JP5780161B2 - スピーカ - Google Patents
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Description
本発明は、スピーカの音響特性を好適化する技術に関する。
スピーカの中には、箱状の部材をエンクロージャとし、このエンクロージャの前面をなす板に1乃至複数個のスピーカユニットを各々の放音面をスピーカの前方に向けて固定したものがある。この種のスピーカにおけるスピーカユニットが固定された板はバッフル板と呼ばれる。この種のスピーカでは、スピーカユニットから前方に向けて放射された音の回折音がバッフル板の各点で反射し、各点の反射音が前方に向けて再放射される。この結果、スピーカの前方の各受聴点には、スピーカユニットから放射された直接音の他に、スピーカユニットから前方に向けて放射された後、回折し、バッフル板の各点での反射を経て再放射された音が届く。このため、スピーカユニットから各受聴点までの音響伝達系の周波数応答にピークやディップが発生して音響特性が悪化する場合がある。特許文献1には、この問題の解決を意図して案出された技術の開示がある。同文献に開示されたスピーカシステムは、エンクロージャの前面バッフルにおけるスピーカユニットの周囲に吸音部材を貼付したものである。このスピーカシステムでは、スピーカユニットから側方に回折した音波が前面バッフルの吸音部材によって吸収され、前方に反射される反射音の音圧が小さくなる。よって、この技術によると、前方の受聴点における音響特性の悪化が防止される。
しかしながら、特許文献1の技術の場合、スピーカユニットの周囲に吸音部材を貼付する分だけ製造コストが高くなるという問題がある。本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、スピーカのバッフル板の反射音の影響による音響特性の悪化を軽減する技術的手段を提供することを目的とする。
本発明は、音源と、前記音源が固定されたバッフル板であって、前記音源から前記バッフル板の端辺上の基準点Zまでの距離Dを(3+4m)(mは正の整数)等分した値DDを次式(1)に代入して求まる距離DDIP(k)だけ前記音源から離れた同心円を前記バッフル板上に描いた場合における各同心円に挟まれた環状領域のうち内側から奇数番目の環状領域と、前記距離Dを(1+4n)(nは正の整数)等分した値DPを次式(2)に代入して求まる距離DPEAK(i)だけ前記音源から離れた同心円を前記バッフル板上に描いた場合における各同心円に挟まれた環状領域のうち内側から偶数番目の環状領域との重複領域に孔が設けられているバッフル板とを具備するスピーカを提供する。
DDIP(k)=DD(1+2(k−1))(k=1,2…)…(1)
DPEAK(i)=DP(1+4(i−1))(i=1,2…)…(2)
DDIP(k)=DD(1+2(k−1))(k=1,2…)…(1)
DPEAK(i)=DP(1+4(i−1))(i=1,2…)…(2)
本発明は、本願発明者らが行った以下の考察に基づいてなされたものである。まず、発明者らは、図6に示すように、スピーカから音を放射した場合におけるバッフル板上の物理現象を解析するためのモデルとして直径D1(D1=610mm)の真円状のバッフル面BFを採用し、このバッフル面BFの中心Aを音の放射点とし、放射点Aから前方に1000mmだけ離れた点を受聴点Z1とし、放射点Aから受聴点Z1までの音響伝達系の周波数応答RBFを計算した。図7は、周波数応答RBFを示す図である。この周波数応答RBFでは、430Hz、1400Hz、2400Hz、及び3390Hzの付近にピークが現れており、960Hz、1900Hz、2900Hz、及び3890Hzの付近にディップが現れている。
