JP5765791B2 - 太陽電池用透明導電性基板の製造方法 - Google Patents

太陽電池用透明導電性基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、太陽電池用透明導電性基板の製造方法に関する。
太陽電池は自然の光エネルギー(クリーン・エネルギー)を電力に変換して利用する発電システムとして注目されており、例えば、非晶質のアモルファスシリコンを光電変換層として用いた太陽電池が実用化されている。このような太陽電池に関して、近年では、より高度な光電変換効率を実現するために様々な技術が研究されており、その一つとして、例えば、太陽電池用の透明基板に凹凸形状を設け、かかる形状により光閉じ込め効果を発現させて光電変換効率の向上を図る技術が提案されている。
このような太陽電池用の透明基板としては、例えば、国際公開2004−102677号パンフレット(特許文献1)においては、基体上にTiO層、SiO層及びSnO層の順で各層が積層され、前記SnO層が常圧CVD法により凹凸を有する層として形成された層である透明導電性基板が開示されている。また、特開2000−183378号公報(特許文献2)においては、炭酸ナトリウム(NaCO)水溶液をエッチング液として利用してシリコン基板を前記水溶液中に浸漬することにより得られる、表面に微細な凹凸形状が形成された透明基板が開示されている。更に、特開平07−122764号公報(特許文献3)においては、太陽電池を形成する基板の主面において、サンドブラスト法によって、少なくとも太陽電池を形成する部分を凹凸形状化し、該凹凸の平均段差以下の厚さの薄膜を該凹凸形状の底部に選択的に形成させた太陽電池基板が開示されている。また、このような太陽電池の分野においては、透明基板に凹凸を形成させる技術以外にも、例えば、太陽電池の発電層に凹凸を形成する技術も研究されており、特開2000−277763号公報(特許文献4)においては、発電層が微小凹凸形状の薄膜で形成された非晶質又は微結晶の太陽電池が開示されている。しかしながら、このような特許文献1〜4に記載のような従来の透明基板等を用いた太陽電池は、光電変換効率が必ずしも十分なものではなかった。
国際公開2004−102677号パンフレット 特開2000−183378号公報 特開平07−122764号公報 特開2000−277763号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、太陽電池の透明導電性基板として利用することにより、十分に優れた光閉じ込め効果を発揮でき、太陽電池の光電変換効率を十分に高度なものとすることが可能な太陽電池用透明導電性基板を効率よく製造することが可能な太陽電池用透明導電性基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ね、先ず、上記従来技術において光電変換効率が必ずしも十分なものとならない原因について検討したところ、上記特許文献1に記載のような透明導電性基板においては、常圧CVD法による無機酸化物の結晶面を利用した凹凸形状が鋭角な形状となり、その上に積層する半導体層の被覆性が低くなることから、基板上において半導体層の膜厚が不均一になったり、半導体層が存在していない部分が生じ、その部分において電流を取り出すことができないことから、必ずしも十分な光電変換効率が得られなかったと推察した。また、上記特許文献2に記載のような透明基板においては、エッチング法により結晶面に形成される凹凸形状を利用していることから、半導体層等を積層する際に被覆性が低いことから、上記と同様に必ずしも十分な光電変換効率が得られなかったと推察した。また、上記特許文献3に記載のような太陽電池基板においては、サンドブラスト法によって凹凸形状を形成するため、微細な凹凸形状が形成できず、凹凸形状により十分な回折効果を得ることができないことから、十分な光閉じ込め効果が得られないため、必ずしも十分な光電変換効率が得られなかったと推察した。また、特許文献4に記載のような発電層に微小凹凸形状の薄膜で形成された非晶質又は微結晶の太陽電池においても、その凹凸形状が急峻にとがった形状となっているため、急峻に突出した部分においてリークが発生し易く、更には、形成される凹凸形状により必ずしも十分な光閉じ込め効果を得ることができず、必ずしも十分な光電変換効率が得られなかったと推察した。
このような検討結果に基いて、本発明者らが上記目的を達成すべく更に鋭意研究を重ねた結果、透明支持基板と、透明導電層とを備える太陽電池用透明導電性基板において、前記透明支持基板と前記透明導電層との間に表面に凹凸形状を有する硬化樹脂層を配置し、その凹凸の形状を原子間力顕微鏡により解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施してフーリエ変換像を得た場合に、そのフーリエ変換像が、波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円状又は円環状の模様となるように前記凹凸の形状を形成することにより、太陽光の入射角が変化しても十分に効率よく光電変換させることが可能となることを見出すとともに、そのフーリエ変換像の円状又は円環状の模様が、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内に存在するように前記凹凸の形状を形成することにより、太陽電池の半導体層に効率よく光を吸収させることが可能となるとともに、十分に優れた光閉じ込め効果を発揮でき、太陽電池の光電変換効率を十分に高度なものとすることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の太陽電池用透明導電性基板の製造方法は、透明支持基板上に硬化性樹脂を塗布し、母型を押し付けつつ前記硬化性樹脂を硬化させた後、前記母型を取り外すことにより、前記透明支持基板上に凹凸が形成された硬化樹脂層を積層する工程と、
前記硬化樹脂層上に、前記硬化樹脂層の表面に形成されている凹凸の形状が維持されるようにして、透明導電層を積層して、透明支持基板と硬化樹脂層と透明導電層とを備える太陽電池用透明導電性基板を得る工程と、
を含み、
前記母型が、
70℃以上の温度条件下において、熱により体積が変化するポリマーからなるポリマー膜の表面に蒸着膜を形成した後、前記ポリマー膜及び前記蒸着膜を冷却することにより、前記蒸着膜の表面に皺による凹凸を形成する工程と、
前記蒸着膜上に母型材料を付着させ硬化させた後に、硬化後の母型材料を前記蒸着膜から取り外して第1の母型を得る工程と、
を含む方法により得られたものであり、
前記硬化樹脂層の表面に形成されている凹凸が、該凹凸の形状を原子間力顕微鏡により解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施してフーリエ変換像を得た場合において、前記フーリエ変換像が、波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円環状の模様を示しており、且つ、前記円環状の模様が、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内に存在するものであること、
を特徴とする方法である。このような方法においては、前記熱により体積が変化するポリマーがシリコーン系ポリマーであることが好ましい。また、このような方法においては、前記第1の母型上に転写材料を付着して硬化させた後、前記第1の母型から取り外すことにより、表面に凹凸が形成された第2の母型を得る工程を更に含むことが好ましい。
なお、本発明により上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、本発明の太陽電池用透明導電性基板の製造方法により得ることが可能な太陽電池用透明導電性基板は、透明支持基板と、透明導電層と、前記透明支持基板と前記透明導電層との間に配置された硬化樹脂層とを備えており、
前記硬化樹脂層の前記透明導電層と対向する面に凹凸が形成されており、
前記凹凸の形状を原子間力顕微鏡により解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施してフーリエ変換像を得た場合において、前記フーリエ変換像が、波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円状又は円環状の模様を示しており、且つ、
前記円状又は円環状の模様が、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内に存在すること、
を特徴とするものである。このような太陽電池用透明導電性基板においては、前記硬化樹脂層の凹凸の形状を、その凹凸形状を原子間力顕微鏡により解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施してフーリエ変換像を得た場合において、前記フーリエ変換像が、波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円状又は円環状の模様を示すものとする。このようなフーリエ変換像が、波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円状又は円環状の模様となる凹凸形状は、あらゆる断面方向から見た場合に等方的な凹凸形状であるといえる。このように、前記太陽電池用透明導電性基板においては、凹凸形状があらゆる断面方向から見た場合に等方的なものであるため、入射光の入射角によらず、十分に安定して光を入射させて、しかも十分に高い光閉じ込め効果を発揮させることが可能である。そのため、このような太陽電池用透明導電性基板を太陽電池の透明導電性基板として利用する場合には、太陽の移動(光の入射角度の変化)によって性能が低下することが十分に抑制されるため、太陽電池の光電変換効率を十分に向上させることが可能となるものと推察される。また、凹凸形状のピッチ(前記フーリエ変換像においては中心からの距離として表わされる。)と入射光の波長との関係を、下記式(1):
・sinθ−n・sinθo=m×(λ/d) (1)
[式(1)中、dは凹凸のピッチを示し、λは入射光の波長を示し、nは光が通過する媒質の屈折率を示し、nは半導体の屈折率を示し、θは光の入射角を示し、θは光の出射角を示し、mは回折次数(0、±1、±2、・・・・・)を示す。]
で表わされるラマン・ナス回折(Raman−Nath diffraction)の理論から検討すると、太陽電池においてはあらゆる入射角θの光が回折され、その回折された光が膜内に有効に取り込まれることが好ましいことから、出射角θがより大きくなることが好ましいといえる。例えば、太陽電池に、屈折率(n)が1.5の透明基板と、屈折率(n)がおよそ3.8であるSiからなる半導体とを利用した場合、あらゆるθに対してθができる限り高い角度となるようにして回折を生じさせるには、回折強度の高い次数mが1の場合において検討すると、ピッチdがλの43%である場合にθoを最も大きな値(角度)としながらも光を回折させることが可能となることが分かる。一方、太陽電池が吸収できる光は、使われている半導体の持つバンドギャップに相当する波長よりも短い波長の光である。そのため、半導体層の材料にSiを用いる場合について、光を十分に回折させて半導体内に光を閉じ込め、効率よく光電交換させるためには、Siのバンドギャップがおよそ1.1eVであり、これと同じエネルギーを有する波長の光が1.12μmの波長の光となることから、波長λが1.12μmの光を利用して凹凸のピッチ長をその波長λの43%に相当する0.49μm(光の波数では2.04μm−1)以下の長さとすることが有効であることが分かる。このような観点とともに、通常の半導体材料からなる半導体層の屈折率が3〜4程度であり且つ通常の半導体材料のバンドギャップが3.4eV(GaN)〜0.7eV(Ge)の範囲内にあることを考慮すれば、太陽電池において凹凸により十分に光閉じ込め効果が発揮でき且つ半導体層中において効率よく吸収できる光の波数は0.94μm−1〜6.8μm−1となることが分かる。そのため、このような半導体層中において効率よく吸収できる光の波数に対して、前記フーリエ変換像における中心からの距離(波数)が同じ値を最大値として、それ以上の値となるように凹凸形状を形成することで、半導体層中において十分に光を吸収させることが可能となり、十分に高度な光電変換効率が達成されることが分かる。したがって、前記太陽電池用透明導電性基板においては、硬化樹脂層の凹凸の形状の前記フーリエ変換像における模様が円状又は円環状であり且つ前記フーリエ変換像においては中心からの距離(波数)が0.5〜10μm−1の範囲となるように、硬化樹脂層の凹凸の形状を形成することによって、前記太陽電池に効率よく光を吸収させることが可能となるとともに、非常に優れた光閉じ込め効果を発揮することも可能となり、これにより太陽電池の光電変換効率が十分に向上するものと本発明者らは推察する。
