以下、本発明を実施するための形態について述べる。プロジェクタ10は、光源ユニット63と、表示素子51と、導光光学系62と、投影側光学系70と、プロジェクタ制御手段と、を備える。
導光光学系62は、光源ユニット63からの光を表示素子51に導光する。投影側光学系70は、表示素子51から射出される画像をスクリーンに投影する。プロジェクタ制御手段は、光源ユニット63や表示素子51を制御する。この光源ユニット63は、赤色の波長帯域光を発する赤色発光ユニット64Rと、緑色の波長帯域光を発する緑色発光ユニット64Gと、青色の波長帯域光を発する青色発光ユニット64Bと、光源側光学系61と、を備える。
各発光ユニット64R,64G,64Bは、光源72と、蛍光発光装置100と、から構成される。光源72は、紫外領域の光(紫外線)あるいは青色波長帯域の光を射出するレーザー発光器である。
蛍光発光装置100は、円板形状の蛍光ホイール71と、ホイールモータ73と、を備える。そして、蛍光ホイール71は、光源72から射出される光の光軸上であって、光源72からの光が蛍光ホイール71に45度の入射角で入射するように配置される。つまり、光源72は、光を蛍光ホイール71の一方の面に斜めから照射する。
蛍光ホイール71は、円板形状の金属基材であって、この基材の一方の面(光源72から射出される光の入射側の面)には環状の蛍光発光部が設けられている。この蛍光発光部は基材に設けられる環状の凹部であって、この凹部内に蛍光体の層131が敷設されている。また、この凹部には反射面が形成され、この反射面上に蛍光体の層131が形成されている。蛍光体の層131は、光源72からの光(紫外光)を励起光として受けて所定の波長帯域光を射出する蛍光体とバインダとにより形成されるものである。
そして、赤色発光ユニット64Rの蛍光ホイール71には、赤色の波長帯域光を射出する蛍光体の層131が設けられ、緑色発光ユニット64Gの蛍光ホイール71には、緑色の波長帯域光を射出する蛍光体の層131が設けられ、青色発光ユニット64Bの蛍光ホイール71には、青色の波長帯域光を射出する蛍光体の層131が設けられている。
さらに、蛍光体の層131における励起光入射側には、ロングパスフィルタ132が設けられている。このロングパスフィルタ132は、蛍光体から発せられる長波長帯域光を透過し、短波長帯域光を反射する短波長カットフィルタである。また、このロングパスフィルタ132は、入射角が大きくなるにつれて透過波長帯域が短波長側へシフトする性質を有し、所定の角度未満の入射角で入射する励起光を反射するものである。例えば、このロングパスフィルタ132は、35度未満で入射する励起光の多くを反射し、35度から入射角が大きくなるにつれて入射する励起光の透過率が上がって、45度以上の入射角でほとんどの励起光を透過させる性質を有するものを採用することができる。
そして、蛍光ホイール71の蛍光発光部に励起光を照射する一対の光源72は、当該光源72からの光がロングパスフィルタ132の表面における法線(即ち、蛍光ホイール71の回転軸)に対して45度の角度以上をなして入射し、更にロングパスフィルタ132を透過して蛍光発光部の蛍光体に照射されるように配置されている。
また、ロングパスフィルタ132の入射側には反射防止膜が形成されている。したがって、ロングパスフィルタ132に斜めから入射する励起光は、光源72側にほとんど反射されることなく透過して蛍光体の層131に入射する。
ホイールモータ73は、蛍光ホイール71を円周方向に回転させる駆動装置である。つまり、この蛍光発光装置100は、光源72からの光が回転する蛍光ホイール71の一方の面に照射されると、照射領域が環状の蛍光発光部内を移動することになるため、熱の集中を避けて蛍光体の温度上昇を抑制させることができるようになっている。
