JP5781681B1 - 焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 結晶の破壊を抑制しつつ、液中への分散が容易な大粒径の焼成ハイドロキシアパタイト凝集体含有組成物から小粒径の焼成ハイドロキシアパタイト含有組成物を容易に得ることが可能な、焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物の製造方法を提供すること。【解決手段】 焼成ハイドロキシアパタイト凝集体を含有する液体を、当該凝集体を高せん断力の撹拌装置で撹拌して当該凝集体を湿式解砕をする解砕工程を有することを特徴とする、平均粒径が9000nm以下の焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物の製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物の製造方法に関する。
美容医療の分野においては、美容向上の手段として、ハイドロキシアパタイトを含有する充填剤(フィラー)を皮下に注射することが行われている。ハイドロキシアパタイトは、生体親和性を始めとする各種効能を備えており、皮下注射においても優れた美容向上効果が期待される材料である。
例えば、特許文献1には、粒径80〜200μmのカルシウムハイドロキシアパタイトを含む粒子を用いる生体材料用組成物が開示されている。
特許第3559565号
このように、焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物の需要は高いものであるが、前記特許文献1に記載された剤等では、粒子の撹拌が十分ではなく組成物内で粒子の濃度に偏りが生じる等、問題が生じる場合があった。また、粒子を組成物中に混合し撹拌する際には、粒径が小さい粒子では分散させることが困難な場合があり、粒径が大きい粒子では組成物の用途として適さない場合があった。また、撹拌方法によっては、組成物中の粒子の結晶性が著しく低下する場合があった。
そこで、本発明は、焼成ハイドロキシアパタイトの結晶の破壊を抑制しつつ、液中への分散が容易な大粒径の焼成ハイドロキシアパタイト凝集体含有組成物から小粒径の焼成ハイドロキシアパタイト含有組成物を容易に得ることが可能な、焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、特定の解砕工程を設けることにより、粒子の分散性が高く、小粒径である、焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物を容易に製造可能なことを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下の通りである。
本発明(1)は、
焼成ハイドロキシアパタイト凝集体を含有する液体を、当該凝集体を高せん断力の撹拌装置で撹拌して当該凝集体を湿式解砕する解砕工程を有する、平均粒径が9000nm以下の焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物の製造方法である。
本発明(2)は、
X線回折法(XRD)により測定された、前記焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物のピークの半値幅Aと、前記焼成ハイドロキシアパタイト粒子凝集体の半値幅Bと、において、A/Bが0.9以上である、前記発明(1)の製造方法である。
本発明(3)は、
前記撹拌が、前記焼成ハイドロキシアパタイト凝集体に対して複数の方向からせん断力を加える方法である、前記発明(1)又は(2)の製造方法である。
本発明(4)は、
前記撹拌装置が、遊星回転ミル、湿式ジェットミル又は高速ホモジナイザーのいずれかである、前記発明(1)〜(3)のいずれかの製造方法である。
本発明(5)は、
前記撹拌装置が、遊星回転ミルである、前記発明(1)〜(4)のいずれかの製造方法である。
本発明によれば、焼成ハイドロキシアパタイトの結晶の破壊を抑制しつつ、液中への分散が容易な大粒径の焼成ハイドロキシアパタイト凝集体含有組成物から小粒径の焼成ハイドロキシアパタイト含有組成物を容易に得ることが可能な、焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物の製造方法を提供することが可能となる。
図1は、本実施例に係る、脱泡工程前後のフィラーを示す図(写真)である。
本発明の好適な実施形態に係る皮下注射用剤に関して、以下の順番で説明する。
(1)皮下注射用剤の組成
(2)皮下注射用剤の製造方法
(3)皮下注射用剤の作用
(4)皮下注射用剤の使用方法
(5)皮下注射用剤の物性
≪組成≫
以下、本実施形態に係る皮下注射用剤の成分及びその配合量に関して詳述する。
<成分>
本実施形態に係る皮下注射用剤は、ハイドロキシアパタイト粒子とハイドロゲルとを含み、更にその他の成分を含んでいてもよい。尚、ハイドロキシアパタイト粒子凝集体は、ハイドロキシアパタイト粒子の凝集体である。
(ハイドロキシアパタイト粒子)
