JP5770690B2 - 無菌乳およびその組成物を得る方法 - Google Patents

無菌乳およびその組成物を得る方法 Download PDF

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Description

本出願は、それらの開示を参照により本明細書に組み入れる2006年8月30日出願の米国特許仮出願第60/841371号、および2006年11月29日出願の米国特許仮出願第60/867748号の優先権を主張するものである。
本発明は、実質的な量の有益な生物学的因子が保持され、かつ、バイオバーデン(bioburden)が低減された全乳の殺菌方法に関する。本開示は、本開示の方法によって得られる乳製品をも含む。
ヒト乳は、早産児、重病および他の免疫が低下した新生児および子供の重要な治療剤である。しかし、これらの重病患者にとって、加工されたヒトドナー乳は、特にヒト乳サンプルの約4%に見出される遍在する食品毒素セレウス菌(B.cereus)からのリスク測度を有する。セレウス菌は、標準的な低温殺菌によっては殺すことができない胞子を形成するというその能力ゆえに最も厄介である。他の懸念される細菌には、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridiumu perfringens)、クリプトスポリジウム・パーバム(Cryptosporidium parvum)、シクロスポラ・カイエタネンシス(Cyclospora cayetanensis)、大腸菌(Escherichia coli)、リステリア・モノシトゲネス(Listeria monocytogenes )、サルモネラ菌(Salmonella)、およびスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)が含まれる。
さらに事態を複雑にするのは、一部のドナーはいくつかの(セレウス菌および他の病原菌を含まない)「清浄な」ロットを提供し、次いでロットが汚染されることである。認定されたドナーの乳がプールされる際に、セレウス菌などの病原菌に感染した乳は他の清浄なロットを汚染することになり、プール全体の破滅に至る。これらの細菌のコロニー形成単位の数に対する制限があり、それらの限度に達することは稀だが、それらの限度を超過している任意のプールは廃棄され、加工に使用することはできない。プールする前に生乳を試験することは役に立つが、ある種の製品を効率よく作るために行われるタンパク質の濃縮は、これらの病原菌を含む乳中のすべてのものを濃縮する。他の病原菌は低温殺菌で除去することができるが、セレウス病原菌は低温殺菌では除去できず、したがって、プールされた製品は、低温殺菌および充填する前にセレウス菌を含まないことを確証されることが不可欠である。さらに、製品の品質および安全性を最適化するためには、低温殺菌前に実質的に病原菌を含まない生乳のプールを提供することが望ましい。
本開示は、全乳を約100〜400ミクロンのフィルターを通して濾過することと、全乳を約58〜65℃で約20〜40分間熱処理することと、全乳をスキム部分および脂肪部分に分離することと、スキム部分を1つ以上のスキムフィルターを通して濾過し、透過液部分およびタンパク質に富むスキム部分(すなわち、残留部分(retentate))を得ることと、脂肪部分を約90〜120℃の温度に脂肪部分のバイオバーデンを低減させるのに十分な約1時間加熱することと、処理された脂肪部分の分画をタンパク質に富むスキム部分と混合してヒト乳組成物を得ることとを含む、ヒト乳組成物を得る方法を提供する。一態様においては、全乳はプールされたヒト乳を含む。別の態様において、本方法はさらに、全乳サンプルを濾過の前にHIV(ヒト免疫不全ウイルス)、HBV(B型肝炎ウイルス)、HCV(C型肝炎ウイルス)またはこれらのあらゆる組合せの存在について試験することを含む。さらなる一態様においては、約200ミクロンのフィルタースクリーンを通して全乳の濾過が実施される。全乳の熱処理は、約63℃で約30分間実施することができる。別の態様では、分離後のスキム部分は約0.69%の脂肪、約1.07%のタンパク質、および約7.14%のラクトースを含み、かつ分離後の脂肪部分は約46%の脂肪、約2%のタンパク質、および約10%のラクトースを含む。一部の態様においては、脂肪部分はさらに処理されて追加のスキムを得て、この追加のスキムはスキム部分と一緒にプールされる。本方法は、スキム部分の濾過の前にスキム部分をクリーム部分を用いて調節して、スキム部分のタンパク質含有量の約55%〜約65%のスキム部分中の脂肪濃度を得ることをさらに含むことができる。別の態様においては、タンパク質に富むスキム部分は、約8%のタンパク質を含む。本方法は、1つ以上のスキムフィルターを透過液を用いて洗浄してタンパク質洗浄液を得て、このタンパク質洗浄液をタンパク質に富むスキム部分に添加することをさらに含むことができる。全乳はヒト乳であることができる。本方法は、本方法から得られる乳製品を低温殺菌することをさらに含むことができる。
本開示は、本開示の方法から得られるヒト乳組成物も提供する。一態様においては、ヒト乳組成物は、約20〜70mg/mlのタンパク質成分、35〜85mg/mlの脂肪成分、約70〜115mg/mlの炭水化物成分を含み、かつ組成物は任意選択でヒトIgA(免疫グロブリンA)を含む。
本開示は、ドナーの自己生乳および同種異系乳組成物を含むヒト乳組成物を提供し、そのヒト乳組成物は少なくとも約2.1g/dLのヒト乳タンパク質を含む。一態様において、ヒト乳タンパク質は、凍結乾燥されたタンパク質サンプル由来ではない(すなわち、ヒトタンパク質は凍結乾燥されていないヒトタンパク質である)。別の態様においては、本組成物は約2.1g/dL〜約4.0dLのヒト乳タンパク質を含む。一態様においては、最終混合されたヒト乳組成物は、約2.2〜約4%のヒトタンパク質を含む。
本開示は、本開示のヒト乳組成物およびヒト乳組成物を生ヒト乳と混合して混合された配合物を得るための計量ボトル(graduated bottle)を提供し、その混合配合物は本開示のヒト乳組成物が入っていない生乳よりも約4cal/オンス多くを含む。
本開示はさらに、生ヒト乳の栄養含有量を測定することと、本開示のヒト乳組成物を生乳に添加して生乳の栄養価を約4カロリー/オンス増大させることとを含む、栄養乳組成物を得る方法を提供する。
本開示は、本開示のヒト乳組成物を生ヒト乳に添加することおよび混合ヒト乳を未熟乳児に投与することを含む、早産乳児に対して補助栄養分を提供する方法を提供する。
本開示の1つ以上の実施形態の詳細を添付の図面および以下の説明において示す。他の特徴、目的、および利点は記載および図面から、また特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
