以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態を適用するシステムの概略構成図である。
内燃機関1は排気エネルギにより駆動するターボ式過給機2を備える。内燃機関1の吸気通路7には、吸気流れの上流側から順に、吸入空気量を計測するエアフローメータ3、ターボ式過給機2のコンプレッサ2a、加圧され高温になった吸入空気を冷却するインタークーラ4、吸入空気量を調整する電子制御式スロットルバルブ(以下、単に「スロットルバルブ」という)6が備えられる。吸気通路7はスロットルバルブ6の下流側でコレクタタンク5に接続されている。コレクタタンク5は各気筒の吸気ポートに連通するブランチ8を備える。
吸気通路7のコンプレッサ2aより上流側には第1経路21が、同じくコンプレッサ2aとスロットルバルブ6の間には第2経路22が、それぞれ接続されており、第1経路21と第2経路22は、経路切替弁20を介して連結されている。経路切替弁20は三方弁であり、第3経路r23も接続されている。第3経路23は内燃機関1のロッカカバー1aに接続されている。
ロッカカバー1aには、ブランチ8と連通し、内燃機関1の内部が負圧になったときに開弁するPCVバルブ25を備える第4経路24も接続されている。
なお、第4経路24を、ブランチ8ではなくコレクタタンク5と連通するようにしてもよい。また、内燃機関1の内部のうち、ピストンの下面にシリンダブロックおよびオイルパン1dで画成される空間をクランクケース1e、ロッカカバー1aとシリンダヘッド1bの上面で画成される空間をロッカカバー内部1gと呼ぶこととする。クランクケース1eは、シリンダブロック1cおよびシリンダヘッド1bに設けた連通路を介して連通している。したがって、クランクケース1eが負圧になると、ロッカカバー内部1gも負圧になり、PCVバルブ25が開弁する。
吸気通路7の第2経路22接続部とスロットルバルブ6との間には圧力センサ31が、コレクタタンクには圧力センサ30が、それぞれ設けられている。
内燃機関1の排気通路9には、排気流れの上流側から順に、ターボ式過給機2のタービン2b、排気浄化用の触媒10、11、消音のためのマフラー12が備えられる。
圧力センサ30、31の検出信号、およびエアフローメータ3の検出信号等はエンジンコントロールユニット(以下、「ECU」という)40に読み込まれる。なお、ECU40は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。ECU40を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
また、ECU40は、圧力センサ30、31等の検出信号の他、運転者のアクセルペダル操作量を検出するアクセル開度センサ34、エンジン回転速度を検出するクランク角センサ35の検出信号も読み込み、これらの信号に基づいて、一般的な内燃機関と同様の燃料噴射量、点火時期、およびスロットルバルブ6の開度等の制御の他、ブローバイガス還流のために、後述する経路切替弁20の切り替え制御等を実行する。
図2は、ECU40が実行する、ブローバイガス還流のための経路切替弁20の切り替え制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、内燃機関1の運転状態に応じて流路切替弁20を制御することで、第1経路21または第2経路22のいずれかを第3経路23と連通させるものである。なお、本制御ルーチンは、例えば10ミリ秒程度の間隔で繰り返し実行される。以下、ステップに沿って説明する。
ステップS1000で、ECU40は現在の運転領域が過給域か否かを判定する。例えば、圧力センサ30により検出したコレクタ圧Pcolと大気圧を比較し、コレクタ圧が大気圧を超えていたら過給域と判定する。判定の結果、過給域であればステップS1010の処理を実行し、そうでない場合はステップS1090の処理を実行する。
ステップS1010で、ECU40は、アクセル開度センサ34の検出値に基づいてアクセル全開判定フラグfJAPOFULLをセットする。具体的には、アクセル開度が全開の場合にはfJAPOFULL=1、そうでない場合はfJAPOFULL=0にセットする。