先ず、本実施形態に係るハイドロキシアパタイト(水酸化燐灰石)粒子に関し、組成、機能及び特性、入手方法、焼成、粒径に関して説明する。尚、ここで示すハイドロキシアパタイト粒子の物性(特に粒径)は、皮下注射用剤中に含まれるハイドロキシアパタイト粒子の物性を示すものである(皮下注射用剤中に含まれるハイドロキシアパタイト粒子の物性と、皮下注射用剤の構成原料であるハイドロキシアパタイト粒子の物性とは、製造段階による形態変化等が生じる場合もあるため、必ずしも同一とは限らない)。
・組成
ハイドロキシアパタイト(HAp:Hydroxyapatite)は、化学式Ca10(PO(OH)で示される塩基性リン酸カルシウムで、天然には歯や骨の主成分として、また鉱石として存在する。
・機能及び特性
ハイドロキシアパタイト粒子は、高い生体親和性を示す。特に皮下注射用剤として使用した場合には、ナノ粒子としてフィラー中に存在するハイドロキシアパタイト粒子が、繊維芽細胞を刺激することでコラーゲン産生を増進する。また、マイクロ粒子としてフィラー中に存在するハイドロキシアパタイト粒子は、スペーサーとして物理的に機能する。
・焼成
本実施形態に係るハイドロキシアパタイト粒子としては、焼成ハイドロキシアパタイト粒子(以下、特に断らない限り、「ハイドロキシアパタイト粒子」とある場合には、「焼成ハイドロキシアパタイト粒子」を意味する。)を用いる。ハイドロキシアパタイト粒子を焼成(例えば、800℃で1時間)することにより、粒子の結晶性が高くなり、且つ複数の一次粒子の凝集体が熱により融着して、より強固で安定な粒子となる。特に、分散焼成法により焼成することが好適であり、融着防止剤を用いて焼成することにより凝集しにくくかつ結晶性の高いアパタイトナノ粒子を得ることができる。このように、本発明でいう「ハイドロキシアパタイト粒子」とは、特に断らない限り、一次粒子サイズの焼成ハイドロキシアパタイト粒子のみならず、複数の一次粒子が融着した凝集体も含む概念である。
このような焼成アパタイト粒子を用いることで、線維芽細胞を刺激して、コラーゲン産生を増進する効果の高いフィラーを得ることができる。すなわち、ハイドロキシアパタイト粒子を焼成ハイドロキシアパタイトとすることにより、未焼成のものと比較して、コラーゲン産生促進作用が顕著に向上するという効果を奏する。更に、焼成ハイドロキシアパタイトは、非晶質のハイドロキシアパタイトと比べて、結晶性が高く、生体において溶解性が低い。従って、生体内で長期間、生体活性を維持することができるため、コラーゲン産生促進効果が長期間発揮され易くなる。
焼成ハイドロキシアパタイト粒子は、非晶質のハイドロキシアパタイトを焼成させることにより得られる。具体的には、例えば、分散焼成法で焼成させることにより、焼成ハイドロキシアパタイトを得ることができる。また、ハイドロキシアパタイト粒子の結晶性の高い、高結晶性ハイドロキシアパタイト粒子を用いることが好適である。
焼成温度の下限値としては、500℃以上がより好ましい。焼成温度が500℃よりも低いと、焼成が十分でない場合がある。一方、焼成温度の上限値としては、1800℃以下がより好ましく、1250℃以下がさらに好ましく、1200℃以下が特に好ましい。焼成温度が1800℃よりも高いと、ハイドロキシアパタイトが分解する場合がある。従って、焼成温度を上記範囲内とすることにより、生体内で溶解し難い(結晶性が高い)ハイドロキシアパタイトを製造することができる。また、焼成時間としては、特に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。尚、焼成により、粒子同士が融着してしまう場合もあるが、このような場合には、焼成後の粒子を粉砕して使用することが可能である。
ハイドロキシアパタイト粒子が焼成されているか否かは、当該粒子の結晶性の度合いにより判断することができる。ハイドロキシアパタイト粒子の結晶性の度合いは、X線回折法(XRD)により測定することができる。各結晶面を示すピークの半値幅が狭ければ狭いほど結晶性が高いといえる。具体的には、本形態における焼成ハイドロキシアパタイト粒子は、X線回折(CuKα線)における2θ=32°付近(300)面のピークの半値幅が、好適には0.8以下(より好適には、0.5以下)の高結晶性のハイドロキシアパタイト粒子である。
前述のように、融着防止剤を用いて焼成することにより凝集しにくくかつ結晶性の高いアパタイトナノ粒子を得ることができる。融着防止剤としては、ハイドロキシアパタイト粒子間の融着を防止できるものであれば特に限定されるものではないが、上記の焼成温度において、不揮発性であることが好ましい。ただし、焼成工程終了後に10%以上残存する程度の不揮発性であればよい。また、融着防止剤は、焼成工程終了後に熱により化学的に分解するものであってもよい。さらに、融着防止剤が、溶媒、特に水系溶媒に溶解する物質であることが好ましい。融着防止剤が混在するハイドロキシアパタイト粒子を水系溶媒に懸濁するだけで、融着防止剤を除去することができるからである。
このような融着防止剤の具体例としては、塩化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム等のカルシウム塩(又は錯体)、塩化カリウム、酸化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム等のカリウム塩、塩化ナトリウム、酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム等のナトリウム塩等が挙げられる。
