次に、実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は一実施形態による腕時計型熱発電デバイスが手首に装着された状態の斜視図である。図2は腕時計型熱発電デバイスが手首に装着された状態の側面図である。
一実施形態による腕時計型熱発電デバイス10は、複数の熱発電ユニット12−1,12−2,12−3がバンド14で連結されて形成された腕時計状のデバイスである。熱発電ユニット12−1,12−2,12−3の各々は、体温と外気温との温度差を利用して発電する装置である。本実施形態では、熱発電ユニット12−1,12−2,12−3の他に信号発信デバイス16がバンド14に取り付けられている。腕時計型熱発電デバイス10は、腕時計と同様にバンド14を手首に巻き付けて、留め金18で固定することで手首に装着することができる。
信号発信デバイス16は、熱発電ユニット12−1,12−2,12−3が発電することにより得られた電力により動作する負荷の一例である。具体的には、信号発信デバイス16は、熱発電ユニット12−1,12−2,12−3が発生した電力を受けて、例えば体温などの計測データを電波によって送信する装置である。送信すべき計測データを得るためのセンサ(図示せず)は、信号発信デバイス16に組み込まれていてもよく、あるいは、バンド14に取り付けられていてもよい。
3つの熱発電ユニット12−1,12−2,12−3は、同じ構造を有している。以下、熱発電ユニット12−1,12−2,12−3の各々を熱発電ユニット12と称することもある。本実施形態では3つの熱発電ユニット12−1,12−2,12−3を用いているが、熱発電ユニット12の数は3つに限られず、2つ以上(複数個)とすることができる。
図3は熱発電ユニット12の側面図である。熱発電ユニット12は、熱電素子20と、ベース部材22と、フィン部材24とを含む。ベース部材22は、例えば金属材料のように伝熱性のよい材料により形成され、熱電素子20の下面(高温側)に取り付けられる。フィン部材24は、例えば金属材料のように伝熱性のよい材料により形成され、熱電素子20の上面(低温側)に取り付けられる。各熱発電ユニット12のベース部材22はバンド14により接続され、ループが形成される。
熱電素子20は、皮膚に接触したベース部材22の温度(すなわち、皮膚の温度)と、フィン部材24の温度(すなわち、外気温)との温度差により、ゼーベック効果を利用して電気エネルギを発生する素子である。したがって、ベース部材22の温度を手首の皮膚の温度に等しくするために、腕時計型熱発電デバイス10を手首に装着した際に、ベース部材22が皮膚に密着した状態とすることが好ましい。
そのためには、腕時計型熱発電デバイス10を手首に装着する際に、バンド14をきつく手首に巻き付ける必要がある。しかし、通常、バンド14をそのようにきつく巻き付けることはなく、緩めに余裕をもって巻き付けることとなる。バンド14を手首に緩めに巻き付けた場合、図4に示すように熱発電ユニット12が手首の皮膚から離れてしまう状態となり得る。図4に示す例では、点線で囲まれた部分において、熱発電ユニット12−3のベース部材22が手首の皮膚から離れてしまっている。このような状態となると、熱発電ユニット12−3のベース部材22は皮膚の温度とはならず、外気温に近い温度となってしまう。したがって、熱電素子20に温度差がなくなってしまい、熱電素子20が発電できなくなってしまう。
なお、本実施形態では熱電素子20に温度差を与えるための熱源(高温側)として人体の一部(腕又は手首)を用いているが、熱源は人体に限られず、外気温(低温側)より高いものであれば熱源として利用できる。
図4に示す例では、熱発電ユニット12−3のベース部材22が腕又は手首の皮膚から離れているが、腕や手首の動きによって、他の熱電ユニット12−1,12−2が皮膚から離れることもあり得る。
ここで、熱発電ユニット12は小型であり、且つ外気温と体温の温度差も小さいため、各熱発電ユニット12の熱電素子20による発電量は極微量であり、発生する電圧及び電流は小さい。このため、本実施形態では、3つの熱発電ユニット12−1,12−2,12−3を直列に接続して、電圧を高くしている。あるいは、3つの熱発電ユニット12−1,12−2,12−3を並列に接続することで、電流を増大している。