ステップS1020で、ECU40はアクセル開度が全開ではない、または、圧力センサ31の検出値であるスロットル上流圧Pthとコレクタ圧Pcolの圧力差(以下、スロットル前後差圧という)が判定用スロットル前後差圧Ps以上である、の少なくともいずれかが成立しているか否かを判定する。いずれかが成立している場合はステップS1030の処理を実行し、いずれも成立していない場合はステップS1090の処理を実行する。なお、スロットル前後差圧が判定用スロットル前後差圧Ps以上の場合には、スロットル前後差圧成立フラグfPsを1に設定する。
アクセル開度についてはアクセル全開フラグfJAPOFULLに基づいて判定することができる。判定用スロットル前後差圧Psは予め設定した値であり、第2経路22と第3経路23が連通している場合に、PCVバルブ25が開弁するときの圧力差を下限値とする。
ステップS1030で、ECU40はアクセル開度の変化量に基づいて、定常運転状態か過渡運転状態を判定する。定常運転状態の場合には定常状態判定フラグfTEIJYOを1、過渡状態判定フラグfKATOを0に設定し、過渡運転状態の場合には定常状態判定フラグfTEIJYOを0、過渡状態判定フラグfKATOを1に設定する。
ステップS1040で、ECU40は定常状態判定フラグfTEIJYOが1か否か、つまり定常運転状態か否かを判定し、定常運転状態の場合にはステップS1050の処理を実行し、過渡運転状態の場合にはステップS1090の処理を実行する。
ステップS1050で、ECU40は第1経路21から第2経路22へ切り替える経路1→2切替フラグfR1TO2を1に設定する。
ステップS1060で、ECU40は、過渡状態判定フラグfKATOがゼロであること、アクセル全開判定フラグfJAPOFULLがゼロであること、スロットル上流圧Pthとコレクタ圧Pcolの圧力差が判定用スロットル前後差圧Ps以上であること、という3つの条件が成立するか否かを判定する。3つの条件が成立する場合はステップS1070の処理を実行し、1つでも成立しない場合はステップS1090の処理を実行する。
ステップS1070で、ECU40は第2経路22から第1経路21へ切り替える経路2→1切替フラグfR2TO1を0に設定する。
ステップS1080で、ECU40は、第2経路22と第3経路23が連通するように経路切替弁20を制御する。
ステップS1090で、ECU40は経路1→2切替フラグfR1TO2を0、経路2→1切替フラグfR2TO1フラグを1に設定する。
ステップS1100で、ECU40は第1経路21と第3経路23が連通するように経路切替弁20を制御する。
図3は、本制御ルーチンを実行した場合のタイムチャートである。なお、t2からt8までのスロットル前後差圧は、判定用スロットル前後差圧Psより大きいものとする。
t1からt2までは、アクセル開度が増減するが、コレクタ圧が大気圧以下の自然吸気領域なので、図2のステップS1000の後、ステップS1100、ステップS1110へと進み、第1経路21が選択される。
t2からt3までは過給域に入っており、アクセル開度が全開ではないので、図2のステップS1040の処理を実行するが、アクセル開度が変化し続けている、つまり過渡状態なので、ステップS1100、ステップS1110へと進み、第1経路21が選択される。
t3からt4までは、いったん自然吸気領域に戻った後で過給域に入るので、ステップS1000またはステップS1040の判定の結果、ステップS1100、ステップS1110へと進み第1経路21が選択される。
t4からt5までは、過給域であり、かつアクセル開度が全開ではなく、かつ定常状態、かつスロットル前後差圧が所定値より大きいので、ステップS1080、ステップS1090へと進み、第2経路22が選択される。
t5からt6は、過渡状態になるので、ステップS1100、ステップS1110へと進み、第1経路21が選択される。
t6からt7では、t4からt5と同様に第2経路22が選択される。
t7からt8は過渡状態になるので、t5からt6までと同様に第1経路21が選択される。
t8以降は、アクセル開度が全開、かつスロットル前後差圧がなくなるので、ステップS1020の後ステップS1100、ステップS1110へと進み、第1経路21が選択される。
