以下、本発明の実施の形態を、図面に従って説明する。図1は、内燃機関、特に船舶用ディーゼル機関10の概略の断面図である。ディーゼル機関10は多気筒機関であり、図1の紙面を貫く方向に複数の気筒が直列に配置されている。ピストン12は、シリンダライナ14の円筒内周面に沿って摺動しつつ往復運動し、この往復運動が連接棒16を介してクランク軸18の回転運動に変換される。シリンダライナ14はエンジンフレーム20に支持され、シリンダライナ14とエンジンフレーム20の間には、冷却水の流れる水ジャケットが形成される。このエンジンフレーム20の、シリンダライナを囲みこれを支持する部分と、シリンダライナ14とでシリンダが構成される。エンジンフレーム20には、クランク軸18を支持する軸受が設けられているが、図1においては省略されている。
エンジンフレーム20の上部には、シリンダヘッド22がヘッドボルトにより締結されており、これによりシリンダヘッド22がシリンダライナ14の上部の開口に当接し、密着している。ピストン12の頭頂面と、これに対向するシリンダヘッド22の下面と、シリンダライナ14の内周面により燃焼室が形成される。シリンダヘッド22の燃焼室の中央にあたる部分に燃料噴射弁26が設けられている。燃料噴射弁の配置は、噴射される燃料の噴霧の拡がり方など、燃焼状況により適切に定められればよく、中央以外に部分に設けられてもよい。シリンダヘッド22には、燃焼室に通じる吸気ポートおよび排気ポートが形成されており、さらに、これらのポートの燃焼室に対する開口を開閉するための吸気弁、排気弁が配置される。吸排気弁は、燃料噴射弁26の紙面奥側と手前側に配置されており、図1においては示されていない。吸気ポートは吸気管32に連通しており、排気ポートは排気管34に連通している。
また、図2の部分拡大図に示すように、シリンダヘッド22には、インジケータコック(計測用コック)53が設けられる。インジケータコック53は、シリンダライナ14の内部の圧力等を計測するためにシリンダヘッド22に管路53aを形成し、管路53aの端部をシリンダヘッド22の外部まで引き出して構成される。シリンダヘッド22の外部に引き出された管路53aの端部にはバルブ53cが設けられ、このバルブ53cを開けることによって、燃焼室内の燃料や空気等の一部を抜き出してその性状を計測することができる。
本実施の形態では、管路53a内の気柱振動を計測するために、管路53a内の圧力を計測するための圧力センサ53bが設けられている。圧力センサ53bは、管路53a内の圧力を検出し、後述のシステム制御部114へ出力する。
シリンダの側方には、ギア、チェーンなどの伝達装置を介してクランク軸18に駆動されるカム軸36が配置される。カム軸36は、気筒の配列方向と平行に配置され、各気筒の吸気弁、排気弁に対応したカム38を備えている。カム38のカム面に接するカムフォロワ40が設けられ、さらに、カムフォロワ40に接続され、シリンダヘッド22に向けてプッシュロッド42が延びて配置される。シリンダヘッド22には、ロッカーアーム44が配置され、ロッカーアーム44の一端にはプッシュロッド42が接続し、他端は吸気弁と排気弁のステム端46に接続している。カム軸36の回転により、カム38がカムフォロワ40を揺動させ、この動きがプッシュロッド42を介してロッカーアーム44に伝達される。そして、ロッカーアーム44も揺動して吸気弁および排気弁が駆動され、吸気ポート、排気ポートの開閉が実行される。
燃料噴射弁26には、燃料供給系48により燃料が供給される。このディーゼル機関10には、二つの燃料供給系が設けられる。一つの燃料供給系は機械式燃料噴射ポンプ50を備え、このポンプは燃料タンク52内の燃料を加圧して、逆止弁51を備えた燃料供給管54を介して燃料噴射弁26に供給する。この燃料供給系を主燃料供給系と記し、燃料タンク52を主燃料タンク52、燃料供給管54を主燃料供給管54、さらに主燃料供給系で供給される燃料を主燃料として以下説明する。
もう一つの燃料供給系を副燃料供給系と記す。副燃料供給系は、燃料噴射弁26に供給される副燃料を蓄える燃料タンク56、副燃料を加圧し送る加圧ポンプ58、加圧ポンプにより送られる加圧された燃料を蓄える蓄圧部としてのコモンレール60を含む。コモンレール60内に蓄えられた加圧燃料が、逆止弁63及び副燃料供給弁64を有する燃料供給管62を介して主燃料供給管54に送出される。主燃料供給管54に送出された燃料は、更に燃料噴射弁26に向かい、ここから燃焼室内に向けて噴射される。この副燃料タンク56から燃料噴射弁26に至る、副燃料を噴射するための系を副燃料系と記し、燃料タンク56を副燃料タンク56、燃料供給管62を副燃料供給管62として以下説明する。
したがって、この燃料供給系48においては、主、副の燃料供給管54,62の合流部65より下流においては、主、副燃料系が構成要素(例えば燃料噴射弁26)を共有している。
