加する。また、この2価99mTc錯体は生体内において十分な安定性を示した。したがって、このような錯体を含む99mTc標識薬剤は、がんの診断において高い感度を提供できる。
本発明に係る99mTc標識薬剤は、例えば、標的分子認識素子と結合させた配位子を、99mTcを含む過テクネチウム酸またはその塩および過テクネチウム酸還元剤と混合することにより調製できる。過テクネチウム酸還元剤は、過テクネチウム酸塩を強固なキレート化合物の形成に有利な低原子価状態に還元するために使用される。過テクネチウム酸還元剤としては医薬上許容され得る種々のものが使用できるが、好ましいものとして第一スズ塩、亜ニチオン酸ナトリウムを例示できる。第一スズ塩は2価のスズが形成する塩であって、例えば塩化物イオン、フッ化物イオンなどのハロゲン化イオン、硫酸イオン、硝酸イオンなどの無機酸残基イオン、酒石酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオンなどの有機酸残基イオンとの間で形成される塩をいう。
具体的には、本発明に係る99mTc標識薬剤は、まず凍結乾燥GH−キットに99mTc溶液を加えて反応させることにより99mTc−GHを調製し、次いで99mTc−GHを、標的分子認識素子と結合させた配位子と混合することにより調製できる。本キットは、1バイアル中にα−D−グルコヘプトン酸 4mgと塩化第一スズ 1.2μgとを含み、過テクネチウム酸(99mTcO4−)を加えたときのpHが8になるよう調整したものである。標的分子認識素子と結合させた配位子として、下式(I)で示されるc(RGDfK)ペプチド結合D−Penを例示できる。
Figure 2009132691
上記式(I)で示されるc(RGDfK)ペプチド結合D−Penは、下式(II)で示される化合物を使用して製造できる。
Figure 2009132691
本発明に係る放射性標識薬剤の一態様として、186Reまたは188Re標識薬剤を挙げることができる。本発明に係る186Reまたは188Re標識薬剤は、標的分子認識素子と結合させた配位子であってレニウムと多配位の錯体を形成する配位子と186Reまたは188Reとから形成される錯体を含むことを特徴とする。本発明に係る186Reまたは188Re標識薬剤は、186Reおよび188Reがいずれも細胞殺傷性を示す高エネルギーのβ線を放射することから、内部放射線治療剤として好ましく使用できる。
レニウムは、テクネチウムと同じ第7族の遷移元素であり、テクネチウムと類似した化学的性質を有することから、テクネチウムと錯体を形成する配位子は、レニウムと同様の錯体を形成する。
したがって、186Reまたは188Re標識薬剤の有効成分である186Re錯体または188Re錯体を形成する配位子として、テクネチウムと多配の錯体を形成する上記配位子を使用できる。実際、レニウムの安定性同位体である非放射性の185/187Reは、D−Penと2配位の錯体を形成した。また、185/187Reは、c(RGDfK)ペプチドを結合させたD−Penと2配位の錯体を形成した。配位子は上記例示した配位子に限定されず、186Reまたは188Reと多配位の錯体を形成する化合物である限りにおいていずれも使用することができる。
本発明に係る186Reまたは188Re標識薬剤の有効成分である錯体は多価錯体であり、1価の錯体と比較して、標的分子との高い親和性や集積を示す。
したがって、本発明に係る多価186Reまたは188Re標識薬剤は、標的部位に高い集積性を示し、そのため内部放射線治療において高い効果を示すことができる。また、本発明に係る多価標識薬剤は、生体内において十分な安定性を示す。
例えば、がんの新生血管に高発現が認められるインテグリンに親和性を有するc(RGDfK)ペプチドを結合させたD−Penと、186Reまたは188Reとから形成された2配位の錯体は、標的分子であるインテグリンへの結合部位を2箇所有する2価錯体であり、1価錯体と比較して、標的部位であるがん新生血管への集積が増加する。また、この2価186Reまたは188Re錯体は、上記2価99mTc錯体と同様に生体内において十分に安定である。したがって、この2価186Reまたは188Re錯体を有効成分として含む放射性標識薬剤は、がん疾患の治療剤として有用性が高い。
