JP5763287B2 - 試料の近赤外スペクトルから共役ジオレフィンの含量を求める方法および該方法の装置制御への応用 - Google Patents

試料の近赤外スペクトルから共役ジオレフィンの含量を求める方法および該方法の装置制御への応用 Download PDF

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Description

本発明は、炭化水素留分、とりわけガソリン、より詳しくは接触分解ガソリン、水蒸気分解ガソリン、コーキングガソリンおよびそれらの混合物の種々の特性を、近赤外で得られたスペクトル(本明細書、特許請求の範囲および図面を通して、「近赤外で得られたスペクトル」を「PIRスペクトル」(「PIR」はフランス語の略語)または「NIRスペクトル」(「NIR」英語の略語)と記す)から決定する分野に関するものである。本発明は、硫黄(10ppm〜10000ppm)、オレフィン類(少なくとも5重量%)およびジオレフィン類(少なくとも0.1重量%)を含有するガソリン類に全般的に適用される。これらのガソリンの蒸留の終点は300℃未満、好ましくは250℃未満であるべきである。
近赤外領域は、およそ800ナノメートルから2500ナノメートル(14286〜4000cm−1)の間の波長に相当する。ガソリン類のPIRスペクトルから決定できる特性には、きわめて種々のものがあり、主なものは、現在のところ、密度、オクタン価(RONおよびMON)、リード蒸気圧(RVP)、ASTM蒸留性状、化学系統群(パラフィン類、芳香族類、ナフテン類、オレフィン類)の含量などである。
本発明では、問題となる性状は共役ジオレフィン類の含量である。
この含量は、ディールス−アルダー反応の助けを借りた化学的方法によって直接的に求められる。この方法の原理は、試料中に含まれる共役ジエン類への無水マレイン酸の化学量論的付加である。この反応に基づく方法には、たとえば、英語での用語「ジエン値」[「石油およびその製品の実験室試験方法」、ユニバーサルオイルプロダクツ法No.326−82、ユニバーサルオイルプロダクツ、アメリカ合衆国イリノイ州]を略したDVあるいは英語での「マレイン酸値」を略したMAVがある。
本発明では、MAVに言及するが、DVなどのガソリン中の共役ジオレフィン類を測定する他の方法も関係するものである。
MAVは、試料1グラムと反応する無水マレイン酸のミリグラム数で表わされる。この尺度は、分析される試料中に存在する共役ジオレフィン類の含量に比例する。
ディールス−アルダー反応に従った化学分析によるガソリン試料のジオレフィン含量の測定は、1回の分析に比較的長時間、すなわち5〜7時間程度を要する操作である。その上、この方法は、トルエンなどの溶媒とガソリンとの混合物を加熱することおよびエーテルなどの他の溶媒を取扱うことが必要であるため、潜在的に危険である。
ディールス−アルダー法による共役オレフィン含量の測定は、分解ガソリン、好ましくは接触分解ガソリンプラント、水蒸気分解ガソリンプラントおよびコーキングガソリンプラントに由来するガソリン類の工業的選択水素化装置の性能を測定するために随意に用いられている。しかしながら、液体抽出や生成物の移し替えなどの、分析に必要な操作のゆえに、該方法を自動化して、それを工業的選択水素化装置の連続的制御法とすることは想定できない。
先行技術は、PIRスペクトルから出発して、密度、オクタン価(RONおよびMON)、リード蒸気圧(RVP)、ASTM蒸留性状、化学系統群(パラフィン類、芳香族類、ナフテン類、オレフィン類)の含量、MAVなどの種々の性状を求める方法を記載している特許および種々の報告によって提示されている。
この分野の特許のうちでは、方法自体の観点からもっとも近い先行技術を記載しているものとして特許文献1を挙げることができる。
この特許は、検討対象炭化水素留分の試料の波長600〜2600ナノメートル(16667〜3847cm−1)の帯域における吸収を利用し、得られたスペクトルを、性状Pが既知のいくつかの基礎となる試料のスペクトルと比較して、性状Pを求める方法を記載している。