発明者らは、このようなピークやディップが周波数応答RBFに生じる原因を調べるために、周波数応答RBFにおけるディップに該当する周波数(以下、ディップ周波数)の音とピークに該当する周波数(以下、ピーク周波数)の音を放射点Aから放射した場合にバッフル面BF上の各点の反射音によって受聴点Z1に発生する音圧を境界要素法により定量化することを考えた。すなわち、図8に示すように、バッフル面BFを格子状に分割した各矩形領域を各々境界要素法の要素Eとし、受聴点Z1の音圧P(q)を次式により算出するのである。
この式(3)におけるpは要素Eの中心の位置ベクトルである。qは受聴点Z1の位置ベクトルである。P(p)は要素Eにおける音圧である。Vは粒子速度である。Sは要素Eの面積である。また、G(p,q)はグリーン関数である。このG(p,q)は次式により与えられる。dG(p,q)/dnはグリーン関数G(p,q)の要素Eの法線方向の微分である。
この式(4)におけるrは要素Eの位置ベクトルpと受聴点Z1の位置ベクトルqとの間の距離である。
しかしながら、上記式(3)に従って受聴点Z1に発生する音圧P(q)を演算するとなると、膨大な演算量が必要になる。そこで、発明者らは、次のようにして受聴点Z1に発生する音圧P(q)を検討した。まず、発明者らは、バッフル面BFの中心Aから外周に向って引いた直線DM上の各点の反射音の音圧を求めた。図9(a)に示す波形Waは、ディップ周波数の音(3890Hzの音)をバッフル面BFの中心Aから放射した場合の直線DM上の各点の反射音の音圧を示すものである。また、図10(a)に示す波形Waは、ピーク周波数の音(3390Hzの音)をバッフル面BFの中心Aから放射した場合の直線DM上の各点の反射音の音圧を示すものである。この図9(a)および図10(a)において、横軸xは直線DMを示しており、バッフル面BFの中心Aのx座標値を0としている。また、縦軸は音圧である。後述する図9(b)、図10(b)、図9(c)、図10(c)についても同様である。
次に、発明者らは、バッフル面BFの中心Aから放射した場合の距離を同じくする各点に到達する回折音の音圧は略同じであることに着目し、図9(a)および図10(a)において、各x座標値に対応した音圧に対して、2πxを乗算した音圧を算出した。図9(b)および図10(b)に示す音圧(波形Wb)は、この2πx乗算後の音圧を示すものである。この図9(b)および図10(b)において、各x座標値に対応した音圧は、バッフル面BFの中心Aを中心とする半径xの円周上の各点に発生する反射音の音圧の総和SUMCIRを示している。バッフル面BFにおいて発生する全反射音が受聴点Z1に発生させる音圧は、バッフル面BFの中心Aからバッフル面BFの端部までの各位置(x座標値)について半径xの円周上に発生する全反射音の音圧の総和SUMCIRを求めて加算したもの、すなわち、バッフル面BFの中心Aからバッフル面BFの端部に向けて音圧SUMCIRを積分した積分値SUMRADに依存する。図9(c)および図10(c)に示す波形Wcは、x座標値とx=0から各x座標値までの音圧SUMCIRの積分値との関係を示すものである。
発明者らは、図9(b)および図10(b)に示す音圧SUMCIRの波形Wbについて、ディップ周波数の音とピーク周波数の音の両方に共通する特徴、ディップ周波数の音にのみ共通する特徴、ピーク周波数の音にのみ共通する特徴として以下のものがあることを確認した。
a1.ディップ周波数の音とピーク周波数の音の両方に共通する特徴
・バッフル面BFの中心Aにおける振幅が最大となっている。
・バッフル面BFの周縁における振幅が0になっている。
・バッフル面BFの中心Aと中心Aから該当音の1/4波長分だけ周縁側の点との間の区間Faにおいて振幅が最大値から0まで減少している。
・バッフル面BFにおける中心Aから該当音の1/4波長分だけ周縁側の点と周縁との間の区間Fbでは、略同じ振幅の絶対値をもった正負のピークが該当音の半波長分の間隔をあけて交互に現れている。
b1.ディップ周波数の音にのみ共通する特徴
・区間Fb内における負のピークの出現数は正のピークの出現数よりも1つ多い。
c1.ピーク周波数の音にのみ共通する特徴
・区間Fb内における正のピークの出現数と負のピークの出現数が同数である。
