JP5788033B2 - 架空送電線支持構造物 - Google Patents
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Description
例えば、鉄塔の建て替え工事の際に、その工事用地を迂回する経路に沿って複数の支持柱を設置し、送電線から引き出されたジャンパー線を支持柱により支持することで迂回路を形成する工事方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
前記腕金の本数を前記架空送電線の回線数の二倍以上とし、
下側又は上側の回線に対応する前記腕金に支持された架空送電線と、上側又は下側の回線に対応する前記腕金に支持された架空送電線とを、絶縁ジャンパー線で接続したことを特徴とする。
なおここで、上記架空送電線支持構造物には、腕金は少なくとも上側と下側の二回線分が設けられているが、より多くの腕金を設けることを除外する意味ではない。
本発明の第1の実施形態として、複数の径間からなる工事区間において、架空送電線の回線の増設及び送電容量の大きな架空送電線への交換を行うための架空送電線の工事方法について図面を参照して説明する。
送電線路の架空送電線の交換のための工事や回線を増す工事は、送電線路の沿線を複数の工事区間に区切り、工事区間毎に実施される。図1は、工事区間の一例を示すもので、この工事区間A内には、既存の鉄塔として、複数の耐張鉄塔10A及び懸垂鉄塔10Bが設置されている。
懸垂鉄塔10Bは、架空送電線から、主に下方への重力荷重が作用し、延線方向には荷重が殆ど生じない箇所で使用される。例えば、懸垂鉄塔10Bは、架空送電線の経路が直線となる区間内に設置される。
これに対して、耐張鉄塔10Aは、架空送電線から、下方への重力荷重だけでなく、延線方向に沿った張力も作用する箇所に使用される。例えば、耐張鉄塔10Aは、架空送電線の経路が屈曲する区間の屈曲部に設置されている。
図1は、両端に耐張鉄塔10A、10Aが設置され、それらの間に二本の懸垂鉄塔10B,10Bが設置された区間を工事区間Aとする場合を例示している。
耐張鉄塔10A及び懸垂鉄塔10Bは、図1に示すように、いずれも上下方向に沿った複数の主材11と当該複数の主材11の間に水平又は斜め方向に沿って配置された複数の副材12とから全体が構築されている。
なお、図1では、耐張鉄塔10Aと懸垂鉄塔10Bとを簡略的に同一構造で図示しているが、実際には、耐張鉄塔10Aは、架空送電線(以下、「送電線」と記す。)20からの張力にも耐えられるように、懸垂鉄塔10Bよりも強度の高い構造に構成されている。
また、懸垂鉄塔10Bの腕金14には、この箇所を通過する送電線20が懸垂碍子15bを介して吊下げられている。
なお、図1に示す既設の送電線20は、送電容量が66[kV]の鋼心アルミ撚り線である。
ジャンパー線30は、絶縁被覆されていないACSR(鋼心アルミ撚り線)からなる導線31と、導線31の両端部に装備されたケーブル取付端子32,32とを備えており、2つの半割部材で構成された取付端子32により送電線20に着脱可能に取り付けられている。
上記工事区間Aにおいて耐張鉄塔10A及び懸垂鉄塔10Bに対する架空送電線の回線増設工事及び架空送電線を交換する工事の方法を、工程ごとに順を追って説明する。
まず、図3に示すように、二本の耐張鉄塔10Aの各腕金14により支持されている工事区間A外の送電線20の端部と工事区間A内の送電線20の端部とを接続する全てのジャンパー線30を絶縁ジャンパー線130に交換する。
前記耐張鉄塔10Aのジャンパー線交換工事に続けて、送電線20の懸垂鉄塔10Bの懸垂碍子15bに吊下げられた部分を、図4に示すように、絶縁ジャンパー線130に置き換える。この工事は、次のように行う。
まず、送電線20の懸垂碍子15bに吊下げられた箇所から両側に所定寸法離れた位置に、ぞれぞれ引留め工具200を取りつける。両側の引留め工具200、200を、シリコーン碍子201を介して、鉄塔10Bの腕金14の懸垂碍子15bの上端部が取り付けられた箇所に引き留めた後、2つの引留め工具200,200間で送電線20を切断する。ついで、切断された両側の送電線20を絶縁ジャンパー線130で接続する。