検討対象試料の性状Pは、トポロジーと呼ばれる方法によって得られる。より詳しく言うと、PIRスペクトルから性状P、この場合はMAVを求めるために本発明で使用する方法は、引用した特許文献1に示されている方法とは実質的に相違する。基準として用いる1つの試料のスペクトルと使用するベース(母体)の他の諸構成要素のスペクトルとの間のスペクトル差という概念を用いるからである。
そこから、検討対象試料のスペクトルを性状Pが既知のベースの諸構成要素のスペクトルと直接比較することに基づく方法では得られないレベルのMAV予測精度が生じる。
工業的選択水素化装置の制御・調整方法に関しては、当業者ならば、触媒層の入口および出口における温度を追跡し、触媒層の入口と出口との温度差を制御のためのパラメータとして利用すること、すなわち、許容最大ΔT値を決定し、それに基づいて装置入口のパラメータ、たいていの場合は導入水素量を変更することからなる方法を知っている。
装置へ導入される水素量の値は、入来装入物の流量に対して任意に決定された比ならびにジオレフィン類およびオレフィン類の選択水素化反応によって消費される水素の量に対しての若干の過剰を起点として決定される。
それゆえ、MAVの測定は、経験的に装置の調整を制御するのに役立つだけで、装置の諸パラメータの連続的調整を確実に行なうのにはまったく役立たない。
本発明で記載する方法がもたらすものの一つは、装置中へ導入すべき水素の量を連続してより化学量論量の近くにあるように決定することを目的として、処理すべきガソリン(装入物という)および処理されたガソリン(流出液という)中のジオレフィン類の含量の連続的な、かつ迅速な測定法の導入である。
MAVの連続測定の他の応用は、反応器(単数または複数)の温度調節を可能にして、操作者が決定した目標値にできるだけ近いジオレフィン転化率を確保することである。
連続的に化学量論量のより近くにあることは、消費される水素の量、それゆえプロセスの経済性に対して大きい影響をもつ。
米国特許6,070,128号明細書[2000]
本発明の一目的は、PIRスペクトルから出発してのMAVの決定またはMAVの変形を介して、化学分析による測定法よりもより迅速に、同時により再現性よく、ガソリン中の共役ジオレフィン類の含量を求めるための新規な方法を提供することならびに該新規な方法をガソリンの工業的選択水素化装置の一連の制御・調整に使用することである。
以下の記述は、MAVに関して行なうが、本発明は、分解ガソリン中のジオレフィン含量を測定するすべての化学的方法に適用されるものである。
MAVは、ジオレフィン類が無水マレイン酸に化学量論的に付加することに基づいたガソリン中に存在する共役ジオレフィン類を測定する一方法である。それは、試料1グラムと反応した無水マレイン酸のミリグラム数で表わされる。
本発明で記載する方法は、接触分解ガソリンまたは熱分解ガソリンあるいはコーキングガソリンもしくはそれらガソリンの何種かの混合物のMAVを、該ガソリンまたは該混合物の近赤外(PIR)、すなわち波長800〜2500ナノメートルの範囲で得られた吸収スペクトルから求める方法である。
PIRスペクトルによってMAVを取得するこの方法は、検討対象試料のスペクトルと補正ベースと呼ぶベースを構成するいくつかの要素の集合の全体のスペクトルとを的確な基準に従って比較することに基づいている。
補正ベースは、各々についてPIRスペクトルおよび化学的方法によって求められたMAV値が同時に既知であるN個の試料から構成される。
MAVとPIRとの相関関係は、該ベースの要素の各々についてのPIRスペクトル値/MAV値の対から求める。より明確には、該相関関係は、該ベースの1つの要素を基準要素とし選択して、該ベースの諸要素のスペクトル間の差および検討対象試料についてのMAV値と基準試料についてのMAV値との差から求める。