コモンレールを含む副燃料系は、自動車用のシステムを転用することができる。自動車用の需要は、船舶用のそれよりも多く、量産効果により副燃料系導入のコストを抑制することができる。また、副燃料系に軽油を用いるのであれば、自動車用のシステムを導入するための改造が少なくなり、更に導入コストの抑制が期待できる。また、自動車用のシステムが、船舶用としては容量が不足する場合には、システムを複数備え、1気筒に複数のコモンレールシステムから燃料を噴射するようにできる。また、燃料噴射量を増加するために、コモンレールの容積を増加して対応してもよい。
副燃料系を、既存の内燃機関に後付けする構成とした場合、外洋を航行中に、副燃料系の寿命が来たとしても、容易に取り替えることができる。さらに、副燃料系に自動車用のコモンレールシステムを用いることにより、これが船舶用の内燃機関に比べて寿命が短い場合も、経済的な負担を小さくして容易に取り替えることができる。
図3は、燃料供給系48および燃料噴射弁26を示す図である。主燃料系においては、主燃料タンク52に蓄えられている主燃料は、機械式燃料噴射ポンプ50により加圧されて送出され、主燃料供給管54を介して燃料噴射弁26に送られる。なお、逆止弁51より下流へ送り出された主燃料は、逆止弁51によって機械式燃料噴射ポンプ50側へ逆流することが防がれている。また、燃料注入により加圧される部分の容積を小さくし、燃料圧の高圧化とその応答性(加圧速度)を向上させて燃料を噴射させることができる。
副燃料系においては、副燃料タンク56に蓄えられた副燃料は、加圧ポンプ58で加圧、送出され、圧力が高い状態でコモンレール60に蓄えられる。コモンレール60から主燃料供給管54に向かう副燃料供給管62の途中には副燃料供給弁64が設けられており、この副燃料供給弁64を開放することによって、合流部65より下流に副燃料が供給される。副燃料供給弁64は、電気的に制御される電気制御式とする。
このように、主燃料系においては、燃料の加圧は、燃料噴射のたびにそれぞれ独立して行われるのに対し、副燃料系においては、燃料は予め加圧されて、加圧された状態で蓄えられており、燃料噴射のタイミングで予め加圧されていた燃料が供給される。主燃料系においては、燃料噴射の初期においては、圧力が低く、噴射される燃料の粒子が比較的大きい。一方、副燃料系においては、燃料は予め加圧されているので、噴射期間の初期から高い圧力で噴射することが可能であり、噴射のタイミングを制御し易く、噴射時の燃料の噴射量や噴射圧力も制御が容易となる。また、主燃料より高い噴射圧力で副燃料を噴射することにより、副燃料の粒子は主燃料より微細な状態で噴射される。これにより、副燃料の着火性や燃焼性を高めることができる。また、コモンレール内の圧力は、変更することが容易である。具体的には、例えば、加圧ポンプ58に電気式のポンプを採用した場合は、ポンプを駆動するモータの回転速度を変更して、コモンレール内圧力を調整することができる。また、加圧ポンプ58として機械式のポンプを用いる場合には、コモンレール60から副燃料タンク56に副燃料を戻すリターン経路に調圧弁を設け、この調圧弁が開放する圧力を変更して、コモンレール内圧力を調整することができる。
なお、合流部65より下流へ送り出された副燃料は、逆止弁63によってコモンレール60へ逆流することが防がれている。また、逆止弁51によりこれより下流に流出することが防がれている。逆止弁51あるいは逆止弁63またはその双方は、吸い戻しストロークを設けたデリバリバルブ型のものを選ぶことができる。これにより、主燃料あるいは副燃料の残圧を低減し、次の噴射への影響を軽減できる。また、コモンレール60に蓄えられた燃料が、主燃料供給管54を介して燃料噴射弁26に送られる。加圧ポンプ58およびコモンレール60は全気筒または複数の気筒に共通に設けられ、副燃料供給弁64が各気筒ごとに設けられる。
また、逆止弁63は副燃料の注入が無いときに、主燃料の逆流を防いでいる。逆止弁51は副燃料の注入の際にこの燃料が主燃料系の逆止弁51より下流に流出することを防いでいる。副燃料によって加圧される配管容積を小さくすることによって、燃料圧の高圧化とその応答性(加圧速度)の向上が期待できる。逆止弁51から噴射弁26のノズル穴までの管路容積をできるだけ小さくすることが重要であるが、逆止弁51が機械式燃料噴射ポンプ50から合流部65までの間の配管の半分の位置よりも機械式燃料噴射ポンプ50に近い位置に配置されると、燃料供給管54,62において主燃料系から供給された主燃料又は副燃料系から供給された副燃料の圧力の低下が大きくなり、燃料噴射弁26から気筒内へ燃料を噴射させる際の噴射圧力が低下してしまう。そこで、逆止弁51は、主燃料供給管54の機械式燃料噴射ポンプ50から合流部65までの間の配管の半分の位置よりも合流部65に近い位置に配置することが好適である。また、逆止弁63が副燃料供給弁64から合流部65までの間の配管の半分の位置よりも副燃料供給弁64に近い位置に配置されると、燃料供給管54,62において主燃料系から供給された主燃料又は副燃料系から供給された副燃料の圧力の低下が大きくなり、燃料噴射弁26から気筒内へ燃料を噴射させる際の噴射圧力が低下してしまう。そこで、逆止弁63は、副燃料供給管62の副燃料供給弁64から合流部65までの間の配管の半分の位置よりも合流部65に近い位置に配置することが好適である。