絶縁ジャンパー線130は、支持具202で把持して懸垂碍子15bの下に吊り下げる。前記、引留め工具200には、カムアロング、クサビクランプ、圧縮クランプなどを利用できる。
ケーブル131は、主に、導体部と、その外周に形成された絶縁層と、その外周に形成された遮蔽層と、その外周に設けられたシースとで構成されている。
例えば、絶縁ジャンパー線130は、既設の送電線20と後述する新設の架空送電線である送電線120(図13参照)とに接続される場合がある。新設の送電線120は、既設の送電線20よりも送電容量が大きく、その外径も既設の送電線20よりも大きくなっている。
このため、既設の送電線20に絶縁ジャンパー線130の取付端子132を装着する際には、図6に示すように、その外径が挟持溝133に一致し、その内径が既設の送電線20に適したカラー134が使用される。また、新設の送電線120に取付端子132を装着する際には、図7に示すように、既設の送電線20より太い新設の送電線120に合わせて内径を大きくしたカラー134が使用される(外径は挟持溝133に一致している)。
なお、いずれのカラー134も、円筒を直径方向に沿って二分割した良導体からなる二つの半円筒体から構成されているので、二部材から構成されるケーブル取付端子132をボルト締めにより装着する際には、その挟持圧がカラー134を介して架空送電線に作用し、強固に装着することが可能である。
また、絶縁ジャンパー線を取り付ける二回線がそれぞれ異なる送電先に向かう場合には、それぞれの送電先への送電を停止させてジャンパー線30から絶縁ジャンパー線130への交換作業が行われる。
いずれの場合でも、ジャンパー線30及び絶縁ジャンパー線130は、送電線20に対する着脱がボルトを用いて容易に行うことができるので、片回線送電期間又は停電期間を短縮し、迅速な復帰を図ることが可能である。
その場合、過度な弛みが生じて下の送電線20との離隔距離が不足することがないように、耐張鉄塔10Aにおいては、図8に示すように、ケーブル131の余長分を環状にして結束バンドで束ねた束取り状態Tとし、水平な副材12の上に載置しておくことが望ましい。
また、懸垂鉄塔10Bにおいては、図9に示すように、懸垂碍子15bの両側(老番側と若番側)の張力バランスを確保するように、懸垂碍子15bの両側で束取り状態T,Tとして、引留め工具200、200等に吊下げておくことが望ましい。また、ケーブル131の両側の束取り状態T,Tの形成位置は、互いに離間するようにより径間側に形成することが望ましい。これにより、ケーブル131の束取り状態T,Tとなる部位とその下側に支持されている送電線20との離隔距離をより長く確保することが可能となる。
次に、工事区間内の全鉄塔10A,10Bを包み込み工法により個別に包み込みながら回線を増設した新規鉄塔を構築する鉄塔構築工程を行う。
包み込み工法とは、既設の鉄塔10A、10Bを撤去しないで、当該鉄塔10A、10Bを内側に取り込むようにして同じ敷地内に新規鉄塔を構築する工法である。新規鉄塔は、その主材及び副材が内側の鉄塔10A、10Bと干渉しないようにその寸法、配置等に考慮を払って設計されている。
図10に示すように、各耐張鉄塔10Aに対しては新規鉄塔としての耐張鉄塔110Aがその外側に構築され、各懸垂鉄塔10Bに対しては新規鉄塔としての懸垂鉄塔110Bがその外側に構築される。
なお、これら新規の鉄塔110A,110Bを構築する際には、予め各鉄塔10A,10Bから架空地線25が撤去される。
新設の鉄塔110A、110Bの下側の二回線分の腕金114は、既設の鉄塔10A、10Bの腕金14に近い高さに設けられている。また、これら腕金14と腕金114とは、いずれも同じ方向に向かって両側面から延出されている。また、上側の二回線分の各腕金114はこれら下側の回線の各腕金114よりも上方に配置されている。
