JP5763987B2 - 先端定着アンカーの構造 - Google Patents

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本発明は高強度で高靱性の先端定着アンカーの構造に関する。
図8は従来の接着系アンカー構造を説明する図で、図8(a)は鉄筋曲げ定着構造、図8(b)はあと施工アンカー定着構造を説明する図である。
鉄筋曲げ定着構造の場合、鉄筋コンクリート構造物等の母材1中に先端部分を上方へ折り曲げた鉄筋2を埋め込み、軸力が作用したとき、鉄筋と母材との付着、先端曲げ部分の引き抜き抵抗により定着力が確保される。
あと施工アンカー定着構造の場合、鉄筋コンクリート構造物等の母材1の削孔部3に鉄筋4を施工してモルタルや樹脂等の固化材料(充填材)5を充填して定着し、鉄筋と充填剤、母材との付着により定着力が確保される。
これらの接着系アンカーでは鉄筋と母材とを完全に一体化させているため、鉄筋に持続的に軸力が作用すると母材にコーン破壊力が作用し、それが構造物上端部にまで及ぶと、上端部から順次破壊が生じて定着長が短くなってしまい、特に、コンクリート強度が弱い場合や、鉄筋の差し込み深さが十分にとれない場合は、定着力が確保できなくなってしまう。
また、本出願人は接着系アンカーの改良構造を既に提案しており、これについて図9により概略説明する。
コンクリート構造物1に、深さ方向に孔径が徐々に増大するように削孔してアンカー筋7を挿入する。アンカー筋7の先端には幅広の定着板7aを溶接やボルト等で取り付けてある。削孔した孔にモルタルや樹脂等の固化材料(充填材)5を充填し、このとき充填材5とアンカー筋7の側面との間は付着力が作用しないように、隙間を形成したり、シース管やビニールホース等でアンカー筋を被覆して縁切り部6とし(付着を切る)、先端の定着板7aの端部は充填材5の中に埋没させて先端定着部を形成し、アンカーの定着力を先端定着部に負担させる。アンカー筋の側面と充填材とは付着していないため、アンカー筋に引き抜き力が作用してもアンカー筋側面から充填材、母材に力が伝わらず上端部にコーン破壊は生ぜず、引き抜き力が作用したとき先端部の定着板が充填材を押し上げ、充填材に楔効果が作用して充填材やアンカー筋が抜け出すことはなく、充填材はコンクリートから拘束力を受けて充填材の破壊強度が大きくなり、また、充填材を押し上げる力が周囲のコンクリートに伝わり、コンクリートも力を分担することになって十分な定着力を確保することができる。
上記した接着系アンカー、改良した接着系アンカーのいずれもその定着部は、鉄筋と母材とを完全に一体化させ、鉄筋強度に達するまで定着部が破壊しない設計となっている。すなわち、アンカー筋と母材の定着力を大きくして、アンカー筋が破断するまで母材が破壊しないように設計する必要があり、アンカー筋強度よりも母材強度が大きいことが必要である。母材強度が小さい場合や、定着長が十分確保できない場合は、母材強度に達した時点で脆性破壊する虞がある。
本発明は上記課題を解決しようとするもので、定着部の変形性能を高め、定着力を維持したまま高い靱性を有する先端定着アンカーの構造を提供することを目的とする。
本発明は、構造物母材の表面から深さ方向に削孔した孔に、下方へ向かって漸次断面積が増大するテーパー部と定着板部からなる先端定着部を有するアンカー筋を埋め込んで充填材を充填するとともに、アンカー筋側面と充填材との間を付着力が作用しないように縁切りし、充填材下端部と先端定着部の定着版部との間に所定の間隔を設けたことを特徴とする。
また本発明は、アンカー筋周囲に充填材の充填部を複数区域に仕切る仕切り板を配置したことを特徴とする。
本発明は、充填材との付着を切ったアンカー筋の先端定着部がテーパー部を有し、地震時など大きな力が作用した場合、テーパー部が充填材中に貫入して充填材と母材との摩擦力を増大させ、従来工法以上のエネルギ吸収能を持たせることができる。この場合、テーパー部下端に定着板を使用することにより、また、テーパー部とアンカー筋を包囲するスパイラル筋の併用により、テーパー部の充填材中への過大な貫入を防いで充填材の割裂を防止でき、テーパー部の充填材への貫入量を制御することで、充填材と母材との摩擦力、即ち定着力を制御することができる。また、充填材と母材との摩擦力より大きい力が作用した場合には、先端定着部が充填部材と共に母材に対して動き、母材強度が小さい場合でも母材を破壊することなく定着を確保することができる。