図5は3つの熱発電ユニット12−1,12−2,12−3の全てが発電している際の腕時計型熱発電デバイス10の電気回路の等価回路図である。熱発電ユニット12−1,12−2,12−3は、信号発信デバイス16に直列に接続されており、熱発電ユニット12−1,12−2,12−3で発生した電圧の和が信号発信デバイス16に印加される。この電圧により信号発信デバイス16が作動し、電波により計測データを発信することができる。
各熱発電ユニット12は、等価回路で表すと、起電力v(v1,v2,v3)と内部抵抗rが直列に接続された回路となる。起電力v1,v2,v3は、それぞれ、熱発電ユニット12−1,12−2,12−3の熱電素子20が皮膚と外気温の温度差ΔTに比例して発生する起電力である。
ここで、例えば図4に示すように、熱発電ユニット12−3のベース部材22が皮膚から離れてしまった場合、熱発電ユニット12−3の熱電素子20の起電力は無くなり、起電力v3=0となる。図6は熱発電ユニット12−3の熱電素子20の起電力がゼロとなったときの腕時計型熱発電デバイス10の電気回路の等価回路図である。この際、熱発電ユニット12−3の起電力v3はゼロとなるが、内部抵抗rはそのまま負荷として残るので、腕時計型熱発電デバイス10全体としての発電出力は低下してしまう。
そこで、本実施形態では、皮膚から離れてしまって起電力が無くなった熱発電ユニット12を発電回路から切り離すことで、当該熱発電ユニット12の内部抵抗rを切り離し、出力電力の低下を抑制する。例えば、図4に示すように熱発電ユニット12−3がベルト14の弛みにより皮膚から浮き上がって離れたときに、熱発電ユニット12−3を発電回路から切り離す。熱発電ユニット12−3の内部抵抗rに影響されずに、残りの熱発電ユニット12−1,12−2の発電出力をそのまま利用することができるようになる。
ここで、発電回路で得られる電圧を高くしたい場合は、熱発電ユニット12−1,12−2,12−3を直列に接続することで3つの熱発電ユニット12−1,12−2,12−3の各々が出力する電圧の和が発電回路が出力する電圧となる。図7は熱発電ユニット12−1,12−2,12−3を直列に接続した場合の発電回路の等価回路図である。図7において、熱発電ユニット12−3が皮膚から離れたために発電回路から切り離された状態が示されている。すなわち、熱発電ユニット12−3は発電回路から切り離され、熱発電ユニット12−3の両端を短絡する短絡回路が形成される。これにより、発電回路は熱発電ユニット12−1,12−2が直列に接続された回路として動作することができる。
一方、発電回路で得られる電流を大きくしたい場合は、熱発電ユニット12−1,12−2,12−3を並列に接続することで3つの熱発電ユニット12−1,12−2,12−3の各々が出力する電流の和が発電回路が出力する電流となる。図8は熱発電ユニット12−1,12−2,12−3を並列に接続した場合の発電回路の等価回路図である。図8において、熱発電ユニット12−3が皮膚から離れたために発電回路から切り離された状態が示されている。すなわち、熱発電ユニット12−3が接続されている配線を遮断(開放)することで、熱発電ユニット12−3は発電回路から切り離される。これにより、発電回路は熱発電ユニット12−1,12−2が並列接続された回路として動作することができる。
次に、熱発電ユニット12を回路から切り離すための構成について説明する。
まず、熱発電ユニット12が並列に接続された発電回路において、一つの熱発電ユニット12を切り離すための構成について説明する。すなわち、図8に示す等価回路における熱発電ユニット12−3を切り離すためのスイッチ機構について説明する。
図9はフィン部材24が取り除かれた状態の熱発電ユニット12の平面図である。図10及び図11は図9のA−A線に沿った断面図である。熱発電ユニット12のベース部材22の上に配線が形成される。ベース部材22は例えばアルミニウムで形成されており、表面に陽極酸化皮膜が形成されている。陽極酸化皮膜は絶縁性を有する被膜であり、その上に配線を施すことができる。ベース部材22の材料としては、アルミニウムの他に銅、あるいはこれらの金属の合金、さらにはアルミナなどの熱伝導性のよいセラミックスなどを用いることができる。ベース部材22の表面には、絶縁性を保つために例えば酸化膜や窒化膜などの絶縁膜を設けることが好ましい。