本開示の方法を示す図である。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「a」「and」および「the」は、文脈が別に指示しない限り複数の言及を含む。したがって、例えば「1つのサンプル」への言及はこのようなサンプルの複数を含み、「そのタンパク質」への言及は当業者に知られている1つ以上のタンパク質への言及を含む、などである。
別途に定義されない限り、本明細書で使用するすべての技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者に普通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または等価な方法および材料を本開示の方法および組成物の実施において使用することができるが、本明細書には例示となる方法、装置および材料が記載されている。
上記および本文を通じて論じた刊行物は、単に本出願の出願日付に先行する開示に対して提供されている。本明細書に記載されるものを、本発明者らがそのような開示に先行するものとすることが先行開示のためにできない、との承認をするものと解釈するべきではない。
ヒト乳は、その栄養的な組成および免疫学的な利点のために、長らく早産乳児および満期出産乳児のための理想的な食物として認められてきた。ヒト乳は、このような栄養的および免疫学的利点の最も望ましい供給源である。しかし、ドナー乳の栄養上の価値は変化し、かつドナー乳の細菌、ウイルスおよび他の汚染についての懸念がある。乳児、特に未熟乳児のためには、理想的な栄養的状況は生みの母の乳を含む。あるいは、またはさらに、母親は搾乳器を用いて乳を搾り出し、かつそれを後の使用のために貯蔵することがある。母乳での授乳についての禁忌は少ないが、一部の禁忌には、ガラクトース血症を有する乳児、および母親が活動性結核を有する、HTLV(ヒトT細胞白血病ウイルス)IまたはII陽性である、放射性同位元素、代謝拮抗剤、もしくは化学療法剤を投与されている、または薬物乱用の対象者である場合が含まれる。HIV感染に関しては、状況はより複雑であり、リスクと利益のバランスは専門的に評価されなければならない。
文献で十分に立証されている母乳での授乳の肯定的な効果にもかかわらず、米国における現在の病院内開始率は64パーセントにすぎず、産後6ヶ月での継続率は約29パーセントである。母乳授乳に対する代替法は、ヒトドナー乳、ヒト乳に対する補助食としての調乳(formula)、および調乳単独の使用である。搾られた乳の強化は、多くの極めて低い出生体重児に対して必要とされる。
Academy of Pediatrics Policy Statementは、バンク保存のヒト乳が、乳児の母親が自身の乳を与えることができないかまたは嫌がる(例えば社会的理由で)該乳児のための好適な代替食であり得ることを示唆している。1985年に設立されたHuman Milk Banking Association of North America(HMBANA)は、ドナーヒト乳バンクの設立および運営のための全国的な指針を発行した。これらの指針は、ヒト血液バンクにおける供給を守るために使用されているものと類似である。
早産乳児は、通常、これらの乳児のために特定の設計がなされた市販の乳児用調乳または自身の母親の乳を与えられる。これらの乳児の栄養の必要条件についてはまだ研究が途上にある。しかし、多くの研究では、非栄養補助早産乳児用乳およびバンク保存満期産児用乳によってはこれらの乳児の必要性を満たすためには不適切な量のいくつかの栄養分しか提供されないことの証拠資料が提供されてきた(Davies、D.P.、「早産乳児の初期成長のための搾乳された母乳の妥当性(Adequacy of expressed breast milk for early growth of preterm infants)」、ARCHIVES OF DISEASE IN CHILDHOOD、52巻、296〜301頁、1997年)。推定されている低出生体重乳児のエネルギー要求量は、約120Cal/kg/日であり、正確なエネルギー必要量は、活動、基礎エネルギー消費量、栄養分吸収の効率、病気および組織合成のためにエネルギーを利用する能力における相違のために変化する。エネルギー摂取量の約50%は基礎代謝の必要性、活動および体温の維持のために消費される。約12.5%は新しい組織を合成するために使用され、25%は貯蔵される。残る12.5%は排泄される。早産ヒト乳は、しばしば特定の栄養面で不足している。例えば、早産ヒト乳はしばしばカルシウム、リンおよびタンパク質が不足している。したがって、早産乳児に早産ヒト乳を与える場合は、早産乳児の栄養必要性をよりよく満たすためにヒト乳を強化することが推奨されてきた。
Similac Natural Care(登録商標)およびEnfamil(登録商標)Human Milk Fortifierは、市販されている乳強化剤である。これらの強化剤は、それらの形態、成分源およびエネルギー、ならびに栄養組成において異なる。さらに、これらの製品は本来人工である。新生児集中治療室(NICU)においては、液体および粉末の両方のヒト乳強化剤に対する必要性がある。理想的には、最良の強化剤はヒト由来のものである。現在は、入手可能なヒト由来の乳強化剤はない。
女性の乳腺からの流体の分泌物は多くの成分を含み、本明細書において以後簡潔に乳と呼ぶ。搾られた乳は通常無菌ではなく、たとえ無菌の条件下で得たとしても細菌を含有している。しかし、乳は環境(空気、搾乳器具、手もしくは他の非無菌の物体、乳タンクまたは容器との接触)からの微生物によって極めて迅速に汚染され、セレウス菌などの特定の病原菌は低温殺菌された乳中でさえ迅速に増殖する。
炭水化物、タンパク質、脂肪、ミネラルおよびビタミンから成る組成ゆえに、乳は事実上すべての微生物にとって理想的な培地であり、乳は短時間内に腐敗する。乳を冷蔵することは細菌の増殖をわずかに遅らせ、その品質保持を数日間延長する。
乳を酸っぱくする乳酸菌などの細菌に加えて、ヒトの病原菌は特に大きな問題を構成する。これらは、特に無低温殺菌乳中に存在し得るサルモネラ菌、カンピロバクター菌、リステリア菌およびブドウ球菌、または耐熱性胞子ゆえに62〜74℃での低温殺菌を生き延びることができるクロストリジウム属または桿菌類の様々な病原菌株を含む。
通常乳はUHT処理と呼ばれるもの、すなわち、120℃〜145℃で数秒間の熱処理によって殺菌される。「煮沸された味」に加え、極度の加熱は、タンパク質の熱変性などにより、生物学的活性の喪失をもたらす。このようなタンパク質は、例えばイムノグロブリンおよび他の免疫刺激物質、同様に他の重要なタンパク質、例えばラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、成長因子などを含む乳に存在する免疫学的に活性な価値のある成分を含む。例えば、生物学的に活性なコロストラルミルク(colostral milk)は、とりわけ胃腸障害のために有用であることが示されてきた。
