JP5759351B2 - ボロン酸基固定化支持体を用いたピロリン酸検出法 - Google Patents

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Description

本発明は、ピロリン酸を検出するための方法及びデバイスに関する。また本発明は、DNAの検出方法及びDNA塩基配列決定方法に関する。具体的には、ボロン酸基を固定化した導電性支持体とピロリン酸が接触した際に生じる電気的変化を検出することにより、ピロリン酸を検出するものである。
DNAの塩基配列決定にはゲル電気泳動と蛍光検出を用いた方法が広く用いられている。この方法ではまず、配列決定を行おうとするDNA断片のコピーを沢山作製する。次にDNAの5’末端を始点として種々の長さの蛍光標識断片を作製する。また、これらDNA断片の3’末端の塩基種に応じて波長の異なる蛍光標識を付加しておく。ゲル電気泳動により長さの違いを1塩基の差で識別し、それぞれの断片群が発する発光を検出する。発光波長色から測定中のDNA断片群のDNA末端塩基種を知る。DNAは短い断片群から順次蛍光検出部を通過するので、蛍光色を計測することで短いDNAから順に末端塩基種を知ることができる。これにより、配列決定を行う。このような蛍光式DNAシーケンサは幅広く普及しており、また、ヒトゲノム解析にも大いに活躍した(非特許文献1)。
一方、2003年に宣言されたようにヒトゲノム配列解析は終了し、配列情報を医療や種々の産業に活用する時代になってきた。このような状況を踏まえ、米国ではヒトゲノム情報を医療分野に活用するには解析コスト及び解析スピードを格段に向上させるためのプロジェクト「1000$ゲノムプロジェクト」を遂行し、新たなDNA解析技術・DNAシーケンサの開発を推進した。この結果、種々原理に基づく高速DNAシーケンサが開発された。これらの多くは微小反応セルを大量に具備した装置を用いて多くのDNA断片を並列して解析するものである。そこで採用された技術の1つに段階的なDNA相補鎖合成を用いるパイロシーケンシングがある。この方法ではターゲットとするDNA鎖にプライマーをハイブリダイズさせ、4種の相補鎖合成核酸基質(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を1種類ずつ順番に反応液中に加えて相補鎖合成反応を行う。相補鎖合成反応が起きるとDNA相補鎖が伸長し、副産物としてピロリン酸(ppi)が生成する。ピロリン酸は共存する酵素の働きでATPに変換され、ルシフェリンとルシフェラーゼの共存下で反応して発光を生じる。この光を検出することで加えた相補鎖合成基質がDNA鎖に取り込まれたことがわかり、相補鎖の配列情報、従ってターゲットとなったDNA鎖の配列情報がわかる(非特許文献2)。
初期のパイロシーケンシングの方法ではDNAをカラムの途中に固定し、相補鎖合成基質を含む溶液を流すことで反応生成物であるピロリン酸をいくつかの反応部を通過させる。この過程でピロリン酸をATPに変換し、ルシフェリンとルシフェラーゼを用いた発光系を用いて発光を得てこれを検出していた(非特許文献3、特許文献1〜3)。
また、Nyrenらは反応に使われなかった相補鎖合成基質をアピラーゼなどの酵素により速やかに分解し、次の反応ステップには影響が無いようにした。これは単純に試薬を反応槽に順次加えるだけでよく、より簡便な方法である。ルシフェリン−ルシフェラーゼ発光系ではATPだけでなく相補鎖合成基質であるdATPも発光基質として作用する。そこで発光基質とならない類似化合物dATPαSを用いている(非特許文献4、特許文献4)。
さらに本発明者等は、ピロリン酸からATPを生成する反応に関連する酵素として従来用いられていたATPスルフリラーゼにかわり、ピルビン酸オルトリン酸ジキナーゼ(PPDK)を用いてピロリン酸とAMPとからATPを生成するプロセスを利用することで背景発光を減らして高感度でDNA配列を調べる方法を開発している(非特許文献5)。また、この方法は多くのDNAサンプルを並列して配列解析するのにも適しており、反応セルを数万から数百万設けて並列して配列解析する試みが報告されている。本発明者等はまた、添加する基質濃度を調整して、鋳型DNAの塩基配列決定を行う方法を報告している(特許文献5)。
一方、最近、バイオセンサーを用いてDNAを検出したり、DNA塩基配列決定する技術が報告されている。用いるのはイオンを検知するISFETと呼ばれるもので、電界効果トランジスタ(FET)のゲート電極上又はその近傍にDNAプローブを固定し、ターゲットDNAをハイブリダイズさせた時の電極の電位変化を検出したり、DNA相補鎖合成の結果生成するピロリン酸から生じるH+をpHセンサーを用いて検出したりしている。バイオセンサーの置かれた環境で電極電位は表面の状況で変化するが、バイオ関連溶液のように多量の塩が含まれているときにはゲート電極が感じる電位の変化は電極近傍(デバイ長)に限られる。それより遠くなると、電解質が電界を遮蔽するので電位変化は観測できない。このためにDNAハイブリダイゼーションやそれからの相補鎖合成による信号検出には限界がある。一方、ピロリン酸から生じるH+の観測はpHセンサーを用いて検出することができるので新たなDNAシーケンシング方法として注目されている。パイロシーケンシング又はpHセンサーを用いる方法はピロリン酸を光に換えたり、あるいはH+に換えて検出する方法である。
ピロリン酸は生物学的にも重要な物質であり、発光を用いて検出したり(特許文献6)、白濁を目途に検出したり、ピルビン酸リン酸ジキナーゼとピルビン酸デヒドロゲナーゼの2つの酵素反応を組み合わせることにより、ピロリン酸を特異的に検出・定量する簡便且つ高感度な方法(特許文献7)などが報告されている。しかし、これらはいずれもピロリン酸を直接検出するものではなく、検出プロセスが複雑である。
従来のピロリン酸検出法としては、パイロシーケンス法等において利用されている方法が一般的である。即ち、DNAポリメラーゼのDNA合成反応などに伴って生じるピロリン酸をATPスルフリラーゼの働きにより一旦ATPに変換し、その後ルシフェラーゼがATPを使って発光する現象を利用し、その発光強度を計測することにより、間接的にピロリン酸の放出を定量的に計測する方法である。この方法では、3種の酵素を同じ反応槽に混在させるため各酵素の平衡定数に見合った各基質濃度の範囲内でのみ定量性が担保されている。すなわち、初期のピロリン酸放出量に応じた各酵素濃度が適切に調整されている必要があり、従ってピロリン酸検出可能な濃度の範囲が限定的である。
一方、ピロリン酸を含むリン酸イオン又は陰イオンが、ボロン酸基を有する化合物と反応することから、該ボロン酸基を有する化合物を蛍光標識して被検物と反応させ、生じる蛍光に基づいてピロリン酸などのリン酸イオン又は陰イオンを検出・測定する方法が報告されている(特許文献8及び9)。
米国特許4863849号 米国特許4971903号 米国特許6258568号 米国特許6210891号(日本国特許3510272号) 特開2007-68450号公報 特開2006-187251号公報 特開2010-200656号公報 特開2009-186350号公報 特開2001-133407号公報
現代化学, 2004年7月号, vol.400, p.66-69, 2004年 Electrophoresis, vol.22, p.3497-3504, 2001年 Anal Biochem vol.174, p.423-436, 1988年 Anal Biochem vol.242, p.84-89, 1996年 Anal Chem vol.78, p.4482-4489, 2006年
パイロシーケンス法などで用いられているピロリン酸検出法においては、3種の酵素を混在させて反応させるため過程が複雑になり、各酵素反応段階の平衡を勘案すると最終的な計測値である発光量と初期のピロリン酸放出量との関係が線形ではなくなるという課題があった。また、同ピロリン酸検出法では発光量を測定し、電気信号に変換しているため、検出結果は反応セルの形状や溶液量等に大きく影響を受けてしまう。
上述のように、従来は複数の酵素反応を中継し間接的にDNA配列情報を得る方法や、繰り返し計測には適切ではない方法しか報告されていなかった。そのため、酵素反応、とりわけDNAポリメラーゼやDNAリガーゼにより放出されるピロリン酸を直接定量することにより、簡便かつ直接的に塩基配列決定を行うための実用的な方法が望まれていた。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ボロン酸基を含む化合物を導電性支持体に固定化し、その導電性支持体上でピロリン酸を生じる化学反応を行った場合、ピロリン酸の存在によって導電性支持体に有意な電気的変化が生じることを見出した。また、ボロン酸基を含む化合物を固定化した導電性支持体を用いてピロリン酸を検出することにより、DNAの配列決定、DNA又はRNAの検出、一塩基多型の検出などを簡便かつ効率的に達成することができるという知見を得た。本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、具体的には以下を包含する。
[1]ボロン酸基を含む化合物が固定化された導電性支持体を準備する工程、
被検物を上記導電性支持体上のボロン酸基と接触させる工程、
上記導電性支持体の電気的変化を測定する工程、及び
上記電気的変化に基づいてピロリン酸を検出する工程
を含む、ピロリン酸を電気的に検出する方法。
[2]前記ボロン酸基を含む化合物が、フェニルボロン酸誘導体、メチルボロン酸誘導体、及びプロペニルボロン酸誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]に記載の方法。
[3]前記ボロン酸基を含む化合物がボロン酸基を含む水溶性ポリマー分子である、[1]又は[2]に記載の方法。