本発明に係る186Reまたは188Re標識薬剤は、例えば、標的分子認識素子と結合させた配位子を、186Reまたは188Reを含む過レニウム酸またはその塩および過レニウム酸還元剤と混合することにより調製できる。過レニウム酸還元剤としては、過テクネチウム酸還元剤として上記例示した化合物を使用することができる。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
標的分子認識素子としてがんの新生血管に高発現が認められるインテグリンに親和性を有する環状ペンタペプチドc(RGDfK)を用い、該ペプチドを結合させた配位子を製造した。そして、該配位子を用いて2配位の99mTc錯体を製造した。また、製造した99mTc錯体の安定性および体内動態の評価を行った。さらに、該配位子と99mTcとの錯形成で生成する錯体の化学構造を非放射性のレニウムを用いて検討した。
(実験材料と方法)
1.一般的方法
過テクネチウム酸(99mTcO4−)は、富士フイルムRIファーマ株式会社製の99Mo/99mTcジェネレータを用いた。薄層クロマトグラフィー(TLC)には、シリカゲルプレート(Silica gel 60F254、メルク社製)を使用した。セルロースアセテート電気泳動(CAE)はべロナールバッファー(pH8.6)を用い、1mAで30分間泳動した。逆相HPLC(RP−HPLC)カラムはCosmosil 5C18−AR−300 カラム(4.6mm×150mm、ナカライテスク株式会社)を使用し、移動相A(0.01M リン酸緩衝液(pH6.0))、移動相B(MeOH)を0−18分 B=0−60%;18−21分 B=60−100%で直線勾配で変化させる方法(方法1)、または0−18分 B=0−60%、18−26分 B=60−100%、26−31分 B=100%で直線勾配で変化させる方法(方法2)で行った。分取用RP−HPLCカラムはCosmosil 5C18−AR−300 カラム(20mm×150mm、ナカライテスク株式会社)を使用し、流速5mL/minで0−5分 B=0%、5−45分 B=0−100%で直線勾配で変化させる方法で行った。H−NMRはJEOL−ALPHA 400 スペクトロメーター(日本電子株式会社)を用いた。FAB−MSはJEOL JMS−HX−110 A マススペクトロメーター(日本電子株式会社)を用いて測定した。MALDI−TO−MSはKratos Axima CFR apparatu(島津製作所)を用いて測定した。Cyclo(Arg(Pbf)−Gly−Asp(OtBu)−D−Phe−Lys)の合成は以前報告された方法(Haubner R, Wester HJ, Reuning U, Senekowitsch-Schmidtke R, Diefenbach B, Kessler H, Stocklin G, and Schwaiger M. Radiolabeled alpha(v)beta3 integrin antagonists: a new class of tracers for tumor targeting. J Nucl Med 1999: 40: 1061-71)に従って合成した。その他の試薬はすべて特級のものをそのまま使用した。
2.S−Trityl−AMPT−N−acetateの合成
配位子として用いるS−トリチル−AMPT−N−アセテート(S−Trt−AMPT−N−Ace)を合成した。以下に説明する。
Figure 2009132691
(実験1)
2,2,5,5−tetrametyl−3,4−dithiahexame−1,6−dial(1)の合成:
乾燥CCl(140mL)に溶解したイソブチルアルデヒド(183mL,2.0mol)溶液にSCl(80mL,1.0mol)を50−55℃を維持したまま滴下した。反応時に発生したHClガスはNガスにより除去した。反応液を2時間攪拌後、10N NaOH(110mL)をゆっくりと滴下し、pHを10に調節した。ジエチルエーテル(100mL)を加え、有機層をブライン(brine)(100mL)により洗浄した後、MgSOにより乾燥させた。溶媒を留去後、残査を減圧蒸留(bp 113−114℃/6mmHg)により精製し、無色の油状物質を得た。その後冷却することにより結晶として化合物1を得た(105.7g,51.2%)。H−NMR(CDCl):δ 1.30(s,12H,CH)、9.00(s,2H,CHO);FABMS:m/z 207[(M+H)]。
(実験2)
