JP5773357B2 - 化学・物理現象検出装置及び検出方法 - Google Patents
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この検出装置は、例えば図1に示すように、センシング部10、電荷供給部20、電荷移動・蓄積部30、電荷量検出部40及び電荷除去部50を備えてなる。
センシング部10は検出対象に応じて電位を変化させる感応膜12と標準電極13を備える。感応膜12の電位変化に応じ、シリコン基板71において対向する領域(p拡散領域72)のポテンシャル井戸15の深さが変化する。
電荷移動・蓄積部30はトランスファーゲート(この明細書で「TG」と略することがある)部31、フローティングディフュージョン(この明細書で「FD」と略することがある)部32を備える。TG部31の電圧を変化させることでシリコン基板71において対向する領域のポテンシャルを変化させ、もって、センシング部10のポテンシャル井戸15に充填された電荷をFD部33へ移送し、そこに蓄積する。
電荷除去部50はリセットゲート(この明細書で、「RG」と略することがある)部51、リセットドレイン(この明細書で、「RD」と略することがある)部53を備える。RG部51の電圧を変化させることでシリコン基板71において対向する領域のポテンシャルを変化させ、もって、FD部33に蓄積された電荷をRD部53へ移送し、そこから排出する。
シリコン基板71においてID部21、FD部33及びRD部53にはn+領域74、75及び77が形成される。
シリコン基板71の表面には酸化シリコンからなる保護膜81が形成され、その上にICG部23の電極、TG部31の電極及びRG部51の電極が積層される。各電極へ電圧が印加されるとそれに対向する部分のシリコン基板71のポテンシャルが変化する。
センシング部10においては保護膜81の上に窒化シリコン製の感応膜12が積層される。
検出対象である水溶液にセンシング部10を接触させると、水溶液の水素イオン濃度に応じてセンシング部10のポテンシャル井戸15の深さが変化する(A図参照)。即ち、水素イオン濃度が大きくなればポテンシャル井戸15が深くなる(底のポテンシャルが高くなる)。
一方、ID部21の電位を下げてここへ電荷をチャージする(B図参照)。このとき、ID部21へチャージされた電荷はICG部23を超えてセンシング部10のポテンシャル井戸15を充填する。なお、TG部31のポテンシャルはICG部23より低く、ポテンシャル井戸15へ充填される電荷がTG部31を乗り越えてFD33へ達することはない。
次に、TG部31の電位を上げて、ポテンシャル井戸15に残された電荷をFD部33へ移送する(D図参照)。このようにしてFD部33に蓄積された電荷量を電荷量検出部40で検出する(E図参照)。その後、RG部51の電位を上げてFD部33の電荷をRD部53へ排出する(F図参照)。このRD部53はVDDに接続され、負にチャージされた電荷を吸い上げる。
かかるpHイメージを形成するに際し、各pH検出装置が1−ピクセルを構成するので、pH検出装置の高集積化が望まれる。
図1に示すpH検出装置の回路構成を図3に示す。図3から明らかなように、1−ピクセル毎に、センシング部:1、トランジスタ:5、入出力配線:7が要求される。
このように1−ピクセル毎に要求される多数の要素は高集積化の妨げになる。
電荷供給部20が省略できれば、1つのトランジスタと2本の入出力線が削除され、高集積化に対する負担が軽減する。
以上より、この発明の局面は次のように規定される。即ち、
検出対象の化学・物理現象に対応してポテンシャル井戸の底部ポテンシャルを変化させるセンシング部を備え、
TG部を介して前記センシング部の電荷を対応するFD部へ移送し、該FD部に蓄積された電荷に基づき前記化学・物理現象を特定する化学・物理現象検出装置の制御方法であって、
前記ポテンシャル井戸へ、前記TG部を介して、前記FD部側から電荷を注入する、化学・物理現象検出装置の制御方法。
検出対象の化学・物理現象に対応してポテンシャル井戸の底部ポテンシャルを変化させるセンシング部と、
該センシング部に連続して配置されるTG部及びFD部と、
前記FD部へ電荷を供給する電荷供給部と、
前記FD部へ供給された電荷が前記ポテンシャル井戸に注入されるよう前記TG部の電位を制御するTG制御部と、
を備える化学・物理現象検出装置。