[3-2]前記水溶性ポリマー分子がポリ ((2-メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン)-co-(n-ブチルメタクリル酸)-co-(p-ビニルフェニルボロン酸))である、[3]に記載の方法。
[3-3]前記水溶性ポリマー分子がポリ ((2-メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン)-co-(ジメチルアミノエチルメタクリル酸)-co-(p-ビニルフェニルボロン酸))である、[3]に記載の方法。
[4]前記ボロン酸基を含む化合物がフェニルボロン酸基及びチオール基を含む分子である、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[4-2]前記分子が4-メルカプトフェニルボロン酸である、[4]に記載の方法。
[5]前記導電性支持体が貴金属を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[5-2]前記貴金属が、銀、金、白金及びパラジウムからなる群より選択される少なくとも1種である、[5]に記載の方法。
[5-3]前記ボロン酸基を含む化合物がフェニルボロン酸基及び頭部基を含む分子であり、該頭部基が銀、金、白金及びパラジウムからなる群より選択される少なくとも1種と共有結合可能な官能基である、[5-2]に記載の方法。
[5-4]前記導電性支持体が電極を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[5-5]前記導電性支持体が溶液中に配置されている、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記電気的変化を、前記導電性支持体に導電体を介して接続した電圧変化測定器によって測定する、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[6-2]前記測定器が微小な電圧変化を測定することが可能な測定器である、[6]に記載の方法。
[6-3]前記測定器が、微小な電圧変化を測定するためにトランジスタを回路内に有する測定器である、[6]に記載の方法。
[7]前記測定器が、微小な電圧変化を測定するために電界効果トランジスタ(FET)を回路内に有する測定器である、[6]に記載の方法。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載の方法に従って、ターゲットDNAを鋳型としたDNAポリメラーゼによるDNA相補鎖合成により生じるピロリン酸を検出する工程、及び
ピロリン酸の検出結果に基づいてDNA相補鎖合成に取り込まれた塩基の種類を決定する工程
を含む、ターゲットDNAの塩基配列を決定する方法。
[8-2][1]〜[7]のいずれかに記載の方法に従って、ターゲットDNA又はRNAを鋳型としたDNAポリメラーゼによるDNA相補鎖合成により生じるピロリン酸を検出する工程、
ピロリン酸の検出結果に基づいてDNA相補鎖合成に取り込まれた塩基の種類を決定する工程、及び
ターゲットDNA又はRNAの全体又は一部の塩基配列を決定する工程
を含む、ターゲットDNA又はRNAを検出又は定量する方法。
[9]DNAポリメラーゼ及び/又はターゲットDNAが、前記導電性支持体表面に固定されている、[8]に記載の方法。
[9-2]DNAポリメラーゼ及び/又はターゲットDNAが、ボロン酸基を含む化合物が固定化された電極表面に固定されている、[8]に記載の方法。
[9-3]前記導電性支持体へ固定されるDNAポリメラーゼが、ボロン酸基に対する結合能を有するDNAポリメラーゼである、[9]に記載の方法。
[10]前記導電性支持体へ固定されるDNAポリメラーゼが、ボロン酸基に対する結合能を有するペプチドタグを分子内に含むDNAポリメラーゼである、[9]に記載の方法。
[11]ターゲットDNA又はRNAが、前記導電性支持体とは異なる固体支持体表面に固定されている、[8]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[11-2]複数の反応セルにそれぞれターゲットDNA又はRNAが固定された固体支持体を入れ、それぞれの反応セルに対応した電気的変化測定を行い、それぞれの反応セルにおいてDNA相補鎖合成により生成されたピロリン酸を検出する、[11]に記載の方法。
[11-3]ターゲットDNA又はRNAが固定された固体支持体が金属製ビーズである、[11]又は[11-2]に記載の方法。
[11-4]ターゲットDNA又はRNAが固定された固体支持体が磁性ビーズである、[11]又は[11-2]に記載の方法。
[11-5]前記導電性支持体が、DNAポリメラーゼが固定された電極が配置された第1の領域と、第1の領域に隣接し、かつボロン酸基を含む化合物が固定化された参照電極が配置された第2の領域とからなる、[8]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[11-6]第2の領域を含む空間にはアピラーゼなどの核酸合成基質を分解する酵素が保持されている、[11-5]に記載の方法。
[11-7]DNAの段階的な相補鎖合成をモニターすることにより、ターゲットDNAの塩基配列を決定する、[8]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[12][1]〜[7]のいずれかに記載の方法に従って、ターゲットDNA又はRNAにハイブリダイズしたプローブからのDNAポリメラーゼによるDNA相補鎖合成により生じるピロリン酸を検出する工程、及び
ピロリン酸の検出結果に基づいて、ターゲットDNA又はRNAへのハイブリダイゼーションを検出する工程
を含む、ターゲットDNA又はRNAを検出する方法。
[12-2]複数の反応セル内に保持された各プローブを用いたDNA相補鎖合成を行い、生じるピロリン酸を検出することにより、遺伝子発現プロフィール分析を行う、[12]に記載の方法。
[13][1]〜[7]のいずれかに記載の方法に従って、ターゲットDNAにハイブリダイズした2つのプローブ間のニックがDNAリガーゼ反応により連結されることにより生じるピロリン酸を検出する工程、及び
ピロリン酸の検出結果に基づいて、ターゲットDNAへの2つのプローブのハイブリダイゼーションを検出する工程
を含む、ターゲットDNAを検出する又はターゲットDNA上の一塩基多型を検出する方法。
[14]ボロン酸基を含む化合物が固定化された導電性支持体を備えることを特徴とするピロリン酸を電気的に検出するためのデバイス。
[15]前記導電性支持体にさらにDNAポリメラーゼが固定化されている、[14]に記載のデバイス。
[15-2]DNAの塩基配列決定、ターゲットDNA若しくはRNAの検出、又は一塩基多型の検出に使用するための、[14]又は[15]に記載のデバイス。
[16]ボロン酸基を含む化合物が固定化された導電性支持体、及び
導電性支持体における電気的変化を測定する手段
を備えることを特徴とするピロリン酸検出用センサ。
本発明により、ピロリン酸を簡便かつ効率的に検出するための方法及びデバイスが提供される。本発明に係る方法及びデバイスは、ピロリン酸を直接的に検出するため、検出を高感度かつ高S/Nで行うことができる。また本発明に係る方法及びデバイスは、様々な生化学過程の結果ピロリン酸を反応生成物として生じる全ての系に応用可能であり、これらの生化学過程の進行を通時的に観測する技術を提供するものである。
さらに本発明を利用して、DNAポリメラーゼやDNAリガーゼなどの酵素反応により生じるピロリン酸を検出することにより、DNAの塩基配列決定、ターゲットDNA若しくはRNAの検出、又は一塩基多型の検出を簡便かつ効率的に行うことが可能である。
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
(A)フェニルボロン酸修飾金基板上にピロリン酸を100pmol添加(1)、その後200pmol添加(2)したときの電位変化をFETによって計測したグラフである。(B)無修飾金基板上にピロリン酸を100pmol添加(1)、その後200pmol添加(2)したときの電位変化をFETによって計測したグラフである。 フェニルボロン酸を特異的に認識するペプチドタグを組込んだDNAポリメラーゼにDNAテンプレートを結合させ、基質又は基質でないデオキシリボ核酸(塩基)を添加したときの電位変化をFETにより即時計測したグラフである。始めに基質でないdATPを添加(a)したとき電位変化は起こらず、次に基質となるdCTPを添加すると(b)電位変化が観察された。更に基質となるdGTP(c)、dTTP(d)を順に添加するとやはり電位変化が観察された。この時点で反応は終息するため、最後にdNTPを添加(e)しても電位変化は見られなかった。 DNAポリメラーゼによる相補鎖合成実験を行った結果を示す図である。2種類のテンプレートDNAを用いて、反応が起こり得る基質であるdCTPを終濃度0.05mMとなるように加えた結果をセンサーグラムとして示す。センサーグラムにおける各々の電圧変化量は、用いたテンプレートDNA中のプライマー直後のグアニル塩基(G)の連続数によって異なった。Gの連続数が多い程、dCTPの取り込みが多くなり、それに応じて放出ピロリン酸量も増加するはずであるが、図においても同じ塩基が連続して10ずつ並ぶテンプレート(a)の場合、変化量は約20mAであるのに対し、同じ塩基が連続して3ずつ並ぶテンプレート(b)の場合、変化量は約6mAであった。 本発明のデバイス構成の一例(A)、及び本発明のデバイス構成の一例とピロリン酸の反応(B)を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、導電性支持体に固定化したポリマー中のボロン酸基(例えばフェニルボロン酸)、又は単独で導電性支持体に固定化したボロン酸基と、ピロリン酸が接触したときに誘起される電気的変化を検出することにより、ピロリン酸の存在又はその量を検出する方法を提供する。正確な反応機構はわかっていないが、ボロン酸基に存在する水酸基とピロリン酸に存在する水酸基とがおそらく結合することに基づいて、導電性支持体上の電気的変化が生じる。なお、予想外にも、DNAポリメラーゼの基質となるデオキシリボ核酸(dCTP、dATP、dTTP及びdGTP)にも水酸基が存在するが、デオキシリボ核酸の存在下においては有意な電気的変化は観察されない。そのため、本発明は、ボロン酸基を含む化合物を固定化した導電性支持体を用いることにより、ピロリン酸を特異的に検出できるという知見に基づいている。
