JP2009124960A - RecA様相同組換え蛋白質を用いたDNA相同塩基配列の検出方法 - Google Patents

RecA様相同組換え蛋白質を用いたDNA相同塩基配列の検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
本発明は、RecA様相同組換え蛋白質を用いた相同対合反応を検出する方法において、基板上に固定した単鎖のプローブDNAと二重鎖のターゲットDNAとのハイブリダイゼーションを確実に行わせるためにRecA様相同組換え蛋白質を反応させた単鎖のプローブDNAフィラメント複合体を固定化する方法、及び標識化による標識の強度の測定による塩基配列の相同性を測定する方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブに少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させ、フィラメント複合体を形成させる段階(a)、及び、ターゲット二重鎖DNAを混合し、相同対合反応および鎖交換反応を起こさせる段階(b)とを含んでなる基板に固定化されているフィラメント複合体とターゲット二重鎖DNAとを基板上でハイブリダイゼーションさせる方法、そのための固定化基板、及び当該方法を含んでなるターゲット二重鎖DNA中の相同性を検出又は定量する方法に関する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブに少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させ、フィラメント複合体を形成させる段階(a)、及び、ターゲット二重鎖DNAを混合し、相同対合反応および鎖交換反応を起こさせる段階(b)とを含んでなる基板に固定化されているフィラメント複合体とターゲット二重鎖DNAとを基板上でハイブリダイゼーションさせる方法、そのための固定化基板、及び当該方法を含んでなるターゲット二重鎖DNA中の相同性を検出又は定量する方法に関する。
ゲノムプロジェクトの進行に伴い、新たな遺伝子が次々と同定されてきているが、これらの機能を効率よく解析するためにより信頼性の高いDNAマイクロアレイの開発が急務になってきている。
しかし、現状のDNAマイクロアレイ法の主流は、(例えば非特許文献1)まず、mRNAからcDNAを調整し、cDNAを単鎖DNAに変性させてからプローブDNAにハイブリダイズさせるため、調整溶液内に相補配列を持つDNA鎖が必ず存在し、それらがアニール反応してしまうとその分の減少をモニターできない。そのため、正確な情報解析を困難にしている。
また、プローブに用いるDNAは現在数十塩基のものがよく使用されているが、非特異的な結合によるアーティファクトを排除するために精度の高い実験が要求され、得られる情報も膨大で重要な規則性・法則性を導き出すための情報解析が困難である。
このようにcDNAを単鎖DNAに変性させることなく、高い精度でDNA塩基配列相同性を評価する方法の開発が有益であることは明らかであるが、簡便にして有効な手段は未だ知られていない。
現状においては、バッチ内反応におけるRecAの相同対合を利用した塩基配列検出技術は数多く知られている。例えば、少なくとも1種の組換え酵素、少なくとも1種のホモプローブ、および少なくとも1種のヘテロプローブを、サンプル中の二本鎖標的核酸配列とを混合し、サンプル中の二本鎖標的核酸配列をターゲティング、濃縮、検出、および/または単離する方法であって、 二本鎖標的核酸配列とホモ核酸プローブとの相同的対合又は鎖交換の特異性がヘテロ核酸プローブの添加により増強される方法(特許文献1参照)、三本鎖DNA複合体を形成させる反応条件下において、被検多型部位を含む二本鎖DNA、該二本鎖DNAの多型部位を含む領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブ、および相同組換えタンパク質を接触させることからなる二本鎖DNA中の多型を検出する方法(特許文献2参照)、RecA様タンパク質を用いて標的核酸の一方の端部領域に対して相補的な一本鎖の第2ヌクレオチド部をタンパク質複合体とした自己相補的なステム・ループ構造をなす第1ヌクレオチド部を有する標識されてなるヘアピン型のプローブを用いる方法(特許文献3参照)、及び大腸菌(Escherichia coli)のエキソヌクレアーゼI及びこのエキソヌクレアーゼIと類似する機能を有するタンパク質の少なくともいずれかであるヌクレアーゼを用いて、相同的組換えタンパク質が存在しなくても安定な構造を維持することができる三本鎖DNAの形成方法(特許文献4参照)などが報告されている。これらの方法では、プローブDNAプローブとRecAとを予め結合させ、次いでターゲットDNAと混合することによりターゲットDNAの相同部位をプローブDNAと対合することにより相同性を検出している。しかしながら、これらの技術は、プローブを基板に固定していないため、一度に数多くのサンプルの試験ができない、検出までの操作が複雑で時間がかかるなどの致命的な欠陥があった。
大量の試料を迅速に処理するための具体的な固定化については未だ報告されていないが、特許文献5には、一本鎖が残る領域が生じるイー・コリRecA 蛋白質などのリコンビナーゼ蛋白質の存在下に、メチル化などにより変性させた第一及び第二起源からのDNA分子の相同性領域にDNAデュプレックスが形成された該第一及び該第二起源からのDNAを、イー・コリのメチル−指向性誤対合修復系並びにMutS及びMutL蛋白質からなる誤対合修復系の蛋白質、一本鎖結合蛋白質、並びにATPと混合し、次いで 該集団から該一本鎖領域を含む分子を除去する方法において、誤対合修復系のある種または全ての蛋白質が固形支持体に固定化されていてもよい旨が記載されており(特許文献5、請求項37及び61参照)、特許文献6には標識を導入すべき標的核酸を含む試料に、RecAタンパク質と、前記標的核酸の末端領域と相同な第一の核酸プローブとを添加することにより、前記第一の核酸プローブの一部が前記標的核酸から突出するように、前記RecAタンパク質を介して前記第一の核酸プローブを前記標的核酸に結合せしめ、前記標的核酸に結合した前記RecAタンパク質を前記標的核酸から解離させて、前記第一の核酸プローブの突出部分に、標識された第二の核酸プローブをハイブリダイズさせることにより、標識が導入された核酸を製造する方法が開示され、当該標識が導入された核酸は、サザンハイブリダイゼーション法のプローブや、DNAチップのプローブ等として使用することができることが記載されている(特許文献6、請求項1及び段落番号[0050]参照)。