以下、本発明の界磁極用磁石体の製造装置およびその製造方法を各実施形態に基づいて説明する。
(第1実施形態)
先ず、本発明を適用する回転電機に配設される界磁極用磁石体について説明する。
図1において、永久磁石埋込型回転電機A(以下、単に「回転電機」という)は、図示しないケーシングの一部を構成する円環形のステータ10と、このステータ10と同軸的に配置された円柱形のロータ20とから構成される。
ステータ10は、ステータコア11と、複数のコイル12とから構成され、複数のコイル12はステータコア11に軸心Oを中心とした同一円周上に等角度間隔で形成されるスロット13に収設される。
ロータ20は、ロータコア21と、ロータコア21と一体的に回転する回転軸23と、複数の界磁極用磁石体80とから構成され、複数の界磁極用磁石体80は軸心Oを中心とした同一円周上に等角度間隔で形成されるスロット22に収設される。
ロータ20のスロット22に収設される界磁極用磁石体80は、図2に示すように、厚み方向の平面視で矩形の磁石体30を幅方向に割断して分割した複数の磁石片31を、その割断面34同士を樹脂により接着して、一列に整列した磁石片31の集合体として構成される。使用される樹脂は、例えば200℃程度の耐熱性能を備えるものが使用され、例えば、エポキシ系の熱硬化型の接着剤32等を用いる。また、この接着剤32には、スペーサとして機能するガラスビーズや絶縁クロスが配合され、磁石片31間のクリアランスを確保して、隣接する磁石片31同士を電気的に絶縁状態とする。このため、作用する磁界の変動により発生する渦電流を個々の磁石片31内に留めることにより低減させ、渦電流に伴う界磁極用磁石体80の発熱を抑制し、不可逆な熱減磁を防止する。
磁石体30を複数の磁石片31に割断するためには、磁石体30の割断しようとする部位に、予め切り欠き溝33を形成することが有効である。以下では、切り欠き溝33が形成されている磁石体30について説明するが、この切り欠き溝33は必要不可欠なものではなく、切り欠き溝33を設けなくとも割断できる場合には、磁石体30に切り欠き溝33を設けないようにしてもよい。設ける切り欠き溝33は、表面からの深さが深いほど、また、切り欠き溝33の先端の尖りが鋭いほど、磁石片31として割断した場合の割断面34の平面度が向上する。
切り欠き溝33の形成方法としては、磁石体30の成形型に設けた溝形成用の突条により磁石体30の成形工程で設ける方法、ダイサーやスライサー等の機械加工による方法、レーザビーム照射による方法、ワイヤカット放電加工等がある。
図3は、磁石体30を複数の磁石片31に割断分割する磁石割断装置40の一例であり、一対のダイ41間に磁石体30を架け渡した状態で固定し、架け渡した部分に上部からパンチ45を下降させて、磁石体30を3点曲げにより割断する。この磁石体割断装置40は、磁石体30を架け渡して載置する下型の一対のダイ41と、一対のダイ41の隣り合う端部において磁石体30を固定する磁石固定治具43と、を備える。そして、磁石体30の架け渡した部分を押し込むことで磁石体30を割断させる上型46に設けたパンチ45を備える。
磁石固定治具43は磁石体30を一対のダイ41の縁に向けて押圧することで固定する治具であり、ボルト締結又は油圧、エア圧によって磁石体30を押圧する。パンチ51は磁石体30の一対のダイ41に架け渡された部分を下方へ押圧することで磁石体30の切り欠き溝32に沿って磁石体30を破断させる。パンチ45は例えばサーボプレス、機械プレス、油圧プレスなどによって駆動される。
磁石体割断装置40は以上のように構成され、溝32を設けた磁石体30を一対のダイ41の上面に架け渡して載置する。なお、磁石体30は、割断させたい所望の位置、即ち、割断予定面に予め設ける切り欠き溝32を、ダイ41側に対面する側に位置するように、一対のダイ41上に載置する。そして、例えば、サーボ機構を用いて、割断予定面としての切り欠き溝32が架け渡された部分の中央に位置するよう位置合わせした状態で、磁石固定治具43によって磁石体30を固定する。さらにパンチ45を下降させることで磁石体30は切り欠き溝32に沿って破断分割される。次いで、磁石固定治具43による固定を解除し、磁石片31一つ分の長さ(隣り合う切り欠き溝32の距離分)だけ送り、以上の動作を繰り返すことで磁石体30は複数の磁石片31に割断分割される。