さらに、熱活性化によって細菌から毒素が放出され得る。例えば、グラム陰性細菌内毒素は低温殺菌によっては破壊されない。UHT殺菌では、グラム陰性細菌を殺すことにより内毒素が6〜7だけ増え得る(Motter、J.、Neth. Milk Dairy Journal、41巻、137〜145頁、1987年)。
現在の全乳を処理する方法は、生物学的に有益な活性タンパク質および他の分子の低減をもたらす。例えば、凍結乾燥、高熱処理などは、例えば、分解および変性によって生物学的に活性なタンパク質、脂質、その他の作用物質を低減させる。加えて、低温殺菌において低減した加熱が使用される場合、その結果は、バイオバーデンが増加し、したがって消費者のリスクが増加した乳製品を提供する。現在使用されているある種の濾過工程は、タンパク質含有量を低減させ、かつラクトースおよび塩をろ別するために使用される。
本開示は、成長を助けるために追加の栄養分を必要とする未熟乳児のためのヒト乳強化剤を提供する。本開示は、本開示の方法によって得られるヒト乳由来の強化剤を含む。一部の態様においては、ヒト乳強化剤/ヒト乳由来の補助製品をヒト乳に添加することができ、それによってタンパク質、脂肪、ビタミンおよびミネラルのレベルを補充する。本開示はさらに、成長のために追加の栄養分を必要とする未熟乳児に補助栄養価を提供するための方法を提供する。
「未熟」、「早産」および「低出生体重(LBW)」乳児という用語は、互換的に使用され、妊娠期間37週間未満で生まれたおよび/または出生体重2500g未満の乳児のことを言うものである。未熟乳児の必要性は特に緊急である。極めて低い出生体重(<1500g)の乳児については、1歳以前の死亡率は25%である。低出生体重(<2500g)の乳児については、1年間の死亡率は2パーセントであり、やはり正常出生体重(>2500g)の乳児についての0.25%という数字よりもかなり高い。
特に懸念されるのは新生児における病因不明の重篤な胃腸疾患、壊死性腸炎(NEC)である。NECは、腸の部分の粘膜のまたは経粘膜的壊死によって特徴づけられる。予定日より前に生まれる、極めて小さな、病気の乳児が最もNECになりやすい。高リスク群未熟乳児の生存率が向上した一部理由ために、NECの発症は増加しつつある。
一態様において、本開示は、ドナーまたはドナーの群からのヒト乳を得る方法および加工する方法を提供する。本開示の方法は、強化された調製物中の栄養価を維持しつつバイオバーデンを低減させる方法を含む。一般に、本方法は、好適なドナーを確認し認定する方法を含む。ドナーは、通常、かかりつけの医師によってドナーとして推奨される。理由は他にもあるがとりわけ、このことはドナーが慢性的に病気ではないこと保障するのに役に立つ。乳の収集および配給を認定しモニターする方法およびシステムは、米国特許出願第11/526127号に記載されている(この特許出願を参照により本明細書に組み入れる)。
インタビューによるスクリーニング方法および生物学的サンプル処理を行う。生物学的サンプルは、ウイルス(例えばHIV 1および2、HTLV IおよびII、HBV、およびHCV)および梅毒、ならびに他の病原菌(例えばセレウス菌)についてスクリーニングし、試験が陽性の献乳は廃棄される。
スクリーニングで陽性と判明したサンプルはいずれも、そのサンプルの処理を停止し、当該ドナーからの以後の献乳を停止する。さらに取った別の手段は、ドナーサンプルまたは乳のプールを薬物の乱用について試験することを含む。
ドナーは定期的に再認定されてもよい。例えば、ドナーは、4ヶ月毎に当初の認定において使用されたものと同じ手順によってスクリーニングを受けることを求められてもよい。再認定されないまたは認定されないドナーは、適切に再認定されるときまで保留される。一部の事例では、ドナーは、再認定スクリーニングの結果によって正当化される場合、永久に保留される。後者の状況の場合は、そのドナーによって提供されたすべての残っている乳は、在庫から取り除かれ完全に破壊される。
認定されたドナーは指定された施設(例えば、乳バンクの事務所)で献乳するかまたは通常家庭で搾乳する。一態様においては、認定されたドナーは、乳バンクによってまたは乳加工業者から直接に(乳バンクと加工業者は同じまたは異なる事業体であり得る)支給品を提供され家庭に持ち帰る。支給品は、通常、容器上のコンピューターで読み取り可能なコード(例えば、バーコードラベル)を含み、さらに搾乳器を含み得る。次いでドナーは家庭で乳を絞り、好ましくは−20℃の温度で、冷凍する。一態様では、最後にドナー乳センターを訪れた10〜14日後に血液試験の結果が満足なものであるという条件でドナーの乳は受け入れられ、このような結果を満足するなら、ドナーは乳をセンターに届けるかまたは家庭から収集してもらうという予約をする。乳および容器はそれらの状態を調べ、バーコードをデータベースと照合する。満足なものであれば、そのユニットをドナー乳センターまたは加工センターの冷凍庫(−20℃)に、以後の試験および加工ができるときまで入れておく。
別の態様においては、乳は家庭でドナーによって搾乳され、乳貯蔵施設では集められない場合、本開示の方法は、乳が本当に登録されているドナーからのものであることを保障する指標のためにそれぞれのドナーの乳のサンプリングをすることを含む。このような対象確認技法は当業において知られている(例えば、参照により本明細書に組み入れる国際特許出願整理番号第PCT/US2006/36827号を参照されたい)。乳は貯蔵して(例えば−20℃で)試験結果を受け取るまで隔離しておけばよい。上記の方法を通じて、どの不適合乳も廃棄される。献血センターの場合と同様に、ドナーについてのすべての機密情報は、血液試験データを含めて、厳重に管理される。
集められ、承認された(例えば、リスク要因試験に合格した)乳は、無菌濾過および/または低温殺菌(またはバイオバーデンを低減させる他の方法)のどちらかあるいは組合せによって処理される。一態様においては、乳は大きなミクロンのフィルターまたはスクリーン(例えば、約100〜400ミクロン、通常は約200ミクロン)を通して濾過により処理される。濾過された全乳を分離の準備において熱処理(100;図1参照)する。全乳を約63℃(例えば、約50〜80℃)で約30分間(例えば、約20〜60分間)加熱する。一態様では、本方法は、濾過前に、全乳温度を70℃超で許容される時間の間、高くする(HTST)。例えば、特定の製造ロットのために指定された乳容器の内容物を65℃で解凍し、断熱されたプロセスタンク中にプールする。タンクは連続温度監視装置および循環エチレングリコール冷却剤を収容しているジャケットを組み入れている。グリコールをプール工程のために2〜8℃に冷却し、重要なタンパク質成分を損なう可能性のあるボルテックスを発生させたり乳を泡立たせたりすることなくタンクミキサーを撹拌する。プールした乳のサンプルをバイオバーデンについて分析することができる。