図4において図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。図1との比較から明らかな通り、この図4ではICG部23とID部21が省略されている。
図4に示す検出装置100の動作を図6及び図7に示す。
図6(A)において、ポテンシャル井戸15は検出対象のpHに応じてその電位が定まっている。
その後、RG部51を高電位とするとともに、RD部53へ電荷をチャージする。電荷の最低ポテンシャルは、ポテンシャル井戸15がとり得る最低ポテンシャルより低いものとする。これにより、RD部53からの電荷でポテンシャル井戸15が満たされる(B図参照)。
次に、RD部53の電荷を排出してTG部31において電荷をすり切り、ポテンシャル井戸15のみへ電荷を残した後、RG部51の電位をもとに戻す(C図参照)。その後、TG部31の電位を上げてポテンシャル井戸15に残された電荷をFD部33へ移送する(D図参照)。なお、FD部33の電荷量の検出及びその排出は、図2のE図及びF図と同様の処理となる。
図4に示す検出装置100には独立した構成の電荷供給部が存在せず、電荷移送・蓄積部と電荷排出部とが電荷供給部として動作するので、装置が簡素化されて高集積化に適したものとなる。
他方、TG部31による電荷すり切り時に(図6のB〜C参照)、TG部31とポテンシャル井戸15との界面に、感応膜12の幅に対応して、小さなポテンシャルのこぶが形成されるおそれがある。このポテンシャルのこぶが存在すると、ポテンシャルのこぶの高さに対応して余計な電荷がセンシング部に残ることとなる。ポテンシャルのこぶの高さが小さくても、既述のように累積的な検出を実行すると、ポテンシャルのこぶに起因して残存した電荷量が無視できなる。そこで、センシング部に隣接して、若しくはセンシング部内に除去井戸を形成し、ポテンシャルのこぶによりセンシング部に残存する電荷を当該除去井戸へ逃がす。これにより、センシング部よりFD部へ移送される電荷量はpH値に対応したもののみとなり、即ちポテンシャルのこぶに起因して残存する電荷は移送されなくなり、もって正確な検出が可能となる。
なお、この除去井戸に対応してこのポテンシャルを制御するための制御電極が更に設けられ、この制御電極はTG部31と独立して制御される。
以上、特許4171820号公報を参照されたい。
そこでセンシング部10への電荷供給が無い状態で、センシング部10からFD部33へ電荷が転送可能なようにTG部31の電位を調節し、FD部33へ移送された第1の電荷量を検出して保存する手段と、センシング部10への電荷の供給がなされた状態で、TG部31の電位を調節して、センシング部2の電荷をFD部33へ転送し、FD部33へ移送された第2の電荷量を検出して保存する手段と、前記第2の電荷量と前記第1の電荷量との差を演算し、得られた電荷量の差にもとづき、検出装置の出力を補正し、もって検出装置の検出結果から光の影響を除去することができる。
以上、特開2008−79306号公報を参照されたい。
センシング部10が光に対して活性であることを利用して、光量を検出することができる。
即ち、光の照射によりセンシング部10で生成した電荷をFD部33へ転送するタイミングを制御することにより、センシング部10へ入射した光量を特定できる。この場合、センシング部10へ電荷を供給する動作は不要である。
この検出装置100を用いる光量の検出動作を図8及び図9に示す。
センシング部10へ入射された光の量に応じてポテンシャル井戸15の電荷が蓄積される(図8A〜B)。
TG部31の電位を上げてポテンシャル井戸15の電荷をFD部33へ移送する(D)。光量に応じては、(D)のステップを繰り返す。
FD部33に蓄積された電荷量の検出及びFD部33に蓄積された電荷の排出はpH検出の場合と同じである。
pH検出装置の基本構造を用いて光量の検出が可能であるので、検出に時間差を設けることにより、一つのチップでpHと光量の両者の検出が可能となる(特許4183789号公報参照)。
電荷移送・蓄積部をpH検出用と光量検出用にそれぞれ配設してもよい(特許4133028号公報)。
pHと光量の同時計測を可能とする装置がWO/2009/081890A1号公報に開示されている。この装置では、電荷としての電子を利用するpH検出用の電荷移動・蓄積部と、光入射によるセンシング部10で発生したホールを利用する光量検出用の電荷移動・蓄積部とが並設される。