ところで、割断された複数の磁石片31を樹脂により接着して一体化する方法として、例えば、割断した夫々の磁石片31の平面及び側面を基準となる治具に当接させ、押圧手段により平面及び側面から押付けて整列・位置決めする。そして、整列した磁石片の長手方向からも接着のために加圧して、割断面34間で接着剤32を押し広げて接着する方法が実施される。しかしながら、割断面34間で接着剤32を押し広げた際に、図14に示すように、接着剤32が割断面34の中心からずれて拡がる場合があり、その状態で硬化した場合には、完成した界磁極用磁石体に反りが生じるという問題があった。また、この反りを防止するように、接着剤32を割断面34の全面に塗布する場合には、図15に示すように、接着剤32が加圧により割断面34の外周領域にはみ出して、磁石片を保持している治具の基準面に付着し、接着剤32硬化後に治具から界磁極用磁石体を取出す時に変形したりする不具合があった。
そこで、本実施形態では、磁石片31の厚み方向、幅方向、長手方向(整列方向)の3方向から押圧して磁石片31同士を接着剤32で結合する際に、形状精度を確保するに好適な一体化装置を備える界磁極用磁石体の製造装置および製造方法を提供する。
図4及び図5は割断された複数の磁石片31を整列させて一体化させる第1実施形態の一体化装置50の構成を示す、横断面図及び縦断面図である。この一体化装置50は、複数の磁石片31を厚み方向・幅方向及び長手方向に支持する厚み方向・幅方向及び長手方向の基準面を形成した基準治具51を備える。また、一体化装置50は、複数の磁石片31を基準治具51の長手方向基準面51Aに向かって押圧する長手方向押圧手段53と、複数の磁石片31を基準治具51の厚み方向基準面51B及び幅方向基準面51Cに押圧する厚み方向押圧手段54及び幅方向押圧手段55と、を備える。
基準治具51は、底辺52Aと枠状の側壁52Bとからなる、全体として上面が開放された箱状に形成されている。基準治具51の底辺52Aには、複数の磁石片31を整列させるために、夫々直交させた状態で、厚み方向基準面51Bと幅方向基準面51Cと長手方向基準面51Aとが形成されている。即ち、厚み方向基準面51Bは底面で形成され、幅方向基準面51Cと長手方向基準面51Aとは底面を形成する厚み方向基準面51Bから夫々起立した壁面で形成されている。厚み方向基準面51Bには、複数の磁石片31の厚み方向の一方の面に接し、幅方向基準面51Cには、複数の磁石片31の幅方向の一方の面に接し、長手方向基準面51Aには、複数の磁石片31の配列方向の端面に接して、複数の磁石片31を整列させる。
長手方向押圧手段53は、基準治具51の長手方向基準面51Aに対向する側壁52Bに設けた貫通孔52Cを通して長手方向に移動可能な長手方向押圧板53Cと、長手方向押圧板53Cを基準治具51内に向かって押圧するよう長手方向押圧板53Cの背面に配置されたばね53Bと、ばね53Bの他端を支持して側壁52Bにねじ等により固定される取付板53Aと、を備える。ばね53Bにより基準治具51内に押出される長手方向押圧板53Cの先端は、基準治具51内に配置された複数の磁石片31の端部に押圧面53Dを当接させて、複数の磁石片31の割断面34同士を互いに接触させて長手方向基準面51Aに向かって押圧するよう構成している。ばね53Bにより設定した押圧力は、例えば、単位面積当たり0.04MPaと設定している。また、長手方向押圧板53Cは、取付板53Aに固定されたアクチュエータ53Eによっても基準治具51の長手方向基準面51Aに向かって押圧されるよう構成している。アクチュエータ53Eとしては、機械的なクランプ手段や油圧・空圧等の押圧手段が使用される。
幅方向押圧手段55は、基準治具51の幅方向基準面51Cに対向する側壁52Bに設けた貫通孔52Dを通して幅方向に移動可能な幅方向押圧板55Cと、幅方向押圧板55Cを基準治具51内に向かって押圧するよう幅方向押圧板55Cの背面に配置されたばね55Bと、ばね55Bの他端を支持して側壁52Bにねじ等により固定される取付板55Aと、を備える。ばね55Bにより基準治具51内に押出される幅方向押圧板55Cの先端は、基準治具51内に配置された複数の磁石片31の幅方向面に押圧面55Dを当接させて、各磁石片31を幅方向基準面51Cに向かって押圧するよう構成されている。ばね55Bにより設定した押圧力は、例えば、単位面積当たり0.04MPaと設定している。また、幅方向押圧板55Cは、取付板55Aに固定されたアクチュエータ55Eによっても基準治具51の幅方向基準面51Cに向かって押圧されるよう構成している。アクチュエータ55Eとしては、機械的なクランプ手段や油圧・空圧等の押圧手段が使用される。