特許文献7には、一本鎖オリゴヌクレオチドプローブをRecAタンパク質又はRecAホモログと接触させて、RecAフィラメントを形成させ、これを該標的DNAと接触させて三本鎖DNA構造を形成させた後、当該三重鎖構造のオリゴヌクレオチドプローブを、DNAポリメラーゼと1種以上の標識dNTP又はDNA合成ターミネーターとを使用して伸長させることからなる標的二本鎖DNA分子における変異、SNPなどを検出する方法において、「あるいは、その連結パートナーオリゴヌクレオチドの一方または複数のオリゴヌクレオチドは、固定を可能にするための付加物(例えば、ビオチン、または特定オリゴヌクレオチド配列(「固定オリゴヌクレオチド」))を含み得、他方のオリゴヌクレオチドまたは複数のオリゴヌクレオチドは、検出可能な標識(「レポーターオリゴヌクレオチド」)を含み得る。」と記載されている(特許文献7、段落番号[0085]参照)。さらに、特許文献8には、必要に応じて検出可能に標識されている一本鎖DNAプローブをRecAタンパク質と接触させてRecAフィラメントを形成させ、これを試験DNAと接触させて三本鎖DNA構造を形成させた後、二重鎖部分に存在する1つ以上の塩基対ミスマッチまたは不対塩基に結合するMutSタンパク質と接触させて、結合したMutSの存在を検出することからなる試験DNA中の変異又はSNPの存在を検出する方法において、前記MutSが、固体支持体に固定化されていてもよい旨が記載され(特許文献8、請求項12参照)、また、前記試験DNAが、固体支持体に固定化されていてもよい旨が記載されている(特許文献8、請求項23参照)。
このように試験用の試料DNAやプローブを固定化する旨の開示はなされてきているが、その具体的な成功についての記載はなされておらず、実際にこれをマイクロアレイに応用したとしても、実施者は、その都度、分離する手間と、標識を付与する手間と、その間に生ずる誤差により検出精度を確定することが困難となるなどの問題があった。RecAタンパク質を用いる検出方法は優れた方法ではあるが、固定化による大量処理が困難であるという大きな問題があり、これらの問題を解決するためにはDNAプローブを基板に確実に固定して相同対合反応を検出する方法の開発が有効であり、この手法の開発によって初めて、RecA様相同組換え蛋白質をDNAマイクロアレイに応用することが可能となる。
また、現在のDNAマイクロアレイはDNAに結合した蛍光色素の強度によって、結合DNA量を定量する方法が主流であって、前処理段階としてDNAを蛍光標識する作業が必要である。従って、DNAを標識する段階の必要が無いDNAマイクロアレイの方法を開発することにより、操作の簡便化が図られる。
特表2001−506124号公報 特開2002−186499号公報 特開2005−253427号公報 特開2002−272464号公報 特表平9−504437号公報 特開2002−281981号公報 特表2005−507668号公報 特表2004−521634号公報 Helen C. Causton 他、Microarray Gene Expression Data Analysis: A Beginner's Guide, Blackwell Pub (2003/05)
本発明の目的は、RecA様相同組換え蛋白質を用いた相同対合反応を検出する方法において、基板上に固定した単鎖のプローブDNAと二重鎖のターゲットDNAとのハイブリダイゼーションを確実に行わせるためにRecA様相同組換え蛋白質を反応させた単鎖のプローブDNAフィラメント複合体を固定化する方法、及び蛍光標識による蛍光強度の測定による塩基配列の相同性を測定する方法を提供することである。
タンパク質や核酸類を基板上に固定化する技術は多数報告されている。しかし、RecAなどの相同組換えタンパク質は、ガラス基板やシリコン基板に対して非特異的に結合し、これらのタンパク質又はこれらのタンパク質を含有するプローブなどを基板上に固定化した場合には、多数の非特異的に結合したこれらのタンパク質が基板上に残り、これが多量のバックグラウンドとなり計測を困難にしていた。
RecA(大腸菌において最もよく特徴付けされている細菌リコンビナーゼ)は、複数のRecA分子が一本鎖DNA(ssDNA)を被覆して、RecA「フィラメント」と称される複合体を形成する。このフィラメントは、ATPの存在下で、二本鎖DNA(dsDNA)中の相同配列を探し、相同な配列が存在すれば三鎖構造が形成されるという特異な性質を有している。この性質を利用して、RecAは、特異的配列を含むプラスミドについてのプラスミドライブラリーのスクリーニング、細菌ゲノムDNAやヒトゲノムDNA由来の特定のDNA領域のマッピング、制限エンドヌクレアーゼ生成性「粘着末端」のDNAポリメラーゼからの保護、及び二本鎖DNAから特定のDNA領域を同定又は検出などをするために応用されてきた。このようにRecAは極めて特異な性質を有しており応用範囲の広いものではあるが、前記してきた非特異的な結合のために、固定化技術の開発が大きな問題となってきていた。
本発明者は鋭意研究の結果、RecAを含有するフィラメントを特異的に基板上に固定化できることを見出し、基板上に固定した単鎖のプローブDNAに、RecA様相同組換え蛋白質を反応させ、フィラメント複合体と成し、ターゲット二重鎖DNAとを基板上でハイブリダイゼーションさせることに成功した。更にまた、本発明者は意外にも、上記手法においてRecA様相同組換え蛋白質をあらかじめ標識し、そのシグナル強度をモニターすることによりDNAハイブリダイゼーションの過程および効率が容易に評価できることをも見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブに少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させ、フィラメント複合体を形成させる段階(a)、及び、ターゲット二重鎖DNAを混合し、相同対合反応および鎖交換反応を起こさせる段階(b)とを含んでなる基板に固定化されているフィラメント複合体とターゲット二重鎖DNAとを基板上でハイブリダイゼーションさせる方法、及び当該ハイブリダイゼーション方法により当該ハイブリダイゼーション中の相同部位において三重鎖構造を有する複合体を製造する方法に関する。
