文書画像を電子的に読み取り、この読み取られた電子画像データに対して所定の処理を施した後、電子写真記録部において光走査記録を行い画像として記録再現する装置が、例えばデジタル複写機として商品化されている。
又、最近では電子的に読み取られた画像データを半導体メモリに蓄積させておき、デジタル処理特有の特徴を付加して商品価値を向上させた複写機も市場に登場している。
デジタル複写機市場では、半導体メモリの容量を増大させて多くの文書を効率良く処理させることのできるシステムとして提供したり、ファクシミリ、プリンタ等といった、機能を一体化した複合デジタル機として商品を展開している。
このようなデジタル複写機を用いて、膨大な量の文書をスキャナ部から入力して一度に処理しようとしたり、又、ネットワーク環境下において、パソコンなどで作成された大量の文書データを受け取り処理しようとしたりすると、装置に搭載されている半導体メモリでは一度に処理できる能力に限界があるため、時によっては処理できない状況が発生することも考えられる。
そこで、最近では、ハードディスク装置などの大容量の外部記憶装置を新たに搭載させ、ハードディスク装置単体、あるいは半導体メモリとの組み合わせにより、今まで以上の画像データを一括処理することができるようにしたデジタル複写機がある。
さらに、最近のデジタル複写機は、画像情報をプリンタ部から出力するだけにとどまらず、搭載されているスキャナ部を用いて原稿の画像情報を読み取り、この画像情報をネットワーク通信装置を介してパソコン等の外部機器に送信するスキャナモードを備えた装置としても提供されている。
上記スキャナモード時には、スキャナ部において読み取られた原稿の画像情報をパソコン等の外部機器に対して送信するために、一般には、上記画像情報をハードディスク装置等に一時的に記憶させておき、外部機器からの送信要求に応じて送信する。
ところが、上記従来の構成では、ネットワーク環境下に有るデジタル複写機、プリンタなどの出力状態を見てみると、パソコン、各種携帯端末装置、ファクシミリ装置など、様々な外部機器から指示されたプリントジョブの記録物が出力部に散乱している状態が多々見うけられる。そのために、目的とする出力物がどれであるのか分かりにくくなるという問題が生じる。
そのため、近年では、例えば、プリンタ、ファクシミリ、コピーの各モード毎に記録物の収容先が予め定められたシート収容装置が組み合わせられ、出力処理システムとして構成されたデジタル複写機が存在する。
しかしながら、前記デジタル複写機では、特にプリンタモードにおいて、プリントジョブの出力処理を指示したユーザが出力装置に対して画像の出力指示は行うもの、記録物を取りにいくのを忘れたり、取りにいくのが遅れるといったことにより、出力部において多くの出力物が散乱することがあり、上記問題を十分に解決できるものではない。
又、前記デジタル複写機では、スキャナモードでの使用時においては、ユーザは、デジタル複写機の前でスキャナモードの指示、機密保持のためのパスワードの指示、送信先の指示などスキャナモードを行うために多くのモード設定を行う必要がある。そのために、モードの設定ミスを招く可能性も大きくなり、スキャナモードがスムーズに完了しないこととなる虞がある。
一方、ネットワーク環境下にある外部機器から画像の出力処理(プリントジョブ)が指示されると、ID番号と共にプリントジョブを記憶管理しておき、ユーザが携帯するIDカードにより出力処理を指示したユーザのID番号が確認されると、ID番号に対応するプリントジョブを画像として出力処理するようにした装置が存在する。上記装置では、ユーザがプリントジョブの出力物を取りに来てから出力処理が開始されるため、目的とするプリント出力物を他の出力物と混乱させることなく得ることができる。
しかしながら、上記装置では、ユーザがプリント出力物を取りに行ってから出力処理が開始されるため出力待ちの時間が必ず発生するなど、ID番号の管理によるプリントジョブ制御について十分な利便性を達成しているものでなく、また、上記スキャナモードにおけるID番号の管理の適用については全く開示されていない。