また、光源側光学系61は、各発光ユニット64R,64G,64Bから射出される赤色、緑色及び青色波長帯域の光を所定の一面であるライトトンネル75の入射口に集光する集光レンズ163,164やダイクロイックミラー141等から構成される。つまり、蛍光ホイール71から射出される赤色、緑色及び青色光は、光源側光学系61により光軸を一致させてライトトンネル75の入射口に集光され、集光された各色光は、更に導光光学系62により表示素子51に導光されることとなる。
したがって、光源ユニット63は、プロジェクタ制御手段が、蛍光ホイール71を円周方向に回転させるホイールモータ73を動作させる制御を実行するとともに、各発光ユニット64R,64G,64Bが備える光源72の発光を個別に制御することで、当該光源ユニット63から順次赤色、緑色、青色の波長帯域光を射出させることができる。そして、プロジェクタ10の表示素子51であるDMDがデータに応じて各色の光を時分割表示することにより、投影側光学系70を介してスクリーンにカラー画像を投影することができる。
以下、本発明の実施例を図に基づいて詳説する。図1は、プロジェクタ10の外観斜視図である。なお、本実施例において、プロジェクタ10における左右とは投影方向に対しての左右方向を示し、前後とはプロジェクタ10のスクリーン側方向及び光線束の進行方向に対しての前後方向を示す。
そして、プロジェクタ10は、図1に示すように、略直方体形状であって、プロジェクタ筐体の前方の側板とされる正面パネル12の側方に投影口を覆うレンズカバー19を有するとともに、この正面パネル12には複数の排気孔17を設けている。さらに、図示しないがリモートコントローラからの制御信号を受信するIr受信部を備えている。
また、筐体の上面パネル11にはキー/インジケータ部37が設けられ、このキー/インジケータ部37には、電源スイッチキーや電源のオン又はオフを報知するパワーインジケータ、投影のオン、オフを切りかえる投影スイッチキー、光源ユニットや表示素子又は制御回路等が過熱したときに報知をする過熱インジケータ等のキーやインジケータが配置されている。
さらに、筐体の背面には、背面パネルにUSB端子や画像信号入力用のD−SUB端子、S端子、RCA端子等を設ける入出力コネクタ部及び電源アダプタプラグ等の各種端子20が設けられている。なお、この背面パネル、及び、図示しない右側パネル、並びに、図1に示した左側パネル15の下部近傍には、各々複数の吸気孔18が形成されている。
次に、プロジェクタ10のプロジェクタ制御手段について図2の機能ブロック図を用いて述べる。プロジェクタ制御手段は、制御部38、入出力インターフェース22、画像変換部23、表示エンコーダ24、表示駆動部26等から構成される。この制御部38は、プロジェクタ10内の各回路の動作制御を司るものであって、CPUや各種セッティング等の動作プログラムを固定的に記憶したROM及びワークメモリとして使用されるRAM等により構成されている。
そして、このプロジェクタ制御手段により、入出力コネクタ部21から入力された各種規格の画像信号は、入出力インターフェース22、システムバス(SB)を介して画像変換部23で表示に適した所定のフォーマットの画像信号に統一するように変換された後、表示エンコーダ24に出力される。
また、表示エンコーダ24は、入力された画像信号をビデオRAM25に展開記憶させた上でこのビデオRAM25の記憶内容からビデオ信号を生成して表示駆動部26に出力する。
表示駆動部26は、表示エンコーダ24から出力された画像信号に対応して適宜フレームレートで空間的光変調素子(SOM)である表示素子51を駆動するものであり、光源ユニット63から射出された光線束、即ち光源ユニット63の光源側光学系により所定の一面に集光された光線束を導光光学系を介して表示素子51に照射することにより、表示素子51の反射光で光像を形成し、後述する投影側光学系を介して図示しないスクリーンに画像を投影表示する。なお、この投影側光学系の可動レンズ群97は、レンズモータ45によりズーム調整やフォーカス調整のための駆動が行われる。