a1.ディップ周波数の音とピーク周波数の音の両方に共通する特徴
・バッフル面BFの中心Aにおける振幅が最大となっている。
・バッフル面BFの周縁における振幅が0になっている。
・バッフル面BFの中心Aと中心Aから該当音の1/4波長分だけ周縁側の点との間の区間Faにおいて振幅が最大値から0まで減少している。
・バッフル面BFにおける中心Aから該当音の1/4波長分だけ周縁側の点と周縁との間の区間Fbでは、略同じ振幅の絶対値をもった正負のピークが該当音の半波長分の間隔をあけて交互に現れている。
b1.ディップ周波数の音にのみ共通する特徴
・区間Fb内における負のピークの出現数は正のピークの出現数よりも1つ多い。
c1.ピーク周波数の音にのみ共通する特徴
・区間Fb内における正のピークの出現数と負のピークの出現数が同数である。
これらの特徴a1、b1、c1から、発明者らは、スピーカの音源からディップ周波数やピーク周波数の音を放音した場合に受聴点Z1において次のような物理現象が発生すると推測した。
a2.ディップ周波数の音を放射した場合
この場合、図11の例に示すように、ディップ周波数の音の1つの波長をλDIPとし、スピーカのバッフル板PLTに音源Cから距離λDIP/4+λDIP/2×(m−1)(m=1〜M)(Mは波形Wbのゼロクロス点の数)(図11の例ではM=6)だけ離れた同心円WD(m)(m=1〜6)を描いた場合における円WD(1)と円WD(2)、円WD(2)と円WD(3)、円WD(3)と円WD(4)、円WD(4)と円WD(5)、円WD(5)と円WD(6)に各々挟まれた環状領域を領域ARM(1)〜ARM(5)とすると、領域ARM(1)〜ARM(5)の各々における反射音の音圧の総計SUMCIRの絶対値|SUMCIR|は略同じになる。よって、この場合、領域ARM(1)から放射された反射音の負の音圧と領域ARM(2)から放射された反射音の正の音圧、及び領域ARM(3)から放射された反射音の負の音圧と領域ARM(4)から放射された反射音の正の音圧が受聴点Z1において相殺し合う。従って、この場合、領域ARM(1)の内側の領域ARM(0)から放射された直接音及び反射音の正の音圧とバッフル板PLTの端部の近傍の領域ARM(5)から放射された反射音の負の音圧とを加算した音圧が受聴点Z1に作用する。この結果、受聴点Z1における音圧が極小(ディップ)になる。
a2.ディップ周波数の音を放射した場合
この場合、図11の例に示すように、ディップ周波数の音の1つの波長をλDIPとし、スピーカのバッフル板PLTに音源Cから距離λDIP/4+λDIP/2×(m−1)(m=1〜M)(Mは波形Wbのゼロクロス点の数)(図11の例ではM=6)だけ離れた同心円WD(m)(m=1〜6)を描いた場合における円WD(1)と円WD(2)、円WD(2)と円WD(3)、円WD(3)と円WD(4)、円WD(4)と円WD(5)、円WD(5)と円WD(6)に各々挟まれた環状領域を領域ARM(1)〜ARM(5)とすると、領域ARM(1)〜ARM(5)の各々における反射音の音圧の総計SUMCIRの絶対値|SUMCIR|は略同じになる。よって、この場合、領域ARM(1)から放射された反射音の負の音圧と領域ARM(2)から放射された反射音の正の音圧、及び領域ARM(3)から放射された反射音の負の音圧と領域ARM(4)から放射された反射音の正の音圧が受聴点Z1において相殺し合う。従って、この場合、領域ARM(1)の内側の領域ARM(0)から放射された直接音及び反射音の正の音圧とバッフル板PLTの端部の近傍の領域ARM(5)から放射された反射音の負の音圧とを加算した音圧が受聴点Z1に作用する。この結果、受聴点Z1における音圧が極小(ディップ)になる。
b2.ピーク周波数の音を放射した場合