そこで、上述した問題を解決するために、特開2000−177212号公報(特許文献1)には、外部機器から入力される画像データを受け入れ、該画像データに基づいて用紙上に画像を出力する画像出力処理装置が開示されている。前記画像出力処理装置は、上記外部機器から画像データが入力された時に、該画像データを特定のID番号と対応させて記憶管理する記憶管理手段を備える。又、前記画像出力処理装置は、画像出力処理装置の本体に配置される質問器と、該質問器の管理エリア内で該質問器と無線通信可能であると共に各応答器毎に特定のID番号を格納している複数の応答器とからなり、応答器が質問器の管理エリア内に入った時に、この応答器に格納されるID番号を質問器によって確認する移動体識別手段を備える。更に、前記画像出力処理装置は、上記移動体識別手段によってあるID番号が確認され、該ID番号に対応する画像データが上記記憶管理手段に記憶されている時に、該画像データに関する情報を表示する表示手段を備える。これにより、各ユーザは、画像出力処理装置の前に行くだけで、自分自身が出力要求したプリントジョブの内容を確認することができるという効果を奏するとしている。
以下に、添付図面を参照して、本発明の画像形成装置の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。又、フローチャートにおける数字の前に付されたアルファベットSはステップを意味する。
<画像形成装置>
以下に、本発明の実施形態に係る画像形成装置について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略模式図である。但し、本発明に直接には関係しない各部の詳細は省略している。
尚、本発明の画像形成装置は、例えば、プリンタやスキャナ単体、あるいはプリンタ、コピー、スキャナ、ファックス等を備えた複合機等が該当し、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能、プリンタ機能等を備えた画像形成装置として機能する。
以下に、例えば、コピー機能を利用する場合の複合機100(MFP:Multi Function Peripheral)の動作を簡単に説明する。
先ず、ユーザが複合機100を利用する場合、原稿を筐体部の上面に備えられている原稿台101に載置する。続いて、ユーザは、前記原稿台101近傍に備えられている操作部102(操作パネル)を使用してログインし、画像形成に関する設定条件の入力を当該操作部102の操作画面から入力する。そして、ユーザが、前記操作部102に設けられたスタートキーを押下すると、複合機100が画像形成(印刷処理)を開始する。
次に、画像読取部103において、光源104から照射された光が、前記原稿台101に置かれた原稿に反射される。反射された光は、ミラー105、106、107によって撮像素子108に導かれる。導かれた光は前記撮像素子108により光電変換されて、前記原稿に対応する画像データが生成される。
ここで、前記生成された画像データは、下記のように即時に画像形成に使用される場合もあれば、前記スキャナ機能により、所定の内部メモリ(記憶媒体)に一時的に記憶されたり、前記ネットワークスキャン機能(通信部200)により、ネットワーク300を介して通信可能に接続された所定の端末装置300aに送信されたりする。
さて、前記画像データに基づいてトナー像を形成する部分が画像形成部109である。前記画像形成部109には感光体ドラム110が備えられている。前記感光体ドラム110は、一定速度で所定の方向に回転し、その周囲には、回転方向の上流側から順に、帯電器111、露光ユニット112、現像器113、転写器114、クリーニングユニット115などが配置されている。
前記帯電器111は、前記感光体ドラム110表面を一様に帯電させる。前記露光ユニット112は、帯電された感光体ドラム110の表面に、前記画像データに基づいてレーザーを照射し、静電潜像を形成する。前記現像器114は、形成された静電潜像に、トナーを付着させてトナー像を形成する。形成されたトナー像は、前記転写器114により、記録媒体(例えば、用紙、シート)に転写される。前記クリーニングユニット115は、前記感光体ドラム110の表面に残された余分なトナーを取り除く。これらの一連のプロセスは、前記感光体ドラム110が回転することにより実行される。