・入手方法
一般的なハイドロキシアパタイト粒子の製造方法としては、例えば溶液法(湿式法)が挙げられる。これは、中性若しくはアルカリ性の水溶液中でカルシウムイオンとリン酸イオンとを反応させることにより合成する方法であり、中和反応によるものや、カルシウム塩とリン酸塩を反応させるものがある。前述のように、融着防止剤共存下で焼成することにより凝集の少ない結晶性のアパタイト粒子を得る。
・粒径
本実施形態に係るハイドロキシアパタイト粒子の粒径(平均粒径)は、15μm以下であり、好適には5μm以下であり、より好適には1μm以下であり、更に好適には100nm以下である。ハイドロキシアパタイト粒子の粒径をこのような範囲とすることで、繊維芽細胞を刺激してのコラーゲン産生増進作用を示す。また、このような範囲とすることで、生体内で異物として認識され難いサイズであることから、マクロファージの誘因が起き難いという作用を示す。ハイドロキシアパタイト粒子の粒径(平均粒径)の下限値は特に限定されないが、例えば10nm以上である。尚、ここで示すフィラー中のハイドロキシアパタイト粒子(凝集体を含む)の平均粒径は、顕微鏡により撮影した画像における各粒子(例えば、50個の粒子)の粒子経を測長し、その平均径により決定する。また、フィラーを水等に膨潤させてハイドロゲルを溶解させて、取り出したハイドロキシアパタイトの各粒子(例えば、50個の粒子)の粒子径を測長し、その平均径により決定することもできる。
本実施形態に係る剤中のハイドロキシアパタイト粒子の粒径に関して、実用上の問題として、ほとんどの粒子が所望範囲内にあればよく、発明の効果を阻害しない範囲内で一部の粒子が所望範囲から外れてもよい。より具体的には、好ましくは粒子の90%以上が所望範囲(15μm以下であり、好適には10μm以下であり、より好適には5μm以下であり、特に好適には1μm以下)にあり、より好ましくは粒子の95%以上が所望範囲内にあり、更に好ましくは粒子の97%以上が所望範囲内にあり、特に好ましくは粒子の99%以上が所望範囲にあればよい。このような剤とすることにより、内径0.20mm以下であるような細い注射針においても安定して使用することが可能となる。尚、ここに示す粒子の範囲は、顕微鏡により撮影した画像における各粒子(例えば、100個の粒子)の粒子経の測長結果に基づく。
ここで、ハイドロキシアパタイト粒子の粒径がナノオーダーである場合に、皮下注射用剤の粘度を上昇させる場合がある。このような粘度上昇は、皮下注射用剤を皮下に留める、という点では有利であるが、粘度が高くなり過ぎると、注射針からの射出が困難になる場合がある。そのような観点からは、ハイドロキシアパタイト粒子の粒径は、好適には15nm以上であり、より好適には20nm以上であり、特に好適には100nm以上である。
このように、本実施形態に係る皮下注射用剤におけるハイドロキシアパタイト粒子は、コラーゲン産生増進作用を有する成分、粘度の向上成分等として機能し、更にはマクロファージの誘因成分となり得る。これらの機能を全て適当なものとするという点で、ハイドロキシアパタイト粒子の粒径は、10nm〜8μmであることが好適である。
(ハイドロゲル)
ハイドロゲルは、剤に用いることができるものであれば、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロースゲル(CMC)、ポリビニルアルコールゲル、ポリアクリル酸ソーダゲル{例えば、Carbopol(登録商標)等}が挙げられる。原料となるセルロースの安全性、安価であることなどから、カルボキシメチルセルロースゲルが好ましい。
・カルボキシメチルセルロースゲル
カルボキシメチルセルロース(CMC)は、セルロースの水酸基にカルボキシメチル基が導入されたセルロースエーテルである。本形態において、CMCであれば特に限定されないが、CMCのナトリウム塩であるナトリウムカルボキシメチルセルロース(Na−CMC)が好ましい。
市販されているCMCのエーテル化度は約0.5〜1.0の範囲であるが、セルロース単位当りの3個の水酸基全部をエーテル化したエーテル化度3のCMCを製造することも可能であり、エーテル化度1.0以上のものも市販されている。CMCのエーテル化度はCMC工業会発行の灰分アルカリ法により得られる。本形態では、エーテル化度が0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましい。尚、エーテル化度とは、一般的に、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基のうち、カルボキシメチル基又はその塩で置換された水酸基の平均個数を示す。
CMCの分子量は50,000〜500,000であることが好ましい。この分子量が50,000未満では低粘度となりチクソトロピー性が劣化する。一方、分子量が500,000を越えると、高粘度化しすぎて、注射可能なアパタイトの配合量が不足する。尚、ここで示す分子量は、重量平均分子量を示し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
