以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
図1は本発明を適用する省エネルギー住宅1の概略図であり、窓やドア等を省略している。図1に示す住宅は、二階建てであって、コンクリート製の基礎10上に建てられている。基礎10は、地面との断熱を図るべく、基礎断熱材9上に形成されている。基礎断熱材9は、多数の気泡が形成された樹脂製の厚さ50mmの板状体である。また、基礎10の凹部の内側壁面は、二層の断熱材42a、42bで覆われており、断熱材42bの外側面が、水滴が透過しない防水性(以下、単に防水性という)と水蒸気が透過する透湿性(以下、単に透湿性という)とを併有し且つ輻射熱を反射する遮熱シート17cで覆われている。断熱材42aは、多数の気泡が形成された樹脂製の厚さ50mmの板状体であり、断熱材42bも多数の気泡が形成された樹脂製の厚さ40mmの板状体である。基礎10の凹部の底面も、透湿性で且つ輻射熱を反射する遮熱シート10aで覆われている。更に、遮熱シート10aのうち、内側壁面近傍の部分に二層の断熱材42c,42dが載置されており、基礎10への放熱を防止している。断熱材42c,42dは、多数の気泡が形成された樹脂製の厚さ45mmの板状体である。
このような基礎10上に木製の土台12が載置されている。土台12には、後述する図2に示すように柱11,11が立設されており、柱11,11が屋根を支承する梁29,29を支えている。この梁29,29には、図1に示すように合板製の屋根裏板16が架け渡されている。屋根裏板16の上側に張られた防水性と透湿性とを併有し且つ輻射熱を反射する遮熱シート16a上に、多数の気泡が形成された厚さ45mmの樹脂製の断熱材16bが載置されている。この断熱材16b上に、グラスウールで形成された厚さ100mmの断熱材20が二層に積層されている。樹脂製の断熱材16bとしては、押出発泡ポリスチレン製の板状体を好適に用いることができる。
省エネルギー住宅1の側壁14は、外気と接触する外壁層14aと室内壁面を形成する内壁層14cとの間に中壁層14bが形成されている。外壁層14aはセラミック等の対候性や耐火性を有するサイディング材で形成されており、内壁層14cは石膏ボード等の断熱性・遮音性に優れた材料で形成されている。内壁層14cは、一階及び二階の側壁を形成する。内壁層14cと同一材料で、一階の天井板27a及び二階の天井板27bが張られている。一階の床28a及び二階の床28bは、木製の床材で形成されている。
この外壁層14aと中壁層14bとの間には、矢印Aで示すように下部開口部から進入した外気が自然対流で上昇し、屋根18と屋根裏板16とで形成された屋根裏22から矢印Cで示すように屋外に排出される外気通路24が形成されている。外気通路24に外気が通過することにより、中壁層14bを乾燥状態に保持できる。屋根裏22には、屋根18の軒下に形成された開口部からも矢印Bで示すように外気が通気される。
屋根裏板16と二階の天井板27bとの空間部34、二階の床28bと一階の天井板27aとの空間部36及び一階の床28aと基礎10との空間部38は、側壁14の中壁層14bと内壁層14cとの間に形成されている循環通路26と接続されて、循環空気が通過する通路に形成されている。床28a、天井板27a及び内壁層14cで囲まれた一階室内と空間部36とは天井板27aの開口部34aを介して連結されており、床28b、天井板27b及び内壁層14cで囲まれた二階室内と循環通路26とは内壁層14cの開口部34bを介して連結されている。
図1に示す省エネルギー住宅1は、側壁14、屋根裏板16及び基礎10により気密構造に形成されており、住宅内の空気が2〜3時間で入れ替わるように計画換気が強制的になされている。この計画換気は、熱交換換気ユニット30を介して行われる。熱交換換気ユニット30は、住宅内の空気が2〜3時間で入れ替わる量の外気の吸気と室内空気の排気とを、両空気間の熱交換をしつつ行う。熱交換換気ユニット30には、配管30aから外気が供給され、二階の天井板27bに設けられた排気ボックス31及び配管30bを経由して室内空気が供給される。配管30aから供給された外気は、熱交換換気ユニット30に内装されている熱交換器で配管30bから供給された室内空気と熱交換されて配管30cを経由して床下の空間部38に放出される。配管30bから供給されて熱交換器を通過した室内空気は、配管30dから屋外に排出される。尚、外気を熱交換換気ユニット30に供給する配管30aは、その外周面に断熱材が巻かれている。
