JP5753429B2 - 溶接材料および溶接継手の製造方法 - Google Patents
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Description
C:0.01〜0.03%、
Si:0.3〜1.2%、
Mn:1.5〜2.5%、
P:0.02%以下、
S:0.005〜0.02%、
Cu:0.1〜0.5%、
Ni:2.0〜3.0%、
Cr:0.05〜1.0%、
Mo:0.05〜1.0%、
Ti:0.005〜0.3%、
Nb:0.005〜0.1%、
Al:0.004〜0.014%、
O:0.05%以下、
N:0.05%以下
を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、かつ
Ceq:0.650以上、
Pcm:0.250以上、
0.00007≦C×Al≦0.00020
を満たす化学組成を有することを特徴とする溶接材料。
ここで、
Ceq=C+Mn/6+Cr/5+Mo/5+V/5+Ni/15+Cu/15
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
但し、式中の各元素記号は、溶接材料中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
第1層:7〜18kJ/cmの溶接入熱で形成
第2層〜第N−2層:5〜16kJ/cmの溶接入熱で形成
第N−1層:5〜23kJ/cmの溶接入熱で形成
第N層:5〜30kJ/cmの溶接入熱で形成
第1層〜第N−2層:5〜16kJ/cmの溶接入熱で形成
第N−1層:5〜23kJ/cmの溶接入熱で形成
第N層:5〜30kJ/cmの溶接入熱で形成
まず、本発明の溶接材料の化学組成の限定理由を述べる。以下、%は質量%を意味する。
Cは、強度を確保するために必要な元素である。0.01%未満では必要とする強度を確保することができない。C含有量は0.015%以上であることが好ましい。一方、0.03%を超えると、冷却速度が速い場合に、硬さが急激に上昇し、母材の靭性が劣化する。C含有量は0.025%以下であることが好ましい。
Siは、脱酸作用があるとともに溶接金属の靱性の向上に寄与する。0.3%未満では溶接時の脱酸効果が不十分なため、溶接金属にブローホールが発生しやすくなり、また十分な靱性が得られない。しかし、1.2%を超えて含有させた場合は、かえって靭性の低下をもたらし、また、溶融金属の流動性が悪くなるためにビード形状が悪化する。
Mnは、脱酸作用があるとともに溶接金属の強度上昇および靱性の向上に寄与する。1.5%未満では溶接時の脱酸効果が不十分であるだけでなく、強度も不足し、また十分な靱性が得られない。しかし、2.5%を超える過剰な含有は、かえって靱性を劣化させる。
Pは、不純物として鋼中に不可避的に存在する。0.02%を超えると、溶接時に高温割れを招くおそれがあるため、0.02%以下とする必要がある。
Sは、溶融池の内向き流れを発生させ、溶接作業性を向上させるのに有効な元素である。このため、Sの含有量を0.005%以上とする。S含有量は0.007%以上であることが好ましく、0.009%以上であることがより好ましい。しかし、0.02%を超えると、溶接時に高温割れや靭性低下を招くおそれがある。
ここで規定するCuは、主として溶接ワイヤ又は棒の表面にめっきされたCu分に該当し、耐錆び性、つまり酸化防止に寄与する。0.1%未満では、十分なメッキ膜が得られず、溶接材料が酸化されやすくなる。一方、0.5%を超えると、溶接ビードの割れを発生させるおそれがある。
Niは、適正量を含有させることによって、溶接性に悪影響を及ぼすこともなく、溶接金属の強度および靱性を向上させる。この効果を得るためにはNiを2.0%以上含有させる。しかし、Ni含有量が3.0%を超えると、かえって靱性が劣化する。
Crは、少量含有させることで、溶接金属の強度および靱性を向上させる。この効果を得るためにはCrを0.05%以上含有させる。しかし、Cr含有量が1.0%を超えると、かえって靱性が劣化する。
Moは、少量含有させることで、溶接金属の強度および靱性を向上させる。この効果を得るためにはMoを0.05%以上含有させる。しかし、Mo含有量が1.0%を超えると、かえって靱性が劣化する。
Tiは、強力な脱酸元素として作用するが、一方でスラグ生成物となる。0.005%未満では、溶接時の脱酸効果が不十分である。一方、0.3%を超えると、スラグ生成量が多くなり、スラグ巻き込みの欠陥が発生しやすくなる。