2,2,5,5−tetramethyl−3,4−dithiahexane−1,6−dial bisoxime(2)の合成:
化合物1(4.12g,20mmol)とヒドロキシルアミン ヒドロクロライド(4.17g,60mmol)を乾燥エタノール(20mL)に溶解した。次いで、その溶液に15N NaOH(3.8mL,57mmol)を滴下した。3時間還流した後、水(100mL)を加えた。ジエチルエーテル(4×20mL)により抽出し、無水NaSOにより乾燥させた。溶媒を留去した後、粗生成物を油状物質として得た。酢酸エチル−n−ヘキサンにより再結晶を行い、化合物2を無色の結晶として得た(2.48g,52.5%)。H−NMR(CDCl):δ 1.30(s,12H,CH),7.30(s,2H,CH=NOH);FABMS:m/z 237[(M+H)]。
(実験3)
1−amino−2−methyl−2−(S−trityl)−propanethiol(S−Trityl−AMPT,3)の合成:
テトラヒドロフラン(THF,12mL)に溶解したLiAlH(482mg,12mmol)を、THF(8mL)に溶解した化合物2(945mg,4mmol)にゆっくりと滴下した。窒素気流下15時間激しく攪拌しながら還流し、次いで氷上で反応液を0℃に冷却した。酢酸エチル(3.2mL)を加えた後、6N HClを加えpH1.0に調整した。溶媒を留去した後、残査をトリフルオロ酢酸(TFA,11.4mL)に溶解し、次いでトリフェニルメタノール(2.1g,8mmol)を加えた。窒素気流下26時間攪拌後、TFAを窒素気流により留去した。残査をジクロロメタン(DCM,14mL)に溶解した後、3N NaOHにより溶液のpHを10−11に調整した。有機層を分取し、水(3×7mL)、次いで飽和NaHCO(2×3mL)、ブライン(2×3mL)により洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥後、溶媒を留去した。残査を溶出溶媒DCM−MeOH(10:1)とするシリカゲルクロマトグラフィにより精製し、化合物3を薄い茶色の油状物質として得た(234mg,8.4%)。H−NMR(CDCl):δ 1.00(s,6H,CH),1.53(s,2H,NH),1.76(s,CH),7.26−7.16(m,9H,aryl),7.60−7.63(d,6H,aryl);FABMS:m/z 348[(M+H)]。
(実験4)
S−Trityl−AMPT−N−acetate(S−Trt−AMPT−N−Ace)の合成:
化合物3(188mg,0.51mmol)を乾燥DCM(2mL)に溶解し、5N NaOH(0.1mL)を加えた。反応液を窒素気流下1.5時間攪拌後、溶媒を留去した。残査を水に溶解し、6N HClによりpHを2.0に調整した。生じた沈殿をろ取し、0.08N HClにより洗浄し、S−Trt−AMPT−N−Aceを薄灰色結晶として得た(36.2mg,72%)。H−NMR(CDOD):1.20(s,6H,CH),1.83(s,1H,NH),3.09(s,2H,NHCHCO),3.25(s,2H,SC(CHCHNH),7.12−7.26(m,9H,aryl),7.56−7.60(d,5H,aryl);FABMS:m/z 406[(M+H)]。
4.D−Pen(Trt)−OtBu−N−hexanoate(9)の製造
配位子として用いるD−Pen(Trt)−OtBu−N−hexanoate(9)を合成した。以下説明する。
Figure 2009132691
(実験5)
N,N´−diisopropyl−O−tert−butylisourea(5)の合成:
乾燥したナス型フラスコにターシャリー−ブタノール(2.78g,37.5mmol)を入れ、窒素気流下30℃でジイソプロピルカルボジイミド(DIC,4.08g,32.3mmol)およびCuClを少量加えた。反応溶液を窒素気流下30℃で4日間攪拌した。ポリ(4−ビニルピリジン)(カチオン交換レジン,0.65g)とDCM(16.5mL)を加え、スラリー状になった溶液をさらに15分間攪拌した。固形物をろ去し、溶出液を留去後、粗結晶を無色透明のオイルとして得た(5.99g,最高92.6%)。この化合物は未精製のまま次の反応に用いた。FABMS:m/z 201[(M+H)]。
(実験6)
Fmoc−D−penicillamine(Trt)−OtBu(6)の合成:
Fmoc−D−ペニシラミン(ターシャリー)−OH(500mg,0.815mmol)をDCM(15mL)に溶解し、化合物5(1.142g,5.703mmol)をゆっくりと加えた。窒素気流下、15時間攪拌後、沈殿物をろ去した。ろ液の溶媒を留去後、残査を溶出溶媒n−ヘキサン−ジエチルエーテル(2:1)とするシリカゲルクロマトグラフィにより精製し、化合物6を白色固体として得た(520.9mg,95.4%)。H−NMR(CDCl):δ 1.00(s,3H,CH)、1.11(s,3H,CH)、1.46(s,9H,tBu),1.54(brs,1H,NH)、3.62−3.69(d,1H,COCHNH)、4.21−4.43(m,3H,CHCH−fluorenyl),7.13−7.45(m,19H,aryl),7.53−7.70(d,2H,aryl)、7.72−7.83(d,2H,aryl);FABMS:m/z 692[(M+Na)]。
(実験7)
D−Penicillamine(Trt)−OtBu(7)の合成:
Fmoc−D−ペニシラミン(ターシャリー)−OtBu(500mg,0.746mmol)を乾燥DCM(40mL)に溶解し、次いで1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)(1.14mL,7.46 mmol)を加えた。室温で25時間攪拌した後、溶媒を留去した。残査を溶出溶媒n−ヘキサン−酢酸エチル(3:1→2:1)とするシリカゲルクロマトグラフィにより精製し、化合物7を無色の油状物質として得た(280.9mg,84.1%)。H−NMR(CDCl):δ 1.08(s,3H,CH),1.14(s,3H,CH),1.28(s,9H,tBu),7.10−7.26(m,9H,aryl),7.55−7.61(d,2H,aryl);FABMS:m/z 448[(M+H)],895[(2M+H)]。
(実験8)
Methyl 6−bromohexanoate(4)の合成:
メタノール(25mL)を−10℃に冷却し、撹拌しながらSOCl(2.6mL,34mmol)をゆっくりと滴下した。滴下後10分間撹拌した後、6−ブロモヘキサン酸(4.89g,25mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチルに溶解した後、ブライン(3×30mL)で洗浄した。有機層を無水CaSOで乾燥させた後、溶媒を留去し、化合物4を無色の油状物質として得た(5.13g,98%)。H−NMR(CDOD):δ 3.64(s,3H,OCH),(t,2H,CHε),2.33(t,2H,CHα),(m,2H,CHδ),(m,2H,CHβ),(m,2H,CHγ);FABMS:m/z 209[(M+H)]。
(実験9)
D−Pen(Trt)−OtBu−N−hexanoate methyl ester(8)の合成:
活性した4Å モレキュラーシーブ(604.5mg)を乾燥DMF(6mL)に加え、次いで、LiOH・HO(96.03mg,2.289mmol)を加えた。この懸濁液を10分間激しく撹拌した後、乾燥DMFに溶解した化合物7(476.5mg,1.06mmol)を加え、さらに30分間撹拌した。この懸濁液に化合物4(192.4μL,1.29mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。無機物をろ去した後、残渣を少量のDCMにより3回洗浄した。ろ液を水で洗浄し、無水NaSOにより乾燥させた。溶媒を減圧留去した後残渣をn−ヘキサン−酢酸エチル(5:1から3:1まで)を展開溶媒とする中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製し化合物8を無色透明の油状物質として得た(152.4mg,24.8%)。H NMR(CDCl):δ 7.08−7.57(m,15H,Trt),3.58(s,3H,OMe),2.57(s,1H,COCHNH),2.36−2.43(m,1H,−NH−),2.22−2.26(t,2H,MeOCOCH),1.331(s,9H,Bu),1.248−1.667(m,6H,CH×3),0.94(s,3H,Me),0.892(s,3H,Me);FABMS:m/z 576[(M+H)]。
(実験10)
D−Pen(Trt)−OtBu−N−hexanoate(9)の合成:
化合物8(326.7mg,0.567mmol)を乾燥エタノール(40mL)と2.5N NaOH(0.91mL,2.27mmol)の混液に溶解した。窒素気流下40℃で3時間反応させた後、DCM(15mL)を加えブライン(15×2mL)で洗浄した。有機層を抽出し、溶媒を減圧留去した。残渣をn−ヘキサン−酢酸エチル(1:1)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィにより粗精製し、粗精製物9を無色透明の油状物質として得た(282mg,88%)。H NMR(CDCl):δ 7.60−7.62(m,15H,Trt),2.52(s,1H,COCHNH)、2.28−2.31(m,3H,MeOCOCH and NH),1.38(s,9H,Bu),1.29−1.66(m,6H,CH),1.16(s,3H,Me),1.02(s,3H,Me);FABMS:m/z 562[(M+H)],584[
(M+Na)]。
4.D−Pen−N−hexanoate−cRGDfK(11)の製造
cRGDfKペプチドと結合させた配位子であるD−Pen(Trt)−OtBu−N−hexanoate−cRGDfKを、D−Pen(Trt)−OtBu−N−hexanoate(化合物9)を用いて製造した。以下に説明する。
Figure 2009132691
(実験11)
D−Pen(Trt)−OtBu−N−hexanoate−cRGDfK peptide conjugateの合成:
乾燥DMF(20mL)に溶解した化合物9(237.6mg,0.423mmol)、化合物10(385.5mg,0.423mmol)およびヒドロキシベンゾリアゾール(HOBt,71.23mg,0.465mmol)に乾燥DMF(15mL)に溶解したWSC・HCl(89.19mg,0.465mmol)を氷上ゆっくりと加えた。室温で44時間撹拌した後、溶媒を留去した。残渣をDCM(60mL)に溶解した後5%クエン酸(20mL)、水(20mL)、5% NaHCO(20mL)、水(20mL)で順次洗浄し、最後に5% クエン酸(20mL)で洗浄した。有機層を減圧流留去した後、残渣を氷零下(CHCl−EtO)により再結晶を行い薄灰色の結晶として保護アミノ酸結合配位子を得た(545.4mg,88.6%)。FABMS:m/z 1459[(M+5H)5+]。
(実験12)
D−Pen−N−hexanoate−cRGDfK(11)の合成:
保護アミノ酸結合配位子(353.1mg,0.252mmol)にTFA、水およびトリエチルシランの混液(90:4.75:4.75,v/v/v,81mL)を加え、室温で3時間攪拌した。窒素ガスで溶媒を濃縮後、残渣を最少量の水に溶解し、次いで酢酸エチルを加えることで沈殿を生成させた。沈殿をろ取後、沈殿を水、酢酸エチルにより洗浄した。沈殿を分取用RP−HPLCにより精製することにより白色固体として化合物11(35mg,30%)を得た.MALDI−TOF MS:m/z 849[M],850[(M+H)]。
5.[ 185 187 Re]−(D−Pen−N−acetate−c(RGDfK)) (12)の製造
cRGDfKペプチドと結合させた配位子であるD−Pen−N−acetate−c(RGDfK)と185187レニウムとからなる2配位185187レニウム錯体を製造した。以下に説明する。
Figure 2009132691
(実験13)
過レニウム酸アンモニウム(3.38mg,12.6μmol)、化合物11(1mg,1.26μmol)および12.5mM NaHCO(0.2mL,2.52μmol)を加え、密閉した。反応容器に窒素ガスを15分間通した後、0.25M 亜ジオン酸ナトリウム(0.1mL,12.6μmol)溶液を加え、4時間攪拌した。次いで、分析用RP−HPLC(方法2)により分析した。MALDI−TOF MS:m/z 1784[(M+2H)]。
6.[ 185/187 Re]−(D−Pen) (14)の製造
D−ペニシラミンおよび185187レニウムとからなる2配位185187レニウム錯体を製造した。以下に説明する。
Figure 2009132691
(実験14)
Tetrabutyl ammonium[185/187ReOCl](13)の製造:
Tetrabutyl ammonium[ReO](1.1g,2.2mmol)をエタノール(20mL)に溶解し、氷冷下、反応溶液を塩化水素ガスで飽和した。室温で2時間撹拌した後、窒素気流により反応溶液の体積が半量になるまで濃縮した。続いて冷凍庫中で放置し、淡黄色の結晶を得た(0.5g,38%)。FABMS:m/z 242[M(TBA)],243[(M(TBA)+H)],IR(KBr):2962,2874,1470,1380,1169,737cm−1