管路の実構成上、逆止弁51、逆止弁63および合流部65の位置は変えられないとしても、合流部65から燃料噴射弁26までの管路を、例えば二重管やセパレート管等とすることにより、実質の合流部を限りなく燃料噴射弁26の近傍に持ってくることも可能である。特に、副燃料はコモンレール60(蓄圧部)によって予備的に加圧された状態で燃料供給管54,62へと導入され、燃料噴射弁26から気筒内へ主燃料よりも高い圧力で噴射されるので、逆止弁51,63の位置による圧力低下の影響を受け易い。したがって、コモンレール60のような蓄圧部を用いた燃料供給系を有する場合には、逆止弁51,63を上記のように配置することによる効果が顕著となる。また、プレ噴射(副燃料)→主噴射(主燃料)→アフター噴射(副燃料)のサイクルとすることにより、特に精密な制御が必要なプレ噴射に対して、管路が副燃料で満たされた状態での噴射制御が可能となる。
また、副燃料供給弁64として電気的に制御できるものを付加することにより、自動車用のコモンレールシステムの導入が容易となる。また、電気制御式とすることで、燃料噴射タイミングや、燃料噴射期間(噴射量)、燃料噴射パターン等が電気信号で制御可能となり、制御の自由度が拡大する。また、船舶においては、波の影響により、波の周期に関連した負荷変動を生じる場合があるが、制御の自由度が高い電気制御式を採用することで、これに好適に対応できる。
さらに、本実施の形態では、主燃料系から供給される主燃料を噴射する主噴射と、主噴射とは異なるタイミングで副燃料系から供給される副燃料を噴射する副噴射を行う。より具体的には、図4の燃料噴射のタイミングチャートを示すように、主噴射の前であって、繰り返し行われる主噴射の半周期(T/2)より短い時間だけ前に副燃料を噴射するプレ噴射を行う。プレ噴射は、パイロット噴射とも呼ばれる。また、図5の燃料噴射のタイミングチャートを示すように、主噴射の後であって、繰り返し行われる主噴射の半周期(T/2)より短い時間だけ後に副燃料を噴射するアフター噴射を行う。アフター噴射は、ポスト噴射とも呼ばれる。プレ噴射とアフター噴射とは組み合わせ行ってもよい。
特に、副燃料供給弁64を電気制御式とすることで、副噴射であるプレ噴射やアフター噴射のように、主噴射のタイミングに合わせて高い精度で噴射条件(燃料噴射タイミング、燃料噴射期間(噴射量)、噴射圧力、噴射パターン等)の制御を行う必要がある場合に有利である。
また、燃料噴射弁26は、燃料の噴射に電気的制御を行う電気制御式燃料噴射弁としてもよい。電気制御式噴射弁は、気筒内に燃料を噴射する噴射弁として機能すると共に、主燃料及び副燃料の供給を制御する燃料制御弁としても機能する。電気制御式燃料噴射弁は、制御信号を受けて、電磁弁を備えた噴射ノズルから制御信号で示される噴射量の燃料を噴射する。噴射された燃料は、細かな粒子(液滴)となってシリンダ内を拡がり、ピストンによる圧縮で気筒内の温度が上昇すると自己着火して燃焼する。主燃料系は、カム92によるプランジャのストロークのたびに燃料が加圧される。なお、燃料噴射弁26は、一つの弁体に主燃料系と副燃料系が独立して存在し、各々機械式あるいは電気制御式、あるいはその組み合わせをもって機能する燃料噴射弁であってもよい。また燃料噴射弁26が主燃料系及び副燃料系に共通に設けられることにより、例えば、既存船の内燃機関に副燃料系を後付設置する場合に、シリンダヘッド22に取付口を別途設ける必要が無く燃料噴射弁26の交換だけで済む。また、新造船であってもシリンダヘッド22への穴あけが従来通り各気筒ごとに1か所で済み、加工が容易にできる。
主、副燃料は、同種の燃料を用いることも、異種の燃料の組み合わせとすることもできる。主、副燃料は、廃食油、バイオ燃料、重油のうち少なくとも1つを含むことが好適である。
同種の燃料を用いる場合であっても、後述するように、副燃料系においては、噴射初期から高い圧力で噴射することによって、燃料粒子が微細となって、着火性や燃焼性が改善される。特に、前述の燃料噴射弁による低負荷時の着火性の悪化を改善することができる。
同種の燃料を副燃料系により噴射しても、十分な着火性を得られない場合に、主、副燃料に異種の燃料を使用することもできる。この場合、副燃料に着火性の良い燃料を使用し、副燃料を火種として、着火性の悪い燃料を燃焼させるようにすることができる。ディーゼル機関における着火性は、セタン価で評価され、この場合は、セタン価の高い燃料を副燃料として使用し、低い燃料を主燃料として使用する。主燃料に着火性の悪い燃料を使用する場合、副燃料として軽油、バイオディーゼル油、GTL(Gas To Liquid)、DME(ジメチルエーテル)を使用することが好適である。主燃料として重油を使用した場合、相対的に着火性のよい菜種油等を用いてもよい。
図6は、主燃料系および副燃料系の噴射条件の制御に関する制御ブロック図である。この制御ブロック図は、主、副の燃料系において燃料噴射弁、特にそのノズルが共用される構成例を対象とした制御ブロック図である。既出の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。ディーゼル機関10の運転状態を検出するために、回転センサ100、圧力センサ102および排気ガスセンサ104が備えられる。また、燃料噴射弁26に実際に供給される主燃料および副燃料の量をそれぞれ検出する主燃料流量センサ106、副燃料流量センサ108を備えてもよい。回転センサ100は、クランク軸18の回転速度を検出するセンサである。