カルボキシメチルセルロースゲルの製造方法は特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、グリセリン及び水を配合することによって製造することができる。配合する重量比は特に限定されないが、後述のように好適な範囲の粘度があることから、カルボキシメチルセルロース:グリセリン:水=1:5〜20:30〜60であることが好ましく、1:7〜15:40〜55であることがさらに好ましい。
カルボキシメチルセルロース(CMC)ゲルはチクソトロピー性を示す物理ゲルであり、せん断応力がゼロまたは、ゼロに近い場合は、弾性体として振る舞い、せん断速度の増加に伴い、流体としての挙動を示す。このことは、シリンジの針から射出する際には、小さい力で流体として、容易に注入され、すなわち、施術が容易でかつ、施術による患者への負荷が非常に小さいといえる。しかしながら、皮下に注入後は、弾性体として形状を維持することで、皮下の特定部位に留まり、皺を伸ばす効果を有する。
ハイドロゲルの粘度は、50〜15000mPa・sであることが好ましく、55〜10000mPa・sであることがより好ましく、60〜1000mPa・sであることがよりいっそう好ましく、65〜500mPa・sであることが更に好ましく、70〜300mPa・sであることが特に好ましい。ハイドロゲルの粘度が低いと、皮下に注入後、形状を維持することができず、皮下の特定部位に留まらない。ハイドロゲルの粘度が高い場合には、十分量のハイドロキシアパタイト粒子(本形態に係る、径の小さいハイドロキシアパタイト粒子)を分散させることが困難となり、また、0.20mm以下の内径を有する中空針を通過することができない。粘度の測定は、例えば、JIS Z 8803に従い振動式粘度計を用いて測定することができ、具体的には、Viscomate MODEL VM−10Aによって測定された値である。
本形態に係る粒径の範囲のハイドロキシアパタイト粒子は、ハイドロゲルの骨格との相互作用が本形態に係る粒径の範囲を超える粒子よりも強いため、フィラーが皮下で溶解することを抑制する作用がある。
(その他の成分)
その他の成分としては、本形態の効果を阻害しない範囲内で、粘度調整剤(例えば、グリセリン等)や、分散剤(例えば、ポリアクリル酸等)等の公知の添加剤を適宜含んでいてもよい。
<配合量>
本実施形態に係る皮下注射用剤において、ハイドロキシアパタイト粒子の含有率は、皮下注射用剤の全質量を基準として、1質量%以上であり、好適には15質量%以上であり、より好適には20質量%以上であり、更に好適には30質量%以上である。ハイドロキシアパタイト粒子の含有率をこのような範囲とすることにより、高い弾力を示すとともに、フィラーに配合されたアパタイト粒子の沈降による分離を防止できる。また、ハイドロキシアパタイト粒子の含有率が1質量%未満(特には、15質量%未満)であると、長期保管によるアパタイト粒子とゲルの分離が顕著となり得る。
ハイドロキシアパタイト粒子の含有率の上限値は特に限定されないが、皮下注射用剤の全質量を基準として、60質量%以下であり、50質量%以下が好適であり、45質量%以下が好適であり、40質量%以下が特に好適である。この上限値を超えると内径0.20mm以下(更には、内径0.18以下)という微細な針からの射出は困難となるため、施術時の患者への負荷が高くなる。
ここで、前述のように、本実施形態に係る皮下注射用剤において、粒径が小さいハイドロキシアパタイト粒子を用いる場合、皮下注射用剤の粘度が高くなる場合がある。しかしながら、例えば、コラーゲン産生増進作用及びマクロファージの誘因が起きないという作用に特に優れる100nm以下(下限値は特に限定されないが、例えば20nm)の粒径であるハイドロキシアパタイト粒子を用いる場合でも、ハイドロキシアパタイト粒子の配合量を40質量%以下(より好適には35質量%以下)とすることで、皮下注射用剤の粘度を最適なものとすることが容易となる(その結果、より細い注射針においても使用可能となる)。
また、ハイドロゲル(特にはカルボキシメチルセルロースゲル)の含有率は、特に限定されないが、皮下注射用剤の全質量を基準として、固形物換算で、好適には0.5質量%〜2.0質量%であり、より好適には0.6質量%〜1.5質量%であり、更に好適には0.7質量%〜1.0質量%である。
尚、その他の成分の含有率は、特に限定されないが、皮下注射用剤の全質量を基準として、好適には5.0量%〜10質量%であり、より好適には6.0質量%〜9.0質量%であり、更に好適には6.5質量%〜8.8質量%である。
≪製造方法≫
次に、本実施形態に係る皮下注射用剤の製造方法を説明する。
本実施形態に係る皮下注射用剤は、前記の原料を適宜配合することによっても調整可能であり、その製造方法は特に限定されないが、特定の解砕工程を有する製造方法によって製造されることが好適である。より詳細には、本実施形態に係る皮下注射用剤の好適な製造方法は、焼成ハイドロキシアパタイト凝集体を含有するハイドロゲル(本実施形態においてはカルボキシメチルセルロースゲル)を高せん断力を加える方法で撹拌して当該焼成ハイドロキシアパタイト凝集体を湿式解砕する解砕工程を有する方法である。