また、画像圧縮伸長部31は、画像信号の輝度信号及び色差信号をADCT及びハフマン符号化等の処理によりデータ圧縮して着脱自在な記録媒体とされるメモリカード32に順次書き込む記録処理を行う。さらに、画像圧縮伸長部31は、再生モード時にメモリカード32に記録された画像データを読み出し、一連の動画を構成する個々の画像データを1フレーム単位で伸長し、この画像データを画像変換部23を介して表示エンコーダ24に出力し、メモリカード32に記憶された画像データに基づいて動画等の表示を可能とする処理を行なう。
そして、筐体の上面パネル11に設けられるメインキー及びインジケータ等により構成されるキー/インジケータ部37の操作信号は、直接に制御部38に送出され、リモートコントローラからのキー操作信号は、Ir受信部35で受信され、Ir処理部36で復調されたコード信号が制御部38に出力される。
なお、制御部38にはシステムバス(SB)を介して音声処理部47が接続されている。この音声処理部47は、PCM音源等の音源回路を備えており、投影モード及び再生モード時には音声データをアナログ化し、スピーカ48を駆動して拡声放音させる。
また、制御部38は、光源制御回路41を介して、画像生成時に要求される所定波長帯域の光源光が光源ユニット63から射出されるように、光源ユニット63を構成する各発光ユニットの光源の発光を個別に制御する。また、制御部38は、ホイールモータを制御して蛍光発光装置の蛍光ホイールを回転駆動させる。
さらに、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43を介して、光源ユニット63等に設けた複数の温度センサによる温度検出を行い、この温度検出の結果から冷却ファンの回転速度を個別に制御する。また、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43にタイマー等によりプロジェクタ本体の電源OFF後も冷却ファンの回転を持続させる、あるいは、温度センサによる温度検出の結果によってはプロジェクタ本体の電源をOFFにする等の制御も行う。
次に、このプロジェクタ10の内部構造について述べる。図3は、プロジェクタ10の内部構造を示す平面模式図である。プロジェクタ10は、図3に示すように、右側パネル14の近傍に制御回路基板102を備えている。この制御回路基板102は、電源回路ブロックや光源制御ブロック等を備えてなる。また、プロジェクタ10は、筐体内を区画用隔壁120により背面パネル13側の吸気側空間室121と正面パネル12側の排気側空間室122とを気密に形成し、プロジェクタ10の中央近傍にシロッコファンタイプのブロア110を冷却ファンとして配置し、吸気側空間室121にブロア110の吸込み口111を排気側空間室122にブロア110の吐出口113を位置させている。
さらに、このプロジェクタ10は、排気側空間室122内に光源ユニット63を配置し、左側パネル15に沿って照明側ブロック78及び画像生成ブロック79並びに投影側ブロック80で構成する光学系ユニット77を配置し、光学系ユニット77の照明側ブロック78を排気側空間室122に開口連通させて照明側ブロック78に設ける照明用ユニットの一部が排気側空間室122に位置するように配置し、排気側空間室122の正面パネル12に沿って排気温低減装置114を配置している。
そして、光源ユニット63等を冷却する冷却ファンとしてのブロア110は、中心部に吸込み口111を有し、吐出口113は略正方形断面であって、区画用隔壁120に接続され、区画用隔壁120によって区画された排気側空間室122にブロア110からの排風を排出するものである。
この光源ユニット63は、光源72からの励起光を受けて各々波長帯域の異なる光を射出する3個の発光ユニット64と、各発光ユニット64から射出される光を集光する光源側光学系61と、から構成され、赤色の波長帯域光を射出する赤色発光ユニット64Rと、緑色の波長帯域光を射出する緑色発光ユニット64Gと、青色の波長帯域光を射出する青色発光ユニット64Bと、を備えている。