また、本発明は、少なくとも1種の単鎖DNAプローブに少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させて形成されたフィラメント複合体が基板上に固定されている、フィラメント複合体固定化基板、並びに当該基板を含有してなるDNAハイブリダイゼーション用キット、及び、当該基板からなるDNAマイクロアレイに関する。
さらに、本発明は、基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブに少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させ、フィラメント複合体を形成させる段階(a)、ターゲット二重鎖DNAを混合し、相同対合反応および鎖交換反応を起こさせる段階(b)、及び、結合二重鎖DNAを検出又は定量する段階(c)とを含んでなる、基板上で基板に固定化されたフィラメント複合体とターゲット二重鎖DNAとをハイブリダイゼーションさせて、ターゲット二重鎖DNA中の相同性を検出又は定量する方法に関する。
本発明は、さらに次のとおりである。
(1)基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブに少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させ、フィラメント複合体を形成させる段階(a)、及び、ターゲット二重鎖DNAを混合し、相同対合反応および鎖交換反応を起こさせる段階(b)とを含んでなる基板に固定化されているフィラメント複合体とターゲット二重鎖DNAとを基板上でハイブリダイゼーションさせる方法。
(2)段階(a)が、基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブにブロック処理を施した後、少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させて、フィラメント複合体を形成させることからなる前記(1)に記載の方法。
(3)ブロック処理が、カゼイン又はその混合物を用いるものである前記(2)に記載の方法。
(4)RecA様相同組換え蛋白質が、標識化されているものである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)RecA様相同組換え蛋白質を標識する物質が、蛍光分子、放射性物質、ビオチン、ジゴキシゲニン、金属粒子、又は量子ドットなどの粒子状物質である前記(4)に記載の方法。
(6)ターゲット二重鎖DNAが、物理的又は化学的に標識されているターゲット二重鎖DNAである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブが、少なくとも18塩基である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質が、原生生物あるいは古細菌由来である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質が、大腸菌由来の蛋白質又はその部分ペプチドである前記(8)に記載の方法。
(10)基板上への固定が、DNAマイクロアレイである前記(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)前記(1)〜(10)のいずれかの方法により基板上に固定化されているフィラメント複合体とターゲット二重鎖DNAとをハイブリダイゼーションさせて、当該ハイブリダイゼーション中の相同部位において三重鎖構造を有する複合体を製造する方法。
(12)少なくとも1種の単鎖DNAプローブに少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させて形成されたフィラメント複合体が基板上に固定されている、フィラメント複合体固定化基板。
(13)基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブにブロック処理を施した後、少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させて、フィラメント複合体を形成させたものである前記(12)に記載の基板。
(14)ブロック処理が、カゼイン又はその混合物を用いるものである前記(13)に記載の基板。
(15)RecA様相同組換え蛋白質が、標識化されているものである前記(12)〜(14)のいずれかに記載の基板。
(16)RecA様相同組換え蛋白質を標識する化合物が、蛍光分子、放射性物質、ビオチン、ジゴキシゲニン、金属粒子、又は量子ドットなどの粒子状物質である前記(15)に記載の基板。
(17)基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブが、少なくとも18塩基である前記(12)〜(16)のいずれかに記載の基板。
(18)少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質が、原生生物あるいは古細菌由来である、前記(12)〜(17)のいずれかに記載の基板。
(19)少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質が大腸菌由来の蛋白質あるいはその部分ペプチドである、前記(18)に記載の基板。
(20)前記(12)〜(19)のいずれかに記載の基板を含有してなるDNAハイブリダイゼーション用キット。
(21)前記(12)〜(19)のいずれかに記載の基板からなるDNAマイクロアレイ。
(22)基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブに少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させ、フィラメント複合体を形成させる段階(a)、ターゲット二重鎖DNAを混合し、相同対合反応および鎖交換反応を起こさせる段階(b)、及び、結合二重鎖DNAを検出又は定量する段階(c)とを含んでなる、基板上で基板に固定化されたフィラメント複合体とターゲット二重鎖DNAとをハイブリダイゼーションさせて、ターゲット二重鎖DNA中の相同性を検出又は定量する方法。
(23)段階(a)が、基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブにブロック処理を施した後、少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させて、フィラメント複合体を形成させることからなる前記(22)に記載の方法。
(24)ブロック処理が、カゼイン又はその混合物を用いるものである前記(23)に記載の方法。
