JP5787615B2 - 左室拡張機能障害治療剤 - Google Patents

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Description

本発明は、左室拡張機能障害の治療のための医薬組成物、および左室拡張機能障害の治療方法を提供する。また本発明は、拡張性うっ血性心不全治療および/または予防のための医薬組成物、および拡張性うっ血性心不全の治療および/または予防方法を提供する。
心不全とは、心臓のポンプ機能の障害により、体組織の代謝に見合う十分な血液を供給できない状態であり、うっ血性心不全は、さらに、心拍出量低下による循環血液量増加による、肺および/あるいは末梢のうっ血の症状を伴った状態である。
うっ血性心不全には、左室駆出率(EF)が低下した収縮性うっ血性心不全と、左室収縮能が正常である(左室駆出率が45%〜50%以上)ものの左室拡張機能に障害が生じ、明らかなうっ血性心不全の症状を呈する拡張性うっ血性心不全が存在する (非特許文献1)。このように、収縮性うっ血性心不全とは明らかに区別される疾患である、拡張性うっ血性心不全(または拡張性心不全;diastolic heart failure)の概念は、1996年に初めて提唱された(非特許文献2)。なお、本邦の慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版;4頁)によると、慢性心不全の診断にあたり、左室収縮性が低下した心不全を「収縮不全」、左室収縮性が保持された心不全を「拡張不全」と分類するとしている。拡張性うっ血性心不全は、この「拡張不全」と同義である。
拡張性うっ血性心不全の予後は、収縮性うっ血性心不全の予後に比し良好であるとする報告もあるが、一般的に、拡張性うっ血性心不全の予後は不良であり、その点において収縮性うっ血性心不全の予後と同様である(非特許文献3)。
米国におけるうっ血性心不全の患者数は460万人であり、その30%〜50%が拡張性うっ血性心不全である(非特許文献4)。すなわち、米国における拡張性うっ血性心不全患者数は140万人〜230万人と推定され、しかも、拡張性うっ血性心不全患者は増加しつつある(非特許文献5)。
日本におけるうっ血性心不全患者における拡張性うっ血性心不全患者の占める割合として、26% (非特許文献3)、34%(非特許文献6)および67.8%(非特許文献7)などが報告されている。日本において、うっ血性心不全有病者数は250万人程度、65歳以上が80%以上、死亡者は年間2万人程度と推定されており(非特許文献8)、拡張性うっ血性心不全患者数は、65万人〜170万人程度と推定される。拡張性うっ血性心不全患者の割合は、高齢者において高いことから、高齢化が進展する日本においては、拡張性うっ血性心不全患者数は増加していくものと考えられる。
心不全治療に関する大規模臨床試験はほとんどが収縮不全症例を対象にしており、拡張不全の治療に対する評価は十分ではなく、拡張不全に対する治療戦略は未だ確立されていない(非特許文献9)。事実、1987年〜2001年にわたって観察されたMayo Clinicの報告によれば、収縮性うっ血性心不全の生存率は改善されたものの拡張性うっ血性心不全では改善が認められていない(非特許文献5)。従って、拡張性うっ血性心不全の治療戦略の確立は急務であると考えられる。
拡張機能不全の基礎病態は、(1)心室スティフネスの増大、(2)不完全弛緩、(3)心外膜肥厚による心室拡張障害、(4)右室負荷による左室拡張障害が考えられる。心室スティフネス増大の原因として、心筋虚血、心筋への機械的刺激が主な要因である心筋細胞肥大、サイトカインなどの液性因子による心筋線維化が挙げられる。また、加齢によっても、心室スティフネスが増大する。
アンジオテンシンIIの心筋線維化への関与が報告されている(非特許文献10)。アンジオテンシンIIの存在下、心筋細胞は、TGF-β産生を引き起こし、TGF-βは線維芽細胞においてIL-6を誘導し、コラーゲン合成を促進する(非特許文献11)。 心肥大は、機械的負荷の増加に対する心筋組織の補償反応であり、機械因子の一つであるストレッチの後に肥大反応が続く。ストレッチによって誘導された心筋細胞肥大のメディエーターとして、アンジオテンシンII、エンドセリン-1、TGF-βが作用することが知られている(非特許文献12)。EPA(イコサペンタエン酸)は、in vitroの系において、エンドセリン-1によって誘導される心筋細胞肥大を抑制したとの報告がある(非特許文献13)。EPAは、エンドセリン-1によって上昇するTGF-β1産生およびJNK発現を抑制していた。
一方、収縮機能を保持した心不全患者において心室の硬化と血管の硬化が同時に生じる例が確認されている(非特許文献14)。血管のスティフネスを反映する脈波伝播速度は、拡張性心不全患者(E/A比率<0.75)で1804cm/sであり、拡張性心不全非罹患者(E/A比率>0.75)の1573cm/sよりも早く(非特許文献15)、心筋のスティフネスが上昇している拡張性心不全において、血管の硬さの指標である脈波伝播速度が上昇していた。
高血圧は、うっ血性心不全の一般的なリスクファクターであり、また、拡張性うっ血性心不全の先行指標としても認識されている。現在のところ心疾患に未罹患であるが、高血圧症であり、かつ左室拡張機能障害を有する患者は、将来の心血管イベントの発症リスクが高いとの報告がある(非特許文献16)。