また、常圧CVD法(結晶面を利用する方法)、膜をエッチングする方法、サンドブラストを利用する方法等を利用する上記特許文献1〜3に記載のような従来の凹凸形状の形成方法は、微細な凹凸形状を所望のピッチで制御良く形成させることが困難な方法である。また、透明導電層が一般にSnOやZnO等の金属酸化物を含む層であることから、その加工は困難である。一方、本発明の太陽電池用透明導電性基板の製造方法においては、上述のようにして母型を形成した後に、その母型の凹凸形状を押し付けて(スタンプして)、その母型に由来した凹凸形状を精度良く硬化樹脂層に形成するため、比較的容易に且つ再現性高く、特定の形状の凹凸形状を形成でき、上記太陽電池用透明導電性基板を効率よく製造することが可能である。特に、硬化性樹脂(硬化樹脂層の材料)として好適なアクリル系樹脂を利用した場合には、母型に由来した凹凸形状をより精度よく形成させることができるとともに、より簡便に且つよりスピーディーに太陽電池用透明導電性基板を製造することも可能となる。そのため、本発明においては、太陽電池用透明導電性基板を効率よく製造することが可能となるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、太陽電池の透明導電性基板として利用することにより、十分に優れた光閉じ込め効果を発揮でき、太陽電池の光電変換効率を十分に高度なものとすることが可能な太陽電池用透明導電性基板を効率よく製造することが可能な太陽電池用透明導電性基板の製造方法を提供することが可能となる。
本発明の太陽電池用透明導電性基板の製造方法により得ることが可能な太陽電池用透明導電性基板の好適な一実施形態を模式的に示す縦断面図である。 透明支持基板上に硬化性樹脂を塗布した状態を模式的に示す縦断面図である。 母型を押し付けつつ硬化性樹脂を硬化させた状態を模式的に示す縦断面図である。 母型を取り外して硬化樹脂層の表面に凹凸が形成させた状態を模式的に示す縦断面図である。 ブロック共重合体溶液を基材上に塗布した状態を模式的に示す縦断面図である。 ブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成させることにより塗膜の表面に凹凸を形成した状態を模式的に示す縦断面図である。 転写材料を第1の母型上に付着させた状態を模式的に示す縦断面図である。 硬化後の第2の母型を第1の母型から取り外した状態を模式的に示す縦断面図である。 参考例1で得られた第1の母型(M−1)の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した凹凸解析画像を示す写真である。 参考例1で得られた第1の母型(M−1)の断面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した断面の凹凸解析画像を示す写真である。 参考例1で得られた第1の母型(M−1)の表面の原子間力顕微鏡による凹凸解析画像を2次元高速フーリエ変換処理の結果をディスプレイ上に表示したフーリエ変換像を示す写真である。 参考例1で得られたエッチング処理後の第1の母型(M−2)の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した凹凸解析画像を示す写真である。 参考例1で得られたエッチング処理後の第1の母型(M−2)の断面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した断面の凹凸解析画像を示す写真である。 参考例1で得られた第2の母型(M−3)の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した凹凸解析画像を示す写真である。 参考例1で得られた第2の母型(M−3)の断面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した断面の凹凸解析画像を示す写真である。 参考例1で得られた第2の母型(M−3)の表面の原子間力顕微鏡による凹凸解析画像を2次元高速フーリエ変換処理の結果をディスプレイ上に表示したフーリエ変換像を示す写真である。 参考例1で形成された硬化樹脂層の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した凹凸解析画像を示す写真である。 参考例1で形成された硬化樹脂層の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した断面の凹凸解析画像を示す写真である。 参考例1で形成された硬化樹脂層の表面の原子間力顕微鏡による凹凸解析画像を2次元高速フーリエ変換処理の結果をディスプレイ上に表示したフーリエ変換像を示す写真である。 参考例2で形成された硬化樹脂層の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した凹凸解析画像を示す写真である。 参考例2で形成された硬化樹脂層の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した凹凸解析画像を示す写真である。 参考例2で形成された硬化樹脂層の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した断面の凹凸解析画像を示す写真である。 参考例2で形成された硬化樹脂層の表面の原子間力顕微鏡による凹凸解析画像を2次元高速フーリエ変換処理の結果をディスプレイ上に表示したフーリエ変換像を示す写真である。 参考例3で得られた第1の母型(M−9)の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した凹凸解析画像を示す写真である。 参考例3で得られた第2の母型(M−9)の断面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した断面の凹凸解析画像を示す写真である。 参考例3で得られた第2の母型(M−9)の表面の原子間力顕微鏡による凹凸解析画像を2次元高速フーリエ変換処理の結果をディスプレイ上に表示したフーリエ変換像を示す写真である。 参考例3で形成された硬化樹脂層の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した凹凸解析画像を示す写真である。 参考例3で形成された硬化樹脂層の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した凹凸解析画像を示す写真である。 参考例3で形成された硬化樹脂層の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した断面の凹凸解析画像を示す写真である。 参考例3で形成された硬化樹脂層の表面の原子間力顕微鏡による凹凸解析画像を2次元高速フーリエ変換処理の結果をディスプレイ上に表示したフーリエ変換像を示す写真である。 参考例4で得られたエッチング処理後の第1の母型(M−11)の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した凹凸解析画像を示す写真である。 参考例4で得られたエッチング処理後の第1の母型(M−11)の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した凹凸解析画像を示す写真である。 参考例4で得られたエッチング処理後の第1の母型(M−11)の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した断面の凹凸解析画像を示す写真である。 参考例4で得られたエッチング処理後の第1の母型(M−11)の表面の原子間力顕微鏡による凹凸解析画像を2次元高速フーリエ変換処理の結果をディスプレイ上に表示したフーリエ変換像を示す写真である。 参考例4で形成された硬化樹脂層の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した凹凸解析画像を示す写真である。 参考例4で形成された硬化樹脂層の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した凹凸解析画像を示す写真である。 参考例4で形成された硬化樹脂層の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した断面の凹凸解析画像を示す写真である。 参考例4で形成された硬化樹脂層の表面の原子間力顕微鏡による凹凸解析画像を2次元高速フーリエ変換処理の結果をディスプレイ上に表示したフーリエ変換像を示す写真である。 実施例1で形成された硬化樹脂層の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した凹凸解析画像を示す写真である。 実施例1で形成された硬化樹脂層の表面の走査型プローブ顕微鏡による解析結果をディスプレイ上に表示した断面の凹凸解析画像を示す写真である。 実施例1で形成された硬化樹脂層の表面の原子間力顕微鏡による凹凸解析画像を2次元高速フーリエ変換処理の結果をディスプレイ上に表示したフーリエ変換像を示す写真である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
先ず、本発明の太陽電池用透明導電性基板の製造方法により得ることが可能な太陽電池用透明導電性基板について説明する。すなわち、このような太陽電池用透明導電性基板は、透明支持基板と、透明導電層と、前記透明支持基板と前記透明導電層との間に配置された硬化樹脂層とを備えており、
前記硬化樹脂層の前記透明導電層と対向する面に凹凸が形成されており、
前記凹凸の形状を原子間力顕微鏡により解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施してフーリエ変換像を得た場合において、前記フーリエ変換像が、波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円状又は円環状の模様を示しており、且つ、
前記円状又は円環状の模様が、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内に存在すること、
を特徴とするものである。
図1は、前記太陽電池用透明導電性基板の好適な一実施形態を模式的に示す縦断面図である。図1に示す太陽電池用透明導電性基板10は、透明支持基板11と、透明支持基板11上に積層され且つ表面に凹凸が形成されている硬化樹脂層12と、硬化樹脂層12上に積層された透明導電層13とを備えるものである。
このような透明支持基板11としては、太陽電池に用いることが可能な透明な支持基板であればよく、特に制限されず、公知の透明支持基板を適宜用いることができる。このような透明支持基板11としては、例えば、ガラスや石英などからなる基板が挙げられる。このような透明支持基板11の厚みは、太陽電池の透明電極を支持するための基板として用いることが可能な厚みとすればよく、例えば、0.1〜5mmとしてもよい。また、このような透明支持基板11の形状は特に制限されず、目的とする太陽電池の設計に応じて、その形状を適宜変更してもよい。
硬化樹脂層12は、硬化樹脂からなる層であり且つ透明導電層13と対向する面(透明導電層13が積層される側の面)に凹凸が形成された層である。このような硬化樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、架橋型液晶樹脂、シリコーン樹脂(シロキサン結合による主骨格を持つ樹脂)が挙げられる。このような硬化樹脂においては、凹凸形状をより効率よく形成させ、かつ、太陽電池の形成プロセスにかかる温度が200度近くの比較的高温であり、材料の耐熱性が必要であるという観点からは、アクリル樹脂を用いることが好ましい。なお、太陽電池用透明導電性基板が太陽電池を製造する際に特に高温に晒されるような場合には、前記硬化樹脂として耐熱性に特に優れる前記シリコーン樹脂を用いたり、前記硬化樹脂をエッチングマスクに用いてガラスや石英など耐熱性のある基板をエッチングするなどにより上記凹凸形状を形成させてもよい。
このような硬化樹脂層12の厚みは0.5〜500μmの範囲であることが好ましい。このような硬化樹脂層12の厚みが前記下限未満では、硬化樹脂層の表面に形成される凹凸の高さが不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、硬化時に生じる樹脂の体積変化の影響が大きくなり、良好な凹凸形状が形成できなくなる傾向にある。
また、このような硬化樹脂層12においては、その表面に形成された凹凸形状を原子間力顕微鏡を用いて解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施してフーリエ変換像を得た場合に、前記フーリエ変換像が、波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円状又は円環状の模様を示しており、且つ、前記円状又は円環状の模様が、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内に存在することが必要である。このようなフーリエ変換像が上記の条件を示すように、前記硬化樹脂層の表面に凹凸の形状を形成することにより、波長依存性及び指向性が十分に低い優れた光の回折効果が得られるため、これを太陽電池に利用した場合に、より高度な光閉じ込め効果を得ることが可能となる。また、このような波数の絶対値が前記範囲外では、バンドギャップが3.4eV(GaN)〜0.7eV(Ge)の範囲にある半導体材料を利用して太陽電池の半導体層を形成した場合に、十分に光電変換効率の高い太陽電池を製造することが困難となる。ここで、「円状又は円環状の模様が波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内に存在する」とは、円状及び円環状の模様を構成するフーリエ変換像の輝点のうちの30%以上(より好ましくは50%以上、更により好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上)の輝点が、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内に存在することをいう。また、このような円状や円環状の模様はフーリエ変換像において輝点が集合することにより観測される模様であるため、ここにいう「円状」とは、輝点が集合した模様がほぼ円形の形状に見えることを意味し、外形の一部が凸状又は凹状となっているように見えるものも含む概念であり、また、「円環状」とは、輝点が集合した模様がほぼ円還状に見えることを意味し、環の外側の円や内側の円の形状がほぼ円形の形状に見えるものも含み且つかかる環の外側の円や内側の円の外形の一部が凸状又は凹状となっているように見えるものも含む概念である。なお、このような硬化樹脂層12の表面の凹凸の形状は、後述する本発明にかかる母型を利用する方法を採用することで効率よく形成することが可能である。