この点は、きわめて重要である。なぜなら、それによって、選択水素化の間にきわめてわずかにしか変化しない化学系統群(主としてパラフィン類、ナフテン類、芳香族類およびモノオレフィン類)によるMAV値における差を明らかにして、まさにジオレフィンの変化によるMAVの差を選択的に浮き出させることが可能になるからである。
該方法は、装置の入口および出口で採取したMAV未知の一連の試料を準備し、該一連の試料のうちの基準として選んだ1つに対するこれら試料の差を求めることからなる。試料間の差を形成することは、該一連の試料の内部で採用した1つの試料に対するそれらの試料のスペクトルの差を求めることを意味する。該スペクトルの差を用いて、補正ベースからのPIRを相互に関連させ、MAVの差の値を求めることを可能ならしめるのである。
基準として採用した試料の化学的に求めたMAVの値が分れば、それから、当該一連の他の試料についてMAV値を導き出すことができる。
以下「デルタ」法と呼ぶこの方法は、つぎの諸段階を包含する:
a)一連の試料のうちから基準試料として使用すべき1つの採取試料を選択する;
b)該基準試料のPIRスペクトルならびに化学的方法によるMAVを測定し、
c)該一連の他の構成要素のPIRスペクトルを求め、
d)該基準試料のスペクトルとMAVが未知の該一連のうちの1つの試料のスペクトルとの差を計算し(このスペクトルの差を差スペクトルと呼ぶ)、
e)該差スペクトルが、モデルPIRの範囲内にあることを確認し、
f)該差スペクトルから、補正ベースからの相関関係を用いて、MAVの変動値を計算し、
g)段階f)で得られたMAVの変動および基準試料の化学的MAVから検討対象試料のMAVを計算する。
この方法は、逐次的または連続的に用いることができる。
この方法の選択水素化装置の制御・調整への適用は、のちに詳述するループ1(または入口ループ)およびループ2(または出口ループ)と呼ぶ2つの調整ループによって行なう。
一方では装入物の、他方では流出液のMAVの測定は、前記の方法に従って経時的に採取した一連の試料(通常は、経時的に得た最初の試料を基準試料とする)に基づいて実施する。
採取頻度は、通常は、毎時1試料であり、好ましくは半時間に1試料である。
簡素化のために、「デルタ」法によって求めた装入物のMAVを入口MAV、「デルタ」法によって求めた流出液のMAVを出口MAVとよぶ。
前記の2つの調整ループは、同時に、独立して機能する。
より明確には、本発明で記述する方法は、以下の一連の段階からなるオレフィン含有ガソリン留分の選択水素化装置を制御・調整する方法である:
− 前記装置の入口および出口において所定の頻度で試料を採取する、
− 800nm〜2500nmの波長範囲での吸収によるPIRスペクトルによってそれらの試料を分析する、
− 補正ベースおよび特定の前処理の助けを借りてのそれらPIRスペクトルの処理によって、それら試料の入口および出口MAVPIRを求める、
− 入口試料のMAVPIRおよび装入物流量から、装置に導入すべき水素の量を求め、これを前記入口MAVPIR値の第一の調整ループでの指令値として用いる、
− 出口試料および動的モデルのMAVPIRから、反応器の最適入口温度を求め、これを前記出口MAVPIRの第二の調整ループでの指令値として用いる。
それゆえ、本発明に従ったオレフィン含有ガソリン留分の工業的選択水素化装置の制御・調整方法は、毎時1試料、好ましくは半時間に1試料の試料採取頻度での、装置の入口および出口での試料採取を必要とする。
経時的に採取した入口試料および出口試料の全体が1つの系列を形成する。
1つの系列の各試料iのMAVの測定は、デルタ法と呼ぶ、以下の一連の操作によって特徴づけられるスペクトル減算法を利用して行なう:
− 選択水素化装置の入口および出口で、所定の頻度で、一連の試料を採取する、
− 該一連の試料の内部で、1つの基準試料を選択し、それについて、化学的方法でMAVを求める、
− 該系列の各試料iのPIRスペクトルを得る、