厚み方向押圧手段54は、基準治具51の厚み方向基準面51Bに対向する開口部にねじ等により固定される取付板54Aと、複数の磁石片31の厚み方向面に接触する厚み方向押圧板54Cと、厚み方向押圧板54Cと取付板54Aとの間に配置されて、厚み方向押圧板54Cを複数の磁石片31側に押圧するばね54Bと、を備える。ばね54Bにより押出される厚み方向押圧板54Cは、基準治具51内に配置される各磁石片31の厚み方向面に押圧面54Dを当接させて、磁石片31を厚み方向基準面51Bに向かって押圧するよう構成されている。ばね54Bにより設定した押圧力は、例えば、単位面積当たり0.04MPaと設定している。また、厚み方向押圧板54Cは、取付板54Aに固定されたアクチュエータ55Eによっても基準治具51の厚み方向基準面51Bに向かって押圧されるよう構成している。アクチュエータ54Eとしては、機械的なクランプ手段や油圧・空圧等の押圧手段が使用される。
基準治具51の厚み方向基準面51B及び幅方向基準面51Cには、配列される複数の磁石片31の割断面34が位置する部位において、厚み方向基準面51Bには幅方向に延び、幅方向基準面51Cには厚み方向に延びる、所定幅の窪み61,62(溝)が夫々形成されている。また、厚み方向及び幅方向の押圧板54C,55Cの押圧面54D,55Dにも、配列される複数の磁石片31の割断面34が位置する部位において、厚み方向押圧面54Dには幅方向に延び、幅方向押圧面55Dには厚み方向に延びる、所定幅の窪み63,64(溝)が夫々形成されている。
これらの窪み61〜64(溝)の幅は、複数の磁石片31が割断された順に配列して基準治具51内に投入した際に割断面34が窪み61〜64(溝)内に存在し、長手方向押圧手段53により長手方向基準面51Aに向かって押圧されて各磁石片31が長手方向に夫々移動しても、各割断面34が窪み61〜64(溝)内に存在するように、設定されている。また、窪み61〜64(溝)の深さは、長手方向押圧手段53により長手方向基準面51Aに向かって各磁石片31が押圧された際に、各割断面34間に配置される接着剤32が割断面34の外周領域から厚み方向及び幅方向にせり出しても、窪み61〜64(溝)の底に接触しない深さに設定されている。
以上の構成の界磁極用磁石体の一体化装置50による割断された複数の磁石片31を整列させての一体化させる方法について、以下に説明する。
一体化装置50は初期状態では、長手方向押圧手段53・厚み方向押圧手段54及び幅方向押圧手段55が取外されている。そして、図6に示すように、割断された磁石片31は割断された順に配列し、夫々の割断面34に接着剤32を塗布する。塗布された接着剤32は、磁石片31同士を長手方向から押圧して割断面34同士を強く接触させた際に、割断面34の全領域に拡がり、余分の接着剤32はバリとして割断面34の外周領域からはみ出すように、その塗布量が設定されている。そして、基準治具51の開いた開口から、割断された順に配列した複数の磁石片31をその順番を崩すことなく基準治具51の厚み方向基準面51B及び幅方向基準面51Cに各磁石片31の厚さ方向面及び幅方向面を接触させて投入する。この状態においては、各磁石片31は隣接する磁石片31に対して各々の割断面34を対面させて配列され、各割断面34は厚み方向基準面51B及び幅方向基準面51Cに設けた窪み61〜64(溝)内にあるよう配置されている。
次いで、厚み方向押圧手段54の取付板54Aが基準治具51に固定され、厚み方向押圧板54Cがばね54Bにより押出されて、配列された複数の磁石片31の厚み方向面に接触して、各磁石片31を厚み方向基準面51Bに押付ける。この場合に、押圧面54Dの幅方向に延びた窪み63(溝)は、各磁石片31の割断面34が対面している部位に臨み、割断面34部分を除く磁石片31の厚み方向面に押圧面54Dを接触させて、各磁石片31を厚み方向基準面51Bに押付ける。これにより、割断された磁石片31は、厚み方向に位置ずれが修正されて整列される。これら磁石片31の厚み方向への押圧時に、アクチュエータ54Eを作動させて一時的に強く押圧することにより、磁石片31の厚み方向への整列を確実なものとすることができる。