圧力センサ102は、燃焼室内の圧力を直接検出するセンサを用いることができるが、より簡易な方法として、後付け、または外付けのセンサにより圧力の検出を行うことができる。例えば、圧力センサ102は、燃焼室内の燃焼圧がシリンダヘッドボルトに作用する力に基づくセンサとしてもよい。
より具体的には、シリンダヘッド22をエンジンフレーム20に対して締結するシリンダヘッドボルトに圧力センサ102を設けてもよい。シリンダヘッドボルトのボルトのナットとシリンダヘッドの間に、圧力センサ102であるロードワッシャを配置する。ロードワッシャには、シリンダヘッドの締め付け時に加えられる軸力と、気筒内圧を受けて発生する軸力が作用する。このロードワッシャに作用する力は、気筒内圧と良好な相関を有することが分かっており、気筒内圧を直接測定するのではなく、気筒の外部に設けたロードワッシャにより気筒内圧を測定することが可能である。
また、圧力センサ102としての歪みゲージを用いてもよい。圧力センサ102として用いる歪みゲージは、シリンダヘッドボルトの軸部に装着することが好適である。歪みゲージは、エンジンフレーム20と、シリンダヘッド22の間の隙間に対応して装着される。しかし、シリンダヘッドボルトの延びを適切に検出できる位置であれば、どこに装着されても良く、例えばシリンダヘッド22内のボルト軸部に装着されてもよい。
シリンダヘッドボルトの伸びに作用する力は、気筒内圧と良好な相関を有していることが分かっており、気筒内圧を直接測定するのではなく、気筒の外部に設けた歪みゲージより気筒内圧を測定することが可能である。ロードワッシャ型、歪みゲージ型のいずれも、気筒の外部に装着可能であるため、副燃料系としてコモンレールシステムを後付けする場合や、故障時や寿命時の取り替えがボルトの脱着だけで簡単にできる。また、ボルトの緩みや締め付けトルクが不足した場合に、異常が検出可能となる。
圧力センサ102は、各気筒ごとに設けることができ、また代表となる1つまたは複数の気筒に対応して設けることもできる。気筒配置がV型の機関であれば、左右のバンクにそれぞれ1つの圧力センサを設けることができる。気筒ごとに圧力センサを設けた場合、噴射条件の制御も気筒ごとに行うことができる。また、V型のバンクごとなど、いくつかの気筒ごとに圧力センサを設けた場合、バンクごと、その気筒群ごとに噴射制御を行うこともできる。圧力センサ102により検出された気筒内圧に基づき、エンジン状態推定部110において、内燃機関の運転状態を推定する。
排気ガスセンサ104は、内燃機関の排気ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、粒子状物質(PM)、全炭化水素(THC)等を検出するセンサである。これらは個別に設けることも組み合わせて設けることもできる。排気ガスセンサ104は、各気筒ごとに設けることができ、また代表となる1つまたは複数の気筒に対応して設けることもできる。排気ガスセンサ104からの出力信号はエンジン状態推定部110へ送られ、エンジン状態推定部110において排気ガスの性状に応じて内燃機関の運転状態を推定する。
エンジン状態推定部110は、排気ガスの性状、着火時期、図示平均有効圧、最高気筒内圧の少なくとも一つの情報に基づき、内燃機関における燃焼状態について推定を行う。例えば、主燃料の燃料噴射時期を変化させたときに圧力センサ102によって気筒内圧を検出することで、最高気筒内圧、図示平均有効圧を算出でき、また気筒内圧から求めた熱発生率から、着火時期を推定することができる。熱発生率から着火時期の推定を行うに当たり、あるサイクルの最大値と最低値より定められる閾値を用いて推定を行うことができる。例えば、熱発生率の最大値と最小値の差の10%を最小値に加算した値を閾値とし、あるサイクルにおいて、この値を超えたときを、そのサイクルの着火時期とすることができる。排気ガスの性状、着火時期、図示平均有効圧、最高気筒内圧等は、主燃料及び副燃料の噴射時期、噴射圧力、噴射量(噴射燃料比)等の噴射条件を変更すると変化し、これらのパラメータが予め定めた値となるように、主燃料及び副燃料の噴射時期、噴射圧力、噴射量(噴射燃料比)等の噴射条件を制御する。
また、エンジン状態推定部110は、排気ガスの性状に応じて内燃機関の燃焼状態を推定する。内燃機関の負荷に対して排気ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、スモーク及び全炭化水素(THC)の濃度が変化する。スモークは、排気ガス中の粒子状物質(PM)の量に対応する。すなわち、エンジン状態推定部110は、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、スモーク及び全炭化水素(THC)の測定値の少なくとも一つを排気ガスセンサ104から受けて、受け取った測定値から内燃機関の燃焼状態を推定する。この推定された内燃機関の燃焼状態又は窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、スモーク及び全炭化水素(THC)の測定値自体に応じて、主燃料及び副燃料の噴射時期、噴射圧力、噴射量(噴射燃料比)等の噴射条件を制御する。