本発明では、ボロン酸基を含む化合物が固定化された導電性支持体を使用する。ボロン酸基を含む化合物は、ボロン酸基(ホウ酸の水酸基の1つが置換されたもの)を有する化合物であれば任意の化合物を用いることができる。例えば、1若しくは複数のボロン酸基を有する有機化合物であってもよいし、又はボロン酸基を有するモノマーが重合したポリマー化合物であってもよい。好適には、2以上のボロン酸基を有するポリマーを用いる。例えば、ボロン酸基を化学基の1つとして有するポリマーを用いる場合には、ポリマーの全体的な構造は、導電性支持体の性質、ボロン酸基を含むポリマーの固定化方法、他に固定するタンパク質(酵素など)の性質、それらを用いて支持体上で行う化学反応又は酵素反応の性質などにより様々なものを取捨選択することが可能である。
ボロン酸基を含む化合物の具体例として、例えば、下記式(I)に示される構造を有するフェニルボロン酸の誘導体、式(II)に示される構造を有するメチルボロン酸の誘導体、及び式(III)に示される構造を有するプロペニルボロン酸の誘導体が挙げられる。
Figure 0005759351
ボロン酸基を含む化合物は、ポリマー分子、特に水溶性ポリマー分子であることが好ましい。ボロン酸基を含むポリマー分子の具体例として、例えばポリ ((2-メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン)-co-(n-ブチルメタクリル酸)-co-(p-ビニルフェニルボロン酸))(以下、PMBVと略す)が挙げられる。また別の具体例として、例えばフェニルボロン酸基を有するポリマー分子であるポリ ((2-メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン)-co-(ジメチルアミノエチルメタクリル酸)-co-(p-ビニルフェニルボロン酸))(以下、PMDVと略す)がある。
ボロン酸基を含む化合物は、ボロン酸基と、導電性支持体と反応性の頭部基とを含む分子であることが好ましい。それにより、ボロン酸基を含む化合物を簡便かつ効率的に導電性支持体に固定することが可能となる。導電性支持体と反応性の頭部基は、好ましくは導電性支持体と又は導電性支持体に導入された官能基と共有結合可能な頭部基であり、具体的には、チオール基、アミノ基、スクシンイミド基などが挙げられる。
好ましい実施形態において、ボロン酸基を含む化合物は、フェニルボロン酸基及びチオール基を含む分子、例えば4-メルカプトフェニルボロン酸である。
ボロン酸基を有する化合物は、ボロン酸基及び頭部基に加えて、他のタンパク質との結合に有用なペプチドタグとの結合反応、他の化合物又は分子の反応などに好適な1以上の官能基を含むものであってもよい。例えば、ボロン酸基とペプチドタグとの結合反応が生じる部位の局所pHが塩基性となるような基(ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基など)、化合物又は分子の流動性を高め、それにより化合物又は分子の反応効率を高める官能基(2-メタクリロイロキシエチルホスホリルコリンなど)が挙げられる。
ボロン酸基を含む化合物を固定化する導電性支持体は、当技術分野で一般的に使用される導電性支持体であれば特に限定されるものではない。具体的には、貴金属(金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム等)、銅、アルミニウム、タングステン、モリブデン、クロム、チタン、ニッケル等の金属;ステンレス、ハステロイ、インコネル、モネル、ジュラルミン等の合金;半導体素子等の電極(トランジスタ、FETなど);シリコン;導電性ガラス材料;導電性プラスチック挙げられる。また、非導電性支持体を導電性材料で被覆したものも導電性支持体として用いることができる。導電性支持体の形状も、特に限定はなく、平面により形成されるもの(例えばタイタープレート、多孔質若しくは細孔アレー、マイクロ流路など)、平板、フィルム、チューブ及び粒子(磁性粒子等)が挙げられる。導電性支持体は、後述する電気的変化の測定を簡便かつ効率的に行うための電極であってもよい。
ボロン酸基を含む化合物を導電性支持体に固定する方法は、特に限定されるものではない。例えば、共有結合、イオン結合、物理吸着によってボロン酸基を含む化合物を導電性支持体に固定することができる。具体的には、例えばボロン酸基を含む化合物を混和させた溶液(例えばエタノールなどの有機溶媒中)を導電性支持体上に塗布し、乾燥させることにより導電性支持体の表面にボロン酸を含む化合物を固定することができる。また、ボロン酸基を含む化合物が他の官能基を有する場合には、導電性支持体の性質や他に固定させる分子の性質、それらを用いて導電性支持体上で行う化学反応又は酵素反応の性質、などにより様々なものを取捨選択することが可能である。ボロン酸基を含む化合物は、スペーサー配列、例えば1〜10個の炭素原子を含む炭化水素基を介して、導電性支持体に結合させてもよい。
共有結合を介したボロン酸基を含む化合物の導電性支持体への固定は、例えば、ボロン酸基を含む化合物に含まれる頭部基と反応性の官能基を導電性支持体に導入して両者を反応させることにより実施できる。ボロン酸基を含む化合物が導電性支持体(例えば貴金属)と共有結合可能な頭部基を有する場合には、その頭部基を利用して、ボロン酸基を含む化合物を金や白金等の貴金属導電性支持体に共有結合を介して固定することができる。金や白金等は原子レベルで配列制御ができる。すなわち金属結晶として成長させた格子面は1原子レベルの凹凸も無い平板状加工が可能である。ここにボロン酸基を含む化合物の単分子層を構築することにより、ピロリン酸を検出するための平板状導電性支持体を得ることができる。すなわち、このボロン酸基を含む化合物の単分子層を持つ金属材でできた導電性支持体上に分子の配向が制御された上で、高さが制御されたデバイスを提供することができる。また、このボロン酸基を含む化合物の単分子層を持つ金属材でできた導電性支持体上に、ボロン酸基と結合可能なペプチドタグを介して任意のタンパク質分子を結合させることで、金属平面上にその分子の配向が制御された上で、かつ数オングストロームの誤差で固定された分子の高さが制御されたデバイスを提供することができる。例えば、導電性支持体の表面上に分子を同一配向で保持されている単分子膜として固定化することができる。
また例えば、ボロン酸基を含む化合物の頭部基としてアミノ基を使用し、導電性支持体に活性エステル基、エポキシ基、アルデヒド基、カルボジイミド基、イソチオシアネート基又はイソシアネート基を導入することにより共有結合を形成できる。また、頭部基としてチオール基を使用し、導電性支持体に活性エステル基、マレイミド基又はジスルフィド基を導入してもよい。活性エステル基としては、例えば、p-ニトロフェニル基、N-ヒドロキシスクシンイミド基、コハク酸イミド基、フタル酸イミド基、5-ノルボルネン-2、3-ジカルボキシイミド基等が挙げられる。官能基を導電性支持体に導入する方法の一つとしては、所望の官能基を有するシランカップリング剤(γ-アミノプロピルトリエトキシシランなど)によって支持体表面を処理する方法が挙げられる。別の方法としては、プラズマ処理が挙げられる。
上述のようにして、ボロン酸基を含む化合物を導電性支持体に固定することができる。本発明は、予めボロン酸基を含む化合物を導電性固体支持体の表面に結合させた導電性支持体も提供する。この導電性支持体は、後述するようにピロリン酸を電気的に検出するためのデバイスとして使用することができる。
本発明の望ましい一実施形態においては、導電性支持体として金電極を用い、これに4-メルカプトフェニルボロン酸を作用させてチオール基と金の共有結合を形成させることで、金電極上にフェニルボロン酸の自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer; SAM)を生成し、ピロリン酸検出用電極とする。
また、ボロン酸基を含む化合物の固定化は、固体支持体への固定化に限定されるものではない。本発明では別の方法として、ボロン酸基を含む化合物におけるピロリン酸検出に必要と考えられる水酸基以外の官能基(例えば水酸基)を架橋分子を用いて架橋することにより、導電性支持体(固定化基材)を形成することができる。その結果、架橋形成された導電性支持体にボロン酸基を含む化合物が固定化されることになる。使用する架橋分子としては、多価アルコール、例えばポリビニルアルコールや、多糖類、例えばデキストランなどが挙げられる。
形成することができる導電性支持体(固定化基材)としては、固体、高分子膜、高分子半透膜、フィルム、固相ゲル及び液相ゲルなどが挙げられる。したがって、本発明は、ボロン酸基を含む化合物を、半透膜などのフィルム状物質や、様々な含水率を有するゲル状物質中に安定的に共有結合により固定化したデバイスをも提供する。また、これらの導電性支持体は、微小な、例えばマイクロメーター又はナノメーターのサイズとすることが可能である。
さらに、このように固定されたボロン酸基を利用して、他にも様々な分子(タンパク質など)を導電性支持体に固定することが可能である。