一般的に、感度のバラツキを校正するには、標準溶液に対する各センシング部の出力信号を求め、その出力信号が正規の出力信号となるように、これをソフトウェア的なデータ処理で校正する。しかしながら、センシング部の数が増えるとデータ処理用PCにかかる負担が大きくなるので、高集積化の阻害要因となる。
そこで、本発明者らは、感度のバラツキをハードウエア的に校正することを考えた。即ち、標準溶液に対する各センシング部の移送電荷量(出力信号)を求め、この移送電荷量と標準センシング部による標準移送電荷量(標準出力信号)との差を求める。ここに、標準センシング部は任意に若しくは理論的に選択することができ、このセンシング部を標準溶液に接触させたときに移送される電荷量を一義的に標準移送電荷量として、全てのセンシング部の出力の基準とする。
各センシング部の移送電荷量と標準移送電荷量との差が相殺されるように、センシング部のポテンシャル井戸の容量を変化させるか、若しくは電荷移送時のTG部のポテンシャルを変化させる。これにより、標準溶液に対して標準センシング部がFD部へ移送させる電荷量と同じ電荷量が校正対象のセンシング部からFD部へ対して移送されることとなる。
ポテンシャル井戸の容量の変化は、参照電極の電位及び/又はポテンシャル井戸の底部の電位をハードウエア的に調整することで行なえる。TG部の電位調整も同様である。
なお、検出装置に要求される感度によっては、各センシング部を個々に校正する必要はない。例えば、校正対象のセンシング部からの移送電荷量と標準移送電荷量の差を予め定められた範囲(電荷量帯)に分類し、当該範囲毎に校正値を予め定めておく。そして校正対象のポテンシャル井戸の容量を当該校正値で校正する。これにより、ハードウエア的な調整作業が簡素化される。
検出対象のpH値に対応してポテンシャル井戸の底部ポテンシャルを変化させる第1のセンシング部及び第2のセンシング部を備え、
TG部を介して各センシング部の電荷を対応するFD部へ移送し、該FD部に蓄積された電荷に基づき検出対象のpHを検出する装置の制御方法であって、
検出対象が第1の状態のとき、第1のセンシング部の第1のポテンシャル井戸及び第2のセンシング部の第2のポテンシャル井戸からそれぞれ第1の量の電荷が対応するFDへ移送されるように、検出対象において少なくとも一方のセンシング部のポテンシャル井戸の容量を変化させる、及び/又は電荷移送時にTG部の電位を変化させる、pH検出装置の制御方法。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
10 センシング部、12 感応膜、13 参照電極、15 ポテンシャル井戸
20 電荷供給部、21 ID部、23 ICG部
30 電荷移動・蓄積部、31 TG部、33 FD部
40 電荷量検出部
50 電荷除去部、51 RG部、53 RD部
71 基板、72 p拡散領域、73 n領域、74,75,77 n+領域
Claims (2)
- 測定対象の化学・物理現象に対応してポテンシャル井戸の底部ポテンシャルを変化させるセンシング部を備え、
TG部を介して前記センシング部の電荷を対応するFD部へ移送し、該FD部に蓄積された電荷に基づき前記化学・物理現象を特定し、前記FD部の電荷をRD部より排出する化学・物理現象検出装置の制御方法であって、
前記ポテンシャル井戸へ、前記TG部を介して、前記FD部側から電荷を注入する際に、前記RD部へチャージされた電荷の最低ポテンシャルを、前記TGの電位より低くかつ前記ポテンシャル井戸が取りうる最低ポテンシャルより低くして、かつ前記TG部の電位を変化させずに、前記RD部からの電荷で前記ポテンシャル井戸を満たす化学・物理現象検出装置の制御方法。 - 測定対象の化学・物理現象に対応してポテンシャル井戸の底部ポテンシャルを変化させるセンシング部と、
該センシング部に連続して配置されるTG部及びFD部と、
前記FD部の電荷を排出するRD部と、を備え、
前記RD部へチャージされた電荷の最低ポテンシャルを、前記TGの電位より低くかつ前記ポテンシャル井戸が取りうる最低ポテンシャルより低くして、かつ前記TG部の電位を変化させずに、前記RD部からの電荷で前記ポテンシャル井戸を満たす化学・物理現象検出装置。
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