JP5781707B2 - 波型鋼板使用の耐力壁 - Google Patents

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Description

この発明は、鉄骨のフレーム材と耐力要素となる波型鋼板とでなる波型鋼板使用の耐力壁に関する。
鉄骨のパネルフレームに波型鋼板を取付け、繰り返し荷重の作用時に、スリップ性状の生じない安定したエネルギー吸収能力を得るようにしたものが知られている(例えば特許文献1,2)。
特開2010−90650号公報 特開2010−126964号公報
上記特許文献1,2等の従来の技術は、パネル幅の全幅に渡って1枚の波型鋼板を張っているが、スリップ性状のない安定したエネルギー吸収能力を示す範囲に限界がある。従来の全幅に渡る波型鋼板では、層間変位角が1/66 rad程度で引っ張り挙動に移行し、スリップ性状を示し始める。そのため、パネル幅が限界幅を超えた場合は、必要とする層間変位角に対応できない。波型鋼板の波型の折り曲げ形状を変えることで、限界幅をある程度は増やすことができるが、これにも限りがあり、また特殊な折り曲げ形状の波型鋼板を使用するとコスト高となる。
この発明の目的は、壁全体の幅寸法や高さ寸法が1枚の波型鋼板ではスリップ性状を示し始める限界幅を超えても、波型鋼板の折り曲げ形状を変えずに、スリップ性状のない安定したエネルギー吸収能力を確保することができる波型鋼板使用の耐力壁を提供することである。
この発明の他の目的は、上記のように限界幅を超えても安定したエネルギー吸収能力を確保しながら、加工工数が少なくて済み、製造コストの増加を抑えることである。
この発明の波型鋼板使用の耐力壁は、左右のフレーム材と、これら左右のフレーム材の上端間および下端間に接合された上下のフレーム材と、前記左右のフレーム材および上下のフレーム材で囲まれる壁面区画に張られて耐力要素となる波型鋼板とを備えた耐力壁において、前記波型鋼板を、山部稜線方向と直交して設けられて荷重の伝達を遮断または低下させる荷重伝達分離部によって分け、この荷重伝達分離部に沿って前記壁面区画内に横方向または縦方向に延びる中桟を設け、前記波型鋼板を、波の谷部で前記中桟および前記フレーム材に固定したことを特徴とする。
前記荷重伝達分離部は、この部分の両側の波型鋼板部分を相互に完全に分離するものであっても、また両側の波型鋼板部分が繋がってはいるが荷重の伝達を遮断または低下させるものであっても良い。また、前記各フレーム材は、独立した耐力壁パネルを構成するパネルフレーム材であっても、建物の柱や梁であっても良い。
この構成によると、耐力壁に面内せん断力が負荷された場合に、波型鋼板の波の山部が稜線方向と略直交する方向に歪むことにより、上記面内せん断力に対してスリップ性状のない安定したエネルギー吸収が行われる。この安定したエネルギー吸収が行える波型鋼板の波山稜線方向の幅については限界があるが、この発明では、波型鋼板を山部稜線方向と直交する荷重伝達分離部によって分けており、その分けられた両側の波型鋼板部分は相互に荷重の伝達が遮断されまたは低下する。また、波型鋼板は、波の谷部で固定されることで、前記エネルギー吸収の機能を発揮するが、前記荷重伝達分離部が前記中桟および前記フレーム材に固定れることで、各波型鋼板部分毎に独立して前記山部の歪みによるエネルギー吸収作用が得られる。したがって、その分けられた両側の波型鋼板部分を限界幅以下に設定することで、耐力壁の全体幅が広くても、波型鋼板の折り曲げ形状を変えずに、必要とする層間変形角に対応することができる。
このように、耐力壁の全体の幅寸法や高さ寸法が1枚の波型鋼板では前記限界幅を超える寸法である場合であっても、波型鋼板の折り曲げ形状を変えずに、スリップ性状のない安定したエネルギー吸収能力を確保することができる。
この発明において、前記荷重伝達分離部は、前記波型鋼板の少なくとも山部に設けられたスリットであっても良い。
