本発明の実施形態に係る高周波スイッチモジュールについて、図を参照して説明する。
図1(A)は高周波スイッチモジュール1の外観斜視図であり、図1(B)は本実施形態の高周波スイッチモジュール1の回路構成を示すブロック図である。
図2(A)はスイッチIC10の内部回路構成を示す図であり、図2(B)は各ポートの配置を示す図である。図3は積層回路部品11の積層図である。
高周波スイッチモジュール1は、図1(A)に示すように、略直方体の外形からなる積層回路部品11、該積層回路部品11の天面に実装されたスイッチIC10、および、ディスクリート部品であり積層回路部品11の天面に実装されたインダクタAL1,AL2を備える。
積層回路部品11は、具体的構成は図3を用いて後述するが、概略的には、セラミックあるいは樹脂等の複数の誘電体層を積層してなる積層体によって形成される。そして、積層回路部品11は、各誘電体層間となる内層および積層体の天面および底面に所定パターンで電極を形成することで、図1(B)に示すような高周波スイッチモジュール1のスイッチIC10およびインダクタAL1,AL2以外の回路パターンを実現している。
図1(B)に示すように、高周波スイッチモジュール1は、上述のスイッチIC10、およびインダクタAL1,AL2からなる位相調整回路20とともに、本発明の「フィルタ回路」に相当するローパスフィルタ30A,30Bおよびアンテナ用キャパシタACを備える。
また、高周波スイッチモジュール1は、複数の外部接続用電極PMを有する。これら複数の外部接続用電極PMは、当該高周波スイッチモジュール1が実装される後段回路の回路基板に実装されるために利用される。なお、以下の説明では、説明の便宜上、高周波スイッチモジュール1としての外部接続用電極PMは「電極」と称し、後述するスイッチIC10の実装用電極PICは「ポート」と称する。
複数の外部接続用電極PMは、本発明の「アンテナ用電極」に対応するアンテナ用外部電極PM(ANT0)と、本発明の「通信用電極」に対応する送信用外部電極PM(TxLB),PM(TxHB)、受信用外部電極PM(Rx1),PM(Rx2),PM(Rx3),PM(Rx4)、送受信兼用外部電極PM(UM1),PM(UM2),PM(UM3)と、駆動電圧入力用の駆動電圧入力用外部電極PM(Vd)と、制御電圧信号入力用の制御電圧入力用外部電極PM(Vc1),PM(Vc2),PM(Vc3),PM(Vc4)とを有する。なお、図1(A)には図示していないが接地用のグランド電極も有する。
高周波スイッチモジュール1としてアンテナANTに接続するアンテナ用外部電極PM(ANT0)には、位相調整回路20を介して、スイッチIC10のアンテナ用ポートPIC(ANT0)が接続されている。
位相調整回路20は、インダクタAL1,AL2とを有し、インダクタAL1がアンテナ用外部電極PM(ANT0)とアンテナ用ポートPIC(ANT0)との間に直列接続されている。インダクタAL1のアンテナ用外部電極PM(ANT0)側とグランドとの間には、インダクタAL2が接続されている。また、インダクタAL1のアンテナ用外部電極PM(ANT0)側とグランドとの間には、アンテナ用キャパシタACが接続されている。
高周波スイッチモジュール1としての送信用外部電極PM(TxLB)には、ローパスフィルタ30Aを介して、スイッチIC10の通信用ポートPIC(RF1)が接続されている。
ローパスフィルタ30Aは、インダクタGLt1,GLt2、およびキャパシタGCu1,GCu2,GCu3,GCc1,GCc2を有する。
インダクタGLt1,GLt2は、送信用外部電極PM(TxLB)と通信用ポートPIC(RF1)との間に直列接続されている。インダクタGLt1にはキャパシタGCc1が並列接続され、インダクタGLt2にはキャパシタGCc2が並列接続されている。インダクタGLt1の通信用ポートPIC(RF1)側とグランドとの間には、キャパシタGCu1が接続されている。インダクタGLt1,GLt2の接続点とグランドとの間には、キャパシタGCu2が接続されている。インダクタGLt2の送信用外部電極PM(TxLB)側とグランドとの間には、キャパシタGCu3が接続されている。