Nbは、少量含有させることで、溶接金属の強度および靱性を向上させる。この効果を得るためにはNbを0.005%以上含有させる。しかし、Nb含有量が0.1%を超えると、粗大な炭化物、窒化物を形成し靱性が劣化する。
Alは、脱酸のために必須な元素であると同時に、Cの歩留まりを調整するのに重要な元素である。0.004%未満では、高温領域でCが脱酸剤として作用し、COまたはCO2ガスとして放出されてしまい、溶接金属へのCの残量が不足し、強度が低下するため、0.004%以上とする。Al含有量は0.006%以上であることが好ましい。一方、0.014%を超えると、Cの歩留まりが過剰となり、硬さのばらつきが大きくなるため、0.014%以下とする必要がある。Al含有量は0.012%以下であることが好ましく、0.010%以下であることがさらに好ましい。
Oは、不純物として鋼中に不可避的に存在する。0.05%を超えると、靱性が劣化し、溶接欠陥が発生しやすくなるため、0.05%以下とする必要がある。
Nは、不純物として鋼中に不可避的に存在する。0.05%を超えると、強度が過剰となり、靱性が劣化するため、0.05%以下とする必要がある。
Ceqは炭素当量を意味し、
Ceq=C+Mn/6+Cr/5+Mo/5+V/5+Ni/15+Cu/15
によって定義される。溶接継手の引張強さを確保するためには、種々の合金元素をバランスよく含有させることによって、Ceqの値は0.650以上とする必要がある。Ceqの値は0.700以上とするのが好ましく、0.750以上とするのがより好ましい。上限は特に設けないが、合金元素を過剰に含有させるとコスト上昇につながるため、1.000以下とするのが好ましく、0.900以下とするのがより好ましい。
Pcmは溶接割れ感受性組成を意味し、
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
によって定義される。溶接継手の引張強さを確保するためには、種々の合金元素をバランスよく含有させることによって、Pcmの値は0.250以上とする必要がある。Pcmの値は0.255以上とするのが好ましく、0.260以上とするのがより好ましい。上限は特に設けないが、合金元素を過剰に含有させるとコスト上昇につながるため、0.350以下とするのが好ましく、0.300以下とするのがより好ましい。
前述のように、溶接金属のC含有量は、溶接材料のC含有量およびAl含有量のバランスによって決まる。溶接金属のC含有量を0.010〜0.015%程度の狭い範囲に厳密に調整するためには、溶接材料中のAl含有量が少ない場合はC含有量を多めに含有させ、逆にAl含有量が多い場合はC含有量を少なめに含有させる必要がある。そのような観点から、C×Alを0.00007〜0.00020の範囲内とする。C×Alの好ましい下限は0.00010である。また、C×Alの好ましい上限は0.00017であり、より好ましい上限は0.00015である。
本発明に係る溶接材料および溶接継手の製造方法の用途については、特に制限はないが、X80、X90、X100グレードの鋼管の周溶接またはその補修溶接に最適であり、また、その他高強度鋼部材等の溶接にも好適である。鋼管の周溶接(以下、本溶接と言う。)としては、例えば、図1に示すように、母材にV開先1を設けて突合せ溶接により実施することができる。開先の形状については特に制限はなく、V開先の他、U開先または直線と曲線との複合した形の開先としても良い。また、開先同士の距離11は3〜5mmとするのが良く、母材の厚さの差12は、1.5mm以内とするのが良い。
上述のように本発明の溶接材料を用いたとしても、入熱制限またはパス数制限がないと、所定の継手強度が得られなくなる場合がある。そこで、溶接欠陥を生じず、しかもHAZの軟化を抑制し、継手の必要強度を確実に得るための積層方法および溶接入熱の制約条件を、開先または貫通部分に裏波溶接を行う場合、および溶接部の外面または内面の補修溶接を行う場合(ただし、裏波溶接を行う場合を除く。)のそれぞれについて以下に説明する。なお、溶接金属の層の総数をNとする。
第1層:7〜18kJ/cm
第1層は、良好な裏波ビードを形成させつつ、内部欠陥も発生させないことが必要となる。そのため、溶接入熱は1パスあたり7kJ/cm以上とするのが良い。しかし、入熱が大きくなりすぎると溶融池が大きくなりすぎて、表面張力で保持できずに垂れ落ちてしまう。そのため、18kJ/cm以下とするのが好ましい。