エンジン状態推定部110により推定される燃焼状態は燃料の性状を反映する。例えば、着火性の良い燃料を使用している場合は、噴射時期に対して早期に着火し、逆に着火性の悪い燃料の場合には、着火が遅れる傾向がある。また、着火性の良い燃料を使用している場合は、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)が増加し、着火性の悪い燃料の場合には、一酸化炭素(CO)、スモーク及び全炭化水素(THC)が増加する。
エンジン状態推定部110は、このようにして得られた排気ガスの性状、着火時期、図示平均有効圧、最高気筒内圧等のパラメータ、燃料の性状、圧力センサ102の検出値及び排気ガスセンサ104の検出値等の運転条件に基づいて主燃料及び副燃料の噴射時期、噴射圧力、噴射量(噴射燃料比)等の噴射条件を制御するための制御信号をシステム制御部114へ出力する。
また、シリンダヘッド22の管路53aに設けられた圧力センサ53bによって検出された管路53aの気柱振動を示す圧力測定値もシステム制御部114へ入力される。この圧力測定値も主燃料及び副燃料の噴射時期、噴射圧力、噴射量(噴射燃料比)等の噴射条件を制御するために用いられる。
一方、ディーゼル機関10の運転条件は、運転操作盤120に入力された条件に基づき定められ、これに基づき前述のエンジン状態推定部110および各センサによる検出値をフィードバックしてシステム制御部114によりディーゼル機関10が制御される。運転操作盤120には、ディーゼル機関10の始動・停止を行う運転スイッチ122、出力レベルを制御するスロットルレバー124が備えられ、また燃料の種類や搭載量、排気ガス等に関する規制値、運転モードを入力する条件設定部126を備える。燃料の種類としては、重油、軽油、菜種油、廃食油、パーム油やバイオディーゼル油、GTL(Gas To Liquid)、DME(ジメチルエーテル)等が想定されており、それぞれの代表的な性状が予め記憶されている。また、主燃料と副燃料にそれぞれにどの種類の燃料を使用するか、設定することができる。また、排気ガス規制値(NOx規制、CO規制、スモーク規制、SOx規制、CO2排出量規制)等の設定をすることができる。さらに、環境を重視する設定とするか、燃費を重視する設定とするかの運転モードの選択も行うことができる。操作者によりこれらの操作、入力がなされ、運転条件算出部128にて、これらの条件に適した、運転条件が算出される。具体的には、主燃料及び副燃料の比率、燃料の性状(セタン価、発熱量)、排気温度目標値、効率の目標値、負荷条件等の算出を行う。
また、GPS130を搭載し、GPS(全地球測位システム)情報、レーダ情報等に基づき現在の位置を取得し、これも合わせて運転条件を算出してもよい。GPSまたはレーダにより、陸からの距離、目的地からの方位や距離、航行時の目標物との位置関係を取得することができ、これらに応じた運転条件を算出することができる。例えば、現在位置が港湾内、陸地から近い位置であれば、排気ガス浄化を優先した運転モードとし、外洋であれば、燃費を優先した運転モードとするようにできる。航行時の目標物は、例えば灯台や、追従航行をしている場合であれば追従対象の他の船舶である。世界の国、地域、都市等の地理的位置や沿岸からの距離により排気ガス規制や環境規制等が異なる場合に、地理的条件に従った運転条件の算出ができる。また、GPS、レーダは、船舶用として一般に搭載されるものを共用することができる。
運転条件算出部128により算出された運転条件に基づき、運転条件設定部112において、ディーゼル機関10の運転条件がシステム制御部114に設定される。この設定された条件に基づきシステム制御部114によって主燃料及び副燃料の噴射時期、噴射圧力、噴射量(噴射燃料比)等の噴射条件の制御が実行される。
すなわち、システム制御部114は、エンジン状態推定部110での推定される内燃機関の運転条件、例えば着火時期、内燃機関の燃焼状態、燃料の性状、圧力センサ102,53bの検出値及び排気ガスセンサ104の検出値等、及び運転条件設定部112において設定される内燃機関の運転条件に応じて、機械式燃料噴射ポンプ50、加圧ポンプ58、副燃料供給弁64及び燃料噴射弁26を制御することによって主燃料及び副燃料の噴射時期、噴射圧力、噴射量(噴射燃料比)等を調整する。なお、副燃料の噴射時期、噴射量及び主燃料との噴射燃料比の制御は、システム制御部114により、副燃料供給弁64を制御することにより行われる。また、副燃料の燃料圧を制御するために、加圧ポンプ58の制御も行ってよい。機械式燃料噴射ポンプ50により、主燃料の噴射量及び副燃料との噴射燃料比を制御する場合には、カム92のクランク軸に対する位相を変更する機構を設ける。また、内燃機関への主燃料及び副燃料の噴射時期(タイミング)は、燃料噴射弁26を電気制御式燃料噴射弁とした場合、燃料噴射弁26の開閉制御により行うことができる。