前記波型鋼板を完全に分離された複数枚に分けた場合、波型鋼板をフレーム材に取付ける際に位置合わせが複雑になる。また、複数枚製造するため、同一面積当たりの工数が増え、製造コストが増加する。しかし、上記のように荷重伝達分離部をスリットとした場合、荷重伝達分離部で分離されていない1枚の大きな波型鋼板を使用できる。そのため、荷重伝達分離部の両側の波型鋼板部分を相互に位置合わせする工程が不要であり、位置合わせ工程の増加によるコトス増が解消できる。スリットの加工は必要であるが、前記位置合わせに比べて簡単な工程で済む。
このようにスリットを設けることで、上記のように限界幅を超えても安定したエネルギー吸収能力を確保しながら、加工工数が少なくて済み、製造コストの増加を抑えることができる。
この発明において、中桟として1本以上の横桟を設け、この横桟により前記壁面区画が上下に分割される分割区画毎に、前記波型鋼板として、互いに分割された複数の分割波型鋼板を設けても良い。
この構成の場合、波型鋼板が上下に分割された複数の分割波型鋼板とされることで、上下幅の広い耐力壁であっても、上下幅の広い波型鋼板を使用することなく、耐力壁が製作できる。また、その各分割波型鋼板の山部稜線方向が上下方向である場合は、上下に分割された複数の分割波型鋼板とされることで、安定したエネルギー吸収機能についての限界幅に対応して波型鋼板が分割されることになり、上下幅の広い耐力壁の場合に、波型鋼板の折り曲げ形状を変えずに、スリップ性状のない安定したエネルギー吸収能力を確保することができる。
この場合に、前記横桟の他に、前記中桟となる縦桟を設け、前記分割波型鋼板は山部稜線方向が横方向とされ、かつこの分割波型鋼板は前記縦桟に沿って前記荷重伝達分離部となるスリットを有するものとしても良い。
波型鋼板におけるスリップ性状のない安定したエネルギー吸収が行われる限界幅は、山部稜線方向についての幅である。分割波型鋼板の横方向が山部稜線方向となる場合は、このように縦桟に沿って前記荷重伝達分離部となるスリットを有することで、横幅が広い耐力壁の場合にも、波型鋼板の折り曲げ形状を変えずに、スリップ性状のない安定したエネルギー吸収能力を確保することができる。
波型鋼板に前記荷重伝達分離部としてスリットを設ける場合に、前記波型鋼板は波山の頂部および波山の底部が平坦部分となる断面矩形または台形の波形であり、前記スリットは、前記波谷の底部となる平坦部分を除く全範囲に渡って設け、前記スリットの幅を5mm以上としても良い。
前記スリットを波谷の底部となる平坦部分を除く全範囲に渡って設けることで、スリットが長くなり、連続する部分が平坦な谷底部分だけとなって、スリットの両側の部分間での荷重の伝達がより生じ難くなる。そのため、スリットの両側の部分を相互に独立させてエネルギー吸収を行わせる機能が増大し、より安定してエネルギー吸収能力が確保できる。また、スリットの幅が5mm以上であると、変形時においてスリットで分離される山部間での干渉が無く、この点からも安定したエネルギー吸収能力を確保することができる。
この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明から、より明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、この発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。この発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の符号は、同一または相当する部分を示す。
この発明の第1の実施形態にかかる波型鋼板使用の耐力壁を示す正面図である。 同耐力壁のパネルフレームと柱とを示す正面図である。 同耐力壁における部分拡大正面図である。 図3におけるIVA部の拡大正面図である。 同部分の拡大断面図である。 この発明の他の実施形態にかかる波型鋼板使用の耐力壁を示す正面図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる波型鋼板使用の耐力壁を示す正面図である。 同耐力壁のパネルフレームおよび柱を示す正面図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる波型鋼板使用の耐力壁を示す正面図である。 図8におけるIXA部の拡大正面図である。 同部分の拡大正面図である。