次いで、幅方向押圧手段55の取付板55Aが基準治具51に固定され、幅方向押圧板55Cがばね55Bにより押出されて、配列された複数の磁石片31の幅方向面に接触して、各磁石片31を幅方向基準面51Cに押付ける。この場合に、押圧面55Dの厚み方向に延びた窪み64(溝)は、各磁石片31の割断面34が対面している部位に臨み、割断面34部分を除く磁石片31の幅方向面に押圧面55Dを接触させて、各磁石片31を幅方向基準面51Cに押付ける。これにより、割断された磁石片31は、幅方向に位置ずれが修正されて整列される。これら磁石片31の幅方向への押圧時に、アクチュエータ55Eを作動させて一時的に強く押圧することにより、磁石片31の幅方向への整列を確実なものとすることができる。この状態の磁石片31の対面している割断面34同士は、割断により形成された各面であるため、磁石片31同士が厚さ方向および幅方向に整列された状態においては、その凹凸が夫々一致しており、対面する割断面34同士はどの領域においても等距離で対面している。
次いで、長手方向押圧手段53の取付板53Aが基準治具51に固定され、長手方向押圧板53Cがばね53Bにより押出されて、配列された複数の磁石片31の長手方向端面に接触して、長手方向基準面51Aに向かって押圧する。これにより、割断された磁石片31は、対面している割断面34同士を、接着剤32を介在させた状態でばね53Bによる押圧状態で接触する。そして、長手方向押圧手段53のアクチュエータ53Eを作動させて、さらに強く押圧する。このアクチュエータ53Eの押圧時に、厚み方向押圧手段54及び幅方向押圧手段55の各アクチュエータ54E,55Eの押圧力を低減させたりゼロとしたりする。このことにより、各磁石片31と、厚み方向及び幅方向の基準面51B,51C、厚み方向及び幅方向の押圧面54D,55Dとの摩擦抵抗を低減でき、長手方向押圧手段53の押圧力を各磁石片31に確実に伝えることができる。割断面34間に介在されている接着剤32は、長手方向からの押圧力により割断面34間で適正に広がることとなり接着力を確保させる。また、磁石片31同士が厚み方向および幅方向に整列され、その割断面34同士の凹凸が夫々一致した状態において、接着剤32を介在させて接合されるため、接着剤32の厚さが破断面のいずれの領域においても等しい厚さで磁石片31同士を接着する。
次いで、各押圧手段53〜55のアクチュエータ53E〜55Eの作動を解除して、各磁石片31を各押圧手段53〜55のばね53B〜55Bのみによる押圧とする。各磁石片31は長手方向押圧手段53、厚み方向押圧手段54及び幅方向押圧手段55のばね53B〜55Bによる付勢力により長手方向、幅方向及び厚み方向に位置決めされた状態を維持する。
次いで、各押圧手段53〜55のアクチュエータ53E〜55Eへの動力供給系統を離脱させ、複数の磁石片31を位置決め保持した一体化装置50を搬送可能とする。そして、一体化装置50を加熱炉に搬送し、加熱炉を通過させて、例えば、150℃まで昇温させることにより、接着剤32を硬化させる。
この温度上昇させての接着剤32の硬化時における熱膨張や接着剤32の温度上昇による粘度低下のために、磁石片31の積層方向(長手方向)に寸法変化を生じる。しかし、幅方向及び厚み方向の押圧手段54,55はばね54B,55Bにより予め設定した押圧力により押圧して、磁石片31の長手方向の移動を許容するようにしているため、長手方向押圧手段53のばね53Bの撓みにより追従移動する。このため、磁石片31間の接着力の低下を抑制し、各磁石片31間で均一な接着力を得ることができる。結果として、接着剤32に配合されるスペーサを破壊することなく磁石片31間のクリアランスを均一にコントロールでき、界磁極用磁石体80の全長寸法を所期した寸法(規格)内に収めることができる。
その後に、長手方向・幅方向及び厚み方向の各押圧手段53〜55を基準治具51から取外し、基準治具51から一体化した磁石体30を取出す。この磁石体30の取出しにあたって、割断面34の外周領域からはみ出された接着剤32によるバリがあっても、これらのバリは基準治具51や幅方向及び厚み方向の押圧板54C,55Cに付着していないため、磁石体30を変形させることなく取出すことができる。接着剤32によるバリは、仕上げ加工により容易に取り払うことができ、ことにより、界磁極用磁石体80を形成することができる。また、割断面34同士の凹凸が夫々一致した状態において、接着剤32を介在させて接合されるため、接着剤32の厚さが破断面のいずれの領域においても等しい厚さで磁石片31同士を接着するため、接着剤32が磁石片31の割断面34内で偏ることがなく、硬化後の界磁極用磁石体80に反りを生じないものとできる。