上述した制御ルーチンによれば、非過給域では第1経路21と第3経路23が連通し、新気およびブローバイガスは図4に示すように流れる。すなわち、コレクタタンク5の負圧に引かれて内燃機関1の内部も負圧になるので、第1経路21および第3経路23を介してクランクケース1eに新気が導入され、これによりクランクケース1e内は換気され、ブローバイガスは第4経路24を介してコレクタタンク5下流のブランチ8に入る。
過給域であっても、スロットルバルブ6が全開の場合、スロットル前後差圧が判定用スロットル前後差圧Psより小さい場合、または過渡運転状態の場合には、第1経路21と第3経路23が連通し、ブローバイバスは図5に示すように流れる。すなわち、コレクタタンク5の負圧がなくなることでPCVバルブ25が閉じるので、ブローバイガスはクランクケース1eから第3経路23、第1経路21へと逆流し、吸気通路7へ還流する。このようにすれば、例えばスロットルバルブ6が全開の場合にもクランクケース1eの内圧が過剰に上昇することを防止できる。なお、スロットルバルブ6の開度は、アクセルペダル開度に比例するものとする。
一方、定常運転状態、かつアクセル開度が全開未満、かつスロットル前後差圧が判定用スロットル前後差圧Ps以上の場合には、第2経路22と第3経路が連通し、新気およびブローバイガスは図6に示すように流れる。すなわち、スロットル前後差圧があることでスロットルバルブ6の上流側から第2経路22を介してクランクケース1eに新気が導入され、非過給時と同様に新気によってクランクケース1e内が換気され、ブローバイガスはブランチ8に入る。
なお、過渡運転状態であっても、スロットル前後差圧があれば第2経路22と第3経路23を連通させてブローバイガスをブランチ8に還流させることはできるが、吸気の一部が換気に使われることになるので、図5の場合に比べると加速性能が低下する。このため本実施形態では、過渡運転状態の場合には第1経路21と第3経路23を連通させている。
ただし、過渡運転状態であっても、アクセル開度変化量が比較的小さい場合、つまり運転者が急激な加速を要求していない場合には、第2経路22と第3経路23を連通させるようにしてもかまわない。
以上のように、本実施形態では次の効果が得られる。
(1)スロットルバルブ6の上流かつ過給機2の下流の吸気通路7とクランクケース1eを連通する第2経路22および第3経路23を備え、過給域であっても、定常運転状態、かつアクセル開度が全開未満、かつスロットル前後差圧が所定値以上の場合に、第2経路22と第3経路23が連通する。これにより、過給域においても、コンプレッサ2aとスロットルバルブ6の間の吸気通路7からクランクケース1eに新気を導入して、ブローバイガスをブランチ8に還流させることができる。
(2)コンプレッサ2aの上流の吸気通路7とクランクケース1eとを連通する第2経路22および第3経路23を備えるので、クランクケース内圧が高まったときには第1経路21から吸気通路7へブローバイガスを還流することができる。これにより、クランクケース内圧の過剰な上昇を抑制できる。一方、非過給時には第1経路21から新気を導入してブローバイガスをブランチ8に還流させることができる。
(3)第1経路21と第2経路22は合流して第3経路23となり、合流部には切替バルブ20を備えるので、クランクケース1e内の換気、燃費性能、または過渡トルク応答性能の要求に応じて新気導入通路を容易に切り替えることができる。
(4)非過給時には、経路切替弁20は第1経路21と第3経路23を連通させる。すなわち、コンプレッサ2aを通過した新気がすべて筒内に供給される経路にする。したがって、その後に加速要求があった場合に経路を切り替える必要がない。
(5)過渡運転時またはアクセル全開運転時には、経路切替弁20は第1経路21と第3経路23を連通させる。このようにすると、コンプレッサ2aを通過した新気はすべて筒内に供給されるので、第2経路22と第3経路23を連通させる場合に比べて加速性能に優れる。
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態を適用するシステムの概略構成図である。