ベース部材22上に、電源配線50A及び電源配線50Bが平行に設けられ、それらの間の領域に熱電素子20が配置され固定される。熱電素子20が搭載された位置の近傍に凹部22aが形成される。
ベース部材22に形成された凹部22a内には、形状記憶合金で形成された形状記憶バネ52に支えられた接続端子板54が配置される。形状記憶バネ52は、人間の皮膚の温度(例えば、35℃)度で変形(湾曲)するように設定されており、後述のように接続端子板54を上下に移動するために設けられている。
図12は接続端子板54の平面図である。絶縁材で形成された接続端子板54には、2つの接点54a、54bが形成されている。接続端子板54の中央の下面に形状記憶バネ52の先端が固定される(図10,11参照)。形状記憶バネ52は、皮膚の温度に応じて可逆的に変形する変形部材の一例である。
電源配線50A及び電源配線50Bが形成されたベース部材22上には、さらに、引き出し配線56A,56B及び端子配線58A,58Bが形成されている。
引き出し配線56Aは電源配線50Aから延在し、その先端56Aaは凹部22aの縁の近傍に位置している。また、端子配線58Aの一端58Aaは、熱電素子20のマイナス(−)端子の近傍に位置し、他端58Abは凹部22aの開口に張り出している。引き出し線56Aの先端56Aaが端子配線58Aの他端58Abに電気的に接続されると、熱電素子20のマイナス(−)端子が電源配線50Aに電気的に接続されることとなる。このように引き出し線56Aの先端56Aaと端子配線58Aの他端58Abとを電気的に切り離し可能に接続するために、上述の形状記憶バネ52に支えられた接続端子板54が凹部22a内に配置されている。
ここで、凹部22aの近傍に配置された引き出し配線56Aの端部56Aaは、フレキシブル基板60Aにより、凹部22a内の接続端子板54に設けられた接点54aに電気的に接続されている。接続端子板54は凹部22a内で上下に移動できる状態とする必要があり、柔軟性を有するフレキシブル基板60Aで接続することで、移動可能な状態にしている。凹部22a内の接続端子板54は、凹部22aの開口に張り出した端子配線58Aの端部58Abの直下に接点54aがくるような位置に配置される。
一方、引き出し配線56Bは電源配線50Bから延在し、その先端56Baは凹部22aの縁の近傍に位置している。端子配線58Bの一端58Baは、熱電素子20のプラス(+)端子の近傍に位置し、他端58Bbは凹部22aの開口に張り出している。引き出し線56Bの先端56Baが端子配線58Bの他端58Bbに電気的に接続されると、熱電素子20のプラス(+)端子が電源配線50Bに電気的に接続されることとなる。このように引き出し線56Bの先端56Baと端子配線58Bの他端58Bbとを電気的に切り離し可能に接続するために、上述の形状記憶バネ52に支えられた接続端子板54が凹部22a内に配置されている。
ここで、凹部22aの近傍に配置された引き出し配線56Bの端部56Baは、フレキシブル基板60Bにより、凹部22a内の接続端子板54に設けられた接点54bに電気的に接続されている。接続端子板54は凹部22a内で上下に移動できる状態とする必要があり、柔軟性を有するフレキシブル基板60Bで接続することで、移動可能な状態にしている。凹部22a内の接続端子板54は、凹部22aの開口に張り出した端子配線58Bの端部58Bbの直下に接点54bがくるような位置に配置される。
図10は熱発電ユニット12のベース部材22が皮膚に接触している状態での、凹部22a内の接続端子板54を示している。ベース部材22が皮膚に接触している状態では、ベース部材22が体温(皮膚の温度)に近い温度となっており、形状記憶バネ52も体温に近い温度となる。したがって、形状記憶バネ52は変形(湾曲)し、形状記憶バネ52の先端に固定された接続端子板54は形状記憶バネ52により持ち上げられ上方に移動する。これにより、接続端子板54の接点54a,54bは、それぞれ端子配線58A,58Bの端部58Ab,58Bbに接触し、電気的に接続される。
図10に示す状態となると、熱電素子20のマイナス(−)端子は、端子配線58A、フレキシブル基板60A、及び引き出し配線56Aを介して電源配線50Aに電気的に接続される。また、熱電素子20のプラス(+)端子は、端子配線58B、フレキシブル基板60B、及び引き出し配線56Bを介して電源配線50Bに電気的に接続される。したがって、熱電素子20が発電した電力は電源配線50A,50Bから発電回路に出力される。