ω3多価不飽和脂肪酸の心疾患に対する有効性の検討も報告されているが、収縮機能の改善の範囲に留まっている。
Duda MKらは、大動脈結紮により作成した収縮機能障害と左室リモデリングを特徴とする心不全ラットにおいて、これらの現象が凝縮魚油(Ocean Nutrition、EPA:21%、DHA:49%)投与によって減弱すると報告している(非特許文献17)。同様に、飽和脂肪酸29.3%、ω6多価不飽和脂肪酸10.8%およびω3多価不飽和脂肪酸22.8%を含むマグロ魚油をサルに投与し、心室充満が強化されることによる左室駆出分画率増加および心室細動誘発電気的閾値上昇の確認が報告されている(非特許文献18)。また、国際公開公報第WO2002/058793号(特許文献1)は収縮性の低下に起因する心機能不全および心不全の治療のためのイコサペンタエン酸エチルエステルおよびドコサヘキサエン酸エチルエステルの混合物を含有する必須脂肪酸の使用について言及する。さらに、国際公開公報第WO2003/068216号(特許文献2)は心不全罹患患者における突然死のリスクの軽減におけるω3多価不飽和脂肪酸の効果について言及する。
慢性心不全患者を対象とするGISSI-HF試験において、濃縮魚油(1g/日、1g中850〜880mgのEPAエチルエステルおよびDHAエチルエステルを1:1.2の比率で含む)を投与された慢性心不全患者の、死亡者数および心血管疾患による入院患者数は、3494例中1981例 (56.7%)であり、対照群の3481例中2053例(59.0%)に比し有意に少なかったとの報告がされている(非特許文献19)。該報告では、特に、左室駆出率40%以下の患者に限った場合、濃縮魚油投与群の死亡者数および心血管疾患による入院患者数は、3161例中1788例(56.6%)であり、対照群の3161例中1871例(59.2%)に比し少なかったのに対し、左室駆出率40%より大の患者においては、濃縮魚油投与群のそれは333例中193例(58.0%)であり、対照群の320例中182例(56.9%)よりも多かったことが示されている。
国際公開公報第WO2002/058793号 国際公開公報第WO2003/068216号
Vasan RSら、Circulation. 2000;Vol.101:pp.2118; Vasan RSら、Arch Intern Med.1996;156:1789; Tsutsui Hら、Cir J.2006:70:1617; Vasan RS, Benjamin EJ. N Engl J Med. 2001; 344:56; Owan TEら、N Engl J Med.2006;355:251; Kawashiro Nら、Cir J.2008;72:2015; 仙波宏章他.第74回日本循環器学会総会・学術集会.2010; 和泉徹、第122回日本医学会シンポジウム記録2002年.心不全診療の最前線.日本医学会発行.p6; 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009年度合同研究班報告)、慢性心不全治療ガイドライン2010年改訂版;pp26-28; Kuwahara Fら、Hypertension.2004;43:739; Sarkar Sら、Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2004 ;287:H107; van Wamel AJら、Mol Cell Biochem. 2001;218:113; Shimojo Kら、Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2006 ;291: H835; Kass DA.Hypertension 2005;46:185; Yambe Mら、Hypertension Res.2004;27:625; Schillaci Gら、Journal of the American College of Cardiology 2002;39:2005; Duda MKら、Cardiovascular Research.2009;81:319; McLennan PLら、Cardiovascular Research.1992;26:871; Gissi-HF Investigators. Lancet.2008;372: 1223
拡張性うっ血性心不全の患者数は少なくなく、かつ、高齢化に伴って増加しつつあり、その予後は必ずしも良好ではない。拡張性うっ血性心不全の治療戦略は未だ確立されておらず、新たな治療手段の提供が求められている。また、将来拡張性うっ血性心不全を発症するリスクの高い患者において、拡張性うっ血性心不全への移行を予防する手段が求められている。
問題を解決するための手段
本発明者は、左室拡張機能障害を有する患者に、ω3多価不飽和脂肪酸、特に、EPA、DHA、α−リノレン酸、その製薬学上許容しうる塩またはそれらのエステル(例えば、エチルエステル)、あるいはそれらの混合物を継続的に投与することにより、左室拡張機能障害を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の1つの側面によれば、以下の(1)〜(11)に記載の医薬組成物が提供される。