また、このような円状又は円環状の模様は、太陽光の波長に対する回折効率や太陽電池に使用する半導体及び基盤の屈折率、半導体のバンドギャップの観点から、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内に存在することが必要であり、波数の絶対値が0.9〜10μm−1の範囲内となる領域内に存在することがより好ましい。また、前記フーリエ変換像の模様としては、太陽光の入射角度に依存せず、等方的な回折効果を得ようとする観点から、円環状であることがより好ましい。
また、上記フーリエ変換像は、硬化樹脂層12の表面に形成されている凹凸の形状を、原子間力顕微鏡を用いて解析して凹凸解析画像を得た後に、前記凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施すことにより測定できる。このような凹凸解析画像は、原子間力顕微鏡を用いて、下記解析条件:
測定方式:カンチレバー断続的接触方式
カンチレバーの材質:シリコン
カンチレバーのレバー幅:40μm
カンチレバーのチップ先端の直径:10nm
を採用して解析することにより測定することができる。
また、前記原子間力顕微鏡としては、適宜市販されているものを使用することができ、例えば、SIIナノテクノロジー社製の環境制御ユニット付走査型プローブ顕微鏡「NanonaviIIステーション/E−sweep」を使用することができる。また、前記原子間力顕微鏡の測定方式としては、カンチレバー断続的接触方式を採用することが好ましいが、SIIナノテクノロジー社製の環境制御ユニット付走査型プローブ顕微鏡の用いる場合には、ダイナミックフォースモード(DMFモード)を使用すればよい。さらに、カンチレバーとしては、上述のように、材質がシリコンであり、レバー幅が40μmであり且つチップ先端の直径が10nmのものを使用すればよく、例えば、SI−DF40を使用してもよい。また、前記原子間力顕微鏡を用いて解析する場合には、大気中において温度を25℃として前記硬化樹脂層の表面に形成されている凹凸の形状を観察することが好ましい。
前記凹凸解析画像の2次元高速フーリエ変換処理は、2次元高速フーリエ変換処理ソフトを備えたコンピュータを用いた電子的な画像処理によって容易に行うことができる。このような2次元高速フーリエ変換処理においては、前記凹凸解析画像に1次傾き補正を含むフラット処理を施すことが好ましい。
また、このような硬化樹脂層12の表面に形成されている凹凸の平均ピッチは100〜2000nmの範囲であることが好ましく、100〜1100nmの範囲であることがより好ましい。凹凸の平均ピッチが前記下限未満では、太陽光の波長に対しピッチが小さくなりすぎるため必要な回折が生じなくなり、太陽電池に用いた場合に光閉じ込め効果が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、太陽電池に使用している半導体のバンドギャップを越える波長の光に対しての回折が主となるため、光電変換効率に寄与せず、むしろ熱変換されるため効率は低下する傾向にある。なお、凹凸の平均ピッチとは、硬化樹脂層12の表面における凹凸のピッチ(隣り合う凸部同士又は隣り合う凹部同士の間隔)を測定した場合において、凹凸のピッチの平均値のことをいう。また、このような凹凸のピッチの平均値は、表面の凹凸の形状を走査型プローブ顕微鏡(例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の製品名「E−sweep」等)を用いて凹凸解析画像を測定した後に、かかる凹凸解析画像中における、任意の隣り合う凸部同士又は隣り合う凹部同士の間隔を10点以上測定し、その平均を求めて算出される値を採用する。更に、このような凹凸のピッチは、後述する本発明にかかる母型を利用することで効率よく形成することが可能となる。
また、硬化樹脂層12の表面に形成されている凹凸の平均ピッチを、太陽電池を形成するに用いる半導体層を形成するための材料の有するバンドギャップに相当する波長の長さに対して、半導体層の屈折率(no)と基盤の屈折率(ni)が式=1/(ni−no)となる比率以下の長さとなるように設計することが好ましい。このような凹凸の平均ピッチが前記上限を超えると半導体のバンドギャップを超える波長の回折が主となるため、光電変換は生じず、熱変換のみが生じて光電変換効率が低下する傾向にある。なお、凹凸の平均ピッチの下限に関しては、上述のように太陽光の波長に対してピッチが狭くなるため十分な回折効果が得られないため、100nm以上が好ましい。
また、硬化樹脂層12の表面に形成されている凹凸の平均高さは5〜200nmの範囲であることが好ましく、20〜200nmの範囲であることがより好ましく、50〜150nmの範囲であることが更に好ましい。このような凹凸の平均高さ(深さ)が前記下限未満では、可視光の波長に対して高さが低すぎるため必要な回折が生じなくなり、太陽電池に用いた場合に光閉じ込め効果が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、凹凸基板上に積層される膜や膜種によっては被覆性が低下し、光電変換効率が低下する傾向にある。なお、凹凸の平均高さとは、硬化樹脂層の表面における凹凸の高さ(凹部及び凸部との深さ方向の距離)を測定した場合において、凹凸の高さの平均値をいう。また、このような凹凸の高さの平均値は、表面の凹凸の形状を走査型プローブ顕微鏡(例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の製品名「E−sweep」等)を用いて凹凸解析画像を測定した後に、かかる凹凸解析画像中における、任意の凹部及び凸部との深さ方向の距離を10点以上測定し、その平均を求めて算出される値を採用する。なお、このような凹凸の高さ(深さ)を形成することは、後述する本発明にかかる母型を利用することで容易に達成できる。
透明導電層13は、透明で且つ導電性を有する層であり、太陽電池における透明電極として利用可能な層である。このような透明導電層13としては、太陽電池の透明電極に利用することが可能な材料からなる層であればよく、特に制限されず、例えば、金、銀、クロム、銅、タングステンなどの金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜を利用することができる。このような金属酸化物としては、錫や亜鉛等の金属酸化物に微量の他の金属元素をドープしたもの(例えば、Indium Tin Oxide(ITO(In:Sn))、Fluorine doped Tin Oxide(FTO(SnO:F))、Aluminum doped Zinc Oxide(AZO(ZnO:Al))、Indium doped Zinc Oxide(IZO(ZnO:I))、Germanium doped Zinc Oxide(GZO(ZnO:Ge))等)が好適なものとして用いられる。
このような透明導電層13の厚みは、10〜2000nmであることが好ましく、100nm〜1000nmであることがより好ましい。このような透明導電層13の厚みが前記下限未満では抵抗値が十分に得られず、光電変換効率が落ちる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、透過率が落ちたり、成膜時間が長くかかるため生産効率の点からも不利となる傾向にある。
また、このような透明導電層13の表面抵抗(シート抵抗)は、好ましくは50Ω/sq以下、より好ましくは10Ω/sq以下である。このような透明導電層13の抵抗値が前記上限を超えると、光電効果で生じたキャリアの伝播効率が落ちるため光電変換効率が落ちる傾向にある。
以上、本発明の太陽電池用透明導電性基板の製造方法により得ることが可能な太陽電池用透明導電性基板の好適な一実施形態について説明したが、前記太陽電池用透明導電性基板は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記図1に示す実施形態においては透明支持基板11と、透明支持基板11上に積層され且つ表面に凹凸が形成されている硬化樹脂層12と、硬化樹脂層12上に積層された透明導電層13とを備えるものであるが、上記太陽電池用透明導電性基板は、透明支持基板と、透明導電層と、前記透明支持基板と前記透明導電層との間に配置された硬化樹脂層とを備えていればよく、上記太陽電池用透明導電性基板の効果を損なわない範囲において、これらの層間に太陽電池に利用可能な他の層(接着層なども含む)を更に含んでいてもよい。
次に、前記太陽電池用透明導電性基板を製造するために好適に利用可能な方法について説明する。このような方法としては、例えば、以下に記載の第一工程及び第二工程を含む太陽電池用透明導電性基板の製造方法を好適に採用することができる。
このような太陽電池用透明導電性基板の製造方法は、透明支持基板上に硬化性樹脂を塗布し、母型を押し付けつつ前記硬化性樹脂を硬化させた後、前記母型を取り外すことにより、前記透明支持基板上に凹凸が形成された硬化樹脂層を積層する工程(第一工程)と、
前記硬化樹脂層上に、前記硬化樹脂層の表面に形成されている凹凸の形状が維持されるようにして、透明導電層を積層して、透明支持基板と硬化樹脂層と透明導電層とを備える太陽電池用透明導電性基板を得る工程(第二工程)と、
を含み、且つ、
前記母型が、
第1のホモポリマーからなる第1のポリマーセグメントと、前記第1のホモポリマーの溶解度パラメーターよりも0.1〜10(cal/cm1/2高い溶解度パラメーターを有する第2のホモポリマーからなる第2のポリマーセグメントとを有しており、且つ、下記条件(i)〜(iii):
(i)数平均分子量が500000以上であること、
(ii)分子量分布(Mw/Mn)が1.5以下であること、
(iii)前記第1のポリマーセグメントと前記第2のポリマーセグメントとの体積比(第1のポリマーセグメント:第2のポリマーセグメント)が3:7〜7:3であること、
を全て満たすブロック共重合体、及び溶媒を含有するブロック共重合体溶液を基材上に塗布する工程(ブロック共重合体溶液塗布工程)と、
前記基材上の塗膜を乾燥させて、前記ブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成することにより、表面に凹凸が形成された第1の母型を得る工程(第1の母型形成工程)と、
を含む方法により得られたものであることを特徴とする方法である。
以下、第一工程及び第二工程を分けて説明する。
先ず、第一工程について説明する。図2〜4は、第一工程の好適な一実施形態を説明するために、樹脂を基板上に塗布した状態等を模式的に示した縦断面図である。すなわち、図2は、透明支持基板上に硬化性樹脂を塗布した状態を模式的に示す縦断面図であり、図3は、母型を押し付けつつ硬化性樹脂を硬化させた状態を模式的に示す縦断面図であり、図4は、母型を取り外して硬化樹脂層の表面に凹凸が形成させた状態を模式的に示す縦断面図である。
第一工程においては、先ず、図2に示すように、透明支持基板11上に硬化性樹脂12’を塗布し、その後、図3に示すように、母型21を押し付けつつ硬化性樹脂12’を硬化させる。このような透明支持基板11としては、また、透明支持基板11の厚みは、1〜500μmの範囲であることが好ましい。
また、このような硬化性樹脂12’としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、架橋型液晶樹脂、シリコーン樹脂(シロキサン結合による主骨格を持つ樹脂)が挙げられる。また、硬化性樹脂12’の塗工厚みは、硬化樹脂層12の厚みが0.1〜5000μmとなる範囲であることが好ましい。硬化性樹脂12’の塗工厚みが前記下限未満では、硬化樹脂層の表面に形成される凹凸の高さが不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、硬化時に生じる樹脂の体積変化の影響が大きくなり、凹凸形状が良好に形成できなくなる傾向にある。また、このような塗工厚みとすることにより、硬化樹脂層12の厚みを0.5〜500μmとすることが可能となる。