さらに別の態様においては、プロセスタンク内の全乳配合物をプラチナ硬化シラスティック管を介して高温・短時間(HTST)低温殺菌器に接続する。低温殺菌後、乳を第2のプロセスタンク中に集めて冷却する。他の低温殺菌方法を使用することができ(例えば、バット(vat)低温殺菌)、このような技法は当業において知られている。例えば、バット低温殺菌では、タンク内の乳を最低で62.5℃に加熱し、その温度に約30分間保つ。乳の上の空気は乳温度の5℃上まで蒸気加熱する。別の態様においては、HTSTおよびバット低温殺菌の両方を実施する。
さらに別の態様においては(図1に図示する通り)、ヒト全乳100は、本明細書で記載する通りに加熱される110。加熱された全乳は、次いでスキムとクリーム(すなわち、脂肪)に分離される120。乳は、遠心分離などの従来の方法によってスキムミルクに脱脂される。一態様においては、脂肪とスキムの分離は二価イオン(例えば、カルシウムなど)の除去を含まない。一態様においては、プールした乳は、遠心分離機中にポンプ輸送されて脂肪が乳の残部から分離され、スキムミルクは第2のプロセスタンク中に移されて、そこで任意選択による濾過工程まで2〜8℃に維持する。遠心分離後、クリームは小さなステンレス鋼容器中へ流れる。一態様においては、次いでクリーを低温殺菌した後、カロリー、タンパク質および脂肪の含有量の定量化する。別の態様においては、分離が完了した後、クリームの容積、タンパク質および脂肪の含有量を決定し、クリームの一部はスキムミルクに戻して加えられて、濾過を助けるためまたは作られる特定の製品のためのカロリー、タンパク質および脂肪の含有量を達成する。低温殺菌および/または濾過の前または後において、乳にミネラルを添加することができる。
スキムタンパク質130は、濾過されて140残留物150(例えば、タンパク質富化スキム部分)中の生物学的因子の濃度が増加される。次いで富化されたスキムのカロリー含有量が決定され、必要な場合には前に得られたクリーム170の添加によって調節される160。一態様においては、第1通過の濾過から得られた透過液180を収集し、再濾過して190、第1の濾過140の間に透過液へ通過し得る追加の生物学的因子を含む第2の残留物200を得る。この第2の残留物200は、第1の残留物150に添加して生物学的因子の濃度(例えば、タンパク質濃度)を増加させることができる。第1分離120からのクリーム170をさらに処理し220、追加のスキム230を得ることができる。例えば、クリーム170をさらに分離して220、バター240およびスキム230を得ることができる。追加のスキム230は、スキムタンパク質130に添加することができる。
「全乳」は、脂肪を除去されていない乳を意味する。「スキム」または「スキムミルク」は、脂肪含有量の全部または一部を除いた全乳を意味する。したがって、「スキムミルク」は、実質的に全部には満たない脂肪含有量の除去がなされた「低脂肪乳」などの変形形態を含むことはよく理解されるであろう。「クリーム」または「脂肪部分」によっては、スキムミルクから分離された全乳の部分が意味されている。通常、クリームは、長鎖、中鎖および短鎖脂肪酸を、同一の調製物から得られたスキムミルクの濃度よりも高い濃度で含む。
一実施形態によれば、スキムミルクを濾過するために使用される限外濾過膜は、40kDaを超える分子量を有する任意の物質の通過を防ぐサイズである。このような排除される物質は、限定されないが、乳タンパク質および乳脂肪を含む。あるいは、1〜40kDaおよびこの範囲内のいずれかの範囲を超える分子量を有する任意の物質の透過を防ぐ限外濾過膜を使用することもできる。通常は、0.45μm以下を含む(例えば、0.2μm)フィルターを使用することができる。通常は、0.2μmのフィルターが使用される。一部の実施形態では、段階的濾過を使用することができる(例えば、0.45μmでの第1の濾過、0.3μmでの第2の濾過、0.2μmでの第3の濾過、またはこれらの任意の組合せ)。脂肪のスキムからの分離により、濾過が容易となる。殺菌は、適切なデプスフィルターまたは膜フィルターを用いて、濾過または接線濾過などの知られている方法によって実施することができる。
以下の乳タンパク質は、限外濾過膜によって補捉することができる(分子量を括弧内に記す):ラクトアルブミン(約14kDa)、カゼイン(約23kDa)、ラクトグロブリン(約37kDa)、アルブミン(約65kDa)、およびイムノグロブリン(>100kDa)。
3.5kDa以下の遮断分子量を有する限外濾過膜が、例えば、Advanced Membrane Technology、San Diego、Calif.およびDow Denkark、Naskov、Denmarkからそれぞれ入手可能である。セラミック材料で作られた限外濾過膜も使用することができる。セラミックフィルターは、合成フィルターより優れた利点を有する。セラミックフィルターは生蒸気で殺菌することができる。
濾過を促進するため、通常、限外濾過膜に圧力勾配が与えられる。通常、圧力勾配は、膜を通過する所望の濾過フラックスを維持するために調節される。一態様においては、濾過の開始前に、限外濾過膜を少量の乳でプライミングし、透過液を廃棄する。この様式でのフィルターのプライミングは、濾過効率のために有利であると考えられている。
低温殺菌後、乳製品は無菌的に処理される。約2〜8℃に冷却後、低温殺菌された乳は、栄養含有量、タンパク質含有量、特定の因子について試験され、所望のレベルに調節される。一態様においては、富化されたスキム/残留物は、栄養含有量、タンパク質含有量、特定の因子について測定され、例えば低温殺菌されたクリームを戻し加えて所望のカロリー含有量を得ることによって所望のレベルに調節される。製品は、シリンジまたはボトル中に分配するために、プロセスタンクから充填装置にポンプで送られる。最終製品は、パーケージおよび配給の前にウイルスおよび細菌汚染について試験される。
本開示の方法および組成物は、バイオバーデンを低減させつつ重要なタンパク質およびビタミンの望ましい活性を維持する。乳の最終製品への加工の様々な工程において様々な生物がその存在について試験される。汚染を判定するための確認試験において使用される生物としては、細菌:大腸菌(E. coli)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、およびストレプトコッカス・アガラクチエ(S. agalactiae)、およびウイルス:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)および仮性狂犬病ウイルス(PSR)が挙げられ、この後者はCMVのマーカーとして使用される。HIVおよびHAVは、ヒト乳の可能性ある汚染物質であることが知られており、したがって、関連ウイルスとして選択した。C型肝炎ウイルス(HCV)もヒト乳の可能性ある汚染物質であることが知られている。本開示の方法を用いて、次のものが得られた:
Figure 0005770690
ウイルスの対数(log)減少値は、本開示の方法によって達成され得る最大の減少を表すものではない。特に興味深いのは、乳業界で伝統的に使用されている低温殺菌条件(62.5±1.0℃、15分間)に影響されない、小さく、非脂質で包まれた、強靭なウイルスであるA型肝炎ウイルス(HAV)の殺滅である。さらに、黄色ブドウ球菌は熱処理に対してかなり耐性であるが、この生物は本開示の方法で約15の対数減少を示した。