− 各試料iのスペクトルと前記基準試料のスペクトルとの間のスペクトル差を作成する、
− 補正ベースから得た相関関係を用いて、該試料iのスペクトルと該基準試料のスペクトルとのスペクトル差から、ΔMAVを推測する、
− 試料iのΔMAVと前記基準試料のMAVから試料iのMAVを得る。
本発明に従った、オレフィン含有ガソリン留分の工業的選択水素化装置の制御・調整方法は、装入物について、または流出液について採取した少なくともn個の試料からなる、好ましくは装入物について採取した要素および流出液について採取した他の要素からなる少なくともn個の試料からなる、補正ベースを必要とする。試料数nは、20より大きく、30よりも大きいことが好ましい。
一般的に言って、該補正ベースは固定されるものではなく、それに、その応用範囲を拡張できる要素を経時的に加えることができる。
本発明に従った、オレフィン含有ガソリン留分の工業的選択水素化装置制御・調整方法は、選択水素化触媒の失活速度を抑えると同時に、選択水素化装置の下流に存在するガソリン処理装置に包含されている触媒の早期老化を抑制するのに最適なジオレフィン含量のガソリンを製出することを可能にする。
実際、流出液の過剰のジオレフィン含量は、選択水素化装置の下流での処理において使用される触媒のポリマー沈積増大による早期老化に至らせる可能性がある。
処理すべき炭化水素装入物(C)は、ライン(1)を通って選択水素化装置(PHS)へ導入され、そこから、ライン(2)を通って水素化された流出液(E)が抜出される。
図1の他の構成要素は、発明を実施するための最良の形態中で詳細に述べられている。
本発明は、接触分解ガソリン、熱分解ガソリン、コーキングガソリンまたはそれらの混合物の脱硫プロセスにおいて見られるごときオレフィン含有ガソリン類の選択水素化装置の制御・調整方法である。
一般的に言って、本発明が適用されるガソリンは、それの10ppm〜10000ppmという硫黄含量、それの少なくとも5重量%というオレフィン含量、それの少なくとも0.1重量%というジオレフィン含量、およびそれの40℃〜300℃、好ましくは40℃〜250℃という蒸留範囲によって特徴づけることができる。
本発明は、事実上、水素化率の高度の正確さを要求するガソリン選択水素化装置のすべてに適応する。
接触分解ガソリンの脱硫プロセスの場合、水素化を、下流の諸装置を閉塞させる可能性のあるゴムの生成の原因となるジオレフィンタイプの化合物に限定して、生成物ガソリンのオクタン価の良好な値に寄与するモノオレフィン類の水素化までには至らせないことがきわめて重要である。
選択水素化装置の制御は、現在、該装置へ導入される水素の量の制御を対象とした制御ループによって実施されている。この水素量は、ジオレフィン類の水素化に必要な量(化学量論量という)に応じて決定され、これに若干の過剰が付加される。
本発明では、選択水素化装置の制御は、該装置の入口および出口でのMAVの測定に基づいて行ない、これらの2つの測定の各々がそれぞれ入口調整ループおよび出口調整ループに対する指令値を設定するのに役立つ。
第一の調整ループまたは入口ループは、装入物のMAVの測定に基づいて、装置へ導入されるべき水素の量に働きかけることによって、入口水素流量を制御し、第二のループまたは出口ループは、選択水素化装置の入口温度に働きかけることによって流出液のMAVを制御する。
当該装置が、直列式に機能する複数の選択水素化反応器を有している場合には、それらの各々、または少なくともその系列の最初と最後の反応器が、本発明に従った制御・調整システムの対象となる。
以下の本文では、下記を詳細に記述する:
1)PIRスペクトルからMAVを得る方法、
2)入口MAV調整ループ、
3)出口MAV調整ループ。
1)近赤外スペクトルからMAV(MAVPIR)を得る方法
PIRスペクトルからMAVを得る方法あるいは略してPIRモデル化は、近赤外(PIR)領域で得られたスペクトルを、補正ベースと呼ぶ試料ベースの一つまたはいくつかの性状と相関させることからなる。以下、「PIRスペクトルからMAVを得る」または「PIRによるMAVモデル化」なる表現を区別なしに用いる。
