JP5761383B2 - 界磁極用磁石体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、永久磁石回転電機に配設される界磁極用磁石体の製造方法に関する。
永久磁石埋込型回転電機のロータコアに配設される界磁極用磁石体として、板状の磁石体(以下、単に「磁石体」と示す)を破断分割して複数の磁石片とし、この複数の磁石片同士を接着することによって形成した界磁極用磁石体が知られている。このような界磁極用磁石体は、複数の磁石片で形成されるため個々の磁石片の体積を小さくすることができ、ロータの回転による磁界の変動によって磁石片に発生する渦電流を低減させることができる。これにより、渦電流の発生に伴う界磁極用磁石体の発熱を抑制し、不可逆な熱減磁を防止することができる。
JP2009−142081Aは、破断予定線に沿って切り欠きを設けた磁石体を、破断予定線と垂直方向の両端部において磁石体を支持するダイに載置し、破断予定線の上部を下方へとパンチによって押し込むことで、磁石体を破断予定線に沿って破断して複数の磁石片を製造することを開示している。
しかし、上記従来の技術では、破断前の磁石体である粗材の平行度不良、粗材の反り、粗材の平面度不良(粗材表面の凹凸)等があると、磁石体を磁石片に破断する際に、パンチが磁石体の幅方向(破断面に沿う方向)の一方に偏って当接する片当たりが発生する場合がある。これにより、磁石片の破断線が破断予定線からずれてしまい、破断面精度が悪化する。
本発明は、破断予定線に沿って磁石体を破断させることで材料の歩留まりを向上させることができる界磁極用磁石体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のある態様によれば、ダイ上に支持された磁石体に、ブレードを当接させて押圧することにより磁石体を磁石体幅方向に沿った破断予定線に沿って破断分割し、破断分割された磁石片を積層することで界磁極用磁石体を製造する界磁極用磁石体の製造方法が提供される。この製造方法は、破断予定線に沿って溝が形成された磁石体の、溝の形成面の反対側の面にブレードを当接させて磁石体を破断分割する工程を有し、溝は、ブレードが磁石体に当接する部位から磁石体幅方向に遠ざかるほど深く形成されている。
本発明の実施形態、本発明の利点については、添付された図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
図1Aは、本実施形態における界磁極用磁石体の製造方法によって製造された磁石体を適用した永久磁石型電動機の主要部の構成を示す概略構成図である。 図1Bは、図1Aの永久磁石型電動機のI−I断面を示す断面図である。 図2は、界磁極用磁石体の構成を示す構成図。 図3Aは、磁石体の溝入れ工程について説明するための図である。 図3Bは、磁石体のバリ取り工程について説明するための図である。 図3Cは、磁石体のクラッキング工程について説明するための図である。 図4は、クラッキング工程を行う装置を示す図である。 図5は、溝入れ工程によって形成される溝の深さを示す図である。 図6は、溝入れ工程によって形成される溝の深さを示す図である。 図7は、クラッキング工程を行う装置の断面を示す断面図である。 図8は、クラッキング工程を行う装置の断面を示す断面図である。
以下では図面を参照して本発明の実施の形態について詳しく説明する。
図1A及び図1AのI−I断面を示す図1Bは、本実施形態における界磁極用磁石体の製造方法によって製造された磁石体80を適用した永久磁石埋込型回転電機A(以下、単に「回転電機A」という)を示している。
回転電機Aは、ケーシングの一部を構成する円環形のステータ10と、このステータ10と同軸的に配置された円柱形のロータ20とから構成される。
ステータ10は、ステータコア11と、複数のコイル12とから構成され、複数のコイル12はステータコア11に軸心Oを中心とした同一円周上に等角度間隔で形成されるスロット13に収設される。
ロータ20は、ロータコア21と、ロータコア21と一体的に回転する回転軸23と、複数の界磁極用磁石体80とから構成され、複数の界磁極用磁石体80は軸心Oを中心とした同一円周上に等角度間隔で形成されるスロット22に収設される。