この場合、図12の例に示すように、ピーク周波数の音の波長をλPEAKとし、スピーカのバッフル板PLT上に音源Cから距離λPEAK/4+λPEAK/2×(n−1)(n=1〜N)(Nは波形Wbのゼロクロス点の数)(図12の例ではN=5)だけ離れた同心円WP(n)(n=1〜4)を描いた場合における円WP(1)と円WP(2)、円WP(2)と円WP(3)、円WP(3)と円WP(4)に各々挟まれた環状領域を領域ARN(1)〜ARN(4)とすると、領域ARN(1)〜ARN(4)の各々における反射音の音圧の総計SUMCIRの絶対値|SUMCIR|は略同じになる。よって、この場合、領域ARN(1)から放射された反射音の負の音圧と領域ARN(2)から放射された反射音の正の音圧、及び領域ARN(3)から放射された反射音の負の音圧と領域ARN(4)から放射された反射音の正の音圧が受聴点Z1において相殺し合う。従って、この場合、領域ARN(1)の内側の領域ARN(0)から放射された直接音及び反射音の正の音圧だけが受聴点Z1に作用する。この結果、受聴点Z1における正の音圧が極大(ピーク)になる。
この場合、図12の例に示すように、ピーク周波数の音の波長をλPEAKとし、スピーカのバッフル板PLT上に音源Cから距離λPEAK/4+λPEAK/2×(n−1)(n=1〜N)(Nは波形Wbのゼロクロス点の数)(図12の例ではN=5)だけ離れた同心円WP(n)(n=1〜4)を描いた場合における円WP(1)と円WP(2)、円WP(2)と円WP(3)、円WP(3)と円WP(4)に各々挟まれた環状領域を領域ARN(1)〜ARN(4)とすると、領域ARN(1)〜ARN(4)の各々における反射音の音圧の総計SUMCIRの絶対値|SUMCIR|は略同じになる。よって、この場合、領域ARN(1)から放射された反射音の負の音圧と領域ARN(2)から放射された反射音の正の音圧、及び領域ARN(3)から放射された反射音の負の音圧と領域ARN(4)から放射された反射音の正の音圧が受聴点Z1において相殺し合う。従って、この場合、領域ARN(1)の内側の領域ARN(0)から放射された直接音及び反射音の正の音圧だけが受聴点Z1に作用する。この結果、受聴点Z1における正の音圧が極大(ピーク)になる。
以上が、発明者らが行った考察である。本発明では、前掲式(1)により求まる距離DDIP(k)だけ音源から離れた同心円をバッフル板上に描いた場合における各同心円に挟まれた環状領域のうち内側から奇数番目の環状領域と前掲式(2)により求まる距離DPEAK(i)だけ音源から離れた同心円をバッフル板上に描いた場合における各同心円に挟まれた環状領域のうち内側から偶数番目の環状領域との重複領域に孔が設けられている。
ここで、図13の例に示すように、バッフル板PLTにおける音源Cから端辺上の基準点Z(図13の例では、バッフル板PLTの右辺RSにおける音源Cと同じ高さの点)までの距離Dを(3+4m)(図11の例では、m=2)等分した値DDは、m次のディップ周波数の音の波長λDIPの1/4に相当するから、この値DDを(1+2(k−1))倍した距離DDIP(k)だけ音源Cから離れた各同心円WP(k)は、m次のディップ周波数の音を放射した場合における反射音の音圧の総計SUMCIRの絶対値|SUMCIR|が略同じになる環状領域の境界と一致する。また、図14に示すように、バッフル板PLTにおける音源Cから端辺上の基準点Z(図14の例では、バッフル板PLTの左辺LSにおける音源Cと同じ高さの点)までの距離Dを(1+4n)(図12の例では、n=2)等分した値DPは、n次のピーク周波数の音の波長λPEAKの1/4に相当するから、この値DPを(1+4(i−1))倍した距離DPEAK(i)だけ音源Cから離れた各同心円WP(i)は、n次のピーク周波数の音を放射した場合における反射音の音圧の総計SUMCIRの絶対値|SUMCIR|が略同じになる環状領域の境界と一致する。