この発明の第1の実施形態を図1ないし図4Bと共に説明する。この波型鋼板使用の耐力壁1は、図1に正面図で示すように、左右のフレーム材2,2、およびこれら左右のフレーム材2,2の上端間および下端間に接合された上下のフレーム材3,3からなるパネルフレーム1と、これら左右,上下のフレーム材2,2,3,3に囲まれる壁面区画6(図2)に張られて耐力要素となる波型鋼板7とを備える。図1では、波型鋼板7の波型の断面形状と、各部材の寸法とを併せて示している。
なお、ここでは、左右の柱11,11とは別に、これら柱11の側面に沿わせて左右のフレーム材2,2を設けているが、左右の柱11,11を前記左右のフレーム材2,2に兼用することで、左右のフレーム材2,2を省略しても良い。
図2のように、前記左右のフレーム材2,2と上下のフレーム材3,3とで矩形のパネルフレーム1が構成される。このパネルフレーム1の壁面区画6内には、横方向に延びる中桟となる横桟4と縦方向に延びる中桟となる縦桟5とが設けられている。横桟4は、前記壁面区画6を上下に並ぶ複数(図示の例では4つ)の分割区画6Aに等分するように上下に等間隔に複数(図示の例では3本)設けられる。縦桟5は、左右のフレーム材2,2の中間位置に1本設けられる。前記左右および上下のフレーム材2,3、横桟4および縦桟5は、いずれも角形鋼管,溝形鋼、その他の軽量形鋼等の鉄骨材からなる。また、これらフレーム材2,3、横桟4および縦桟5には、前記波型鋼板7を固定するための複数のボルト挿通孔(図示せず)がそれぞれ設けられている。
波型鋼板7は、一方向に延びる山部7aと谷部7b(図4A, 図4B)とが交互に並ぶ断面波形の鋼板であり、ここでは波山稜線方向が横方向に延びるように、すなわち波の山部7aおよび谷部7bの延びる方向が横方向となるように前記壁面区画6に張られている。波型鋼板7の波形は、波山となる山部7aの頂部および波谷となる谷部7bの底部が平坦部分となる断面矩形または台形である。
1枚の耐力壁における波型鋼板7は、上下に並ぶ4枚の分割波型鋼板7Aからなり、各分割波型鋼板7Aは波の谷部7bに沿って互いに分割されている。各分割波型鋼板7Aは、それぞれ別個に製造されたものであっても、また、互いに切断されたものであっても良い。各分割波型鋼板7Aは、前記壁面区画6を前記横桟4で等分した各分割区画6A(図2)にそれぞれ張られる。これら4枚の分割波型鋼板7Aの横幅方向中間位置には、山部稜線方向と直交して荷重の伝達を低下させる荷重伝達分離部となるスリット8が設けられ、このスリット8により各分割波型鋼板7Aは左右の波型鋼板部分7Aa,7Aaに分けられる。
図3は、図1における分割波型鋼板7Aの略1枚部分を拡大して示している。前記スリット8は、図3のIVAを拡大した正面図とその断面図とを示す図4A,図4Bのように、分割波型鋼板7Aの波谷である谷部7bの底部となる平坦部分を除く全範囲に渡って、波の山である山部7aに設けられる。この例では、スリット8の両端が、谷部7bの底部となる平坦部分の端まで延びている。このスリット8の幅dは、5mm以上とされている。縦方向に延びる中桟である前記縦桟5(図1〜図3)は、前記スリット8に沿って設けられる。図3のように、各分割波型鋼板7Aは、波の谷部7bで前記フレーム材2,3、横桟4および縦桟5にボルト10(図4A)を用いて固定されている。ボルト10は、波の山部稜線方向と直交する方向に複数本並べて設けられる。