これらローパスフィルタ30Aを構成する各インダクタ及びキャパシタの素子値は、送信用外部電極PM(TxLB)から入力される送信信号の周波数帯域を通過し、当該送信信号の高調波帯域を減衰する特性となるように設定されている。例えば、GSM850やGSM900の送信信号の周波数帯域を通過帯域とし、これらの2倍高調波や3倍高調波の帯域を減衰帯域とするように設定されている。
高周波スイッチモジュール1としての送信用外部電極PM(TxHB)には、ローパスフィルタ30Bを介して、スイッチIC10の通信用ポートPIC(RF2)が接続されている。
ローパスフィルタ30Bは、インダクタDLt1,DLt2、およびキャパシタDCu2,DCu3,DCc2を有する。
インダクタDLt1,DLt2は、送信用外部電極PM(TxHB)と通信用ポートPIC(RF2)との間に直列接続されている。インダクタDLt2にはキャパシタDCc2が並列接続されている。インダクタDLt1,DLt2の接続点とグランドとの間には、キャパシタDCu2が接続されている。インダクタDLt2の送信用外部電極PM(TxHB)側とグランドとの間には、キャパシタDCu3が接続されている。
これらローパスフィルタ30Bを構成する各インダクタ及びキャパシタの素子値は、送信用外部電極PM(TxHB)から入力される送信信号の周波数帯域を通過し、当該送信信号の高調波帯域を減衰する特性となるように設定されている。例えば、GSM1800やGSM1900の送信信号の周波数帯域を通過帯域とし、これらの2倍高調波や3倍高調波の帯域を減衰帯域とするように設定されている。
高周波スイッチモジュール1としての受信用外部電極PM(Rx1),PM(Rx2),PM(Rx3),PM(Rx4)には、スイッチIC10の通信用ポートPIC(RF3),PIC(RF4),PIC(RF5),PIC(RF6)がそれぞれ接続されている。これらの受信用外部電極PM(Rx1),PM(Rx2),PM(Rx3),PM(Rx4)は、図示しない各通信信号用の受信回路に接続する。例えば、GSM850,GSM900,GSM1800,GSM1900用に構成された受信回路に接続する。
高周波スイッチモジュール1としての送受信兼用外部電極PM(UM1),PM(UM2),PM(UM3)には、スイッチIC10の通信用ポートPIC(RF7),PIC(RF8),PIC(RF9)がそれぞれ接続されている。これら送受信兼用外部電極PM(UM1),PM(UM2),PM(UM3)は、図示しない各通信信号用の送受信兼用回路に接続する。例えば、UMTS用送受信回路やWCDMA用送受信回路に接続する。
高周波スイッチモジュール1としての駆動電圧入力用外部電極PM(Vd)には、スイッチIC10の駆動電圧入力用ポートPIC(Vd)が接続されている。
高周波スイッチモジュール1としての制御電圧入力用外部電極PM(Vc1),PM(Vc2),PM(Vc3),PM(Vc4)には、スイッチIC10の制御電圧入力用ポートPIC(Vc1),PIC(Vc2),PIC(Vc3),PIC(Vc4)がそれぞれ接続されている。
スイッチIC10は、平面視して略矩形からなる所謂SP9T型のFETスイッチICであり、駆動電圧Vddで駆動し、制御電圧信号Vc1〜Vc4の組み合わせに応じて、本発明の「共通端子」に相当するアンテナ用ポートPIC(ANT0)を、本発明の「通信回路側端子」に相当する通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF9)のいずれかに選択的に接続する機能を有する。なお、本実施形態では、SP9T型を例にしたが、SPnT型(nは2以上の正数)についても、本発明の構成を適用することができる。
スイッチIC10は、図2(A)に示すような構成からなり、スイッチ制御部101とFETスイッチ回路SW1〜SW9とを備える。
スイッチ制御部101は、駆動電圧入力用ポートPIC(Vd)から入力される駆動電圧Vddで作動し、制御電圧入力用ポートPIC(Vc1),PIC(Vc2),PIC(Vc3),PIC(Vc4)のそれぞれから入力される駆動電圧Vc1〜Vc4の組み合わせに応じて、FETスイッチ回路SW1〜SW9のいずれか一つをオン制御し、他の全てをオフ制御するようなスイッチ制御信号を発生し、FETスイッチ回路SW1〜SW9へ与える。