ロータ20のスロット22に収設される界磁極用磁石体80は、図2に示すように、複数の磁石片31を一列に整列させた磁石片31の集合体として構成される。磁石片31は、長方形の上下面を有する板状の磁石体30を長方形の短辺方向に沿って破断することにより分割される。界磁極用磁石体80は、分割された複数の磁石片31の破断面同士を樹脂32により接着して構成される。使用される樹脂32は、例えば200℃程度の耐熱性能を備えるものが使用され、隣接する磁石片31同士を電気的に絶縁する。これにより、作用する磁界の変動により磁石片31に発生する渦電流を個々の磁石片31内に留めることで低減させ、渦電流に伴う界磁極用磁石体80の発熱を抑制して、不可逆な熱減磁を防止することができる。
次に、図3A〜図3Cを参照して板状の磁石体30から複数の磁石片31を製造する過程について説明する。
磁石体30を複数の磁石片31に破断するために、磁石体30の破断しようとする部位(破断予定線)に、図3Aに示すように、予め切り欠き溝33等から成る脆弱部を形成することが有効である。設ける切り欠き溝33は、表面からの深さが深いほど、また、切り欠き溝33の先端の尖りが鋭いほど、磁石片31として破断した場合の破断面の平面度が向上する。
切り欠き溝33の形成方法としては、磁石体30の成形型に設けた溝形成用の突条により磁石体30の成形工程で設ける方法、ダイサーやスライサー等の機械加工による方法、レーザビーム照射による方法、ワイヤカット放電加工等がある。また、磁石体30を焼結する前の成形時に、金型を用いて予め溝が形成された圧粉体を作成しておき、この圧粉体を焼結することで切り欠き溝33を有する磁石体30を製造してもよい。
切り欠き溝33が形成される際、切り欠き溝33に沿ってバリ34が発生するので、このバリ34を、図3Bに示すように、バリ取り工程において除去する。
続いて、クラッキング工程において、切り欠き溝33を下にした状態で切り欠き溝33のない側から溝33に対応する位置を後述するブレードによって押圧することで、図3Cに示すように、磁石体30が切り欠き溝33に沿って破断分割され、破断面35が形成されて複数の磁石片31となる。
図4は、図3Cに示すクラッキング工程を行う磁石体破断装置40の概略を示している。
磁石体破断装置40は、一対のダイ41間に磁石体30を架け渡した状態で固定し、架け渡した部分に上部からブレード51を下降させて、磁石体30を3点曲げにより破断する装置である。磁石体破断装置40は、磁石体30を架け渡して載置する下型としての一対のダイ41と、一対のダイ41の隣り合う端部において磁石体30をダイ41に固定する磁石固定治具43と、磁石体30の架け渡した部分を押し込むことで磁石体30を破断させるブレード51を有する上型50と、を備える。
磁石固定治具43は磁石体30を一対のダイ41の上面に対して押圧することで固定する治具であり、ボルト締結又は油圧、エア圧によって磁石体30を押圧する。ブレード51は、一対のダイ41に架け渡された磁石体30の上面を下方へ押圧することで磁石体30を破断させる。ブレード51は、先端が一対のダイ41間の中間に位置するように位置決めされており、例えばサーボプレス、機械プレス、油圧プレスなどによって駆動される。
磁石体破断装置40は以上のように構成され、切り欠き溝33を設けた磁石体30を一対のダイ41の上面に架け渡して載置する。なお、磁石体30は、破断させたい所望の位置、即ち、破断予定線に予め設ける切り欠き溝33が、ダイ41側に対面する側に位置するように、一対のダイ41上に載置される。
そして、例えばサーボ機構を用いて、破断予定線としての切り欠き溝33が一対のダイ41間の中間に位置するように位置合わせした状態で、磁石固定治具43によって磁石体30を固定する。さらに、ブレード51を下降させることでブレード51が切り欠き溝33の裏側を下方へと押圧し、ブレード51及び一対のダイ41の3点曲げにより磁石体30は切り欠き溝33に沿って破断分割される。