本実施形態の燃料供給系48においては、主、副の燃料供給管54,62が、燃料噴射弁26の上流側で合流している。したがって、主燃料と副燃料とは別々に噴射することもできるし、同時に噴射することも可能である。いずれの場合にも、内燃機関の運転状態、例えば内燃機関の負荷や排気ガスの性状等に応じて、主燃料と副燃料との噴射タイミング、噴射時間(噴射量)及び噴射圧力等の噴射条件を調整することができる。
特に、本実施の形態では、主燃料の主噴射と異なるタイミングで副燃料の副噴射を行う制御を行う。すなわち、主燃料の主噴射と異なるタイミングで副燃料のプレ噴射及びアフター噴射を行う。
まず、システム制御部114は、推定された内燃機関の運転条件、圧力センサ102,53bの検出値及び排気ガスセンサ104の検出値並びに内燃機関の運転条件に応じて、主燃料系を用いた主燃料の噴射条件を設定する。すなわち、運転条件設定部112によって設定された内燃機関の運転条件を満たす燃焼条件となるように主燃料系を用いた主燃料の噴射の時期、噴射時間(噴射量)及び噴射圧力等の噴射条件が設定される。
主噴射を行う場合、機械式燃料噴射ポンプ50のみにより燃料の加圧及び噴射が行われる。プランジャのストロークに従って徐々に燃料圧Piが上昇し、燃料圧Piが噴射開始圧Poに達すると(クランク角α1)燃料噴射弁26から燃料が噴射される。高負荷時には、プランジャの有効ストロークが長くなるようラックの進退が制御され、全負荷の場合には、噴射最高圧Pmaxに達する(クランク角α2)。その後、供給系の配管内等に残る圧力によりわずかに燃料が噴射されるが、基本的にはクランク角α1からα2が燃料噴射期間となる。一方、低負荷時には、プランジャの有効ストロークが短くなり、クランク角α2よりも上死点に近いクランク角α3までが燃料噴射期間となる。クランク角α3では、燃料圧は、最高圧Pmaxより低いP1にしか達していない。
このため、低負荷時には燃料噴射圧が低く、噴射された燃料粒子は大きなものとなる。燃料の粒子径が大きいと着火性が悪化する。このため、機械式燃料噴射ポンプのみにより燃料供給をする場合には、低負荷時において着火性が悪化し、排気ガスの性状が低下したり、ディーゼル機関10の燃焼が急激になり振動、騒音が大きくなったりすることがある。
このような主噴射による燃焼の問題を低減・抑制するために副燃料のプレ噴射又はアフター噴射が行われる。
プレ噴射を行う場合、主噴射期間の前であって、主噴射の半周期(T/2)より短い時間だけ前に副燃料を噴射する。副燃料系では、蓄圧部となるコモンレール60に予備的に加圧された副燃料を蓄えておき、主燃料の主噴射とは異なるタイミングで副燃料供給弁64を開に制御することによりプレ噴射を行う。
プレ噴射を行うことによって、内燃機関に発生する振動を低減又は抑制することができる。図7及び図8は、プレ噴射を主噴射とは異なるタイミングで行った場合における主燃料及び副燃料の噴射圧力の時間的変化を示す図である。図7は、主噴射においてピストン上死点のクランク角度に対してプレ噴射を−10°,−12.5°,−15°で行ったときの噴射圧力の時間的変化を示し、図8は、主噴射においてピストン上死点のクランク角度に対してプレ噴射を−15°,−17.5°,−20°,−22.5°で行ったときの噴射圧力の時間的変化を示している。
なお、タイミングを示す角度は、ピストンが上死点からクランクの一回転を360°とした場合のクランク角度における位相を示している。すなわち、主噴射においてピストン上死点となるタイミングをクランク角度0°としてときのプレ噴射のタイミングの位相差を示している。なお、図中において「カム」と示すのはプレ噴射を行わない主噴射のみの運転を示している。
図9及び図10は、図7及び図8に示す各タイミングでプレ噴射を行った場合における圧力センサ53bの検出圧力値の時間的変動及び気筒内における熱発生率(dQ/dθ)を示す。図9及び図10に示されているように、プレ噴射のタイミングが早くなるほど(主噴射とのタイミング差が大きくなるほど)、圧力センサ53bの検出圧力値及び熱発生率(dQ/dθ)の時間的変化の振幅は小さくなり、シリンダヘッド22に設けられている管路53a内の気柱振動が小さくなることが分かる。ただし、プレ噴射をクランク角度の位相差にして−22.5°以上前に行うと内燃機関におけるプレ噴射による燃焼がピストンリングとシリンダダライナの摺動面に不具合をおこすおそれがある。したがって、主噴射の周期に対してクランク角度において−15°〜−22.5°程度の位相差をもって副燃料をプレ噴射させることが好適である。このようなタイミングおいてプレ噴射を行うことによって、気筒の振動の抑制効果が顕著となる。