(1)ω3多価不飽和脂肪酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物であって、血中のω3多価不飽和脂肪酸/アラキドン酸比が0.5以下である患者に投与する、左室拡張機能障害治療用医薬組成物。
(2)ω3多価不飽和脂肪酸/アラキドン酸比が0.3以下である患者に投与する、(1)に記載の医薬組成物。
(3)高血圧症の患者に投与する、(1)または(2)に記載の医薬組成物。
(4)拡張性うっ血性心不全の治療のために用いられる、(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(5)浮腫、呼吸困難・息切れ、心室スティフネス増大、および心房細動から選択される拡張性うっ血性心不全における何れかの1つ以上の異常の改善のために用いられる、(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(6)拡張性うっ血性心不全の予後改善のために用いられる、(1)〜(5)のいずれかに記載の医薬組成物。
(7)拡張性うっ血性心不全の予防のために用いられる、(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(8)アンジオテンシンII受容体遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、Caチャネル阻害剤、β遮断薬、利尿薬、およびHMG-CoA還元酵素阻害薬から選択される薬剤と併用する、(1)〜(7)のいずれかに記載の医薬組成物。
(9)ω3多価不飽和脂肪酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルが、イコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、α−リノレン酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物である(1)〜(8)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10)イコサペンタエン酸エチルエステルを有効成分として含有する、(9)に記載の医薬組成物。
(11)イコサペンタエン酸エチルエステルを1.2g/日以上の用量で投与されるように用いられる、(10)に記載の医薬組成物。
本発明の別の側面によれば、以下の(12)〜(21)に記載の医薬組成物が提供される。
(12)イコサペンタエン酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物であって、血中のイコサペンタエン酸/アラキドン酸比(EPA/AA)比が0.5以下である患者に投与する、左室拡張機能障害治療用医薬組成物。
(13)EPA/AA比が0.3以下である患者に投与する、(12)に記載の医薬組成物。
(14)高血圧症の患者に投与する、(12)または(13)に記載の医薬組成物。
(15)拡張性うっ血性心不全の治療のために用いられる、(12)〜(14)のいずれかに記載の医薬組成物。
(16)浮腫、呼吸困難・息切れ、心室スティフネス増大、および心房細動から選択される拡張性うっ血性心不全における何れかの1つ以上の異常の改善のために用いられる、(12)〜(15)のいずれかに記載の医薬組成物。
(17)拡張性うっ血性心不全の予後改善のために用いられる、(12)〜(16)のいずれかに記載の医薬組成物。
(18)拡張性うっ血性心不全の予防のために用いられる、(12)〜(14)のいずれかに記載の医薬組成物。
(19)アンジオテンシンII受容体遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、Caチャネル阻害剤、β遮断薬、利尿薬、およびHMG-CoA還元酵素阻害薬から選択される薬剤と併用する、(12)〜(18)のいずれかに記載の医薬組成物。
(20)イコサペンタエン酸エチルエステルを有効成分として含有する、(12)〜(19)のいずれかに記載の医薬組成物。
(21)イコサペンタエン酸エチルエステルを1.2g/日以上の用量で投与するように用いられる、(20)に記載の医薬組成物。
本発明のさらに別の側面によれば、以下の(22)〜(31)に記載の方法が提供される。
(22)イコサペンタエン酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つを、血中のイコサペンタエン酸/アラキドン酸比(EPA/AA)比が0.5以下である患者に投与することを含む、左室拡張機能障害の治療方法。
(23)EPA/AA比が0.3以下である患者に投与する、(22)に記載の方法。
(24)患者が高血圧症である、(22)または(23)に記載の方法。
(25)拡張性うっ血性心不全の患者に用いられる、(22)〜(24)のいずれかに記載の方法。
(26)浮腫、呼吸困難・息切れ、心室スティフネス増大、および心房細動から選択される拡張性うっ血性心不全における何れかの1つ以上の異常の改善のために用いられる、(22)〜(25)のいずれかに記載の方法。
(27)拡張性うっ血性心不全の予後改善のために用いられる、(22)〜(26)のいずれかに記載の方法。
(28)拡張性うっ血性心不全の予防に用いられる、(22)〜(24)のいずれかに記載の方法。