赤色発光ユニット64Rは、ブロア110の吐出口113の近傍において当該赤色発光ユニット64Rから射出される赤色光の光軸がライトトンネル75の光軸と直交するように配置される。また、緑色発光ユニット64Gは、当該緑色発光ユニット64Gから射出される緑色光の光軸が赤色発光ユニット64Rの光軸と平行となるように赤色発光ユニット64Rよりも正面パネル12側に配置される。そして、青色発光ユニット64Bは、正面パネル12の近傍において当該青色発光ユニット64Bから射出される青色光の光軸がライトトンネル75の光軸と一致するように配置されている。各発光ユニット64の具体的な構成については後述する。
光源側光学系61は、図4に示すように、所定の波長帯域光を反射又は透過させて各発光ユニット64から射出される各色可視光の光軸を同一の光軸となるように変換するダイクロイックミラー141、及び、各発光ユニット64から射出されてライトトンネル75へ入射する光線束を集光する集光レンズ163,164等を有する。
具体的には、この光源側光学系61は、第一ダイクロイックミラー141aと、第ニダイクロイックミラー141bと、集光レンズ群148と、を備える。第一ダイクロイックミラー141aは、赤色発光ユニット64Rの光軸とライトトンネル75の中心軸とが交差する位置において赤色発光ユニット64Rの光軸とのなす角が45度となるように配置されている。そして、この第一ダイクロイックミラー141aは、赤色発光ユニット64Rから射出される赤色の波長帯域光の光軸をライトトンネル75の中心軸と一致させるように反射し、緑色発光ユニット64G及び青色発光ユニット64Bから射出される緑色及び青色の波長帯域光を透過する。
第二ダイクロイックミラー141bは、緑色発光ユニット64Gの光軸とライトトンネル75の中心軸とが交差する位置において緑色発光ユニット64Gの光軸とのなす角が45度となるように配置されており、緑色発光ユニット64Gから射出される緑色の波長帯域光の光軸をライトトンネル75の中心軸と一致させるように反射し、青色発光ユニット64Bから射出される青色の波長帯域光を透過する。各発光ユニット64における蛍光ホイール71の近傍に配置される集光レンズ群148は、蛍光ホイール71から射出される光を集光する。
そして、光源側光学系61は、集光レンズ群148を介して第一ダイクロイックミラー141aに入射する光を集光する集光レンズ163として、赤色発光ユニット64Rと第一ダイクロイックミラー141aとの間に配置される第一集光レンズ163aと、第一ダイクロイックミラー141aと第二ダイクロイックミラー141bとの間に配置される第二集光レンズ163bと、を備え、更に、ライトトンネル75の近傍に配置されて、第一ダイクロイックミラー141aを介してライトトンネル75に入射する光を集光する集光レンズ164を備える。
そして、光学系ユニット77は、図3に示したように、光源ユニット63の近傍に位置する照明側ブロック78と、背面パネル13と左側パネル15とが交差する位置の近傍に位置する画像生成ブロック79と、光源側光学系61と左側パネル15との間に位置する投影側ブロック80と、の3つのブロックによって略コの字状に構成されている。
照明側ブロック78は、光源ユニット63から射出される光源光を画像生成ブロック79が備える表示素子51に導光する導光光学系62の一部を備えている。この照明側ブロック78が有する導光光学系62としては、光源ユニット63から射出された光線束を均一な強度分布の光束とするライトトンネル75や、ライトトンネル75から射出された光を集光する集光レンズ、ライトトンネル75から射出された光線束の光軸を画像生成ブロック79方向に変換する光軸変換ミラー74等がある。
画像生成ブロック79は、導光光学系62として、光軸変換ミラー74で反射した光源光を表示素子51に集光させる集光レンズ81と、この集光レンズ81を透過した光線束を表示素子51に所定の角度で照射する照射ミラー84と、を有している。さらに、画像生成ブロック79は、表示素子51とするDMDを備え、この表示素子51と背面パネル13との間には表示素子51を冷却するためのヒートシンク53が配置されて、このヒートシンク53によって表示素子51が冷却される。