また、圧力センサ53bの圧力を検出してシステム制御部114にフィードバックすることにより、圧力センサ53bの検出圧力値の時間的変動の振幅に応じてプレ噴射のタイミングを変更するフィードバック制御を行ってもよい。この場合、システム制御部114は、圧力センサ53bからの検出圧力値を受けて、図11に示すように、燃焼室の気筒内の圧力(P)や熱発生率(dQ/dθ)を把握する。そして、プレ噴射のタイミングをずらしつつ、これらの値の変動幅がより小さくなるタイミングに設定する処理を繰り返すことによって、最終的に気柱振動の振幅が最も小さくなるプレ噴射のタイミングに設定することができる。また、プレ噴射の位置を固定しておき、噴射量を徐々に増やしていき、圧力(P)や熱発生率(dQ/dθ)の変動幅が小さくなるタイミングに設定してもよい。これにより、図12に示すように、燃焼室の気筒内の圧力(P)や熱発生率(dQ/dθ)の振動幅を低減することができる。なお、熱発生率(dQ/dθ)の代りに圧力変動率(dP/dθ)をパラメータとして用いてもよい。
このように、インジケータコック53の管路53aに圧力センサ53bを設け、その圧力センサ53bによって得られる検出圧力値を用いることによって、燃焼室の気筒の振動を効果的に低減・抑制することができる。なお、燃焼室の気筒に圧力センサ102が設けられていない構成であってもインジケータコック53を利用することによって圧力センサ53bは容易に付設することができる。
図13〜図15は、プレ噴射における副燃料の噴射タイミングに対する排気ガスの性状の関係を示す。図13に示すように、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の量は、プレ噴射のタイミングの位相が主噴射のタイミングに対して進むにつれて増加した。これは、プレ噴射のタイミングが進むほど主燃料の着火性及び燃焼性が高められたためと考えられる。また、図14及び図15に示すように、排気ガス中の一酸化炭素(CO)及びスモークの濃度は、プレ噴射を行わない場合(カム)に比べてプレ噴射を行うことによって減少し、プレ噴射のタイミングの位相が主噴射のタイミングに対して進むにつれて低減した。したがって、排ガスの性状の改善においても、主噴射の周期に対してクランク角度において−15°〜−22.5°程度の位相差をもって副燃料をプレ噴射させることが好適である。このようなタイミングおいてプレ噴射を行うことによって、排ガスの性状の改善効果が顕著となる。
また、図16〜図18は、プレ噴射における副燃料の噴射量(噴射時間)に対する排気ガスの性状の関係を示す。図16に示すように、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の濃度は、プレ噴射における副燃料の噴射量(噴射時間)に依らず略一定となった。一方、図17及び図18に示すように、プレ噴射における副燃料の噴射量が少なくなる(噴射時間が短くなる)につれて、排気ガス中の一酸化炭素(CO)及びスモークの濃度は低下した。すなわち、プレ噴射を行わない場合に比べてプレ噴射を行うことによって排ガスの性状は改善されるが、プレ噴射における副燃料の噴射量(噴射時間)は少ない(短い)ほど排ガスの性状の改善効果は顕著となる。このとき、少なくともプレ噴射における副燃料の一回の噴射量を主燃料の一回の噴射量より少なくすることが好ましい。
このように、プレ噴射を行うことによって、主燃料の着火性や燃焼性を高めることができ、排気ガスの性状を改善することができる。また、これに伴って、内燃機関の燃費を向上させることができる。
図19及び図20は、アフター噴射を主噴射とは異なるタイミングで行った場合における燃料噴射圧及び燃焼室の気筒内圧力の時間的変化を示す図である。図19及び図20は、主噴射においてピストン上死点のクランク角度に対してアフター噴射をクランク角度において5°、10°,15°,20°で行ったときの燃料噴射圧及び燃焼室の気筒内圧力の時間的変化を示している。
図21〜図24は、アフター噴射における副燃料の噴射タイミングに対する排気ガスの性状の関係を示す。図21に示すように、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の量は、アフター噴射を行わない場合に比べてアフター噴射を行うことによって減少し、アフター噴射のタイミングが主噴射のタイミングに対して遅れるにつれて低減した。また、図22〜図24に示すように、排気ガス中の全炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)及びスモークの濃度は、アフター噴射を行わない場合に比べてアフター噴射を行うことによって減少し、特にアフター噴射が主噴射に対して5°〜10°の範囲で顕著に低減された。すなわち、排ガスの性状の改善においては、主噴射の周期に対してクランク角度において5°〜10°程度の位相差をもって副燃料をアフター噴射させることが好適である。但し、現実にはアフター噴射の場合、内燃機関の出力(負荷)が異なると主噴射の終わりのクランク角度が変わってくるため、主噴射の終わりのクランク角度を基準にした方がより好適である。一方、プレ噴射の場合は、ピストンの上死点を基準にすることが好ましい。
図25及び図26は、アフター噴射において副燃料の噴射量(噴射時間)を変えた場合の燃料噴射圧及び燃焼室の気筒内圧力の時間的変化を示す。アフター噴射の噴射時間を1.5ms,2.0ms,2.5msで行った場合及びアフター噴射を行わなかった場合の燃料噴射圧及び燃焼室の気筒内圧力の時間的変化を示している。