なお、磁石体30を割断するために事前に付与する溝33を、レーザ加工により実施した場合には、磁石片31の割断面34に沿う厚み方向の突起が発生する。即ち、レーザビーム照射による方法では、切り欠き溝33の先端の尖りを鋭くでき、また、使用する設備も安価であり、ランニングコストも安価にできる。しかしながら、レーザビーム照射による方法では、磁石表面に施す溝33の体積分だけ、即ち、切り欠き溝33として溶融された領域の材料が切り欠き溝33の両側に押退けられて堆積し付着する。このため、堆積付着した材料により、最終的に切り欠き溝33の両側の磁石表面にバリ(突起)が発生する。
本実施例の厚み方向押圧手段54では、厚み方向押圧板54Cの押圧面54Dに割断面34に臨む幅方向の窪み63(溝)を設けて、割断面34を避けた領域の厚み方向面を基準治具51の厚み方向基準面51Bへ向かって押圧するようにしている。このため、切り欠き溝33の両側の磁石体31表面に形成されるバリを避けて押圧することができる。このため、基準治具51の厚み方向基準面51Bとの間で、磁石片31を厚み方向にズレなく整列させることができる。また、長手方向押圧手段53により磁石片31を長手方向から押付けての、接着剤32の押し拡げ時および接着剤32の硬化時の膨張等、磁石片31の長手方向移動も、突起による干渉を生じることなく許容させることができる。
なお、界磁極用磁石体80の表面の突起は、接着剤32の硬化後に、接着剤32によるバリと共に機械加工により一括して除去する。このように、磁石片31が界磁極用磁石体80として一体化された後に突起を除去することにより、一体化する以前に磁石片31個々に突起を除去してその形状を整える場合に比較して、界磁極用磁石体80の形状精度を向上させることが容易である。また、このようにすることにより、大きい界磁極用磁石体80とすることができ、結果としてモータ出力を向上させることに寄与する。
以上のように、割断分割された磁石片31同士を一体化装置50により厚み方向、幅方向および長手方向の3方向から押圧することにより、割断した磁石片31同士のズレを抑制した状態で、接着剤32により一体化させて界磁極用磁石体80を形成している。このため、ロータコア21のスロット22へ組付け時に、界磁極用磁石体80を構成する磁石片31がロータコア21のスロット22の縁に引っ掛かりロータコア21に組付けできないという不具合を発生させない。即ち、磁石片31同士のズレを抑制でき、磁石片31同士のズレによりロータコア21のスロット22へ界磁極用磁石体80を挿入できないという不良品が発生する不良率が改善し、歩留が向上する。
また、界磁極用磁石体80の磁石寸法をロータコア21のスロット22の内寸法と同じ大きさに形成でき、磁石片31同士にずれを生じた界磁極用磁石体80を挿入する場合に比較して、大きいサイズの界磁極用磁石体80とすることができ、結果としてモータ出力を向上させることに寄与する。
なお、上記実施形態において、長手方向・幅方向及び厚み方向の押圧手段53〜55として、ばね53B〜55Bに加えて、機械的なクランプ手段や油圧・空圧等の押圧手段よりなるアクチュエータ53E〜55Eとにより夫々の押圧板53C〜55Cを押圧するものについて説明した。しかし、アクチュエータ53E〜55Eとしてはこれに限定されるものではない。例えば、シリンダから伸縮自在にロッドを配置し、このロッドの根元にばねを連結し、ばねの基部位置をねじによりシリンダ軸方向に移動可能とし、ねじの締め込み位置をサーボモータ等により調整するものであってもよい。この方法では、ねじを緩めてばねの基部位置を後退させればロッドを後退させることができ、ねじを締め込むことによりばねの基部位置を前進させればロッドを進出させることができる。さらに、ロッド先端を磁石片31に当接させた状態で更にねじを締め込むことにより磁石片31への押圧力を調整することができる。
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