スイッチ回路SW1は、アンテナ用ポートPIC(ANT0)と通信用ポートPIC(RF1)との間に接続され、スイッチ回路SW2は、アンテナ用ポートPIC(ANT0)と通信用ポートPIC(RF2)との間に接続される。同様に、各スイッチ回路SWk(k=3〜9)は、アンテナ用ポートPIC(ANT0)と通信用ポートPIC(RFk)との間に接続される。
スイッチ回路SW1〜SW9は、全て同じ構造からなる。したがって、ここでは、スイッチ回路SW1を代表してスイッチ回路SW1〜SW9の構成を説明する。
スイッチ回路SW1は、複数のFET11〜FET1m(mは2以上の正数)を有し、これらFET11〜FET1mが、アンテナ用ポートPIC(ANT0)と通信用ポートPIC(RF1)との間に連続的に接続されている。具体的には、FET11のソースがアンテナ用ポートPIC(ANT0)に接続され、FET11のドレインにFET12のソースが接続される。FET12〜FET1mまでは、自身に対してアンテナ用ポートPIC(ANT0)側に隣接するFETのドレインに、自身のソースが接続される。そして、FET1mのドレインが通信用ポートPIC(RF1)に接続される。
各FET11〜FET1mのゲートにはそれぞれ抵抗器R11〜R1mが接続されており、当該抵抗器R11〜R1mを介して、スイッチ制御部101からのスイッチ制御信号が印加される。
このように、スイッチIC10のアンテナ用ポートPIC(ANT0)と各通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF9)との間のスイッチ回路SW1〜SW9を同じ構造にすることで、いずれの通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF9)を選択しても、同じ電気的特性を得ることができる。
この際、全てのスイッチ回路SW1〜SW9が図2に示すようにFETの多段構成になっているので、伝送電力の許容量を大きくすることができる。これを利用し、FETの段数を送信電力の上限レベルに耐えられるように設定することで、全ての通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF9)を送信用ポート、受信用ポート、送受兼用ポートのいずれにも利用することができる。具体的に、上述のようにGSM850,GSM900,GSM1800,GSM1900,UMTS,WCDMA(登録商標)を備える複合型の通信システムであれば、GSM(登録商標)の送信レベルである35dBmに対する耐電力を有するように構成することで、これら複数の通信システムの全ての送信、受信、送受信に利用することができる。
これにより、通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF9)を送信用、受信用、送受信兼用のいずれかに適宜割り当てることができるので、従来のように、システム仕様毎に、それぞれ送信用ポート、受信用ポート、送受信兼用ポートを個別に設計してICを製造する必要が無い。この結果、スイッチICの設計コスト、設計労力、設計時間、製造のための準備等を大幅に削減することができる。
次に、スイッチIC10のポート配置について説明する。スイッチIC10の底面には、上述の各ポートに対応する電極が、図2(B)に示すような配置で形成されている。
図2(B)に示すように、各通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF9)の電極群は、スイッチIC10におけるアンテナ用ポートPIC(ANT0)の電極とは異なる側面に沿って形成されている。これにより、通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF9)とアンテナ用ポートPIC(ANT0)とのアイソレーションを向上させることができる。