そして、本発明では、バッフル板において前掲式(1)により求まる奇数番目の環状領域と前掲式(2)により求まる偶数番目の環状領域との重複領域に孔HLが設けられている。このため、音源Cがディップ周波数の音を放射した場合、バッフル板PLC上における音源Cの周りの領域ARM(1)〜ARM(5)のうち孔HLのある領域からは負の音圧を持った反射音が放射されるが、この領域から放射される反射音の音圧の総和SUMCIRの絶対値|SUMCIR|は孔HLの面積の分だけ小さくなる。この結果、受聴点Z1に作用する音圧は全体として正の方向に変化し、該当周波数におけるディップの急峻さが緩和される。また、音源Cがピーク周波数の音を放射した場合、バッフル板PLC上における音源Cの周りの領域ARN(1)〜ARN(4)のうち孔HLのある領域からは正の音圧を持った反射音が放射されるが、この領域から放射される反射音の音圧の総和SUMCIRの絶対値|SUMCIR|は孔HLの面積の分だけ小さくなる。この結果、受聴点Z1に作用する音圧は全体として負の方向に変化し、該当周波数におけるピークの急峻さが緩和される。
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態であるスピーカSP1の正面図である。図1(b)は、スピーカSP1の右側面図である。このスピーカSP1は、当該スピーカSP1における1次ディップ及び1次ピークの急峻さを緩和するものである。このスピーカSP1は、エンクロージャ10とスピーカユニット11を有する。エンクロージャ10は、上下幅H(例えば、H=1000mmとする)、左右幅W(例えば、W=520mmとする)、及び奥行き幅L(例えば、L=480mmとする)の寸法を持った直方体状をなしている。
エンクロージャ10にはバッフル板14が設けられている。このバッフル板14の前面は、上下幅方向に対向する上辺US及び下辺DSと左右幅方向に対向する左辺LSおよび右辺RSの4つの端辺に囲まれた長方形状をなしている。バッフル板14の前面の中央上部にはスピーカユニット11が固定されている。スピーカユニット11は、オーディオ装置の出力信号を音として放射する音源としての役割を果たす。
図1(a)は、本発明の一実施形態であるスピーカSP1の正面図である。図1(b)は、スピーカSP1の右側面図である。このスピーカSP1は、当該スピーカSP1における1次ディップ及び1次ピークの急峻さを緩和するものである。このスピーカSP1は、エンクロージャ10とスピーカユニット11を有する。エンクロージャ10は、上下幅H(例えば、H=1000mmとする)、左右幅W(例えば、W=520mmとする)、及び奥行き幅L(例えば、L=480mmとする)の寸法を持った直方体状をなしている。
エンクロージャ10にはバッフル板14が設けられている。このバッフル板14の前面は、上下幅方向に対向する上辺US及び下辺DSと左右幅方向に対向する左辺LSおよび右辺RSの4つの端辺に囲まれた長方形状をなしている。バッフル板14の前面の中央上部にはスピーカユニット11が固定されている。スピーカユニット11は、オーディオ装置の出力信号を音として放射する音源としての役割を果たす。
このスピーカSP1では、バッフル板14上における次の2つの条件を満たす位置に楕円状の孔151が設けられている。
a3.条件1
スピーカユニット11からバッフル板14の端辺上の基準点Zまでの距離Dを(3+4m)(mは正の整数)等分した値DDを前掲式(1)に代入して求まる距離DDIP(k)だけスピーカユニット14から離れた同心円WD(k)(k=1,2…)をバッフル板14上に描いた場合における円WD(k)及びWD(k+1)に挟まれた環状領域ARM(k)(k=1,2…)のうち内側から奇数番目の領域内であること(図2(a)において矢印を付した環状領域を参照)
b3.条件2
スピーカユニット11からバッフル板11の端辺上の基準点Zまでの距離Dを(1+4n)(nは正の整数)等分した値DPを前掲式(2)に代入して求まる距離DPEAK(i)だけスピーカユニット14から離れた同心円WP(i)(i=1,2…)をバッフル板14上に描いた場合における円WP(i)及びWP(i+1)に挟まれた環状領域ARN(i)(i=1,2…)のうち内側から偶数番目の領域内であること(図2(b)において矢印を付した環状領域を参照)
a3.条件1