また、このような硬化性樹脂12’を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、インクジェット法、スパッター法等の各種コート方法を採用することができる。さらに、硬化性樹脂12’を硬化させる条件としては、使用する樹脂の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温〜250℃の範囲であり、硬化時間が0.5分〜3時間の範囲であることが好ましい。また、硬化性樹脂12’を硬化させる方法としては、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法を採用してもよく、その場合には、照射量は特に制限されないが、20mJ/cm〜10J/cmの範囲であることが好ましく、20mJ/cm〜5J/cmの範囲であることがより好ましい。
第一工程においては、次いで、図4に示すように、硬化後の硬化樹脂層12から母型21を取り外す。このように硬化後の硬化樹脂層12から母型21を取り外す方法としては、特に限定されず、適宜公知の方法を採用することができる。そして、このようにして、透明支持基板11上に凹凸が形成された硬化樹脂層12を積層させることができる(図4参照)。
また、このような第一工程に利用する母型21は、上述のようなブロック共重合体溶液塗布工程と、第1の母型形成工程とを含む方法により得られたものである。
図5〜6は、前記太陽電池用透明導電性基板の製造方法に用いられる母型の製造方法の好適な一実施形態を説明するための模式図(縦断面図)である。そして、図5は、母型の製造する際に、ブロック共重合体溶液を基材上に塗布した状態を模式的に示す縦断面図であり、図6は、母型を製造する際に、ブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成することにより塗膜の表面に凹凸を形成した状態を模式的に示す縦断面図である。
ブロック共重合体溶液塗布工程においては、図5に示すように、ブロック共重合体溶液を基材22上に塗布する。
基材22としては特に制限はないが、例えば、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、ポリシクロオレフィン等の樹脂基板;ガラス、シリコン基板等の無機基板;アルミニウム、鉄、銅等の金属基板が挙げられる。また、基材22は配向処理等の表面処理を施したものであってもよい。
前記ブロック共重合体は、第1のホモポリマーからなる第1のポリマーセグメントと、前記第1のホモポリマーの溶解度パラメーターよりも0.1〜10(cal/cm1/2高い溶解度パラメーターを有する第2のホモポリマーからなる第2のポリマーセグメントとを有するものである。第1及び第2のホモポリマー溶解度パラメーターの差が0.1(cal/cm1/2未満では、ブロック共重合体の規則的なミクロ相分離構造を形成することができず、他方、前記差が10(cal/cm1/2を超える場合はブロック共重合体を均一な溶液を調製することが難しく、ブロック共重合体の規則的なミクロ相分離構造を形成することが困難である。
前記第1のホモポリマー及び前記第2のホモポリマーとして用いることができるホモポリマーの原料となるモノマーとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、オクチルスチレン、メトキシスチレン、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、アクリロニトリル、アクリルアミド、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ジメチルシロキサン、乳酸、ビニルピリジン、ヒドロキシスチレン、スチレンスルホネート、イソプレン、ブタジエン、εカプロラクトン、イソプロピルアクリルアミド、塩化ビニル、エチレンテレフタレート、テトラフルオロエチレン、ビニルアルコールが挙げられる。これらの中でも、相分離形成が生じやすいことと、エッチングで凹凸を形成しやすいという観点から、スチレン、メチルメタクリレート、エチレンオキシド、ブタジエン、イソプレン、ビニルピリジン、乳酸を用いることが好ましい。
また、前記第1のホモポリマー及び前記第2のホモポリマーの組合せとしては、スチレン系ポリマー(より好ましくはポリスチレン)、ポリアルキルメタクリレート(より好ましくはポリメチルメタクリレート)、ポリエチレンオキシド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルピリジン、及びポリ乳酸からなる群から選択される2種の組合せを挙げることができる。これらの組合せの中でも、エッチング処理により一方のホモポリマーを優先的に除去することにより、ブロック共重合体に形成される凹凸の深さを更に深くすることができるという観点から、スチレン系ポリマー及びポリアルキルメタクリレートの組合せ、スチレン系ポリマー及びポリエチレンオキシドの組合せ、スチレン系ポリマー及びポリイソプレンの組合せ、スチレン系ポリマー及びポリブタジエンの組合せがより好ましく、スチレン系ポリマー及びポリメチルメタクリレートの組合せ、スチレン系ポリマー及びポリイソプレンの組合せ、スチレン系ポリマー及びポリブタジエンの組合せが特に好ましい。
前記ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は500000以上であることが必要であり、1000000以上であることがより好ましく、1000000〜5000000であることが特に好ましい。数平均分子量が500000未満では、ブロック共重合体のミクロ相分離構造により形成される凹凸の平均ピッチが小さくなり、得られる硬化樹脂層の凹凸の平均ピッチが不十分となる。
前記ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は1.5以下であることが必要であり、1.0〜1.35であることがより好ましい。分子量分布が1.5を超えると、ブロック共重合体の規則的なミクロ相分離構造を形成することができない。
なお、前記ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレンの分子量に換算した値である。
前記ブロック共重合体においては、前記第1のポリマーセグメントと前記第2のポリマーセグメントとの体積比(第1のポリマーセグメント:第2のポリマーセグメント)が3:7〜7:3であることが必要であり、4:6〜6:4であることがより好ましい。体積比が前記範囲外である場合には、ラメラ構造に起因する凹凸パターンを形成することが困難となる。
前記ブロック共重合体溶液は、前記ブロック共重合体及び溶媒を含有するものである。前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;ブトキシエチルエーテル、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノール、ベンジルオキシエタノール等のエーテルアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;フェノール、クロロフェノール等のフェノール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;2硫化炭素等の含ヘテロ元素化合物;これらの混合溶媒が挙げられる。前記ブロック共重合体溶液における前記ブロック共重合体の含有率は、ブロック共重合体溶液100質量%に対して、0.1〜15質量%であることが好ましく、0.3〜5質量%であることがより好ましい。
また、前記ブロック共重合体溶液は、他のホモポリマー(その溶液中に含まれるブロック共重合体中の前記第1のホモポリマー及び前記第2のホモポリマー以外のホモポリマー:例えば、ブロック共重合体中の前記第1のホモポリマー及び前記第2のホモポリマーの組合せがポリスチレン及びポリメチルメタクリレートの組合せである場合には、ポリスチレンとポリメチルメタクリレート以外の種類のホモポリマーであればよい。)、界面活性剤、イオン性化合物、消泡剤、レベリング剤等を更に含有していてもよい。前記ブロック共重合体溶液が更に他のホモポリマーを含有することにより、ブロック共重合体のミクロ相分離により形成される凹凸がより深くなる傾向にある。
また、このような他のホモポリマーとしては、その効果(凹凸がより深くなる効果)がより高度なものとなることから、ポリアルキレンオキシドを用いることが好ましい。更に、このようなポリアルキレンオキシドとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドがより好ましく、ポリエチレンオキシドが特に好ましい。また、このようなポリエチレンオキシドとしては、下記式:
HO−(CH−CH−O)−H
[式中、nは10〜5000の整数(より好ましくは50〜1000の整数、更に好ましくは50〜500の整数)を示す。]
で表されるものが好ましい。このようなnの値が前記下限未満では、分子量が低すぎて、高温での熱処理で揮発・蒸発などにより失われ、効果が消失する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、分子量が高すぎて分子運動性が低いため、相分離の速度が遅くなりミクロ相分離構造の形成が不十分となる傾向にある。
また、このような他のホモポリマーの数平均分子量(Mn)は460〜220000であることが好ましく、2200〜46000であることがより好ましい。このような数平均分子量が前記下限未満では、分子量が低すぎて、高温での熱処理で揮発・蒸発等により失われ、効果が消失する傾向にあり、他方、前記上限を超えると分子量が高すぎて分子運動性が低いため、相分離の速度が遅くなりミクロ相分離形成が不十分となる傾向にある。
このような他のホモポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は1.5以下であることが好ましく、1.0〜1.3であることがより好ましい。分子量分布が前記上限を超えるとミクロ相分離の形状の均一性が保持できなくなる傾向にある。なお、このような数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレンの分子量に換算した値である。
また、このような他のホモポリマーを用いる場合、前記ブロック共重合体中の前記第1のホモポリマー及び前記第2のホモポリマーの組合せがポリスチレン及びポリメチルメタクリレートの組合せ(ポリスチレン−ポリメチルメタクリレート)であり、且つ前記他のホモポリマーがポリアルキレンオキシドであることが好ましい。このように、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレートのブロック共重合体とポリアルキレンオキシドとを組み合わせて用いることにより、垂直方向の配向性が更に向上して、表面の凹凸の深さを更に深くすることが可能となるとともに、製造時の熱処理時間を短縮することも可能となる傾向にある。
前記他のホモポリマーを用いる場合には、その含有量は、前記ブロック共重合体100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、5質量部〜100質量部であることがより好ましい。このような他のホモポリマーの含有量が前記下限未満では他のホモポリマーを含有させることにより得られる効果が十分に得られなくなる傾向にある。
また、前記界面活性剤を用いる場合には、その含有量は、前記ブロック共重合体100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましい。さらに、前記イオン性化合物を用いる場合には、その含有量は、前記ブロック共重合体100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましい。
また、前記ブロック共重合体溶液中に前記他のホモポリマーを含有させる場合、前記ブロック共重合体と前記他のホモポリマーとの総量の含有率は、ブロック共重合体溶液中に、0.1〜15質量%であることが好ましく、0.3〜5質量%であることがより好ましい。このような総量の含有率が前記下限未満では必要な膜厚を得るために前記溶液を十分なwet膜厚で均一に塗布することができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶媒に均一に溶けた溶液を調製することが困難となる傾向にある。
前記ブロック共重合体溶液を塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法,カーテンコート法、インクジェット法を採用することができる。
前記ブロック共重合体の塗膜23’の厚みとしては、乾燥後の塗膜23の厚みが、10〜3000nmとなる範囲であることが好ましく、50〜500nmとなる範囲であることがより好ましい。また、乾燥後の塗膜23の厚みはブロック共重合体のラメラ周期の整数倍に近いことが好ましい。
第1の母型形成工程においては、図6に示すように、基材22上の塗膜23’を乾燥させて、前記ブロック共重合体のミクロ相分離構造を形成することにより、乾燥後の塗膜23の表面に凹凸を形成させる。塗膜23’を乾燥させる際の温度は塗膜23’から溶媒を除去できる温度であれば特に制限はないが、例えば、30〜200℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。このようにして、基材22及び乾燥後の塗膜23を備えており、表面に凹凸が形成された第1の母型21を得ることができる。
このような第1の母型を得る工程においては、乾燥後の塗膜23を前記ブロック共重合体のガラス転移温度(Tg)より高い温度で加熱することが好ましい。このような加熱温度が上記下限未満になると分子運動性が低いためにミクロ相分離構造を形成するまでの時間が長時間に及ぶ傾向にある。また、この加熱温度の上限は前記ブロック共重合体が熱分解しない温度であればよく特に制限はない。