前記シートは、複合機100に備えられた複数の給紙カセット116から搬送される。搬送される時は、前記シートは、ピックアップローラ117により何れか1つの給紙カセット116から搬送路へ引き出される。各給紙カセット116には、それぞれ異なる紙種のシートが収容されており、画像形成に関する設定条件に基づいてシートが給紙される。
搬送路に引き出されたシートは、搬送ローラ118やレジストローラ119により感光体ドラム110と転写器114の間に送り込まれる。送り込まれると、前記シートは前記転写器114により前記トナー像が転写され、定着装置120に搬送される。
前記トナー像が転写されたシートが、前記定着装置120に備えられた加熱ローラと加圧ローラの間を通過すると、前記トナー像に熱と圧力が印加されて、可視像がシートに定着される。前記加熱ローラの熱量は、紙種に応じて最適に設定され、前記定着が適切に行われる。前記可視像がシートに定着されて画像形成が終了し、当該シートは搬送ローラ118により、経路切替部121へ導かれる。
前記経路切替部121では、前記複合機100による切り替え指示により、前記シートを、前記筐体部の側面に設けられた排紙トレイ122へ案内したり、排紙口123を介して、前記筐体部の胴内に設けられた胴内トレイ124へ案内したりする。前記シートは、前記排紙トレイ122か胴内トレイ124に積載され、収容される。前記手順により、複合機100の筐体部はコピー機能をユーザに提供する。
ところで、例えば、前記ネットワーク300に通信可能に接続された端末装置300aから印刷のための画像データが送信された場合、複合機100は、前記通信部200を介して前記画像データに係るジョブを受信し、実行することになる。
図2は、本発明の実施形態に係る操作部の全体構成を示す概念図である。ユーザは、前記操作部102を用いて、上述のような画像形成についての設定条件を入力したり、入力された設定条件を確認したりする。前記設定条件が入力される場合、前記操作部102に備えられたタッチパネル201(操作パネル)、タッチペン202、操作キー203が用いられる。
前記タッチパネル201には、設定条件を入力する機能と当該設定条件を表示する機能が兼ね備えられている。即ち、タッチパネル201上に表示された画面内のキーを押下することによって、当該押下されたキーに対応する設定条件が入力される。
前記タッチパネル201の背面には、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部(図示せず)が設けられており、当該表示部が、例えば、前記初期画面等の操作画面を表示する。前記タッチパネル201の近傍には、タッチペン202が備えられており、ユーザがそのタッチペン202の先をタッチパネル201に接触させると、タッチパネル201下に設けられたセンサーが接触先を検知する。
更に、前記タッチパネル201近傍には、所定数の操作キー203が設けられ、例えば、テンキー204、スタートキー205、クリアキー206、ストップキー207、リセットキー208、電源キー209が備えられている。
次に、図3を用いて、複合機100の制御系ハードウェアの構成を説明する。図3は、本発明に係る複合機100の制御系ハードウェアの構成を示す図である。ただし、本発明に直接には関係しない各部の詳細は省略している。
複合機100の制御回路は、CPU(Central Processing Unit)301、ROM(Read Only Memory)302、RAM(Random Access Memory)303、HDD(Hard Disk Drive)304、各駆動部に対応するドライバ305、操作部306(102)、通信インターフェイス307(200)を内部バス308によって接続している。
前記CPU301は、例えば、RAM303を作業領域として利用し、前記ROM302、HDD304等に記憶されているプログラムを実行し、当該実行結果に基づいて前記ドライバ305と前記操作部306からのデータや指示、キーに対応する信号、命令等を授受し、前記図1に示した各駆動部の動作を制御する。又、前記通信インターフェイス307は、ネットワーク300を介して所定の端末装置300aと接続しており、前記CPU301は、前記通信インターフェイス307を介して前記端末装置300aに画像データを送信する。