(ア)磁石体30を幅方向に割断分割することにより形成した複数の磁石片31同士を、互いに整列させて結合する回転電機Aのロータコア21に配設される界磁極用磁石体80の製造装置である。このため、界磁極用磁石体80の製造装置は、割断面34同士を対面させて前記割断分割した複数の磁石片31同士を整列状態で位置決めする幅方向及び厚み方向の基準面51B,51Cを備える基準治具51を備える。また、界磁極用磁石体80の製造装置は、前記複数の磁石片31を配列した長手方向から押圧して磁石片31同士を長手方向に整列させる長手方向押圧手段53を備える。さらに、界磁極用磁石体80の製造装置は、前記複数の磁石片31を夫々の磁石片の幅方向および厚み方向から幅方向押圧板55Cおよび厚み方向押圧板54Cの押圧面54D,55Dを接触させて幅方向基準面51Cおよび厚み方向基準面51Bに押圧して幅方向および厚み方向に整列させる幅方向押圧手段55および厚み方向押圧手段54を備える。そして、前記基準面51B,51Cおよび押圧面54D,55Dの複数の磁石片31の各割断面34の外周領域に臨む部位に、当該部位の表面を割断面34の外周領域から離間させる窪み61〜64を形成したことを特徴としている。
即ち、基準面51B,51Cおよび押圧面54D,55Dの複数の磁石片31の各割断面34の外周領域に臨む部位に、当該部位の表面を割断面34の外周領域から離間させる窪み61〜64を備える。このため、割断面34から外周領域にはみ出した接着剤32は、窪み61〜64内に収容され、治具類に付着することを防止でき、接着剤32硬化後に治具から磁石体30を取出す時に変形したりする不具合が解消できる。また、窪み61〜64に接着剤32をはみ出させるため、接着剤32が各割断面34間に均一に拡がり、割断面34内で偏ることがないため、接着剤32が硬化後に得られた磁石体30に反りが生じることを防止でき、形状精度の確保された界磁極用磁石体80を得ることができる。
(第2実施形態)
図7〜図13は、本発明を適用した一体化装置の第2実施形態を示し、図7,8は第1実施例の構成図、図9〜図11は第2〜4実施例の構成図である。本実施形態においては、一体化装置における磁石片の割断面への接着剤32の塗布を、割断面の全領域に拡がらせることに代えて、割断面に部分的に拡がるように塗布する構成を第1実施形態に追加したものである。なお、第1実施形態と同一装置には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
本実施形態においては、接着剤32の塗布形状が割断面34の中心から対称であり、割断面34同士の圧着時におけるはみ出しが割断面34の外周領域の所定の部位となるようにしている。そして、接着剤32のはみ出しを予定している割断面34の外周領域の所定の部位の基準治具51の基準面及び厚み方向及び幅方向の押圧板54C,55Cの押圧面に、はみ出し部分を収容する窪みを設けるようにしたものである。
即ち、図7,8に示す第1実施例の一体化装置50においては、接着剤32の塗布形状が割断面34の中心から対称であり、はみ出しが厚み方向の所定の部位となるよう、接着剤32を縦方向(厚み方向)に複数個所で塗布したものである。従って、一体化装置50においては、厚み方向基準面51Bと厚み方向押圧板54Cの押圧面54Dとに、接着剤32のはみ出し部分を収容する窪み65を夫々設ける。この窪み65は、磁石片31の割断面34同士が接触する部分を跨いで形成される。このため、当該割断面34に隣接する割断面34の接着剤32のはみ出し部分を収容する窪み65同士を長手方向に互いに連通させて形成することができ、図7に示すように、厚み方向基準面51Bと厚み方向押圧板54Cとに長手方向に延びる複数本(3本)の通路71(溝)により形成することができる。この通路71(溝)は、例えば、図8に示すように、基準治具51に設けた、長手方向の貫通孔70を介して一体化装置50の外部空間に連通させている。
図9に示す第2実施例の一体化装置50においては、接着剤32の塗布形状が割断面34の中心から対称であり、はみ出しが所定の部位となるよう、接着剤32をX形状に塗布したものである。従って、一体化装置50においては、磁石片31の割断面34の幅方向両端部に接着剤32のはみ出しが発生するため、割断面34の幅方向両端部に臨む部材に窪みを形成する。即ち、厚み方向基準面51Bと厚み方向押圧面54Dと幅方向基準面51Cと幅方向押圧面55Dとに、接着剤32のはみ出し部分を収容する窪み66,62,64を夫々設ける。この窪み66,62,64は、磁石片31の割断面34同士が接触する部分を跨いで形成される。このため、厚み方向基準面51Bと厚み方向押圧面54Dとに形成される窪み66は、当該割断面34に隣接する割断面34の接着剤32のはみ出し部分を収容する窪み66と、長手方向に互いに連通させて形成することができ、厚み方向基準面51Bと厚み方向押圧面54Dとに長手方向に延びる複数本(2本)の通路72(溝)により形成することもできる。