それのPIRスペクトルから性状Pを求めようとするすべての新しい試料を、前記補正ベースと比較し、該新規試料が補正ベースによってカバーされる範囲内にある場合にのみ、該性状Pを算出する。
スペクトルと性状との相関関係は、文献で既知の統計的分析方法、たとえばMartens H.とNaes T.「多変量補正(Multivariate Calibration)」(英国ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社1991年出版)が明確に説明している方法を用いて展開する。これらの統計的方法は、たとえば多重線形回帰(英語のmultilinear regression、MLR)、主成分回帰(英語のprincipal component regression、PCR)、いわゆる偏最小二乗(英語のpartial least square、PLS)法である。
工業的選択水素化装置の出口でのガソリンのMAVは、通常、2ミリグラム/グラム以下というきわめて低い値に達しうる。
これらのMAV値は、ガソリン中の0.3重量%未満という共役ジオレフィン含量に相当する。
ところで、PIRによる性状のモデル化の場合に普通に設けられる限界は、約1重量%である。
それゆえ、選択水素化装置出口でのガソリンについての共役ジオレフィン含量の予測は、古典的PIRモデル化方法によって行なうのは困難である。なぜなら、オレフィン類の吸収バンドがジオレフィン類のそれらと干渉するからである。その上、ジオレフィン類は試料中にきわめて低い含量で存在している。
さらに、スペクトルの吸収バンドは、とりわけ、ガソリン中に存在する過半量の炭化水素類(パラフィン類、芳香族類、ナフテン類、オレフィン類)を表わしており、そのうちでの共役ジオレフィン類の割合はきわめて小さい。したがって、スペクトルの生の情報から展開された古典的モデルは、ガソリンのMAV、とりわけ選択水素化装置出口でのMAVを求めるのには、きわめて適用が困難である。
本発明は、ガソリンの選択水素化プロセスの場合にMAVの予測を可能にするPIRスペクトル処理方法を記述する。
接触分解または熱分解ガソリンの選択水素化プロセスにおいて、流出液の化学組成の経時的な差は、大半は、共役ジオレフィン類の含量の変化およびオレフィン類のわずかな水素化によるものである。
この事実から、MAVを直接モデル化する代りに、本発明の方法は、基準試料と入口または出口におけるプロセス由来の1つの試料(以下の本文で「試料i」と呼ぶ)との間のMAVの変動のモデル化を提案する。試料iは、MAVが未知の流出液であり、それのMAVを、「デルタ」法とよぶMAV変動法によって、逐次にまたは連続的に求める。
PIRに基づいて算出されたMAVの変動を、ΔMAVPIRと名付け、
ΔMAVPIR=MAVreference−MAVPIRiとして求める。
基準試料は、入口装入物から採取した一連の試料の1つであっても、当該プロセスの流出液から採取した一連の試料の1つであってもよい。
該基準試料のMAVは、化学的方法によって求めなければならない。
流出液のΔMAVPIRをPIRモデルによって算出すれば、この試料の未知のMAVを差によって計算することができる。
MAVPIRi=MAVreference−ΔMAVPIRi
選択水素化装置からのガソリンの近赤外によるMAV(MAVPIRと呼ぶ)値を得るのを可能にする諸段階を、以下により記述する:
・試料の取得:
試料は、いわゆるオレフィン含有ガソリンの選択水素化装置の入口および出口で採取された接触分解ガソリンまたは熱分解ガソリンである。該装置の入口および出口で採取された試料の全体を「系列」なる語で表わす。
該系列の1つの試料を基準として選択することとなる。普通、基準試料は、該系列の試料のうちの採取時間順に最初のものである。
PIR分析は、標本化(非局在化、オンラインあるいは他のあらゆる試料誘導手段による)ありまたはなしで実施できる。PIR分析は、標本化なしで実施することが好ましい。