図11は熱発電ユニット12のベース部材22が皮膚から離れた状態での、凹部22a内の接続端子板54を示している。ベース部材22が皮膚から離れた状態では、ベース部材22は体温(皮膚の温度)に近い温度より低くなり、形状記憶バネ52も体温に近い温度より低くなる。したがって、形状記憶バネ52の形状は初期の形状に戻り、形状記憶バネ52の先端に固定された接続端子板54は形状記憶バネ52により下方に移動する。これにより、接続端子板54の接点54a,54bは、それぞれ端子配線58A,58Bの端部58Ab,58Bbから離間し、電気的接続が解除される。
図11に示す状態となると、熱電素子20のマイナス(−)端子と電源配線50Aとの間の電気的接続が解除される。また、熱電素子20のプラス(+)端子と電源配線50Bとの間の電気的接続も解除される。したがって、熱電素子20は電源配線50A,50Bを含む発電回路から切り離された状態となる。
上述の例では、熱電素子20のマイナス(−)側端子と電源配線50Aとの間、及びプラス(+)側端子と電源配線50Bとの間の両方を開放することで、熱電素子20を切り離しているが、必ずしも両方を開放する必要はなく、どちらか一方を開放すれば熱電素子20を切り離すことができる。すなわち、例えば接続端子板54に接点54aのみを設けておき、配線電源配線50Aから端子配線58Aまでの配線経路を接点54aのところで開放可能とする。そして、引き出し配線56Bと端子配線58Bを連続した一本の配線として形成して、熱電素子20のプラス(+)側端子は常にこの配線により電源配線50Bに接続されているようにする。
以上説明した構成は、複数の熱発電ユニット12が並列に接続されている発電回路において一つの熱発電ユニット12の熱電素子20を発電回路から切り離すためのスイッチ機構である(図8参照)。ここで、複数の熱発電ユニット12が直列に接続されている発電回路においては、一つの熱発電ユニット12の熱電素子20を切り離したら、電源配線50Aと電源配線50Bとの間を短絡しないと発電回路が遮断された状態になってしまう(図7参照)。そこで、複数の熱発電ユニット12が直列に接続されている発電回路においては、接続端子板54が下方に移動した際に、接点54a及び接点54bが接続端子板54の下側に設けられた短絡用部材に接触して短絡するようにし、電源配線50Aと電源配線50Bとの間を短絡させる。この場合、短絡用部材を凹部22aの底面に配置したとすると、凹部22aの底面に溝を形成して、この溝に形状記憶バネ52を収容すればよい。
以上のように、図9乃至図11に示す構成によれば、熱電素子20を発電回路から切り離す際に、センサやマイコンを用いることなく、形状記憶バネ52を用いて回路の切り替えを実現している。このため、熱発電ユニット12での発電で得られる電力を回路の切替え動作に用いる必要はなく、熱電素子20による微小な発電量を有効に本来の目的に使用することができる。
なお、上述の例では体温に応じて可逆的に変形する形状記憶合金で形成した形状記憶バネ52を変形部材として用いているが、変形部材(形状記憶バネ52)は形状記憶合金に限られず、例えば、規定の温度(体温に近い温度)で変形するバイメタルを用いて形状記憶バネ52を形成してもよい。
次に、熱発電ユニット12を回路から切り離すための他の構成について説明する。
まず、熱発電ユニット12が直列に接続された発電回路において、一つの熱発電ユニット12を切り離すための構成について説明する。すなわち、図7に示す等価回路における熱発電ユニット12−3を切り離すためのスイッチ機構について説明する。
図13はフィン部材24が取り除かれた状態の熱発電ユニット12の平面図である。図14及び図15は図13のA−A線に沿った断面図である。図13において、図9に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
ベース部材22に形成された凹部22a内には、突起状ボタン70の上端に支持された接続端子板54が配置される。突起状ボタン70は後述のようにベース部材22を貫通してベース部材22の底面22bから突出するようにバネ72により付勢されている。突起状ボタン70の先端(下端)を押圧して移動することで、突起状ボタン70の上端に支持された接続端子板54が上下に移動する構成となっている(図14,15参照)。なお、突起状ボタン70は、その一部がベース部材22から突出可能に配置される突出部材の一例であり、ボタン形状に限定されるものではない。また、バネ72としてコイルバネを用いているが、バネ72は突出部材を付勢する弾性部材の一例であり、例えばゴム材、板バネ材、プラスチック材等の様々な部材をバネ72として用いることができる。