また、各通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF9)の電極群は、スイッチIC10における駆動電圧入力用ポートPIC(Vd)、制御電圧入力用ポートPIC(Vc1),PIC(Vc2),PIC(Vc3),PIC(Vc4)の電極群とは異なる側面に沿って形成されている。これにより、通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF9)と駆動電圧入力用ポートPIC(Vd)、制御電圧入力用ポートPIC(Vc1),PIC(Vc2),PIC(Vc3),PIC(Vc4)とのアイソレーションも向上させることができる。
さらには、アンテナ用ポートPIC(ANT0)の電極は、スイッチIC10における駆動電圧入力用ポートPIC(Vd)、制御電圧入力用ポートPIC(Vc1),PIC(Vc2),PIC(Vc3),PIC(Vc4)の電極群とは異なる側面に沿って形成されている。これにより、アンテナ用ポートPIC(ANT0)と駆動電圧入力用ポートPIC(Vd)、制御電圧入力用ポートPIC(Vc1),PIC(Vc2),PIC(Vc3),PIC(Vc4)とのアイソレーションも向上させることができる。
なお、上述のようにFETを多段にすることで、各スイッチ回路SW1〜SW9では、キャパシタが直列接続されたものと等価の位相変化が生じる。しかしながら、上述のように、インダクタAL1,AL2からなる位相調整回路20がアンテナ用ポート側に挿入されることで、スイッチ回路SW1〜SW9で生じる位相変化を位相調整回路20で調整して補正することができ、伝送損失の低下を抑制することができる。この際、位相調整回路20がアンテナ用ポート側に挿入されることで、スイッチ回路SW1〜SW9毎に位相調整用の回路を設けることなく、一つの位相調整回路20で全てのスイッチ回路SW1〜SW9の位相調整を行うことができる。
また、この位相調整回路20は、ディスクリート部品からなるインダクタAL1,AL2を用いることで、部品の付け替えによる容易な変更で、位相調整量を変化させることができる。これにより、高周波スイッチモジュール1として完成後も、必要に応じて位相調整量を容易に変更でき、最適な位相調整量を得ることができる。
次に、高周波スイッチモジュール1を構成する積層回路部品11の積層構成について、図3を参照して、より具体的に説明する。
積層回路部品11は、上述のように、アンテナ用キャパシタAC、ローパスフィルタ30A,30Bを内部電極パターンで実現するとともに、これらアンテナ用キャパシタAC、ローパスフィルタ30A,30Bと、スイッチIC10、位相調整回路20と、高周波スイッチモジュール1としての各外部接続用電極PMおよびスイッチIC10の各ポートPICとを接続する回路パターンを、内部電極パターンや天面および底面の電極で実現する。
積層回路部品11は20層の誘電体層が積層された構造からなる。なお、図3は、積層回路部品11の天面の層を第1層として、底面側にむかって層番号が増加し、積層回路部品11の底面の層を第20層とする積層図であり、以下ではこの層番号に準じて説明する。また、図3において、各層で記載されている○印は、導電性のビアホールを示し、当該ビアホールにより積層方向に列ぶ各層の電極間の導電性が確保されている。
積層回路部品11の天面に対応する第1層の天面側には、スイッチIC10を実装するためのランド群および、インダクタAL1,AL2を実装するためのランド群が形成されている。
第2層、第3層、第4層には各種引き回し用の電極パターンが形成されている。
第5層にはグランド電極GNDが形成されている。この第5層のグランド電極GNDはキャパシタGCu1の対向電極としても機能する。第6層にはキャパシタGCu1の対向電極が形成されている。第7層にはグランド電極GNDが形成されている。この第7層のグランド電極GNDもキャパシタGCu1の対向電極としても機能する。
第8層、第9層、第10層、第11層、第12層、第13層には、インダクタGLt1,GLt2,DLt1,DLt2を構成する電極パターンが形成されている。
第14層にはキャパシタGCc1,GCc2を兼用する対向電極と、キャパシタDCc2の対向電極がそれぞれ形成されている。第15層にはキャパシタGCc1,GCc2,DCc2の対向電極がそれぞれ形成されている。第16層にはキャパシタGCu2,GCc1,GCc2を兼用する対向電極と、キャパシタDCu2,DCc2を兼用する対向電極が形成されている。