投影側ブロック80は、表示素子51で反射されたオン光をスクリーンに放出する投影側光学系70のレンズ群を有している。この投影側光学系70としては、固定鏡筒に内蔵する固定レンズ群93と可動鏡筒に内蔵する可動レンズ群97とを備えてズーム機能を備えた可変焦点型レンズとされ、レンズモータにより可動レンズ群97を移動させることによりズーム調整やフォーカス調整を可能としている。
このようにプロジェクタ10を構成することで、各発光ユニット64R,64G,64Bから異なるタイミングで光を射出すると、赤色、緑色及び青色の波長帯域光が光源側光学系61を介してライトトンネル75に順次入射され、更に導光光学系62を介して表示素子51に入射される。そして、プロジェクタ10の表示素子51であるDMDがデータに応じて各色の光を時分割表示することにより、投影側光学系70を介してスクリーンにカラー画像を投影することができる。
次に、発光ユニット64の具体的な構成について、図5を参照して説明する。図5(a)は、蛍光ホイール71の正面模式図であり、図5(b)は、蛍光ホイール71の一部断面を示す平面模式図である。発光ユニット64は、光源72と、蛍光発光装置100と、を備えており、蛍光発光装置100は、蛍光ホイール71と、ホイールモータ73と、を有している。蛍光ホイール71は、円板形状の銅やアルミニウム等から成る金属基材であって、基材に環状の凹部が蛍光発光部として設けられているものである。
この凹部である蛍光発光部は、光源72が配置される側の面である基材の一方の面に設けられている。そして、凹部内には蛍光体の層131が敷設されている。この蛍光体の層131は、光源72からの光を励起光として受けて所定波長帯域の蛍光光を射出する蛍光体が、耐熱性を有し且つ透光性の高いシリコン樹脂等のバインダに均一に混合されることで形成されるものである。また、蛍光発光部における基材の表面には、銀蒸着等のミラー加工により反射面が形成されており、この反射面上に蛍光体の層131が敷設されている。
したがって、蛍光ホイール71は、光源72からの光が照射されて、蛍光発光部に励起光を受けることで所定の波長帯域の蛍光光を発する蛍光板として機能する。
そして、赤色発光ユニット64Rの蛍光ホイール71には、赤色の波長帯域光を射出する蛍光体の層131が設けられ、緑色発光ユニット64Gの蛍光ホイール71には、緑色の波長帯域光を射出する蛍光体の層131が設けられ、青色発光ユニット64Bの蛍光ホイール71には、青色の波長帯域光を射出する蛍光体の層131が設けられている。
ここで、各発光ユニット64R,64G,64Bにおける光源72は、蛍光ホイール71に設けられる蛍光体を励起させるために、レーザー光を励起光として蛍光ホイール71の蛍光発光部に照射するレーザー発光器である。そして、図4に示したように、赤色発光ユニット64R及び緑色発光ユニット64Gには、青色波長帯域のレーザー光を発する青色光源72Bが配設され、青色発光ユニット64Bには、紫外波長帯域のレーザー光を発する紫外光源72Uが配設されている。
なお、図5に示したように、ホイールモータ73は、蛍光ホイール71を円周方向に回転させる駆動装置である。つまり、蛍光発光装置100は、光源72からの光が回転する蛍光ホイール71の一方の面に照射されると、照射領域が環状の蛍光発光部内を移動することになるため、熱の集中を避けて蛍光体の温度上昇を抑制させることができるようになっている。
そして、本実施例に係る各発光ユニット64R,64G,64Bにおいて、蛍光体の層131における励起光入射側には、ロングパスフィルタ(短波長カットフィルタ)132が設けられている。このロングパスフィルタ132は、蛍光体から発せられる長波長帯域光を透過し、短波長帯域光を反射するフィルタである。また、このロングパスフィルタ132は、入射光の入射角が大きくなるにつれて透過波長帯域が短波長側へシフトする性質を有し、所定の角度未満の入射角で入射する励起光を反射するものである。一例として、緑色発光ユニット64Gの蛍光ホイール71に設けられるロングパスフィルタ132について説明する。