スピーカユニット11からバッフル板14の端辺上の基準点Zまでの距離Dを(3+4m)(mは正の整数)等分した値DDを前掲式(1)に代入して求まる距離DDIP(k)だけスピーカユニット14から離れた同心円WD(k)(k=1,2…)をバッフル板14上に描いた場合における円WD(k)及びWD(k+1)に挟まれた環状領域ARM(k)(k=1,2…)のうち内側から奇数番目の領域内であること(図2(a)において矢印を付した環状領域を参照)
b3.条件2
スピーカユニット11からバッフル板11の端辺上の基準点Zまでの距離Dを(1+4n)(nは正の整数)等分した値DPを前掲式(2)に代入して求まる距離DPEAK(i)だけスピーカユニット14から離れた同心円WP(i)(i=1,2…)をバッフル板14上に描いた場合における円WP(i)及びWP(i+1)に挟まれた環状領域ARN(i)(i=1,2…)のうち内側から偶数番目の領域内であること(図2(b)において矢印を付した環状領域を参照)
ここで、図2(a)及び図2(b)に示すように、このスピーカSP1では、基準点Zをバッフル板14の右辺RSにおけるスピーカユニット11から最も近い点とした場合にバッフル板14上に描かれる領域ARM(k)(k=1,2…)のうち内側から3番目の領域ARM(3)と、この場合にバッフル14上に描かれる領域ARN(i)(i=1,2…)のうち内側から2番目の領域ARN(2)との重複領域に孔151が設けられている。よって、このスピーカSP1における孔151の位置は条件1及び2の両方を満たす。
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態では、1次ディップの周波数f1DIPの音を放射した場合、スピーカユニット11の周りの領域ARM(k)(k=1,2…)のうち孔151のある領域ARM−3からは負の音圧を持った反射音が放射されるが、領域ARM(3)から放射される反射音の音圧の総和SUMCIRの絶対値|SUMCIR|は孔151の面積の分だけ小さくなる。このため、受聴点に作用する音圧は全体として正の方向に変化し、周波数f1DIPにおけるディップの急峻さが緩和される。また、1次ピークの周波数f1PEAKの音を放射した場合、スピーカユニット11の周りの領域ARN(i)(i=1,2…)のうち孔151のある領域ARN(2)からは正の音圧を持った反射音が放射されるが、領域ARN(2)から放射される反射音の音圧の総和SUMCIRの絶対値|SUMCIR|は孔151の面積の分だけ小さくなる。この為、受聴点に作用する音圧は全体として負の方向に変化し、周波数f1PEAKにおけるピークの急峻さが緩和される。
ここで、本願発明者らは、本実施形態の効果を確認するため、次のような検証を行った。本願発明者らは、スピーカSP1のスピーカユニット11から1000mmだけ前方に離れた点を受聴点Z2とし、スピーカSP1から受聴点Z2までの音響伝達系の周波数応答RSP1を計算した。また、スピーカSP1のバッフル板14の孔151を無くしたものをスピーカSP1’とし、スピーカSP1’から受聴点Z2までの音響伝達系の周波数応答RSP1’を計算した。図3は、周波数応答RSP1及びRSP1’を周波数軸を揃えて示したものである。この図3の周波数応答RSP1及びRSP1’では、980Hzに1次ディップが現れており、1635Hzに1次ピークが現れている。そして、周波数応答RSP1における1次ディップの音圧は周波数応答RSP1’における1次ディップの音圧よりも大きくなっている。また、周波数応答RSP1における1次ピークの音圧は周波数応答RSP1’における1次ピークの音圧よりも小さくなっている。このことから、本実施形態によると、スピーカSP1から前方の各受聴点までの音響伝達系の周波数応答における1次ディップ及び1次ピークの急峻さが緩和されることが確認された。
<他の実施形態>
以上、この発明の実施形態を説明したが、この発明には、他にも各種の実施形態が考えられる。例えば、以下の通りである。
(1)上記実施形態において、バッフル板14における上述した重複領域の孔151をバッフル板14の固定されたスピーカのエンクロージャ10の内部の空間と連通させることにより、孔151をバスレフポートとして機能させてもよい。