なお、このような乾燥後の塗膜23に対しては、ミクロ相分離構造により形成される凹凸の規則性を更に向上させるために、前述の乾燥後の塗膜23をガラス転移温度(Tg)より高い温度で加熱する工程の代わりに、例えば、特定の有機溶媒(例えばクロロホルム)の飽和蒸気圧下において3〜240時間程度静置して乾燥後の塗膜23に対して有機溶媒による処理を施して凹凸の規則性を向上させる工程、電場を利用して凹凸の規則性を向上させる工程、剪断力を利用して凹凸の規則性を向上させる工程、超臨界流体を利用して凹凸の規則性を向上させる工程等を適宜実施してもよい。なお、このような工程は、ブロック共重合体の種類、溶媒の種類、他のホモポリマーの種類等に応じて適宜好適な工程を選択すればよく、例えば、前記ブロック共重合体溶液としてポリスチレン−ポリメチルメタクリレートのブロック共重合体とポリアルキレンオキシド(他のポリマー)とを組み合わせたものを利用した場合には、特に、乾燥後の塗膜23を前記ブロック共重合体のガラス転移温度(Tg)より高い温度で加熱する工程を採用することが好ましい。
前記第1の母型を得る工程において、乾燥後の塗膜23にエッチング処理を施すことが好ましい。前記エッチング処理により、ブロック共重合体のミクロ相分離により形成される凹凸がより深くなる傾向にある。前記エッチング処理としては、例えば、反応性イオンエッチング法、オゾン酸化法、加水分解法、金属イオン染色法、紫外線エッチング法等を用いたエッチング法を採用することができる。また、前記エッチング処理として、前記ブロック共重合体の共有結合を酸、塩基及び還元剤からなる群から選択される少なくとも1種で処理して前記共有結合を切断し、その後、一方のポリマーセグメントだけを溶解する溶媒等でミクロ相分離構造が形成された塗膜を洗浄することにより、ミクロ相分離構造を保ったまま、一方のポリマーセグメントのみを除去する方法を採用してもよい。
このように、第1の母型は、その表面にミクロ相分離構造による凹凸が形成されたものとなる。このような第1の母型においては、表面に形成されている凹凸の形状を原子間力顕微鏡を用いて解析して凹凸解析画像を得た後に、その凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施して得られるフーリエ変換像が円状又は円環状の模様を示すものである。具体的には、前記フーリエ変換像が、波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円状又は円環状の模様を示しており、且つ、円状又は円環状の模様が、波数の絶対値が0.5〜10μm−1(より好ましくは0.9〜10μm−1)の範囲内となる領域内に存在するものなるとなる。このような凹凸が形成された第1の母型21を母型として用いていることで、形成する硬化樹脂層に、かかる母型の凹凸の特性に由来する特性を有する凹凸形状を形成することが可能となり、効率よく硬化樹脂層12を形成させることが可能となる。
このような第1の母型の表面に形成されている凹凸の平均ピッチとしては、100〜2000nmの範囲であることが好ましく、100〜1100nmの範囲であることがより好ましい。凹凸の平均ピッチが前記下限未満では、可視光の波長に対してピッチが小さくなりすぎるため、かかる母型を用いて得られる硬化樹脂層において必要な回折が生じなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、かかる母型を用いて得られる硬化樹脂層の回折角が小さくなり、硬化樹脂層の光の回折機能が失われてしまう傾向にある。なお、凹凸の平均ピッチとは、硬化樹脂層の表面における凹凸のピッチ(隣り合う凸部同士又は隣り合う凹部同士の間隔)を測定した場合において、凹凸のピッチの平均値のことをいう。また、このような凹凸のピッチの平均値は、表面の凹凸の形状を走査型プローブ顕微鏡(例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の製品名「E−sweep」等)を用いて凹凸解析画像を測定した後に、かかる凹凸解析画像中における、任意の隣り合う凸部同士又は隣り合う凹部同士の間隔を10点以上測定し、その平均を求めて算出される値を採用する。
また、このような第1の母型においては、表面に形成されている凹凸の平均高さは5〜200nmの範囲であることが好ましく、20〜200nmの範囲であることがより好ましく、50〜150nmの範囲であることが更に好ましい。凹凸の平均高さが前記下限未満では、得られた硬化樹脂層(回折格子)を利用した場合に、可視光の波長に対し高さが低すぎるため必要な回折が生じなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られた硬化樹脂層(回折格子)を利用した場合に、凹凸基板上に積層される膜や膜種によっては被覆性を落とし、光電変換効率を落とす傾向にある。なお、凹凸の平均高さとは、硬化樹脂層の表面における凹凸の高さ(凹部及び凸部との深さ方向の距離)を測定した場合において、凹凸の高さの平均値のことをいう。また、このような凹凸の高さの平均値は、表面の凹凸の形状を走査型プローブ顕微鏡(例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の製品名「E−sweep」等)を用いて凹凸解析画像を測定した後に、かかる凹凸解析画像中における、任意の凹部及び凸部との深さ方向の距離を10点以上測定、その平均を求めて算出される値を採用する。
第1の母型21上に転写材料24’を付着させて硬化させた後、前記第1の母型から取り外すことにより、表面に凹凸が形成された第2の母型を得る工程(第2の母型形成工程)を更に含むことが好ましい。
図7は、このような母型の製造方法において転写材料を第1の母型上に付着させた状態を模式的に示す縦断面図であり、図8は、硬化後の第2の母型を第1の母型から取り外した状態を模式的に示す縦断面図である。
このような第2の母型形成工程においては、先ず、図7に示すように、第1の母型21上に転写材料24’を付着させて硬化させる。このような転写材料24’としては、特に限定されず、例えば、ニッケル、ケイ素、炭化ケイ素、タンタル、グラッシーカーボン、石英、シリカ等の無機物;シリコーン系ポリマー(シリコーンゴム)、ウレタンゴム、ノルボルネン樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリル樹脂、液晶ポリマー、エポキシ樹脂等の樹脂組成物が挙げられる。これらの転写材料の中でも、成形性、微細形状の追従性、型離れという観点から、シリコーン系ポリマー、ニッケル、ケイ素、炭化ケイ素、タンタル、グラッシーカーボン、石英、シリカ、アクリル樹脂がより好ましく、シリコーン系ポリマー、アクリル樹脂が更により好ましく、ポリジメチルシロキサンを含有するシリコーン系ポリマー、フッ素系アクリル樹脂であることが特に好ましい。また、転写材料の型離れをよくするために、母型21に薄くPt、Al、Au、Ni等の金属を蒸着してもよく、或いは、フッ素系の離型剤による処理又はその他の表面処理を薄く施してもよい。また、このように転写材料24’を付着させる方法としては、特に限定されず、例えば、真空蒸着法;スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、インクジェット法、スパッター法等の各種コート方法を採用することができる。また、転写材料24’を硬化させる条件としては、使用する転写材料の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温〜250℃の範囲であり、硬化時間が0.5分〜3時間の範囲であることが好ましい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm〜10J/cmの範囲であることが好ましい。
第2の母型形成工程においては、その後、図8に示すように、硬化後の転写材料24を第1の母型21から取り外して第2の母型24を得る。このように第2の母型24を第1の母型21から取り外す方法としては、特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、以上説明したように、第1の母型21から第2の母型24を直接製造してもよいが、第1の母型21から1以上の中間的な母型を介して第2の母型24を製造してもよい。このような中間的な母型は、第2の母型形成工程と同様の工程により形成することができ、例えば、凹凸構造を反転させるために中間的な母型を介して第2の母型24を製造してもよい。中間的な母型を製造するための転写材料としては、転写材料24’と同様のものを用いることができる。
以上、第一工程を説明したが、次に、第二工程について説明する。第二工程は、前記硬化樹脂層上に、前記硬化樹脂層の表面に形成されている凹凸の形状が維持されるようにして、透明導電層を積層し、透明支持基板と硬化樹脂層と透明導電層とを備える太陽電池用透明導電性基板を得る工程である。
このような透明導電層13を製造する工程は、前記硬化樹脂層の表面に形成されている凹凸の形状が維持されるようにしながら透明導電層を積層する以外は特に制限されず、前記硬化樹脂層の表面に形成されている凹凸の形状が維持可能な温度条件等を採用しながら、太陽電池の透明導電層を形成させることが可能な公知の方法を適宜利用すればよい。このような透明導電層13の製造方法としては、前述の透明導電層13を形成するための材料を適宜用いて、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、電子ビーム真空蒸着法、スパッタリング法等の公知の方法を採用して基板上に透明導電層を製造する方法を採用することができる。
以上、上記第一工程及び第二工程を含む太陽電池用透明導電性基板の製造方法を説明したが、上記太陽電池用透明導電性基板を製造するために好適に利用可能な方法は、上記太陽電池用透明導電性基板の製造方法に制限されるものではない。例えば、前記母型として、70℃以上の温度条件下において、熱により体積が変化するポリマーからなるポリマー膜の表面に蒸着膜を形成した後、前記ポリマー膜及び前記蒸着膜を冷却することにより、前記蒸着膜の表面に皺による凹凸を形成する工程(凹凸形状形成工程)と、
前記蒸着膜上に母型材料を付着させ硬化させた後に、硬化後の母型材料を前記蒸着膜から取り外して母型を得る工程(母型形成工程)と、
を含む方法により得られた母型を用いる以外は、上記第一工程及び第二工程を含む太陽電池用透明導電性基板の製造方法と同様の方法を採用することにより太陽電池用透明導電性基板を得る方法(本発明の太陽電池用透明導電性基板の製造方法)を採用してもよい。以下において、このような凹凸形状形成工程及び母型形成工程について説明する。
このような凹凸形状形成工程においては、先ず、熱により体積が変化するポリマーからなるポリマー膜を準備する。熱により体積が変化するポリマーとしては、加熱又は冷却により体積が変化するもの(例えば、熱膨張係数が50ppm/K以上のもの)を適宜使用することができるが、ポリマーの熱膨張係数と蒸着膜の熱膨張係数との差が大きく、高い柔軟性を有しているために、蒸着膜の表面に皺による凹凸が形成しやすいという観点から、シリコーン系ポリマーがより好ましく、ポリジメチルシロキサンを含有するシリコーン系ポリマーであることが特に好ましい。また、このようにポリマー膜を形成する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法,カーテンコート法、インクジェット法、スプレーコート法、スパッター法、真空蒸着法等を採用することができる。さらに、このようなポリマー膜の厚みとしては、10〜5000μmの範囲であることが好ましく、10〜2000μmの範囲であることがより好ましい。
凹凸形状形成工程においては、次に、70℃以上の温度条件下において、ポリマー膜の表面に蒸着膜を形成する。蒸着膜を形成する際の温度は70℃以上であることが必要であるが、90℃以上であることがより好ましい。前記温度が70℃未満では、蒸着膜の表面に皺による凹凸を十分に形成することができない。蒸着膜を形成する方法としては、蒸着法、スパッター法等の公知の方法を適宜採用することができる。これらの方法の中でも、ポリマー膜の表面に形成されている凹凸の形状を維持するという観点から、蒸着法を採用することが好ましい。また、蒸着膜の材質は特に限定されないが、例えば、アルミニウム、金、銀、白金、ニッケル等の金属、酸化アルミニウム等の金属酸化物が挙げられる。
凹凸形状形成工程においては、次いで、ポリマー膜及び蒸着膜を冷却することにより、蒸着膜の表面に皺による凹凸を形成する。このように、ポリマー膜の熱膨張係数と蒸着膜の熱膨張係数との間には差があるため、ポリマー膜及び蒸着膜がそれぞれ熱により体積が変化して、蒸着膜の表面に皺による凹凸(いわゆるバックリングパターン、又は、いわゆるチューリングパターン)を形成することができる。また、冷却後のポリマー膜及び蒸着膜の温度は40℃以下であることが好ましい。冷却後のポリマー膜及び蒸着膜の温度が前記上限を超える場合には、蒸着膜の表面に皺による凹凸を形成し難くなる傾向にある。さらに、ポリマー膜及び蒸着膜を冷却する際の降温速度は1〜80℃/分の範囲内とすることが好ましい。前記降温速度が前記下限未満では、凹凸が緩和されてしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリマー膜又は蒸着膜の表面にクラック等の傷が発生しやすくなる傾向にある。