この熱交換器としては、回転型全熱交換器を用いることができる。回転型全熱交換器は、室内空気側と外気側とをセパレートしたケーシング内に、ハニカムロータが十数rpmの速度で回転するものである。冬季においては、炭酸ガス等を含む暖かな室内空気をハニカムロータに通気し、室内空気に含まれている全熱をロータに蓄熱する。次いで、蓄熱したロータを外気側に回転し、外気を通気させることにより、ロータに蓄熱された全熱を受け取って外気を暖めてから空間部38に放出する。尚、回転型全熱交換器に代えて、計画換気用の熱交換換気ユニットとして市販されている他の熱交換器を用いることができる。
床下の空間部38に、二階の天井板27bに設けられたリターンボックス32から延出された配管30eが開口されており、リターンボックス32から吸引された二階の屋内の空気は配管30eを経由して空間部38に、戻される。このように空間部38に供給された外気及び戻し空気は、空間部38から矢印Dに示すように循環通路26を経由して二階床下の空間部36及び二階天井上の空間部34を循環しつつ、開口部34a,34bから一階室内及び二階室内に吹き出し、各室内を換気する。循環通路26から空間部34への循環空気が吹き付ける梁29,29の吹き付け面は、多数の気泡が形成された厚さ45mmの樹脂製の断熱材29dで断熱され、梁29,29からの放熱を防止している。
図1に示す省エネルギー住宅1は、一階の床下の空間部38及び一階と二階との間の空間部36に、冬季に用いられる放熱ヒータ40a,40bが設置されている。放熱ヒータ40a,40bは、屋外の加熱装置(図示せず)で加熱された不凍液等の熱媒が循環し、空間部38,36を通過する循環空気を所定温度に暖めている。放熱ヒータ40a,40bは、温風を吹き出すことがなく、放熱ヒータ40a,40bを通過する循環空気を暖めるものである。その構造は簡単で且つ軽量であることから、設置後のメンテナンスは殆ど不要であり、メンテナンス用の開口部を床28a,28bに設けなくてもよい。一階床下の空間部38の放熱ヒータ40aは、基礎10のコンクリート面に設置された断熱材42上に設置されている。基礎10の内壁面は、二層の断熱材42a・42b、42c・42dで断熱され、底面の周縁近傍も一層の断熱材42で断熱されているが、基礎10の底面の一部はコンクリート面が露出している。コンクリートに蓄熱するためである。また、一階と二階との間の空間部36に設置された放熱ヒータ40bは、床28bを支承する梁29a,29aに架け渡された取付板29bに設置されている。放熱ヒータ40bに対向する一階の天井板27aの対向面には、放熱ヒータ40bからの輻射熱を反射する遮熱シート29cが張られている。
図1に示す省エネルギー住宅1の側壁14の中壁層14bを図2(a)に示す。中壁層14bは、土台12上に立設された柱11,11に架け渡された合板15aの外気通路24側に多数の気泡が形成された外側樹脂製断熱層15bが配され、合板15aの循環通路26側に内側にも多数の気泡が形成された内側樹脂製断熱層15cが配されている。この外側樹脂製断熱層15bの外側(外気通路24側)には、防水性と透湿性とを併有し且つ輻射熱を反射する外側遮熱シート17aが配されており、内側樹脂製断熱層15cの外側(循環通路26側)にも、透湿性で且つ輻射熱を反射する内側遮熱シート17bが配されている。外側遮熱シート17a及び内側遮熱シート17bは、その部分拡大図に示すように樹脂繊維19が積層されて防水性と透湿性とを併有する不織布であって、樹脂繊維19は表面に輻射熱を反射する金属の蒸着膜が形成されている複合繊維である。樹脂繊維19は、図2(b)に示すように直径0.5〜10μmの超極細ポリエチレン繊維19aの表面にアルミニウム蒸着膜19bが形成され、アルミニウム蒸着膜19bが樹脂コーティング層19cで被覆されて、アルミニウムの酸化が防止されているものである。このような樹脂繊維19からなる外側遮熱シート17aは、夏季等において、外壁層14a及び外気通路24を通過する室内よりも高温の外気からの輻射熱を反射し、住宅内への輻射伝熱を防止する。更に、内側遮熱シート17bは、冬季等において、内壁層14c及び循環通路26を通過する外気よりも暖かい循環空気からの輻射熱を反射し、住宅外への輻射伝熱を防止する。尚、このような外側遮熱シート17a及び内側遮熱シート17bと同一素材を、屋根裏に用いられている遮熱シート16a、基礎10の底面や内側壁面に用いられている遮熱シート10a,17cに用いることができる。