図13に示す構成では、電源配線50Bは電源配線50B−1と電源配線50B−2とを含んでいる。電源配線50B−1の端部50B−1aと電源配線50B−2の端部50B−2aとの間には、凹部22aが形成されている。そして、凹部22aの近傍に配置された電源配線50B−1の端部50B−1aは、フレキシブル基板60Aにより、凹部22a内の接続端子板54に設けられた接点54aに電気的に接続されている。上述のように接続端子板54は凹部22a内で上下に移動できる状態とする必要があり、柔軟性を有するフレキシブル基板60Aで接続することで、移動可能な状態にしている。凹部22a内の接続端子板54は、凹部22aの開口に張り出した端子配線58Aの端部58Abの直下に接点54aがくるような位置に配置される。一方、凹部22aの近傍に配置された電源配線50B−2の端部50B−2aは、フレキシブル基板60Bにより、凹部22a内の接続端子板54に設けられた接点54bに電気的に接続されている。接続端子板54は凹部22a内で上下に移動できる状態とする必要があり、柔軟性を有するフレキシブル基板60Bで接続することで、移動可能な状態にしている。凹部22a内の接続端子板54は、凹部22aの開口に張り出した端子配線58Bの端部58Bbの直下に接点54bがくるような位置に配置される。
図14は熱発電ユニット12のベース部材22が皮膚に接触している状態での、凹部22a内の接続端子板54を示している。ベース部材22が皮膚に接触している状態では、ベース部材22の底面22bから突出する突起状ボタン70は皮膚により押圧され、バネ72のバネ力に抗して凹部22a内に押し上げられている。したがって、突起状ボタン70の上端に固定された接続端子板54は突起状ボタン70により持ち上げられ上方に移動する。これにより、接続端子板54の接点54a,54bは、それぞれ端子配線58A,58Bの端部58Ab,58Bbに接触し、電気的に接続される。
図14に示す状態となると、熱電素子20のマイナス(−)端子は、端子配線58A、及びフレキシブル基板60Aを介して電源配線50B−1に電気的に接続される。また、熱電素子20のプラス(+)端子は、端子配線58B、及びフレキシブル基板60Bを介して電源配線50B−2に電気的に接続される。したがって、熱電素子20が発電した電力は電源配線50B−1及び50−B2から発電回路に出力される。
なお、凹部22aの底面には、例えば銅のような導電材により形成された短絡用部材80が配置されている。図16は短絡用部材80の平面図である。短絡用部材80は接続端子板54に対向する位置に配置されており、接続端子板54の接点54a,54bに対向する位置に接点80a,80bが設けられている。接点80aと接点80bの間には、突起状ボタン70が貫通して延在するための貫通孔80cが形成されている。
図15は熱発電ユニット12のベース部材22が皮膚から離れた状態での、凹部22a内の接続端子板54を示している。ベース部材22が皮膚から離れた状態では、突起状ボタン70がバネ21のバネ力により押し下げられ、ベース部材22の底面22bから突出した状態となる。これにより、突起状ボタン70の上端に固定された接続端子板54は下方に移動し、接続端子板54の接点54a,54bは、それぞれ端子配線58A,58Bの端部58Ab,58Bbからから離間し、電気的接続が解除される。
ここで、接続端子板54が下方に移動すると、こんどは、接続端子板54は短絡用部材80に接近し、接続端子板54の接点54a,54bは短絡用部材80の接点80a,80bに接触する。短絡用部材80は導電材で形成されており、接続端子板54の接点54a,54bは短絡用部材80により短絡される。これにより、電源配線50B−1と電源配線50B−2は導通状態となり、熱電素子20を迂回した電源配線が形成される。