本開示は、強化剤組成物(fortifier composition)も提供する。強化剤は、本明細書に記載されている収集および濾過および/または低温殺菌の方法を実施することによって得られる。本開示の強化剤は、重要な乳タンパク質および生物学的因子を含む。
ヒト乳は、約100,000の異なる生物学的因子−タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、および微量ミネラル−を含む。重要な成分は、モノマーの免疫グロブリンA(IgA)および二量体の分泌型IgA(s[IgA])、リゾチーム、およびラクトフェリンを含む。したがって、低温殺菌方法は、乳製品の安全性を確実にしつつ、理想的には熱不安定性を有する可能性のあるこれらの必須の成分を適切な量保たなければならない。
免疫グロブリンA(IgA)および分泌型IgA(s[IgA])は、ELISAサンドイッチ法を用いて乳サンプル中で定量化された。Prolacta HTST法を用いた低温殺菌後、未処理のヒト乳サンプルの対応する値と比較して、平均で、IgA濃度は約27%(例えば、約7%〜約47%に)低下し、分泌型IgAレベルは17%(例えば、約7%〜約27%)低下した。
リゾチーム活性は、ミクロコッカス・デイクチカス懸濁液を基質として用いてマイクロタイターアッセイによって決定した。低温殺菌後のヒト乳中のリゾチーム活性は約22,000IU/mLであり、生ヒト乳中の当初の活性(39,000IU/mL)の57%(例えば、約47%〜約67%以上)であった。
ラクトフェリンの濃度は、ELISA技法によって決定した。本開示の方法を用いた低温殺菌後のヒト乳のラクトフェリン含有量は、0.033g/100mLであり、生ヒト乳中の当初の濃度(0.24g/100mL)の約14%(例えば、約4〜24%)であった。
ビタミンの分析を有効性が実証されたHPLC手順によって実施した。ビタミンA、ビタミンC,およびα−、γ−、およびδ−トコフェロールのレベルは、低温殺菌後も不変のままであった。ヒト乳のビタミンB6含有量は、約7.8μg/100mLまでわずかに減少し、当初の濃度8.8μg/100mLの約89%であった。これらの結果は表2に示す。
Figure 0005770690
本開示の乳組成物および強化剤のタンパク質成分により、タンパク質源が提供される。タンパク質は、成長、酵素およびホルモンの合成、ならびに皮膚からおよび尿や糞便中に失われるタンパク質の補充に必要とされる。これらの代謝過程が、給食におけるタンパク質の総量および特定のアミノ酸の相対的な量の両方に対する必要性を決定する。乳児の給食におけるタンパク質の量および種類の妥当性は、成長、窒素の吸収および保持、血漿アミノ酸、ある種の血液分析物質および代謝応答を測定することによって決定される。本開示の特有の利点は、組成物中のヒトIgAタンパク質、リゾチーム、およびラクトフェリンの存在である。
必要ではないが、本開示のヒト乳組成物は、非天然に存在するかまたは異種/異質の成分で改変または補充することができることは認識されるであろう。例えば、タンパク質含有量は、ヒトの消費に好適である窒素源を用いて調節または改変することができる。そのようなタンパク質は、当業者にはよく知られており、このような組成物を調製する際には簡単に選択することができる。添加することができる好適なタンパク質成分の例は、カゼイン、乳清、コンデンススキムミルク、無脂肪乳、大豆、豆、米、コーン、加水分解されたタンパク質、遊離アミノ酸、タンパク質を含むコロイド状懸濁物中にカルシウムを含有するタンパク質源およびこれらの混合物を含む。
本開示の乳組成物の他の成分は、脂肪源を含む。脂肪は一般に、その高カロリー密度だけではなく溶液中での低浸透圧活性という理由でも、低出生体重乳児(LBW)のためのエネルギー源である。ここでも、必ずしも必要ではないが、本開示の乳組成物は、脂肪成分で補充することができる。このような異種/異質の脂肪成分は、高オレインのベニバナ油、大豆油、分画されたココナツ油(中鎖トリグリセリド、MCT油)、高オレインひまわり油、コーン油、キャノーラ油、ココナツ、パームおよびパーム核油、魚油、綿実油ならびにドコサヘキサエン酸(DHA)およびアラキドン酸などの特定の脂肪酸を含む。
ドコサヘキサエン酸は、オメガ3脂肪酸である。DHAは、ヒト乳中に最も豊富にある炭素20個のオメガ3多価不飽和脂肪酸(PUFA)である。しかし、ヒト乳のDHA含有量は、母親の食事に大きく依存して変化する。母親がDHAの多い魚を頻繁に食べると、その乳はより高いDHAレベルを含有し、魚の摂取がより少ない母親は、より低いDHAレベルを乳中に有することになる。したがって、早産乳児が十分な量のDHAを摂ることを確実にするには、ヒト乳にはDHAの補充を必要とするであろう。DHAの補充は、通常、アラキドン酸の補充を伴う。Kyleらの米国特許第5492938号は、DHAを渦鞭毛藻から得る方法ならびにその薬剤組成物および補助食品中での使用を記載している。
炭水化物は、本開示の組成物の別の成分である。炭水化物は、成長を助け、かつ、栄養不良が急速に進む乳児となる組織異化のリスクを低減させる簡単に利用可能なエネルギー源を提供する。ヒト乳および最も標準的な乳に基づく乳児用調乳においては、重要な炭水化物はラクトースである。低出生体重(LBW)乳児は、胎児の腸におけるラクターゼ活性は妊娠期間の後期(36〜40週)までは完全には発達していないので、ラクトースを十分に消化することができないことがある。他方、スクラーゼ活性は、妊娠32週までに最大であり、コーンシロップ固形分(グルコースポリマー)を消化するグルコアミラーゼ活性は、第三期中にラクターゼ活性の2倍の早さで増加する。本開示のヒト乳組成物は炭水化物で補充することができる。ヒト乳組成物を補充するために使用することができる炭水化物の例は、これらだけには限定されないが、加水分解されたコーンスターチ、マルトデキストリン、グルコースポリマー、スクロース、コーンシロップ、コーンシロップ固形分、米シロップ、グルコース、フルクトース、ラクトース、高フルクトースコーンシロップおよびフルクトオリゴサッカリド(FOS)などの消化しにくいオリゴサッカリドを含む。
ビタミンおよびミネラルは、乳児の適切な栄養摂取および発育に重要である。未熟乳児またはLBW乳児は、成長のためおよび酸−塩基バランスのためにナトリウム、カリウムおよび塩素などのミネラルを必要とする。これらの電解質の十分な摂取は、尿中および糞便中ならびに皮膚からの損失の補充のためにも必要である。カルシウム、リンおよびマグネシウムは適切な骨の石灰化のために必要である。骨が成長するためには、これらのミネラルの適切な量が給食中に存在しなければならない。
