JP5777089B2 - 鉄骨の表面処理用ブースおよび表面処理方法 - Google Patents

鉄骨の表面処理用ブースおよび表面処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、鉄骨の表面にブラスト、素地調整、粗面化、溶射、封孔処理、塗装をする際に用いる表面処理用ブースおよび表面処理方法に関する。
送電鉄塔は建設時に鋼材の表面に溶融亜鉛めっきを施すことにより、防食処理が施されている。しかし、自然環境の様々な腐食性因子の影響を受け、めっき層が消耗することで補修が必要となる。特に、海塩粒子の影響を受ける地域や化学物質の濃度が高い重工業地域では、鋼材の孔食や減肉を生じやすい。
腐蝕によってめっき層が消滅して鉄地が露出すると、錆は急速に進行する。そこで、錆を発見すると補修を行う(錆が生じるまでは、減肉の程度はわからない)。従来の補修は、素地調整(錆び落とし)をしてから、防錆塗装を行う。防錆塗装は下塗り塗料(防錆剤)と上塗り塗料(色彩・光沢保持、耐候性維持)を塗布するのが一般的である(例えば、特許文献1)。
しかし、補修は当然ながら現地で行うものであるため、素地調整にはワイヤーブラシ、サンダーやジェットタガネなどが用いられる。これらの手段では2種ケレン(古い塗膜や亜鉛メッキ上の表面錆を除去する程度のケレン)程度しか行うことができず、1種ケレン(錆を完全に除去し、光沢面を出す程度のケレン)は行うことができない。そして、2種ケレン程度の素地調整では、凹凸部や狭隘部の錆を除去することができず、また、塗装の下に残留した錆により腐蝕が進行してしまう。
また、現地で行う塗装施工は工場内で行う塗装施工に比べ、施工環境も悪く、素地調整を含む品質確保が難しいことから、塗膜の密着性能や遮蔽効果が弱いという問題もある。これらの要因から、従来の不完全な素地調整(2種ケレン)と塗装による補修の効果はさほど大きくなく、わずか数年で再補修が必要になってしまう。またその際に鋼材の減肉も伴うため、部材取替の時期も早まってしまう。
なお、塗装による補修の代わりとしては、部分的または全面的な部材取替や鉄塔建替がある。しかし部材取替は、一時的に荷重を支持する治具を作成したり、足場を組んで大がかりで長期な工事となるため、多額のコストが必要になる。特に取り替える部材が主柱材や腕金主材(応力材)などである場合には送電の長期停止を伴ってしまうため、できる限り回避したい対処である。
鉄骨が露出した構造物は、鉄塔ばかりではなく、ビルの非常階段、電波塔、信号や電柱の鋼管柱、ガードレールなど、様々なものが設置されている。そしてこれらは、みな同様の課題を擁している。
特開2004−148163号公報 特許第4502622号公報
鉄塔の部材劣化を防止し長寿命化を図る上で、補修の効果を高めることが重要である。そのためには、平面部はもとより凹凸部や狭隘部まで限りなく1種に近い程度のケレンを行うこと、および遮蔽効果が高く耐久性が高い防錆皮膜を作ることが重要である。
ここで、1種ケレンはオープンブラストで行うことになっている。オープンブラストとは、作業と同時に研削材を回収しないブラスト処理のことである。すなわち、鉄塔におけるケレンもオープンブラストで行うことが考えられる。実際に、橋梁の塗り替えの際にオープンブラストでケレンを行った例がある(石川県の犀川大橋:2008年の塗替工事)。
しかしながら、現地で鉄骨に対してオープンブラストを行うとなると、多量の研削材が周囲に飛散してしまうという環境問題がある。工場内で施工するのであれば研削材が飛散しても問題は解決できるが、鉄塔は地上に設置される建造物であり、かつ高所で作業を行うことため、飛散した研削材が風に乗って居住区、道路上、田畑や河川に広く降りそそいでしまうおそれがある。このため、鉄塔においてオープンブラスト等によってケレンを行うことは不可能に等しかった。
一般的に養生が出来ない現地での補修用ブラストは、バキュームブラストが使われている。投射された研削材を即バキュームで回収していく方法のブラスト装置であるが、平面部のみに対応可能であり、端部や凹凸部や狭隘部では研削材が予想外の方向に飛び散るため、バキュームで回収することができず、鉄塔での使用は困難である。
一方、遮蔽効果が高く耐久性が高い皮膜としては、溶射皮膜を形成することが考えられる。溶射装置は電気式溶射とガス式溶射に大別できるが、電気式アーク溶射機の一種として、出願人らは低温で溶射可能な溶射機を提案している(特願2010−114614)。溶射であれば犠牲防食効果のある亜鉛を基本にアルミや、アルミマグネシウム、錫などの皮膜を形成することができるため、以後の防食に有効である。