第17層にはグランド電極GNDが形成されている。この第17層のグランド電極GNDは、キャパシタGCu2,DCu2,GCu3,DCu3の対向電極としても機能する。
第18層にはキャパシタGCu3,DCu3およびアンテナ用キャパシタACの対向電極がそれぞれ形成されている。
第19層にはグランド電極GNDが形成されている。この第19層のグランド電極GNDはキャパシタGCu3,DCu3およびアンテナ用キャパシタACの対向電極としても機能する。
積層回路部品11の底面に相当する第20層の底面側には、上述の各外部接続用電極PMが形成されている。
このような構成とすることで、ローパスフィルタ30A,30Bを構成する各回路素子やアンテナ用キャパシタAC等の高周波スイッチモジュール1におけるスイッチIC10以外の回路素子を部分的に積層回路部品11の内層電極で実現できる。これにより、高周波スイッチモジュール1を小型化することが可能になる。なお、スイッチIC10以外の回路素子については、インダクタAL1,AL2のように適宜ディスクリート部品にしてもよく、逆にインダクタAL1,AL2を積層回路部品11の内層電極で形成しても良い。
このような積層回路部品11を設計する場合でも、上述のようにスイッチ回路IC10の、通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF9)が同じ電気特性であり、送信、受信、送受信を適宜選択できる構成であるので、スイッチIC10の実装ランドパターンや内部電極の引き回しパターンの自由度を向上させることができる。これにより、積層回路部品11すなわち高周波スイッチモジュール1としての設計製造コストや設計時間を削減することもできる。
また、上述のように積層回路部品11内にローパスフィルタ30A,30Bを形成する場合にも、スイッチIC10の通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF9)の選択自由度により、ローパスフィルタ30A,30Bを構成するための電極パターンの設計自由度が向上する。これにより、ローパスフィルタ30A,30Bを含み送信信号の高調波を抑圧できるような高周波スイッチモジュールであっても、設計製造コストや設計時間を削減することもできる。
なお、上述の説明では、ローパスフィルタ30A,30Bを積層回路部品11内に含む例を示したが、ローパスフィルタ30A,30Bを含まない構成としてもよい。この場合、積層回路部品11の天面に形成するスイッチIC10の通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF9)用の各ランド電極と、積層回路部品11の底面に形成する通信用の各外部接続用電極とをそれぞれに結ぶ伝送線路の電気長が同じになるように、内部電極パターンおよびビアホールを形成するとよい。このような構成とすることで、より使用方法の自由度が高い高周波スイッチモジュール1を実現することができる。この際、単に内部電極パターンの線路長を変化させるだけでなく、線路幅を変化させることで、全ての伝送線路の電気長をより容易に同じにすることができる。なお、上述のローパスフィルタ30A,30Bを有する場合であっても、ローパスフィルタ30A,30Bを有さない受信系や送受信兼用系の各伝送線路の電気長を、同じにすることもでき、この場合にも使用方法の自由度を向上させることができる。
次に、第2の実施形態に係る高周波スイッチモジュールについて、図を参照して説明する。
図4は高周波スイッチモジュール1’の回路構成を示すブロック図である。
図5は図4に示す高周波スイッチモジュール1’を形成する積層回路部品の積層図である。
本実施形態の高周波スイッチモジュール1’は、スイッチIC10’、インダクタAL1’,AL2’からなる位相調整回路20’、ローパスフィルタ30A’,30B’、アンテナ用キャパシタAC、SAWフィルタS1,S2、整合用インダクタL3,L4を備える。
この高周波スイッチモジュール1’は、複数の外部接続用電極PMを有する。これら複数の外部接続用電極PMは、当該高周波スイッチモジュール1’が実装される後段回路の回路基板に実装されるために利用される。なお、以下の説明では、第1の実施形態と同様に、説明の便宜上、高周波スイッチモジュール1’としての外部接続用電極PMは「電極」と称し、後述するスイッチIC10’の実装用電極PICは「ポート」と称する。