(29)アンジオテンシンII受容体遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、Caチャネル阻害剤、β遮断薬、利尿薬、およびHMG-CoA還元酵素阻害薬から選択される薬剤を投与することをさらに含む、(22)〜(28)のいずれかに記載の方法。
(30)イコサペンタエン酸エチルエステルを投与する、(22)〜(29)のいずれかに記載の方法。
(31)イコサペンタエン酸エチルエステルを1.2g/日以上の用量で投与する、(30)に記載の方法。
本発明は、左室拡張機能障害および拡張性うっ血性心不全の治療手段を提供する。また本発明は拡張性うっ血性心不全の予防手段を提供する。本発明の医薬組成物は、左室拡張機能障害を改善し、また拡張性うっ血性心不全における浮腫、呼吸困難・息切れ、心室スティフネス増大、および/または心房細動といった症状を改善する。また、将来拡張性うっ血性心不全を発症するリスクの高い患者において、拡張性うっ血性心不全への移行を予防する。特にEPA/AA比が0.5以下である患者に投与した場合に顕著な効果を発揮する。本発明の医薬組成物または方法は安全性が高く、副作用が少ないため、高齢者における左室拡張機能障害および拡張性うっ血性心不全の処置のための使用に適している。
以下に本発明を詳細に説明する。
多価不飽和脂肪酸(PUFAs)は、分子内に複数の炭素−炭素二重結合を有する脂肪酸と定義され、二重結合の位置により、ω3、ω6などに分類される。ω3PUFAsとしては、α−リノレン酸、イコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などが例示される。本発明では、多価不飽和脂肪酸の等価体として、その製薬上許容されるその塩、エステル、アミド、リン脂質、またはグリセリドなどを包含する多価不飽和脂肪酸誘導体を有効成分として使用することができる。
本発明で用いられるω3多価不飽和脂肪酸は、合成品、半合成品または天然品のいずれでもよく、これらを含有する天然油の形態でもよい。ここで、天然品とは、ω3多価不飽和脂肪酸またはその誘導体を含有する天然油から公知の方法によって抽出されたもの、粗精製されたもの、あるいはそれらを更に高度に精製したものを意味する。半合成品は、微生物などにより産生された多価不飽和脂肪酸を含み、また該多価不飽和脂肪酸あるいは天然の多価不飽和脂肪酸にエステル化、エステル交換等の化学処理を施したものも含まれる。本発明では、ω3PUFAsとして、これらのうちの1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明では、有効成分として、ω3多価不飽和脂肪酸、具体的には、EPA、DHA、α−リノレン酸、およびこれらの製薬学上許容しうる塩およびエステルが例示される。製薬学上許容しうる塩およびエステルは、ナトリウム塩、カリウム塩などの無機塩基、ベンジルアミン塩、ジエチルアミン塩などの有機塩基、アルギニン塩、リジン塩などの塩基性アミノ酸との塩およびエチルエステル等のアルキルエステルやモノ−、ジ−およびトリ−グリセリド等のエステルが例示される。好ましくはエチルエステルであり、特にEPAエチルエステル(EPA−E)および/またはDHAエチルエステル(DHA−E)が好ましい。本発明の医薬組成物は、有効成分としてイコサペンタエン酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましく、特に好ましくはイコサペンタエン酸またはイコサペンタエン酸エチルエステルを含む。
ω3多価不飽和脂肪酸およびその製薬学上許容しうる塩およびエステルの純度は特に限定されないが、医薬組成物の全脂肪酸中のω3PUFAsの含量は、好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上であり、さらに好ましくは98質量%以上であり、とりわけ好ましくは医薬組成物がω3多価不飽和脂肪酸以外の他の脂肪酸成分を実質的に含まない態様である。例えば、EPA−EおよびDHA−Eを用いる場合、EPA−E/DHA−Eの組成比および全脂肪酸中のEPA−E+DHA−Eの含量比は特に問わないが、好ましい組成比として、EPA−E/DHA−Eは、0.8以上であることが好ましく、更に好ましくは、1.0以上、より好ましくは、1.2以上である。EPA−E+DHA−Eは高純度のもの、例えば、全脂肪酸およびその誘導体中のEPA−E+DHA−E含量比が40質量%以上のものが好ましく、55質量%以上のものがさらに好ましく、84質量%以上のものがさらに好ましく、96.5質量%以上のものが更に好ましい。他の長鎖飽和脂肪酸含量は少ないことが好ましく、長鎖不飽和脂肪酸でもω6系、特にアラキドン酸含量は少ないことが望まれ、2質量%未満が好ましく、1質量%未満がさらに好ましい。
本発明に用いられるEPA−Eおよび/またはDHA−Eは、魚油あるいは魚油の濃縮物に比べ、飽和脂肪酸やアラキドン酸等の心血管イベントに対して好ましくない不純物が少なく、栄養過多やビタミンA過剰摂取の問題もなく作用効果を発揮することが可能である。また、エチルエステル体のため主にトリグリセリド体である魚油等に比べて酸化安定性が高く、通常の酸化防止剤添加により十分安定な組成物を得ることが可能である。