緑色発光ユニット64Gが備える青色光源72Bは、図6に示すように、480〜490nmの波長帯域にピークを有する青色波長帯域のレーザー光を励起光として射出するレーザー発光器である。そして、緑色発光ユニット64Gの蛍光ホイール71に設けられるロングパスフィルタ132は、図7に示すように、35度未満で入射する青色波長帯域の励起光の多くを反射し、35度から入射角が大きくなるにつれて入射する励起光の透過率が上がって、45度以上の入射角でほとんどの青色波長帯域の励起光を透過させる性質を有するものを採用している。
そして、蛍光ホイール71の蛍光発光部に励起光を照射する一対の光源72は、当該光源72からの光がロングパスフィルタ132の表面における法線(即ち、蛍光ホイール71の回転軸)に対してθ=45度の角度をなして入射し、更にロングパスフィルタ132を透過して蛍光発光部の蛍光体に照射されるように配置されている。
また、ロングパスフィルタ132の入射側には反射防止膜が形成されている。この反射防止膜は、モスアイフィルムを貼設したり、フッ化マグネシウムなどを真空蒸着したりすることで形成されるものである。したがって、ロングパスフィルタ132に入射する励起光は、光源72側にほとんど反射されることなく透過して蛍光体の層131に入射する。
このように、蛍光体の層131の励起光入射側にロングパスフィルタ132を配置することで、図8に示すように、入射角θ=45度でロングパスフィルタ132に入射する励起光Eは、ロングパスフィルタ132を透過して、蛍光体層131の蛍光体に照射される。励起光の多くは蛍光体に吸収されるも、蛍光体に吸収されることなく散乱反射する反射励起光REも存在する。この反射励起光REは、様々な入射角でロングパスフィルタ132に照射される。
ここで、ロングパスフィルタ132の表面における法線に対して45度以上の角度をなして、蛍光体層131側からロングパスフィルタ132に入射する反射励起光REは、ロングパスフィルタ132を透過して光源72側に射出されることになるが、35度未満の角度をなして入射する反射励起光REはロングパスフィルタ132でほとんどが蛍光体層131側に反射する。また、35度以上45度未満の角度をなして入射する反射励起光REは、45度よりも入射角が小さくなるにつれて透過率が低下するため、一部がロングパスフィルタ132により蛍光体層131側に反射することになる。
これにより、蛍光体によって散乱反射する励起光の一部を有効的に利用することができるため、ロングパスフィルタ132を設置しない場合に比べて、蛍光体を明るく発光させることができる。
また、図5に示したように、蛍光体が励起されて、蛍光体から全方位に蛍光発光された光は、直接光源72側へ、あるいは、基材表面の反射面で反射した後に光源72側へ射出されて、集光レンズ群148に入射する。また、蛍光体に吸収されることなく基材表面の反射面に照射される励起光も、反射面で蛍光体層131側に反射されるため、再び蛍光体の励起に利用されることになる。
つまり、この光源ユニット63は、各発光ユニット64R,64G,64Bの光源72を順次発光させることで、光の三原色を順次に射出することができる。そして、このプロジェクタ10は、上記したように表示素子51(DMD)がデータに応じて各色の光を時分割表示することにより、スクリーンにカラー画像を生成することができる。
したがって、本発明によれば、励起光の利用効率を向上させた発光ユニット64と、この発光ユニット64を備えることで明るい画像を投影することのできるプロジェクタ10と、を提供することができる。
また、ロングパスフィルタ132の入射面に反射防止膜を形成する場合は、光源72から照射される励起光の利用効率を向上させることができる。