(実験15)
185/187Re]−(D−Pen)2(14)の製造:
エタノール(6mL)にTBA[ReOCl](50mg,0.085mmol)を溶解し、撹拌下、エチレングリコール(0.43mL)を加えた。そこへ酢酸ナトリウムを反応溶液が濃紫色を呈するまで加えた。続いてD−Penのエタノール溶液(25.4mg(0.171mmol)/1.2mL)を1.2mL加え、室温で2時間撹拌した。1N NaOHで反応溶液のpHを9に調節し、溶媒を減圧留去した。少量のメタノールに溶解し、RP−HPLCで分析(方法1)および精製を行った。生成物量が微量であったため、収率は計算できなかった。H−NMR(CDOD):δ 1.212(s,3H,Me β),1.591(s,3H,Me β),1.738(s,3H,Me β),1.997(s,3H,Me β),3.041(s,1H,CH α),3.934(s,1H,CH α)。
7. 99m Tc−glucoheptonate( 99m Tc−GH)の製造:
α−D−グルコヘプトン酸(4.0mg,17.7μmol)およびSnCl 2HO 1.2μgからなる凍結乾燥GH−キットに99mTc溶液1.0mL(370MBq,20pmol)を加え、室温で20分間反応させることにより、99mTc−GHを得た。99mTc−GHの生成確認はTLC(アセトン,Rf値=0,生理食塩水,Rf値 1.0)により行った。
8. 99m Tc−(D−penicillamine) の製造
D−ペニシラミン(D−Pen,1.19mg,8μmol)を窒素置換した0.1M トリス塩酸バッファー(pH9.0)400μLに溶解した。続いて、この溶液を0.1M トリス塩酸バッファー(pH9.0)により順次希釈し、2mM、0.2mM、0.02mM、0.01mM、0.002mMの配位子溶液を調製した。各配位子濃度の溶液100μLに99mTc−GH溶液100μLを加え混和した後、室温で1時間反応させた。99mTc−(D−Pen)の確認は、RP−HPLC(方法1)およびCAEにより行った。
9. 99m Tc−(AMPT−N−acetate) の製造
S−Trt−AMPT−N−Ace(3.24mg,8μmol)にTFA 200μL(2.6mmol)を加え1分間攪拌した。この溶液にTES 10μL(74μmol)を加え、反応溶液が黄色から無色に変化した事を確認した後、窒素により溶媒を留去した。そこへ窒素置換した0.1M トリス塩酸バッファー(pH9.0)400μLを加えた。続いて、この溶液を0.1M トリス塩酸バッファー(pH9.0)により順次希釈し、2mM、0.2mM、0.02mM、0.01mM、0.002mMの配位子溶液を調製した。各配位子濃度の溶液100μLに99mTc−GH([GH]=4.0mg/mL)100μLを加え十分混和した後、室温で1時間反応させた。生成物の確認はRP−HPLC(方法1)およびCAEにより行った。
10. 99m Tc−(D−Pen−N−Hx−cRGDfK) の製造
D−Pen−N−hexanoate−cRGDfK(化合物11,0.8mg,1μmol)を窒素置換した0.1M トリス塩酸バッファー(pH9.0)50.5μLに溶解した。続いて、この溶液を0.1 M トリス塩酸バッファー(pH9.0)により希釈し2mMの配位子溶液を調製した。配位子溶液100μLに99mTc−GH溶液100μLを加え十分混和した後、室温で1時間反応させた。化合物の生成の確認はRP−HPLC(方法2)により行った。
11.安定性の検討
99mTc標識化合物をRP−HPLC(方法1または方法2)により精製した後、溶媒を減圧留去した。残渣を0.01M リン酸緩衝液(pH6.0)400μLに再溶解させ、この溶液を室温で保存し、1、3、6、24時間後にその放射化学的純度をCAEまたはRP−HPLCで分析した。
12.動物実験
未精製状態の99mTc−(D−Pen−N−hexanoate−cRGDfK)(濃度)またはRP−HPLCにより精製した99mTc−(D−Pen−N−hexanoate−cRGDfK)をそれぞれ100μL(約1μCi)ずつ6週齢ddY系雄性マウスに尾静脈投与し、1群3匹とし、投与後10分、1時間、3時間、6時間に屠殺し、採血、解剖し、各臓器の重量と放射活性を測定した。また、投与後6時間までに排泄された尿および糞の放射活性も測定した。