このEPA−Eは、日本において、閉塞性動脈硬化症(ASO)および高脂血症治療薬として入手可能な高純度EPA−E(96.5質量%以上)含有軟カプセル剤(商品名エパデール:持田製薬社製)を用いることができる。また、EPA−EとDHA−Eの混合物は、例えば、米国で高TG血症治療薬として市販されているロバザ(Lovaza:グラクソ・スミス・クライン:EPA−E約46.5質量%、DHA−E約37.5質量%含有する軟カプセル剤)を使用することもできる。
本発明の有効成分として、遊離の脂肪酸またはグリセリドの構成脂肪酸などとしてω3多価不飽和脂肪酸を含有する精製魚油も使用できる。また、ω3多価不飽和脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドまたはこれらの組合せなども好ましい態様の一つである。例えばインクロメガ(lncromega)F2250、F2628、E2251、F2573、TG2162、TG2779、TG2928、TG3525およびE5015(クローダ インターナショナル ピーエルシー (Croda International PLC, Yorkshire, England))、および EPAX6000FA、EPAX5000TG、EPAX4510TG、EPAX2050TG、EPAX7010EE、K85TG、K85EEおよびK80EE (プロノバ バイオファーマ(Pronova Biopharma, Lysaker, Norway) )などの種々のω3多価不飽和脂肪酸、その塩およびエステルを含有する製品が市販されており、これらを入手して使用することもできる。
心機能不全の診断は、(1)心疾患に基づく症状・所見の存在を診断,原因疾患の検索、(2)心機能評価(収縮機能,拡張機能)を経て行われる。収縮機能の評価は、一般的に左室駆出率(LV ejection fraction;LVEF)が用いられ、40〜50 % 以下が収縮不全とされている。心収縮能は、経胸壁心エコー・ドプラ法、経食道心エコー・ドプラ法、コンピューター断層像(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)、心臓カテーテル法などを用いて評価される。
一方、左室拡張機能の評価には複数の指標が提唱されており、例えば、心エコー法、特に心エコー・ドプラ法(Doppler echocardiography)、RI 心プールシンチグラム法、心臓カテーテル法を用いることができる。
心エコー・ドプラ法を用いた左室流入血流速波形において、拡張早期波形のピーク血流速(E)と心房収縮期波形のピーク血流速(A)の比(E/A比)と、そのパターン変化より拡張不全の進行過程を観察することができる。また、II音開始から拡張早期波形開始までの時間(isovolumetric relaxation time:IRT)は,能動的弛緩能を表し,拡張早期波形のピークから血流速がゼロになるまでの時間(deceleration time:DT)は,左室スティフネスと相関する。左室拡張機能障害の指標として、1)拡張早期波形のピーク血流速(E: peak filling velocity of mitral inflow during early diastole)と心房収縮期波形のピーク血流速(A: peak filling velocity of mitral inflow during atrial contraction)の比(E/A比)、2)拡張早期波形のピークから血流速がゼロになるまでの時間(DT: deceleration time)、3)拡張早期僧帽弁輪運動速度(E': early diastolic mitral annulus velocity)、4)E/E'比などが挙げられる。左室拡張障害においては、E/A比<1.0、DT>250msec、E'<8cm/s、E/E'比>15、IRT >100 msecの条件の1以上に該当する。
RI 心プールシンチグラム法では、拡張能の指標である左室急速流入期の最大流入速度を示す最大充満速度(peak filling rate:PFR)、弛緩持続時間を表す最大充満速度到達時間(time to peak filling rate:TPFR)を求める。心臓カテーテル法においては、左室拡張末期圧(Left venticular end-diastolic pressure:LVEDP)、あるいは肺動脈楔入圧(左房圧の代用として)が求められる。さらには、拡張機能障害が起こると心拍出量を維持するために、二次的に左室充満圧が上昇することから、間接的に拡張機能障害の存在を示す、左室拡張末期圧や肺動脈楔入圧の上昇は,間接的に拡張機能障害の存在を示し、弛緩能の指標として、左室圧下降脚の一次微分の最大値(peak negative dP/dt),左室圧の下降脚の時定数(time constant:Tau, t)が用いられる。また、左室スティフネスは拡張期圧・容積関係の一次微分(dP/dV)として求められる。正常参考値としては、最大充満速度(peak filling rate:PFR)3.13±0.85/sec、左室圧下降脚の一次微分の最大値(peak negative dP/dt)1864±390 mmHg/sec、左室圧下降脚の時定数(time constant:Tau, t)33±8 msecである。また、現在、拡張機能評価法として広く用いられている非侵襲的指標は、拡張機能障害のために二次的に生じている左房圧の上昇や形態変化であり、左房圧は高いほど、拡張機能障害が進行していると判断される(慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)、5〜9頁)。