複数の外部接続用電極PMは、本発明の「アンテナ用電極」に対応するアンテナ用外部電極PM(ANT0)と、本発明の「通信用電極」に対応する送信用外部電極PM(TxLB),PM(TxHB)、受信用外部電極PM(Rx1),PM(Rx2),PM(Rx3),PM(Rx4)、送受信兼用外部電極PM(UM1),PM(UM2)と、駆動電圧入力用の駆動電圧入力用外部電極PM(Vd)と、制御電圧信号入力用の制御電圧入力用外部電極PM(Vc1),PM(Vc2),PM(Vc3)とを有する。なお、受信用外部電極PM(Rx1),PM(Rx2),PM(Rx3),PM(Rx4)は平衡出力用であり、それぞれに一対の電極から構成されている。
高周波スイッチモジュール1’としてアンテナANTに接続するアンテナ用外部電極PM(ANT0)には、位相調整回路20’を介して、スイッチIC10のアンテナ用ポートPIC(ANT0)が接続されている。
位相調整回路20’は、インダクタAL1’,AL2’とを有する。本発明の「シリーズインダクタ」に相当するインダクタAL1’は、アンテナ用外部電極PM(ANT0)とアンテナ用ポートPIC(ANT0)との間に直列接続されている。本発明の「シャントインダクタ」に相当するインダクタAL2’は、インダクタAL1’のアンテナ用ポートPIC(ANT0)側とグランドとの間に接続されている。また、インダクタAL1’のアンテナ用外部電極PM(ANT0)側とグランドとの間には、アンテナ用キャパシタACが接続されている。このように、スイッチIC10’のアンテナ用ポートPIC(ANT0)を、他の回路素子を介することなく、インダクタAL2’のみを介してグランドに接続することで、スイッチIC10’内のFETやコンデンサに蓄積された電荷は、スイッチ切替時に当該インダクタAL2’のみを介してグランドへ放電される。これにより、放電を速くすることができ、スイッチ切替速度を向上することができる。すなわち、本実施形態の位相調整回路20’を用いることで、単に位相調整機能のみでなく、スイッチ切替速度の高速化機能(ESD保護デバイスとしての機能に相当)も備えることができる。
高周波スイッチモジュール1’としての送信用外部電極PM(TxLB)には、ローパスフィルタ30A’を介して、スイッチIC10の通信用ポートPIC(RF1)が接続されている。このローパスフィルタ30A’は、第1の実施形態に示したローパスフィルタ30Aに対してキャパシタGCu3を省略しただけの構成であり、例えば、GSM850やGSM900の送信信号の周波数帯域を通過帯域とし、これらの2倍高調波や3倍高調波の帯域を減衰帯域とするように設定されている。
高周波スイッチモジュール1’としての送信用外部電極PM(TxHB)には、ローパスフィルタ30B’を介して、スイッチIC10の通信用ポートPIC(RF2)が接続されている。ローパスフィルタ30B’は、インダクタDLt1,DLt2、およびキャパシタDCu2,DCu3,DCc1を有する。このローパスフィルタ30B’は、第1の実施形態のローパスフィルタ30Bに対して、インダクタDLt2に並列接続するキャパシタを無くし、インダクタDLt1に並列接続するキャパシタDCc1を備えたものであり、第1の実施形態のローパスフィルタ30Bと同様に、例えば、GSM1800やGSM1900の送信信号の周波数帯域を通過帯域とし、これらの2倍高調波や3倍高調波の帯域を減衰帯域とするように設定されている。
高周波スイッチモジュール1’としての受信用外部電極PM(Rx1),PM(Rx2)には、SAWフィルタS1が接続され、当該SAWフィルタS1は、スイッチIC10の通信用ポートPIC(RF3)に接続している。SAWフィルタS1は、それぞれに異なる通過帯域を有する二個のSAWフィルタからなり、例えば、受信用外部電極PM(Rx1)側のSAWフィルタが、GSM850受信信号の周波数帯域を通過帯域とし、受信用外部電極PM(Rx2)側のSAWフィルタが、GSM900受信信号の周波数帯域を通過帯域となるように、設定されている。