耐張鉄塔110A(又は懸垂鉄塔110B)の一側面には、二回線分の六本の腕金114が上下に並び、その間隔は、新設する送電線120(図12参照)の送電容量に応じた離隔距離を考慮した距離になっている。
また、耐張鉄塔110A(又は懸垂鉄塔110B)は、その頂上部において、架空地線118(図12参照)を支持する腕金117を有している。
次に、工事区間A内の全鉄塔10A,10Bに支持された既設の送電線20の上側に新設の送電線120を架線する架線工程を実行する。
この架線工程では、図12に示すように、前記鉄塔構築工程で構築された各耐張鉄塔110A及び各懸垂鉄塔110Bの上側の二回線の腕金114に新設の送電線120が架線される。
新設の送電線120は、送電容量が275[kV]である鋼心アルミ撚り線であって、既設の送電線20よりも径の大きいものが使用される。
引き抜き工法では、隣接する二つの鉄塔に滑車を設置し、これらの間に牽引ロープを掛け渡す。そして、牽引ロープに送電線120を連結し、ウィンチにより牽引ロープを一方の鉄塔から他方の鉄塔側に引き寄せることで送電線120を鉄塔間に延線する。
また、吊金工法では、予め隣接する二つの鉄塔間にワイヤロープを架け渡す。そして、このワイヤロープに沿って移動するための移動車輪を備える複数の吊金装置を曳行ロープで曳行し、ワイヤロープに沿って一定間隔で吊金装置を展開させる。各吊金装置は、送電線120を送る滑車を備えており、予め滑車に掛け渡しておいた牽引ロープに送電線120を連結して引き寄せることで鉄塔間に延線することができる。
このようにして、工事区間内の鉄塔110A、110Bに新しい送電線120を増設する。
また、工事区間内の鉄塔110A、110Bの上端の腕金117に架空地線118の架線を行う。
次に、工事区間Aの両端部に位置する二本の耐張鉄塔10Aにおいて、工事区間A内の既設の送電線20を工事区間A外の送電線20から電気的に切断する切断工程を実行する。即ち、図12に示す、耐張鉄塔10Aの下側の回線において、工事区間A外の既設の送電線20と工事区間A内の既設の送電線20とを接続している絶縁ジャンパー線130の工事区間A内側の取付端子132(図11参照)を送電線20から外す。これにより、この絶縁ジャンパー線130を工事区間A内の既設の送電線20から切り離す。
また、この切断工程において、各懸垂鉄塔10Bの下側の二回線の全ての絶縁ジャンパー線130を撤去してもよい。
次に、工事区間の端部に位置する耐張鉄塔110Aにおいて、工事区間A外の送電線20の端部と工事区間内の新設の送電線120の端部とを絶縁ジャンパー線130により電気的に接続する迂回路形成工程を実行する。
この迂回路形成工程では、図13に示すように、切断工程で既設の送電線20から取り外された絶縁ジャンパー線130の取付端子132を、上方で支持された新設の送電線120の端部に取り付ける。また、絶縁ジャンパー線130は耐張鉄塔110Aに沿って上下に敷設される。
このようにして、工事区間Aの両端部において、工事区間A外の送電線20と工事区間A内の新設の送電線120とを絶縁ジャンパー線130により電気的に接続することにより迂回路が形成され、送電を再開できる。送電を再開すると、工事区間A外は送電線20で送電され、工事区間A内は新設の送電線120で送電される。
仮に、絶縁ジャンパー線取付工程で取り付けた絶縁ジャンパー線130のケーブル131の長さが、工事区間Aの内外の既設の送電線20を接続するために必要な最小限の長さであった場合には、切断工程において、耐張鉄塔110A、110Aから絶縁ジャンパー線130を撤去し、この迂回路形成工程では、工事区間A外の既設の送電線20と工事区間A内の新設の送電線120を接続できる長さの絶縁ジャンパー線130を新たに取り付ける。
特に、絶縁ジャンパー線130のケーブル131の長さが十分に長い場合には、工事区間A外の送電線20に取り付けた取付端子132は装着したままでよく、工事区間A内のみ、取付端子132を新設の送電線120に取り付ける作業を行えばよいので、停電期間を短縮することが可能である。
なお、図13に示す、既設の耐張鉄塔10Aと、包み込み工法によりその外側に構築された新設の耐張鉄塔110Aと、絶縁ジャンパー線130とからなる構造物は、本発明の架空送電線支持構造物の一実施形態である。