(25)RecA様相同組換え蛋白質が、蛍光分子、放射性物質、ビオチン、ジゴキシゲニン、金属粒子、又は量子ドットなどの粒子状物質で標識されたものであり、当該標識物質の量を測定することによってフィラメント複合体上の標識蛋白質を検出又は定量するものである前記(22)〜(24)のいずれかに記載の方法。
(26)蛍光分子により標識された少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を用いる段階(a)と、その蛍光強度を測定することによってフィラメント複合体上の標識蛋白質量を検出又は定量する段階(c)とを有する、前記(22)〜(25)のいずれかに記載の方法。
(27)少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質標識化合物が放射性物質である段階(a)と、その放射線強度を測定することによってフィラメント複合体上の標識蛋白質量を検出又は定量する段階(c)とを有する、前記(22)〜(25)のいずれかに記載の方法。
(28)少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を標識する化合物がビオチン又はジゴキシゲニンである段階(a)と、その量を測定することによってフィラメント複合体上の標識蛋白質を検出又は定量する段階(c)とを有する、前記(22)〜(25)のいずれかに記載のの方法
(29)相同対合反応および鎖交換反応を起こさせる段階(b)に予め物理的あるいは化学的に標識されているターゲット二重鎖DNAを用いることを特徴とする、前記(22)〜(28)のいずれかに記載の方法。
(30)ターゲット二重鎖DNAを標識する化合物が、蛍光分子、放射性物質、ビオチン、ジゴキシゲニン、金属粒子、又は量子ドットなどの粒子状物質である前記(29)に記載の方法。
(31)基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブが少なくとも18塩基である、前記(22)〜(30)のいずれかに記載の方法。
(32)少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質が、原生生物あるいは古細菌由来である前記(22)〜(31)のいずれかに記載の方法。
(33)少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質が、大腸菌由来の蛋白質又はその部分ペプチドである前記(32)に記載の方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
すなわち本発明は、RecA様相同組換え蛋白質又はこれを含有してなるフィラメント複合体を、非特異的結合を排除して実用的な計測が可能となる基板上への固定化を初めて可能にしたものであり、本発明は、予め少なくとも1種の単鎖DNAプローブを基板上に固定し、少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質をこれと反応させ、フィラメント複合体を基板上に形成させることを第一の特徴としている。また、本発明は、基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブにブロック処理、好ましくはカゼイン又はその混合物を用いたブロック処理をすることを第二の特徴としている。さらに、本発明は、RecA様相同組換え蛋白質をあらかじめ標識、好ましくは蛍光標識して、そのシグナル強度をモニターすることによりDNAハイブリダイゼーションの過程及びその効率を検出、同定、及び定量することを第三の特徴としている。
本発明に用いる基板としては、その種類に特に制限はなく、硝子、石英ガラス、プラスチック、金属薄膜、等が選択可能である。入手が容易であり、単鎖DNAを固定し易く、バッファー溶液に対し安定であり、また、チップ化が容易である等の理由で、硝子基板が好ましい。シリコンなどで表面処理を施した硝子基板も利用可能である。
本発明で使用する単鎖DNAについては使用目的に応じて適宜選択すれば良く、長さ、塩基配列、形状には制限はない。RecA様相同組換え蛋白質の結合能が十分発揮されるために18塩基以上の長さを持つ直鎖状DNAが好ましい。DNAの長さの上限は特に制限は無いが、10000塩基までが好ましい。
また、使用するターゲット二重鎖DNAの長さ、塩基配列、形状には制限がない。相同性を検出、同定、又は定量するに充分な長さ、例えば10塩基対〜20000塩基対、好ましくは100塩基対〜5000塩基対程度の長さを有するものが挙げられる。
基板への固定化は、公知の任意の方法に準じておこなうことができる。例えば、アビジン又はストレプトアビジンでコーティングした基板表面に、ビオチン付加物を用いて固定化することができる。
フィラメント複合体とターゲット二重鎖DNAとの反応温度は、相同組換え蛋白質の活性が十分発揮される温度であればよく、例えば、15℃から60℃、好ましくは37℃付近で行うのが望ましい。また、その反応溶媒条件は、使用するRecA様相同組換え蛋白質によって異なるが、好ましくはアデノシン5’−三リン酸(ATP)またはその類縁体、例えば(アデノシン(γ−チオ)−三リン酸(ATP)−γS)などのヌクレオシド三リン酸の存在下で、その相同対合および鎖交換反応が十分発揮される条件であればよい。これらの反応条件は公知の反応条件に準じて選択することができ、特許文献1〜8などの記載に準じて行うことができる。これらの文献の記載を本明細書に取り込み参照する。
予め基板上に固定される少なくとも1種の単鎖DNAプローブは、固定された基板に対しブロック処理を施すことが好ましい。特に、RecA様相同組換え蛋白質の非特異的結合を最小限にするために、ブロック処理を行うことが重要である。ブロック処理の方法としては、例えば、緩衝液に溶かしたカゼイン溶液の使用が好ましい。このようなカゼイン溶液としては、例えば、緩衝液、例えばHE緩衝液(10mM HEPES and 0.1 mM EDTA)に溶かした脱リン酸化α−カゼイン、ヘパリン、グルタミン酸カリウムの混合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。ブロック処理は、基板を室温又は室温付近の温度で、0.01mg/mL〜2mg/mL程度、好ましくは0.1mg/mL〜1.5mg/mL程度の濃度のカゼインの緩衝液溶液に浸し、次いで緩衝液で基板を洗浄することにより行うことができる。浸す時間としては特に制限はなく、基板の大きさや状態にもよるが、好ましくは10〜60分、10〜30分程度である。