第1実施形態との相違点は、過給機が機械式過給機50である点、機械式過給機50を迂回するバイパス通路52を備える点、バイパス通路52を流れる吸気量を制御するバイパスバルブ51を備える点、エアフローメータ3と機械式過給機50の間に圧力センサ60を備える点である。
機械式過給機50は、内燃機関1のクランクシャフト1fからの回転の伝達を断接する電磁クラッチ53を備える。電磁クラッチ53が締結状態のときは、クランクシャフト1fの回転が伝達されて機械式過給機50も回転して過給し、電磁クラッチ53が解放状態のときは、クランクシャフト1fからの回転の伝達が遮断されて機械式過給機50は回転せず、過給は行われない。
バイパス通路52は、機械式過給機50より上流側かつ第1経路21との合流部より下流側で吸気通路7から分岐し、機械式過給機50より下流側かつ第2経路22との合流部より上流側で合流する。
電磁クラッチ53の解放、締結の切り換え、スロットルバルブ6の開度制御、バイパスバルブ51の開度制御、経路切替弁20の制御等は、クランク角センサ35、圧力センサ60、圧力センサ31、および経路切替弁20の切り替え制御等の検出信号に基づいて、ECU40によって行われる。
ここで、スロットルバルブ6およびバイパスバルブ51の開度制御の基本的な考え方について説明する。
図9は、ECU40が実行する、スロットルバルブ6およびバイパスバルブ51の開度制御ルーチンを示すフローチャートである。
ステップS3000で、ECU40は、エンジン回転速度をクランク角センサ35の検出値に基づいて算出し、トルクをアクセル開度センサ34の検出値に基づいて算出し、図8のマップを用いて現在の運転領域が電磁クラッチ53の締結領域か否かを判定する。図8は、電磁クラッチ53の締結、解放領域を示すマップである。縦軸は内燃機関1のトルク、横軸はエンジン回転速度であり、図中のWOTトルク線は全負荷トルクを、0[kPa]トルクは、コレクタ圧Pcolがゼロ[kPa]のときのトルク特性を、そして斜線を付した領域は電磁クラッチ53を締結する領域を示している。
締結領域の場合はステップS3010の処理を実行し、締結領域でない場合は、ステップS3060でバイパスバルブ51を全開にし、スロットル開度をアクセル開度に応じて制御する。
ステップS3010で、ECU40はアクセル開度センサ18で検出したアクセル開度APOから、アクセル全開値に対する現在のアクセル開度の割合(以下、アクセル開度率という)APORを算出する。
ステップS3020で、ECU40はドライバ要求トルクTrを算出する。具体的には、現在のエンジン回転速度でアクセル開度が全開であるとした場合のトルク(全開トルク)を求め、この全開トルクにアクセル開度率APORを乗じたものをドライバ要求トルクTrとする。
ステップS3030で、ECU40は圧力センサ31で検出したスロットル上流圧Pth、現在のスロットル開度及びエンジン回転速度に基づいて、コレクタ圧Pcolを推定する。推定方法としては、例えば、吸気通路7、スロットルバルブ6、コレクタタンク5、及び内燃機関1の仕様ごとに、実験等によりスロットル上流圧Pth、スロットル開度、エンジン回転速度とコレクタ圧Pcolとの関係をマップ化し、これを検索する。
ステップS3040で、ECU40は、ドライバ要求トルクTrをマップ検索等により目標コレクタ圧Ptに換算する。
ステップS3050で、ECU40は、後述するサブルーチンを実行することにより、目標コレクタ圧Ptとなるようにスロットルバルブ6及びバイパスバルブ51の開度をフィードバック制御する。
図10は、ECU40がステップS3050で実行するサブルーチンを示すフローチャートである。
ステップS4000で。ECU40は現在のエンジン回転速度に基づいて図11に示すようなバイパスバルブ開度−コレクタ圧特性マップを選択する。図11は横軸がバイパスバルブ開度、縦軸がコレクタ圧であり、このようなマップをエンジン回転数ごとに作成しておく。
ステップS4010で、ECU40は選択した特性マップ上に目標コレクタ圧Ptとなるバイパスバルブ開度があるか否かの判定を行う。可能な場合にはステップS4020の処理を実行し、不可能な場合にはステップS4040の処理を実行する。