(結果)
1.テクネチウム錯体生成における配位子濃度の影響
99mTc−(D−Pen)は、D−Penの濃度が0.01mMまで放射化学的収率95%以上で得られたが、それ以下では、放射化学的収率の低下が認められた(図2)。一方,99mTc−(AMPT−N−acetate)の場合では、AMPT−N−acetate濃度が0.01mMまでは放射化学的収率90%以上で得られ、それ以下で急激な放射化学的収率の低下が認められた(図2)。
2. 99m Tc錯体の緩衝液中の安定性
99mTc−(D−Pen)および99mTc−(AMPT−N−acetate)の緩衝液中の安定性を検討したところ、99mTc−(D−Pen)の方がより高い安定性を示した(図3)。
そこで配位子にD−Penを選択し、c(RGDfK)を導入した配位子誘導体を作製し、99mTc標識を行った。得られた99mTc−(D−Pen−Hx−cRDGfK)の緩衝液中の安定性を検討したところ、6時間後においても未変化体として存在した(図4)。すなわち、99mTc−(D−Pen−Hx−cRDGfK)が緩衝液中で安定であることが判明した。
また、99mTc−(D−Pen−Hx−cRDGfK)の構造を確認するために、非放射性のレニウム(Re)を用いてRe−(D−Pen−Hx−cRDGfK)を作製した。質量分析により、Reと配位子誘導体とが1:2の錯体を形成していることを認めた。99mTc−(D−Pen−Hx−cRDGfK)とRe−(D−Pen−Hx−cRDGfK)とはRP−HPLCの保持時間は一致した。(表1)。
Figure 2009132691
このことから、99mTc−(D−Pen−Hx−cRDGfK)は、99mTcと配位子誘導体とが1:2の錯体を形成していると考えられる。このように、本薬剤設計が標的への親和性が増強された新たな99mTc放射性医薬品の開発に有用であることを認めた。
3. 99m Tc−(D−Pen−Hx−cRDGfK) の体内動態
99mTc−(D−Pen−Hx−cRDGfK)をマウスに投与したところ、精製したものおよび未精製のもののいずれも胃への集積は観察されなかった(図5−AおよびB、並びに図6−AおよびB)。生体内で99mTcが錯体から解離した場合、胃に集積することから、本錯体は生体内においても安定に存在したことを示す。以上の結果は、D−Penを配位子とし、これに標的分子認識素子を結合することにより、生体内で安定な2価の99mTc錯体が得られることを示す。これらの結果はまた、適切な配位子を選択することにより、生体内において十分に安定な多価99mTc標識薬剤が得られることを強く示唆する。
多価99mTc標識薬剤の構造を示す模式図である。 テクネチウム錯体生成における配位子濃度の影響を示す図である。図中、黒四角およびは黒ひし形はそれぞれ、配位子としてD−PenおよびAMPT−N−acetate(AMPT−N−Aceと記す)を使用した場合を示す。 99mTc−(D−Pen)および99mTc−(AMPT−N−acetate)の、緩衝液中の安定性を示す図である。図中、黒四角およびは黒ひし形はそれぞれ、99mTc−(D−Pen)(Tc−99m−(D−Pen)と示す)および99mTc−(AMPT−N−acetate)(Tc−99m−(AMPT−N−Ace)と記す)を示す。 99mTc−(D−Pen−Hx−cRDGfK)の緩衝液中の安定性を示す図面である。 マウスに投与した精製99mTc−(D−Pen−Hx−cRDGfK)の体内動態を、各臓器や各試料における集積率で示した図である。集積率は各臓器の放射能の投与放射能に対する%を各臓器の重さで除した値で示した。 マウスに投与した精製99mTc−(D−Pen−Hx−cRDGfK)の体内動態を、各臓器や各試料における集積率で示した図である。集積率は各臓器や各試料の放射能の投与放射能に対する%を各臓器の重さで除した値で示した。 マウスに投与した未精製99mTc−(D−Pen−Hx−cRDGfK)の体内動態を、各臓器や各試料における集積率で示した図である。集積率は各臓器の放射能の投与放射能に対する%を各臓器の重さで除した値で示した。 マウスに投与した未精製99mTc−(D−Pen−Hx−cRDGfK)の体内動態を、各臓器や各試料における集積率で示した図である。集積率は各臓器や各試料の放射能の投与放射能に対する%を各臓器の重さで除した値で示した。

