JP5766151B2 - 熱硬化型1液塗料組成物 - Google Patents
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そこで、従来は、このような空隙部を溶接によって塞ぎ、塗装、加熱、乾燥によって発泡(膨張)させ、前記空隙部を完全に封止することにより遮音していた。この時使用される材料は、シート状成形材料でゴム系発泡充填材であった。
従来シート状材料は、車種毎に設置する部分の形状に合わせて切断しなければならず、更に、シート状材料による遮音材の設置は作業者の手作業であったことから、自動化の障害になり工程時間の短縮を阻害していた。
また、風切り音は、ピラー及びルーフヘッダー付近のボデーパネルの段差により空気が渦を作り、パネル共振によって発音に至ることから、風切り音の発生を抑制するためにルーフパネル裏等では制振シートとシート状成形ゴム系材料等の発泡充填材とを2層形成する場合があり、手間のかかる作業であり、当然、自動化は図れなかった。即ち、塗装ロボット等を使い自動塗装ができる制振性、遮音性を持つ塗料組成物が要求されていた。
特許文献1のペースト型加熱発泡充填材は、粘度が1400〜3000ポイズであるので、機械による自動塗布が可能である。また、油面鋼板に対する付着性に優れ、塗布後の垂れが防止され、更に、糸切れ性も良好であるため、塗布時の作業性が良い。
したがって、特許文献1のペースト型加熱発泡充填材によれば、自動塗布が可能となり工数の低減と同時に作業精度の向上と、かつ、400〜2000%の発泡率で発泡するので、複雑な形状のパネル内部の隅々まで充填され、優れた遮音性能、風切り音低減性能を発揮するものである。
ここで、メチル基以上の残留立体障害分子枝を持つポリマーは、側鎖に残留立体障害分子枝を持つものであり、残留立体障害分子枝とは、メチル基、フェニル基、ベンジル基等であり、それを有する複数のモノマー(単量体)が重合、即ち、結合して鎖状や網状になった化合物ポリマーである。
ここで、上記中位径3〜100μmのマグネシウム系燐片フィラーの粒子とは、レーザ回折・散乱法によって測定した粒径分布において、ある粒子径より大きい個数または質量が全粉体の50%を占めるときの粒子径を中位径といい、その中位径が3〜100μmであることを意味する。一般的に平均粒子径として呼ばれる場合もあるが、厳格には、レーザ回折・散乱法によって測定した粒径分布において、ある粒子径より大きい個数または質量が全粉体の50%を占めるときの粒子径をいう。
また、上記中位径50μm以上の粒子では「ふるい分け試験」を用いることもできる。この「ふるい分け試験」とは、JIS−Z−8801によって規定された目開きをもつ標準ふるいを用いて、測定対象となる粒子をふるい分けることによって粒度分布を測定する試験方法をいうものである。標準ふるいなどを用いて行う粒径、粒径分布を測定する方法のことである。粒径と、粒径分布の表現は、使用したふるいの目開き(μm )とふるい上残量(オーバサイズ)またはふるい下通過量(アンダーサイズ)の全体に対する比率で表される。
このように、本発明は1液塗料として使用でき、塗装ロボット等を使用して自動塗布、塗装ができ、制振性及び遮音性を有する塗料となる。
この発明の熱硬化型1液塗料組成物の前記振動減衰性付与剤としてのマグネシウム系燐片フィラーは、アスペクト比5〜50、中位径3〜100μmであり、また、芳香族アミンまたはアミンケトンを前記有機フィラーとして用いて、効率よく遮音機能及び制振機能を持たせることができる。
組成物としては種々の組成物を検討した結果、メチル基以上の残留立体障害分子枝を持つポリマーと、振動減衰性付与剤として無機フィラーと有機フィラーとを組み合わせ、さらに発泡のための発泡剤を含有させることで本発明の熱硬化型1液塗料組成物を形成した。ここで、振動減衰性付与剤としての無機フィラーについては、誘電正接tanδの高いフィラーを用いている。誘電正接tanδとは、絶縁体内部での電気エネルギー損失度合いのことをいい、絶縁体としての性能を評価する一つの基準であるが、この誘電正接tanδが高いと、加えられた振動を熱変換(誘電損)しやすくなり、つまり振動エネルギーを熱エネルギーに変換し振動減衰効果が大きくなると考えて、誘電正接tanδの高い無機フィラーを振動減衰性付与剤として組成物に配している。また、有機フィラーは分子からのラジカルを捕捉する機能を有し連鎖停止剤となるものを使用した。これはポリマー中の電子移動の安定化がこの有機フィラーによって図ることが出来ると推定したことによる。また、ポリマーとしては発泡剤による発泡が制御し易く、また、振動吸収性に優れる合成ゴム等の熱架橋樹脂を使用することが好ましい。