本発明は、左室拡張機能障害を有する患者に適用される。本発明の医薬組成物は、左室拡張機能障害を改善し、治療する効果を有する。特に、EPA/AA比が0.5以下である患者に投与した場合に顕著な効果を発揮する。左室拡張機能障害を改善および/または治療することは、拡張性うっ血性心不全の治療および/または予防につながる。本発明による左室拡張機能障害の治療効果とは、特には限定されないが、例えばE/A比、DT、E'(e'と表示することもある)、E/E'比などの左室拡張機能障害の指標の改善により確認することができる。これらの指標のうち少なくとも1つの指標の改善が確認できればよい。効果の確認としては、少なくとも1つの指標の質的な改善が確認できればよいが、数値で表示可能な指標については、治療前の値より少なくとも2%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上の改善が確認できることが望ましい。
本発明は、拡張性うっ血性心不全の患者に適用される。拡張性うっ血性心不全の患者は一般に、左室駆出率が40%より大であり、左室収縮性が保持された慢性心不全患者である。左室駆出率が大きいほど左室収縮性が正常に近く、好ましくは左室駆出率が45%以上、更に好ましくは50%以上である。左室駆出率は、心エコー検査において、計測された左室拡張末期短軸径(Dd)および収縮末期短軸径(Ds)から、各々拡張末期容積(EDV)および収縮末期容積(EDV)を算出し、(EDV−EDV)/EDVとして求められる(心臓超音波テキスト、日本超音波検査学会監修、医歯薬出版株式会社発行、2001年)。また、上記の拡張機能の評価法を用いて、拡張機能障害の有無を確認してもよい。
本発明による拡張性うっ血性心不全の治療効果とは、特には限定されないが、例えば浮腫、呼吸困難・息切れ、心室スティフネス増大、心拡張機能障害、および心房細動などの拡張性うっ血性心不全における症状の改善などにより確認することができる。これらの指標のうち少なくとも1つの指標の改善が確認できればよい。効果の確認としては、少なくとも1つの指標の質的な改善が確認できればよいが、数値で表示可能な指標については、治療前の値より少なくとも2%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上の改善が確認できることが望ましい。または心不全の治療効果の指標として使用されるバイオマーカー(例えば、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP))のレベルの測定により本発明の効果を確認することができる。あるいは、本発明による一定期間の治療により、NYHA分類の少なくとも1段階の低下により本発明の効果は確認することができる。
1つの態様において、本発明は生活習慣病に罹患している患者に適用される。生活習慣病としては、高脂血症、糖尿病、メタボリックシンドローム、高血圧症、および肥満症など、特に高血圧症が例示される。高血圧症、糖尿病、または肥満症はうっ血性心不全の一般的なリスクファクターであり、左室拡張機能障害は将来の心不全への移行リスクの予測指標となる。従って、現在のところ心疾患に未罹患であるが、高血圧症、糖尿病、または肥満症であり、かつ左室拡張機能障害を有する患者は、将来拡張性うっ血性心不全に移行するリスクが高い。したがって、このような患者に本発明の医薬組成物を適用することで拡張性うっ血性心不全を予防することができる。本発明は高血圧症に罹患し、左室拡張機能障害を有している患者に好ましく適用される。高血圧症に罹患し、左室拡張機能障害を有している患者にω3多価不飽和脂肪酸を投与することで、心不全、特に拡張性うっ血性心不全へ移行するリスクを軽減することができる。高血圧症に罹患し、左室拡張機能障害を有している患者にω3多価不飽和脂肪酸を継続的(1年以上)に投与し、ω3多価不飽和脂肪酸を投与した群では投与しなかった群に比して、心不全へ移行する、または心機能が悪化する割合が低くなることを確認することができる。
本発明に用いられるω3多価不飽和脂肪酸の投与量および投与期間は対象となる作用を現すのに十分な量および期間とされるが、その剤形、投与方法、1日当たりの投与回数、症状の程度、体重、年齢等によって適宜増減することができる。
経口投与する場合は、例えばEPA−Eおよび/またはDHA−Eとして0.3〜10g/日、好ましくは0.6〜6g/日、より好ましくは1.0〜4g/日、さらに好ましくは1.2〜2.7g/日を1〜3回に分けて投与するが、必要に応じて全量を1回あるいは数回に分けて投与してもよい。特に、過剰な膜脂肪を縮小・除去することにより、拡張性うっ血性心不全を治療するためには、ω3多価不飽和脂肪酸として1.2g/日以上、好ましくは1.8g/日以上、更に好ましくは2.7g/日以上投与する。投薬期間としては、少なくとも2週間以上、好ましくは1ヶ月以上、更に好ましくは3ヶ月以上である。また、投与時間は食中ないし食後が好ましく、食直後(30分以内)投与が更に好ましい。また、例えば1日おきに投与する、1週間に2〜3日投与することもできる。