遮蔽効果が高く耐久性が高い溶射皮膜を現地の鉄骨に確実に付着させるために粗面化が必要になる。特許文献2(特許第4502622号)ではディスク状やベルト状の基盤に砥粒を固着した電動工具等で被溶射体の表面に平均粗さ(Ra)が2〜10μmの素地が得られれば、溶射皮膜が密着するとされている。しかし、ディスク状やベルト状の電動工具等では平面部でしか粗面化できず、段差や凹凸部、狭隘部では粗面化は困難である。また特許文献2では粗面の粗さについて厳密に管理しようとしているが(平均粗さRaが2〜10μm、より望ましくは5〜8μmの範囲が最適であると述べている)、オープンブラストでは、容易に平均粗さ(Ra)が20μm以上の素地を得ることができるため、研削材の粒径さえ適切なものを選択すれば粗さの管理が要らず、強い密着度も得ることができる。しかしながら特許文献2においても、高所でのブラスト処理は研削材や粉塵の回収が困難であるため適用しにくいことが記載されている(段落0009など)。
また溶射においても、溶融して吹き付ける金属の全てがワークに付着するわけではなく、しかも鉄塔のアングル材や鋼管ではむしろ散逸する材料の方が多い。したがって、オープンブラストほどではないにしても、多量の粉塵が発生する。このためオープンブラストと同様に、鉄塔の補修に溶射粉塵を飛散させずに溶射皮膜を形成することは難しい。
ここで、補修を行う対象物が小さければ、全体を養生シート等で覆うことにより粉塵の飛散防止を図ることも考えられる。しかし、鉄塔のような大きな構造物では、全体を隙間なく覆うことも非現実的である。
そこで本発明は、鉄骨が露出した構造物においてケレンやオープンブラストの粉塵の飛散を防止し、オープンブラスト、溶射や塗装等の表面処理における環境汚染を回避し、作業員の安全な作業環境を確保することが可能とする鉄骨の表面処理用ブースおよび表面処理方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかる鉄骨の表面処理用ブースの代表的な構成は、鉄骨に取り付けられ鉄骨の軸方向にほぼ直交する端面を形成する複数の端面部材と、端面部材に張り渡されて鉄骨の周囲に空間を形成するシートと、端面部材の外周部近傍に配置されシートを固定するクランプと、を備えることを特徴とする。
上記構成の表面処理用ブースは、鉄骨に沿って、粉塵の飛散を防止できる空間を極めて簡単に構築することができる。作業者はブースの外にいて、シートに作業用穴を設けてノズル等の機械を挿入し、鉄骨に処理を施すことができる。したがって、補修を行う箇所にこのブースを取り付け、補修が済んだら取り外し、また次の補修を行う箇所に取り付けることを繰り返すことにより、鉄骨が露出した構造物の全体について粉塵を発する作業を行うことができる。すると、鉄塔のように屋外の高所作業であってもオープンブラストによる素地調整および金属溶射を行うことが可能となり、信頼性・耐久性の高い補修を行うことができる。これにより補修の間隔を長くし、また部材取替までの期間を大幅に延長させることができるため、保守上必要なコストを大幅に低減させることが可能となる。また、刷毛ではなくスプレーによる塗装も可能になり、利便性を飛躍的に向上させることができる。
上記端面部材は、複数のパーツに分割されていて、複数のパーツを組み合わせることによって鉄骨を挟み込んでこれに固定することが好ましい。これにより、鉄骨を中心とする全方向に端面を張り出させることができる。なお、端面の外周の形状は、四角形、丸、多角形など、いずれの形状であってもよい。複数のパーツの結合構造は、嵌め合いとしてもよいし、クランプで締めたり、パッチン錠で固定してもよい。また、複数のパーツを蝶番で接続しておき、開閉して鉄骨を挟み込むように構成してもよい。
上記端面部材は集塵用の開口部を備えていることが好ましい。ブース内に発生した粉塵を作業中に逐次集塵することにより、ブース内の視界を確保することができる。
上記端面部材は、鉄骨に仮止めするための固定用磁石を備えていることが好ましい。端面部材はクランプやバンドなどによって鉄骨に確実に固定することが好ましいが、このとき固定用磁石によって仮止めすることにより、作業者の両手を空けることができる。これにより作業性が向上し、特に高所作業において有用である。
上記クランプは、端面部材のうち鉄骨にほぼ直交する端面に配置されていて、シートは端面部材の外周部を回り込んでクランプに固定することが好ましい。このように、シートが外周部を回り込むように張ることにより、単にクランプで挟むよりもシートの把持力を向上させることができ、また外周部における機密性を向上させることができる。