RecA様相同組換え蛋白質は、多くの原核生物、古細菌および真核生物から単離、精製されている。本発明で用いられるRecA様相同組換え蛋白質の種類には特に制限はないが、原核生物あるいは古細菌由来のものが好ましい。例えば、大腸菌RecA蛋白質、枯草菌RecA蛋白質、高度高熱菌RecA蛋白質、古細菌RadA蛋白質、分裂酵母RAD51蛋白質などが挙げられる。また、大腸菌RecA由来L2ペプチド(Voloshin O.N.ら, Science 272:868(1996))などの部分ペプチドが挙げられる。相同対合、鎖交換反応活性を持つものであれば、それらのシステイン誘導体など、類似のアミノ酸配列を持った蛋白質でもよい。好ましい態様においては、大腸菌培養物から単離、精製されたRecA蛋白質を用いることができる。また、市販のRecA蛋白質を用いてもよい(New England Biolab社製、GE-Healthcare)。
また、RecA遺伝子から部位特異的変異を誘発させて作出された1個以上のアミノ酸が欠損、置換、又は付加された変異されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。例えば、RecAの353番目のアミノ酸がシステインに変異したRecA353C変異体(T.Nishinaka, A.Takano, et al., J.Am.Chem.Soc., 127, 8120-8125 (2005))を用いることもできる。
本発明のRecA様相同組換え蛋白質は、予め物理的または化学的な標識を付加しておくことが好ましい。このような標識としては、反応に格別の影響を与えず計測可能なものであれば、特に制限は無い。例えば、N−末端を標識する方法、リジンなどのアミノ基を標識する方法、トリプトファンなどの蛍光を利用する方法、蛍光団を有する蛋白質と融合させる方法などの各種の標識化方法を利用することができる。また、前記したRecA353C変異体を用いてシステインを標識化することもできる。標識としては、蛍光分子、放射性物質、ビオチン、ジゴキシゲニン、金属粒子、量子ドットなどの粒子状物質などの各種の物質を利用することができるが、取り扱いが容易で定量的に付与できる、定量に大きな装置が要らない、検出のダイナミックレンジが広い等の理由で蛍光化合物の導入が好ましい。蛍光分子としては、例えば、フルオレセイン(および誘導体)、6−Fam、Hex、テトラメチルローダミン、シアニン−5、CY−3、アロフィコシアニン、ルシファーイエローCF、テキサスレッド、ローダミン、Tamra、Rox、Dabcylなどの公知の物質を広く利用することができる。また、前記したRecA353C変異体はシステインのSH基を有していることから、SH基に特異的な蛍光分子として、IC3−PE−マレイミド(Dojindo社製)(N−エチル−N’−{5−[N”−(2−マレイミドエチル)ピペラジノカルボニル]ペンチル}−インドジカルボシアナミン クロライド)を用いることもできる。
基板上に固定化された単鎖DNAとRecA様相同組換え蛋白質とのフィラメント複合体を形成させる反応も公知の方法に準じて行うことができる。これらの方法も特許文献1〜8に記載されており、これらの記載を本明細書に取り込み参照する。例えば、ヌクレオシド三リン酸またはその類似体の存在下において、緩衝液中で行うのが好ましく、pHは約4.0〜9.0、好ましくは約7.0〜8.0で行うことにより、RecA様相同組換え蛋白質が単鎖DNAに安定に結合したフィラメント複合体を得ることができる。
本発明のハイブリダイゼーション方法は、基板に単鎖DNAを固定化し、好ましくは前記したブロック処理を行い、次いでRecA様相同組換え蛋白質、好ましくは標識化されたRecA様相同組換え蛋白質を加えて反応させ、フィラメント複合体を形成させることからなる段階(a)、及び、得られた基板上に固定化されたフィラメント複合体にターゲット二重鎖DNAを混合し、相同対合反応および鎖交換反応を起こさせる段階(b)を含んでなるものである。さらに、必要に応じて洗浄工程、精製工程などの各種の工程を付加することができる。
このようにして為されたハイブリダイゼーションにより、単鎖DNAと相同な配列を有するターゲット二重鎖DNAと、当該単鎖DNAとの三重鎖構造の複合体を基板上に形成することができる。また、このような三重鎖構造を形成することができないターゲット二重鎖DNA、即ち、単鎖DNAと相同な配列を有していないターゲット二重鎖DNAは、基板上から洗い流されることになる。
したがって、本発明は、このようなハイブリダイゼーション方法及び当該ハイブリダイゼーション方法による当該ハイブリダイゼーション中の相同部位において三重鎖構造を有する複合体を基板上に固定して製造する方法を提供するものである。また、本発明は、このための固定化基板を提供するものである。
また、本発明は、フィラメント複合体が単鎖DNAの状態で存在している場合のRecA様相同組換え蛋白質の安定性と、フィラメント複合体がターゲット二重鎖DNAと共に三重鎖構造になっている場合のRecA様相同組換え蛋白質の安定性との相違に着目したものでもある。
この安定性を説明するための模式図を図1に示す。図1の左側は、フィラメント複合体がターゲット二重鎖DNAの相同部位とハイブリダイゼーションしているところを示している。図1において黒丸印(原図では赤色)は標識化されているRecA様相同組換え蛋白質を示し、灰色印(原図では緑色)は標識化されていないRecA様相同組換え蛋白質を示す。
単鎖DNA又は単鎖状部分のDNAに結合しているRecA様相同組換え蛋白質は安定に結合しており、外部の非標識化RecA様相同組換え蛋白質と交換することは無い。しかし、相同対合部分(三重鎖の部分)のRecA様相同組換え蛋白質はATPの加水分解と共にDNAから解離して、外部の非標識化RecA様相同組換え蛋白質と交換される。この結果、相同対合部分(三重鎖の部分)における標識化RecA様相同組換え蛋白質の量が減少することになり、標識強度の減少として計測することが可能となる。
したがって、フィラメント複合体に結合している標識化RecA様相同組換え蛋白質の標識強度を計測することにより、相同性の検出、同定、又は定量化を行うことができることになる。
本発明のDNA相同塩基配列の検出、並びに定量方法は、2つの選択肢を有している。その1つは、ターゲット二重鎖DNAに予め物理的または化学的な標識を付加し、相同対合反応および鎖交換反応を起こした後に、これを検出、定量する方法と、前記したフィラメント複合体を形成するRecA様相同組換え蛋白質に予め物理的または化学的な標識を付加し、相同対合反応および鎖交換反応を起こした後に残ったRecA様蛋白質を検出、定量する方法がある。いずれの方法を選択するかは、これを利用する者が任意に行うことができる。