この構成の波型鋼板使用の耐力壁によると、パネルフレーム1に波型鋼板7が張られているため、面内せん断力が負荷された場合に、波型鋼板7の波の山部が稜線方向と略直交する方向に歪むことにより、上記面内せん断力に対してスリップ性状のない安定したエネルギー吸収が行われる。この安定したエネルギー吸収が行える波型鋼板の波山稜線方向の幅については限界があるが、上下に並ぶ各分割波型鋼板7Aを山部稜線方向と直交するスリット8によって分けており、その分けられた両側の波型鋼板部分7Aa,7Aaは相互に荷重の伝達が遮断されまたは低下する。また、波型鋼板は、波の谷部で固定されることで、前記エネルギー吸収の機能を発揮するが、前記各波型鋼板部分7Aa,7Aaにおける前記スリット8による荷重伝達分離部となる辺が前記中桟である縦桟5に固定され,他の各辺が横桟4および縦フレーム材2に固定されることで、各波型鋼板部分7Aa,7Aa毎に独立して前記山部の歪みによるエネルギー吸収作用が得られる。したがって、その分けられた両側の波型鋼板部分7Aa,7Aaの横幅を限界幅以下に設定することで、耐力壁の全体幅が広くても、波型鋼板の折り曲げ形状を変えずに、必要とする層間変形角に対応することができる。この例では、パネル横幅750mmに対して、波型鋼板部分7Aa,7Aaの横幅は、その半分の375mmに分割されており、この波型鋼板部分横幅の375mmが前記限界幅以下であれば、必要とする層間変形角に対応することができる。
また、この実施形態ではスリット8によって荷重伝達分離部を構成しているため、次の利点が得られる。すなわち、波型鋼板を完全に分離された複数枚に分けた場合、波型鋼板をフレーム材に取付ける際に位置合わせが複雑になる。また、複数枚製造するため、同一面積当たりの工数が増え、製造コストが増加する。しかし、上記のように荷重伝達分離部をスリット8とした場合、荷重伝達分離部で分離されていない1枚の大きな波型鋼板を使用できる。ここでは、横幅方向については1枚の分割波型鋼板7Aとしている。そのため、分割波型鋼板7Aをさらに荷重伝達分離部で分割して2枚の独立した波型鋼板部分7Aa,7Aaとする場合と異なり、荷重伝達分離部の両側の波型鋼板部分7Aa,7Aaを相互に位置合わせする工程が不要であり、位置合わせ工程の増加によるコトス増が解消できる。スリット8の加工は必要であるが、前記位置合わせに比べて簡単な工程で済む。
前記分割波型鋼板7Aは、波の山部7aの頂部および谷部7bの底部が平坦部分となる断面矩形または台形の波形であるが、前記スリット8は、前記谷部7bの底部となる平坦部分を除く全範囲に渡って設けている。このように、スリット8を波の谷部7bの底部となる平坦部分を除く全範囲に渡って設けることで、スリット8が長くなり、スリット8の両側の部分間での荷重の伝達がより生じ難くなる。そのため、スリット8の両側の部分を相互に独立させてエネルギー吸収を行わせる機能が増大し、より安定してエネルギー吸収能力が確保できる。また、スリット8の幅は5mm以上としているが、5mm以上であると、変形時においてスリット8で分離される山部間での干渉が無く、この点からも安定したエネルギー吸収能力を確保することができる。
なお、波型鋼板7,分割波型鋼板7Aの山部7aにのみスリット8を設けるには、予め波型鋼板となる素材鋼板の所定の位置にスリット8を設け、その後そのスリット形成済み鋼板を折り曲げて波板形状にすれば良い。また、素材鋼板を波型鋼板7,分割波型鋼板7Aに折り曲げ加工する方法としては、ベンダーによる曲げ加工や、金型によりプレス成形する方法、およびロール成形する方法がある。これらのいずれの方法も、山部7aにのみスリット8を設けた波型鋼板7,分割波型鋼板7Aの形成に対応できる。また、プレス成形による方法では、スリット8を設ける位置で素材鋼板を打ち抜く形状とした金型を用いれば、一度の加工でスリット8の形成と素材鋼板の折り曲げ加工を行うことができる。
また、この実施形態では、波型鋼板7を上下に並ぶ4枚の分割波型鋼板7Aに分割しているが、このため、パネル高さ3000mmに対して全上下幅に続く長い波型鋼板を用いることなく、4分割された上下幅750mmの波型鋼板を材料して用いれば良く、波型鋼板の入手や取扱性が容易であり、これによっても安価となる。すなわち、波型鋼板7の山部稜線方向が横方向である場合、安定したエネルギー吸収の観点からは、波型鋼板7を上下方向に複数枚に分割する必要はないが、1枚の長すぎる波型鋼板は却って取扱性や加工性が悪く、適度の長さに分割することで、取扱性,加工性,入手性が向上し、安価となる。