複数の端面部材のうち、一方の端面部材には相対的に短いクランプを多数配置していて、他方の端面部材には端面部材の縁に沿って長いクランプを小数配置していてもよい。鉄骨が柱である場合に、複数の端面部材は、一方が上、他方が下になる。すると、シートは上の端面部材にまず取り付けて、次に下の端面部材に裾を取り付けることによって張り渡すことになる。このとき、上の端面部材では短いクランプとすることにより、シートを張る際の利便性を向上させることができる。
本発明にかかる鉄骨の表面処理方法の代表的な構成は、鉄骨の処理対象となる区間の両端に、鉄骨の軸方向にほぼ直交する端面を形成する端面部材を複数取り付け、複数の端面部材にシートを張り渡して鉄骨の周囲に空間を形成し、空間の内部で処理を行うことを特徴とする。この方法により、鉄骨に沿って、粉塵の飛散を防止できる空間を極めて簡単に構築することができる。したがって、鉄塔のように鉄骨が露出した構造物に、粉塵を発する作業を行うことが可能となる。
空間の内部で行う処理とは、ブラスト、溶射、塗装を含んでいてもよい。鉄塔のように屋外の高所作業であってもオープンブラストによるケレンおよび金属溶射を行うことが可能となり、耐久性の高い補修を行うことができる。
本発明によれば、鉄骨が露出した構造物においてケレンやオープンブラストの粉塵の飛散を防止し、オープンブラスト、溶射や塗装等の表面処理における環境汚染を回避し、作業員の安全な作業環境を確保することができる。
鉄骨の表面処理用ブースの構成を説明する図である。 上端面部材の構成を説明する図である。 下端面部材の構成を説明する図である。 シートを固定する作業について説明する図である。 補助材カバーを説明する図である。 上端面部材の他の構成の例を示す図である。 下端面部材の他の構成の例を示す図である。 ブースを用いた表面処理方法を説明する図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は本実施形態にかかる鉄骨の表面処理用ブース(以下、単に「ブース100」という。)の構成を説明する図である。ブース100は、大別して上端面部材110と、下端面部材130と、これらの間に張り渡されるシート150、および補助材カバー160、170から構成されている。ブース100は鉄骨に取り付けて使用されるものであり、図1では鉄骨の例として、鉄塔10(図8参照)の鉄骨12(主柱材)と補助材14(いずれも山形鋼)を描いている。
上端面部材110および下端面部材130は、いずれも鉄骨12に取り付けられ、鉄骨12の軸方向にほぼ直交する端面112、132を形成する。上端面部材110の外周面には全周に亘って複数のクランプ128が配列されていて、これにシート150を挟み込んで固定(把持)することができる。同様に、下端面部材130の外周面には全周に亘って複数のクランプ148が配列されていて、これにシート150を挟んで固定することができる。クランプ128、148の数(間隔)については限定するものではなく、内部から粉塵が噴出しない程度の数(間隔)とすればよい。
図2は上端面部材110の構成を説明する図である。図2に示すように、本実施形態において上端面部材110は複数のパーツ、すなわちL字型をした第1部材114と、ほぼ正方形の第2部材116とから構成されている。本実施形態において第1部材114および第2部材116は、底面が開放された箱形をしている。したがって、第1部材114の天面114aと第2部材116の天面116aが、あわせて上端面部材110の端面112(図1参照)を構成している。
第1部材114の第2部材116と隣接する辺には上向きのフック118が設けられており、第2部材116の辺を差し込むことによって第1部材114と第2部材116とを係合させることができる。そして第1部材114の上面に設けられたクランプ120によって第2部材116の上面を押さえることにより、第1部材114と116とを固定することができる。
このように、上端面部材110を第1部材114と第2部材116に分割した構成としたことにより、鉄骨12を中心とする全方向に端面112を張り出させることができる。なお、複数のパーツの結合構造は、上記のように嵌め合いとしてもよいし、Cクランプで締めたり、パッチン錠で固定してもよい。また、複数のパーツを蝶番で接続しておき、開閉して鉄骨12を挟み込むように構成してもよい。
また第1部材114には、固定用磁石122が2つ設けられている。固定用磁石122はレバーによって吸着力をON/OFFできるマグネットベースであって、鉄骨12に吸着させて第1部材114を仮止めすることができる。これにより、第1部材114と第2部材116を組み合わせて固定するより前に、第1部材114を一時的に保持することができる。これにより作業者の両手を空けることができ、作業性が向上し、特に高所作業において有用である。