微量ミネラルは、細胞分裂、免疫機能および成長に関連している。したがって、乳児の成長および発達のためには十分な量の微量ミネラルの供給が必要である。重要な微量ミネラルは、銅、マグネシウムおよび鉄(これはヘモグロビン、ミオグロビン、および鉄含有酵素の合成のために重要である)を含む。亜鉛は、成長のために、多数の酵素の活性のために、またDNA、RNAおよびタンパク質の合成のために必要である。銅は、いくつかの重要な酵素の活性のために必要である。マンガンは、骨および軟骨の発育のために必要であり、また多糖類および糖タンパク質の合成において重要である。したがって、本開示のヒト乳および強化剤組成物は、ビタミンおよびミネラルで補充されることができる。
ビタミンAは、成長、細胞分化、視覚および免疫システムのために必須の脂溶性ビタミンである。ビタミンDは、カルシウムおよびより低い程度でリンの吸収のために、また骨の発育のために重要である。ビタミンE(トコフェロール)は、細胞中の多価不飽和脂肪酸の過酸化を防ぎ、したがって組織の損傷を防ぐ。葉酸は、アミノ酸およびヌクレオチドの代謝において重要である。血清葉酸塩濃度は、葉酸摂取が低いLBW乳児では2週齢以後正常未満に低下することが示されてきた。加えて、いくつかのB群ビタミンは、早産乳中には低い濃度で存在する。
上記の通り、ヒト乳のビタミンおよびミネラル濃度の変動性および早産乳児の必要性の増加により、発育中の乳児が適切な量のビタミンおよびミネラルを摂取することを保証するための最小限の強化が求められる。本開示のヒト乳組成物および強化剤における補助ビタミンおよびミネラルの例は、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビオチン、葉酸、パントテン酸、ナイアシン、m−イノシトール、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、マンガン、銅、ナトリウム、カリウム、塩素、鉄、およびセレンを含む。さらなる栄養分クロム、モリブデン、ヨウ素、タウリン、カルニチンおよびコリンも補充を必要とすることがある。
67Kcal/dL(1オンス当たり20カロリー)の全乳製品、80Kcal/dL(1オンス当たり24カロリー)の全乳製品、およびヒト乳強化剤を含む組成物が提供される。該乳強化剤組成物は、約20〜70mg/mlのタンパク質、約35〜85mg/mlの脂肪、約70〜115mg/mlの炭水化物を含み、かつヒトIgAを含有する。様々なカロリーの組成物を本開示の方法を用いて得ることができる。例となる組成物は、24カロリーの乳組成物および強化剤乳組成物である。
24カロリー全乳組成物は、以下の成分を含む:ヒト乳、グリセロリン酸カルシウム、クエン酸カリウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、および硫酸マンガン。24カロリー組成物は、摂取単位(unit serving)(10ml)当たりに以下の特徴を有する(値は近似値であり、当業界において認識される通り、試験の方法、使用機器などによって変動することに留意されたい):
カロリー 8.5
脂肪合計 0.44g
ナトリウム 2.3mg
カリウム 6.3mg
合計 炭水化物 0.79g
糖類 0.64g
タンパク質 0.31g
ビタミンA 21.1IU
ビタミンC <0.10mg
カルシウム 8.0mg
鉄 13.3μg
リン 3.8mg
マグネシウム 0.74mg
塩素 5.0mg
亜鉛 0.12μg
銅 17.3μg
マンガン <6.2μg
オスモル濃度 −322mOsm/Kg H
本強化剤組成物は、以下の成分を含む:ヒト乳、炭酸カルシウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸マンガン。本強化組成物は、摂取単位(2ml)当たりに以下の特徴を有する(値は近似値であり、当業において認識される通り、試験の方法、使用機器などによって変動することに留意されたい):
カロリー 2.7
脂肪合計 0.15g
ナトリウム 1.2mg
カリウム 2.3mg
合計 炭水化物 0.21g
糖類 0.15g
タンパク質 0.10g
ビタミンA 5.5IU
ビタミンC <0.02mg
カルシウム 8.9mg
鉄 0.01mg
リン 3.6mg
マグネシウム 0.38mg
塩素 0.4mg
亜鉛 0.05mg
銅 2.7μg
マンガン <1.3μg
オスモル濃度 −343mOsm/Kg HO(生乳との混合時)
本開示のヒト乳組成物および強化剤のオスモル濃度(osmolality)は、組成物の吸着、吸収および消化にとって重要である。不適切なオスモル濃度は、乳児の腹部膨張および嘔吐をもたらすことがある。本開示のヒト乳組成物および(生乳と混合された)強化剤のオスモル濃度は、通常、約400mOsm/kg HO未満である。通常は、オスモル濃度は約310mOsm/kg水〜約380mOsm/kg水である。本開示の組成物が炭水化物または脂肪成分で補充される場合、組成物のオスモル濃度を調節しなければならない。例えば、成分(例えば、炭水化物または脂肪)の種類は、強化ヒト乳のオスモル濃度に影響する。炭水化物は、加水分解されているほど浸透圧活性が高い。加えて、部分的に加水分解された炭水化物源は、ヒト乳と再構成された場合にはヒト乳アミラーゼによるさらなる加水分解によって、オスモル濃度を増加させることがある。当業者は、再構成された強化剤/ヒト乳組成物の所望のオスモル濃度をもたらす炭水化物または炭水化物の組合せを直ちに選択することができる。
本強化剤は通常、ヒト乳と混合されて4cal/オンスを加える。通常、これは生乳:強化剤の80:20混合物(例えば、生乳8mlおよび強化剤2ml)であり、以下の表では「Plus 4」と表示されている。他の典型的な混合物は、70:30(「Plus 6」)、60:40(「Plus 8」)および50:50(「Plus 10」)を含むが、生乳量と強化剤との任意かつすべての相対的な比率または量が本発明により企図されている。表3は、本開示のヒト乳組成物と組み合わせた生ヒト乳の混合物の例を提示している。表4は、生ヒト乳および本開示の乳組成物の混合物についての例示としてのカロリー計算を示している。
Figure 0005770690
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強化剤は典型的には、10mlシリンジまたは20mlボトル中に入れられる。ボトルは、シリンジと共に含まれ得る。シリンジキット(例えば、シリンジおよびボトル)または20mlボトルのどちらの場合も、ボトルは適切な希釈の助けとするために計量目印を含むことができる。例えば、生母乳を生乳の栄養価を決定するために試験することができる。通常の生乳は平均で1.1%のタンパク質、4.2%の脂肪、7.0%のラクトース(1つの糖)を含み、100グラム当たりに72kcalのエネルギーを供給する。生母乳は、栄養価につき試験することができ、次いで生母乳に4カロリー/オンスを加えるために本開示の強化剤組成物を用いて調節することができる。