この本実施形態における制振性について図1及び図2を用いて更に詳細に説明する。
次に、基材上に制振層を配し、更に、制振層に拘束層を配したときの損失係数を図1に1点鎖線で示した。このときは制振層が図2(b)に示したように拘束層と基材に挟まれた状態にあることから、制振層は2層形のときに比べて運動が制限されるため樹脂のガラス転移点温度Tgより高い温度にピークが移行し、図1に示したように高い温度領域まで制振性が得られる。
そして、本実施の形態による熱硬化型1液塗料組成物は、図2(c)に示すように、見かけは1層の制振層5だけだが、制振層5は発泡体における内部発泡層4を軟鋼板の基材とスキン層3とにより拘束した実質2層構造となり、吸音、制振、遮音を確保する組成物となることが確認された。
この極性分子構造が、誘電正接の高いマグネシウム系燐片フィラーや、グラファイト系燐片フィラーのような燐片状の圧電フィラーと立体障害分子枝構造ポリマーの制振機構を助ける役割をするものと予想される。
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、実施の形態において、図示の同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する説明を省略する。
そして、表3に記載した材料を表1に記載した割合で配合し本発明の実施の形態における実施例1乃至実施例3の熱硬化型1液塗料組成物を作製し試験材料とした。また、表2として、振動減衰付与剤としてのラジカルを捕捉する機能を有する有機フィラーを配さない組成物として比較例1、比較例2及び振動減衰付与剤としての無機フィラーを配さない組成物として比較例3、更に、誘電正接が低い鱗片状フィラーを使用した比較例4及び、比較例5を合わせて作製し試験材料とした。
このように作製した実施例1乃至実施例3及び比較例1乃至比較例5を用いて以下に説明する発泡充填性、制振性の試験を行った。
また、振動減衰付与剤Aの無機フィラーは、マグネシウム系鱗片状フィラーで、軟質雲母とも云われる誘電正接0.1〜0.7、熱分解温度600〜800℃の金マイカ(フロゴバイトマイカ) を使用した。
更に、振動減衰付与剤Bの無機フィラーは、黒鉛系鱗片状フィラーで、誘電正接0.3〜1.0の膨張黒鉛と云われるものを使用した。
発泡充填性は、縦100mm、横100mm、厚み1.5mmの大きさで実施例1乃至実施例3、及び比較例1乃至比較例5の試験材料を厚み1.6mmの軟鋼板に塗布し180℃の温度で30分加熱硬化させた後厚みを測定し、加熱硬化前後の厚みの変化が10倍以上のものを合格とした。
損失係数の測定値は表1、表2の制振性の評価項目の括弧内に記載した。
更に、溶接工程でも施工可能であるから、天井、ドア等の従来の制振材では施工が困難であった場所への施工も可能となる。しかも、一般吸音材としても利用でき、例えば、電車等の乗り物、自動販売機、洗濯機等家電分野、また、手摺り等建材にも使用可能である。
特に、上記実施の形態は、1液塗料として使用でき、塗装ロボット等を使用して自動塗布、塗装ができ、制振性及び遮音性を有する塗料となる。
2 制振層
3 スキン層
4 内部発泡層
5 制振層
Claims (2)
- メチル基以上の残留立体障害分子枝を持つポリマーと、振動減衰性付与剤と、発泡剤を含有し、
前記振動減衰性付与剤が誘電正接0.1以上を有し、アスペクト比5〜50の範囲内、粒径が中位径3〜100μmの範囲内であるマグネシウム系燐片フィラーと、分子からのラジカルを捕捉する機能を有する芳香族アミンまたはアミンケトンとを組み合わせたものであることを特徴とする熱硬化型1液塗料組成物。 - 前記マグネシウム系燐片フィラーが、誘電正接が0.1〜0.7の金雲母を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化型1液塗料組成物。
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JP2012128329A JP5766151B2 (ja) | 2012-06-05 | 2012-06-05 | 熱硬化型1液塗料組成物 |
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JP2012128329A JP5766151B2 (ja) | 2012-06-05 | 2012-06-05 | 熱硬化型1液塗料組成物 |
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