また第1部材114の天面114aには、集塵用の開口部124を備えている。粉塵は上方には舞い上がらないため、開口部124には、バキューム式の集塵機が取り付けられる。このように、ブース100内に発生した粉塵を作業中に逐次集塵することにより、ブース100内の視界を確保することができる。
図3は下端面部材130の構成を説明する図である。下端面部材130は上端面部材110と同様に、複数のパーツ、すなわちL字型をした第1部材134と、ほぼ正方形の第2部材136とから構成されている。下端面部材130の第1部材134と第2部材136は、天面が開放された箱形をしている。したがって、第1部材134の底面134aと第2部材136の底面136aが、あわせて下端面部材130の端面132(図1参照)を構成している。
第1部材134には、固定用磁石142が2つ設けられていて、鉄骨12に仮止めすることができる。第2部材136の第1部材134と隣接する2つの辺にはそれぞれ下向きのフック138が設けられていて、これらを第1部材134の辺に差し込むことによって第1部材134と第2部材136とを係合させることができる。
また第1部材134の底面134aには集塵用の2つの開口部144が設けられ、第2部材136の底面136aには集塵用の開口部146が設けられている。下端面部材130においては粉塵が重力で落下してくるため、開口部144、146には単に集塵袋を接続すれば足りる。
なお、上端面部材110、下端面部材130の外周の形状は、本実施形態に例示した四角形のほか、丸、多角形など、いずれの形状であってもよい。
シート150は、上端面部材110と下端面部材130の外周に張り渡されることによって、鉄骨12の周囲に空間を形成する。図4はシートを固定する作業について説明する図である。図4に示すように、まず上端面部材110の一辺の一端のクランプ128にシート150の角を固定し、その辺の他端のクランプ128にシート150を固定する。それからその間のクランプ128を下ろして一辺全部のクランプを固定する。一辺が固定されれば、あとは順にシート150を上端面部材110の外周面に沿わせてクランプ128を下ろしていく。下端面部材130においては、シートが上から垂れているので、容易に固定することができる。
シート150の材質は、内部の様子がわかりやすいように透明であることが望ましいが、粉塵が付着して視界が悪くなりやすく、また内部でブラスト処理を行うと研削材で傷ついてすぐに透明性が失われる。このためシート150は、透明性よりもむしろ丈夫さを優先させて網目状に繊維を含有させた複合シートであってもよい。その場合、図1に示すように、一面にカッターナイフなどで穴を空け、のぞき窓152をテープ152aで貼って作成することが好ましい。のぞき窓152は、硬質で傷つきにくいポリカーボネートやアクリルなどの透明な樹脂板を用いることができる。なおシート150は、内部で溶射を行う場合には、耐熱性の高いポリプロピレンや塩化ビニルなどを主材とした樹脂を用いることが好ましい。
またのぞき窓152の下方には、工具や手を挿入するための作業用穴154が設けられている。作業用穴154は、シート150にカッターナイフなどで穴をあけ、作業用穴154が空けられたプレート154aを、テープ154bによって貼って作成することができる。作業用穴154には軟質のチューブ156が接続されており、このチューブ156から工具や手を挿入することにより、簡易な密封構造としている。これにより、内部から噴出した粉塵を作業者がかぶってしまうことを防止することができる。
ここで、鉄塔に限らず鉄骨で構成された構造物は、補助材14(ブレース材)や梁が随所に設けられている。するとブース100を設置する箇所に補助材14がある場合も十分に想定される。
このような場合にも、シート150にカッターナイフなどで切れ込みを入れることにより、問題なく上端面部材110、下端面部材130の周りにシート150を張ることができる。図1の例では、補助材14の位置から下方向に切れ込みを入れ、切れ目をテープ158で塞いでいる。
しかしながら、シート150と補助材14の際の部分は漏れが生じやすい。補助材14の周囲をすべてテープで目張りすることもできるが、山形鋼の周囲を全て貼るのは若干手間がかかる。そこで本実施形態では、補助材カバー160、170によって補助材14の際を封止する。
図5は補助材カバー160、170を説明する図である。補助材カバー160、170は、補助材14に沿って取り付けられ、シート150の内外から挟み込むことによってその際を封止する。