すなわち、この架空送電線支持構造物は、二回線分の架空送電線を支持する腕金14及び114が回線ごとに上下に配置されている。
また、絶縁ジャンパー線130は、絶縁層及び遮蔽層を有するものである。
この絶縁ジャンパー線130は、図3、図8を参照して説明したように、下側の腕金14に支持された二本の既設の送電線20,20の端部同士を接続する状態と、図13に示したように、下側の腕金14に支持された架空送電線(工事区間A外の送電線20)の端部と上側の腕金114に支持された送電線120の端部とを接続する状態とにつなぎ替えることができるものである。
つまり、耐張鉄塔110Aが上側の回線である新設の送電線120をその腕金114で支持しており、耐張鉄塔10Aが下側の回線である既設の送電線20をその腕金14で支持している。
そして、絶縁ジャンパー線130は、図12に示した、耐張鉄塔10Aの腕金14が延線方向の両側に支持する二本の送電線20,20を電気的に接続した状態から、図13に示した、耐張鉄塔10Aの腕金14に支持された工事区間A外の送電線20と耐張鉄塔110Aの腕金114に支持された新設の送電線120とを電気的に接続した状態に、つなぎ替えることが可能である。
従って、耐張鉄塔110Aと耐張鉄塔10Aと絶縁ジャンパー線130とにより、本発明の架空送電線の工事方法に適した「架空送電線支持構造物」を実現している。
次に、工事区間の全ての鉄塔10A、10Bが支持する既設の送電線20を、図14に示すように、新しい送電線220(他の架空送電線)に交換する送電線交換工程を実行する。なお、新しい送電線220には、前述した上側の回線に架線した送電線120と同じ鋼心アルミ撚り線が使用されている。
この送電線交換工程では、まず、工事区間の鉄塔10A、10Bにより支持されている既設の送電線20を全て撤去する。各送電線20は、前記切断工程において全ての絶縁ジャンパー線130を外しておいた場合には、当該各送電線20の両端部において碍子15aと連結されたクランプ部材を取り外すことにより撤去することが可能である。
各送電線20の撤去が完了すると、次に、図14に示すように、工事区間A内の全鉄塔110A,110Bの下側回線用の腕金114に新しい架空送電線220を架線する。
この架線作業は、前述した上側回線に送電線120を架線した作業と同じ方法で行うことができる。
次に、図15に示すように、工事区間A内の懸垂鉄塔10Bを撤去する。
上記鉄塔撤去工程の作業は、懸垂鉄塔10Bの上方を迂回して送電が行われているので、送電を停止させることなく実施可能である。
後述するように、工事区間A外の送電線20が、後の工事で新しい架空送電線220に交換されると、当該工事区間A外の送電線20が耐張鉄塔10Aの腕金14から外されるので、この後、今回の工事区間Aの両端にある耐張鉄塔10A,10Aの撤去が行われる。
上記懸垂鉄塔10B,10Bの撤去作業が完了すると、この工事区間Aについては、回線の増設及び架空送電線の交換のための架空送電線の工事が完了する。
既に工事が完了した工事区間に隣接する新規工事区間に対して、架空送電線の回線の増設及び架空送電線の交換を行う架空送電線の工事方法について、図16〜図22を参照しつつ、さらに説明する。以下の説明では、既に工事が行われた工事区間Aを「完了工事区間A」、その沿線方向に隣接する工事区間Bを「新規工事区間B」と記載することがある。
この新規工事区間Bにおける工事も、前述の完了工事区間Aにおいて行った工事と略同様なので、異なる点を中心に説明することとし、共通する点は簡潔に説明する。
この新規工事区間Bの一端にある耐張鉄塔10Aのジャンパー線30を撤去し、図17に示すように、絶縁ジャンパー線130に交換する。新規工事区間Bと完了工事区間Aとが重なる箇所にある耐張鉄塔10Aには、既に絶縁ジャンパー線130が取り付けられているので、この耐張鉄塔10Aに対する工事は省かれる。
また、送電線20の懸垂鉄塔10Bに吊下げられた箇所を絶縁ジャンパー線130に交換する(図17参照)。