このようにボロン酸基を含む化合物や他のタンパク質分子を電極等の貴金属支持体上に配向制御した状態で結合させることができるため、固定化した化合物又は分子(例えばタンパク質、とりわけ酵素)の活性部位を貴金属支持体表面から約100オングストローム以内におさめて固定することも可能となる。これによって、数十から百数十オングストロームと推定されている電界効果トランジスタ(FET)のデバイ長内に化学反応又は酵素反応(種々の電荷移動反応を含むことが多い)を惹起させることが可能となるため、ピロリン酸の検出反応又は任意の酵素反応をFETを用いて検出する系の構築が可能となる。例えば、単金属結晶からなる完全に平板な支持体上に配向及び高さを揃えてボロン酸基を含む化合物を固定したデバイスは、FETなどのセンサーチップに好適である。
FETはセンサーチップ上に電荷移動が生じる反応が起こった場合、高感度な検出ができるが、検出できる距離が支持体表面から数ナノメートルとされている。そのため、上述のように配向が制御され、かつ高さが高精度で揃えられたボロン酸基を含む化合物を固定した導電性支持体(例えば金属結晶基盤)の場合、検出限界内で有効に電荷移動反応を検出することが可能である。
ピロリン酸の検出の際、ボロン酸基を含む化合物が固定された導電性支持体を溶液中に配置してもよい。使用する溶液は、特に限定されるものではなく、被検物(ピロリン酸を生じる反応)の種類、導電性支持体の種類などに応じて適宜選択することができる。例えば、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Trisバッファーなどが挙げられる。
次いで、被検物を導電性支持体上のボロン酸基と接触させる。本発明において「被検物」とは、ピロリン酸について検出しようとする対象であり、例えばピロリン酸を生じる反応物、化学反応又は酵素反応の反応液などが含まれる。また「接触」は、被検物が導電性支持体と近接するような操作を意味し、例えば被検物(液体)を導電性支持体上に添加すること、被検物(液体)を導電性支持体が配置された溶液中に添加し混和すること、導電性支持体上で化学反応又は酵素反応を行うこと、などにより行うことができる。被検物とボロン酸基との接触は、適当な温度(例えば5〜100℃)で、適当なpH条件(例えばpH3〜12)で行うことが可能である。
その後、導電性支持体の電気的変化を測定する。本発明において「電気的変化」とは、当技術分野で公知であり、導電性支持体における電位の変化を指し、電圧・電流の変化として測定することができる。電気的変化は、導電性支持体に導電体を介して接続した電圧変化測定器によって測定することができる。電圧変化測定器は、微小な電圧変化を測定可能な測定器、又は微小な電圧変化に惹起される電極内電子移動(微小電流)を検知可能な測定器であればいかなる回路構成を有する測定器でもよい。例えば、微小な電圧変化を測定するためにトランジスタ、好ましくは電界効果トランジスタ(FET)、又は同等の微小電流測定系を回路内に有する測定器を用いることができる。好ましい実施形態においては、導電性支持体として電極を採用し、ボロン酸基を固定した電極をFETのゲート電極とし、その電気的変化を経時的に観察できる装置構成を用いる。変化を測定するため、被検物との接触前の電圧又は微小電流や、被検物を接触させない対照の電圧又は微小電流を測定して、接触後の電圧又は微小電流と比較することにより電気的変化を測定してもよい。
電気的変化が測定された場合には、被検物にピロリン酸が含まれる、すなわちピロリン酸の存在が検出される。電気的変化は、ピロリン酸の存在量に応じてその変化の程度も変わるため、電気的変化の程度を測定することにより、ピロリン酸を定量することも可能である。
本発明の一態様においては、被検物としてDNAポリメラーゼの反応物を用いる。すなわち、検出対象となるピロリン酸は、ターゲットDNA又はRNAを鋳型としたDNAポリメラーゼによるDNA相補鎖合成により放出されるピロリン酸である。DNAポリメラーゼは、ターゲットDNA又はRNAに適合するデオキシリボ核酸(ヌクレオチド三リン酸:dATP、dCTP、dGTP又はdTTP)が基質として取り込まれた際にピロリン酸を放出する。そのため、未知配列のターゲットDNAを鋳型として用いて、4種のデオキシリボ核酸(基質)を順次添加し、ピロリン酸を検出することにより、配列に適合した基質の取り込みの有無を判定し、最終的にはターゲットDNAの塩基配列を決定することが可能となる。またDNAの段階的な相補鎖合成をモニターすることにより、ターゲットDNAの塩基配列の全体又は一部を決定することができる。さらに、ターゲットDNA又はRNAを鋳型としたDNAポリメラーゼによるDNA相補鎖合成により放出されるピロリン酸を検出することにより、配列に適合した基質の取り込みの有無を判定し、ターゲットDNA又はRNAの塩基配列の全体又は一部を決定することにより、最終的にはターゲットDNA又はRNAを検出又は定量することができる。
従って、本発明は、ターゲットDNAの塩基配列を決定する方法、及びターゲットDNA又はRNAを検出又は定量する方法にも関する。
また本発明の別の態様においては、被検物としてDNAポリメラーゼの反応物を用い、検出対象となるピロリン酸は、ターゲットDNA又はRNAにハイブリダイズしたプローブからのDNAポリメラーゼによるDNA相補鎖合成により生じるピロリン酸である。DNAポリメラーゼは、ターゲットDNA又はRNAにプローブがハイブリダイズした場合にのみ、ターゲットDNA又はRNAを鋳型としてDNA相補鎖合成を行い、プローブを伸長させる。その際に放出されるピロリン酸を検出することにより、ターゲットDNA又はRNAを検出することが可能である。また、放出されるピロリン酸を定量的に検出することにより、ターゲットDNA又はRNAの存在だけではなく、ターゲットDNA又はRNAの量を測定することが可能である。
一実施形態においては、複数の反応セル内に保持された各プローブを用いたDNA相補鎖合成反応を行い、それぞれの反応セルに対応したピロリン酸を検出することによって、プローブと結合したターゲットDNA又はRNAを網羅的に検出して、遺伝子発現プロフィールを分析することが可能である。
従って、本発明は、ターゲットDNA又はRNAを検出する方法、及び遺伝子発現プロフィールの分析方法にも関する。
DNAポリメラーゼは、DNA又はRNAを鋳型としてDNA相補鎖合成を行う酵素であり、当技術分野において十分に理解されている。本発明においては、任意のDNAポリメラーゼを使用することができ、当業者であれば遺伝子組換え技術を利用して又は市販品として適当なDNAポリメラーゼを入手することができる。ターゲットDNA又はRNAも限定されるものではなく、生体などの天然由来のものであってもよいし、ライブラリなどの合成されたものであってもよい。使用するプローブは、目的に応じて異なるが、当業者であれば適宜設計することができる。
DNAポリメラーゼの反応により生じるピロリン酸を検出する場合、DNAポリメラーゼ及び/又はターゲットDNA若しくはRNAは導電性支持体に固定されていてもよい。例えば、DNAポリメラーゼ及び/又はターゲットDNA若しくはRNAは、ボロン酸基を含む化合物が固定化された電極表面に固定されていてもよい。好ましくは、DNAポリメラーゼは導電性支持体又は電極に固定されている。
一実施形態において、使用する導電性支持体には、DNAポリメラーゼがボロン酸基を含む化合物に固定され、ボロン酸基を含む化合物は参照電極に固定化されている(第1領域)。この電極周囲(第2領域)には核酸合成基質を分解する酵素(アピラーゼなど)が保持されていることが好ましい。
本発明のまた別の態様では、被検物としてDNAリガーゼの反応物を用いる。すなわち、検出対象となるピロリン酸は、ターゲットDNAにハイブリダイズした2つのプローブ間のニックがDNAリガーゼ反応により連結されることにより生じるピロリン酸である。DNAリガーゼは、ターゲットDNAに対してニックを挟んで2つのプローブがハイブリダイズした場合、そのニックを連結することができ、その際にピロリン酸を放出する。一方、ニックではなく1又は数個の塩基を挟んで2つのプローブがハイブリダイズした場合やプローブがハイブリダイズしなかった場合にはDNAリガーゼ反応は生じない。従って、ピロリン酸を検出することにより、ターゲットDNAを検出したり、ターゲットDNA上の一塩基多型を検出することが可能である。
このように、本発明は、ターゲットDNAを検出する方法、及びターゲットDNA上の一塩基多型を検出する方法に関する。このようなターゲットDNA又は一塩基多型の検出は、遺伝子診断に有用である。
DNAリガーゼは、2本のDNA鎖を連結する酵素であり、当技術分野において十分に理解されている。本発明においては、任意のDNAリガーゼを使用することができ、当業者であれば遺伝子組換え技術を利用して又は市販品として適当なDNAリガーゼを入手することができる。ターゲットDNAも限定されるものではなく、生体などの天然由来のものであってもよいし、ライブラリなどの合成されたものであってもよい。プローブは、検出対象のターゲットDNA又は検出対象の一塩基多型を含むターゲットDNAの配列に基づいて、当業者であれば適宜設計することができる。
DNAリガーゼ反応により生じるピロリン酸を検出する場合、DNAリガーゼ及び/又はターゲットDNAは導電性支持体に固定されていてもよい。例えば、DNAリガーゼ及び/又はターゲットDNAは、ボロン酸基を含む化合物が固定化された電極表面に固定されていてもよい。好ましくは、DNAリガーゼは導電性支持体又は電極に固定されている。
DNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼを導電性支持体又は電極に固定する方法として、ボロン酸基と特異的に結合するペプチドタグを利用することができる。本発明者は、ボロン酸基と、側鎖に水酸基を含有するアミノ酸(水酸基含有アミノ酸)とが結合可能であるという知見を得ている(参考例1を参照)。そのため、水酸基含有アミノ酸を含むペプチドタグをDNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼに融合させることにより、そのペプチドタグとボロン酸基との結合を介して、DNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼを導電性支持体又は電極に固定することができる。あるいは、DNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼの種類によっては、水酸基含有アミノ酸を多く含む分子も存在する。そのようなDNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼは、本来ボロン酸基に対する結合能を有するものであり、その能力を利用して導電性支持体に固定することが可能である。
ペプチドタグは、その側鎖に水酸基を含有するアミノ酸、すなわち水酸基含有アミノ酸を含むものであれば、その長さ及び組成(配列)は特に限定されるものではない。水酸基含有アミノ酸としては、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)及びチロシン(Tyr、Y)が好適であり、ペプチドタグは、これらのうち1種又は複数種を含むことができる。ペプチドタグは、水酸基含有アミノ酸としてチロシンを含むことが好ましい。ペプチドタグが効率的なボロン酸基結合能を有するためには、立体的に2つの水酸基が近接して存在してボロン酸基に対して水酸基を供給する必要があるため、ペプチドタグは、2つ以上の水酸基含有アミノ酸を含むものであることが好ましい。また、ボロン酸基に近接させることができる2つの水酸基の組合せの数を増大させるため、連続した4〜6残基の水酸基含有アミノ酸からなるペプチドタグであることが好ましい。あるいは、連続した7残基以上(例えば7〜50残基)の水酸基含有アミノ酸からなるペプチドタグも可能であるが、水酸基含有アミノ酸の連続数が長くなるほど、ペプチドタグと融合させるDNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼの構造形成又は活性に影響を及ぼす可能性があるため、その影響を考慮してペプチドタグを設計することが好ましい。
また、2つ以上の水酸基含有アミノ酸の間に非水酸基含有アミノ酸が含まれてもよいし、又は水酸基含有アミノ酸の末端に非水酸基含有アミノ酸が付加されていてもよい。例えば、2残基以上の任意のアミノ酸を挟んで両端の2残基が水酸基含有アミノ酸残基であるペプチドタグを用いることができる。
さらに、ボロン酸基結合効率を上昇させるため、ボロン酸基とペプチドタグとの結合反応が生じる部位の局所pHが塩基性であることが望ましいことがわかっている。そこでペプチドタグにおいて、1〜4残基(好ましくは1〜3残基)の塩基性アミノ酸が、上述の連続した水酸基含有アミノ酸に隣接するか、又は連続した水酸基含有アミノ酸の配列中に挿入されていることが好適である。ここで、塩基性アミノ酸とは、リジン(Lys、K)、アルギニン(Arg、R)及びトリプトファン(Trp、W)から選択されるアミノ酸を意味し、ペプチドタグはこれらのうち1種又は複数種を含むことができる。例えば、ペプチドタグは、3〜5残基の水酸基含有アミノ酸と1〜3残基の塩基性アミノ酸の合計4〜6残基のアミノ酸からなるペプチドタグ、又は4残基以上の水酸基含有アミノ酸と1〜3残基の塩基性アミノ酸の合計7残基以上のアミノ酸からなるペプチドタグが挙げられる。
具体的なペプチドタグの例を以下に示す:
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr(6Y)(配列番号4)
Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Trp(6SW)(配列番号5)
Ser-Ser-Ser-Ser-Trp(4SW)(配列番号6)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Trp(6YW)(配列番号7)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Trp(4YW)(配列番号8)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Gly-Gly(6Y2G)(配列番号9)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Lys-Lys(6Y2K)(配列番号10)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Gly-Lys(6YGK)(配列番号11)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Trp-Tyr-Tyr(4YW2Y)(配列番号12)
Tyr-Tyr-Tyr-Trp-Tyr-Tyr-Tyr(3YW3Y)(配列番号13)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Trp-Tyr(5YWY)(配列番号14)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Lys-Lys-Trp(6Y2KW)(配列番号15)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Trp-Lys-Lys(6YW2K)(配列番号16)。
本発明では、上述したようなペプチドタグをDNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼに融合させて、融合タンパク質を形成する。さらに、導電性支持体に固定化が望まれる任意の分子(タンパク質、ポリペプチド、ペプチドなど)を、ペプチドタグと融合させることによって、簡便かつ効率的に導電性支持体に固定化することができる。
ペプチドタグは、DNAポリメラーゼ若しくはDNAリガーゼ又は他の分子の任意の部位に融合させることができる。但し、ペプチドタグがそれらの分子の立体構造や活性に影響を及ぼさないように、ペプチドタグは、その活性部位又は認識領域から離れた位置で、DNAポリメラーゼ若しくはDNAリガーゼ又は他の分子に融合していることが好ましい。
またペプチドタグは、当技術分野で公知の方法及び手段により、DNAポリメラーゼ若しくはDNAリガーゼ又は他の分子に融合させることができる。融合タンパク質の調製方法は当技術分野で周知であり、例えば化学合成法及び遺伝子組換え法がある。化学合成法の場合には、公知のペプチド合成手法に従って、例えば市販のペプチド合成機や市販のペプチド合成用キットを用いて、融合タンパク質を調製することができる。遺伝子組換え法では、例えば、DNAポリメラーゼ若しくはDNAリガーゼ又は他の分子をコードするDNAと、ペプチドタグをコードするDNAとを、直接連結して又はリンカー配列を介して連結して、プラスミド等の公知のベクターに挿入し、該ベクターを宿主細胞に導入し、該宿主細胞において融合タンパク質を発現させることができる(例えば参考例2を参照)。ペプチドタグは、好ましくはDNAポリメラーゼ若しくはDNAリガーゼ又は他の分子のカルボキシル末端及び/又はアミノ末端に付加される。タンパク質分子のカルボキシル末端又はアミノ末端は分子の端点として溶媒接触可能領域に突出していることが多いため、ここにペプチドタグを付加することでタンパク質の正しい三次元構造形成への影響を抑制し、かつタンパク質の本来の機能を阻害することも抑制することができる。
さらにペプチドタグをDNAポリメラーゼ若しくはDNAリガーゼ又は他の分子のカルボキシル末端及び/又はアミノ末端に付加する際に、そのDNAポリメラーゼ若しくはDNAリガーゼ又は他の分子の機能阻害の可能性をさらに低減させるため、カルボキシル末端に付加する際はペプチドタグのアミノ末端側に、またアミノ末端に付加する際はペプチドタグのカルボキシル末端側に、数残基程度のリンカー配列を付加することが好ましい。タンパク質分子とペプチドタグとの間に挿入されるリンカー配列は、当技術分野で公知のリンカー配列でよく、例えば1〜20アミノ酸、好ましくは1〜10アミノ酸、より好ましくは2〜6アミノ酸のリンカー配列を用いることができる。具体的なリンカー配列としては、コンフォメーションの自由度の高さの点に利点がある、4〜6残基程度の連続したグリシン残基がある(例えば参考例2を参照)。
融合タンパク質の発現に使用するベクターとしては、プラスミド、ファージミド、ウイルスに基づくベクター(レトロウイルス、アデノウイルス及びワクシニアウイルスなどの動物ウイルスベクター、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクター)、人工染色体などの公知のベクターであれば任意のものを用いることができる。融合タンパク質を発現させるための発現ベクターは、DNAポリメラーゼ若しくはDNAリガーゼ又は他の分子をコードするDNAとペプチドタグをコードするDNAとを、融合タンパク質が発現されるようにベクターに連結することにより得ることができる。なお、発現ベクターには、プロモーター、転写終結シグナル、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカーなどを連結することが好ましい。構築した発現ベクターを、宿主細胞中に導入し、形質転換体を作製する。形質転換に使用する宿主としては、融合タンパク質を発現し、産生できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、細菌(大腸菌等)、酵母、動物細胞、昆虫細胞などが挙げられる。宿主細胞への発現ベクターの導入も、当技術分野で公知の方法、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法などにより行うことができる。融合タンパク質は、形質転換体を培養し、その培養物から単離・精製することにより得ることができる。