ステップS4020で、ECU40はスロットルバルブ6を全開にする。
ステップS4030で、ECU40はバイパスバルブ51の開度を目標コレクタ圧Ptとなる開度に制御する。
一方、ステップS4040で、ECU40はスロットルバルブ6を全開にする。
ステップS4050で、ECU40は、実現可能な開度のうち、目標コレクタ圧Ptとなる開度よりも大きい側で最も近いバイパスバルブ開度BPVh及びこのときのコレクタ圧Phと、同じく小さい側で最も近いバイパスバルブ開度BPVlおよびこのときのコレクタ圧Plと、を算出する。
ステップS4060で、ECU40は、バイパスバルブ51の開度をBPVhに固定し、現在のコレクタ圧Pcolが目標コレクタ圧Ptとなるようにスロットルバルブ6の開度を制御する。これは、バイパスバルブ51では制御できないコレクタ圧Ph−Pl間の圧力制御をスロットルバルブ6で行うものである。図12はバイパスバルブ51の開度を固定した場合のスロットルバルブ開度とコレクタ圧との関係を示す図である。この図に示すように、スロットルバルブ開度が大きくなるほどスロットルバルブ開度の変化に対するコレクタ圧の変化は鈍くなっている。すなわち、スロットルバルブ開度とコレクタ圧との関係は、図11に示したバイパスバルブ開度とコレクタ圧との関係とは逆の特性となっている。
ここでは、ステップS4040でスロットルバルブ開度は全開になっているため、スロットルバルブ全開付近で制御することになる。このため、バイパスバルブ開度の制御では、制御分解能により不可能であったコレクタ圧Ph−Pl間の微小範囲の圧力制御が可能となる。
ステップS4070で、ECU40は、現在のコレクタ圧Pcolがコレクタ圧Plであるか否かの判定を行い、コレクタ圧Plの場合はステップS4080の処理を実行し、コレクタ圧Plでない場合は本ルーチンを終了する。
ステップS4080で、ECU40はスロットルバルブ6を全開にし、かつバイパスバルブ51をBPVlに制御する。
上記のように、電磁クラッチ53が解放された状態では、バイパスバルブ51は全開に制御され、スロットルバルブ6の開度を制御することでトルク制御を行う。
一方、電磁クラッチ53が締結された状態では、基本的にはスロットルバルブ6を全開にして、バイパスバルブ51の開度を制御することでトルク制御を行う。
次に、上記のようなシステムにおける、経路切替弁20の制御ルーチンについて説明する。
図13、図14、図15、図16は、第2実施形態においてECU40が実行する、ブローバイガス還流のための経路切替弁20の切り替え制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、内燃機関1の運転状態に応じて流路切替弁20を制御することで、第1経路21または第2経路22のいずれかを第3経路23と連通させるものである。なお、本制御ルーチンは、例えば10ミリ秒程度の間隔で繰り返し実行される。以下、ステップに沿って説明する。
ステップS2000で、ECU40は、電磁クラッチ53が締結されていること、およびコレクタタンク圧が大気圧を超えていること、のいずれもが成立しているか否かを判定する。成立している場合はステップS2001の処理を実行し、成立していない場合は後述するステップS2130の処理を実行する。
ステップS2010、S2020は、図2のステップS1010、S1020と同様なので説明を省略する。なお、ECU40は、ステップS2020の判定結果が肯定的な場合にはステップS2025の処理を実行し、否定的な場合は後述するステップS2100の処理を実行する。
ステップS2025で、ECU40は、クランクケース1e内のブローバイガス量割合BBGASRATEを推定する。例えば、内燃機関1の各運転状態における単位時間当たりのブローバイガス量を予め実験等により求めてマップ化しておく。そして、このマップを機関運転中に繰り返し検索し、検索結果を積算していけば現在のブローバイガス量を推定することができ、クランクケース1e内のブローバイガス量割合BBGASRATEを推定することもできる。
ステップS2030で、ECU40はアクセル開度に基づいて定常状態か過渡状態かを判定し、定常状態フラグfTEIJYO、過渡状態フラグfKATOを設定する。