以上、この発明の実施形態を説明したが、この発明には、他にも各種の実施形態が考えられる。例えば、以下の通りである。
(1)上記実施形態において、バッフル板14における上述した重複領域の孔151をバッフル板14の固定されたスピーカのエンクロージャ10の内部の空間と連通させることにより、孔151をバスレフポートとして機能させてもよい。
(2)上記実施形態では、エンクロージャ10の上下幅H、左右幅W、及び奥行き幅Lは、H=1000mm、W=520mm、L=480mmとなっていた。しかし、エンクロージャ10の上下幅H、左右幅W、及び奥行き幅Lを上記各実施形態と異なる寸法としてもよい。
(3)上記実施形態では、バッフル板14の重複領域における孔151は楕円状をなしていた。しかし、この孔151を、楕円でない形状(真円、長方形、三角形など)にしてもよい。また、孔の個数や位置を上記実施形態と異なるものにしてもよい。図4(a)は、この変形例であるスピーカSP2の正面図である。図4(b)は、スピーカSP2の右側面図である。このスピーカSP2では、バッフル板14の中央にスピーカユニット12が設けられている。また、このスピーカSP2では、バッフル板14におけるスピーカユニット12の上下に孔152Uおよび152Dが設けられている。また、バッフル板14におけるスピーカユニット11の左右に孔152Lおよび152Rが設けられている。これらの孔の位置は前記条件1および2の両方を満たした位置である。つまり、前記条件1および2の両方を満たしていれば、孔の形や位置は問わない。
(4)上記実施形態では、スピーカユニットの個数を2個以上にしてもよい。図5(a)は、この変形例であるスピーカSP2の正面図である。図5(b)は、スピーカSP2の右側面図である。このスピーカSP2では、バッフル板14の中央にスピーカユニット13および14が上下に並べて設けられている。このスピーカSP2では、バッフル板14におけるスピーカユニット13の左右に孔153Lおよび153Rが設けられており、孔153Lおよび153Rはスピーカユニット13に対して前記条件1および2の両方を満たす領域内に設けられている。また、このスピーカSP2では、バッフル板14におけるスピーカユニット14の左右に孔154Lおよび154Rが設けられており、孔154Lおよび154Rはスピーカユニット14に対して前記条件1および2の両方を満たす領域内に設けられている。
(5)上記実施形態において、基準点Zをバッフル板14の左辺LSにおけるスピーカユニット11から最も近い点としてもよい。また、基準点Zをバッフル板14の上辺USにおけるスピーカユニット11から最も近い点としてもよいし、バッフル板14の下辺DSにおけるスピーカユニット11から最も近い点としてもよい。また、バッフル板の形状が円形や三角形等の場合はスピーカユニットから最も近いバッフル板の端辺上の点を基準点Zとすればよい。
(6)上記実施形態では、バッフル板14の孔151は同板14の表裏面間を貫いていた。しかし、孔151の代わりに凸部や凹部、吸音部材を設けてもよい。要するに、バッフル
14における上述した重複領域内にバッフル板14そのものと反射特性が異なる部分があればよい。この態様の特徴を概念的に示すと、「音源と、前記音源が固定されたバッフル板であって、前記音源から前記バッフル板の端辺上の基準点までの距離Dを(3+4m)(mは正の整数)等分した値DDを前掲式(1)に代入して求まる距離DDIP(k)だけ前記音源から離れた同心円を前記バッフル板上に描いた場合における各同心円に挟まれた環状領域のうち内側から奇数番目の環状領域と、前記距離Dを(1+4n)(nは正の整数)等分した値DPを前掲式(2)に代入して求まる距離DPEAK(i)だけ前記音源から離れた同心円を前記バッフル板上に描いた場合における各同心円に挟まれた環状領域のうち内側から偶数番目の環状領域との重複領域に前記バッフル板における他の領域と反射特性の異なる領域を形成したバッフル板とを具備するスピーカ。」となる。