次いで、磁石固定治具43による固定を解除し、磁石片31一つ分の長さ(隣り合う切り欠き溝33の距離分)だけ送り、以上の動作を繰り返すことで磁石体30は複数の磁石片31に破断分割される。
ところで、磁石体30には、それ自身の粗材平行度不良、粗材の反り、粗材の平面度不良(粗材表面の凹凸)等により、表面が磁石体幅方向に傾いたものや幅方向の一方が他方に対して出っ張っているものがある。このような磁石体30にブレード51を押し当てて破断する場合には、ブレード51が磁石体30の幅方向の一方に片当りして、磁石体30にブレード51から入力される応力の分布が、磁石体30の幅方向中央を境とした一方側と他方側とで不均一となる場合がある。これにより、破断線が破断予定線からずれて破断する異常割れを生じ、割断面精度が悪化する場合がある。
そこで、本実施形態では、磁石体30の切り欠き溝33を以下のように形成している。
図5は、図3Aの溝入れ工程において形成される溝33の深さを示す図である。本実施形態では、磁石体30の一面上に短辺に沿って形成される切り欠き溝33を、幅方向の中央から外側へ行くほど深くなるように形成した。
切り欠き溝33に沿って磁石体30を切断した切断面を示すA−A’断面は、幅方向中央を起点にして、外側へ行くほど溝33の深さが深くなる。したがって、切り欠き溝33に直交する幅方向中央を通る切断面であるC−C'断面では、切り欠き溝33の深さは従来と同様であるが、幅方向外側よりの切断面であるB−B'断面では、切り欠き溝33の深さはC−C’断面より深くなる。
これにより、磁石体30の破断時、破断の起点となるブレード51の押圧部位から遠ざかるほど磁石体30の切り欠き溝33の深さが深く形成されることになるので、磁石体30が割れやすくなる。よって、磁石体30が破断されて形成される破断線が破断予定線からずれることが防止され、材料の歩留まりの悪化を防止することができる。
また、図5では、磁石体30の一面(図4における下側の面)上に切り欠き溝33を形成したが、これに加えて反対側の面に上記切り欠き溝33と平行に切り欠き溝33を設けてもよい。これにより、磁石体30がさらに破断しやすくなるので、破断線が破断予定線からずれることをより確実に防止することができる。
さらに、上記図5の切り欠き溝33に加えて、磁石体30の長辺側の側面に切り欠き溝33を形成してもよい。図6は、磁石体30の上下面に加えて側面にも切り欠き溝33を形成した場合の溝33の深さを示す図である。
磁石体30の側面に形成された切り欠き溝33に沿って磁石体30を切断した切断面を示すD−D’断面では、切り欠き溝33はC−C'断面と同様の形状となる。さらに、反対側の側面にも同様にD−D'断面に示される切り欠き溝33を形成する。
これにより、切り欠き溝33が磁石体30の外周にわたって形成され、磁石体30の破断時、磁石体30が切り欠き溝33によってますます割れやすくなっているので、破断線が破断予定線からずれることをさらに確実に防止することができる。
次に、ブレード51の形状について図4、図7、図8を参照して説明する。ブレード51は、図4に示すように、磁石体30の上面であって切り欠き溝33に沿った破断予定線に当接するくさび型形状である。さらにブレード51は、ブレード51の下面であって、磁石体30の幅方向中央に下方へ向けて凸形状の凸部52を備える。
図7は、図4の磁石体破断装置のII−II断面を示す断面図である。ブレード51は、磁石体30の幅方向(図7の左右方向)中央に凸部52を備え、凸部52の先端が幅方向中央に位置する構造である。なお、図7に示す凸部52の高さは誇張して記載しており、実用上における凸部52の高さHは、磁石体30としての粗材の平行度、粗材の反り、粗材の平面度(粗材表面の凹凸)について設定された公差寸法以上の高さに設定される。このように凸部52の高さHを設定することにより、磁石体30としての粗材の平行度、粗材の反り、粗材の平面度(粗材表面の凹凸)に公差があっても、ブレード51の凸部52を磁石体30の幅方向中央位置中央付近に当接させることができる。