「単位投与(unit dose)」は、乳児用の乳の調製において使用されるある量の強化剤を含有する強化剤の個々のパッケージのことを言う。未熟乳児のために調製される強化されたヒト乳の量は、通常、1日当たり25ml〜150mlの範囲である。したがって、単一の単位投与は、8〜40mlの生乳調製物を強化するための適切量の強化剤である。より大きい容積に対してはさらなる単位投与量を加えることができる。したがって、単位投与は、生乳8ml当たりに2mlの強化剤または生乳40ml当たりに10mlの強化剤である。一態様においては、単位投与は、10mlのシリンジを含み、複数の乳調製物を調製するのに十分な2mlの計量目印を含んでいてもよい。
通常は、調製されるヒト乳の量は、乳児に24時間の栄養供給を提供するために必要な乳の量に基づいている。例えば、1500gの乳児には、1日当たりに150mlの乳を与える。凍結乳が使用される場合は、凍結された乳を完全に解凍されるまで温水浴中に入れておく。強化剤における混合においては、特別な注意を払う。哺乳容器の側面への乳脂肪の付着を増大し、かつ脂肪(エネルギー)の著しい損失をもたらし得る乳脂肪球の破壊を避けるためには穏やかな混合が必要である。規定量の強化された乳をシリンジに取り入れ、識別ラベルを貼る。乳の調製が完了したら、看護スタッフが取りやすいように、ラベルを貼ってある分取された哺乳食を育児室に届けて冷凍庫に入れる。通常、凍結された強化乳は、哺乳の前に温める。例えば強化乳を約35〜45℃の範囲内に設定された実験用乾熱インキュベーター中で15分間温める。これにより、強化乳の温度が室温になる。強化乳は、食塊(bolus)での供給として、あるいは連続的な供給のためにシリンジ注入ポンプを通して、乳児に投与することができる。シリンジ注入ポンプを使用する場合は、シリンジの先端を直立させて脂肪の連続的な注入を可能にし、シリンジを直接哺乳管に取り付けて脂肪および免疫上の成分が付着する可能性のある表面積を少なくする。
本開示は、異種ではないヒト乳および強化剤組成物を提供し、免疫発達および乳児成長を促進させることが実証されているヒトタンパク質を提供する。さらに、本開示のヒト乳および強化剤組成物は、ヒト乳のエネルギー、タンパク質、カルシウム、リン、ナトリウムおよび他の微量栄養分の供給源としてのヒト乳の変動性に対処する一方で、良好な寛容性を示し、ヒト乳の健康上の有益性を最大化する。
通常、大容量のパーケージ材料よりも個々の単位投与サイズのパーケージが使用される。1日の哺乳の過程にわたって未熟乳児に投与される乳が小容量であるため、小容量の強化されたヒト乳が調製される。繰り返し開けられ、分取され、かつ貯蔵された大容量の容器の無菌性は、病院の環境においては常に懸念される事項である。個々の単位投与は、少量の強化剤のヒト乳への添加を、残りの強化剤の汚染の恐れなく、可能にする。
多くの種類の容器が簡単に入手可能であり、かつ当業者に知られている。本開示の方法および組成物において有用な種類の容器の例は、ボトル、シリンジおよび缶を含む(例えば、金属、ガラスまたはプラスチック)。
上記で述べた通り、本開示は、本開示の強化剤をヒト乳に添加して生ヒト乳を所望の栄養含有量に調節し、かつ、強化されたヒト乳を未熟乳児に投与することによる、早産乳児に栄養を提供する方法にも関する。本開示はさらに、強化されたヒト乳を未熟乳児に投与することによって未熟乳児の成長を促進する方法を提供する。
ヒトまたはウシから得た乳は、本開示の方法を用いて加工することができる。一態様においては、乳は初乳を含む。通常、初乳は適宜、無菌水中で希釈する(例えば水で1:1に)。
本開示の方法によって得られた乳は、実質的に生乳と同一であるが、低減された量のバイオバーデンを含むかまたはセレウス菌などの病原菌は含まない。得られる無菌乳製品は、生物活性を含む(例えば、タンパク質および抗体組成物を含む)が生乳に見出される細菌、真菌、胞子は含まない。
得られるスキムミルク部分は、細菌、真菌および胞子を含まない。濾過されたスキムは、次いで脂肪部分と別々にまたは濾過後に再度合わせて貯蔵される。スキムが別に貯蔵される場合は、後でそれを消費前に脂肪部分と再度合わせることができる。あるいは、スキム部分を消費することができる。スキムおよび/または再度合わせた乳は、好ましくは室温未満で、より好ましくは4℃で、長期間貯蔵することができる。
以下の実施例はさらに例示することを意図されているが、本開示を限定することは意図されていない。
加工はクラス100,000のクリーンルーム内で行い、充填はクラス10,000のクリーンルーム内で行う。ドナー乳をプールし、リスク因子の決定(例えば、HIV、HBV、HCVの汚染および感染についてPCRを行う)のためにサンプルを採る。ドナー乳を200ミクロンのスクリーンに通して濾過し、塊および大粒子状物質を除去する。
濾過された全乳を、次いで63℃で30分間熱処理するかまたは73℃で16秒間処理する(例えば、HTST)。この熱処理は、バイオバーデンを低減させると同時に乳を分離のために準備する。濾過および加熱された乳をスキムと脂肪(クリーム)に分離する。分離後のスキムおよびクリームの分析は、(a)スキム−脂肪約0.69%、タンパク質約1.07%、ラクトース約7.14%;(b)クリーム−脂肪約46%、タンパク質約2%、ラクトース約10%を含む。
クリームの約50%を取り出してもう一度分離器を通す。この工程はより多くのスキムミルクを生じ、それがタンパク質の収量を増大させる。分離器のスキムではない側から出てくる生成物はバターであり、これを保持して他の工程のために使用することができる。
クリームまたは脂肪部分をスキムに添加してより良好な限外濾過のためにスキムの含有量を調節する。例えば、スキム中の脂肪は、タンパク質含有量の約55%〜約65%であることが必要である。限外濾過工程の1つの目的は、過剰の水を除去し、タンパク質を濃縮することである。限外濾過において使用するフィルターは約40kDaの遮断分子量を有する。水は透過液と呼ばれる。限外濾過後に集められたスキムを分析すると、タンパク質が約8%である。濾過または後洗浄は、限外濾過中にフィルターに捕捉されたすべてのタンパク質を回収するために、透過液を用いて実施することができる。後洗浄液を濃縮されたスキムミルクに添加して、約7.2%のタンパク質含有量を得る。
後洗浄液を添加した後、クリームを濃縮スキムミルクに添加し、カロリーを正しい目標値まで上げる。この時点で、製品は、脂肪約9.2%、タンパク質約6.3%、およびラクトース約10.5%を有する。最終バルク物のサンプルをミネラル分析に送る。これはバルク物中のミネラルを測定するためである。最終バルク物を−20℃以下で凍結させる。実験室からミネラルの結果が戻ってきたら、最終バルク物を解凍する。添加される任意の追加ミネラルは、該ミネラルが在る場合には、この最終バルク物の出発ミネラル含有量に基づき計算する。最終目標は以下の通りである:(a)低カロリー含有量バルク製品(例えば、Prolact(商標)+4、Plus 4としても知られている、またはProlact(商標)+6、Plus 6としても知られている)については、カルシウム=471.6mg/dL、リン=225.2mg/dL、ナトリウム=75mg/dL、カリウム=208.1mg/dL、マグネシウム=24.4mg/dL、塩素=69.1mg/dL、亜鉛=3.1mg/dL、銅=0.1mg/dL、およびマンガン=9.2mg/dL;(b)Prolact(商標)+8、Plus 8としても知られている、およびProlact(商標)+10、Plus 10としても知られている、については、カルシウム=235.8mg/dL、リン=112.6mg/dL、ナトリウム=37.5mg/dL、カリウム=104mg/dL、マグネシウム=12.2mg/dL、塩素=34.6mg/dL、亜鉛=1.6mg/dL、銅=0.05mg/dL、およびマンガン=4.6mg/dL。最終バルク物を50℃に加熱し、ミネラルを最終バルク物に混合する。