又、前記駆動部以外の後述する各手段(図4に示す)についても、前記CPU301がプログラムを実行することで当該各手段を実現する。前記ROM302、HDD304等には、以下に説明する各手段を実現するプログラムやデータが記憶されている。
又、前記端末装置300aには、前記複合機100の制御回路と同様に、図示しないCPU、RAM、ROM、操作部(キーボード、マウス等のインターフェイス)等を搭載しており、これらは、上述と同様の機能を有する。
<本発明の実施形態>
次に、図4、図5を参照しながら、本発明の実施形態に係る構成及び実行手順について説明する。図4は、本発明の複合機の機能ブロック図である。又、図5は、本発明の実行手順を示すためのフローチャートである。
先ず、ユーザが、ネットワーク300を介して複合機100と通信可能に接続された所定の端末装置300aに電源を投入し、当該端末装置300aの操作部を用いて自己のユーザID(例えば、「A001」)を入力するとともに、前記複合機100の実行可能なジョブ(例えば、印刷ジョブ「ジョブX」)を作成する。すると、前記端末装置300aは、作成された印刷ジョブ「ジョブX」と入力されたユーザID「A001」とを関連付ける。
次に、ユーザが、前記端末装置300aの操作部102を介して所定の送信キーを押下すると、当該端末装置300aの制御手段401が、前記送信キーの押下を受け付けて、前記ユーザID「A001」に関連付けられた印刷ジョブ「ジョブX」を前記複合機100に送信する(図5:S101)。
これに対して、前記複合機100の通信手段402は、前記端末装置300aから印刷ジョブを受信すると(図5:S102)、その旨を実行手段403に通知し、当該通知を受けた実行手段403は、当該印刷ジョブ「ジョブX」と、当該印刷ジョブ「ジョブX」に関連付けられたユーザID「A001」とをジョブテーブル600としてジョブ記憶手段404に受信した順番で記憶させる(図5:S103)。
前記ジョブテーブル600には、図6(A)に示すように、所定のジョブ欄601にまだ実行されていないジョブ(例えば、「ジョブA」、「ジョブB」等)が記憶され、当該ジョブ欄601に対応するユーザID欄602に、前記ジョブに関連付けられたユーザIDが記憶されている。前記実行手段403は、前記ジョブテーブル600の最下段のジョブ欄601に、前記受信した印刷ジョブ「ジョブX」を記憶させるとともに、最下段のユーザID欄602に、当該印刷ジョブ「ジョブX」に関連付けられたユーザID「A001」を記憶させる。尚、前記ジョブテーブル600では、上方に記憶される程、受信した順番が早いジョブを示している。
ここで、前記実行手段403は、前記ジョブテーブル600にジョブを記憶させると、当該ジョブテーブル600の最上段に記憶されたジョブから順次実行する。つまり、前記実行手段403は、受信した順番にジョブを順次実行することになる。図6(A)では、前記印刷ジョブ「ジョブX」が記憶された時点(受信された時点)では、複数のジョブ「ジョブA」、「ジョブB」等が既に記憶されているため、前記実行手段403が、前記印刷ジョブ「ジョブX」よりも、当該複数のジョブ「ジョブA」、「ジョブB」等を優先的に実行することになる。
ここで、前記実行手段403が所定のジョブをジョブテーブル600に記憶させると、その旨を取得手段405に通知し、当該通知を受けた取得手段405は、予め備えられた時計手段405aから前記ジョブの受信時刻(例えば、2012/8/20 9時30分)を取得し(図5:S104)、図6(A)に示すように、前記ジョブテーブル600に記憶させたジョブ(印刷ジョブ「ジョブX」)に関連付けて記憶させる。
具体的には、前記取得手段405が、図6(A)に示すように、前記ジョブテーブル600の最下段の受信時刻欄603に、前記印刷ジョブ「ジョブX」の受信に対応して取得された受信時刻「2012/8/20 9時30分」を記憶させる。