図10に示す第3実施例の一体化装置50においては、接着剤32の塗布形状が割断面34の中心から対称であり、はみ出しが所定の部位となるよう、接着剤32を幅方向中央部に沿う方向と厚み方向中央部に沿う方向との十字形状に塗布したものである。従って、一体化装置50においては、磁石片31の割断面34の幅方向中央部の両端部と厚み方向中央部の両端とに接着剤32のはみ出しが発生するため、割断面34の幅方向中央部の上下部と厚み方向中央部の両端部に臨む部材に窪みを形成する。即ち、厚み方向基準面51Bと厚み方向押圧面54Dとの幅方向中央部の割断面34に臨む部位と、幅方向基準面51Cと幅方向押圧面55Dとの割断面34に臨む部位とに、窪み67,62,64を夫々形成する。厚み方向基準面51Bと厚み方押圧面54Dとに形成される窪み67は、当該割断面34に隣接する割断面34の接着剤32のはみ出し部分を収容する窪み67と、長手方向に互いに連通させて形成することができ、厚み方向基準面51Bと厚み方向押圧面54Dとに長手方向に延びる複数本(2本)の通路73(溝)により形成することもできる。
図11に示す第4実施例の一体化装置50においては、接着剤32の塗布形状が割断面34の中心から対称であり、はみ出しが所定の部位となるよう、接着剤32を幅方向中央部で幅広く幅方向両側に至るにつれて幅を減少させるように塗布したものである。従って、一体化装置50においては、磁石片31の割断面34の厚み方向に幅方向中央部で多く幅方向両側に移るに連れて減少する接着剤32のはみ出しが発生する。このため、割断面34の厚み方向の上下部に臨む面(厚み方向基準面51B及び厚み方向押圧面54D)に窪み68を形成する。即ち、厚み方向基準面51Bと厚み方向押圧面54Dとの幅方向中央領域の割断面34に臨む部位に、窪み68を夫々形成する。厚み方向基準面51Bと厚み方向押圧面54Dとに形成される窪み68は、当該割断面34に隣接する割断面34の接着剤32のはみ出し部分を収容する窪み68と、長手方向に互いに連通させて形成することができ、厚み方向基準面51Bと厚み方向押圧面54Dとに長手方向に延びる複数本(2本)の通路74(溝)により形成する。
以上に示した第1〜4実施例の一体化装置50では、接着剤32の塗布形状が、磁石片31の割断面34の中心に対して対称となっているため、割断面34間で接着剤32を押し広げた際にも接着剤32は割断面34間で割断面34の中心として対称に拡がり、硬化後の界磁極用磁石体80に反りを生じないものとできる。また、接着剤32のはみ出す所定部位の基準治具51の基準面51B,51C及び厚み方向及び幅方向の押圧面54D,55Dに、接着剤32のはみ出し部分を収容する窪み62,64,65〜68が設けられているため、接着剤32がはみ出しても基準治具51の基準面51B,51C及び厚み方向及び幅方向の押圧面54D,55Dに付着しない。従って、接着剤32硬化後に治具から界磁極用磁石体80を取出すときに接着剤32が基準治具51等に貼付いてこれを引き剥がす際に生ずる変形等の不具合を界磁極用磁石体80に発生させることがない。
また、第1〜4実施例の一体化装置50では、基準治具51の厚み方向基準面51Bと厚み方向押圧面54子に形成される窪み65〜68は隣接する割断面34に設けられる窪み65〜68と連通させて一体化装置50の長手方向に延びる通路71〜74を通して外部に連通している。このため、一体化装置50を加熱炉により昇温させて接着剤32を硬化させる際に生ずる接着剤32の気化成分が、割断面34から窪み65〜68に流れて長手方向に連通する通路71〜74および貫通孔70を経由して一体化装置50の外部に放出される。即ち、接着剤32から気化した成分は、窪み65〜68内に滞留することなく外部に放出されるため、基準治具51の基準面51B,51C及び厚み方向及び幅方向の押圧面54D,55Dの磁石片31と接する表面に蒸着することを防止できる。
また、図12に示すように、一体化装置50の外部より窪み65〜68同士を連通させている通路71〜74の一方から空気を供給すると、供給された空気が各窪み65〜68に気化した接着剤32の気化成分を通路70〜74の下流に押し流し、通路71〜74下流の貫通孔70から一体化装置50の外部に積極的に排出させることができる。このため、接着剤32から気化した成分を、窪み65〜68内に滞留することなく積極的に外部に放出でき、基準治具51の基準面51B,51C及び厚み方向及び幅方向の押圧面54D,55Dの磁石片31と接する表面に蒸着することをより一層防止できる。