母型形成工程においては、先ず、蒸着膜上に母型材料を付着させ硬化させる。このような母型材料としては、特に限定されず、例えば、ニッケル、ケイ素、炭化ケイ素、タンタル、グラッシーカーボン、石英、シリカ等の無機物;シリコーン系ポリマー(シリコーンゴム)、ウレタンゴム、ノルボルネン樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリル、液晶ポリマー等の樹脂組成物が挙げられる。これらの母型材料の中でも、成形性、微細形状の追従性、型離れという観点から、シリコーン系ポリマー、ニッケル、ケイ素、炭化ケイ素、タンタル、グラッシーカーボン、石英、シリカがより好ましく、シリコーン系ポリマーが更により好ましく、ポリジメチルシロキサンを含有するシリコーン系ポリマーであることが特に好ましい。また、このように母型材料を付着させる方法としては、特に限定されず、例えば、真空蒸着法;スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法,カーテンコート法、インクジェット法、スパッター法等の各種コート方法を採用することができる。また、母型材料を硬化させる条件としては、使用する母型材料の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温〜250℃の範囲であり、硬化時間が0.5分〜3時間の範囲であることが好ましい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm〜10J/cmの範囲であることが好ましい。
母型形成工程においては、その後、硬化後の母型材料を蒸着膜から取り外して母型を得る。このように母型を蒸着膜から取り外す方法としては、特に限定されず、適宜公知の方法を採用することができる。
このような母型の製造方法においては、母型材料として熱により体積が変化するポリマーを用いる場合には、ポリマー膜として得られた母型を用いて前記凹凸形状形成工程及び前記母型形成工程を繰り返してもよい。このようにして、母型の表面に形成されている皺を深くすることができ、母型の表面に形成されている凹凸の平均高さを大きくすることができる。そして、このような凹凸形状形成工程と、母型形成工程とを含む母型の製造方法を利用した場合においても、凹凸形状を原子間力顕微鏡を用いて解析して凹凸解析画像を得た場合に、その凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施して得られるフーリエ変換像が円状又は円環状の模様を示し、且つ、前記円状又は円環状の模様が、波数の絶対値が0.5〜10μm−1(より好ましくは0.9〜10μm−1)の範囲内となる領域内に存在するような凹凸形状を母型の表面に形成することが可能となる。
次に、上記太陽電池用透明導電性基板を備える太陽電池について説明する。このような太陽電池は、透明導電性基板と、対極用導電層と、前記透明導電性基板と前記対極用導電層との間に配置された半導体層とを備える太陽電池であって、
前記透明導電性基板が、透明支持基板と、透明導電層と、前記透明支持基板と前記透明導電層との間に配置された硬化樹脂層とを備えており、
前記硬化樹脂層の前記透明導電層と対向する面に凹凸が形成されており、
前記凹凸の形状を原子間力顕微鏡により解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施してフーリエ変換像を得た場合において、前記フーリエ変換像が、波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円状又は円環状の模様を示しており、且つ、
前記円状又は円環状の模様が、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内に存在することを特徴とするものである。すなわち、このような太陽電池は、透明導電性基板と、対極用導電層と、前記透明導電性基板と前記対極用導電層との間に配置された半導体層とを備える太陽電池であって、前記透明導電性基板が、上記太陽電池用透明導電性基板であることを特徴とするものである。このような太陽電池においては、透明導電性基板に、上記太陽電池用透明導電性基板を用いているため、太陽の位置にかかわらず、効率よく光を入射させて十分に高い光閉じ込め効果が得られるため、十分に高度な光電変換効率を達成することが可能である。なお、このような太陽電池中の透明導電性基板の好適なものは、上記太陽電池用透明導電性基板において好適なものとして説明したものと同様である。
また、このような太陽電池の透明導電性基板においては、前記硬化樹脂層の前記透明導電層と対向する面に形成されている凹凸の平均ピッチを、太陽電池の形成に用いる半導体層を形成するための材料の有するバンドギャップに相当する波長の長さに対して、半導体層の屈折率(no)と基盤の屈折率(ni)が式=1/(ni−no)となる比率以下の長さとなるように設計することが好ましい。このような凹凸の平均ピッチが前記上限を超えると、半導体のバンドギャップを超える波長の回折が主となるため、光電変換は生じず、熱変換のみが生じて光電変換効率が下がる傾向にあり、他方、下限に関しては太陽光の波長に対してピッチが狭くなるため十分な回折効果が得られないため、100nm以上が好ましい。
また、太陽電池における前記半導体層としては、特に制限されず、光電変換が可能な半導体層であればよく、太陽電池を製造する際に用いることが可能な公知の半導体からなる層とすればよい。このような半導体の材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコン・ゲルマニウム、シリコン・カーバイド、ガリウム・ヒ素(GaAs)、インジウム・アンチモン(InSb)、カドミウム・セレン(CdSe)等の公知の材料が挙げられる。また、このような半導体層の構成は特に制限されず、例えば、p型半導体層、i型半導体層、n型半導体層の順に積層された構造としてもよい。このようなn型半導体層には、例えば、リン(P)、ヒ素(As)等の公知のドナー元素を添加してもよく、また、p型半導体層には、例えば、ホウ素(B)、アルミニウム(Al等の公知のアクセプター元素を添加してもよい。このような半導体層の形成方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、CVD法、スパッター法、蒸着法等を採用してもよい。なお、このような半導体層の形成工程においても、太陽電池用透明導電性基板中の硬化樹脂層12の凹凸構造を十分に維持するという観点から、できるだけ低温条件で、半導体層を形成することが好ましく、200℃以下の温度条件下で半導体層を形成することが好ましい。このような半導体層の形成工程としては、例えば、半導体層にシリコンを用いる場合、基板温度を180℃程度とし、モノシラン(SiH)を原料ガスとして用い、必要に応じて前記原料ガス中に上記ドナー元素や上記アクセプター元素等を適宜添加しながら、所望の構成となるように、適宜シリコンを堆積させる方法を採用することができる。また、このようにして形成する半導体層の厚みは特に制限されないが、100〜5000nmとすることが好ましい。
また、このような太陽電池においては、透明導電性基板中の透明導電層及び対極導電層がそれぞれ電極として機能する。このような対極導電層としては、特に制限されず、太陽電池の電極を製造する際に用いることが可能な公知の材料からなる層とすればよい。このような対極導電層の材料としては、特に制限されず、例えば、金、銀、クロム、銅、タングステン、上記太陽電池用透明導電性基板中の透明導電層において説明した金属酸化物等を適宜利用することができる。また、このような対極導電層の形成工程も特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、CVD法、スパッター法、蒸着法(例えば電子ビーム蒸着法)等を採用してもよい。
また、このような太陽電池の構成は、前記透明導電性基板と、前記対極用導電層と、前記透明導電性基板と前記対極用導電層との間に配置された前記半導体層とを備えていればよく、他の構成は特に制限されず、その太陽電池の効果を損なわない範囲で他の層(太陽電池に利用される公知の層:例えば反射層や裏面基板等)を適宜用いてもよい。従って、太陽電池の構成を、例えば、太陽電池用透明導電性基板/半導体層/対極用導電層/反射層としたり、太陽電池用透明導電性基板/半導体層/対極用導電層/反射層/裏面基板としてもよい(かかる記載中の「/」は積層していることを示す。)。なお、このような反射層や裏面基板としては公知のものを適宜利用することができ、その製造方法も公知の方法を適宜利用することができる。
以下、実施例、参考例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<ブロック共重合体の種類>
各実施例において用いたブロック共重合体等の樹脂について説明する。なお、ブロック共重合体における第1及び第2のポリマーセグメントの体積比(第1のポリマーセグメント:第2のポリマーセグメント)は、ポリスチレンの(PS)密度が1.05g/cmであり、ポリメチルメタクリレート(PMMA)の密度が1.19g/cmであるものとして算出した。さらに、ポリマーセグメント又はポリマーの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー(株)製、型番「GPC−8020」、TSK−GEL SuperH1000、SuperH2000、SuperH3000及びSuperH4000を直列に接続したもの)を用いて測定した。また、ポリマーセグメントのガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計(Perkin−Elmer社製、製品名「DSC7」)を用いて、0〜200℃の温度範囲について20℃/minの昇温速度にて昇温しつつ測定した。さらに、PS、PMMAの溶解度パラメーターはそれぞれ9.0、9.3及び8.1である(化学便覧 応用編 改定2版参照)。
ブロック共重合体(P−1):PSとPMMAとのブロック共重合体、Polymer Source社製、PSセグメントのMn=868,000、PMMAセグメントのMn=857,000、PSとPMMAとのブロック共重合体のMn=1720000、PSセグメントとPMMAセグメントとの体積比(PS:PMMA)=53:47、分子量分布(Mw/Mn)=1.30、PSセグメントのTg=96℃、PMMAセグメントのTg=110℃
ホモポリマー(A):ポリエチレンオキサイド(PEO)、東京化成社製の商品名「ポリエチレングリコール4000」、ホモポリマーのMw=3000、分子量分布(Mw/Mn)=1.10。
<凹凸解析画像及びフーリエ変換像の測定法>
各実施例における硬化樹脂層や母型の凹凸形状の凹凸解析画像は、原子間力顕微鏡(SIIナノテクノロジー社製の環境制御ユニット付走査型プローブ顕微鏡「NanonaviIIステーション/E−sweep」)を用いて、下記の解析条件:
測定モード:ダイナミックフォースモード
カンチレバー:SI−DF40(材質:Si、レバー幅:40μm、チップ先端の直径:10nm)
測定雰囲気:大気中
測定温度:25℃
により解析して求めた。また、前記凹凸形状のフーリエ変換像は、前記凹凸解析画像に対して1次傾き補正を含むフラット処理を施した後に2次元高速フーリエ変換処理を施すことにより求めた。
(参考例1)
〈母型(M−3)の製造工程〉
先ず、99mgのブロック共重合体(P−1)を10gのトルエンに溶解した後に、孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過してブロック共重合体溶液を得た。得られたブロック共重合体溶液を基材としてのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン(株)製)上に回転速度800rpmにてスピンコートし、その後、塗膜を55℃のホットプレート上で10分間乾燥させ、次いで、130℃の真空オーブン中で24時間のアニール処理を施して、ミクロ相分離により表面に凹凸が形成された第1の母型(M−1)を得た。
このようにして得られた第1の母型(M−1)について上記凹凸解析画像及びフーリエ変換像の測定法を採用して、凹凸解析画像及びフーリエ変換像を得た。得られた凹凸解析画像を図9に示し、断面の凹凸解析画像を図10に示し、フーリエ変換像を図11に示す。図9〜10に示す凹凸解析画像からも明らかなように、第1の母型(M−1)の表面にはミクロ相分離による凹凸が形成されていることが確認された。また、図11に示す結果からも明らかなように、フーリエ変換像は波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円状の模様を示しており且つ前記円状の模様が、波数の絶対値が0.5〜5μm−1の範囲内となる領域内にフーリエ変換像を構成する輝点の90%以上の点が存在するものであることが確認された。また、母型(M−1)の凹凸の平均ピッチは280nmであり、凹凸の平均高さは5nmであった。なお、平均ピッチ及び平均高さは、それぞれ、凹凸解析画像に基づいて、任意の10点の高さや距離を求めることにより算出した(以下の実施例等においても同様の方法を採用した。)。さらに、得られた母型におけるブロック共重合体(P−1)からなる塗膜の厚みを段差測定計(小坂製作所製、製品名「SURF−COATER ET−4000A」)を用いて測定したところ、塗膜の厚みは104nmであった。