化学的な標識方法としては、蛍光化合物、ビオチン、ジゴキシゲニン等が選択できるが、取り扱いが容易で定量的に付与できる、定量に大きな装置が要らない、検出のダイナミックレンジが広い等の理由で蛍光化合物の導入が好ましい。
物理的な標識方法としては、放射性物質、金属粒子、量子ドット等が使用可能であるが、その中で、特に量子ドットが、取り扱いが容易で定量的に付与できる、定量に大きな装置が要らない、検出のダイナミックレンジが広い等の理由で好ましい。ここで言う量子ドットとは、CdSe等の半導体発光材料を意味する。
このような標識化を行うことにより、前記してきた本発明のハイブリダイザーション方法の工程に次いで、結合二重鎖DNAを検出又は定量する段階(c)をさらに設けることにより、基板上で基板に固定化されたフィラメント複合体とターゲット二重鎖DNAとをハイブリダイゼーションさせて、ターゲット二重鎖DNA中の相同性を検出又は定量する方法を提供することができる。
このような検出、同定、又は定量化の方法としては、標識として蛍光標識を用いた場合には、蛍光強度を測定すればよいし、標識として放射性物質を用いた場合には、その放射線強度を測定すればよいし、また、標識としてビオチン又はジゴキシゲニンを用いた場合には、その量を測定すればよいことになる。
また、ターゲット二重鎖DNAに予め標識化する場合には、検体試料となるターゲット二重鎖DNAを標識化することになるが、フィラメント複合体を形成するRecA様相同組換え蛋白質を標識化する場合には、検体試料となるターゲット二重鎖DNAの標識化は不要となる。
本発明の方法における塩基配列相同性の計測は、主に単鎖DNAと二重鎖DNAとの間であるが、両者には部分的に二重鎖DNA、単鎖DNA部分があっても構わない。
また、本発明は、上記の方法を実施するために、本発明はまた、DNAの相同性を検出するためのキットも提供する。当該キットにはあらかじめ単鎖DNAを固定させておいた基盤と、RecA様相同組換え蛋白質を含む容器から構成されうる。
また、少なくとも1つ以上の単鎖DNAプローブをアレイ状に配列させ、それらのプローブDNAとターゲット二重鎖DNAとの間の相同性をDNAハイブリダイゼーションの原理により評価するDNAマイクロアレイへの応用も、本発明に含まれる。
本発明により、正確な二重鎖DNAの塩基配列相同性の検出、同定、又は定量化が、既存の装置を使い、容易にできることになった。また、検体試料となるターゲット二重鎖DNAを標識化することなく検出、同定、又は定量化することができることになる。さらに、本発明により、RecA様相同組換え蛋白質又は標識化されたRecA様相同組換え蛋白質を含有するフィラメント複合体を特異的に固定化することが可能となり、RecA様相同組換え蛋白質を用いた相同性の検出、同定、又は定量化を、迅速に、大量に、かつ簡便に行うことができることになる。
その結果、遺伝子研究分野における方法論は大きく前進できる。また、本発明の成果をDNAチップに応用すれば、遺伝子治療と呼ばれる医療分野においても飛躍的な進歩が期待できる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何等限定されるものではない。
遺伝子操作実験により部位特異的にシステイン残基を導入した変異型大腸菌recA遺伝子(RecAのC末端にシステインを付加したもの:353C)を大量発現系ベクターに組み込んだものを調製して、大腸菌内に発現させ、ポリエチレンイミン分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水カラムクロマトグラフィーにより、システイン変異RecA蛋白質を単離、精製した。
M13mp18DNAのマルチクローニングサイトの部分配列に相補的なオリゴヌクレオチドd(GGATCCCCGGGTACCG)(SmaI切断部位を中央に含む)を合成した。これをM13mp18環状一本鎖 DNAとアニールさせた後、制限酵素SmaIによって切断した。DNA産物を含む反応溶液をイオン交換クロマトグラフィーによって精製し、M13mp18線状一本鎖DNAを調製した。SmaI配列に相補的な配列と、60個からなるエチレングリコールリンカー部分と、ビオチン部分を持つオリゴヌクレオチドbiotin-(spacer18)10-d(GGGTACCGAGCTCGAATTCGTAATCATGGT)を合成し、前記M13mp18線状一本鎖DNAとアニールさせ、ビオチンタグ付M13mp18線状一本鎖DNAを調製した。
線状相同鎖二重鎖DNAはM13mp18FormI DNAを制限酵素PstIで切断し、フェノールクロロホルム抽出とエタノール沈殿により精製した。
また、線状非相同鎖二重鎖DNAはφX174 FormI DNAを制限酵素PstIで切断し、フェノールクロロホルム抽出とエタノール沈殿により精製した。
ガラス基盤(チャンバー)は以下のように調製した。シランカップリング剤によってシリコナイズした24×32mmのカバーガラスと18×18mmのカバーガラスとを2つの両面テープを介して貼り合わせて、3×18mmの流路を形成した。流路の入り口に斜めに切った6cm長のテフロン(登録商標)チューブ(φ1.0×1.5mm)を置き、ブチルゴムで封じた。
ガラス基板上のストレプトアビジン固定、及びブロック方法は以下のように行った。HE緩衝液(10mM HEPES and 0.1 mM EDTA)+5mM 酢酸マグネシウムに溶かした1mg ml−1ビオチン標識BSAをチャンバー内に導入、HE緩衝液で洗浄、HE緩衝液に溶かした0.2mg ml−1ストレプトアビジンをチャンバー内に導入、HE緩衝液で洗浄、HE 緩衝液に溶かした1mg ml−1 脱リン酸化α−カゼイン、80μg ml−1ヘパリン、50mMグルタミン酸カリウムをチャンバー内に導入、 HE緩衝液で洗浄、緩衝液Aに溶かした1mM dATPで洗浄した。
以上の方法で調製したRecA蛋白質、単鎖DNA、二重鎖DNA、ガラス基板を使用して以下のとおり行った。