さて、前記印刷ジョブ「ジョブX」を送信したユーザは、前記端末装置300aから離れて、前記複合機100へ赴き、当該複合機100の操作部102に触れると、当該操作部102の表示受付手段406が、ログインのためのログイン画面をタッチパネル201上に表示する(図5:S105)。
前記ログイン画面605には、図6(B)に示すように、ログイン画面を示す旨のメッセージ606と、ユーザID入力欄607と、パスワード入力欄608と、キーボードキー609と、OKキー610とが表示される。
ユーザは、前記ログイン画面605を見ながら、前記キーボードキー609を用いて、自己のユーザID(例えば、「A001」)をユーザID入力欄607に入力するとともに、自己のパスワード(例えば、「aaa」)をパスワード入力欄608に入力して、前記OKキー610を押下すると、前記表示受付手段406が、当該OKキー610の押下を受け付けて、前記入力された入力ユーザID(「A001」)及び入力パスワード(「aaa」)と、管理者等により所定のメモリに予め記憶された認証ユーザID及び認証パスワードとを比較する。
そして、前記比較の結果、前記入力ユーザID及び入力パスワードが前記人用ユーザID及び認証パスワードと一致しない場合、前記表示受付手段406は、当該入力ユーザID及び入力パスワードを消去したログイン画面605を表示して、ユーザに再度正しいユーザID及びパスワードの入力を促す(図5:S105NO)。
一方、前記比較の結果、前記入力ユーザID及び入力パスワードが前記人用ユーザID及び認証パスワードと一致する場合は、前記表示受付手段406は、ユーザをログインさせ(ユーザによる複合機100の使用を許可し)(図5:S105YES)、当該ログインしたユーザのユーザID(ログインユーザIDとする)が、前記ジョブテーブル600のユーザID欄602のユーザIDに存在するか否かを検索する(図5:S106)。
前記検索の結果、前記ログインユーザIDが前記ジョブテーブル600のユーザID欄602のユーザIDに存在しない場合(図5:S106NO)、前記表示受付手段406は、現時点でジョブを入力(送信)したユーザでないと判定し、この場合は、通常の初期画面をタッチパネル201上に表示させる(通常処理として完了)。
一方、前記検索の結果、前記ログインユーザIDが前記ジョブテーブル600のユーザIDに存在する場合に(図5:S106YES)、前記表示受付手段406は、現時点でジョブを入力したユーザであると判定し、その旨を前記取得手段405に通知する。当該通知を受けた取得手段405は、前記時計手段404aから前記ユーザのログイン時刻(例えば、2012/8/20 10時30分)を取得し(図5:S107)、図6(A)に示すように、前記ジョブテーブル600において前記ログインユーザID(「A001」)に対応するジョブ(印刷ジョブ「ジョブX」)にログイン時刻を関連付けて記憶させる。
具体的には、前記取得手段405が、図6(A)に示すように、前記ジョブテーブル600の最下段のログイン時刻欄604に、前記ログインユーザID(「A001」)のユーザのログインに対応して取得されたログイン時刻「2012/8/20 10時30分」を記憶させる。
次に、前記取得手段405が、上述の処理を完了すると、その旨を算出手段407に通知し、当該通知を受けた算出手段407は、前記ログインユーザID(「A001」)のジョブ(印刷ジョブ「ジョブX」)に関連付けられたログイン時刻「2012/8/20 10時30分」から受信時刻「2012/8/20 9時30分」を減算した受け取り時間を算出する(図5:S108)。
ここでは、前記ログイン時刻「2012/8/20 10時30分」から受信時刻「2012/8/20 9時30分」を減算した60分(1時間)が受け取り時間として算出される。
更に、前記算出手段407が、上述の算出を完了すると、その旨を優先手段408に通知し、当該通知を受けた優先手段408は、前記受け取り時間「60分」と、(予め算出された)閾時間とを比較して、当該受け取り時間「60分」が当該閾時間未満であるか否かを判定する(図5:S109)。
ここで、前記優先手段408が前記受け取り時間「60分」と前記閾時間とを比較する場合、先ず、所定のメモリに予め記憶された受け取り時間テーブルを参照する。