このような方法によれば、平均粒径が9000nm以下の焼成ハイドロキシアパタイト粒子を含む組成物が製造可能であり、焼成ハイドロキシアパタイトの結晶の破壊を抑制しつつ、液中への分散が容易な大粒径の焼成ハイドロキシアパタイト凝集体含有組成物から小粒径の焼成ハイドロキシアパタイト含有組成物を容易に得ることができる。更には、このような方法によれば、粒子の分散性が高い組成物が得られる。
ここで、このような方法は、焼成ハイドロキシアパタイト粒子を含む一般的な組成物を製造するための製造方法として用いることも可能である。例えば、ハイドロゲル(本実施形態においてはカルボキシメチルセルロースゲル)以外の液体を用いることで、望む液体に焼成ハイドロキシアパタイト粒子が分散した焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物を得ることが可能である。本発明においては、このような製造方法を解砕製造法とし、以下、当該解砕製造法に関して説明する。
<解砕製造法>
解砕製造法は、前述のように、焼成ハイドロキシアパタイト粒子を含む組成物の製造方法において、特定の解砕工程を有する方法である。次に、解砕製造法の詳細を、原料、工程、製造物の順に説明する。
(原料)
先ず、解砕製造法に用いられる原料としては、焼成ハイドロキシアパタイト凝集体と、当該焼成ハイドロキシアパタイト凝集体を分散させる液体と、を含む。当該液体には、焼成ハイドロキシアパタイト凝集体を解砕するためのビーズと、を含んでもよい。尚、焼成ハイドロキシアパタイト凝集体において、組成、機能及び特性、焼成、入手方法等に関しては、前述の通りであるため省略する。
解砕製造法に用いられる液体としては、特に限定されないが、水、エタノール、プロパノールおよびその異性体、メタノール、ブタノールおよびその異性体、アセトンが好ましい。また、解砕製造法に用いられる液体として、ゲル(例えば、カルボキシメチルセルロースゲル等のヒドロゲルやその他のゲル材料)を用いることも可能である。
解砕製造法に用いられる焼成ハイドロキシアパタイト凝集体としては特に限定されず、平均粒径が1000nm以上の焼成ハイドロキシアパタイト凝集体を用いても解砕することも可能である。
尚、解砕製造法においては、その他の成分として、本形態の効果を阻害しない範囲内で、分散剤(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等)等の公知の添加剤を適宜用いてもよい。分散剤を配合することにより、焼成ハイドロキシアパタイト凝集体同士が液体中で凝集するのを防ぎ、解砕の効率を上げることができる。
<工程>
次に、解砕製造法における具体的な製造工程は、原液調製工程と、解砕工程とを含む。
(原液調製工程)
先ず、液体中に、焼成ハイドロキシアパタイト凝集体と、必要に応じて、その他の原料{解砕工程としてビーズを使用する場合はビーズや、その他の添加剤(例えば、分散剤や粘度調整剤等)}を配合し、原液を調製する。
この際、原料の配合量としては、所望の組成物の組成に合わせて適宜配合すればよい。また、解砕工程としてビーズを使用する場合、ビーズは、最終的な組成物から除去されるため、発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合量を調整すればよい。例えば、10%アパタイト/水分散液を0.1%のポリアクリル酸ナトリウムを分散剤として調製する場合、20ccのメノウの粉砕容器に5.0gの0.3mmΦのジルコニアマイクロビーズ、1.0gのSHAp粉体、0.1gのポリアクリル酸三ナトリウム、8.9gの脱イオン水を投入する。
ここで、原料としてカルボキシメチルセルロース及びグリセリンを併せて用いる場合、カルボキシメチルセルロースの粉末をグリセリンに均一に分散させたのち、このペーストを水に溶かすことでダマを形成することなく、均一なゲルを容易に形成することができる。
(解砕工程)
次に、凝集体に高せん断力を加える方法で原液を撹拌して当該焼成ハイドロキシアパタイト凝集体を湿式解砕する。凝集体を含む原液に高せん断力を加えるための方法としては、複数の方向から焼成ハイドロキシアパタイト凝集体に対してせん断力を加える方法が好適である。尚、ここでいう「凝集体に複数の方向からせん断力を加える」とは、一般的なミル等において生じる、凝集体に与えられる装置内部での複雑な応力を示すものではなく、液全体の系を見た際に、複数の異なる応力(異なる方向からの応力)を加えることが可能な装置を示す。より具体的には、凝集体に高せん断力を加えるための撹拌装置としては、例えば、湿式ジェットミル、遊星回転ミル、高速ホモジナイザーなどがあるが、遊星回転ミルを用いることが特に好適である。
解砕工程としてこのような方法を用いることにより、湿式条件下にて凝集体が解砕されるのに十分なせん断力となると共に、解砕された粒子の液中での分散性を高め、解砕による焼成ハイドロキシアパタイト粒子の結晶性の低下を防ぐことが可能となる。解砕方法(解砕装置)を上述の好適なものとすることにより、このような効果をより高めることができる。また、遊星回転ミルの場合、ミルに用いる機器を、ジルコニアといった安全性の高い材料とすることが可能となるため、例えば皮下注射用剤のような、安全性が求められる用途において好適に使用することが可能となる。