SAWフィルタS1とスイッチIC10’の通信用ポートPIC(RF3)との間の伝送ライン上の所定位置は、インダクタL3を介してグランドに接続されている。このインダクタL3により、通信用ポートPIC(RF3)とSAWフィルタS1とのインピーダンス整合が行われる。
高周波スイッチモジュール1’としての受信用外部電極PM(Rx3),PM(Rx4)には、SAWフィルタS2が接続され、当該SAWフィルタS2は、スイッチIC10の通信用ポートPIC(RF4)に接続している。SAWフィルタS2は、それぞれに異なる通過帯域を有する二個のSAWフィルタからなり、例えば、受信用外部電極PM(Rx3)側のSAWフィルタが、GSM1800受信信号の周波数帯域を通過帯域とし、受信用外部電極PM(Rx4)側のSAWフィルタが、GSM1900受信信号の周波数帯域を通過帯域となるように、設定されている。
SAWフィルタS2とスイッチIC10’の通信用ポートPIC(RF4)との間の伝送ライン上の所定位置は、インダクタL4を介してグランドに接続されている。このインダクタL4により、通信用ポートPIC(RF4)とSAWフィルタS2とのインピーダンス整合が行われる。
高周波スイッチモジュール1’としての送受信兼用外部電極PM(UM1),PM(UM2)には、スイッチIC10’の通信用ポートPIC(RF7),PIC(RF8)がそれぞれ接続されている。これら送受信兼用外部電極PM(UM1),PM(UM2)は、図示しない各通信信号用の送受信兼用回路に接続する。例えば、UMTS用送受信回路やWCDMA用送受信回路に接続する。
高周波スイッチモジュール1’としての駆動電圧入力用外部電極PM(Vd)には、スイッチIC10の駆動電圧入力用ポートPIC(Vd)が接続されている。
高周波スイッチモジュール1’としての制御電圧入力用外部電極PM(Vc1),PM(Vc2),PM(Vc3)には、スイッチIC10’の制御電圧入力用ポートPIC(Vc1),PIC(Vc2),PIC(Vc3)がそれぞれ接続されている。
スイッチIC10’は、例えば、略直方体からなる所謂SP6T型のFETスイッチICであり、駆動電圧Vddで駆動し、制御電圧信号Vc1〜Vc3の組み合わせに応じて、本発明の「共通端子」に相当するアンテナ用ポートPIC(ANT0)を、本発明の「通信回路側端子」に相当する通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF4)、PIC(RF7)、PIC(RF8)のいずれかに選択的に接続する機能を有する。
そして、第1の実施形態のスイッチIC10と同様に、スイッチIC10’のアンテナ用ポートPIC(ANT0)と各通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF4)、PIC(RF7)、PIC(RF8)との間のスイッチ回路を全て同じ構造にすることで、いずれの通信用ポートPIC(RF1)〜PIC(RF4)、PIC(RF7)、PIC(RF8)を選択しても、同じ電気的特性を得ることができる。
次に、本実施形態の高周波スイッチモジュール1’の構造について、図5を用いて詳細に説明する。
本実施形態の高周波スイッチモジュール1’の積層回路部品は17層の誘電体層が積層された構造からなる。なお、図5は、高周波スイッチモジュール1’の積層回路部品の天面の層を第1層として、底面側にむかって層番号が増加し、当該積層回路部品の底面の層を第17層とする積層図であり、以下ではこの層番号に準じて説明する。また、図5において、各層で記載されている○印(一重丸印)および◎印(二重丸印)は、導電性のビアホールを示し、当該ビアホールにより積層方向に列ぶ各層の電極間の導電性が確保されている。
高周波スイッチモジュール1’の積層回路部品の天面に対応する第1層の天面側には、それぞれ個別のディスクリート部品であるスイッチIC10’、SAWフィルタS1,S2およびインダクタAL2’を実装するためのランド群が形成されている。なお、インダクタAL2’は、積層回路部品内の電極パターンで形成してもよいが、個別のディスクリート部品とすることで、耐電流性の良いものを用いることができる。これにより、スイッチIC10’内の電荷を放電する際に、より破壊し難く、電流を流しやすい特性を実現できる。