すなわち、図15に示す状態となると、熱電素子20のマイナス(−)端子と電源配線50B−1との間の電気的接続が解除される。また、熱電素子20のプラス(+)端子と電源配線50B−2との間の電気的接続も解除される。そして、接続端子板54の接点54a,54bが短絡用部材80により短絡されことにより、電源配線50B−1と電源配線50B−2は導通状態となる。したがって、熱電素子20は電源配線50A,50B−1,50B−2を含む発電回路から切り離された状態となる。
以上説明した構成は、複数の熱発電ユニット12が直列に接続されている発電回路において一つの熱発電ユニット12の熱電素子20を発電回路から切り離すための構成である(図7参照)。ここで、複数の熱発電ユニット12が並列に接続されている発電回路においては、一つの熱発電ユニット12の熱電素子20を切り離したら、電源配線50B−1と電源配線50B−2との間を短絡する必要は無い(図8参照)。そこで、複数の熱発電ユニット12が並列に接続されている発電回路においては、接続端子板54の下方に短絡用部材80を配置する必要はなくなる。
また、複数の熱発電ユニット12が並列に接続されている発電回路においては、熱電素子20のマイナス(−)側端子と電源配線50B−1との間、及びプラス(+)側端子と電源配線50B−2との間の両方を開放する必要はなく、どちらか一方を開放すれば熱電素子20を切り離すことができる。すなわち、例えば接続端子板54に接点54aのみを設けておき、電源配線50B−1から端子配線58Aまでの配線経路を接点54aのところで開放可能とする。そして、端子配線58Bは削除し、電源配線50B−2の端部50B−2aと熱電素子20のプラス(+)側端子とを電気的に接続すればよい。
以上のように、図13乃至図15に示す構成によれば、熱電素子20を発電回路から切り離す際に、センサやマイコンを用いることなく、突起状ボタン70とバネ72による機械的動作を用いて回路の切り替えを実現している。このため、熱発電ユニット12での発電で得られる電力を回路の切替え動作に用いる必要はなく、熱電素子20による微小な発電量を有効に本来の目的に使用することができる。
次に、回路の切替えに用いることのできる他のスイッチ機構について、図17を参照しながら説明する。熱発電デバイスでは、上述のように電力を用いないで回路の切替えを達成することが好ましい。そこで、図17に示すスイッチ機構は、体温を利用して2つの端子の接続、開放を行なう。
スイッチ機構は、ベース部材22の凹部22aに設けられたバネ端子90Aとバネ端子90Bとそれらの間に配置された蓄熱材料溜まり容器92とを含む。バネ端子90Aとバネ端子90Bとは、弾力製を有する金属バネ材等により形成され、互いに対向して配置される。バネ端子90Aとバネ端子90Bとの間に配置された蓄熱材料溜まり容器92には、体温(例えば、36℃)で固体から液体に変化する蓄熱材料が充填されている。
蓄熱材料溜まり容器92は、バネ端子90Aとバネ端子90Bとの間に位置する膨張部92aとその下に位置する貯蔵部92bとを含む、膨張部92aは例えばビニール等の薄いフィルムにより形成されており、変形可能である(容積を変化させることができる)。膨張部92aはオリフィス部92cを介して貯蔵部92bに接続されている。貯蔵部92bは柔軟性を有しない固い材料で形成されており、その容積は膨張部92aのようには変化しない。
膨張部92a、オリフィス部92c、及び貯蔵部92bは一つの繋がった容積を形成する容器であり、その中に蓄熱材料が充填されている。上述のように、蓄熱材料は、体温(例えば、36℃)より低くなると固体となり、体温(例えば、36℃)より高くなると液体に変化する。すなわち、蓄熱材料は、温度に応じて液相と固相との間で相変化し、相変化の際に体積が変化する。具体的には、蓄熱材料は、固相のときのほうが液相のときより密度が低くなり体積が大きくなるという特性を有しているものがある。このような特性を有する材料は、「有機系潜熱蓄熱材」としていくつかの蓄熱材メーカーから入手することができる。
ベース部材22が皮膚から離れているときには、図17(a)に示すように、蓄熱材料は固体となっていて密度は低い状態、すなわち体積が大きくなって膨張した状態となる。このとき、蓄熱材料溜まり容器92のうち、膨張できるのはビニール等の柔軟な材料で形成された膨張部92aのみである。したがって、蓄熱材料が膨張する分は、全て膨張部92aに集中し、膨張部92aは大きく膨張する。したがって、図17(a)に示すように、対向して配置されているバネ端子90Aとバネ端子90Bは膨張部92により押されて開いた状態(接触していない状態)となる。