そして、蛍光発光部における基材の表面に反射面を形成する場合は、蛍光体から基材側に発せられた蛍光光を光源72側に反射して光源光として利用することができるとともに、蛍光体に吸収されることなく基材に照射された励起光を反射して蛍光体の励起に利用することができるため、反射面を形成しない場合に比べて蛍光ホイール71を明るく発光させることができる。
また、本実施例における発光ユニット64は、基材を円板形状の蛍光ホイール71として形成し、この蛍光ホイール71を回転させる構成としている。よって、シンプルな発光ユニット64であって、照射面積を拡張して熱の集中を避けることができる発光ユニット64を提供することができる。
また、本発明は、以上の実施例に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。例えば、ロングパスフィルタ132は、上記したように、45度以上の入射角で入射する励起光を反射する性質を有しているものに限定されることなく、40度以上、あるいは、35度以上など所定の角度で入射する励起光を反射する性質を有するものを採用することもできる。この場合、光源72は、採用するロングパスフィルタ132の性質に合わせて、励起光の多くがロングパスフィルタ132に入射するような位置に設置される。
また、上記した赤色発光ユニット64R及び緑色発光ユニット64Gが有する青色レーザー光を射出する青色光源72Bに代えて、紫外波長帯域のレーザー光を射出する紫外光源72Uを配設してもよい。また、光源72は、レーザー発光器に代えて発光ダイオードを採用することもできる。
そして、光源ユニット63を構成する複数の発光ユニット64のうちの何れかを発光ダイオードなどの発光装置に置き換えることもできる。即ち、上記した青色発光ユニット64Bに代えて、青色波長帯域光を射出する発光ダイオードやレーザー発光器などの発光源を備えた青色発光装置を配設することとしてもよい。さらに、上記した赤色発光ユニット64Rに代えて、赤色波長帯域光を射出する発光ダイオードやレーザー発光器などの発光源を備えた赤色発光装置を配設することとしてもよい。そして、上記した緑色発光ユニット64Gに代えて、緑色波長帯域光を射出する発光ダイオードやレーザー発光器などの発光源を備えた緑色発光装置を配設することもできる。また、各光学部品のレイアウトも、上述した構成(図3、図4参照)に限ることなく様々なレイアウトを採用することができる。
さらに、図4及び図5に示したように、発光ユニット64の蛍光ホイール71に設けられる蛍光体の層131の種類は夫々1種類に限られるものでもない。即ち、赤色発光ユニット64R、緑色発光ユニット64G、青色発光ユニット64Bの3種類の発光ユニット64に代えて、蛍光ホイール71の蛍光発光部に、励起光を受けて赤色、緑色及び青色の波長帯域の蛍光光を発する3種類の蛍光体の層131を周方向に並設した発光ユニット64を配設することとしてもよい。この場合、蛍光ホイール71の回転数は、プロジェクタ制御手段により制御されて、順次発光ユニット64から赤色、緑色及び青色の光源光を射出する構成とすることで、表示素子51(DMD)がデータに応じて各色の光を時分割表示することにより、スクリーンにカラー画像を生成することができる。
そして、蛍光ホイール71は、上記のように円板形状として駆動装置により回転させる構成とする場合に限ることなく、矩形状に形成した蛍光板を固定することとしてもよい。なお、固定する蛍光板に各色の蛍光体の層131を並設する場合、光源72と蛍光板との間に、光源72からの光の照射方向を変化させる調整装置を配設する、あるいは、光源72の位置及び/又は照射方向を変化させるように駆動する光源駆動装置を設けて、光源72からの光の照射スポット位置を移動させることで、各色の蛍光光を蛍光板から射出することができる。なお、調整装置としては、例えば、KTN結晶、音響光学素子、MEMSミラー等を用いた光偏光器を採用することができる。
また、上記した発光ユニット64は、プロジェクタ10に搭載する場合に限定されることなく、様々な電子機器に搭載する発光ユニット64として利用することができる。