これらの解砕工程における処理条件は特に限定されないが、例えば、遊星回転ミルの場合、公転回転数としては、100〜2000rpm、自転回転数としては、100〜3000rpm、処理時間としては、1〜6000分である。より具体的には、800rpm、自転回転数1600rpmで、180分間、湿式処理する、等である。解砕処理条件(処理時間の延長等)を調整することで、解砕効率を高めることが可能である。また、遊星回転ミルのように、解砕工程としてビーズを用いる場合には、投入するビーズの重量を増やすことにより、解砕効率が上昇し得る。
遊星回転ミルに用いられるビーズとしては、焼成ハイドロキシアパタイトよりも高い硬度のビーズであれば特に限定されないが、例えば、メノウ(SiO)ビーズ(修正モース硬度8)、ジルコニアビーズ(修正モース硬度11)、炭化タングステンビーズ(修正モース硬度12)、アルミナビーズ(修正モース硬度12)などが挙げられる。ここで、一般に、焼成ハイドロキシアパタイトの修正モース硬度は5である(即ち、本解砕製造法に用いられるビーズとしては、一般的に、修正モース硬度が5を超えるものである)。
また、ビーズ径を小さくすることにより、解砕効率が高まることが判明している。このような観点からは、例えば、ビーズ径を15mm以下とすることが好適であり、5mm以下とすることがより好適であり、0.5mm以下とすることが特に好適である。ビーズ径の下限値は特に限定されず、剤の粘度に合わせて適宜設定可能であるが、ビーズ径を小さくし過ぎると、高粘度の剤からのビーズの除去が困難となる場合があるため、例えば、ビーズ径を0.4μm以上とすることが好適である。
(ビーズ除去工程)
解砕方法が遊星回転ミルである場合、前記解砕工程にて得られた組成物から、ビーズを除去する。ビーズを除去する場合、適宜ビーズを摘出すればよいが、ビーズ径よりも小さい目の笊等でろ過することもできる。更に、遠心分離によってビーズの除去を行うことも可能である。
<製造物>
解砕製造法により、平均粒径が9000nm以下の焼成ハイドロキシアパタイト粒子を含む組成物が得られる。更には、解砕製造法によれば、この焼成ハイドロキシアパタイト粒子は、解砕前後で結晶性の変化が小さく、結晶の破壊が抑制されている。つまり、解砕製造法によって、大粒径の焼成ハイドロキシアパタイト凝集体含有組成物から小粒径且つ結晶性の高い焼成ハイドロキシアパタイト含有組成物を容易に得ることができる。
解砕製造法により得られた組成物中の焼成ハイドロキシアパタイト粒子の平均粒径としては、1000nm以下、500nm以下、250nm以下、125nm以下にすることができ、更に、一次粒子の平均粒径である50nm以下に解砕することができると理解される。
解砕製造法を用いることにより、得られた組成物中の焼成ハイドロキシアパタイト粒子の結晶性を維持することが可能となる。即ち、X線回折法(XRD)により測定されるピークに関して、解砕工程後の焼成ハイドロキシアパタイト粒子(焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物)のピークの半値幅Aと、原料である焼成ハイドロキシアパタイト粒子凝集体の半値幅Bと、において、A/Bが0.9以上とすることが可能であり、更には、0.95以上とすることも可能である。
≪作用≫
本実施形態に係る皮下注射用剤を皮下注入後、まず、ハイドロゲルが吸収分解される。本形態に係る焼成ハイドロキシアパタイト粒子は粒径が小さいために、焼成ハイドロキシアパタイト粒子が放出される。そして、焼成ハイドロキシアパタイト粒子による繊維芽細胞刺激によってコラーゲン産生が増進される。前述のように、生体内にて異物として認識され難いサイズであることから、マクロファージの誘因が起き難いという作用を示し、結晶性が高いことから、生体内で長期間生体活性を維持することができる。その結果、コラーゲンリッチ組織が皮下に残存する。
一方、ハイドロキシアパタイト粒子の平均粒径が本形態より大きい場合には、アパタイトは受動的に作用する。生体親和性のため、アパタイト粒子の表面が皮下で徐々にコラーゲンで覆われるとともに、異物としても認識されるサイズであるため、マクロファージによりアパタイトが貪食され、表面を覆うコラーゲン層が残存することで、しわ取り効果が持続するという機作である。
≪使用方法≫
本実施形態に係る皮下注射用剤の使用方法は、何ら限定されるものではないが、一般的な注射器のシリンジに充填した後、皮下用の注射において使用することができる。特に、0.20mm以下の内径を有する中空針を有する注射器用の注射用剤とすることができる。ここで、本実施形態に係る皮下注射用剤の具体的な使用方法として、本実施形態に係る皮下注射用剤を含有する注射器の好適な製造方法及び本実施形態に係る皮下注射用剤の適用方法に関して説明する。尚、これらはあくまで一例であり、本実施形態に係る皮下注射用剤の使用方法はこれらには何ら限定されない。
<注射器の製造方法>
本実施形態に係る皮下注射用剤を含有する注射器の製造方法は、脱泡工程を含むことを特徴とする方法である。以下各々の工程に関して説明する。
(脱泡工程)