このように、耐力壁の全体の幅寸法や高さ寸法が前記限界幅を超える寸法である場合であっても、波型鋼板の折り曲げ形状を変えずに、スリップ性状のない安定したエネルギー吸収能力を確保することができる。しかも、上記のように限界幅を超えても安定したエネルギー吸収能力を確保しながら、加工工数が少なくて済み、製造コストの増加を抑えることができる。
図5は、この発明の他の実施形態を示す。この波型鋼板使用の耐力壁では、図1〜図4Bに示す実施形態において、各分割波型鋼板7Aを左右に分ける荷重伝達分離部として、前記スリット8を設けた構成に変えて、荷重の伝達を遮断する分割部9が縦桟5に沿って設けられている。すなわち、左右の波型鋼板部分7AA,7AAを分割部9で互いに完全に別個の板としている。なお、図5でも、波型鋼板7の断面形状と、各部材の寸法とが併せて示されている。その他の構成は図1〜図4Bに示した実施形態の場合と同様である。
この実施形態の場合も、波型鋼板7の分割波型鋼板7Aにおける分割部9で分割された左右の波型鋼板部分7AA,7AAの幅を、安定したエネルギー吸収能力を確保するための限界幅以下に設定して、必要とする層間変形角に対応することができる。そのため、パネル幅の全体に渡る1枚の波型鋼板ないしは分割波型鋼板を張る場合に比べて、大変形に容易に追従できる。これにより、耐力壁の横幅寸法が安定したエネルギー吸収能力を確保するための波型鋼板の限界幅を超えても、波型鋼板の折り曲げ形状を考慮することなく、スリップ性状のない安定したエネルギー吸収能力を確保することができる。
図6および図7は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この波型鋼板使用の耐力壁では、図7のように、左右のフレーム材2,2と上下のフレーム材3,3とで構成される矩形のパネルフレーム1の壁面区画6内に、横方向に延びる中桟となる横桟4が、壁面区画6を上下に並ぶ複数(図示の例では6つ)の分割区画6Bに等分するように上下に等間隔に複数本(図示の例では5本)設けられる。縦桟は設けられない。
図6に正面図で示すように、波型鋼板7は、一方向に延びる山部7aと谷部7bとが交互に並ぶ断面波形の鋼板であり、ここでは波の山部稜線方向が縦方向に向くように前記壁面区画6に張られている。波型鋼板7の波形は、図1〜図4Bの実施形態の場合と同様に、波山となる山部7aの頂部および波谷となる谷部7bの底部が平坦部分となる断面矩形または台形である。なお、図6でも、波型鋼板7の断面形状と、各部材の寸法とが併せて示されている。
この場合の波型鋼板7は、山部稜線方向と直交する横方向に設けられて荷重の伝達を遮断する荷重伝達分離部である分割部9によって、互いに分割された上下6枚の分割波型鋼板7Bの集合体として構成され、1枚ごとの分割波型鋼板7Bが、前記壁面区画6を前記横桟4で等分した各分割区画6Bにそれぞれ張られる。ここでは、荷重伝達分離部となるスリットは設けられていない。各分割波型鋼板7Bは、それらの波の谷部7bで前記フレーム材2,3および横桟4にボルト10を用いて固定されている。その他の構成は図1〜図4Bの実施形態の場合と同様である。
この実施形態では、波型鋼板7を山部稜線方向と直交する横方向の分割部9によって上下6枚の分割波型鋼板7Bに分割しているので、上下幅につき、安定したエネルギー吸収能力を確保するための限界幅を超えない分割波型鋼板7Bとできる。これにより、耐力壁の高さ幅が、1枚の波型鋼板では安定したエネルギー吸収能力を確保できる限界幅を超えても、波型鋼板の折り曲げ形状を考慮することなく、スリップ性状のない安定したエネルギー吸収能力を確保することができる。