Claims (16)

  1. 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子と該金属の放射性核種とから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した放射性標識薬剤。
  2. 診断用または治療用放射性標識薬剤である請求項1に記載の放射性標識薬剤。
  3. 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって5価のテクネチウム(Tc)と2配位または3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートと99mTcとから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した診断用99mTc標識薬剤。
  4. 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である請求項3に記載の診断用99mTc標識薬剤。
  5. 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって5価のレニウム(Re)と2配位または3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートと186Reまたは188Reとから形成される錯体を含み、標的部位への集積性が増加した治療用186Reまたは188Re標識薬剤。
  6. 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である請求項5に記載の治療用186Reまたは188Re標識薬剤。
  7. 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子であることを特徴とする、標的部位への集積性が増加した診断用または治療用放射性標識薬剤の調製用配位子。
  8. 金属放射性核種が、99mテクネチウム、186レニウム、および188レニウムからなる群から選ばれるいずれか1の金属放射性核種である請求項7に記載の放射性標識薬剤の調製用配位子。
  9. 金属と多配位の錯体を形成する配位子が、5価のテクネチウムまたはレニウムと2配位あるいは3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートである請求項8に記載の放射性標識薬剤の調製用配位子。
  10. 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である請求項8または9に記載の放射性標識薬剤の調製用配位子。
  11. 請求項7から11のいずれか1項に記載の放射性標識薬剤の調製用配位子を含む薬剤と、該配位子と多配位の錯体を形成する金属放射性核種とを含む薬剤とを、別々の包装単位として含んでなるキット。
  12. 下式(I):
    Figure 2009132691
    で示される化合物の製造方法であって、下式(II):
    Figure 2009132691
    で示される化合物を使用することを特徴とする製造方法。
  13. 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子であって金属と多配位の錯体を形成する配位子と該金属の放射性核種とから形成される錯体を含む放射性標識薬剤を使用することを特徴とする、放射性標識薬剤の標的部位への集積を増加させる方法。
  14. 金属放射性核種が、99mテクネチウム、186レニウム、および188レニウムからなる群から選ばれるいずれか1の金属放射性核種である請求項13に記載の方法。
  15. 金属と多配位の錯体を形成する配位子が、5価のテクネチウムまたはレニウムと2配位あるいは3配位の錯体を形成するD−ペニシラミンまたは1−アミノ−2−メチルプロパン−2−チオール−N−アセテートである請求項14に記載の方法。
  16. 標的分子と結合する化合物と結合させた配位子が環状ペンタペプチドc(RGDfK)と結合させた配位子である請求項14または15に記載の方法。
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