まず、本実施形態に係る皮下注射用剤は、脱泡工程によって、皮下注射用剤に含まれるエアが除去される。本形態に係る皮下注射用剤の特性から、遠心分離機にかける方法が皮下注射用剤の脱泡工程として好適であり、減圧下で遠心分離機にかける方法が最も好適である。より具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)ゲルを主成分とする等、チクソトロピー性を有するフィラーを用いる場合、遠心分離によってフィラーにせん断力が加えられることで、フィラーを低粘度化させ、脱泡効率を上昇させることが可能となる。更に減圧下で遠心分離を行うことにより、当該脱泡原理と合わせ、脱泡効率を更に上昇させることが可能となる。
脱泡条件としては、特に限定されないが、例えば、下記レシピ例が挙げられる。
・レシピ01 高粘度標準脱泡
1.3KPa 9/3 90sec (圧力 公転/自転比 時間)
・レシピ02 金属系フィラー脱泡
1.3KPa 3/9 120sec
1.3KPa 7/5 90sec
1.3KPa 9/2 60sec
・レシピ03 セラミック系フィラー脱泡
1.3KPa 2/5 60sec
1.3KPa 5/5 60sec
このような脱泡工程を含むことにより、焼成ハイドロキシアパタイト粒子を含むハイドロゲルを有する皮下注射用剤に含まれるエアを除去できることから、皮下注射時の炎症を抑制することができる。
(充填工程)
次に、脱泡工程後の皮下注射用剤をシリンジに充填し、本実施形態に係る注射器とする。
(殺菌工程)
更に、本実施形態に係る皮下注射用剤は、必要に応じて、殺菌・滅菌を行ってもよい。殺菌・滅菌方法としては、例えば、高圧蒸気滅菌が挙げられる。
<適用方法>
本実施形態に係る皮下注射用剤及び皮下注射用剤を含有する注射器の適用方法としては、従来の皮下注射用剤及び皮下注射用剤を含有する注射器等と同様であり、特に限定されない。
≪物性≫
本実施形態に係る皮下注射用剤によれば、カルボキシメチルセルロースゲルを主成分として、平均粒径が15μm以下の焼成ハイドロキシアパタイト粒子を用いることで、前記剤の全質量を基準として、1〜60質量%以上の焼成ハイドロキシアパタイト粒子を配合しても、内径0.20mm以下であるような細い注射針においても使用可能となる。内径0.20mmとは、内径が大きい注射針30Gに相当する。本実施形態に係る皮下注射用剤は、内径が大きい注射針32G(内径0.18mm)以下の細い注射針や、通常の注射針30G(内径0.14mm)以下の細い注射針においても使用可能であり、通常の注射針32G(内径0.12mm)以下の細い注射針においても使用可能である。
<チクソトロピー性>
本実施形態に係る皮下注射用剤は、発明の効果をより高めるために、36−37℃(体温)におけるチクソトロピー指数が、0.1〜0.5であることが好適であり、0.1〜0.3であることがより好適である。チクソトロピー指数は、下記射出特性によって測定された数値である。
<射出特性>
シリンジに充填したフィラーの針からの射出特性を評価する方法を述べる。射出特性の評価方法には、本形態に係る流動性定量評価装置を用いる。この流動性定量評価装置によって、簡易に射出特性を評価することができる。
具体的には、注射筒に充填された粘性液体が該注射筒と結合した注射針から射出される際の射出特性を評価する粘性液体の流動性定量評価装置であって、前記粘性液体が充填された注射筒の押子に一定の負荷を与える負荷付与手段と、前記負荷付与手段により、前記注射針から前記粘性液体が射出する際に、前記負荷の時間的依存性を計測する計測手段と、前記計測手段による計測結果から、前記粘性液体が前記注射針から射出する際の流動曲線を取得する、ことを特徴とする粘性液体の流動性定量評価装置である。この流動性定量評価装置の詳細を以下に述べる。
まず、シリンジにたとえば内径0.159mmの30G長さ0.5インチの針を装着した後、シリンジを固定し、プランジャー部にたとえば瞬間的に3kgの荷重を加える。この荷重を加える手段、すなわち、粘性液体が充填された注射筒の押子に一定の負荷を与える負荷付与手段としては、特に限定されないが、例えば、シリンジポンプを用いる。
この時、針からフィラーが吐出されプランジャーに加えた荷重が、フィラーの吐出にしたがって経時的に減少する重量計の指示値を計測する。これが、負荷付与手段により、注射針から粘性液体が射出する際に、負荷の時間的依存性を計測する計測手段である。
そして、重量計の指示値、すなわち、計測手段による計測結果の時間微分より、せん断速度が求められる。このせん断速度に対して、重量計の指示値、すなわち、せん断応力をプロットすると一般にレオメーターで評価できる流動曲線を求めることができる。つまり、計測手段による計測結果から、粘性液体が注射針から射出する際の流動曲線を取得することができる。取得した流動曲線から、粘性液体の流動性を評価することができる。
流動性の評価として、せん断応力の対数とせん断速度の対数の両対数プロットの傾きと切片からゲルのチクソトロピー性とゲルネットワークの形成の平衡定数が求められる。前記両対数プロットの傾きが1に近いとき、その流体はニュートン流体(加える力に応じて抵抗が増える通常の液体)であり、1より小さい場合はチクソトロピー性(力を加えないときには固体として振るまうが、力を加えると流体的な挙動をする性質)を示し、1より大きいときはダイダランシー性(力を加えないと流体的な挙動を示すが、力に応じて固さを増す性質)を示す。
本形態に係るフィラーはチクソトロピー性を示し、シリンジ内では固体的であるが、プランジャーに力を加えると容易に針から吐出し、皮下に注入された後は、固体化して注入箇所のとどまり皺伸ばし効果を即座に発揮する。