なお、上記絶縁ジャンパー線の取り付け作業時には、この工事区間Bの送電線20に対して片回線送電又は送電停止状態とする。
絶縁ジャンパー線取付工程が完了したら、この新規工事区間Bの送電線20を用いて送電を開始する。
そして、この送電再開状態で、鉄塔構築工程を実施する。鉄塔構築工程では、図18に示すように、包み込み工法により耐張鉄塔110A及び懸垂鉄塔110Bを構築する。なお、この場合も、新規工事区間Bと完了工事区間Aとが重なる箇所にある耐張鉄塔10Aに対する工事は省かれる。
次いで、送電を継続した状態で、架線工程を実施する。架線工程では、図19に示すように、耐張鉄塔110A及び懸垂鉄塔110Bの上側の各腕金114に新しい送電線120を架線する。
さらに、この後、送電を停止した状態で、切断工程を実施する。切断工程では、工事区間Bの両端部に位置する耐張鉄塔10A、10Aに設けられた絶縁ジャンパー線130の工事区間B内側の端部を、工事区間B内の送電線20から外す。
なお、この切断工程が実施された後の絶縁ジャンパー線130の状態は、新規工事区間Bの一端側と他端側とでは異なっている。
すなわち、新規工事区間Bの完了工事区間Aと重なる一端側の位置にある耐張鉄塔110Aに設けた絶縁ジャンパー線130の新規工事区間B外(完了工事区間A側)の端部は、完了工事区間Aに新設した送電線120に接続されている。
これに対して、新規工事区間Bの他端側の位置にある耐張鉄塔110Aに設けた絶縁ジャンパー線130の新規工事区間B外(未工事側)の端部は、既設の送電線20に接続されている状態である。
次いで、迂回路形成工程では、新規工事区間B内の既設の送電線20から外された絶縁ジャンパー線130の端部を、図20に示すように、新規工事区間Bに新設した上側回線の送電線120に接続する。
これにより、新規工事区間Bの上側回線の新設の送電線120が、完了工事区間Aの上側回線の送電線120と、未工事側の既設の送電線20と電気的に接続され、新規工事区間Bに新設された上側回線の送電線120を経路とする迂回路が形成される。そして、この迂回路を通じて送電を再開する。
次いで、図21に示すように、送電線交換工程により、新規工事区間Bの下側回線の既設の送電線20を全て新規の架空送電線220に交換する。この時、前述のように迂回路が形成されているので、送電した状態で作業を行うことができる。
次いで、図22に示すように、鉄塔撤去工程により、新規工事区間Bの完了工事区間Aと重なる一端側の位置にある耐張鉄塔110Aと新規工事区間B内の懸垂鉄塔110Bの内側にある古い耐張鉄塔10A及び懸垂鉄塔10Bの撤去が行われ、当該新規工事区間の工事が完了する。
上述のように、送電線路の沿線を複数に区切って企画した工事区間の工事を順次行い、最終的に、図23に示すように、既設の送電線20を全て撤去し、新しい送電線120,220を敷設した送電線路を完成する。
上述した架空送電線の工事方法では、工事区間内の各耐張鉄塔110A及び懸垂鉄塔110Bの上側回線の腕金114に支持された新設の送電線120とその両端部に接続された絶縁ジャンパー線130,130とにより、既設の送電線20に替わる迂回路の形成を行っている。
このため、既存の送電線路の沿線の外側に、工事のための迂回路を形成する用地を確保する必要がなく、用地確保が困難な地域でも工事を行うことができる。また、地盤の悪い地域でも迂回路を形成するための新たな用地に対する基礎工事を不要とする。
特に、新規の大型の鉄塔110A、110Bを、もとの低い鉄塔10A、10Bに対する包み込み工法で構築することにより、新たな用地確保の必要性をさらに低減することができる。
なお、絶縁されている絶縁ジャンパー線130を用いたので、いずれかの接続状態において余長が生じたときには束取りし、鉄塔に載置しておく等して、ケーブル長を調節できるので、その取り扱いが容易である利点もある。
また、この絶縁ジャンパー線130に設けた取付端子132は、複数種類のカラー134を適宜選択して異なる径の送電線20、120に共用できるものなので、既設の送電線20と新設した送電線120の外径が異なる場合でも絶縁ジャンパー線130の流用が可能である。