当該装置の装入物が変更された場合には、入口系列においても出口系列においても新しい基準試料を選択することが有効でありうる。
この操作は、過渡状態で生じうるごとき、異なる装入物の混合物に相当する試料を採取してしまうことを避けるために、当該装置が安定化した状態になってから実施すべきである。
当該装置が定常運転状態にあるときの、試料採取頻度は、PIRスペクトル処理時間によって限定される。概して、毎時または毎半時間に1試料という採取頻度が容易に実施可能である。必要な場合には、この頻度はより高くてもよい。
・試料の分析:
試料の分析は、つぎの2つの主要な段階からなる:
○化学的方法による基準試料のMAVの測定。
○当該系列の試料のPIRスペクトルの測定。それらのPIRスペクトルは、800nm〜2500nmの波長範囲において透過モードで記録されなければならない。それらのスペクトルは、もっぱらガソリンの液体留分について測定するものとする。
・PIRスペクトルの前処理:
それらのスペクトルは、PIRによる諸性状のモデル化のために普通に行なわれる古典的前処理に付さなければならない。これらの前処理は、既知であり、文献に記載されている[Martensら]。本発明は、PIRモデルと関係する波長の間でのスペクトルの基線(ベースライン)の補正からなる前処理を用いる。
この最初の前処理ののち、当該系列の基準試料と同系列のいずれかの試料iとの間のスペクトルの差を、下記式1に従って算出する。
Adiffref−ik=(Aref−Ai) 式1
ここに、
Adiffref−ikは、波長kでの基準試料と試料iとの間の吸光度の差であり、
Arefは、波長kでの基準試料の吸光度であり、
Aiは、試料iの吸光度である。
式1を、PIRモデルにおいて関係のあるK個の波長で、k=1から適用する。
式1は、当該系列を形成するMAV未知の試料すべてに適用される。
各試料iが補正ベースを形成する試料に所属するものであることを確認する。
この所属確認により、検討対象系列の各試料iにPIRモデルを適用できるかどうかを確定することができる。この所属確認は、当業者には既知の一連のテストからなる。
古典的所属検定法のうちでも、PIRモデルに対する試料iの影響の計算を挙げることができる。この影響は、PIRモデルにおける試料iの重みおよびそれの残差分散を算出することにある。これらのテストは、公知であり、文献に記載されている[たとえばMartensら]。
・試料iのMAVの決定:
前項の所属試験を通過した各試料のΔMAVPIRなる性状は、スペクトルの差およびそれらの対応するΔMAVPIRが既知の補正ベースから作成したPIRモデルから算出することができる。
ΔMAVPIRが知られた各試料のMAVPIRは、次式2から算出できる:
MAVPIRi=MAVref−ΔMAVPIRi 式2
ここに、
MAVPIRiは、PIRによって算出した当該系列の試料iのMAV(mg/g)であり、
MAVrefは、当該系列の基準試料の化学的方法によるMAV(mg/g)であり、
ΔMAVPIRiは、試料iについてのPIRモデルからの結果(mg/g)である。
上記の諸段階は、プロセスの入口での装入物が定常状態に留まっている状態で装置を制御するためにMAVPIRを算出するのに有効である。装置入口での装入物が変った場合には、新しい基準試料を選択し、分析しなければならない。その時、式1および2における相当するデータも、しかるべく変更しなければならない。
2)入口MAVの第一の調整ループ(B1)の説明
以下の説明は、図1を参照しながら行なう。
反応の速度論的モデルに基づいた相関計算によって、その比で反応が行なわれるべき最適H/HC比を、開ループで、求めることができる。この相関計算は、装入物の相次ぐ試料から計算した入口MAV値を利用する。入物から採取した試料の各々が、前項で記載したデルタ法に従ってMAVを導き出すもととなるPIRスペクトルを提供する。この相関計算は、水素化の化学反応を表わすために用いられる速度論的モデルがどのようなものであっても、適用可能であることを指摘しておく必要がある。