前記受け取り時間テーブル700には、図7(A)に示すように、過去に算出された複数の受け取り時間701(例えば、「120分」、「45分」、「90分」等)が記憶されている。次に、前記優先手段408は、前記参照した受け取り時間テーブル700に、新たに算出した前記ログインユーザID「A001」の受け取り時間「60分」を記憶させる。更に、前記優先手段408は、前記受け取り時間テーブル700に記憶された全ての受け取り時間701(「120分」、「45分」、「90分」、「60分」等)から平均値(例えば、「90分」)を算出し、当該平均値を前記閾時間とする。これにより、判定基準となる閾時間が、今までの過去のユーザの受け取り時間と、現時点でログインしたユーザの受け取り時間とを反映した値になる。
そして、前記優先手段408は、前記ログインユーザID「A001」の受け取り時間と、前記算出された閾時間とを比較する。前記比較の結果、前記受け取り時間が前記閾時間以上である場合に(図5:S109NO)、前記優先手段408は、前記ログインユーザID「A001」のユーザは急いでジョブを実行する必要がないと判定し、前記実行手段403にそのままの順番でジョブを実行させる。例えば、前記優先手段408が、何もせず、処理を終了しても構わない。
この場合は、上述したように、前記実行手段403が、前記ジョブテーブル600に記憶されたジョブを受信した順番で順次実行することになるため(図5:S110)、前記ログインユーザID「A001」のユーザの印刷ジョブ「ジョブX」は、最後に実行されることになり、例えば、当該ログインユーザID「A001」のユーザは、前記複合機100の前で待つことになろう。
一方、前記比較の結果、前記受け取り時間が前記閾時間未満である場合に(図5:S109YES)、前記優先手段407は、前記実行手段403に、前記ログインユーザID「A001」の印刷ジョブ「ジョブX」を優先して実行させる(図5:S111)。
具体的には、前記優先手段408が、前記ジョブテーブル600からログインユーザID「A001」の印刷ジョブ「ジョブX」を参照し、当該参照した印刷ジョブ「ジョブX」を優先して実行するように前記実行手段403に指示する。
ここで、前記指示を受けた実行手段403が、所定のジョブ(例えば、「ジョブA」)の実行中であれば、当該ジョブを一時中断して、前記ログインユーザID「A001」の印刷ジョブ「ジョブX」を直ぐに実行する。この場合、前記実行手段403は、例えば、経路切替部121の制御をして、前記実行中のジョブ(一時中断したジョブ)の排出先と、前記ログインユーザID「A001」のジョブの排出先とを変更し、前記実行中のジョブ(一時中断したジョブ)と、前記ログインユーザID「A001」のジョブとを区別するように構成すると、好ましい。更に、前記実行手段403が、その旨を表示受付手段406に通知し、各排出先を表示した画面を表示するよう構成しても良い。
一方、前記指示を受けた実行手段403が、所定のジョブの実行完了直後であれば、前記ログインユーザID「A001」のジョブを直ぐに実行する。この場合も、前記実行手段403が、上述と同様に、排出先を変更する等の処理をすると好ましい。
このように、前記端末装置300aを介してジョブを複合機100に送信したユーザが、当該複合機100に直ぐに駆けつけてログインすれば、前記送信したジョブが優先的に直ぐに実行される。これにより、ジョブの実行に関して優先順位を変更出来ない構成や簡単にジョブの割り込みを行えない構成の複合機100であっても、ユーザの対応次第で、優先順位を上げることが可能となるため、ジョブの実行を急いでいるユーザの利便性を向上させる。
特に、既に送信されたジョブが、例えば、1000枚以上の大量印刷ジョブであったり、複数(例えば、数十個)のジョブが蓄積されていたりする状態で、その後に、緊急を要するユーザが、数枚の少量印刷ジョブを送信した場合、前記大量印刷ジョブや複数のジョブの完了のために、長時間待つ必要が生じる。