図24〜図32は、本発明の工事方法の第2の実施形態を示すもので、前述の第1の実施形態と同様の箇所には同じ符号を付し、簡潔に説明にする。
この実施形態では、架空送電線の交換・増設の工事と合せて、工事区間Aにある懸垂鉄塔10Ba,10Bbのうち、懸垂鉄塔10Baを腕金の増設も行うことなく完全に撤去する工事を合せて行う。
次いで図29に示すように[送電線交換工程]で既設の送電線20を新しい送電線220に交換する。即ち、鉄塔10A、10A、10Bbに対して、図14で説明した手順と同様に送電線交換工程の作業が行われる。このとき、新設の送電線220は懸垂鉄塔10Baを回避してその外側を通過するように架線される。
この後[鉄塔撤去工程]で、既設の懸垂鉄塔10Baと共に撤去すると、図30、図31の状態になり、工事区間Aの工事が終了する。
そして、最終的に図32に示すように、送電線路全体に、新しい送電線120を増設するとともに、既設の送電線20を新しい送電線220に交換する。
前述した第1及び第2の実施形態における工事方法では、工事区間内の耐張鉄塔10A及び懸垂鉄塔10Bに対して包み込み工法で、より高い新規の耐張鉄塔110A及び懸垂鉄塔110Bを構築しているが、上方に回線増設の余地を得るために鉄塔10A、10Bを嵩上げ工法により、高くすることも可能である。
以下、発明の第3の実施形態として、鉄塔10A、10Bを嵩上げする嵩上げ工程とその前後の工程について説明する。
上記絶縁ジャンパー線取付工程は送電停止又は片回線送電で実施される。
前述のように絶縁ジャンパー線を取り付けたので、この嵩上げ工程は送電状態で実施できる。
上記架線工程も送電状態で実施される。
上記切断工程及び迂回路形成工程は送電停止又は片回線送電で実施される。
各鉄塔10A、10Bに対する架空送電線交換工程は、図14の説明とほぼ同じ手順により実施されるが、嵩上げを行った各鉄塔10A、10Bの場合には、既設の送電線20を支持していた腕金14に新規の送電線220が架線される。
上記架空送電線交換工程は、迂回路が形成されているので送電状態で実施される。
つまり、耐張鉄塔10Aが上側回線である新設の送電線120を、増設された腕金14で支持しており、耐張鉄塔10Aが下側回線である既設の送電線20を既設の腕金14で支持している。
そして、絶縁ジャンパー線130は、図35に示す、耐張鉄塔10Aの下側回線用の腕金14の両側に支持された二本の送電線20,20を電気的に接続した状態と、図37に示す、耐張鉄塔10Aの下側回線用の腕金14に支持された工事区間外の送電線20と耐張鉄塔10Aの上側回線用に増設された腕金14に支持された新設の送電線120とを電気的に接続した状態とにつなぎ替えることが可能である。
絶縁ジャンパー線130は、図37の状態に必要な長さのものであり、図35の状態では余長があるため、余長分は束取りされて、耐張鉄塔10Aの水平な箇所などに置かれている。
従って、耐張鉄塔10Aと絶縁ジャンパー線130とにより架空送電線の工事方向に適した「架空送電線支持構造物」を実現している。
上記実施形態では、工事区間内に両側面に二回線分の腕金14を有する耐張鉄塔10Aと懸垂鉄塔10Bがある場合に、その回線の増設と架空送電線の交換を行う架空送電線の工事方法を例示したが、これに限られない。
例えば、工事区間内に、低い耐張鉄塔10A及び懸垂鉄塔10Bではなく、前記耐張鉄塔110A及び懸垂鉄塔110Bに相当する鉄塔(以下、耐張鉄塔110A、懸垂鉄塔110Bと記載して、説明を簡潔にする。)が当初から設けられており、下側(又は上側)の回線の腕金114のみに既設の送電線20が架線されて使用されており、上側(又は下側)の回線の腕金114には架線されずに全て未使用の場合に、上記工事方法を適用して回線の増設及び架空送電線の交換を行うことが可能である。
その場合、送電状態で、工事区間内の鉄塔110A,110Bの未使用の回線に新設の送電線120を架線する(架線工程)。
そして、送電停止又は片回線送電状態で、工事区間の両端の耐張鉄塔110Aにおいて、工事区間内外の既設送電線20の電気的接続を切断する(切断工程)。切断は、例えば、ジャンパー線30の撤去により行う。