図に示された制御ループ(B1)が、つぎに、相関計算によって生み出されたH/HCの指令ならびにそれ自体が装入物の流量およびHの流量の測定に基づいたH/HCの大きさを考慮に入れて、水素流量計の指令点を操作する。
それゆえ、流量制御装置(FC)によって具体化された調整ループは、水素流量を、各時点で、H/HCで示される指令値のより近くにあるように、自動的に調整することを可能にする。
線Cは、H/HC指令点の形成を模式的に示している。
線Mは、デルタ法による検討対象試料のPIRスペクトルから得られたMAVPIRという装入物のジオレフィン含量の計測を模式的に示している。
線Aは、流量制御装置(FC)による水素流量の自動調整行為を概念的に示している。
それゆえ、本発明は、装置に導入すべき水素の流量を、H/HC比の指令値を作成するのを可能にする装入物のMAVPIRの測定に基づいて制御する第一の調整ループまたは入口ループの助けを借りる。
3)出口MAVの第二の調整ループ(B2)の説明
以下の説明は、図1を参照しながら行なう。
図に示された制御ループ(B2)が、最良の条件下でジオレフィン類の求める水素化度を実現するべく、反応器入口温度指令点を調整する。
反応器入口温度と流出液のMAVとの間の動力学(実時間設定)モデルを用いて、前記入口温度を変更する行為を算出する。
この動的モデルは、反応器入口温度と所与の系列の流出液試料のPIRスペクトルから得た流出液のMAVPIRとの間の連絡とであるとみなすことができる。それゆえ、この連絡に基づいて、流出液中のジオレフィン含量の指令を反応器入口温度の指令に変換することができる。
線Mは、出口試料中のジオレフィン含量、すなわち前項で述べたデルタ法によりPIRスペクトルから得た流出液のMAVPIRの測定を概念的に表わしている。
線Aは、測定Mと動的モデルから算出された反応器入口温度指令値とに基づいて温度制御装置(TC)が行なう自動調整行為を概念的に示している。
それゆえ、本発明に従ったオレフィン含有ガソリン留分の工業的選択水素化装置の制御・調整方法は、流出液のMAVPIRから作成された指令に基づいて反応器の入口温度を制御する第二の調整ループの助けを借りるものであり、前記MAVPIRは、装置出口の試料系列についてそれらのPIRスペクトルからデルタ法によって求められるものである。
この実施例では、下記表1に示した特性をもつ3種のオレフィン含有ガソリンを、ニッケルおよびモリブデンを主成分とする触媒を用いて運転される選択水素化装置で処理する。
反応器入口温度の値および無次元比H/HCの値(HCは装入物を表わす)は、ここでは単なる説明のために示したのであって、本発明の範囲をなんら限定するものではなく、本発明はオレフィン含有ガソリンの選択水素化装置すべてに適用できるものである。
処理した装入物の各々に対応する3系列の試料を、半時間毎に1試料の頻度で、前記オレフィン含有ガソリン選択水素化装置の出口で採取した。
これらの流出液は、表2に掲げた選択水素化装置操作条件に対応している。
それらの試料のMAVPIR値を、「ΔMAVPIR」法で算出した。
該装置は、オンライン分析装置を備えていたので、PIR測定はリアルタイムで実施でき、かくして、詳細な説明中で記述したように、本発明で提案した2つの調整ループのおかげで、装置出口において目標MAV(2mg/g)を超過することを回避できた。
下記の表2は、3系列の試料についてデルタ法により求めたMAVPIRの値を化学的MAV値と比較している。2系列の値の間での一致は顕著であって、本文中で記述した2つの調整ループによる装置のきわめて精密な制御・操縦を可能ならしめる。
Figure 0005763287
Figure 0005763287
PHSとして示した選択水素化装置の概略図を表わし、そこでは、本発明の対象である制御・調整システムが、第一のループをB1、第二のループをB2として、2つのループの形で表わされている。