ベース部材22が皮膚に接触した状態となると、図17(b)に示すように、蓄熱材料が体温と同等の温度(例えば、36℃)となり、蓄熱材料は液体に変化する。このとき、蓄熱材料の体積は小さくなるため、膨張部92a内の蓄熱材料の大部分がオリフィス部92cを通って貯蔵部92bに移動する。このため、バネ端子90A,90Bを押し広げていた膨張部92aが縮小し、図17(b)に示すように、バネ端子90Aとバネ端子90Bは接触する。すなわち、ベース部材22が皮膚に接触した状態で、バネ端子90Aとバネ端子90Bは電気的に導通状態となる。このように、一部が変形可能な容器に充填された蓄熱部材は、バネ端子90A,90Bを変形駆動するための駆動源として用いられている。
以上のような構成で、例えば、バネ端子90Aを電源配線に接続し、バネ端子90Bを熱電素子20のマイナス(−)側端子、又はプラス(+)側端子に接続しておけば、ベース部材22が皮膚から離れた状態となったら、電源配線と熱電素子20の端子との間の導通が遮断され、熱電素子20を発電回路から切り離すことができる。ベース部材22が皮膚に接触すると、再び図17(b)に示すようにバネ端子90Aとバネ端子90Bが接触し、電源配線と熱電素子20とが電気的に接続された状態となる。
次に、腕時計型熱発電デバイス10を実際に腕に装着した場合の各熱発電ユニット12の発電について検討する。腕時計型熱発電デバイス10を手首に装着して、体側に沿って腕を降ろしているときは、複数の熱発電ユニット12のうち、体側と腕との間に位置する熱発電ユニット12のフィン部材24が腕と体側の間にあって体温により暖められる場合がある。あるいは、熱発電ユニット12のフィン部材24が洋服の袖で覆われてしまい、フィン部材24の温度が上昇するといた状態となる場合もあり得る。このような場合には、熱発電ユニット12のベース部材22が皮膚に接触しているのにも関わらず、ベース部材22とフィン部材24との間の温度差が小さくなって、熱電素子20の発電量が大きく減少してしまうおそれがある。このような場合でも、熱電素子20の内部抵抗はそのまま残るので、熱電素子20を発電回路から切り離すことが望ましい。
そこで、以下に説明する2段階スイッチ機構により、フィン部材24(低温側)の温度が高くなってベース部材22(高温側)との温度差が小さくなるような状況では熱電素子20を発電回路から切り離すことができる。
図18は2段階スイッチ機構の動作を説明するための図である。先ず、2段階スイッチ機構の構成について説明する。2段階スイッチ機構は、ベース部材22の凹部20a内に設けられたバイメタル金属端子100と金属端子102と金属端子102の下方に延在する突起状ボタン104とを含む。バイメタル金属端子100と金属端子102とは、間に所定の空隙を形成して重なった状態で支持部106により支持されている。
支持部106において、バイメタル金属端子100とフィン部材24との間の部分106aは良熱伝導性絶縁体で形成される。これは、バイメタル金属端子100の温度をフィン部材24の温度にほぼ等しくするためである。一方、支持部106において、バイメタル金属端子100と金属端子102との間の部分106bは断熱性絶縁体により形成される。同様に、ベース部材22の凹部20aの底面と金属端子102との間の部分106cも断熱性絶縁体により形成される。これは、ベース部材22の熱がバイメタル金属端子100に伝わらないようにするためである。
金属端子の先端側の下方に突起状ボタン104が配置されている。突起状ボタン104はベース部材22を貫通して、ベース部材22の底面22bから突出するようにバネ108で付勢されている。
ここで、金属端子102は電源配線に接続され、バイメタル金属端子100は熱電素子22のマイナス(−)側端子又はプラス(+)側端子に接続されているものとして、2段スイッチ機構の動作について説明する。
ベース部材22が皮膚に接触していない状態では、図18(a)に示すように、バイメタル金属端子100と金属端子102は離間しており、熱電素子20は電源配線に接続されていない。