(a)20mMトリス−酢酸バッファー(pH7.5)、1mM酢酸マグネシウム、1mMデオキシアデノシン三燐酸を含んだ溶液中に、ビオチンタグ付きM13mp18線状一本鎖DNA及び353C RecA蛋白質をそれぞれ最終濃度が1μM及び2μMになるように加え、この反応液を 37℃にて20分間インキュベートした。この反応液にモノマレイミド修飾された蛍光分子IC3−PEマレイミド0.06mMを加え、室温にて1分間反応させた。サンプルはその後、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより精製し、蛍光標識したRecAフィラメントを調製した。この反応溶液をチャンバーに導入し、蛍光標識したRecAフィラメントをアビジン・ビオチン結合によりガラス基板上に固定させた。
(b)20mMトリス−酢酸バッファー(pH7.5)、10mM酢酸マグネシウム、1mMデオキシアデノシン三燐酸、1μM RecA、2.4μM SSBタンパク質を含む100nM M13mp18線状二重鎖DNAあるいは100nM φX174線状二重鎖DNAを37℃に保温したチャンバー内に導入し、相同対合、鎖交換反応を開始させた。
(c)蛍光標識したRecA蛋白質の蛍光強度の経時変化を測定した。
蛍光強度の測定結果を図2に示す。図2は、線状相同鎖二重鎖DNAはM13mp18を用いた場合(図2の左側)、及び線状非相同鎖二重鎖DNAはφX174(図2の右側)を用いた場合のそれぞれの上記、相同対合・鎖交換反応時の蛍光強度の変化を示している。図2の各グラフの縦軸は蛍光強度を示し、横軸は時間(分)を示している。これから明らかのように相同二重鎖DNA(M13mp18)を基質に用いた場合の方が、非相同二重鎖DNA(φX174)を基質に用いた場合よりも、蛍光強度の減少が急速に起きる。これは相同対合・鎖交換反応が進行することによって、蛍光標識RecAタンパク質がDNAから解離してゆくからである。蛍光標識RecAフィラメントの蛍光減少をモニターすることによって、ターゲット二重鎖DNAとプローブ単鎖DNAとの間の相同性を簡便に評価することができた。
実施例1記載の通りに調製したRecA蛋白質、単鎖DNA、二重鎖DNA、ガラス基盤を使用して以下の実験を行った。
(a)20mMトリス−酢酸バッファー(pH7.5)、1mM酢酸マグネシウム、1mMデオキシアデノシン三燐酸を含んだ溶液中に、上記のビオチンタグ付きM13mp18線状一本鎖DNA及び353C RecA蛋白質をそれぞれ最終濃度が1μM(DNAの濃度はヌクレオチド換算濃度、以下同様)及び2μMになるように加え、この反応液を 37℃にて20分間インキュベートした。この反応溶液を上記作成のチャンバーに導入し、RecAフィラメントをアビジン・ビオチン結合によりガラス基板上に固定させた。
(b)20mMトリス−酢酸バッファー(pH7.5)、10mM酢酸マグネシウム、1mMデオキシアデノシン三燐酸、1μM RecA、2.4μM SSBタンパク質を含む100nM M13mp18線状二重鎖DNAあるいは100nM φX174線状二重鎖DNAを37℃に保温したチャンバー内に導入し、相同対合、鎖交換反応を開始させた。
(c)40分間反応せしめた後、RecAタンパク質を除去し、抗DNA抗体(MAB030、Chemicon)を用いた免疫染色法によりDNAを蛍光染色した。
この結果を図3に蛍光顕微鏡像の写真として示す。図3の左側は線状相同鎖二重鎖DNAはM13mp18の場合を示し、右側は線状非相同鎖二重鎖DNAはφX174の場合を示す。図3から明らかなように、相同二重鎖DNA(M13mp18)を基質に用いた場合の方が、非相同二重鎖DNA(φX174)を基質に用いた場合よりも、二重鎖DNA由来のシグナルが顕著に多い。こうして、RecAタンパク質を利用することによって、ターゲット分子として二重鎖DNAを用いることが初めてでき、DNAハイブリダイゼーションによる塩基配列相同性の評価が可能であった。
本発明の方法は、RecA相同組換えタンパク質を用いた迅速、大量処理可能な、かつ簡便な相同性の検出、同定、又は定量化方法を提供するものであり、遺伝子工学、遺伝子産業、医療、特に遺伝子に原因する各種疾患の検査、治療に極めて有効で実用的な方法を提供するものである。
図1は、本発明の測定の方法における測定原理を模式的に示した模式図である。 図2は、相同対合・鎖交換反応によるRecAフィラメントの蛍光強度の減少を示したグラフである。図2の左側は、線状相同二重鎖DNA(M13mp18二重鎖DNA)を用いた場合。右側は、線状非相同二重鎖DNA(φX174二重鎖DNA)を用いた場合をそれぞれ示している。 図3は、二重鎖DNAをターゲットに用いた、RecA相同組換えタンパク質によるDNAハイブリダイゼーション(スケール:10μm)の蛍光顕微鏡像を示した図面に代わる写真である。図3の左側は、線状相同二重鎖DNA(M13mp18二重鎖DNA)を用いた場合。右側は、線状非相同二重鎖DNA(φX174二重鎖DNA)を用いた場合をそれぞれ示している。

Claims (33)

  1. 基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブに少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させ、フィラメント複合体を形成させる段階(a)、及び、ターゲット二重鎖DNAを混合し、相同対合反応および鎖交換反応を起こさせる段階(b)とを含んでなる基板に固定化されているフィラメント複合体とターゲット二重鎖DNAとを基板上でハイブリダイゼーションさせる方法。
  2. 段階(a)が、基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブにブロック処理を施した後、少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させて、フィラメント複合体を形成させることからなる請求項1に記載の方法。
  3. ブロック処理が、カゼイン又はその混合物を用いるものである請求項2に記載の方法。
  4. RecA様相同組換え蛋白質が、標識化されているものである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. RecA様相同組換え蛋白質を標識する物質が、蛍光分子、放射性物質、ビオチン、ジゴキシゲニン、金属粒子、又は量子ドットなどの粒子状物質である請求項4に記載の方法。
  6. ターゲット二重鎖DNAが、物理的又は化学的に標識されているターゲット二重鎖DNAである請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブが、少なくとも18塩基である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質が、原生生物あるいは古細菌由来である請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質が、大腸菌由来の蛋白質又はその部分ペプチドである請求項8に記載の方法。