図8〜図9Bは、この発明のさらに他の実施形態を示す。この波型鋼板使用の耐力壁では、図6および図7の実施形態において、荷重の伝達を遮断する荷重伝達分離部となる上下に並ぶ5つの分割部9のうち、一つ置きとなる1段目,3段目、および5段目の分割部9を、図1〜図4Bの実施形態における荷重の伝達を低下させる荷重伝達分離部となるスリット8に置き換えている。すなわち、図8に正面図で示すように、壁面区画6の全体に対応する1枚の波型鋼板7に対して、山部稜線方向と直交する分割部9とスリット8とを上下に交互に並べて設けている。これにより、波型鋼板7は、上下に並ぶ3枚の分割波型鋼板7Cに分割され、その各分割波型鋼板7Cは前記スリット8により上下の波型鋼板部分7Ca,7Caに分離されている。図9A,図9Bは、それぞれ図8のIX部を拡大した正面図とその断面図とを示す。なお、図8でも、波型鋼板7の波型断面形状と、各部材の寸法とが併せて示されている。
この実施形態では、波型鋼板7を、山部稜線方向と直交する横方向の分割部9によって上下3枚の分割波型鋼板7Cに分割し、さらに、各分割波型鋼板7Cでは、その上下方向の中間位置に山部稜線方向と直交する横方向に沿ってスリット8を設け、各分割波型鋼板7Cを上下の波型鋼板部分7Ca,7Caに分離している。そのため、スリット8または分割部9で分けられる上下幅が限界幅を超えない幅であれば、安定したエネルギー吸収能力を確保することができる。また、波型鋼板7が上下3枚の分割波型鋼板7Cに分割されているため、1枚の大きな波型鋼板7を張る場合に比べて、作業する分割波型鋼板7Cの上下幅で適度の大きさとなって取扱性が良い。
なお、上記各実施形態では、パネルフレーム1で囲まれる壁面区画6に、波の山部7aが横方向または縦方向のいずれか1方向に延びる波型鋼板7(分割波型鋼板7A,7B,7C)を張った構成のものを例示した。しかし、この発明は、このような構成例に限らず、例えばパネルフレーム1で囲まれる壁面区画6に、波の山部が横方向に延びる分割波型鋼板と縦方向に延びる分割波型鋼板とを複合させて張った構成の場合に適用しても、上記と同様の効果を奏することができる。
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まるこの発明の範囲内のものと解釈される。
1…パネルフレーム
2…左右のフレーム材
3…上下のフレーム材
4…横桟(中桟)
5…縦桟(中桟)
6…壁面区画
6A,6B…分割区画
7…波型鋼板
7A,7B,7C…分割波型鋼板
7a…波型鋼板の山部
7b…波型鋼板の谷部
8…スリット(荷重伝達分離部)
9…分割部(荷重伝達分離部)

Claims (5)

  1. 左右のフレーム材と、これら左右のフレーム材の上端間および下端間に接合された上下のフレーム材と、前記左右のフレーム材および上下のフレーム材で囲まれる壁面区画に張られて耐力要素となる波型鋼板とを備えた耐力壁において、
    前記波型鋼板を、山部稜線方向と直交して設けられて荷重の伝達を遮断または低下させる荷重伝達分離部によって分け、この荷重伝達分離部に沿って前記壁面区画内に横方向または縦方向に延びる中桟を設け、前記波型鋼板を、波の谷部で前記中桟および前記フレーム材に固定したことを特徴とする波型鋼板使用の耐力壁。
  2. 請求項1に記載の波型鋼板使用の耐力壁において、前記荷重伝達分離部は、前記波型鋼板の少なくとも山部に設けられたスリットである波型鋼板使用の耐力壁。
  3. 請求項1または請求項2に記載の波型鋼板使用の耐力壁において、中桟として1本以上の横桟を設け、この横桟により前記壁面区画が上下に分割される分割区画毎に、前記波型鋼板として、互いに分割された複数の分割波型鋼板を設けた波型鋼板使用の耐力壁。
  4. 請求項3に記載の波型鋼板使用の耐力壁において、前記横桟の他に、前記中桟となる縦桟を設け、前記分割波型鋼板は山部稜線方向が横方向とされ、かつこの分割波型鋼板は前記縦桟に沿って前記荷重伝達分離部となるスリットを有する分割波型鋼板を設けた波型鋼板使用の耐力壁。
  5. 請求項2または請求項4に記載の波型鋼板使用の耐力壁において、前記波型鋼板は波山の頂部および波山の底部が平坦部分となる断面矩形または台形の波形であり、前記スリットは、前記波谷の底部となる平坦部分を除く全範囲に渡って設け、前記スリットの幅を5mm以上とした波型鋼板使用の耐力壁。
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