ステップS2040で、ECU40は定常状態かつブローバイガス量割合BBGASRATEが所定値BBGASJH以上であるという条件が成立するか否かを判定する。成立する場合はステップS250の処理を実行し、成立しない場合はステップS2070の処理を実行する。なお、ここではブローバイガス量割合BBGASRATEに基づいて判定しているが、ステップS2025でブローバイガス量を求めて、ブローバイガス量に基づいて判定するようにしてもよい。
ステップS2050で、ECU40は図2のステップS1050と同様に経路切替フラグfR1TO2を1に設定する。
ステップS2060で、ECU40は、定常状態、かつアクセル開度が全開未満、かつスロットル前後差圧が所定値Ps以上、かつクランクケース1e内のブローバイガス量割合BBGASRATEが所定値BBGASJLより大、の条件が成立するか否かを判定する。成立する場合はステップS2080の処理を実行し、成立しない場合はステップS2100の処理を実行する。
ステップS2070で、ECU40は、定常状態かつブローバイガス量割合BBGASRATEが所定値BBGASJLより大きいか否かを判定し、大きい場合はステップS2040の処理を実行し、そうでない場合は図15のステップS2100の処理を実行する。
図14のステップS2080で、ECU40は経路2→1切替フラグfR2TO1を0に設定する。
ステップS2090で、ECU40はバイパスバルブ51を全閉に制御する。
ステップS2093で、ECU40は、内燃機関1が運転者の要求に応じたドライバ要求トルクTrを発生するようスロットルバルブ6の開度を制御する。
ステップS2096で、ECU40は、第2経路22と第3経路23が連通するよう経路切替弁20を制御する。
一方、図13のステップS2020、S2060の判定結果が否定的な場合に実行する図15のステップS2100で、ECU40は経路1→2切替フラグfR1TO2を0、経路2→1切替フラグfR2TO1を1に設定する。
ステップS2110で、ECU40は第1経路21と第3経路23が連通するように経路切替弁20を制御する。
ステップS2120で、ECU40はスロットルバルブ6を全開に制御する。
ステップS2130で、ECU40は内燃機関1がドライバ要求トルクTrを発生するようスロットルバルブ6の開度を制御する。
また、図13のステップS2000の判定結果が否定的であった場合に実行する図16のステップS2130で、ECU40は、経路1→2切替フラグfR1TO2を0、経路2→1切替フラグfR2TO1を1に設定する。
ステップS2140で、ECU40は第1経路21と第3経路23が連通するように経路切替弁20を制御する。
ステップS2160で、ECU40は、上述した通常のトルク制御を実行する。
図17は、上記制御を実行した場合のタイムチャートである。なお、t6からt7まで、t9からt10まで、のそれぞれのスロットル前後差圧は、判定用スロットル前後差圧Psより大きいものとする。
t1からt2までは、コレクタ圧Pcolが大気圧未満なので、図13のステップS2000の判定の結果、図16のステップS2140以降の処理を実行し、経路切替弁20は第1経路21と第3経路23が連通するように制御される。
t2からt3まではコレクタ圧Pcolが大気圧を超えるが過渡運転状態であり、t3からt4まではコレクタ圧Pcolが大気圧未満であり、t4からt5までは過渡運転状態であるから、経路切替弁20は第1経路21と第3経路23が連通する状態のままである。
t5からt6までは、定常運転状態であるが、スロットル前後差圧が判定用スロットル前後差圧Psより小さいため、経路切替弁20は第1経路21と第3経路23が連通する状態のままである。
t6からt7では、定常状態であり、かつアクセル開度が全開未満であり、かつブローバイガス量割合が所定値BBGASJLより大きく、かつスロットル前後差圧が判定用スロットル前後差圧Psより大きいという条件が成立するので、経路切替弁20は第2経路22と第3経路23が連通する状態に制御される。
t7からt8は過渡運転状態なので、経路切替弁20は再び第1経路21と第3経路23が連通する状態に制御される。