本発明は、血中のω3多価不飽和脂肪酸の濃度のアラキドン酸濃度に対する比(ω3多価不飽和脂肪酸/アラキドン酸(AA)比)が0.5以下、好ましくは0.3以下である患者に適用される。ここで血中濃度を測定するω3多価不飽和脂肪酸は、患者に投与するω3多価不飽和脂肪酸であり、ω3多価不飽和脂肪酸の血中濃度は、例えば、EPA、DHA、およびα−リノレン酸の血中濃度の合計、EPAおよびDHAの血中濃度の合計、またはEPAおよびDHAの血中濃度であってもよい。本発明が適用される患者のω3多価不飽和脂肪酸/アラキドン酸比は投与開始前に測定される。血中のω3多価不飽和脂肪酸/アラキドン酸比は投与1週間で1.0を超え、投与前の2倍程度となる。本発明の一つの態様として、継続投与の指標として投与後1週間目のω3多価不飽和脂肪酸の血中濃度をω3多価不飽和脂肪酸/アラキドン酸比を1.0以上で維持するように投与量、投与間隔を調整することができる。
ω3多価不飽和脂肪酸としてEPAおよび/またはEPA−Eを投与する場合は、EPA/AA比が0.5以下、好ましくは0.3以下である患者に適用される。本発明の一つの態様として、継続投与の指標として、EPA/AA比を1.0以上で維持するようにω3多価不飽和脂肪酸の投与量、投与間隔を調整することができる。
本発明の医薬組成物は、有効成分をそのまま投与するか、或いは一般的に用いられる適当な担体または媒体、賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、香味剤、必要に応じて滅菌水や植物油、更には無害性有機溶媒あるいは無害性溶解補助剤(例えばグリセリン、プロピレングリコール)、乳化剤、懸濁化剤(例えばツイーン80、アラビアゴム溶液)、等張化剤、pH調整剤、安定化剤、無痛化剤、嬌味剤、着香剤、保存剤、抗酸化剤、緩衝剤、着色剤などの添加剤と適宜選択組み合わせて適当な医薬用製剤に調製することができる。添加剤として、例えば乳糖、部分α化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール、トコフェロール、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタン、タルク、ジメチルポリシロキサン、二酸化ケイ素、カルナウバロウなどを含有しうる。
特に、ω3多価不飽和脂肪酸は高度に不飽和であるため、抗酸化剤、例えばブチレート化ヒドロキシトルエン、ブレチート化ヒドロキシアニソール、プロピルガレート、没食子酸、医薬として許容されうるキノンおよびα−トコフェロールから選ばれる少なくとも1種を抗酸化剤として有効量含有させることが望ましい。
製剤の剤形は、本発明の有効成分の併用形態によっても異なり、特に限定されないが、経口製剤が好ましく、例えば、錠剤、フィルムコーティング錠、カプセル剤、マイクロカプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、経口用液体製剤、シロップ剤、ゼリー剤、吸入剤の形で用い得る。とりわけカプセル、例えば軟質カプセルやマイクロカプセルに封入して、あるいは錠剤、フィルムコーティング錠での経口投与が好ましい。また、腸溶製剤や徐放化製剤として経口投与してもよく、透析患者や嚥下困難な患者などにはゼリー剤として経口投与することも好ましい。
本発明の医薬組成物は、ω3多価不飽和脂肪酸以外の第二の薬剤と併用することができる。第二の薬剤は本発明の医薬組成物に含有させることも可能であり、また別々の製剤として、同時にまたは時間差をおいて別途投与することも可能である。第二の薬剤は特に限定されないが、降圧薬(レニン−アンジオテンシン系抑制薬、交感神経β受容体遮断薬(β遮断薬)、Caチャネル阻害剤、α/β遮断薬、中枢性α2作動薬又はその他中枢作用薬、および血管拡張薬など)、硝酸薬、利尿薬、抗不整脈薬、高脂血症薬(スタチン)、抗血栓薬、糖尿病/糖尿病合併症治療薬、および抗肥満薬などが、好ましくは、レニン−アンジオテンシン系抑制薬、利尿薬、交感神経β受容体遮断薬(β遮断薬)、およびCaチャネル阻害剤などが例示される。レニン−アンジオテンシン系抑制薬としては、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が挙げられる。
一つの側面において、本発明は、拡張性うっ血性心不全の予後の改善のために使用される。予後には、生存期間、生存率、心血管事由による入院を含む。例えば、拡張性うっ血性心不全の発症し根治療法が困難な患者に対して本発明は特に適している。
本発明の医薬組成物は、有効成分に加え、薬学的に許容され得る賦形剤を含むことができる。適宜、公知の抗酸化剤、コーティング剤、ゲル化剤、嬌味剤、着香剤、保存剤、抗酸化剤、乳化剤、pH調整剤、緩衝剤、着色剤などを含有させてもよい。
本発明の医薬組成物は、常法に従って製剤化することが可能である。ω3多価不飽和脂肪酸の粉末は、例えば、(A)EPA−E、(B)食物繊維、(C)デンプン加水分解物及び/又は低糖化還元デンプン分解物、及び(D)水溶性抗酸化剤を含有する水中油型乳化液を、高真空下で乾燥させ、粉砕処理する(特開平10−99046)など公知の方法により得られる。得られたEPA−Eの粉体を用いて、常法に従い、顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、フィルムコーティング錠、チュアブル錠、徐放錠、口腔内崩壊錠(OD錠)などを得ることができる。チュアブル錠であれば、例えば、EPA−Eをヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性高分子溶液中に乳化し、得られた乳化液を乳糖などの添加剤に噴霧して粉粒体を得(特開平8−157362)、打錠することなど公知の方法により得ることができる。口腔内崩壊錠であれば、例えば特開平8−333243など、口腔用フィルム製剤であれば、例えば特開2005−21124など、公知の方法に準じて製造することができる。