  10. 基板上への固定が、DNAマイクロアレイである請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかの方法により基板上に固定化されているフィラメント複合体とターゲット二重鎖DNAとをハイブリダイゼーションさせて、当該ハイブリダイゼーション中の相同部位において三重鎖構造を有する複合体を製造する方法。
  12. 少なくとも1種の単鎖DNAプローブに少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させて形成されたフィラメント複合体が基板上に固定されている、フィラメント複合体固定化基板。
  13. 基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブにブロック処理を施した後、少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させて、フィラメント複合体を形成させたものである請求項12に記載の基板。
  14. ブロック処理が、カゼイン又はその混合物を用いるものである請求項13に記載の基板。
  15. RecA様相同組換え蛋白質が、標識化されているものである請求項12〜14のいずれかに記載の基板。
  16. RecA様相同組換え蛋白質を標識する化合物が、蛍光分子、放射性物質、ビオチン、ジゴキシゲニン、金属粒子、又は量子ドットなどの粒子状物質である請求項15に記載の基板。
  17. 基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブが、少なくとも18塩基である請求項12〜16のいずれかに記載の基板。
  18. 少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質が、原生生物あるいは古細菌由来である、請求項12〜17のいずれかに記載の基板。
  19. 少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質が大腸菌由来の蛋白質あるいはその部分ペプチドである、請求項18に記載の基板。
  20. 請求項12〜19のいずれかに記載の基板を含有してなるDNAハイブリダイゼーション用キット。
  21. 請求項12〜19のいずれかに記載の基板からなるDNAマイクロアレイ。
  22. 基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブに少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させ、フィラメント複合体を形成させる段階(a)、ターゲット二重鎖DNAを混合し、相同対合反応および鎖交換反応を起こさせる段階(b)、及び、結合二重鎖DNAを検出又は定量する段階(c)とを含んでなる、基板上で基板に固定化されたフィラメント複合体とターゲット二重鎖DNAとをハイブリダイゼーションさせて、ターゲット二重鎖DNA中の相同性を検出又は定量する方法。
  23. 段階(a)が、基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブにブロック処理を施した後、少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を反応させて、フィラメント複合体を形成させることからなる請求項22に記載の方法。
  24. ブロック処理が、カゼイン又はその混合物を用いるものである請求項23に記載の方法。
  25. RecA様相同組換え蛋白質が、蛍光分子、放射性物質、ビオチン、ジゴキシゲニン、金属粒子、又は量子ドットなどの粒子状物質で標識されたものであり、当該標識物質の量を測定することによってフィラメント複合体上の標識蛋白質を検出又は定量するものである請求項22〜24のいずれかに記載の方法。
  26. 蛍光分子により標識された少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を用いる段階(a)と、その蛍光強度を測定することによってフィラメント複合体上の標識蛋白質量を検出又は定量する段階(c)とを有する、請求項22〜25のいずれかに記載の方法。
  27. 少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質標識化合物が放射性物質である段階(a)と、その放射線強度を測定することによってフィラメント複合体上の標識蛋白質量を検出又は定量する段階(c)とを有する、請求項22〜25のいずれかに記載の方法。
  28. 少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質を標識する化合物がビオチン又はジゴキシゲニンである段階(a)と、その量を測定することによってフィラメント複合体上の標識蛋白質を検出又は定量する段階(c)とを有する、請求項22〜25のいずれかに記載の方法。
  29. 相同対合反応および鎖交換反応を起こさせる段階(b)に予め物理的あるいは化学的に標識されているターゲット二重鎖DNAを用いることを特徴とする、請求項22〜28のいずれかに記載の方法。
  30. ターゲット二重鎖DNAを標識する化合物が、蛍光分子、放射性物質、ビオチン、ジゴキシゲニン、金属粒子、又は量子ドットなどの粒子状物質である請求項29に記載の方法。
  31. 基板上に固定された少なくとも1種の単鎖DNAプローブが少なくとも18塩基である、請求項22〜30のいずれかに記載の方法。
  32. 少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質が、原生生物あるいは古細菌由来である請求項22〜31のいずれかに記載の方法。
  33. 少なくとも1種のRecA様相同組換え蛋白質が、大腸菌由来の蛋白質又はその部分ペプチドである請求項32に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN109666721A (zh) * 2017-10-12 2019-04-23 芯世代生技医药股份有限公司 利用酵素进行恒温核酸杂交的方法

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