第2層、第3層には各種引き回し用の電極パターンが形成されている。
第4層にはグランド電極GNDが形成されている。この第5層のグランド電極GNDはキャパシタGCu1の対向電極としても機能する。第5層にはキャパシタGCu1の対向電極が形成されている。第6層にはビアホールのみが形成されている。
第7層、第8層、第9層には、インダクタGLt1,GLt2,DLt1,DLt2,L3,L4,AL1’を構成する電極パターンが形成されており、第10層には、インダクタGLt1,GLt2,L3,L4,AL1’を構成する電極パターンが形成されている。
第11層、第12層にはビアホールのみが形成されている。第13層には、グランド電極GNDが形成されている。
第14層にはキャパシタGCc1,GCc2,DCc1の対向電極が形成されている。第15層にはキャパシタGCc1,GCc2,GCu2の兼用の対向電極と、キャパシタDCc1,DCu2の兼用の対向電極が形成されるとともに、キャパシタDCu1,ACの対向電極が形成されている。
第15層にはグランド電極GNDが形成されている。この第16層のグランド電極GNDは、キャパシタGCc1,GCc2,GCu2,DCc1,DCu2,DCu3,ACの対向電極としても機能する。
高周波スイッチモジュール1’の積層回路部品の底面に相当する第17層の底面側には、上述の各外部接続用電極PMが形成されている。この際、送信用外部電極PM(TxLB),PM(TxHB)が積層体の一辺に沿って形成され、受信用外部電極PM(Rx1),PM(Rx2),PM(Rx3),PM(Rx4)が積層体の他の一辺に沿って形成され、送受信兼用外部電極PM(UM1),PM(UM2)が積層体のまた他の一辺に沿って形成され、駆動電圧入力用外部電極PM(Vd)と制御電圧入力用外部電極PM(Vc1),PM(Vc2),PM(Vc3)とがまたさらに他の一辺に沿って形成されている。すなわち、送信系の電極群、受信系の電極群、送受信系の電極群、および制御系の電極群が積層体のそれぞれに異なる辺に沿って、形成されている。そして、これらの電極群で囲まれる中央領域にグランド電極が形成されている。このような構成により、各系間のアイソレーションを高くすることができる。
このような構成であっても、第1の実施形態と同様に作用効果が得られる。
なお、上述のスイッチIC10,10’の各通信用ポートPICと、高周波スイッチモジュール1,1’の送信用外部電極、受信用外部電極、および送受兼用外部電極PMとの接続の組合せは、一例であり、他の接続構成であってもよい。例えば、図6は、その他のスイッチIC10の通信用ポートと積層回路部品の外部電極との接続関係を説明するための図である。
図6に示すように、スイッチIC10の一辺に沿う各通信用ポートPIC(RF5)、PIC(RF6)、PIC(RF7)、PIC(RF8)、PIC(RF9)を、次に示すように接続する。
スイッチIC10の通信用ポートPIC(RF5)を送受兼用外部電極PM(UM1)に接続する。スイッチIC10の通信用ポートPIC(RF6)を受信用外部電極PM(Rx1)に接続する。スイッチIC10の通信用ポートPIC(RF7)を送受兼用外部電極PM(UM2)に接続する。スイッチIC10の通信用ポートPIC(RF8)を受信用外部電極PM(Rx2)に接続する。スイッチIC10の通信用ポートPIC(RF9)を送受兼用外部電極PM(UM3)に接続する。
この構成では、送受兼用外部電極PM(UM1),PM(UM2),PM(UM3)の接続する通信用ポートPIC(RF5),PIC(RF7),PIC(RF9)のそれぞれの間に、受信用外部電極PM(Rx1),PM(Rx2)の接続する通信用ポートPIC(RF6),PIC(RF8)が配設される。言い換えれば、送受兼用外部電極の接続する通信用ポートと、受信用外部電極が接続する通信用ポートとが、配列方向に沿って交互に配置される。これにより、スイッチIC10の送受兼用に利用する通信用ポート同士、および積層回路部品の当該通信用ポートに接続する近傍の回路パターン同士が近接しない。これにより、スイッチIC10の送受兼用に利用する通信用ポート同士、および積層回路部品の当該通信用ポートに接続する近傍の回路パターン同士でのアイソレーションを向上することができる。