先端定着アンカー構造の例を説明する図である。 図1の先端定着アンカー構造の定着機構を説明する図である。 先端定着アンカー構造の他の例を説明する図である。 図3の先端定着アンカー構造の定着機構を説明する図である。 充填部の仕切り板を説明する図である。 仕切り板を用いた先端定着アンカー構造の例を説明する図である。 仕切り板を用いた先端定着アンカー構造の他の例を説明する図である。 従来の接着系アンカー構造を説明する図である。 従来の接着系アンカーの改良構造を説明する図である。
以下、本実施形態について説明する。
図1は本発明の先端定着アンカー構造の一例を説明する図で、コンクリート構造物等の母材1に削孔した孔に断面形状が円形、矩形等のアンカー筋11を配置する。アンカー筋11は棒状体の先端部に下方へ向かって断面積が漸次増大するテーパー部11aと、これよりさらに断面積が大きい定着板部11bを有していて、テーパー部11aと定着板部11bとで先端定着部を構成している。アンカー筋11の周囲は、モルタルや樹脂等の固化材料(充填材)を充填した充填部12であり、このとき充填材と母材との間は密着しているが、充填部12とアンカー筋11の側面とは隙間を形成したり、シース管やビニールホース等でアンカー筋を被覆することで縁切りして付着力が作用しないようにし(付着を切る)、充填部12の下端部とアンカー筋11の定着板部11bとの間に所定の間隔11cを持たせる。このような構造とすることで、アンカー筋11に引っ張り力が作用すると、アンカー筋と充填部とは付着していないため定着板部11bが充填部12の下端部に当たるまでテーパー部11aは充填部12へ貫入してテーパー部11aから充填部12へ支圧力が作用し、その結果、充填部12と母材1との摩擦力が増大し、地震時などにおいて従来工法以上のエネルギー吸収能を増大させることができる。このように定着板部11bが充填部12の下端部に当たるまでテーパー部11aは充填部12へ貫入し、間隔11cはテーパー部11aの充填部への貫入代となり、定着板部11bが充填部12に接触することでテーパー部11aの過大な貫入によって生じる充填部12の割裂が防止され、間隔11cの大きさにより破壊荷重を制御することができる。このように、テーパー部と定着板部を有する先端定着部の構造により充填部と母材との摩擦力、即ち定着力を制御できるので、定着長が短い場合でも先端定着機構を実現することが可能である。充填部12と母材1との摩擦力より大きい力が作用した場合には、定着板部11bが充填部12を押し上げて共に母材に対して動くことにより、母材強度が小さい場合でも母材が破壊することなく定着を確保することができる。なお、間隔11cは単に空間として形成してもよいが、つぶれ易い弾性体等を配置して形成するようにしてもよい。
次に、図2により図1の先端定着アンカー構造の定着機構を説明する。
図2(a)はアンカー筋11に対して、特別の引き抜き力は作用せず、定着板部11bと充填部12との間は間隔が保持された状態を示しており、充填部12と母材1との間は摩擦により相互に反対方向の力13、14が作用してバランスした状態にある。
図2(b)はアンカー筋11に矢印Aで示す引き抜き力が作用し、定着板部11bが充填部12の下端部に当たるまでテーパー部11aは充填部12へ貫入してテーパー部11aから充填部12へ支圧力16が作用し、充填部12から母材への支圧力17が増大し、両者間の摩擦力が増大する。結果として、先端定着部による充填部12へ作用する押し上げ力15に対して摩擦により生じた母材1中の反力18がバランスして定着力として働く。なお、テーパー部11aから充填部12への支圧力16、充填部12から母材への支圧力17は定着板部11bが充填部12の下端部に当たるまで増大して充填部と母材との間の摩擦力も増大するが、これを越える押し上げ力15が作用すると、先端定着部は充填部と共に母材に対して動き、そのため母材強度が小さい場合でも母材が破壊することなく定着が確保される。
図3は本発明の先端定着アンカー構造の他の例を説明する図で、基本的構成は図1の場合と同様であるが、先端定着部がテーパー部のみ有し、さらにアンカー筋を囲むようにスパイラル筋を配した点のみ相違している。