外側遮熱シート17aと内側遮熱シート17bとに挟まれた外側樹脂製断熱層15bと内側樹脂製断熱層15cとは、その内部に形成された気泡によって外側遮熱シート17a及び内側遮熱シート17bからの伝導伝熱を防止でき、外側遮熱シート17aと内側遮熱シート17bと相俟って、住宅内の断熱状態を高度に保持できる。特に、外側樹脂製断熱層15bの気泡を内側樹脂製断熱層15cの気泡よりも小径とすることにより、住宅内の熱を外気通路24の外気に放熱することを効果的に防止できる。外側樹脂製断熱層15bは、炭化水素で100μm未満の小泡が形成された発泡フェノール性樹脂製の厚さ30mm程度の板状体を好適に用いることができる。小泡内の炭化水素により断熱性が更に高まる。内側樹脂製断熱層15cとしては、押出発泡ポリスチレン製の厚さ45mm程度の板状体を好適に用いることができる。発泡ポリスチレン製の板状体内の気泡は、気泡毎にポリスチレン薄膜で仕切られて独立している。尚、このような外側樹脂製断熱層15bと同一素材を、屋根裏の断熱材16b、基礎10の凹部の断熱材42b,42c,42dに用いることができ、内側樹脂製断熱層15cと同一素材を、基礎断熱材9、基礎10の断熱材42aに用いることができる。
このような外側遮熱シート17a、内側遮熱シート17b、外側樹脂製断熱層15b及び内側樹脂製断熱層15cは、その繋目21が互いに重複しないように配することが好ましい。また、柱11と内側樹脂製断熱層15c及び内側遮熱シート17bとの接続箇所と外側樹脂製断熱層15bの繋目21とも重複しないように外側樹脂製断熱層15bを配することが好ましい。長年の経年変化による寸法変化等が原因で繋目21や接続箇所に隙間ができたとしても、いずれかの断熱材が繋目21や接続箇所の隙間を塞ぎ、繋目21や接続箇所の隙間からの放熱を防止できるからである。また、各繋目21や接続箇所はシールシートで目張りすることが好ましい。
図1に示す省エネルギー住宅1では、外気通路24の外気入口から蟻等の昆虫が侵入することがあることから、図3に示すように外気通路24の外気入口を防虫通気材41で塞ぐことにより、通気を確保しつつ蟻等の昆虫の侵入を防止できる。防虫通気材41としては、市販のものを用いることができる。また。外気通路24の外気入口に、図3に示すように水切り板43を設けることが好ましい。外壁層14aが損傷して雨水が外気通路24に進入したとしても、土台12の内側に雨水が進入することを防止できる。水切り板43は、外側樹脂製断熱層15aを受けている木製の受け13に装着される。
図1〜図3に示す省エネルギー住宅1では、冬季において外気温度が−10℃のとき、放熱ヒータ40a,40bにより、空間部36,38の温度を25℃に保持することにより、一階室内の温度を21℃に保持でき、二階室内の温度を20℃に保持できた。このことから室内で暖房器を別途用いることなく過ごすことができ、省エネルギーを図ることができる。更に、室内を換気する換気量は計画換気と等しく、室内で風を感じることなく良好な居心地であった。
図1〜図3に示す省エネルギー住宅1では、土台12の循環通路26側の一部の面及び空間部38側の面が露出しており、この露出面から循環空気の熱が屋外に放熱される。この放熱を防止すべく、図4に示すように土台12の循環通路26側の一部の面及び空間部38側の面を、断熱材42fで覆うことが好ましい。更に、土台12の空間部38側の面を覆う断熱材42eを、遮熱シート17cで覆うことにより更に一層の断熱を図ることができる。断熱材42eは内側樹脂製断熱層15cと同一断熱材でよく、断熱材42fは内側樹脂製断熱層15cと同一断熱材でよい。また、遮熱シート17cは、外側遮熱シート17a又は内側遮熱シート17bと同一材料でよい。
以上、冬季における図1〜図3に示す省エネルギー住宅1について説明してきたが、夏季においても、側壁14で外気と室内とが十分に遮熱・断熱できていることから、夜間の涼しい外気で下がった室内温度は、昼間において、外気温度の昇温速度に比較して遅く昇温されるので、室内温度を屋外温度よりも低温状態に維持できる。このように、室内温度を屋外温度よりも低温状態に維持できることから、屋内に冷房機を設置することより、効率的に室内温度を所望温度に維持でき、省エネルギーを図ることができる。