ここで、ベース部材22が皮膚に接触した状態となると、図18(b)に示すように、突起状ボタン104が皮膚により押されてベース部材22内に押し込まれる。すると、突起状ボタン104の上端で金属端子102が押圧され、金属端子102は上に向かって弾性的に変形する。変形した金属端子102はその上に配置されているバイメタル金属端子100に接触する。これにより、金属端子102とバイメタル金属端子100とが電気的に導通し、その結果、熱電素子20が電源配線に電気的に接続される。したがって、熱電素子20で発電した電力が電源配線に出力される。
ここで、例えばフィン部材24が袖により覆われてしまったというような何らかの理由により、フィン部材24(低温側)の温度が所定の閾値Th以上になったと想定する。ここで、バイメタル金属端子100の変形温度が閾値Thに設定されているものとする。閾値Thは体温(例えば、36℃)よりは低いが外気温(例えば、10〜25℃)より高い温度である。この場合、フィン部材24の温度が閾値Th以上となるため、熱電素子20に与えられる温度差が小さくなり、熱電素子20で発電する電力は減少してしまう。したがって、当該熱電素子20の内部抵抗による損失を無くすために当該熱電素子20を発電回路から切り離すことが望ましい。
そこで、図18(c)に示すように、フィン部材24の温度が閾値Thを超えるので、バイメタル金属端子100の温度も閾値以上となり、バイメタル金属端子100が変形して上に反って変形した状態となる。これにより、バイメタル金属端子100は金属端子102から離れて電気的導通は遮断される。その結果、熱電素子20と電源配線との間の電気的接続は遮断され、熱電素子20は発電回路から切り離される。これにより、発電量が減少し、あるいは発電しなくなった熱電素子20の内部抵抗を発電回路から切り離すことができ、発電効率の減少を抑制することができる。
なお、フィン部材24の周囲の温度が低下して閾値Thより低くなると、バイメタル金属端子100は元の形状に戻り、金属端子102と接触して導通した状態になるため、熱電素子20は発電回路に接続された状態にもどる。
また、ベース部材22が皮膚から離間すると、突起状ボタン104がバネ108のバネ力により下方に移動に、金属電極102の弾性変形も元に戻る。これにより、金属電極102とバイメタル金属端子100との電気的導通も遮断され、図18(a)に示す状態に戻る。
以上のように、本明細書は以下の事項を開示する。
(付記1)
各々が熱電素子を有し、熱源に接触することで発電する複数の熱発電ユニットと、
該熱発電ユニットを接続して形成される発電回路と、
前記熱発電ユニットの一つと前記熱源との接触状態に応じて、当該一つの熱発電ユニットの熱電素子を前記発電回路から切り離すスイッチ機構と
を有する熱発電デバイス。
(付記2)
付記1記載の熱発電デバイスであって、
前記スイッチ機構は、前記熱電素子への接続を遮断した回路を形成する開閉機構と前記熱電素子を短絡した回路を形成する短絡機構とのうち少なくとも一方を含む熱発電デバイス。
(付記3)
付記1又は2記載の熱発電デバイスであって、
前記スイッチ機構は、前記熱源の温度に応じて可逆的に変形する変形部材を含む熱発電デバイス。
(付記4)
付記3記載の熱発電デバイスであって、
前記変形部材は、形状記憶合金により形成される熱発電デバイス。
(付記5)
付記3記載の熱発電デバイスであって、
前記変形部材は、バイメタルにより形成される熱発電デバイス。
(付記6)
付記1又は2記載の熱発電デバイスであって、
前記スイッチ機構は、
前記熱源に接触して移動可能な突出部材と、
前記突出部材を付勢する弾性部材と
を含む熱発電デバイス。
(付記7)
付記1又は2記載の熱発電デバイスであって、
前記スイッチ機構は、前記熱源の温度に応じて融解する蓄熱材料を駆動源として含む熱発電デバイス。
(付記8)
付記7記載の熱発電デバイスであって、
前記蓄熱材料は、少なくとも一部が変形可能な容器に充填されており、前記蓄熱材料の相変化による体積変化に応じて該容器の一部が変形する熱発電デバイス。
(付記9)
付記1記載の熱発電デバイスであって、
前記スイッチ機構は、前記熱発電ユニットの一つと前記熱源との接触状態と、当該一つの熱発電ユニットの熱電素子に与えられる低温側の温度とに基づいて、当該一つの熱発電ユニットの熱電素子を前記発電回路から切り離す熱発電デバイス。
(付記10)
付記9記載の熱発電デバイスであって、
前記スイッチ機構は、
前記熱源に接触して移動可能な突出部材と、
前記突出部材を付勢する弾性部材と、
前記熱電素子に与えられる低温側の温度に応じて可逆的に変形する変形部材と
を含む熱発電デバイス。