以上のようにして、ボロン酸基に対する結合能を有するペプチドタグを分子内に含むDNAポリメラーゼ若しくはDNAリガーゼ又は他の分子を形成することができる。
ボロン酸基に対する結合能を有するDNAポリメラーゼ若しくはDNAリガーゼ、又はボロン酸基に対する結合能を有するペプチドタグを分子内に含むDNAポリメラーゼ若しくはDNAリガーゼは、ボロン酸基との結合を介して、導電性支持体に固定することができる。例えば、かかるDNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼを含む溶液を、導電性支持体が配置された溶液中に添加し、インキュベートすることにより、DNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼを導電性支持体上のボロン酸基に結合させることができる。あるいは、中性pH付近の緩衝液などの水溶液中に混和したDNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼ溶液を、導電性支持体に固定したボロン酸基を含む化合物と接触させ、5〜40℃にて、好ましくは室温にて、数分から数十分放置する。
上述のようにして、ボロン酸基に特異的かつ自発的に結合するペプチドタグを固定対象のDNAポリメラーゼ若しくはDNAリガーゼ又は他の分子と融合させることで、ボロン酸基とペプチドタグとの結合に基づいて、該ボロン酸基を含む化合物をリンカーとして導電性支持体にDNAポリメラーゼ若しくはDNAリガーゼ又は他の分子を任意の配向性で安定的に固定化することができる。
一方、ターゲットDNA又はRNAは、導電性支持体とは異なる固体支持体に固定されていてもよい。使用する固体支持体は、DNA又はRNAの固定に一般的に使用される固体支持体であれば特に限定されるものではない。具体的には、水不溶性で、加熱変性時に溶融しない固体支持体であることが好ましい。その材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、モリブデン、クロム、白金、チタン、ニッケル等の金属;ステンレス、ハステロイ、インコネル、モネル、ジュラルミン等の合金;シリコン;ガラス、石英ガラス、溶融石英、合成石英、アルミナ、サファイア、セラミクス、フォルステライト及び感光性ガラス等のガラス材料;ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene 樹脂)、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂及び塩化ビニル樹脂等のプラスチック;アガロース、デキストラン、セルロース、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、キチン、キトサンが挙げられる。また、固体支持体の形状についても、特に限定はなく、平面により形成されるもの(例えばタイタープレート、多孔質若しくは細孔アレーなど)、平板、フィルム、チューブ及び粒子等が挙げられる。さらに、粒子として、金属製ビーズ、又は磁化された若しくは磁化可能な磁気ビーズを用いることによって、分離処理等について、自動化、効率化又は迅速化することができる。固体支持体として粒子を用いる場合、粒子の径は、通常50μm以下、例えば1.0μm〜3.0μmである。
一実施形態では、複数の反応セルのそれぞれに、上記のように固体支持体に固定されたターゲットDNA又はRNAを入れてDNAポリメラーゼによるDNA相補鎖合成反応を行い、それぞれの反応セルに対応した電気的変化を測定し、生成されたピロリン酸を検出する。ターゲットDNA又はRNAは、同じ種類を複数使用してもよいし、複数種を使用してもよい。
また本発明は、ボロン酸基を含む化合物が固定化された導電性支持体を備えることを特徴とするピロリン酸を電気的に検出するためのデバイスを提供する。本発明のデバイスにおいて、ボロン酸基を含む化合物は、頭部基などの官能基を介して導電性支持体に固定化されていてもよいし、あるいはボロン酸基を含む化合物が架橋分子により架橋されて導電性支持体(固定化基材)を形成することにより固定化されていてもよい。デバイスの形状は、固定化されたボロン酸基を含む化合物を含む限り特に限定されず、導電性固体支持体の形状、例えば基板状(プロテインチップ等)若しくは粒子状(ナノ粒子等)であってもよいし、又は固定化基材の形状、例えば膜状、フィルム状若しくはゲル状であってもよい。
図4に、分子としてさらにDNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼが固定化されている導電性支持体を備えるデバイス及び該デバイスを用いたピロリン酸の検出の一例を示す。導電性支持体401にはボロン酸基を含む化合物402が固定される(図4のA及びB)。DNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼ404は、ペプチドタグ403とボロン酸基を含む化合物402との結合を介して導電性支持体401に固定することが可能である。DNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼ404の反応によりピロリン酸が放出されると(405)、そのピロリン酸は、導電性支持体401のボロン酸基を含む化合物402と接触し(406)、電気的変化が生じることになる。
本発明のデバイスは、ボロン酸基を含む化合物や他の分子を、その配向を制御して、及び/又は単分子層で固定化することができるため、多様な分析に有用である。
また本発明は、ボロン酸基を含む化合物を固定化した導電性支持体と、電気的変化を検出する手段とを備えるピロリン酸検出用センサを提供する。検出手段は、上述したような微小電圧変化を測定可能な測定器、例えばFETのような電気的検出手段とすることができる。
電界効果トランジスタ(Field-Effect Transistor, FET)は、電気的検出を利用したセンサに汎用されている技術である。原理は、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流を、第三の電極であるゲート電極で制御し、そのゲート電極表面で分子間相互作用を起こさせるとゲート電極の電荷が変化するため、電流的応答が変化する。
FETはセンサチップ上に電荷移動が生じる反応が起こった場合、高感度な検出ができるが、その反応ができるだけゲート電極表面に近い場所で起こる必要があり、検出できる距離は数ナノメートルとされている。そのため、本発明のように、配向が制御され、かつ高さが高精度で揃えられた分子を固定したデバイスをゲート電極として使用した場合、数ナノメートルの検出限界内に分子を配列制御することが可能である。そのため、本発明のデバイスは、高感度なFETを利用したセンサに有用である。
本発明のデバイス及びセンサは、上述したように、ピロリン酸の検出に基づいて、DNAの塩基配列決定、ターゲットDNA若しくはRNAの検出、又は一塩基多型の検出に使用することができる。
本発明の利点は、(i)用いる酵素がピロリン酸放出過程を担う1種類の酵素のみで即時計測できること、(ii)放出したピロリン酸を基質として他の酵素反応を経ることなくピロリン酸を直接検出するため、放出ピロリン酸量と検出信号強度が一次線形な関係であること、(iii)電極等に修飾したボロン酸基がピロリン酸を捕捉し、同時に電気信号を発するため、反応セルの形状や溶液量にほとんど影響を受けずにピロリン酸放出量を定量的に測定できること、がある。
また、本発明において使用するボロン酸基は、各種官能基を介して様々な固体支持体に導入することができるため、検出又は計測に用いることができる器具は多岐にわたる。ボロン酸基を含む化合物の1種であるフェニルボロン酸は、フィルムやゲルを自発的に生成することが可能なポリマー中に組込まれている分子が既に利用されており、そのような分子を利用することにより、新規の化学結合を導入することが難しく極めて安定な素材であるセラミックやガラス等の基板上にも、フェニルボロン酸を含むポリマーからなるフィルム(すなわちピロリン酸応答性フィルム)を被覆させることによって電圧変化計測系を構築することが可能である。
本発明は、様々な化学過程の結果ピロリン酸を反応生成物として生じる全ての系に応用可能である。多くの生化学過程は酵素がヌクレオチド三リン酸に作用して、ヌクレオチド一リン酸とピロリン酸に分解し、この過程で大きなエネルギーを得るが、これに伴って様々な生合成反応を共役させていることが多い。すなわち、同一の酵素の他の反応と共役している、又は他の酵素の反応と共役している場合がある。このため、酵素系を適宜選択して、必要に応じて複数の酵素を共存させた上で、ピロリン酸の放出を測定することにより、間接的に他の反応の生起を検出することも可能である。本発明はこれらの生化学過程の進行を通時的に観測する技術を提供する。
以下、図面を参照して本発明の実施形態の具体例について説明する。ただし、これらの実施例は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではないことに注意すべきである。
<実施例1>フェニルボロン酸基が結合した固体支持体の作製
金基板(10×10mm、厚さ100mm、シリコンナイトライド上に金スパッタリング)を濃硫酸と過酸化水素水を3:1で混合した洗浄液(Piranha solution)中に浸漬し、時おり溶液を撹拌しながら1時間洗浄した。
4-メルカプトフェニルボロン酸を10mMとなるようエタノールに溶解し、上記金薄板を浸漬し、12時間静置した。これにより4-メルカプトフェニルボロン酸が固定化された金基板を得た。
<実施例2>フェニルボロン酸処理した金基板と未処理の金基板におけるピロリン酸を添加したときの微小電圧変化の測定
実施例1に示した方法で金基板を作製し洗浄後、4-メルカプトフェニルボロン酸処理したものと、処理していないものを各々リン酸緩衝生理食塩水(10mM NaH2PO4/Na2HPO4、150mM NaCl pH7.4)に浸漬して1時間平衡化を行った。