また、一体化装置50の磁石片31に対して接触する、厚み方向及び幅方向の基準面51B,51Cと厚み方向及び幅方向の押圧面54D,55Dに、予め表面処理、例えば、無電解ニッケル処理を施すことが望ましい。このようにすることにより、接着剤32の加熱硬化時に一体化装置50のこれらの表面に接着剤32の気化成分が蒸着したとしても、その除去を容易にできる。
なお、第1実施形態の一体化装置50においても、図13に示すように、隣接する窪み61,63(溝)同士を長手方向の通路75により接続して、図8に示すように、一体化装置50の外部に連通させることができる。従って、第1実施形態の一体化装置50においても、第2実施形態に示す各実施例と同様に作用させることができ、同様の効果を発揮させることができる。
本実施形態においては、第1実施形態における効果(ア)に加えて以下に記載した効果を奏することができる。
(イ)磁石片31の割断面34間に介在される接着剤32は、各割断面34の中心から対称であり長手方向押圧手段53による押圧時に割断面34からのはみ出し部位が割断面34の外周領域の予め設定した部位となるように塗布する。そしてし、前記割断面34に臨む窪み62,64,65〜68を、前記割断面34の外周領域の予め設定した部位の基準面51B,51Cおよび押圧面54D,55Dに設けるようにしている。このため、接着剤32の塗布形状が、磁石片31の割断面34の中心に対して対称となっているため、割断面34間で接着剤32を押し広げた際にも接着剤32は割断面34間で割断面34の中心として対称に拡がり、硬化後の界磁極用磁石体80に反りを生じないものとできる。また、接着剤32のはみ出す所定部位の基準治具51の基準面51B,51C及び厚み方向及び幅方向の押圧面54D,55Dに、接着剤32のはみ出し部分を収容する窪み62,64,65〜68が設けられているため、接着剤32がはみ出しても基準治具51の基準面51B,51C及び厚み方向及び幅方向の押圧面62,64,65〜68に付着しない。従って、接着剤32硬化後に治具から界磁極用磁石体80を取出すときに接着剤32が基準治具51等に貼付いてこれを引き剥がす際に生ずる変形等の不具合を界磁極用磁石体80に発生させることがない。
(ウ)窪み65〜68は、長手方向に隣接した割断面34の外周領域に臨む窪み65〜68と互いに長手方向に延びる通路により連通させて基準治具51の外部に連通させている。このため、一体化装置50を加熱炉により昇温させて接着剤32を硬化させる際に生ずる接着剤32の気化成分が、割断面34から窪み65〜68に流れて長手方向に連通する通路71〜74を経由して一体化装置50の外部に放出される。即ち、接着剤32から気化した成分は、窪み65〜68内に滞留することなく外部に放出されるため、基準治具51の基準面51B,51C及び厚み方向及び幅方向の押圧面54D,55Dの磁石片31と接する表面に蒸着することを防止できる。
(エ)通路65〜68には、接着剤32の加熱硬化時に外気を供給して窪み65〜68内を換気するため、供給された空気が各窪み65〜68に気化した接着剤32の気化成分を通路71〜74の下流に押し流し、通路71〜74下流の貫通孔70から一体化装置50の外部に積極的に排出させることができる。このため、接着剤32から気化した成分を、窪み65〜68内に滞留することなく積極的に外部に放出でき、基準治具51の基準面51B,51C及び厚み方向及び幅方向の押圧面54D,55Dの磁石片31と接する表面に蒸着することをより一層防止できる。
(オ)基準面51B,51Cおよび押圧板55C,55Cの押圧面54D,55Dには、蒸着する接着剤32の気化成分の除去を容易にする表面処理がなされている。このため、接着剤32の加熱硬化時に一体化装置50のこれらの表面に接着剤32の気化成分が蒸着したとしても、その除去を容易にできる。
上述の各実施形態では、幅方向、厚み方向、長手方向の各基準面として、磁石片に面接触するものを用いているが、点接触するような例えばピン形状のような基準面を採用しても良い。また、幅方向、厚み方向、長手方向の各基準面は完全固定して位置決めするものだけでなく、それぞれ幅方向、厚み方向、長手方向へ移動して磁石片を押圧可能な構成としても良い。