そして、送電停止又は片回線送電状態で、工事区間の両端の耐張鉄塔110Aに上下に沿った絶縁ジャンパー線130を取り付け、これにより、工事区間外の既設の送電線20と工事区間内に新設した送電線120とを接続し、迂回路を形成する(迂回路形成工程)。
そして、送電を再開して、耐張鉄塔110A及び懸垂鉄塔110Bの下側(又は上側)の回線の腕金114に支持された既設の送電線20を撤去し、他の架空送電線220を新たに架線する(架空送電線交換工程)。
このように、工事区間内の鉄塔110A,110Bが上側又は下側に未使用の回線を有する場合には、鉄塔構築工程や嵩上げ工程を行うことなく、回線の増設と架空送電線の交換を行うことが可能である。
従って、耐張鉄塔110Aと絶縁ジャンパー線130とにより架空送電線の工事方向に適した「架空送電線支持構造物」を実現している。
本発明の工事方法を実施する場合、既設の架空送電線が懸垂鉄塔に吊下げられていた箇所を絶縁ジャンパー線130に置き換えたときの構造は、図4、図9に示した構造以外にも考えられる。
例えば、図38に示すように、懸垂鉄塔10Bの懸垂碍子15bの上部にシリコーン碍子201を2つ取り付け、これらに圧縮クランプ等からなる引留め工具200Aを用いて既設の送電線20を接続した構造であっても良い。切り離された送電線20、20には、絶縁ジャンパー線130が取り付けられ、この絶縁ジャンパー線130は懸垂碍子15bの下に吊下げられている。
また、図39及び図40に示した構造は、懸垂碍子15bの下部に、絶縁ジャンパー線130を支持する部分(ジャンパー支持部)203aと、シリコーン碍子201を引き留めるワイヤー201aを支持する部分(碍子支持部)203bとを備える支持具203を設けた構造である。シリコーン碍子201には、引留め工具200Aを用いて既設の送電線20が接続されている。
図41は、腕金14の両側で支持される送電線20,20を接続するために必要な長さよりも十分に長い絶縁ジャンパー線130を上記支持具203を用いて支持する場合の構造を示しており、絶縁ジャンパー線130の余長を束取り状態Tにして、絶縁ジャンパー線130が下の送電線20に近づくのを防止している。また、懸垂碍子15bの両側で絶縁ジャンパー線130を束取り状態Tにすることで、懸垂碍子15bの両側の張力のバランスを取っている。
なお、上記鉄塔10A,10B,110A,110Bでは、腕金14又は114が一本の送電線20又は120を支持する1導体の場合を例示したが、腕金14又は114は2導体、4導体、6導体、8導体などのように、複数本の架空送電線を支持するものであっても良い。
その場合、導体である架空送電線同士が接触しないように、複数の架空送電線の間には一定間隔でスペーサが設置される。また、複数導体の場合には、導体の本数に応じて複数のジャンパー線30又は130が使用される。
そして、これら鉄塔110A,110Bにおける、鉄塔10A,10Bの回線と同数であってその上側又は下側に配置された回線を迂回経路として利用することが望ましい。
10B,10Ba,10Bb,110B 懸垂鉄塔
11 主材
12 副材
14,114 腕金
20 送電線(架空送電線)
30 ジャンパー線
31 導線
32 ケーブル取付端子
120 送電線(新設の架空送電線)
130 絶縁ジャンパー線
131 ケーブル
132 ケーブル取付端子
134 カラー
220 送電線(他の架空送電線)
A 完了工事区間(工事区間)
B 新規工事区間(工事区間)
T 束取り状態
Claims (1)
- 架空送電線を支持する腕金が回線ごとに上下に配置され、
前記腕金の本数を前記架空送電線の回線数の二倍以上とし、
下側又は上側の回線に対応する前記腕金に支持された架空送電線と、上側又は下側の回線に対応する前記腕金に支持された架空送電線とを、絶縁ジャンパー線で接続したことを特徴とする架空送電線支持構造物。
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