そこで、本発明では、前記緊急を要するユーザが、直ぐにログインした場合には、後から受信したジョブであっても、何らかの事情により緊急を要するジョブであるから、優先順位を積極的に上げて直ぐに実行して、前記緊急を要するユーザの利便性を向上させるのである。この構成であると、ユーザにより手軽にジョブの優先順位を上げることが出来るので、従来からの優先ジョブや割り込みジョブの構成や設定を採用する必要が無くなり、複合機100全体の構成を簡単と出来る。
このように、本発明では、所定のジョブを受信すると、当該ジョブの受信時刻を取得するとともに、当該ジョブを送信したユーザが複合機100にログインすると、当該ユーザのログイン時刻を取得する取得手段405と、前記取得されたログイン時刻から前記取得された受信時刻を減算した受け取り時間を算出する算出手段407と、前記算出された受け取り時間と、所定の閾時間とを比較して、当該受け取り時間が当該閾時間未満である場合に、前記実行手段403に前記ユーザのジョブを優先して実行させる優先手段408とを備える。
これにより、ジョブを送信したユーザが急いでログインすることで、当該ジョブを優先的に実行させることが可能となる。
尚、本発明の実施形態では、ジョブを印刷ジョブとしたが、複合機100(画像形成装置)が実行可能なジョブであれば、どのようなジョブでも良く、例えば、ファクシミリ送信ジョブ、スキャンジョブ、プリントジョブ等であっても構わない。
又、本発明の実施形態では、前記優先手段408が、前記算出された受け取り時間と、過去に算出された受け取り時間との平均値を算出し、当該平均値を前記閾時間とする構成としたが、他の構成でも構わない。例えば、前記優先手段408が、前記算出された受け取り時間を閾時間の算出に含めず、過去に算出された受け取り時間のみで平均値を算出し、当該平均値を前記閾時間としても構わない。又、前記優先手段408が、前記算出された受け取り時間、又は過去に算出された受け取り時間のうち、直近の受け取り時間を基準として、過去所定数(例えば、10個)の受け取り時間を取得し、当該取得した受け取り時間の平均値を算出して、当該平均値を前記閾時間とする構成としても構わない。更に、前記優先手段408は、前記算出された受け取り時間又は過去に算出された受け取り時間のうち、管理者等により予め設定された基準時間よりも小さい受け取り時間を取得したり、予め設定された所定期間(例えば、前記ジョブの受信から数時間、数日前までの期間等)内の受け取り時間を取得したりするよう構成しても構わない。
又、本発明の実施形態では、前記優先手段408が、前記閾時間を算出(更新)するよう構成したが、他の構成でも構わない。例えば、前記優先手段408が、ユーザに入力された一定の時間を前記閾時間としたり、ユーザの操作により前記閾時間を一定としたりするよう構成しても構わない。尚、ユーザの入力や操作は、前記操作部102を介してなされる。
又、本発明の実施形態では、前記ジョブテーブル600の項目として、ジョブと、ユーザIDとを設け、前記受け取り時間テーブル700の項目として、受け取り時間を設けるよう構成したが、他の構成でも構わない。例えば、図7(B)に示すように、前記ジョブテーブル600aの項目に、ジョブと、ユーザIDと、グループ名(例えば、部署名)とを設け、前記受け取り時間テーブル700aの項目として、前記グループ名(例えば、前記部署名であれば、部署A、部署B等)毎の受け取り時間を設けて、所定のグループ毎に受け取り時間を記憶させ、グループ毎の閾時間を算出し、グループ毎に受け取り時間と閾時間とを比較するよう構成しても良い。当該構成とすると、例えば、共有に使用される複合機100において、当該複合機100に近いグループ(部署)と、遠いグループ(部署)とで、優先順位を上げる基準の閾時間の重み付けが出来るため、グループの環境に応じたユーザの対応で、ジョブの優先順位を上げるか否かを判定することが可能となる。
又、本発明の実施形態では、複合機100が各手段を備えるよう構成したが、当該各手段を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。当該構成では、前記プログラムを複合機100に読み出させ、当該複合機100が前記各手段を実現する。その場合、前記記録媒体から読み出されたプログラム自体が本発明の作用効果を奏する。更に、各手段が実行するステップをハードディスクに記憶させる方法として提供することも可能である。