t8からt9は、定常運転状態であるが、スロットル前後差圧が判定用スロットル前後差圧Psより小さいため、経路切替弁20は再び第1経路21と第3経路23が連通する状態に制御される。
t9からt10では、t6からt7の期間と同様の条件が成立するので、経路切替弁20は第2経路22と第3経路23が連通する状態に制御される。
t10からt11はスロットル前後差圧が判定用スロットル前後差圧Psより小さく、t11からt12は過渡運転状態であり、t12以降はアクセル開度が全開になるため、いずれの期間も経路切替弁20は再び第1経路21と第3経路23が連通する状態に制御される。
上述した制御ルーチンによれば、非過給域では第1経路21と第3経路23が連通し、バイパスバルブ51は全開に制御されて、トルクの制御はスロットルバルブ6により行われる。これにより、新気およびブローバイガスは図18に示すように流れる。すなわち、コレクタタンク5の負圧に引かれてクランクケース1e内部も負圧になり、第1経路21および第3経路23を介してクランクケース1eに新気が導入されてクランクケース1e内が換気され、ブローバイガスは第4経路24を介してコレクタタンク5下流のブランチ8に入る。そして、コレクタタンク5内の負圧が小さくなると、第4経路24からコレクタタンク5へのブローバイガスの吸引がされなくなるので、クランクケース1e内圧が上昇したら、図19に示すようにブローバイガスは第3経路23及び第1経路21を介して吸気通路7に還流する。
過給域に入ると、バイパスバルブ51とスロットルバルブ6は協調制御される。そして、定常状態、かつアクセル開度が全開未満、かつスロットル前後差圧が判定用スロットル前後差圧Ps以上、かつブローバイガス量割合BBGASRATEが所定値BBGASJLより大きい、という条件が成立する場合には経路切替弁20は第2経路22と第3経路23が連通する状態に制御される。このとき、バイパスバルブ51は全閉に制御され、トルク制御はスロットルバルブ6の開度制御により行われ、ブローバイガスは図21に示すように流れる。すなわち、トルク制御のためにスロットルバルブ6を中間開度にすることで、スロットル上流圧力Pthがコレクタ圧Pcolより高くなり、第2経路22からクランクケース1eに新気が導入する。これにより、クランクケース1e内を換気して、ブローバイガスを第4経路24からコレクタタンク5へ還流させることができる。
一方、上記条件が成立しない場合は、経路切替弁20は第1経路21と第3経路23が連通する状態に制御される。このとき、バイパスバルブ51およびスロットルバルブ6は、要求トルクTrとなるように協調制御され、ブローバイガスは図20に示すように流れる。すなわち、ブローバイガスがクランクケース1eからコレクタタンク5へ吸引されない状況でクランクケース1e内圧が高まると、ブローバイガスは第1経路21を介して機械式過給機50より上流の吸気通路7へ還流される。
ところで、バイパスバルブ51を全閉にしてスロットルバルブ6でトルク制御を行うと、スロットルバルブ6の前後でポンプロスが生じ、燃費性能が低下する。そこで、トルク制御をスロットルバルブ6で行う条件にブローバイガス量割合BBGASRATEが所定量以上であることを含めることによって、ブローバイガスの還流と燃費性能を両立している。
以上のように本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加え、次の効果も得られる。
過給域では、基本的にはスロットルバルブ6は全開にし、バイパスバルブ51によりトルク制御を行うが、ブローバイガス量割合が所定値を超えたら、バイパスバルブ51を全閉にしてスロットルバルブ6でトルク制御を行う。そして、第2経路22と第3経路23を連通させる。
これにより、過給域においてもスロットル上流圧力Pthがコレクタ圧Pcolより高い状態を作り出して、第2経路22から新気を導入してブローバイガスをコレクタタンク5に還流させることができる。また、経路切替およびトルク制御の切り替えの条件にブローバイガス量割合BBGASRATEを含めたので、ブローバイガスの還流によるオイル劣化防止と燃費性能の低下防止を両立できる。
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。