以下、実施例及び比較例により、本発明をより詳細に説明する。
≪焼成ハイドロキシアパタイト組成物の調製≫
<実施例1>
20ccの分散液調製用セラミックス製容器に5.0gの12mmφのメノウビーズ(修正モース硬度8)と1.0gの焼成ハイドロキシアパタイト凝集体(ソフセラ社製、平均一次粒径40nm)と8.9gの脱イオン水を投入し、さらに、分散剤として0.1gのポリアクリル酸ナトリウムを加え、原料分散液を調製した。
次いで、上記分散液を、遊星回転ミルにて、公転800rpm、自転1600rpmの条件で2時間処理した後、ビーズを取り出し、実施例1に係る焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物を得た。
<実施例2〜6>
原料分散液を表1に示す配合とした以外は、実施例1と同様に、実施例2〜6に係る焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物を得た。
<比較例1>
分散液を、ボールミル(アサヒ理化製作所社製小型ボールミル)にて、500rpmの条件で2時間処理した以外は、実施例1と同様に、比較例1に係る焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物を得た。
<比較例2>
分散液を、撹拌モーター(アズワン社製)にて、1000rpmの条件で2時間プロペラ撹拌した以外は、実施例1と同様に、比較例2に係る焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物を得た。
<比較例3>
分散液を、(KAIJO社製SonoCleaner 50D)にて、2時間超音波処理した以外は、実施例1と同様に、比較例3に係る焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物を得た。
≪評価≫
実施例1〜6及び比較例1〜3に係る焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物に関して、焼成ハイドロキシアパタイト粒子の粒径及び結晶性の観点から評価を行った。その結果を表1に示す。粒径に関しては、前述の方法で測定を行い、結晶性に関しては、以下の条件にて評価した。評価結果を表1に示す。
<結晶性評価>
Mini Flex/HCM(リガク社)を用いて、X線:Cukα、出力:30kV/15mA、測定範囲:2θ=10°〜90°、スキャン速度:1.0°/min、サンプリング幅:0.01°の条件にて測定を行い、2θ=32°付近(300)面のピークの半値幅を測定する。前記焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物のピークの半値幅Aと、前記焼成ハイドロキシアパタイト粒子凝集体の半値幅Bと、において、A/Bが0.95以上のものを○、A/Bが0.9以上のものを△と評価した。
本表に示されるように、遊星回転ミルを用いた湿式解砕を行うことで、ハイドロキシアパタイト粒子の結晶性を維持したまま、焼成ハイドロキシアパタイト粒子を解砕(特には平均粒径を9μm以下まで解砕)することが可能であった。更には、本実施例に係る方法によれば、粒子の分散性が非常に高い組成物が得られた。他方、ボールミル、プロペラ撹拌、超音波処理を行った場合には、ハイドロキシアパタイト粒子を適当な大きさとなるまで解砕することができなかった。
また、脱イオン水の代わりに、カルボキシメチルセルロースナトリウムゲル)とした以外は、実施例1と同様に焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物を作成したところ、組成物中に含まれる焼成ハイドロキシアパタイト粒子の平均粒径が9000nm以下であり、前記結晶性評価が○であることを確認した。
尚、ビーズを用いない以外は、実施例1と同様の原料分散液を、湿式ジェットミル及び高速ホモジナイザーによって解砕した場合でも、遊星回転ミルを用いた場合と同様の結果が得られた。

Claims (1)

  1. 焼成ハイドロキシアパタイト凝集体を含有する液体と、ビーズとを、当該凝集体を複数の方向からせん断力を加える撹拌装置で撹拌して当該凝集体を、乾式解砕することなく、湿式解砕する解砕工程を有する平均粒径が9000nm以下の焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物の製造方法であって、
    前記撹拌装置が、遊星回転ミルであり、
    X線回折法(XRD)により測定された、前記焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物の2θ=32°付近(300)面のピークの半値幅Aと、前記焼成ハイドロキシアパタイト凝集体の2θ=32°付近(300)面のピークの半値幅Bと、において、Bが0.8以下であり、B/Aが0.9以上であることを特徴とする、平均粒径が9000nm以下の焼成ハイドロキシアパタイト粒子組成物の製造方法。
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