また、凸部52は、図8に示すように、磁石体30の幅方向中央部に向かって円弧状に突出する凸部53であってもよい。凸部53の高さHは、図7と同様に、磁石体30としての粗材の平行度、粗材の反り、素材の平面度(粗材表面の凹凸)について設定された公差寸法以上の高さに設定される。
ブレード51の形状を上記図7又は図8のように形成することで、磁石体30の破断時に、ブレード51が片当りすることなく、磁石体30の幅方向中央部に強く当接し、幅方向両側に移るに連れて徐々に弱く当接する。このため、磁石体30に対して幅方向中央位置を破断の起点として確実に亀裂を発生させることができ、中央部に発生した亀裂は磁石体30の幅方向両側に伝播し、両側部に亀裂が到達した時点で磁石体30は破断予定線で破断する。結果として、破断線が破断予定線からずれる異常割れを防止することができ、割断面精度を向上させることができる。
以上のように本実施形態では、切り欠き溝33が、磁石体30の破断の起点となる幅方向中央から遠ざかるほど深くなるように形成されるので、磁石体30は幅方向中央から遠ざかるほど割れやすくなり、よって磁石体30が破断の起点から破断予定線に沿って割れることで材料の歩留まりを向上させることができる。
また、ブレード51の凸部52は磁石体30の幅方向中央に位置するので、ブレード51を磁石体30に当接させる際にブレード51が磁石体30に対して片当たりすることを防止できる。さらに、ブレード51の当接位置から磁石体幅方向の両端までの距離、すなわち破断の起点から磁石体30の端部までの距離を小さくすることができるので、破断が伝播する距離を最小限に抑えることができる。よって、磁石体30の異常割れを防止して材料の歩留まりをより確実に向上させることができる。
さらに、切り欠き溝33は、磁石体30の一方の面だけでなく反対側の面にも形成されるので、磁石体30がさらに割れやすい状態となり、磁石体30が破断予定線に沿って破断することで材料の歩留まりをより確実に向上させることができる。
さらに、切り欠き溝33は、磁石体30の長辺側の側面にも形成されるので、磁石体30がさらに割れやすい状態となり、磁石体30が破断予定線に沿って破断することで材料の歩留まりをより確実に向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態では、切り欠き溝33を断面がV字状の溝として説明したが、断面形状はその他の形状であってもよい。
本願は2012年1月31日に日本国特許庁に出願された特願2012−018378に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。

Claims (4)

  1. ダイ上に支持された磁石体に、凸状のブレードの凸部を当接させて押圧することにより磁石体を磁石体幅方向に沿った破断予定線に沿って破断分割し、破断分割された磁石片を積層することで界磁極用磁石体を製造する界磁極用磁石体の製造方法であって、
    前記破断予定線に沿って溝が形成された前記磁石体の、前記溝の形成面の反対側の面に前記凸部を当接させて前記磁石体を破断分割する工程を有し、
    前記溝は、前記凸部が磁石体に当接する部位から磁石体幅方向に遠ざかるほど深く形成されている、
    界磁極用磁石体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の界磁極用磁石体の製造方法であって、
    前記ブレードが磁石体に当接する前記部位は、磁石体幅方向中央である、
    界磁極用磁石体の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の界磁極用磁石体の製造方法であって、
    前記溝は、磁石体の前記ブレードが当接する側にも形成される、
    界磁極用磁石体の製造方法。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の界磁極用磁石体の製造方法であって、
    前記溝は、磁石体の側面であって、磁石体幅方向の両端側側面にも形成される、
    界磁極用磁石体の製造方法。
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