14における上述した重複領域内にバッフル板14そのものと反射特性が異なる部分があればよい。この態様の特徴を概念的に示すと、「音源と、前記音源が固定されたバッフル板であって、前記音源から前記バッフル板の端辺上の基準点までの距離Dを(3+4m)(mは正の整数)等分した値DDを前掲式(1)に代入して求まる距離DDIP(k)だけ前記音源から離れた同心円を前記バッフル板上に描いた場合における各同心円に挟まれた環状領域のうち内側から奇数番目の環状領域と、前記距離Dを(1+4n)(nは正の整数)等分した値DPを前掲式(2)に代入して求まる距離DPEAK(i)だけ前記音源から離れた同心円を前記バッフル板上に描いた場合における各同心円に挟まれた環状領域のうち内側から偶数番目の環状領域との重複領域に前記バッフル板における他の領域と反射特性の異なる領域を形成したバッフル板とを具備するスピーカ。」となる。
10…エンクロージャ、11,12,13,14…スピーカユニット、14…バッフル板、151,152,153,154…孔。
Claims (4)
- 音源と、
前記音源が固定されたバッフル板であって、前記音源から前記バッフル板の端辺上の基準点までの距離Dを(3+4m)(mは正の整数)等分した値DDを次式(1)に代入して求まる距離DDIP(k)だけ前記音源から離れた同心円を前記バッフル板上に描いた場合における各同心円に挟まれた環状領域のうち内側から奇数番目の環状領域と、前記距離Dを(1+4n)(nは正の整数)等分した値DPを次式(2)に代入して求まる距離DPEAK(i)だけ前記音源から離れた同心円を前記バッフル板上に描いた場合における各同心円に挟まれた環状領域のうち内側から偶数番目の環状領域との重複領域に孔が設けられているバッフル板と
を具備することを特徴とするスピーカ。
DDIP(k)=DD(1+2(k−1))(k=1,2…)…(1)
DPEAK(i)=DP(1+4(i−1))(i=1,2…)…(2) - 前記重複領域に設けられた孔が、前記バッフル板の固定されたスピーカのエンクロージャの内部の空間に連通していることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
- 前記端辺は、上下方向に対向する上辺及び下辺と、左右方向に対向する左辺及び右辺の4つの辺を含み、前記基準点は、前記上辺上における前記音源から最も近い点、前記下辺上における前記音源から最も近い点、前記左辺上における前記音源から最も近い点、前記右辺上における前記音源から最も近い点のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のスピーカ。
- 音源と、
前記音源が固定されたバッフル板であって、前記音源から前記バッフル板の端辺上の基準点までの距離Dを(3+4m)(mは正の整数)等分した値DDを次式(3)に代入して求まる距離DDIP(k)だけ前記音源から離れた同心円を前記バッフル板上に描いた場合における各同心円に挟まれた環状領域のうち内側から奇数番目の環状領域と、前記距離Dを(1+4n)(nは正の整数)等分した値DPを次式(4)に代入して求まる距離DPEAK(i)だけ前記音源から離れた同心円を前記バッフル板上に描いた場合における各同心円に挟まれた環状領域のうち内側から偶数番目の環状領域との重複領域に前記バッフル板における他の領域と反射特性の異なる領域を形成したバッフル板と
を具備することを特徴とするスピーカ。
DDIP(k)=DD(1+2(k−1))(k=1,2…)…(3)
DPEAK(i)=DP(1+4(i−1))(i=1,2…)…(4)
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JP2009084857A (ja) * | 2007-09-28 | 2009-04-23 | Daikyo Nishikawa Kk | 吸音構造体 |
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