次に、得られた母型(M−1)の塗膜に高圧水銀灯を用いて12J/cmの照射強度で紫外線を照射した後に、酢酸中において超音波洗浄を施して、PMMAが選択的に除去されたエッチング処理後の第1の母型(M−2)を得た。また、このようにして得られた母型(M−2)について、上記凹凸解析画像及びフーリエ変換像の測定法により測定して、凹凸解析画像を得た。得られた凹凸解析画像を図12に示し、断面の凹凸解析画像を図13に示す。図9、図10、図12及び図13に示す結果からも明らかなように、エッチング処理により表面に形成されている凹凸の形状が深くなることが確認された。なお、母型(M−2)の凹凸の平均ピッチは280nmであり、凹凸の平均高さは55nmであった。
次いで、得られた母型(M−2)上にシリコーン系ポリマー[シリコーンゴム(ワッカーケミ社製、製品名「Elastosil RT601」)90質量%と硬化剤10質量%との混合樹脂組成物]を滴下法により塗布し、50℃にて1時間加熱して硬化させた後に、母型(M−2)から取り外して第2の母型(M−3)を得た。このようにして得られた母型(M−3)について、上記凹凸解析画像及びフーリエ変換像の測定法により測定して、凹凸解析画像及びフーリエ変換像を得た。得られた凹凸解析画像を図14に示し、断面の凹凸解析画像を図15に示し、得られたフーリエ変換像を図16に示す。図16に示すフーリエ変換像からも明らかなように、フーリエ変換像は、波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円状の模様を示しており、且つ前記円状の模様は、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内にフーリエ変換像を構成する全輝点のうちの90%以上の輝点が存在するものであることが確認された。なお、第2の母型(M−3)の凹凸の平均ピッチは280nmであり、凹凸の平均高さは25mであった。
〈太陽電池の製造工程〉
先ず、ガラス基板(Matsunami社製、製品名「Micro slide glass」)及び、ペンタエリストールトリアクリレートおよびペンタエリストールテトラアクリレートを主成分とした紫外線硬化性樹脂(Tg=226度、粘度=206Cp、硬化時の鉛筆硬度=5〜7H)を準備し、ガラス基板上に硬化性樹脂を塗工厚みが15.0μmとなるように塗布し、その後、前記母型(M−3)を押し付けつつ硬化性樹脂に紫外線(エネルギー密度:6000mJ/cm)を照射して硬化させた。その後、硬化後の硬化樹脂層から母型(M−3)を取り外し、ガラス基板上に凹凸が形成された硬化樹脂層(厚み13.5μm)を積層して、第一の積層体(ガラス基板/硬化樹脂層)を得た。
このようにして得られた第一の積層体中の硬化樹脂層について、上記凹凸解析画像及びフーリエ変換像の測定法により測定して、凹凸解析画像及びフーリエ変換像を得た。得られた硬化樹脂層の凹凸解析画像を図17に示し、断面の凹凸解析画像を図18に示し、得られたフーリエ変換像を図19に示す。図19に示すフーリエ変換像からも明らかなように、フーリエ変換像は波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円環状の模様を示しており、且つ前記円環状の模様は、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内にフーリエ変換像を構成する全輝点のうちの90%以上の輝点が存在するものであることが確認された。なお、硬化性樹脂の凹凸の平均ピッチは280nmであり、凹凸の平均高さは35nmであった。
次いで、得られた第一の積層体の前記硬化樹脂層の表面(凹凸形状の形成されている面)に、その表面に形成されている凹凸の形状が維持されるようにしながら、DCマグネトロンスパッター法により、酸化亜鉛(ZnO)にアルミニウム(Al)がドープされた材料(AZO)からなる透明導電性層(透明電極)を積層し、太陽電池用の透明導電性基板を得た。なお、前記透明導電性層は、材料としてAZO(ZnOにAlを1wt%ドープしたスパッタターゲット)を用いて、前記第一の積層体の温度が200℃となる条件を採用してDCマグネトロンスパッター法により層の厚みが500nmとなるようにして形成した層である。
次に、前記透明導電性基板の透明導電層上に、プラズマCVD法を採用して、p型非晶質シリコン層、i型非晶質シリコン層、n型シリコン層を、この順で積層し、透明導電層上に半導体層(光電変換層)を積層して、第二の積層体(透明導電性基板[ガラス基板/硬化樹脂層/透明導電性層]/半導体層)を得た。なお、前記p型非晶質シリコン層は、前記透明導電性基板の温度が180℃となる条件にて、SiHガス(25容量%)、Hガス(75容量%)及びBガス(0.01容量%)からなる第一原料ガスを反応室内の真空度が22Paになるように調整し、20Wのプラズマ放電電力の条件を採用し、層の厚みが15nmとなるようにしてプラズマCVD法で形成した層であり、また、前記i型非晶質シリコン層は、前記透明導電性基板の温度が180℃となる条件にて、SiHガス(30容量%)及びHガス(70容量%)からなる第二原料ガスを反応室内の真空度が30Paになるように調整し、30Wのプラズマ放電電力の条件を採用し、層の厚みが350nmとなるようにしてプラズマCVD法で形成した層であり、更に、n型シリコン層は、前記透明導電性基板の温度が180℃となる条件にて、SiHガス(10容量%)、Hガス(90容量%)及びPHガス(0.01容量%)からなる第三原料ガスを反応室内の真空度が28Paになるように調整し、25Wのプラズマ放電電力の条件を採用し、層の厚みが30nmの厚さとなるようにしてプラズマCVD法で形成した層である。
次いで、前記第二の積層体(ガラス基板/硬化樹脂層/透明導電性層/半導体層)に対して、DCマグネトロンスパッタ法を採用して、酸化亜鉛からなる対極用導電層を積層して、第三の積層体(ガラス基板/硬化樹脂層/透明導電性層/半導体層/対極用導電層)を得た。なお、このような対極導電層は、材料として酸化亜鉛を用い、前記第二の積層体の温度が200℃となる条件を採用してスパッタ法により層の厚みが50nmとなるようにして形成した層である。
次に、前記第三の積層体(ガラス基板/硬化樹脂層/透明導電性層/半導体層/対極用導電層)の前記対極導電層上に、電子ビーム蒸着法を採用して、銀からなる反射層(裏面電極)を積層し、太陽電池(ガラス基板/硬化樹脂層/透明導電性層/半導体層/対極用導電層/反射層)を得た。なお、このような反射層は、材料として銀を用い、前記第三の積層体の温度が常温(25℃)となる条件を採用して電子ビーム蒸着法により層の厚みが500nmとなるようにして形成した層である。
参考例1で得られた太陽電池に対して、AM1.5光源を用いて、温度25℃、100mW/cmの照射条件で、太陽光AM1.5スペクトルを照射して電流−電圧特性を測定することにより、光電変換効率が後述の比較例1で得られた太陽電池に対して1.10倍となることが確認された。このような電流−電圧特性の測定結果から、参考例1で得られた太陽電池は、十分に高度な光電変換効率を有するものであることが確認された。このような結果は、透明導電性基板中に形成されている凹凸形状により十分に高度な光閉じ込め効果が発揮されたことに由来する結果である。
(参考例2)
母型(M−3)の代わりに、下記製造工程を採用して得られる母型(M−7)を用いて硬化性樹脂の表面に凹凸形状を形成した以外は参考例1と同様にして太陽電池を得た。
〈母型(M−7)の製造工程〉
100mgのブロック共重合体(P−1)を10gのトルエンに溶解した後に、次に、ホモポリマー(A)を、ブロック共重合体(P−1)100質量部に対してホモポリマー(A)が25質量部となる割合で加えトルエン溶液を得た後に、これを孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過してブロック共重合体溶液を得た。次いで、このようにして得られたブロック共重合体溶液を、基材としてのポリフェニレンスルフィドフィルム(東レ社製)上に回転速度800rpmにてスピンコートし、170℃のオーブン中で5時間加熱してアニール処理を施し、凹凸が形成された第1の母型(M−4)を得た。得られた母型(M−4)について上記凹凸解析画像の測定法により凹凸解析画像を測定したところ、母型(M−4)の表面にはミクロ相分離による凹凸が形成されていることが確認された。
次に、得られた母型(M−4)の塗膜に高圧水銀灯を用いて12J/cmの照射強度で紫外線を照射した後に、アセトン中に浸漬して、PMMA及びPEOが選択的に除去されたエッチング処理後の第2の母型(M−5)を得た。このようにして得られた母型(M−5)について、上記凹凸解析画像の測定法により凹凸解析画像を測定したところ、母型(M−5)の表面にはミクロ相分離による凹凸が形成されていることが確認されるとともに、凹凸の形状の深さが、母型(M−4)の凹凸形状の深さと比べて、より深いものとなっていることが確認された。
次いで、得られた母型(M−5)上に、シリコーン系ポリマー[シリコーンゴム(ワッカーケミ社製、製品名「Elastosil RT601」)90質量%と硬化剤10質量%との混合樹脂組成物]を滴下法により塗布し、50℃にて1時間加熱して硬化させた後に、母型(M−5)から取り外して第2の母型(M−6)を得た。得られた母型(M−6)について、上記凹凸解析画像の測定法により凹凸解析画像を測定したところ、母型(M−6)の表面にはミクロ相分離による凹凸が形成されていることが確認された。
次いで、PET基板(東洋紡社製、製品名「コスモシャインA4100」)及びフッ素系UV硬化樹脂を準備し、PET基板上に硬化樹脂を塗布し、その後、得られた母型(M−6)を押し付けつつフッ素系UV硬化樹脂に紫外線を600mJ/cm照射して硬化させた。その後、硬化後の硬化樹脂層から母型(M−6)を取り外し、PET基板上の第4の母型(M−7)を得た。得られた母型(M−7)について、上記凹凸解析画像の測定法により凹凸解析画像を測定したところ、母型(M−7)の表面にはミクロ相分離による凹凸が形成されていることが確認された。
このようにして得られた母型(M−7)を用いて形成された第一の積層体(ガラス基板/硬化樹脂層:ガラス基板上に硬化樹脂を塗布した後、得られた塗膜に対して、母型(M−7)を押し付けつつ硬化樹脂に紫外線を600mJ/cm照射して硬化させて得られる積層体)中の硬化樹脂層について、上記凹凸解析画像及びフーリエ変換像の測定法により測定して凹凸解析画像及びフーリエ変換像を得た。このようにして得られた硬化樹脂層の凹凸解析画像を図20〜21に示し、断面の凹凸解析画像を22に示し、フーリエ変換像を図23に示す。図23に示すフーリエ変換像からも明らかなように、フーリエ変換像は波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円環状の模様を示しており、且つ前記円環状の模様は、波数の絶対値が0.5〜5μm−1の範囲内となる領域内にフーリエ変換像を構成する全輝点のうちの90%以上の輝点が存在するものであることが確認された。なお、硬化樹脂層の凹凸の平均ピッチは250nmであり、凹凸の平均高さは80nmであった。
(参考例3)
母型(M−3)の代わりに、下記製造工程を採用して得られる母型(M−9)を用いて硬化性樹脂の表面に凹凸形状を形成した以外は参考例1と同様にして太陽電池を得た。
〈母型(M−9)の製造工程〉
ブロック共重合体(P−1)とホモポリマー(A)とを、ブロック共重合体(P−1)100質量部に対してホモポリマー(A)が25質量部となる割合でトルエン中に溶解し、ブロック共重合体(P−1)とホモポリマー(A)の総量の濃度が1.2質量%となるトルエン溶液を得た後に、これを孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過してブロック共重合体溶液を得た。次いで、このようにして得られたブロック共重合体溶液を、ポリフェニレンスルフィド基板(東レ社製)上に回転速度800rpmにてスピンコートして塗膜を得た。次に、170℃の真空オーブン中で8時間加熱してアニール処理を施し、ミクロ相分離により表面に凹凸が形成された第1の母型(M−8)を得た。このようにして得られた母型(M−8)について、上記凹凸解析画像の測定法により測定したところ、母型(M−8)の表面にはミクロ相分離による凹凸が形成されていることが分かった。
次いで、得られた母型(M−8)の塗膜に高圧水銀灯を用いて12J/cmの照射強度で紫外線を照射した後に、酢酸中において超音波洗浄を施して、PMMA、およびPEOが選択的に除去されたエッチング処理後の第1の母型(M−9)を得た。得られた母型(M−9)について、上記凹凸解析画像及びフーリエ変換像の測定法により測定して凹凸解析画像及びフーリエ変換像を得た。得られた凹凸解析画像を図24に示し、断面の凹凸解析画像を図25に示し、フーリエ変換像を図26に示す。図24〜25に示す結果からも明らかなように、母型(M−9)の表面にはミクロ相分離による凹凸が形成されていることが確認された。また、図24〜25に示す結果からも明らかなように、ポリエチレンオキサイド(ホモポリマー(A))を用いることにより、凹部の壁面がより垂直に近いものとなっており、垂直方向の配向性が十分に高くなることが分かった。また、図24〜25に示す結果から、凹凸の形状が十分に深い母型が得られることが確認された。更に、図26に示すフーリエ変換像からも明らかなように、フーリエ変換像は波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円環状の模様を示しており、且つ前記円環状の模様は、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内にフーリエ変換像を構成する全輝点のうちの90%以上の輝点が存在するものであることが確認された。なお、得られた母型(M−9)におけるブロック共重合体(P−1)からなる塗膜の厚みを段差測定計(小坂製作所製、製品名「SURF−COATER ET−4000A」)を用いて測定したところ、塗膜の厚みは115nmであった。また、母型(M−9)の凹凸の平均ピッチは280nmであり、凹凸の平均高さは98nmであった。