また、図27〜図30は、アフター噴射における副燃料の噴射量(噴射時間)に対する排気ガスの性状の関係を示す。図27に示すように、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の量は、アフター噴射を行わない場合に比べてアフター噴射の噴射時間を1.5msとした場合で増加し、噴射時間を2.0ms及び2.5msとした場合に減少した。また、図28〜図30に示すように、排気ガス中の全炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)及びスモークの濃度は、アフター噴射を行わない場合に比べてアフター噴射を行うことによって減少し、特にアフター噴射における噴射時間が長くなる(噴射量が多くなる)につれて減少が大きくなった。少なくともアフター噴射における副燃料の一回の噴射量の主燃料の一回の噴射量に対する比率を多目に設定することが好ましい。
このように、アフター噴射を行うことによって、主燃料の燃焼性を高めることができ、排気ガスの性状を改善することができる。また、これに伴って、内燃機関の燃費を向上させることができる。
なお、プレ噴射とアフター噴射とを組み合わせ適用してもよい。プレ噴射とアフター噴射とでは、その条件によって得られる効果が異なる。したがって、プレ噴射とアフター噴射とでは噴射条件(噴射圧力、噴射時間等)を変えて行ってもよい。例えば、プレ噴射は燃焼室の気筒の振動の低減・抑制に適した噴射タイミング、噴射時間(噴射量)、噴射圧力等の噴射条件下で行い、アフター噴射は、排気ガスの性状の改善に適した噴射タイミング、噴射時間(噴射量)、噴射圧力等の噴射条件下で行うことが好適である。
さらに、コモンレール60には、燃料が微細な粒子となる圧力で噴射ができるよう十分な圧力で燃料が蓄えることが好適である。すなわち、副燃料系においては、コモンレール60を用いることによって、燃料の噴射期間の最初から噴射圧力が高くなるようにすることができる。このように、コモンレール60を用いることによって、短時間である副燃料のプレ噴射やアフター噴射を噴射初期から高い圧力で行うことが可能となる。
このとき、主燃料の主噴射より副燃料の副噴射を高い圧力で行うことによって、副燃料をより微細な粒子とすることができる。燃料は粒子が細かくなるにつれて着火性が良くなるので、副燃料の噴射圧力を主燃料の噴射圧力よりも高くすることによって、副燃料の着火性をより高めることができ、燃焼室の気筒の振動の抑制や排気ガスの性状の改善の効果を高めることができる。
なお、副燃料の噴射時間を短く(噴射量を少なく)することによって、コモンレール60に蓄えられている燃料の消費を抑えることができ、コモンレール内の圧力が低下してしまうことを防ぐことができる。必要な燃料圧を確保するためには、コモンレール60の容量を増やす、また加圧ポンプ58の流量を増やす等の対策をしてもよい。多気筒機関においては、機関全体の噴射間隔は短くなるので、低下したコモンレール内の圧力をより早く回復させる必要性、またはコモンレール内の圧力を低下させないように、その容量を増やす必要性が、より高まる。
また、船舶用等の大型の内燃機関では、燃焼室も大きく、1回当たりに噴射される燃料量が、自動車等の小型の機関のそれよりも多くなる。このため、コモンレール等の蓄圧部に蓄えられた燃料で全噴射量を賄おうとすると、蓄圧部の容積を大きくするか、ポンプ流量を増加させる必要がある。この理由からも、主燃料系と副燃料系を別々に備え、副燃料系による噴射量が少ない構成を採ることが望ましい。
図31は、主燃料としてバイオ燃料(菜種油50%とA重油50%の混合油)及びA重油を用いてプレ噴射を行った場合と行わなかった場合の排気ガスの性状について示す。なお、図中では、プレ噴射を行った場合について「アシスト」と示している。
バイオ燃料(菜種油50%とA重油50%の混合油)を用いた場合においてプレ噴射を行ったときに窒素酸化物(NOx)の濃度が低下しなかった(図示しない)。一方、バイオ燃料(菜種油50%とA重油50%の混合油)を用いた場合の一酸化炭素(CO)及びスモークの濃度はプレ噴射を適用することによって大幅に低減された。このように、プレ噴射による排気ガスの性状の改善効果は、主燃料としてバイオ燃料(菜種油50%とA重油50%の混合油)を用いた場合に顕著となった。
なお、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、スモークの測定値に応じてプレ噴射やアフター噴射の噴射タイミング、噴射時間(噴射量)、噴射圧力等を直接制御してもよい。例えば、内燃機関の負荷に対する窒素酸化物(NOx)の目標値を運転条件算出部128で算出し、運転条件設定部112によってシステム制御部114に設定する。システム制御部114は、エンジン状態推定部110から受けた窒素酸化物(NOx)の測定値と、設定された内燃機関の負荷に応じた目標値との関係に応じて、主燃料の主噴射の条件を設定すると共に、副燃料の副噴射の噴射タイミング、噴射時間(噴射量)、噴射圧力等を調整すればよい。