融合不良等の溶接欠陥を防止するだけでなく、溶融池を十分馴染ませ、高品質の溶接とするためには、溶接入熱は1パスあたり5kJ/cm以上とするのが好ましい。しかし、入熱が大きすぎると、第1層を貫通して溶けてしまい、穴あきビードが発生するおそれがあるだけでなく、HAZの強度低下が著しくなり、所定の継手強度が得られなくなるため、16kJ/cm以下とするのが良い。
溶接入熱は低すぎると融合不良等の溶接欠陥を生じるおそれがあるため、1パスあたり5kJ/cm以上とするのが好ましい。この部分では多少のHAZ軟化は許容される。最終層を良好に仕上げるため、1層前も溶接をより良好に仕上げる必要があり、入熱をやや上げるのが望ましい。一方、HAZの軟化を極力抑える観点からは、23kJ/cm以下とするのが良い。
第N層は、開先の肩部を溶かし、かつ表面を良好に仕上げる必要がある。そのため、溶接入熱は5kJ/cm以上とするのが好ましい。しかし、HAZ軟化抑制の観点から、30kJ/cm以下とするのが良い。
第1層〜第N−2層:5〜16kJ/cm
融合不良等の溶接欠陥を防止するだけでなく、溶融池を十分馴染ませ、高品質の溶接とするためには、溶接入熱は1パスあたり5kJ/cm以上とするのが好ましい。しかし、入熱が大きすぎると、HAZの強度低下が著しくなり、所定の継手強度が得られなくなるため、16kJ/cm以下とするのが良い。
溶接入熱は低すぎると融合不良等の溶接欠陥を生じるおそれがあるため、1パスあたり5kJ/cm以上とするのが好ましい。この部分では多少のHAZ軟化は許容される。最終層を良好に仕上げるため、1層前も溶接をより良好に仕上げる必要があり、入熱をやや上げるのが望ましい。一方、HAZの軟化を極力抑える観点からは、23kJ/cm以下とするのが良い。
第N層は、開先の肩部を溶かし、かつ表面を良好に仕上げる必要がある。そのため、溶接入熱は5kJ/cm以上とするのが好ましい。しかし、HAZ軟化抑制の観点から、30kJ/cm以下とするのが良い。
層の総数Nは3以上とする。Nの上限については特に制限はないが、多層盛りTIG溶接の場合、積層厚さは1〜2mm程度となるため、Nは開先または貫通補修の溶接の場合は母材の厚さ、部分補修の場合は溝の深さによって決めることができる。また、パス数についても特に制限はなく、溶接性を考慮し、開先または溝の幅に応じて、1層あたり1〜3パス程度とするのが良い。
2.貫通部分
3.溝
4.硬さ測定ライン
11.開先同士の距離
12.母材の厚さの差
21.貫通部分の上部幅
22.貫通部分の下部幅
31.溝の幅
32.溝の深さ
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.01〜0.03%、
Si:0.3〜1.2%、
Mn:1.5〜2.5%、
P:0.02%以下、
S:0.005〜0.02%、
Cu:0.1〜0.5%、
Ni:2.0〜3.0%、
Cr:0.05〜1.0%、
Mo:0.05〜1.0%、
Ti:0.005〜0.3%、
Nb:0.005〜0.1%、
Al:0.004〜0.014%、
O:0.05%以下、
N:0.05%以下
を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、かつ
Ceq:0.650以上、
Pcm:0.250以上、
0.00007≦C×Al≦0.00020
を満たす化学組成を有することを特徴とする溶接材料。
ここで、
Ceq=C+Mn/6+Cr/5+Mo/5+V/5+Ni/15+Cu/15
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
但し、式中の各元素記号は、溶接材料中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。 - 請求項1に記載の溶接材料を用いて、裏波溶接を行うに際し、溶接金属の各層(ただし、層の総数をNとし、Nは4以上とする。)を下記の条件で形成することを特徴とする溶接継手の製造方法。
第1層:7〜18kJ/cmの溶接入熱で形成
第2層〜第N−2層:5〜16kJ/cmの溶接入熱で形成
第N−1層:5〜23kJ/cmの溶接入熱で形成
第N層:5〜30kJ/cmの溶接入熱で形成 - 請求項1に記載の溶接材料を用いて、溶接継手の補修溶接を行う(ただし、裏波溶接を行う場合を除く。)に際し、溶接金属の各層(ただし、層の総数をNとし、Nは3以上とする。)を下記の条件で形成することを特徴とする溶接継手の製造方法。
第1層〜第N−2層:5〜16kJ/cmの溶接入熱で形成
第N−1層:5〜23kJ/cmの溶接入熱で形成
第N層:5〜30kJ/cmの溶接入熱で形成
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