各々の金基板を電界効果トランジスタ(FET)のゲート電極に接続し、各々の金基板を別々に100μlのリン酸緩衝生理食塩水に浸漬し、更に30分間平衡化を行った。その溶液からゲルを充填したブリッジを介してアース接続し、微小電圧変化の測定を開始した。
電圧変化曲線は、4-メルカプトフェニルボロン酸処理及び未処理の金基板を用いた場合のいずれでも、当初わずかに下降を続けた。その後800〜1000秒間隔で3回、それぞれ(1) 100pmolのピロリン酸、又は(2) 200pmolのピロリン酸を添加した(図1)。
4-メルカプトフェニルボロン酸修飾金基板を用いた場合には(図1のA)、ピロリン酸添加ごとに数十mVの電圧変化が観測され、その変化幅は添加ピロリン酸量に応じて変化した。他方、未修飾金基板を用いた場合には(図1のB)、ピロリン酸添加に対する有意な応答はみられなかった。
<実施例3>フェニルボロン酸処理した金基板を用いてDNAポリメラーゼ/基質DNA複合体にデオキシヌクレオチド三リン酸を添加して反応させたときに生じるピロリン酸の計測
実施例2の4-メルカプトフェニルボロン酸処理した金基板と同じ手順で、金基板の前処理を行った。
各々の金基板を電界効果トランジスタ(FET)のゲート電極に接続し、各々の金基板を別々に90μlのリン酸緩衝生理食塩水に浸漬し、更に30分間平衡化を行った。
使用するDNAポリメラーゼには、フェニルボロン酸を特異的に認識して結合するペプチドタグ配列を分子内に組込んだ。具体的には、参考例2に記載されているような手順で、ルシフェラーゼの代わりにDNAポリメラーゼをコードするプラスミドを構築した。
金基板を浸漬した溶液に、予めテンプレートDNAと混合した30μMのペプチドタグ付加DNAポリメラーゼを10μl添加し、5分間、25℃でインキュベーションを行った。その後、上清を完全に除去し、すぐにリン酸緩衝生理食塩水を100μl添加した。これにより、フェニルボロン酸修飾金基板にペプチドタグを介して結合したDNAポリメラーゼのみが基板上に残り、そのDNAポリメラーゼ分子の放出するピロリン酸を有効に即時検出することができる。溶液からゲルを充填したブリッジを介してアース接続し、基板をFETのゲート電極に接続し、基板上の微小電圧変化の測定を開始した。
以下にテンプレートDNAの配列(配列番号1及び2)を示す:
5'- AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号1)
3'- TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTGGGGGGGGGGCCCCCCCCCCAAAAAAAAAA(配列番号2)。
図2に示すように、この配列の基質でないdATPを添加し(a)、センサーグラムが変化しないことを確認した。DNA合成用基質として、dCTP(b)、dGTP(c)、dTTP(d)を順に添加した。この時点で合成反応は終息しているはずなので、最後にネガティブコントロールとしてdNTPを添加した(e)。配列に適合した塩基が添加されたときだけセンサーグラムが変化した。なお、このとき添加した基質デオキシリボ核酸の量は終濃度0.05mMとなるように加えた。
<実施例4>フェニルボロン酸処理した金基板を用いてDNAポリメラーゼ/基質DNA複合体にデオキシヌクレオチド三リン酸を添加して反応させたときに生じるピロリン酸の計測
実施例2の4-メルカプトフェニルボロン酸処理した金基板と同じ手順で、金基板の前処理を行った。
実施例3のペプチドタグ付加DNAポリメラーゼをテンプレートDNAと共に基板上に固定したのと同じ手順で、酵素/基質が結合したフェニルボロン酸修飾金基板を作製した。また、他の実験条件も実施例3と同様である。
このとき別々に2種類のテンプレートDNAを用いて実験を行ったが、その配列を以下に示す。(a)は実施例3と同じテンプレートDNAで同じ塩基が連続して10ずつ並び(配列番号1及び2)、他方(b)は同じ塩基が連続して並ぶ数が3となっている(配列番号1及び3)。
(a)5'- AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号1)
3'- TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTGGGGGGGGGGCCCCCCCCCCAAAAAAAAAA(配列番号2)
(b)5'- AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号1)
3'- TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTGGGCCCAAAGGGCCCAAAGGGCCCAAAGGG(配列番号3)。
それぞれに、反応が起こり得る基質であるdCTPを終濃度0.05mMとなるように加えた。結果のセンサーグラムを図3に示す。
センサーグラムにおける各々の電圧変化量は、用いたテンプレートDNA中のプライマー直後のグアニル塩基の連続数によって異なった。連続数が多い程、dCTPの取り込みが多くなり、それに応じて放出ピロリン酸量も増加するはずである。図3のBにおいても、同じ塩基の連続数10の(a)の場合には変化量は約20mAであるのに対し、連続数3の(b)の場合には変化量は約6mAであった。
<参考例1>ボロン酸結合能を有するペプチドタグ
ボロン酸基を含むポリマーの1例として、ポリ((2-メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン)-co-(n-ブチルメタクリル酸)-co-(p-ビニルフェニルボロン酸))(以下、PMBVと略す)を、60モル% 2-メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン基、20モル% n-ブチルメタクリル酸、及び20モル%p-ビニルフェニルボロン酸となるように重合した。
またボロン酸基を含むポリマーの別の例として、ポリ((2-メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン)-co-(ジメチルアミノエチルメタクリル酸)-co-(p-ビニルフェニルボロン酸))(以下、PMDVと略す)を、60モル% 2-メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン基、20モル% ジメチルアミノエチルメタクリル酸、及び20モル% p-ビニルフェニルボロン酸となるように調製した。
このPMBV又はPMDVをリン酸緩衝生理食塩水(PBS:10mM NaH2PO4/Na2HPO4、150mM NaCl pH7.3)に0.25mg/mlとなるように溶解し、各200μlを96穴ウエルプレートに分注した。
上記溶液をいれたウエルに、以下の配列を有するオリゴペプチド(PBS中)を各々0.05mMとなるように分注し、混和した。
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr(6Y)(配列番号4)
Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Trp(6SW)(配列番号5)
Ser-Ser-Ser-Ser-Trp(4SW)(配列番号6)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Trp(6YW)(配列番号7)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Trp(4YW)(配列番号8)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Gly-Gly(6Y2G)(配列番号9)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Lys-Lys(6Y2K)(配列番号10)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Gly-Lys(6YGK)(配列番号11)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Trp-Tyr-Tyr(4YW2Y)(配列番号12)
Tyr-Tyr-Tyr-Trp-Tyr-Tyr-Tyr(3YW3Y)(配列番号13)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Trp-Tyr(5YWY)(配列番号14)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Lys-Lys-Trp(6Y2KW)(配列番号15)
Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Tyr-Trp-Lys-Lys(6YW2K)(配列番号16)。
ウエルプレートを25℃で2時間、振盪した(700rpm、TAITEC MBR-022UP)。振盪後、PMBV又はPMDV中のフェニルボロン酸基に特異的に結合する蛍光色素アリザリンレッドSを各ウエルに各0.05mMとなるように分注し、混和した。ウエルプレートを25℃で1時間、振盪した(700rpm、TAITEC MBR-022UP)。
フェニルボロン酸にどの程度のアリザリンレッドSが結合できたかを知るために、アリザリンレッドS由来の蛍光強度を測定した。モレキュラーデバイス社のフルオロスペクトロメーターGemini XSを用いて、励起光波長495nmで励起し、蛍光の発光強度測定は520nmから640nmの範囲を10nm間隔で強度測定を連続的に行い、極大値を持って蛍光強度とした。