本発明の医薬組成物は、有効成分の薬理作用を発現できるように、放出、吸収されることが望ましい。本発明の配合剤は、有効成分の放出性に優れる、有効成分の吸収性に優れる、有効成分の分散性に優れる、配合剤の保存安定性に優れる、患者の服用利便性、あるいはコンプライアンスに優れる製剤の少なくともいずれか1以上の効果を持つことが望ましい。
次に本発明の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
高血圧症である患者41名(平均年齢68±10歳)について血液成分検査および心機能検査を行った。心エコー・ドプラ法により各患者には左室拡張機能の障害が確認された。ここで左室拡張機能障害は、拡張早期僧帽弁輪運動速度(e')<8cm/sであり、左室駆出率(LV ejection fraction;LVEF)>50%との指標により定義される。測定した血中のEPA/AA比に基づき、患者を高EPA/AA比および低EPA/AA比の2群に分けた(中央値:0.42)。各患者群の特性を以下の表1に示す。試験時に各患者に処方されていた薬剤を表2に示す。
Figure 0005787615
Figure 0005787615
両群に高純度EPA製剤(商品名エパデール:持田製薬株式会社製)を1日1800mg、6ヶ月間経口投与した。6ヶ月後に血液成分検査および心機能検査を行い、各群について投与前の測定結果と比較した。
EPA/AA比の変化について表3に示す。EPA製剤投与後EPA/AA比は両群において有意に上昇した。
Figure 0005787615
両群の血圧の変化について表4に示す。両群ともEPA製剤投与前後において収縮期血圧、拡張期血圧に有意な差はなかった。
Figure 0005787615
拡張早期僧帽弁輪運動速度(e')の変化について表5に示す。高EPA/AA比群においてe’の有意な変化は確認されなかったのに対し、低EPA/AA比群ではEPA製剤投与後ではe’値の有意な上昇が確認された。
Figure 0005787615
脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の血中レベルの変化について表6に示す。高EPA/AA比群においてBNPレベルの有意な変化は確認されなかったのに対し、低EPA/AA比群ではEPA製剤投与後ではBNPレベルの有意な上昇が確認された。
Figure 0005787615
以上の結果より、EPA製剤投与は低EPA/AA比の高血圧患者における左室拡張機能を改善した。
血液成分検査の結果について、以下の表7に示す。
Figure 0005787615

Claims (10)

  1. イコサペンタエン酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含有する医薬組成物であって、左室駆出率が50%以上であり、血中のイコサペンタエン酸/アラキドン酸比(EPA/AA比が0.5以下であることが確認された患者に投与する、左室拡張機能障害治療用医薬組成物。
  2. EPA/AA比が0.3以下である患者に投与する、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 高血圧症の患者に投与する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
  4. 拡張性うっ血性心不全の治療のために用いられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  5. 浮腫、呼吸困難・息切れ、心室スティフネス増大、および心房細動から選択される拡張性うっ血性心不全における何れかの1つ以上の異常の改善のために用いられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  6. 拡張性うっ血性心不全の予後改善のために用いられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  7. 拡張性うっ血性心不全の予防のために用いられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  8. アンジオテンシンII受容体遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、Caチャネル阻害剤、β遮断薬、利尿薬、およびHMG-CoA還元酵素阻害薬から選択される薬剤と併用する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  9. イコサペンタエン酸エチルエステルを有効成分として含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  10. イコサペンタエン酸エチルエステルを1.2g/日以上の用量で投与するように用いられる、請求項9に記載の医薬組成物。
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