ミネラルが混合された後で、製品をタンク中で低温殺菌する。タンクはジャケット付きであり、タンクの加熱には熱グリコールを使用し(製品温度は約67℃であり、製品上の空気の温度は約70℃である)、製品は30分間低温殺菌する。ジャケット付きタンク中で冷グリコールを用いて製品温度を約5℃まで下げる。次いで製品を必要に応じて充填可能な容器中へ分取する。例えば、充填サイズは、Prolact(商標)+4 10mL、Prolact(商標)+4 20mL、Prolact(商標)+6 15mL、Prolact(商標)+6 30mL、Prolact(商標)+8 20mL、Prolact(商標)+8 40mL、Prolact(商標)+10 25mL、Prolact(商標)+10 50mLを含む。充填を行ったら、栄養価およびバイオバーデンの試験のためにボトルをランダムに取ることができる。次の病原体を以下につき試験することができる;総好気性菌計数(Aerobic Count)−<10コロニー形成単位/mL;セレウス菌−1コロニー形成単位/mL;病原性大腸菌−1コロニー形成単位/mL、大腸菌類−1コロニー形成単位/mL;シュードモナス菌−1コロニー形成単位/mL;サルモネラ菌−1コロニー形成単位/mL;ブドウ球菌−1コロニー形成単位/mL;酵母菌−1コロニー形成単位/mL;カビ−1コロニー形成単位/mL。上記の本方法によって生成される製品は、以下の内容物を含むことができる:(a)Prolact +4およびProlact +6では、(i)全カロリーは、約1.35Cal/mL〜約1.55Cal/mLである、(ii)タンパク質は、約5.5g/dL〜約6.5g/dLであり、(iii)脂肪は、約8.5g/dL〜約9.5g/dLであり、(iv)カルシウムは、約417.6mg/dLであり、(v)塩素は、約69.1mg/dLであり、(vi)銅は、約0.1mg/dLであり、(vii)マグネシウムは、約24.4mg/dLであり、(vii)マンガンは、約9.2マイクログラム/dLであり、(ix)リンは、約225.2mg/dLであり、(x)カリウムは、約208.1mg/dLであり、(xi)ナトリウムは、約75mg/dLであり、および(xii)亜鉛は、約3.1mg/dLである。(b)Prolact +8およびProlact +10では、(i)全カロリーは約1.35Cal/mL〜約1.55Cal/mLであり、(ii)タンパク質は、約5.5g/dL〜約6.5g/dLであり、(iii)脂肪は、約8.5g/dL〜約9.5g/dLであり、(iv)カルシウムは、約208.8mg/dLであり、(v)塩素は、約34.6mg/dLであり、(vi)銅は、約0.05mg/dLであり、(vii)マグネシウムは、約12.2mg/dLであり、(viii)マンガンは、約4.6マイクログラム/dLであり、(ix)リンは、約112.6mg/dLであり、(x)カリウムは、約104.1mg/dLであり、(xi)ナトリウムは、約37.5mg/dLであり、および(xii)亜鉛は、約1.6mg/dLである。
本開示の実施形態は、言うまでもなく、本明細書で記載したもの以外の方法で本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく行うことができる。したがって、本実施形態はあらゆる点で例示的なものであって限定的なものではなく、かつあらゆる変更形態および等価な形態も本開示の記載の範囲内に入ると考えられる。

Claims (15)

  1. 20〜70mg/mlのヒト乳タンパク質成分と、
    35〜85mg/mlのヒト乳脂肪成分と、
    70〜115mg/mlのヒト乳炭水化物成分と
    を含むヒト乳強化剤組成物であって、ヒトIgAを含むヒト乳強化剤組成物。
  2. 50mg/mlのヒト乳タンパク質成分と、
    75mg/mlのヒト乳脂肪成分と、
    105mg/mlのヒト乳炭水化物成分と
    を含む、請求項1に記載のヒト乳強化剤組成物。
  3. 31mg/mlのヒト乳タンパク質成分と、
    44mg/mlのヒト乳脂肪成分と、
    79mg/mlのヒト乳炭水化物成分と
    を含む、請求項1に記載のヒト乳強化剤組成物。
  4. ビタミンA、ビタミンC、カルシウム、鉄、リン、マグネシウム、塩素、亜鉛、銅、マンガン、ナトリウム、カリウム、リゾチーム、ラクトフェリン、ビタミンB6、およびこれらの任意の組合せからなる群より選択される成分をさらに含む、請求項1に記載のヒト乳強化剤組成物。
  5. 前記ヒトIgAが、分泌型IgAを含む、請求項1に記載のヒト乳強化剤組成物。
  6. 前記IgAが、100〜600mg/mlである、請求項1に記載のヒト乳強化剤組成物。
  7. 前記IgAが、230mg/mlである、請求項1に記載のヒト乳強化剤組成物。
  8. 前記リゾチームが、22,000IU/mlである、請求項4に記載のヒト乳強化剤組成物。
  9. 前記ラクトフェリンが、0.33mg/mlである、請求項4に記載のヒト乳強化剤組成物。
  10. 請求項1に記載のヒト乳強化剤組成物、および前記ヒト乳強化剤組成物を生ヒト乳と混合して混合配合物を得るための計量ボトルを含み、前記混合配合物は前記ヒト乳強化剤組成物を含まない生乳よりも4cal/オンス多く含む、キット。
  11. 生ヒト乳の栄養含有量を測定することと、
    請求項1に記載のヒト乳強化剤組成物を生乳に添加して生乳の栄養価を4カロリー/オンス増加させること
    とを含む、栄養乳組成物を得る方法。
  12. 少なくとも2.1g/dLのヒト乳タンパク質、およびヒト乳脂肪を含む、ドナーの自己生乳および同種異系乳組成物を含むヒト乳強化剤組成物。
  13. 前記ヒト乳タンパク質が、凍結乾燥されていないヒト乳タンパク質である、請求項1に記載のヒト乳強化剤組成物。
  14. 2.1g/dL(21mg/ml)〜3.75g/dL(37.5mg/ml)のヒト乳タンパク質を含む、請求項1に記載のヒト乳強化剤組成物。
  15. 2.1%〜3.75%のヒト乳タンパク質を含む、請求項1に記載のヒト乳強化剤組成物。
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