ペプチド添加無し、及び各ペプチドを添加した場合の各々のアリザリンレッドS由来の蛍光強度極大値から、ペプチドとフェニルボロン酸基の結合量を求めた。すなわち、アリザリンレッドS由来の蛍光強度が低いペプチドほど、アリザリンレッドSのフェニルボロン酸基への結合を阻害していることになり、ペプチドとフェニルボロン酸基の結合量が多い。その結果から、いずれのオリゴペプチドもフェニルボロン酸基へ結合していることがわかった。この結果は、別に行った表面プラズモン共鳴測定によっても確認された。
<参考例2>フェニルボロン酸結合能を有するペプチドタグを導入したルシフェラーゼをコードするプラスミドの構築とその発現
ルシフェラーゼ(以下Luc)発現プラスミドであるpURE2 Lucプラスミドをテンプレートとして、タンパク質分子に6Y2K(配列番号10)及び6YW(配列番号7)のペプチドタグを4残基のグリシン残基を介してC末端に付加できるように導入した。プラスミドへの導入方法としてInverse PCR法を用いた。Inverse PCR法では環状DNAの配列導入部位を基準として背中合わせになる様にプライマーを選択する。このときプライマーには導入しようとする配列をアンカー配列1及び2として付加しておく。この条件でPCR反応を行うと末端にアンカー配列1及び2が付加された直鎖状の2本鎖DNAが生成する。これをセルフライゲーション反応で繋ぎ合わせることにより、望みの部位にアンカー配列が導入された環状二本鎖DNAを得ることができる。
プライマーには6Y2K用Forward primerとして配列5’-TATTATTATAAAAAATAGCATATGAAGCTTTAGCATAACCCCTT-3’(配列番号17)、6YW用Forward primerとして、配列5’-TATTATTATTGGTAGCATATGAAGCTTTAGCATAACCCCTT-3’(配列番号18)を用い、共通のReverse primerとして、配列5’-ATAATAATAACCACCACCACCCAATTTGGACTTTCCGCCCT-3’(配列番号19)を使用した。
Inverse PCR反応液はテンプレートプラスミドpURE2 Lucを20fmol、Forward primerとReverse primerを各々15pmol、KOD-Plus DNA polymerase(東洋紡)を2.5U、10×KOD bufferを5μl、10mM dNTPを5μl加えて全量が50μlになるようdH2Oで調整した。増幅反応は95℃で1分間の反応後、98℃ 30秒、55℃ 1分、68℃ 4分のサイクル反応を30回繰り返した後、4℃に冷却した。
サンプル50μlを回収し、DpnI(20U/μl、NEB社)を1μl添加して37℃で1時間反応させテンプレートプラスミドを分解した。反応後の溶液にエタノール150μlとNaOAC 5μlを添加し4℃ 15000rpmにて30分遠心分離し、上清を捨てた(エタノール沈殿)。
沈殿を10μl dH2Oに溶解し、T4 kinase(TaKaRa社)1μlとLigation high(東洋紡社)14μlと混合後、37℃で1時間反応させ、その後更にLigation high 5μlを添加し、4℃で1時間反応させてセルフライゲーション反応を行った。
セルフライゲーション反応液5μlをコンピテントセルJM109(TaKaRa社)50μlと混合し、氷上で10分間静置後、42℃ 45秒間のヒートショック反応を行い、大腸菌を形質転換した。溶液をLB-amp(LBブロス:Invitrogen社、アガー:和光純薬工業社、アンピシリン:SIGMA社)プレートに播種し、37℃で一晩培養して大腸菌コロニーを形成させた。いくつかのコロニーをピックアップし、20mLのLB-amp培養液で一晩培養後集菌し、Plasmid Miniprep system(Marligen社)を用いてプラスミドを抽出精製した。精製したプラスミドのシーケンスを行い、配列導入が確認されたプラスミドを保存した。
LucのC末端側に6Y2K配列(配列番号10)を導入したプラスミド(Luc6Y2K)及び6YW配列(配列番号7)を導入したプラスミド(Luc6YW)各100ng/μlの各1μlを、タンパク質発現用コンピータントセルBL21(Novagen社)50μlに添加し、4℃ 10分間静置し、42℃ 30秒間ヒートショック反応を行い形質転換を行った。溶液をLB-amp(LBブロス:Invitrogen社、アガー:和光純薬工業社、アンピシリン:SIGMA社)プレートに播種し、37℃で一晩培養して大腸菌コロニーを形成させた。いくつかのコロニーをピックアップし、2LのLB-amp培養液で25℃で一晩培養後集菌した。
菌体を細胞膜破砕液に懸濁し室温で10分間穏やかに回転混和した後、遠心分離(30,000g、30分間)し、上清を回収した。Luc-6Y2K、Luc-6YWともにN末端側にStrep-tag配列を有しているので、アビジン−ビオチン相互作用を利用したアフィニティークロマトグラフィー精製をAKTA explorer10Sシステムを用いて行った。0.1μmフィルター濾過した遠心分離上清液をStrepTrap HP 5ml(GEヘルスケアジャパン社)に5ml/分の流速で注入し、サンプル吸着させた。サンプル吸着後、10mlのリン酸緩衝生理食塩水(10mM NaH2PO4/Na2HPO4、150mM NaCl pH7.3)でカラムを洗浄した。desthiobiotin(シグマアルドリッチ社)を溶解させたリン酸緩衝生理食塩水を用いてカラムに吸着した目的タンパク質を溶出させた。溶出サンプルはフラクションごとにSDSポリアクリルアミド電気泳動で目的タンパク質が発現し、かつ他の夾雑タンパク質が取り除かれていることを確認した。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除又は置換を行うことが可能である。
401 導電性支持体
402 ボロン酸基を含む化合物
403 ペプチドタグ
404 DNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼ
405 ピロリン酸の放出
406 ボロン酸基とピロリン酸との接触
配列番号1〜3:人工配列(合成オリゴヌクレオチド)
配列番号4〜16:人工配列(合成オリゴペプチド)
配列番号17〜19:人工配列(合成オリゴヌクレオチド)

Claims (15)

  1. ボロン酸基を含む化合物が固定化された導電性支持体を準備する工程、
    被検物を上記導電性支持体上のボロン酸基と接触させる工程、
    上記導電性支持体の電気的変化を測定する工程、及び
    上記電気的変化に基づいてピロリン酸を検出する工程
    を含む、ピロリン酸を電気的に検出する方法。
  2. 前記ボロン酸基を含む化合物が、フェニルボロン酸誘導体、メチルボロン酸誘導体、及びプロペニルボロン酸誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ボロン酸基を含む化合物がボロン酸基を含む水溶性ポリマー分子である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記ボロン酸基を含む化合物がフェニルボロン酸基及びチオール基を含む分子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記導電性支持体が貴金属を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記電気的変化を、前記導電性支持体に導電体を介して接続した電圧変化測定器によって測定する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記測定器が、微小な電圧変化を測定するために電界効果トランジスタ(FET)を回路内に有する測定器である、請求項6に記載の方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法に従って、ターゲットDNAを鋳型としたDNAポリメラーゼによるDNA相補鎖合成により生じるピロリン酸を検出する工程、及び
    ピロリン酸の検出結果に基づいてDNA相補鎖合成に取り込まれた塩基の種類を決定する工程
    を含む、ターゲットDNAの塩基配列を決定する方法。
  9. DNAポリメラーゼ及び/又はターゲットDNAが、前記導電性支持体表面に固定されている、請求項8に記載の方法。
  10. 前記導電性支持体へ固定されるDNAポリメラーゼが、ボロン酸基に対する結合能を有するペプチドタグを分子内に含むDNAポリメラーゼである、請求項9に記載の方法。
  11. ターゲットDNA又はRNAが、前記導電性支持体とは異なる固体支持体表面に固定されている、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法に従って、ターゲットDNA又はRNAにハイブリダイズしたプローブからのDNAポリメラーゼによるDNA相補鎖合成により生じるピロリン酸を検出する工程、及び
    ピロリン酸の検出結果に基づいて、ターゲットDNA又はRNAへのハイブリダイゼーションを検出する工程
    を含む、ターゲットDNA又はRNAを検出する方法。
  13. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法に従って、ターゲットDNAにハイブリダイズした2つのプローブ間のニックがDNAリガーゼ反応により連結されることにより生じるピロリン酸を検出する工程、及び
    ピロリン酸の検出結果に基づいて、ターゲットDNAへの2つのプローブのハイブリダイゼーションを検出する工程
    を含む、ターゲットDNAを検出する又はターゲットDNA上の一塩基多型を検出する方法。
  14. ボロン酸基を含む化合物が固定化された導電性支持体を備えることを特徴とするピロリン酸を電気的に検出するためのデバイス。
  15. 前記導電性支持体にさらにDNAポリメラーゼが固定化されている、請求項14に記載のデバイス。
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