補助材カバー160は、補助材14の上方から組み合わせる構成である。補助材カバー160は、板材162の裏に密着性を高めるための柔軟層164を貼り付けている。柔軟層164は、例えばウレタンフォームなどの発泡樹脂やゴムなどで構成することができる。板材162および柔軟層164には、補助材14にかぶせる切り欠き166が設けられている。この切り欠き166の脇には固定用磁石168が備えられており、任意の位置および姿勢で補助材14に固定することができる。
補助材カバー170は、補助材14の下方から組み合わせる構成である。補助材カバー170は、板材172の裏に柔軟層174を貼り付けている。補助材カバー160および補助材カバー170を取り付ける際には、補助材カバー160の柔軟層164と補助材カバー170の柔軟層174がシート150を挟むように配置する。板材172および柔軟層174には、補助材14を差し込む切り欠き176が設けられている。切り欠き176の脇には固定用磁石178が備えられており、任意の位置および姿勢で補助材14に固定することができる。
上記の補助材カバー160、170により、補助材14の周囲をテープで目張りする場合と比較して、極めて簡単かつ短時間に、その周囲からの粉塵の漏洩を防止することができる。
上記説明した如く、本実施形態にかかるブース100によれば、鉄骨12に沿って、粉塵の飛散を防止できる空間を極めて簡単に構築することができる。作業者はブース100の外にいて、作業用穴154からノズル等の機械を挿入し、鉄骨12に処理を施すことができる。したがって、補修を行う箇所にこのブース100を取り付け、補修が済んだら取り外し、また次の補修を行う箇所に取り付けることを繰り返すことにより、鉄骨12が露出した構造物の全体について粉塵を発する作業を行うことができる。すると、鉄塔のように屋外の高所作業であってもオープンブラストによる素地調整、粗面化および金属溶射を行うことが可能となり、耐久性の高い補修を行うことができる。これにより補修の間隔を長くし、また部材取替までの期間を大幅に延長させることができるため、保守に必要なコストを大幅に低減させることが可能となる。また、刷毛ではなくスプレーによる塗装も可能になり、利便性を飛躍的に向上させることができる。
特に、本発明にかかるブース100は、現地での組立が極めて簡単である。発明者が実際に実験したところ、10分程度で組み立てることが可能であった。したがって高所にて粉塵防止のブースが得られること、作業者の安全な作業環境が確保できること、高品位な補修を行うことができることの利点を考慮すれば、余りある利益を得ることができる。
なお、上記実施形態において鉄骨12は主柱材であるため、上端面部材110と下端面部材130は上下に配置されていた。しかし上端面部材110および下端面部材130は当然ながら梁(横方向)や補助材14(斜め方向)に取り付けることもできる。梁に取り付ける場合には上端面部材110および下端面部材130は横に並ぶことになるが、この場合にも全く同様にシート150を張って、粉塵の飛散を防止できる空間を極めて簡単に構築することができる。
図6は上端面部材110の他の構成の例を示す図である。上記実施形態においては、上端面部材110のクランプ128を外周面に配列するように説明した。しかし図6に示すクランプ180のように、天面114a、116a(端面部材のうち鉄骨にほぼ直交する端面)に配置されていてもよい。このとき、シート150は上端面部材110の外周部を回り込んでクランプ180に固定する。このように、シート150が外周部を回り込むように張ることにより、単にクランプ128で挟むよりもシート150の把持力を向上させることができ、また外周部における機密性を向上させることができる。
図7は下端面部材130の他の構成の例を示す図である。上記実施形態においては、下端面部材130は上端面部材110と同様に多数のクランプ148を配列するように説明した。このときのクランプは、円形の(短い)パッドを備えたものであった。しかし図7に示すように、端面部材の縁に沿って長い棒状のパッド184を備えたクランプ182を小数(図では例として1辺に付き2つずつ)配置していてもよい。これにより下端面部材130において操作するクランプの数を減らすことができるため、シートを張る際の利便性を向上させることができる。なお上端面部材110においては、図4に示したように一端を取り付けてからねじるような操作をすることになる。このため長いパッドでは角度が固定されてしまい、かえって取り付けにくくなってしまうため、上端面部材110では短い(円形の)パッドとすることが好ましい。