符号の説明
A 行為
M 測定
C 指令
FC 流量制御
TC 温度制御
PIR 近赤外による測定
/HC 装入物流量に対する水素流量の比

Claims (5)

  1. 工業的選択水素化装置の出口においてガソリンを得るためにオレフィン含有ガソリン留分の工業的選択水素化装置を制御・調整する方法であって、以下の一連の段階からなる方法:
    − 前記装置の入口および出口において所定の頻度で試料を採取する、
    前記試料のNIRスペクトルを、800nm〜2500nmの波長範囲で、吸収により決定する
    前記装置の入口試料および出口試料のMAV NIR 該入口試料および該出口試料のNIRスペクトルによりデルタ法に従って、求める、
    − 入口試料のMAV NIR および装入物(すなわち仕込原料)流量から、装置に導入すべき水素量を求め、前記水素量を入口調整ループによって制御する、ここで該入口調整ループは、反応の速度論的モデルに基づいた相関計算によって開ループで求められ、かつ、前記装置に導入すべき水素量に基づくH /HC(炭化水素)の指令値と、それ自体が装入物の流量およびH の流量の測定に基づいたH /HCの大きさとを考慮に入れて、水素流量計の指令点を操作するものであり、該相関計算は、入口試料のMAV NIR 値を利用するものである、
    口試料のMAV NIR と動力学(実時間設定)モデルから指令値である反応器の最適入口温度を求めここで該入口温度は、出口調整ループによって制御され、該出口調整ループは、ジオレフィン類の所期の水素化度を実現すべく、反応器入口温度指令点を該指令値とすべく調整するものであり、該出口調整ループは、前記入口温度の修正の計算のために、反応器入口温度と流出液のMAVとの間の実時間設定動的モデルを利用するものである;
    ここに、1つの系列の各試料iのMAVの測定は、デルタ法と呼ぶ、以下の一連の操作によって特徴づけられるスペクトル減算法を利用して行なう:
    − 選択水素化装置の入口および出口で、所定の頻度で、一連の試料を採取する、
    − 該一連の試料の内部で、1つの基準試料を選択し、該基準試料について、化学的方法でMAVを求める、
    − 該系列の各試料iのNIRスペクトルを得る、
    − 各試料iのスペクトルと前記基準試料のスペクトルとの間のスペクトル差を作成する、
    − 補正ベースから得た相関関係を用いて、該試料iのスペクトルと該基準試料のスペクトルとのスペクトル差から、ΔMAVを推測する、
    − 試料iのΔMAVと前記基準試料のMAVから試料iのMAVを得る。
  2. 入口および出口での試料採取の頻度が1時間当り1試料である、請求項1に記載のオレフィン含有ガソリン留分の工業的選択水素化装置の制御・調整方法。
  3. 補正ベースが、少なくともn個の試料からなり、該試料それぞれのNIRスペクトルと化学的方法で求められたMAV値の両方が既知であり、n個のサンプルは、装入物および流出液の両方から採取され、nが20より大である、請求項1または2のいずれかに記載のオレフィン含有ガソリン留分の工業的選択水素化装置の制御・調整方法。
  4. 補正ベースが、少なくともn個の試料からなり、該試料それぞれのNIRスペクトルと化学的方法で求められたMAV値の両方が既知であり、n個のサンプルは、装入物および流出液の両方から採取され、nが30より大である、請求項1または2のいずれかに記載のオレフィン含有ガソリン留分の工業的選択水素化装置の制御・調整方法。
  5. 該工業的装置の出口でのガソリンのMAV NIR の値が2ミリグラム/グラム以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のオレフィン含有ガソリン留分の工業的選択水素化装置の制御・調整方法。
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