このようにして得られた母型(M−9)を用いて形成された第一の積層体(ガラス基板/硬化樹脂層)中の硬化樹脂層について、上記凹凸解析画像及びフーリエ変換像の測定法により測定して凹凸解析画像及びフーリエ変換像を得た。得られた凹凸解析画像を図27〜28に示し、断面の凹凸解析画像を図29に示し、フーリエ変換像を図30に示す。図30に示すフーリエ変換像からも明らかなように、フーリエ変換像は波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円環状の模様を示しており、且つ前記円環状の模様は、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内にフーリエ変換像を構成する全輝点のうちの90%以上の輝点が存在するものであることが確認された。なお、硬化樹脂層の凹凸の平均ピッチは253nmであり、凹凸の平均高さは75nmであった。
(参考例4)
母型(M−3)の代わりに、下記製造工程を採用して得られる母型(M−11)を用いて硬化性樹脂の表面に凹凸形状を形成した以外は参考例1と同様にして太陽電池を得た。
〈母型(M−11)の製造工程〉
先ず、シリコンウェハに、ランダム共重合体の0.1質量%トルエン溶液をスピンコートした後に、温度170℃にて24時間の熱処理を施して基材を得た。次に、ブロック共重合体(P−1)とホモポリマー(A)とを、ブロック共重合体(P−1)100質量部に対してホモポリマー(A)が25質量部となる割合でトルエン中に溶解し、ブロック共重合体(P−1)とホモポリマー(A)の総量の濃度が1.5質量%となるトルエン溶液を得た後に、これを孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過してブロック共重合体溶液を得た。次いで、このようにして得られたブロック共重合体溶液を、前記基材上に回転速度800rpmにてスピンコートして塗膜を得た。次に、前記塗膜を55℃のホットプレート上で10分間乾燥させた後に、190℃の真空オーブン中で12時間加熱してアニール処理を施し、ミクロ相分離により表面に凹凸が形成された第1の母型(M−10)を得た。このようにして得られた母型(M−10)について、上記凹凸解析画像の測定法により測定したところ、母型(M−10)の表面にはミクロ相分離による凹凸が形成されていることが分かった。
次いで、得られた母型(M−10)の塗膜に高圧水銀灯を用いて12J/cmの照射強度で紫外線を照射した後に、アセトン中において超音波洗浄を施して、PMMAおよびPEOが選択的に除去されたエッチング処理後の第1の母型(M−11)を得た。得られた母型(M−11)について表面に形成されている凹凸の形状を、上記凹凸解析画像及びフーリエ変換像の測定法により測定して凹凸解析画像及びフーリエ変換像を得た。得られた凹凸解析画像を図31〜32に示し、断面の凹凸解析画像を図33に示し、フーリエ変換像を図34に示す。図31〜33に示す結果からも明らかなように、母型(M−11)の表面にはミクロ相分離による凹凸が形成されていることが確認された。また、図31〜33に示す結果からも明らかなように、ポリエチレンオキサイド(ホモポリマー(A))を用いることにより、凹部の壁面がより垂直に近いものとなっており、垂直方向の配向性が十分に高くなることが分かった。また、図31〜33に示す結果からも明らかなように、ポリエチレンオキサイド(ホモポリマー(A))を用いることにより、凹凸の形状が十分に深い母型が得られることが確認された。更に、図34に示すフーリエ変換像からも明らかなように、フーリエ変換像は波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円環状の模様を示しており、且つ前記円環状の模様は、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内にフーリエ変換像を構成する全輝点のうちの90%以上の輝点が存在するものであることが確認された。なお、得られた母型(M−11)におけるブロック共重合体(P−1)からなる塗膜の厚みを段差測定計(小坂製作所製、製品名「SURF−COATER ET−4000A」)を用いて測定したところ、塗膜の厚みは180nmであった。また、母型(M−11)の凹凸の平均ピッチは780nmであり、凹凸の平均高さは155nmであった。
このようにして得られた母型(M−11)を用いて形成された第一の積層体(ガラス基板/硬化樹脂層)中の硬化樹脂層について、上記凹凸解析画像及びフーリエ変換像の測定法により測定して凹凸解析画像及びフーリエ変換像を得た。得られた凹凸解析画像を図35〜36に示し、断面の凹凸解析画像を図37に示し、フーリエ変換像を図38に示す。図38に示すフーリエ変換像からも明らかなように、フーリエ変換像は波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円環状の模様を示しており、且つ前記円環状の模様は、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内にフーリエ変換像を構成する全輝点のうちの90%以上の輝点が存在するものであることが確認された。なお、硬化樹脂層の凹凸の平均ピッチは770nmであり、凹凸の平均高さは135nmであった。
(実施例1)
母型(M−3)の代わりに、下記製造工程を採用して得られる母型(M−14)を用いて硬化性樹脂の表面に凹凸形状を形成した以外は参考例1と同様にして太陽電池を得た。
〈母型(M−14)の製造工程〉
先ず、ガラス基板(大きさ:20mm×12mm)上にシリコーン系ポリマー[シリコーンゴム(ワッカーケミ社製、製品名「Elastosil RT601」)90質量%と硬化剤10質量%との混合樹脂組成物]をスピンコート法により塗布し、100℃にて1時間加熱して硬化させてシリコーン系ポリマー膜を形成した。
次に、シリコーン系ポリマー膜上に蒸着法により、温度が100℃であり、圧力が1×10−3Paである条件下において、アルミニウム蒸着膜(厚み:10nm)を形成し、その後、30分かけて室温(25℃)まで冷却した後に、圧力を大気圧(1.013×10Pa)に戻した。シリコーン系ポリマー膜上に形成されたアルミニウム蒸着膜の表面には凹凸が形成されていた。次いで、アルミニウム蒸着膜上にシリコーン系ポリマー[シリコーンゴム(ワッカーケミ社製、製品名「Elastosil RT601」)90質量%と硬化剤10質量%との混合樹脂組成物]を滴下法により塗布し、100℃にて1時間加熱して硬化させた後にアルミニウム蒸着膜から取り外して母型(M−12)を得た。
そして、表面に凹凸が形成されている母型(M−12)上に蒸着法により、温度が100℃であり、圧力が1×10−3Paである条件下において、アルミニウム蒸着膜(厚み:10nm)を形成し、その後、30分かけて室温(25℃)まで冷却した後に、圧力を大気圧(1.013×10Pa)に戻した。母型(M−12)上に形成されたアルミニウム蒸着膜の表面には凹凸が形成されていた。次いで、アルミニウム蒸着膜上にシリコーン系ポリマー[シリコーンゴム(ワッカーケミ社製、製品名「Elastosil RT601」)90質量%と硬化剤10質量%との混合樹脂組成物]を滴下法により塗布し、100℃にて1時間加熱して硬化させた後に、アルミニウム蒸着膜から取り外して母型(M−13)を得た。更に、表面に凹凸が形成されている母型(M−13)上に蒸着法により、温度が100℃であり、圧力が1×10−3Paである条件下において、アルミニウム蒸着膜(厚み:10nm)を形成し、その後、30分かけて室温(25℃)まで冷却した後に、圧力を大気圧(1.013×10Pa)に戻した。母型(M−13)上に形成されたアルミニウム蒸着膜の表面には凹凸が形成されていた。次いで、アルミニウム蒸着膜上にシリコーン系ポリマー[シリコーンゴム(ワッカーケミ社製、製品名「Elastosil RT601」)90質量%と硬化剤10質量%との混合樹脂組成物]を滴下法により塗布し、100℃にて1時間加熱して硬化させた後に、アルミニウム蒸着膜から取り外して母型(M−14)を得た。
このようにして得られた母型(M−14)を用いて形成された第一の積層体(ガラス基板/硬化樹脂層)中の硬化樹脂層について、上記凹凸解析画像及びフーリエ変換像の測定法によりにより測定して、凹凸解析画像及びフーリエ変換像を得た。得られた硬化樹脂層の凹凸解析画像を図39に示し、断面の凹凸解析画像を図40に示し、フーリエ変換像を図41に示す。図41に示すフーリエ変換像からも明らかなように、フーリエ変換像は波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円環状の模様を示しており、且つ前記円環状の模様が波数の絶対値が0.5〜8.0μm−1の範囲内となる領域内にフーリエ変換像を構成する全輝点のうちの90%以上の輝点が存在するものであることが確認された。なお、硬化性樹脂の凹凸の平均ピッチは330nmであり、凹凸の平均高さは75nmであった。
(比較例1)
母型を製造せず、太陽電池の製造工程において第一の積層体の製造工程を下記第一の積層体の製造工程に変更した以外は、参考例1と同様にして太陽電池を得た。
〈第一の積層体の製造工程〉
ガラス基板(Matsunami社製、製品名「Micro slide glass」)及び硬化性樹脂(Norland Optical Adhesive社製、製品名「NOA 61」)を準備し、ガラス基板上に硬化性樹脂を塗布した後に前記硬化性樹脂にそのまま紫外線(エネルギー密度:6000mJ/cm)を照射して硬化させて、第一の積層体(ガラス基板/硬化樹脂層)を得た。
以上説明したように、本発明によれば、太陽電池の透明導電性基板として利用することにより、十分に優れた光閉じ込め効果を発揮でき、太陽電池の光電変換効率を十分に高度なものとすることが可能な太陽電池用透明導電性基板を効率よく製造することが可能な太陽電池用透明導電性基板の製造方法を提供することが可能となる。このような本発明の太陽電池用透明導電性基板の製造方法により得ることが可能な太陽電池用透明導電性基板は、優れた光閉じ込め効果を発揮できるものであるため、薄型太陽電池の光の入射面側の基板等として特に有用である。
10…太陽電池用透明導電性基板、11…透明支持基板、12’…硬化性樹脂の塗膜、12…硬化樹脂層、13…透明導電層、21…母型、22…基材、23’…ウエット状態のブロック共重体の塗膜、23…乾燥後のブロック共重体の塗膜、24’…転写材料の塗膜、24…硬化後の転写材料からなる母型。

Claims (3)

  1. 透明支持基板上に硬化性樹脂を塗布し、母型を押し付けつつ前記硬化性樹脂を硬化させた後、前記母型を取り外すことにより、前記透明支持基板上に凹凸が形成された硬化樹脂層を積層する工程と、
    前記硬化樹脂層上に、前記硬化樹脂層の表面に形成されている凹凸の形状が維持されるようにして、透明導電層を積層して、透明支持基板と硬化樹脂層と透明導電層とを備える太陽電池用透明導電性基板を得る工程と、
    を含み、
    前記母型が、
    70℃以上の温度条件下において、熱により体積が変化するポリマーからなるポリマー膜の表面に蒸着膜を形成した後、前記ポリマー膜及び前記蒸着膜を冷却することにより、前記蒸着膜の表面に皺による凹凸を形成する工程と、
    前記蒸着膜上に母型材料を付着させ硬化させた後に、硬化後の母型材料を前記蒸着膜から取り外して第1の母型を得る工程と、
    を含む方法により得られたものであり、
    前記硬化樹脂層の表面に形成されている凹凸が、該凹凸の形状を原子間力顕微鏡により解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施してフーリエ変換像を得た場合において、前記フーリエ変換像が、波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円環状の模様を示しており、且つ、前記円環状の模様が、波数の絶対値が0.5〜10μm−1の範囲内となる領域内に存在するものであること、
    を特徴とする太陽電池用透明導電性基板の製造方法。
  2. 前記熱により体積が変化するポリマーがシリコーン系ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用透明導電性基板の製造方法。
  3. 前記第1の母型上に転写材料を付着して硬化させた後、前記第1の母型から取り外すことにより、表面に凹凸が形成された第2の母型を得る工程を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池用透明導電性基板の製造方法。
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