図8はブース100を用いた表面処理方法を説明する図である。ブース100を用いた表面処理としては、オープンブラスト、溶射、スプレー塗装などを例示することができる。図8では、鉄塔10の梁16の上に足場200を構築し、鉄骨12にブース100を上記説明したように取り付けている。上端面部材110の開口部124にはバキューム式の集塵機202を取り付け、下端面部材130の開口部144、146には集塵袋204を取り付ける。
足場200には、ブラスト機212、アーク溶射用のワイヤーフィーダー220および溶射電源222を設置している。オープンブラスト用のコンプレッサ(不図示)は地上に設置していて、ホースによってブラスト機212に接続している。そして、ブース100の内部にチューブ156からオープンブラストのノズル214を挿入してブラスト処理を行い、次にアーク溶射のガントーチ224を挿入して金属溶射を行う。
これらオープンブラストによるケレン、粗面化および金属溶射は、いずれも多量の粉塵を生じるものである。しかし、上記のブース100の中で処理を行うことにより、粉塵の飛散を防止することができる。したがって、鉄塔10のように屋外の高所作業であっても処理を行うことが可能となり、耐久性の高い補修を行うことができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、鉄骨表面にブラスト、素地調整、粗面化、溶射、封孔処理、塗装をする際に用いる表面処理用ブースおよび表面処理方法として利用することができる。
10…鉄塔、12…鉄骨、14…補助材、16…梁、100…ブース、110…上端面部材、112…端面、114…第1部材、114a…天面、116…第2部材、116a…天面、118…フック、120…クランプ、122…固定用磁石、124…開口部、128…クランプ、130…下端面部材、132…端面、134…第1部材、134a…底面、136…第2部材、136a…底面、138…フック、142…固定用磁石、144…開口部、146…開口部、148…クランプ、150…シート、152…のぞき窓、152a…テープ、154…作業用穴、154a…プレート、154b…テープ、156…チューブ、158…テープ、160…補助材カバー、162…板材、164…柔軟層、166…切り欠き、168…固定用磁石、170…補助材カバー、172…板材、174…柔軟層、176…切り欠き、178…固定用磁石、180…クランプ、182…クランプ、184…パッド、200…足場、202…集塵機、204…集塵袋、212…ブラスト機、214…ブラストノズル、220…ワイヤーフィーダー、222…溶射電源、224…溶射ガントーチ

Claims (7)

  1. 鉄骨に取り付けられ該鉄骨の軸方向にほぼ直交する端面を形成する複数の端面部材と、
    前記端面部材に張り渡されて鉄骨の周囲に空間を形成するシートと、
    前記端面部材の外周部近傍に配置され前記シートを固定するクランプと、
    を備え
    前記端面部材は複数のパーツに分割されていて、該複数のパーツを組み合わせることによって鉄骨を挟み込んでこれに固定することを特徴とする鉄骨の表面処理用ブース。
  2. 前記端面部材は集塵用の開口部を備えていることを特徴とする請求項に記載の鉄骨の表面処理用ブース。
  3. 前記端面部材は、鉄骨に仮止めするための固定用磁石を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄骨の表面処理用ブース。
  4. 前記クランプは、前記端面部材のうち鉄骨にほぼ直交する端面に配置されていて、
    前記シートは前記端面部材の外周部を回り込んで前記クランプに固定することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の鉄骨の表面処理用ブース。
  5. 前記複数の端面部材のうち、
    一方の端面部材には相対的に短いクランプを多数配置していて、
    他方の端面部材には該端面部材の縁に沿って長いクランプを小数配置していることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の鉄骨の表面処理用ブース。
  6. 鉄骨の処理対象となる区間の両端に、
    鉄骨の軸方向にほぼ直交する端面を形成する端面部材であって、複数のパーツに分割されていて該複数のパーツを組み合わせることによって該鉄骨を挟み込んでこれに固定する端面部材を複数取り付け、
    前記複数の端面部材にシートを張り渡して鉄骨の周囲に空間を形成し、
    前記空間の内部で処理を行うことを特徴とする鉄骨の表面処理方法。
  7. 前記空間の内部で行う処理とは、ブラスト、溶射、塗装を含むことを特徴とする請求項に記載の鉄骨の表面処理方法。
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