コンクリート構造物等の母材1に削孔した孔に配置されるアンカー筋11は棒状体の先端部に下方へ向かって断面積が漸次増大するテーパー部11aからなる先端定着部を有している。アンカー筋21の周囲はモルタルや樹脂等の固化材料(充填材)を充填した充填部12であり、充填材と母材との間は密着しているが、充填部12とアンカー筋11の側面とは図1の場合と同様に縁切りする。さらに、アンカー筋を包囲するように充填材中にスパイラル筋20を配しており、この場合スパイラル筋20はテーパー部11aの少なくとも一部も包囲することが望ましい。このような構造とすることで、アンカー筋11に引っ張り力が作用すると、アンカー筋と充填部とは付着していないためテーパー部11aは充填部12へ貫入してテーパー部11aから充填部12へ支圧力が作用し、その結果、充填部12と母材1との摩擦力が増大し、地震時などにおいて従来工法以上の定着力を発揮させることができる。この場合、テーパー部11aの充填部12への貫入量は、スパイラル筋20の拘束力によって制御され、過大な貫入によって生ずる充填部の割裂が防止される。このように、テーパー部とスパイラル筋とにより充填部と母材との摩擦力、即ち定着力を制御できるので、定着長が短い場合でも先端定着機構を実現することが可能である。充填部12と母材1との間の摩擦力より大きい力が作用した場合には、テーパー部21aが充填部12を押し上げて共に母材に対して動くので、母材強度が小さい場合でも母材が破壊することなく定着を確保することができる。
次に、図4により図3の先端定着アンカー構造の定着機構を説明する。
図4(a)はアンカー筋11に対して、特別の引き抜き力は作用しない状態で、充填部12と母材1との間は摩擦により相互に反対方向の力13、14が作用してバランスした状態にある。
図4(b)はアンカー筋11に矢印Aで示す引き抜き力が作用し、テーパー部11aは充填部12へ貫入してテーパー部11aから充填部12へ支圧力16が作用し、充填部12から母材への支圧力17が増大し、両者間の摩擦力が増大する。結果として、先端定着部による充填部12の押し上げ力15に対して摩擦により生じた母材1中の反力18がバランスして定着力として働く。なお、テーパー部11aから充填部12への支圧力16、充填部12から母材への支圧力17はスパイラル筋20による拘束力でテーパー部11aの貫入が止まるまで増大して充填部と母材との間の摩擦力も増大するが、これを越える押し上げ力15が作用すると、先端定着部は充填部と共に動き、そのため母材強度が小さい場合でも母材が破壊することなく定着が確保される。
次に、充填部を複数区域に仕切ることで、先端定着部のテーパー部からの支圧が作用し易くした例について図5〜図7により説明する。
図5は充填部を複数区域に仕切る矢羽(仕切り板)の例を説明する図、図6は先端定着部がテーパー部と定着板部からなるアンカー筋への適用例を示す図で、図6(a)は縦断面図、図6(b)は横断面図、図7は先端定着部がテーパー部からなり、スパイラル筋を設けたアンカー筋への適用例を示す図で、図7(a)は縦断面図、図7(b)は横断面図である。
図5に示すように、アンカー筋11の周囲に放射状に複数枚(図では4枚)の矢羽30を仕切り板として設け、充填部に挿入して複数の区域に分割する機能を持たせる。このように矢羽により充填部を分割することで、アンカー筋先端定着部のテーパー部からの支圧が各領域毎の充填材に作用するため、支圧がより作用し易くなる。なお、矢羽30は区域に分割して充填材を区域内に保持できればよいので、薄い鋼板製等でよく、また、例えば、アンカー筋側面を充填部から縁切りするためのシース管やビニールホースに取り付けるようにしてもよい。
図6に示すように、先端定着部がテーパー部と定着板部からなるアンカー筋へ適用した場合、矢羽30の下端と先端定着部の定着板部との間には所定の間隔を設けるようにして、図1、図2で説明したテーパー部の貫入代を設けるようにすることが望ましい。
図7に示すように、先端定着部がテーパー部からなり、周囲にスパイラル筋を配置したアンカー筋へ適用した場合は、矢羽30の下端面はテーパー部に沿う形状でテーパー部との間は貫入代程度の間隔を開けることが望ましい。
1…コンクリート構造物、11…アンカー筋、11a…テーパー部、11b…定着板部、12…充填部、20…スパイラル筋、30…矢羽。

Claims (2)

  1. 構造物母材の表面から深さ方向に削孔した孔に、下方へ向かって漸次断面積が増大するテーパー部と定着板部からなる先端定着部を有するアンカー筋を埋め込んで充填材を充填するとともに、アンカー筋側面と充填材との間を付着力が作用しないように縁切りし、充填材下端部と先端定着部の定着板部との間に所定の間隔を設けたことを特徴とする先端定着アンカーの構造。
  2. アンカー筋周囲に充填材の充填部を複数区域に仕切る仕切り板を配置したことを特徴とする請求項記載の先端定着アンカーの構造。
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